(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シリコン基板上に、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の不純物拡散層形成組成物を塗布する工程と、熱拡散処理を施す工程と、を有する不純物拡散層の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0029】
まず、本発明の不純物拡散層形成組成物について説明し、次に拡散層形成組成物を用いる不純物拡散層及び太陽電池素子の製造方法について説明する。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。また本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示すものとする。
尚、本発明ではn型拡散層及びp型拡散層を総称して「不純物拡散層」といい、本明細書では単に「拡散層」と記載する場合がある。
【0030】
<不純物拡散層形成組成物>
本発明の不純物拡散層形成組成物は、少なくともドナー元素又はアクセプタ元素を含むガラス粉末(以下、単に「ガラス粉末」と称する場合がある)と、分散媒と、を含有する。そして、前記ガラス粉末の軟化点が1200℃以下かつ熱膨張係数(CTE)が5×10
−7/℃以上1×10
−5/℃以下である。本発明の不純物拡散層形成組成物は、更に塗布性などを考慮してその他の添加剤を必要に応じて含有してもよい。
【0031】
ここで、不純物拡散層形成組成物とは、ドナー元素又はアクセプタ元素を含むガラス粉末を含有し、シリコン基板に塗布した後にこのドナー元素又はアクセプタ元素を熱拡散することで不純物拡散層を形成することが可能な材料をいう。ドナー元素又はアクセプタ元素をガラス粉末中に含む拡散層形成組成物を用いることで、所望の部位に不純物拡散層を形成することができるため、不純物拡散層形成工程とオーミックコンタクト形成工程とを分離でき、オーミックコンタクト形成のための電極材の選択肢が広がるとともに、電極の構造の選択肢も広がる。例えば銀等の低抵抗材を電極に用いれば薄い膜厚で低抵抗が達成できる。また、電極も全面に形成する必要はなく、櫛型等の形状のように部分的に形成してもよい。
【0032】
したがって、本発明の不純物拡散層形成組成物を適用すれば、基板中の内部応力及び基板の反りの発生が抑制される。
また、本発明の不純物拡散層形成組成物を適用すれば、ガラス粉末中のドナー元素及びアクセプタ成分は焼成中でも揮散しにくいため、揮散ガスの発生によって所望の領域以外にまで不純物拡散層が形成されるということが抑制される。この理由として、ドナー成分及びアクセプタ成分がガラス粉末中の元素と結合しているか、又はガラス中に取り込まれているため、揮散しにくいものと考えられる。
【0033】
ここで本発明では、軟化点が1200℃以下かつ熱膨張係数(CTE)が5×10
−7/℃〜1×10
−5/℃以下であるガラス粉末を用いる。ガラス粉末の軟化点が、1200℃を超えると、熱拡散時にガラス粉末が溶解しにくくなって、ガラス粉末とシリコン基板との接触が不十分となり、拡散が均一に行われにくくなる。また、ガラス粉末の熱膨張係数(CTE)が5×10
−7未満又は1×10
−5を超えるとシリコン基板との熱膨張係数差が大きくなるため、600℃〜1200℃程度での熱拡散処理を行った後シリコン基板を冷却する際にシリコン基板に反りが発生してしまい、基板に割れ、微小なクラックが発生する恐れがあり、半導体性能の低下を招きやすい。
【0034】
(1)ガラス粉末
(アクセプタ元素を含むガラス粉末の成分)
本発明に係るアクセプタ元素を含むガラス粉末の成分について、詳細に説明する。
アクセプタ元素とは、シリコン基板中にドーピングさせることによってp型拡散層を形成することが可能な元素である。アクセプタ元素としては第13族の元素が使用でき、例えばB(ほう素)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)等が挙げられる。
【0035】
アクセプタ元素をガラス粉末に導入するために用いるアクセプタ元素含有物質としては、B
2O
3、Al
2O
3、及びGa
2O
3が挙げられ、B
2O
3、Al
2O
3及びGa
2O
3から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0036】
また、アクセプタ元素を含むガラス粉末は、必要に応じて成分比率を調整することによって、溶融温度、軟化点、ガラス転移温度、化学的耐久性等を制御することが可能である。更に以下に記す、ガラス成分物質を含むことが好ましい。
【0037】
ガラス成分物質としては、SiO
2、K
2O、Na
2O、Li
2O、BaO、SrO、CaO、MgO、BeO、ZnO、PbO、CdO、V
2O
5、SnO、ZrO
2、WO
3、MoO
3、GeO
2、As
2O
3、Y
2O
3、CsO
2、TiO
2、TeO
2、La
2O
3、Nb
2O
5、Ta
2O
5、GeO
2、Lu
2O
3及びMnOから選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、SiO
2、K
2O、Na
2O、Li
2O、BaO、SrO、CaO、MgO、BeO、ZnO、PbO、CdO、V
2O
5、SnO、ZrO
2、MoO
3、GeO
2、As
2O
3、Y
2O
3、CsO
2、及びTiO
2から選択される少なくとも1種を用いることがより好ましく、SiO
2、K
2O、Na
2O、Li
2O、BaO、SrO、CaO、MgO、BeO、ZnO、PbO、CdO、V
2O
5、SnO、ZrO
2、及びMoO
3から選択される少なくとも1種を用いることが、軟化点および熱膨張係数を上記規定の範囲内とする観点からより好ましい。
【0038】
アクセプタ元素を含むガラス粉末の具体例としては、前記アクセプタ元素含有物質と前記ガラス成分物質の双方を含むが挙げられ、B
2O
3−SiO
2系(アクセプタ元素含有物質−ガラス成分物質の順で記載、以下同様)、B
2O
3−ZnO系、B
2O
3−PbO系、B
2O
3単独系等のアクセプタ元素含有物質としてB
2O
3を含む系、Al
2O
3−SiO
2系等のアクセプタ元素含有物質としてAl
2O
3を含む系、Ga
2O
3−SiO
2系等のアクセプタ元素含有物質としてGa
2O
3を含む系などのガラス粉末が挙げられる。
上記では1成分又は2成分を含むガラス粉末を例示したが、B
2O
3−SiO
2−CaO等、3成分以上を含むガラス粉末でもよい。
また、Al
2O
3−B
2O
3系、Ga
2O
3−B
2O
3系等のように、2種類以上のアクセプタ元素含有物質を含むガラス粉末でもよい。
【0039】
尚、ガラス粉末がSiO
2、ZnO、CaO、Na
2O、Li
2O、BaO及びAl
2O
3から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。アクセプタ元素含有物質であるB
2O
3を単独で使用するよりも、これらの成分物質を併用した場合には、不純物拡散層の抵抗が低くなり、また所望の領域以外の部位に不純物拡散層を形成すること(アウトディフュージョン)を抑制することが可能となる。
【0040】
前記アクセプタ元素を含むガラス粉末は、B
2O
3、Al
2O
3及びGa
2O
3から選択される少なくとも1種のアクセプタ元素含有物質と、SiO
2、K
2O、Na
2O、Li
2O、BaO、SrO、CaO、MgO、BeO、ZnO、PbO、CdO、V
2O
5、SnO、ZrO
2、WO
3、MoO
3、GeO
2、As
2O
3、Y
2O
3、CsO
2、TiO
2、TeO
2、La
2O
3、Nb
2O
5、Ta
2O
5、GeO
2、Lu
2O
3及びMnOから選択される少なくとも1種のガラス成分物質と、を含有することが好ましく、B
2O
3、Al
2O
3及びGa
2O
3から選択される少なくとも1種のアクセプタ元素含有物質と、SiO
2、K
2O、Na
2O、Li
2O、BaO、SrO、CaO、MgO、BeO、ZnO、PbO、CdO、Tl
2O、V
2O
5、SnO、ZrO
2、MoO
3、GeO
2、As
2O
3、Y
2O
3、CsO
2、及びTiO
2から選択される少なくとも1種のガラス成分物質とを含有することがより好ましく、B
2O
3、Al
2O
3及びGa
2O
3から選択される少なくとも1種のアクセプタ元素含有物質と、SiO
2、K
2O、Na
2O、Li
2O、BaO、SrO、CaO、MgO、BeO、ZnO、PbO、CdO、V
2O
5、SnO、ZrO
2、MoO
3、GeO
2、As
2O
3、Y
2O
3、CsO
2、及びTiO
2から選択される少なくとも1種のガラス成分物質と、を含有することが更に好ましい。これにより、形成されるp型拡散層のシート抵抗をより低くすることが可能となる。
【0041】
ガラス粉末中のアクセプタ元素含有物質の含有比率は、溶融温度、軟化点、ガラス転移温度、化学的耐久性を考慮して適宜設定することが望ましく、一般には、0.1質量%以上95質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。
【0042】
(ドナー元素を含むガラス粉末の成分)
本発明に係るドナー元素を含むガラス粉末の成分について、詳細に説明する。
ドナー元素とは、シリコン基板中にドーピングさせることによってn型拡散層を形成することが可能な元素である。ドナー元素としては第15族の元素が使用でき、例えばP(リン)、Sb(アンチモン)、Bi(ビスマス)、As(ヒ素)等が挙げられる。安全性、ガラス化の容易さ等の観点から、P又はSbが好適である。また、不純物拡散層の抵抗を低くし、アウトディフュージョンを抑制する観点からは、Biが好適である。
【0043】
ドナー元素をガラス粉末に導入するために用いるドナー元素含有物質としては、P
2O
3、P
2O
5、Sb
2O
3、Sb
2O
5、Bi
2O
3、Bi
2O
5及びAs
2O
3が挙げられ、P
2O
3、P
2O
5、Bi
2O
3、Bi
2O
5、Sb
2O
3及びSb
2O
5から選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、P
2O
3、P
2O
5及びSb
2O
3から選択される少なくとも1種を用いることがより好ましく、P
2O
5を用いることが更に好ましい。
【0044】
また、ドナー元素を含むガラス粉末は、必要に応じて成分比率を調整することによって、溶融温度、軟化点、ガラス転移温度、化学的耐久性等を制御することが可能である。更に以下に記す、ガラス成分物質を含むことが好ましい。
ガラス成分物質としては、SiO
2、K
2O、Na
2O、Li
2O、BaO、SrO、CaO、MgO、BeO、ZnO、PbO、CdO、V
2O
5、SnO、ZrO
2、WO
3、MoO
3、MnO、La
2O
3、Nb
2O
5、Ta
2O
5、Y
2O
3、CsO
2、TiO
2、ZrO
2、GeO
2、TeO
2及びLu
2O
3等が挙げられ、SiO
2、K
2O、Na
2O、Li
2O、BaO、SrO、CaO、MgO、BeO、ZnO、PbO、CdO、V
2O
5、SnO、ZrO
2、MoO
3、GeO
2、Y
2O
3、CsO
2及びTiO
2から選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、SiO
2、K
2O、Na
2O、Li
2O、BaO、SrO、CaO、MgO、BeO、ZnO、PbO、CdO、V
2O
5、SnO、ZrO
2、及びMoO
3から選択される少なくとも1種を用いることがより好ましく、SiO
2、ZnO、CaO、Na
2O、Li
2O、SnO及びBaOから選択される少なくとも1種を用いることが更に好ましい。
【0045】
ドナー元素を含むガラス粉末の具体例としては、前記ドナー元素含有物質と前記ガラス成分物質の双方を含む系が挙げられ、P
2O
5−SiO
2系(ドナー元素含有物質−ガラス成分物質の順で記載、以下同様)、P
2O
5−K
2O系、P
2O
5−Na
2O系、P
2O
5−Li
2O系、P
2O
5−BaO系、P
2O
5−SrO系、P
2O
5−CaO系、P
2O
5−MgO系、P
2O
5−BeO系、P
2O
5−ZnO系、P
2O
5−CdO系、P
2O
5−PbO系、P
2O
5−V
2O
5系、P
2O
5−SnO系、P
2O
5−GeO
2系、P
2O
5−TeO
2系等のドナー元素含有物質としてP
2O
5を含む系、前記のP
2O
5を含む系のP
2O
5の代わりにドナー元素含有物質としてSb
2O
3を含む系などのガラス粉末が挙げられる。
尚、P
2O
5−Sb
2O
3系、P
2O
5−As
2O
3系等のように、2種類以上のドナー元素含有物質を含むガラス粉末でもよい。
上記では2成分を含むガラス粉末を例示したが、P
2O
5−SiO
2−V
2O
5、P
2O
5−SiO
2−CaO等、3成分以上を含むガラス粉末でもよい。
【0046】
尚、ガラス粉末がSiO
2、Bi
2O
3、ZnO、CaO、Na
2O、CaO、Li
2O、BaOを含むことが好ましい。ドナー元素含有物質であるP
2O
5を単独で使用するよりも、これらの成分物質を併用した場合には、不純物拡散層の抵抗が低くなり、またアウトディフュージョンを抑制することが可能となる。
【0047】
前記ドナー元素を含むガラス粉末は、P
2O
3、P
2O
5、Sb
2O
3、Sb
2O
5、Bi
2O
3、Bi
2O
5及びAs
2O
3から選択される少なくとも1種のドナー元素含有物質と、SiO
2、K
2O、Na
2O、Li
2O、BaO、SrO、CaO、MgO、BeO、ZnO、PbO、CdO、V
2O
5、SnO、ZrO
2、MoO
3、GeO
2、Y
2O
3、CsO
2及びTiO
2から選択される少なくとも1種のガラス成分物質と、を含有することが好ましく、P
2O
3、P
2O
5、Bi
2O
3、Bi
2O
5、Sb
2O
3及びSb
2O
5から選択される少なくとも1種のドナー元素含有物質と、SiO
2、K
2O、Na
2O、Li
2O、BaO、SrO、CaO、MgO、BeO、ZnO、PbO、CdO、V
2O
5、SnO、ZrO
2、及びMoO
3から選択される少なくとも1種のガラス成分物質と、を含有することがより好ましく、P
2O
5であるドナー元素含有物質と、SiO
2、ZnO、CaO、Na
2O、Li
2O、SnO及びBaOから選択される少なくとも1種のガラス成分物質と、を含有することがより好ましい。これにより、形成されるn型拡散層のシート抵抗をより低くすることが可能となる。
【0048】
ガラス粉末中のドナー元素含有物質の含有比率は、溶融温度、軟化点、ガラス転移温度、化学的耐久性を考慮して適宜設定することが望ましく、一般には、0.1質量%以上95質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。
【0049】
(ガラス粉末の物性)
ドナー元素を含むガラス粉末およびアクセプタ元素を含むガラス粉末のいずれのガラス粉末であっても、軟化点は1200℃以下であり、拡散処理時の拡散性、液だれの観点から、200℃〜1200℃であることが好ましく、300℃〜900℃であることがより好ましい。ドナー元素又はアクセプタ元素をシリコン基板内へ拡散するときの熱処理温度は通常600℃〜1200℃であることから、軟化点が1200℃を超えると、熱拡散時にガラス粉末が溶解しにくくなって、ガラス粉末とシリコン基板との接触が不十分となり、拡散が均一に行われない可能性がある。
【0050】
ガラス粉末の軟化点は、熱機械分析装置を用いて、温度を上げていったときの軟化点前後での接線の交点から算出することができる。
【0051】
また、ドナー元素を含むガラス粉末およびアクセプタ元素を含むガラス粉末のいずれのガラス粉末であっても、熱膨張係数(CTE)は、5×10
−7/℃〜1×10
−5/℃であり、1×10
−6/℃〜1×10
−5/℃であることがより好ましい。シリコン基板の熱膨張係数は2.5×10
−6であるため、ガラス粉末の熱膨張係数が5×10
−7/℃未満又は1×10
−5/℃を超えるとシリコン基板との熱膨張係数差が大きくなる。そのため通常の熱拡散温度である600℃〜1200℃程度での熱拡散処理を行った後、温度を冷却する際にシリコン基板に反りが発生してしまい、基板に割れ、微小なクラックが発生する恐れがあり、半導体性能の低下を招く。
【0052】
ガラス粉末の熱膨張係数は、熱機械分析装置(TMA:Thermo Mechanical Analysis)を用いて、一定速度で昇温したときの測定試料と標準試料の熱膨張量の差から測定試料の熱膨張量を測定することができる。熱膨張係数は30℃〜400℃での値を用いることができる。
【0053】
アクセプタ元素又はドナー元素を含むガラス粉末の軟化点を低下させる方法としては、アルカリ、アルカリ土類、Bi、Znなどの軟化点の低いガラス成分物質やアクセプタ元素含有物質又はドナー元素含有物質を用いる方法が挙げられる。
【0054】
熱膨脹係数を調整する方法としては、ガラス粉末にNa
2O、K
2O、Li
2O、CaO、MgO、BaO、ZnO、Sb
2O
3などの金属酸化物を含有させる、又はその含有量を調整する方法が挙げられる。これらの金属酸化物は、その存在により溶融性が改善され、熱膨脹係数が調整されるものと考えられる。
これらのガラス成分物質やアクセプタ元素含有物質又はドナー元素含有物質を組み合わせて、ガラス粉末の熱膨張係数を5×10
−7/℃以上1×10
−5/℃以下の範囲となるように調整することが好ましい。
【0055】
尚、ガラス粉末は、一部結晶相が析出してもよく、結晶化ガラスなども使用することもできる。
【0056】
ガラス粉末の形状としては、略球状、扁平状、ブロック状、板状、および鱗片状等が挙げられ、不純物拡散層形成拡散層形成組成物とした場合の基板への塗布性や均一拡散性の点から略球状、扁平状、または板状であることが望ましい。
ガラス粉末の粒径は、50μm以下であることが望ましい。50μm以下の粒径を有するガラス粉末を用いた場合には、平滑な塗膜が得られやすい。更に、ガラス粉末の粒径は10μm以下であることがより望ましい。尚、下限は特に制限されないが、0.01μm以上であることが好ましい。
ここで、ガラスの粒径は、体積平均粒径を表し、レーザー散乱回折法粒度分布測定装置等により測定することができる。
【0057】
(ガラス粉末の調製方法)
アクセプタ元素又はドナー元素を含むガラス粉末は、以下の手順で作製される。
最初に原料、例えば、前記アクセプタ元素含有物質又はドナー元素含有物質とガラス成分物質とを秤量し、るつぼに充填する。るつぼの材質としては白金、白金―ロジウム、金、イリジウム、アルミナ、石英、炭素等が挙げられるが、溶融温度、雰囲気、溶融物質との反応性等を考慮して適宜選ばれる。
次に、電気炉でガラス組成に応じた温度で加熱し融液とする。このとき融液が均一となるよう攪拌することが望ましい。
続いて得られた融液をジルコニア基板やカーボン基板等の上に流し出して融液をガラス化する。
最後にガラスを粉砕し粉末状とする。粉砕にはジェットミル、ビーズミル、ボールミル等公知の方法が適用できる。
【0058】
(ガラス粉末の含有率)
不純物拡散層形成組成物中のアクセプタ元素又はドナー元素を含むガラス粉末の含有比率は、塗布性、アクセプタ元素又はドナー元素の拡散性等を考慮し決定される。一般には、不純物拡散層形成組成物中のガラス粉末の含有比率は、0.1質量%以上95質量%以下であることが好ましく、1質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以上85質量%以下であることがさらに好ましく、2質量%以上80質量%以下であることが特に好ましい。
【0059】
(2)分散媒
次に、分散媒について説明する。
分散媒とは、組成物中において上記ガラス粉末を分散させる媒体である。具体的に分散媒としては、溶剤などが採用される。
【0060】
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−iso−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン等のケトン系溶剤;ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチル−n−プロピルエーテル、ジ−iso−プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラエチレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル等のエーテル系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エチル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸ジエチレングリコールメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、エチレングリコールメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のエステル系溶剤;アセトニトリル、N−メチルピロリジノン、N−エチルピロリジノン、N−プロピルピロリジノン、N−ブチルピロリジノン、N−ヘキシルピロリジノン、N−シクロヘキシルピロリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤;メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のアルコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールモノエーテル系溶剤;α−テルピネン、α−テルピネオール、ミルセン、アロオシメン、リモネン、ジペンテン、α−ピネン、β−ピネン、ターピネオール、カルボン、オシメン、フェランドレン等のテルペン系溶剤;水等が挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0061】
不純物拡散層形成組成物中の分散媒の含有比率は、塗布性、アクセプタ濃度を考慮し決定される。
【0062】
(3)バインダ
本発明の不純物拡散層形成組成物は、基板上に塗布、乾燥した状態でのガラス成分の飛散を防止できる観点からバインダを含むことが好ましい。
バインダとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド類、ポリビニルアミド類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド類、ポリスルホン酸、アクリルアミドアルキルスルホン酸、セルロースエーテル類、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロースなど)、ゼラチン、澱粉及び澱粉誘導体、アルギン酸ナトリウム類、キサンタン、グア及びグア誘導体、スクレログルカン及びスクレログルカン誘導体、トラガカント及びトラガカント誘導体、デキストリン及びデキストリン誘導体、(メタ)アクリル酸樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂(例えば、アルキル(メタ)アクリレート樹脂、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート樹脂等)、ブタジエン樹脂、スチレン樹脂及びこれらの共重合体、シロキサン樹脂、金属アルコキシドなどを適宜選択しうる。これらバインダのなかでもセルロー
ス誘導体を用いることが、少量においても容易に粘度及びチキソ性が調節できる観点から好適である。
これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0063】
バインダの分子量は特に制限されず、組成物としての所望の粘度を鑑みて適宜調整することが望ましい。
【0064】
(4)その他の成分
前記ガラス粉末、分散媒、バインダの他に添加剤、増粘剤、湿潤剤を加えてもよく、例えば、界面活性剤、無機粉末、有機ホウ素化合物、有機アルミニウム化合物、シリコン元素を含む樹脂などが挙げられる。
【0065】
界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤などが挙げられ、半導体デバイスへのアルカリ金属や重金属等の不純物の持ち込みが少ないことからノニオン系界面活性剤又はカチオン系界面活性剤が好ましい。更にはノニオン系界面活性剤としてシリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、炭化水素系界面活性剤が例示され、拡散等の
加熱時に速やかに焼成されることから、炭化水素系界面活性剤が好ましい。炭化水素系界面活性剤としては、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドのブロック共重合体、アセチレングリコール化合物等が例示され、半導体デバイスの抵抗値のバラツキをより低減することから、アセチレングリコール化合物がより好ましい。
【0066】
無機粉末は充填剤(フィラー)として機能させることができ、窒化ホウ素、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素などを例示することができる。
【0067】
有機ホウ素化合物としては、有機ホウ素ポリマーなどを例示することができる。有機ホウ素ポリマーは、分子構造に特に制約はなく、分子中に10個以上のホウ素原子を含むものであることが好ましい。
【0068】
さらに本発明の不純物拡散層形成組成物には、ガラス粉末を還元する添加剤を加えてもよい。ガラス粉末を還元する添加剤としては、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール及びその末端アルキル化物;グルコース、フルクトース、ガラクトース等の単糖類又はその誘導体;スクロース、マルトース、スクロース等の二糖類又はその誘導体;並びに多糖類又はその誘導体等を挙げることができる。これらの化合物の中でも、ポリアルキレングリコールが好ましく、ポリプロピレングリコールが更に好ましい。
【0069】
<不純物拡散層及び太陽電池素子の製造方法>
次に、n型拡散層の製造方法、p型拡散層の製造方法、及び太陽電池素子の製造方法について説明する。
【0070】
(n型拡散層及び太陽電池素子の製造方法)
本発明の不純物拡散層としてのn型拡散層の製造方法及び太陽電池素子の製造方法について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明の太陽電池素子の製造工程の一例を概念的に表す模式断面図である。以降の図面においては、共通する構成要素に同じ符号を付す。
なお、以下では、p型シリコン基板にn型拡散層を形成する方法を例示するが、n型シリコン基板にn
+型拡散層を形成する方法も同様に適用できる。
【0071】
図1(1)では、p型シリコン基板10にアルカリ溶液を付与してダメージ層を除去し、テクスチャー構造をエッチングにて得る。
詳細には、インゴットからスライスした際に発生するシリコン表面のダメージ層を20質量%苛性ソーダで除去する。次いで1質量%苛性ソーダと10質量%イソプロピルアルコールの混合液によりエッチングを行い、テクスチャー構造を形成する(図中ではテクスチャー構造の記載を省略する)。太陽電池素子は、受光面(表面)側にテクスチャー構造を形成することにより、光閉じ込め効果が促され、高効率化が図られる。
【0072】
図1(2)では、p型シリコン基板10の表面すなわち受光面となる面に、上記n型拡散層形成組成物を塗布して、n型拡散層形成組成物層11を形成する。本発明では、塗布方法には制限がないが、例えば、印刷法、スピン法、刷毛塗り、スプレー法、ドクターブレード法、ロールコーター法、インクジェット法などがある。
上記n型拡散層形成組成物の塗布量としては特に制限は無いが、例えば、ガラス粉末量として0.01g/m
2〜100g/m
2とすることができ、0.1g/m
2〜10g/m
2であることが好ましい。
【0073】
尚、n型拡散層形成組成物の組成によっては、塗布後に、組成物中に含まれる溶剤を揮発させるための乾燥工程が必要な場合がある。この場合には、80℃〜300℃程度の温度で、ホットプレートを使用する場合は1分〜10分、乾燥機などを用いる場合は10分〜30分程度で乾燥させる。この乾燥条件は、n型拡散層形成組成物の溶剤組成に依存しており、本発明では特に上記条件に限定されない。
【0074】
次いで、上記n型拡散層形成組成物層11を形成したシリコン基板10を、例えば、600℃以上で、好ましくは、800℃以上で熱拡散処理する。熱拡散処理の上限温度としては、例えば、1250℃以下であることが好ましく、1000℃以下であることがより好ましい。この熱拡散処理により、
図1(3)に示すようにシリコン基板中へドナー元素が拡散し、n型拡散層12が形成される。熱拡散処理には公知の連続炉、バッチ炉等が適用できる。また、熱拡散処理時の炉内雰囲気は、空気、酸素、窒素等に適宜調整することもできる。
【0075】
熱拡散処理時間は、n型拡散層形成組成物に含まれるドナー元素の含有率などに応じて適宜選択することができる。例えば、1分〜60分間とすることができ、2分〜30分間であることがより好ましい。
本発明では熱膨張率を調整したガラス粉末を用いているため、熱拡散処理及びその後の冷却の際に、熱膨張率の差によるシリコン基板にかかる応力を抑えることができ、シリコン基板の反りや損傷の発生を抑えることができる。
【0076】
形成されたn型拡散層12の表面には、リン酸ガラスなどのガラス層(不図示)が形成されているため、このリン酸ガラスをエッチングにより除去する。エッチングとしては、ふっ酸等の酸に浸漬する方法、苛性ソーダ等のアルカリに浸漬する方法など公知の方法が適用できる。
【0077】
図1(2)及び(3)に示される、本発明のn型拡散層形成組成物11を用いてn型拡散層12を形成する本発明のn型拡散層の形成方法では、所望の部位にn型拡散層12が形成され、裏面や側面には不要なn型拡散層が形成されない。
したがって、従来広く採用されている気相反応法によりn型拡散層を形成する方法では、側面に形成された不要なn型拡散層を除去するためのサイドエッチング工程が必須であったが、本発明の製造方法によれば、サイドエッチング工程が不要となり、工程が簡易化される。
【0078】
また、本発明の製造方法を用いる場合には、裏面のp
+型拡散層(高濃度電界層)14の製造方法はアルミニウムによるn型拡散層からp型拡散層への変換による方法に限定されることなく、いずれの方法も採用でき、製造方法の選択肢が広がる。
また後述するように、裏面の表面電極20に用いる材料は第13族のアルミニウムに限定されず、例えばAg(銀)やCu(銅)などを適用することができ、裏面の表面電極20の厚さも従来のものよりも薄く形成することが可能となる。
【0079】
図1(4)では、n型拡散層12の上に反射防止膜16を形成する。反射防止膜16は公知の技術を適用して形成される。例えば、反射防止膜16がシリコン窒化膜の場合には、SiH
4とNH
3の混合ガスを原料とするプラズマCVD法により形成する。このとき、水素が結晶中に拡散し、シリコン原子の結合に寄与しない軌道、即ちダングリングボンドと水素が結合し、欠陥を不活性化(水素パッシベーション)する。
より具体的には、上記混合ガス流量比NH
3/SiH
4が0.05〜1.0、反応室の圧力が13.3Pa(0.1Torr)〜266.6Pa(2Torr)、成膜時の温度が300℃〜550℃、プラズマの放電のための周波数が100kHz以上の条件下で形成される。
【0080】
図1(5)では、表面(受光面)の反射防止膜16上に、表面電極用金属ペーストをスクリーン印刷法で印刷塗布乾燥させ、表面電極18を形成する。表面電極用金属ペーストは、(1)金属粒子と(2)ガラス粒子とを必須成分とし、必要に応じて(3)樹脂バインダー、(4)その他の添加剤などを含む。
【0081】
次いで、上記裏面の高濃度電界層14上にも裏面電極20を形成する。前述のように、本発明では裏面電極20の材質や形成方法は特に限定されない。例えば、アルミニウム、銀、銅などの金属を含む裏面電極用ペーストを塗布し、乾燥させて、裏面電極20を形成してもよい。このとき、裏面にも、モジュール工程における素子間の接続のために、一部に銀電極形成用銀ペーストを設けてもよい。
【0082】
図1(6)では、電極を焼成して、太陽電池素子を完成させる。600℃〜900℃の範囲で数秒〜数分間焼成すると、表面側では電極用金属ペーストに含まれるガラス粒子によって絶縁膜である反射防止膜16が溶融し、更にシリコン10表面も一部溶融して、ペースト中の金属粒子(例えば銀粒子)がシリコン基板10と接触部を形成し凝固する。これにより、形成した表面電極18とシリコン基板10とが導通される。これはファイアースルーと称されている。
【0083】
表面電極18の形状について説明する。表面電極18は、バスバー電極30、及び該バスバー電極30と交差しているフィンガー電極32で構成される。
図2(A)は、表面電極18を、バスバー電極30、及び該バスバー電極30と交差しているフィンガー電極32からなる構成とした太陽電池素子を表面から見た平面図であり、
図2(B)は、
図2(A)の一部を拡大して示す斜視図である。
【0084】
このような表面電極18は、例えば、上述の金属ペーストのスクリーン印刷、又は電極材料のメッキ、高真空中における電子ビーム加熱による電極材料の蒸着などの手段により形成することができる。バスバー電極30とフィンガー電極32とからなる表面電極18は受光面側の電極として一般的に用いられていて周知であり、受光面側のバスバー電極及びフィンガー電極の公知の形成手段を適用することができる。
【0085】
(第一のp型拡散層の製造方法)
シリコン基板に不純物拡散層としてp型拡散層を形成する第一の製造方法は、上記n型拡散層の製造方法において、n型拡散層形成組成物をp型拡散層形成組成物に、n型拡散層をp
+型拡散層にそれぞれ読み替えて適用する方法である。
つまり、
図1(2)において、n型拡散層形成組成物を付与してn型拡散層形成組成物層11を形成し、そして熱拡散処理を行って、
図1(3)に示すn型拡散層12を形成するのと同様に、上述のp型拡散層形成組成物を付与してp型拡散層形成組成物層13を形成し、そして熱拡散処理を行って、
図1(3)に示すp
+型拡散層14を形成する。
【0086】
この製造方法では、n型拡散層形成組成物層11及びp型拡散層形成組成物層13を形成した後、熱拡散処理を行って、n型拡散層12及びp型拡散層14を形成することが好適である。この熱拡散処理により、表面ではp型シリコン基板中へドナー元素が拡散してn型拡散層12が形成され、裏面ではアクセプタ元素が拡散してp
+型拡散層14が形成される。この工程以外は上記n型拡散層の製造方法と同様の工程により、太陽電池素子が作製される。
【0087】
(第二のp型拡散層の製造方法)
第二のp型拡散層の製造方法では、オキシ塩化リン(POCl
3)を含む混合ガスによって裏面にも形成されたn型拡散層をp
+拡散層に変換する方法について説明する。
以下では、p型シリコン基板にp
+型拡散層を形成する方法を例示するが、n型シリコン基板にp型拡散層を形成する方法も同様に適用できる。
【0088】
まず、p型半導体基板であるシリコン基板にアルカリ溶液を付与してダメージ層を除去し、テクスチャー構造をエッチングにて得る。この工程は、n型拡散層の形成において、
図1(1)を参照しながら説明したものと同様である。
【0089】
次に、オキシ塩化リン(POCl
3)、窒素、酸素の混合ガス雰囲気において800℃〜900℃で数十分の処理を行って、基板上に一様にn型拡散層を形成する。このとき、オキシ塩化リン雰囲気を用いた方法では、リンの拡散は側面及び裏面にも及び、n型拡散層は表面のみならず、側面、裏面にも形成される。そのために、側面のn型拡散層を除去するために、サイドエッチング処理が施される。
【0090】
そして、p型シリコン基板の裏面すなわち受光面ではない面のn型拡散層の上に、上記p型拡散層形成組成物を塗布する。本発明では、塗布方法には制限がないが、例えば、印刷法、スピン法、刷毛塗り、スプレー法、ドクターブレード法、ロールコーター法、インクジェット法などを挙げることができる。
【0091】
前記p型拡散層形成組成物の塗布量としては特に制限は無く、例えば、ガラス粉末量として0.01g/cm
2〜100g/cm
2とすることができ、0.05g/cm
2〜10g/cm
2であることが好ましく、0.1g/m
2〜10g/m
2であることが好ましい。塗布量が多くなるほど、シリコン基板へのアクセプタ元素の拡散が容易になる傾向にある。
【0092】
尚、p型拡散層形成組成物の組成によっては、塗布後に、組成物中に含まれる溶剤を揮発させるための乾燥工程を設けることが好ましい場合がある。この場合には、80℃〜300℃程度の温度で、ホットプレートを使用する場合は1分〜10分、乾燥機などを用いる場合は10分〜30分程度で乾燥させる。この乾燥条件は、n型拡散層形成組成物の溶剤組成によって適宜選択可能であり、本発明では特に上記条件に限定されない。
【0093】
上記p型拡散層形成組成物を塗布したシリコン基板を、例えば、600℃以上で、好ましくは、800℃以上で熱拡散処理する。熱拡散処理の上限温度としては、例えば、1250℃以下であることが好ましく、1000℃以下であることがより好ましい。この熱拡散処理により、シリコン基板中へアクセプタ元素が拡散し、p
+型拡散層が形成される。熱処理には公知の連続炉、バッチ炉等が適用できる。熱拡散雰囲気は酸素の割合が5体積%未満であることが好ましい。
熱処理温度が600℃以上であると、アクセプタ元素の拡散が十分に行われ、十分なBSF効果が得られる。また1250℃以下であると、基板が劣化することを抑制できる。
尚、拡散層を形成する熱処理は、短時間熱処理(RTP)技術を用いて実施することもできる。
【0094】
熱拡散処理時間は、p型拡散層形成組成物に含まれるアクセプタ元素の含有率などに応じて適宜選択することができる。例えば、1分〜60分間とすることができ、2分〜30分間であることがより好ましい。
【0095】
そして、ガラスをエッチングにより除去した後、上記形成したn型拡散層の上に反射防止膜を形成する。この工程は、n型拡散層の形成において、
図1(4)を参照しながら説明したものと同様である。
【0096】
表面(受光面)の反射防止膜上に、表面電極用金属ペーストをスクリーン印刷法で印刷塗布乾燥させ、表面電極を形成する。この工程は、n型拡散層の形成において、
図1(5)を参照しながら説明したものと同様である。
【0097】
次いで、上記裏面のp
+型拡散層上にも裏面電極を形成する。この裏面電極の形成工程も、n型拡散層で説明したものと同様である。
【0098】
上記電極を焼成して、太陽電池素子を完成させる。この工程は、n型拡散層の形成において、
図1(6)を参照しながら説明したものと同様である。
【0099】
p型拡散層の表面には、ガラス層が形成されているため、このガラスをエッチングにより除去する。エッチングとしては、ふっ酸等の酸に浸漬する方法、苛性ソーダ等のアルカリに浸漬する方法など公知の方法が適用できる。
【0100】
(他の形態のn型拡散層およびp型拡散層の製造方法)
上記では、表面にn型拡散層、裏面にp
+型拡散層を形成し、更にそれぞれの層の上に表面電極及び裏面電極を設けた太陽電池素子について説明したが、本発明のn型拡散層形成組成物及びp型拡散層形成組成物を用いればバックコンタクト型の太陽電池素子を作製することも可能である。
【0101】
バックコンタクト型の太陽電池素子は、電極を全て裏面に設けて受光面の面積を大きくするものである。つまりバックコンタクト型の太陽電池素子では、裏面にn型拡散部位及びp
+型拡散部位の両方を形成しpn接合構造とする必要がある。本発明のn型拡散層形成組成物及びp型拡散層形成組成物は、特定の部位にn型拡散部位及びp型拡散層部位を形成することが可能であり、よってバックコンタクト型の太陽電池素子の製造に好適に適用することができる。
【0102】
具体的には、例えば
図3にその一例の概略を示すような製造工程を含む製造方法で、バックコンタクト型の太陽電池素子の製造することができる。
【0103】
p型シリコン基板1の表面にp型拡散層形成組成物及びn型拡散層形成組成物を、それぞれ部分的に塗布し、これを熱処理することで、p
+型拡散層3及びn型拡散層6を、それぞれ特定の領域に形成することができる。ペーストの塗布はインクジェットやパターン印刷法を用いることができる。
これにより
図3(a)に示すように、p型シリコン基板1のp
+型拡散層3の上にはp型拡散層形成組成物の熱処理物層2が形成され、n型拡散層6の上にはn型拡散層形成組成物の熱処理物層5が形成される。
【0104】
次いで、p
+型拡散層3の上に形成されたp型拡散層形成組成物の熱処理物層2、及び、n型拡散層6の上に形成されたn型拡散層形成組成物の熱処理物層5をエッチング等により除去する。
これにより
図3(b)に示すように、
図3(a)におけるp型拡散層形成組成物の熱処理物層2及びn型拡散層形成組成物の熱処理物層5がエッチング除去され、表面近傍にp
+型拡散層3とn型拡散層6とが選択的に形成されたp型シリコン基板1が得られる。
【0105】
次いでp型シリコン基板1の上に反射膜又は表面保護膜7を常法により形成する。このとき
図3(c1)に示すように、p
+型拡散層3とn型拡散層6とが表面に露出するように部分的に反射膜又は表面保護膜7を形成してもよい。
また
図3(c2)に示すように、p型シリコン基板1の全面に反射膜又は表面保護膜7を形成してもよい。
【0106】
次いでp
+型拡散層3及びn型拡散層6の上に、電極ペーストを選択的に塗布し熱処理することで、
図3(d)に示すようにp
+型拡散層3及びn型拡散層6の上に、電極4及び電極8をそれぞれ形成することができる。
尚、
図3(c2)に示すようにp型シリコン基板1の全面に反射膜又は表面保護膜を形成した場合は、電極ペーストとしてファイヤースルー性を有するガラス粉末を含むものを用いることで、
図3(d)に示すようにp
+型拡散層3及びn型拡散層6の上に、電極4及び電極8をそれぞれ形成することができる。
【0107】
図3に示す製造工程を含む製造方法で製造される太陽電池素子では、受光面に電極が存在しないため、太陽光を有効に取り込むことができる。
【0108】
上述したバックコンタクト型の太陽電池素子の作製では、p型シリコン基板を用いた場合について説明を行ったが、n型シリコン基板を用いても同様にして、太陽電
池素子を作製することができる。
【0109】
<太陽電池>
本発明の太陽電池は、前記太陽電池素子の少なくとも1つを含み、太陽電池素子の電極上にタブ線が配置されて構成される。太陽電池はさらに必要に応じて、タブ線を介して複数の太陽電池素子が連結され、さらに封止材で封止されて構成されていてもよい。
前記タブ線及び封止材としては特に制限されず、当業界で通常用いられているものから適宜選択することができる。
尚、本明細書において太陽電池素子とは、pn接合が形成されたシリコン基板と、シリコン基板上に形成された電極とを有するものを意味する。また太陽電池とは、太陽電池素子の電極上にタブ線が設けられ、必要に応じて複数の太陽電池素子がタブ線を介して接続されて構成され、封止樹脂等で封止された状態のものを意味する。
【実施例】
【0110】
以下、本発明の実施例をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限するものではない。尚、特に記述が無い限り、薬品は全て試薬を使用した。また「%」は断りがない限り「質量%」を意味する。
【0111】
[実施例1]
(ペーストの調製)
B
2O
3−SiO
2−RO(R:Mg,Ca,Sr,Ba)系ガラス粉末(商品名:TMX−603、東罐マテリアル・テクノロジー(株)社製、熱膨張係数:5.6×10
−6、軟化点:804℃、体積平均粒径:2.5μm)20gと、エチルセルロース0.5gと、テルピネオール10gとを、自動乳鉢混練装置を用いて混合してペースト化し、不純物拡散層形成組成物を調製した。
【0112】
(熱拡散及びエッチング工程)
ペーストをスクリーン印刷によって、スライスしたn型シリコン基板表面(156mm角)に塗布し、150℃のホットプレート上で5分間乾燥させた。続いて、窒素ガスを5L/分で流した950℃の環状炉で20分間熱拡散処理を行った。
【0113】
(反りの測定)
シリコン基板を定盤の上におき、隙間ゲージで定盤と基板との隙間を測定し、基板の反りを算出した。基板の反りは0.2mmであった。
【0114】
(ガラス層の除去)
その後ガラス層を除去するため基板を、2.5質量%HF水溶液に2分間浸漬し、流水洗浄、乾燥を行った。
【0115】
(シート抵抗の測定)
p型拡散層形成組成物を塗布した側の表面のシート抵抗を三菱化学(株)製Loresta−EP MCP−T360型低抵抗率計を用いて四探針法により測定した。ペーストを塗布した部分は55Ω/□であり、B(ほう素)が拡散しp型拡散層が形成されていた。
【0116】
[実施例2]
ガラス粉末としてB
2O
3−SiO
2−RO(R:Mg,Ca,Sr,Ba)系ガラス粉末(商品名:TMX−403、東罐マテリアル・テクノロジー(株)社製、熱膨張係数:5.9×10
−6、軟化点:800℃、体積平均粒径:2.4μm)を用いた以外は実施例1と同様にしてp型拡散層形成を行った。シリコン基板の反りの測定を実施例1と同様にして行い、結果を表1に示す。
また、p型拡散層形成組成物を塗布した側の表面のシート抵抗を実施例1と同様の方法で測定したところ65Ω/□であり、B(ほう素)が拡散しp型拡散層が形成されていた。
【0117】
[実施例3]
ガラス粉末としてB
2O
3−SiO
2−RO(R:Mg,Ca,Sr,Ba)系ガラス粉末(商品名:TMX−601、東罐マテリアル・テクノロジー(株)社製、熱膨張係数:5.9×10
−6、軟化点:827℃、体積平均粒径:2.5μm)を用いた以外は実施例1と同様にp型拡散層形成を行った。シリコン基板の反りの測定を実施例1と同様にして行い、結果を表1に示す。
また、p型拡散層形成組成物を塗布した側の表面のシート抵抗を実施例1と同様の方法で測定したところ60Ω/□であり、B(ほう素)が拡散しp型拡散層が形成されていた。
【0118】
[実施例4]
ガラス粉末としてSnO−P
2O
5系ガラス粉末(商品名:TMG−201、東罐マテリアル・テクノロジー(株)社製、熱膨張係数:9.3×10
−6、軟化点:375℃、体積平均粒径:2.0μm)を用い、シリコン基板としてp型シリコン基板を用いた以外は実施例1と同様にしてn型拡散層を形成した。シリコン基板の反りの測定を実施例1と同様にして行い、結果を表1に示す。
また、n型拡散層形成組成物を塗布した側の表面のシート抵抗を実施例1と同様の方法で測定したところ45Ω/□であり、B(ほう素)が拡散しn型拡散層が形成されていた。
【0119】
[比較例1]
B
2O
3−SiO
2−R
2O(R:Na,K,Li)系ガラス粉末(商品名:TMX−404、東罐マテリアル・テクノロジー(株)社製、熱膨張係数:10.3×10
−6、軟化点:538℃、体積平均粒径:2.8μm)を用いた以外は実施例1と同様にした。シリコン基板の反りの測定を実施例1と同様にして行ったところ、0.9mmであった。
また、p型拡散層形成組成物を塗布した側の表面のシート抵抗を実施例1と同様の方法で測定したところ180Ω/□であった。
【0120】
[比較例2]
P
2O
5−ZnO−R
2O(R:Na,K,Li)系ガラス粉末(商品名:TMX−203、東罐マテリアル・テクノロジー(株)社製、熱膨張係数:10.3×10
−6、軟化点:426℃、体積平均粒径:2.1μm)を用いた以外は実施例4と同様にした。シリコン基板の反りの測定を実施例1と同様にして行ったところ、0.8mmであった。
また、p型拡散層形成組成物を塗布した側の表面のシート抵抗を実施例1と同様の方法で測定したところ50Ω/□であった。
【0121】
【表1】
【0122】
表1に示されるように、実施例1〜4のように、軟化点が1200℃以下かつ熱膨張係数が5×10
−7以上1×10
−5/℃以下のガラス粉末を用いると、シート抵抗が低下しつつ基板の反りも抑えられることが分かる。これに対して、熱膨張係数が1×10
−5/℃を超えるガラス粉末を用いた比較例1及び2は、実施例1〜4に比べて基板の反りが2倍程度に大きくなっていることが分かる。