特許第5935337号(P5935337)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5935337液状光硬化性樹脂組成物、光学部材、画像表示用装置及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5935337
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】液状光硬化性樹脂組成物、光学部材、画像表示用装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20160602BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   C08F290/06
   G09F9/00 313
【請求項の数】12
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2012-6136(P2012-6136)
(22)【出願日】2012年1月16日
(65)【公開番号】特開2013-144760(P2013-144760A)
(43)【公開日】2013年7月25日
【審査請求日】2014年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(74)【代理人】
【識別番号】100131635
【弁理士】
【氏名又は名称】有永 俊
(72)【発明者】
【氏名】吉田 明弘
(72)【発明者】
【氏名】富山 健男
(72)【発明者】
【氏名】星 陽介
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 哲也
(72)【発明者】
【氏名】木村 陽一
【審査官】 佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−186954(JP,A)
【文献】 特開2009−026387(JP,A)
【文献】 特開2004−077887(JP,A)
【文献】 特開2012−144634(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/057958(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/00−290/14
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内にエチレン性不飽和基を有する重合体(A)及び分子内にエチレン性不飽和基を有する単量体(B)を含むエチレン性不飽和結合含有成分(1)、並びに
光重合開始剤(2)、
を含む液状光硬化性樹脂組成物であって、
更に、蛍光体(3)を含み、
光重合開始剤(2)が370〜420nmの範囲内に極大吸収波長を有するものであり、
前記極大吸収波長におけるエチレン性不飽和結合含有成分(1)の透過率が88%以上である液状光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記蛍光体(3)が、励起波長を300〜400nmの範囲内に有し、蛍光波長を350〜450nmの範囲内に有する請求項に記載の液状光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記蛍光体(3)が、ピレン、ベンゾピレン、ペリレン、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、及びクマリンからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項又はに記載の液状光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記蛍光体(3)の含有量が、前記エチレン性不飽和結合含有成分(1)100質量部に対して0.001〜2質量部である請求項のいずれか1項に記載の液状光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
分子内にエチレン性不飽和結合を有する重合体(A)が、(メタ)アクリロイル基を有するウレタン重合体である請求項1〜のいずれか1項に記載の液状光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリロイル基を有するウレタン重合体が、(i)ジオール化合物と、(ii)イソシアネート基を有する化合物とを反応させてなる化合物に、更に(iii)モノヒドロキシ(メタ)アクリレート、(iv)(メタ)アクリロイル基を有するモノカルボン酸、又は(v)(メタ)アクリロイル基を有するモノイソシアネート化合物を反応させてなる化合物である請求項5に記載の液状光硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
エチレン性不飽和結合含有成分(1)中における分子内にエチレン性不飽和結合を有する重合体(A)の含有量が、60〜95質量%である請求項1〜6のいずれか1項に記載の液状光硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
画像表示部を有する画像表示ユニットと、外周縁に沿う遮光部を有する保護パネルとの間隙、又はタッチパネルと外周縁に沿う遮光部を有する保護パネルとの間隙の充填用である請求項1〜7のいずれか1項に記載の液状光硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の液状光硬化性樹脂組成物を光照射により硬化してなる光学部材。
【請求項10】
画像表示部を有する画像表示ユニットと、
外周縁に沿う遮光部を有する保護パネルと、
前記画像表示ユニットと前記保護パネルとの間に存在する樹脂層と
を含む積層構造を有する画像表示用装置であって、
前記樹脂層は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の液状光硬化性樹脂組成物の硬化物である画像表示用装置。
【請求項11】
画像表示部を有する画像表示ユニットと、
タッチパネルと、
外周縁に沿う遮光部を有する保護パネルと、
タッチパネルと前記保護パネルとの間に存在する樹脂層と
を含む積層構造を有する画像表示用装置であって、
前記樹脂層は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の液状光硬化性樹脂組成物の硬化物である画像表示用装置。
【請求項12】
画像表示部を有する画像表示ユニット又はタッチパネルと、外周縁に沿う遮光部を有する保護パネルとを対向配置し、これらの間隙に液状光硬化性樹脂組成物を介在させて該液状光硬化性樹脂組成物を硬化させる画像表示用装置の製造方法であって、
前記間隙に請求項1〜8のいずれか1項に記載の液状光硬化性樹脂組成物を介在させ、少なくとも前記保護パネル面側から光照射を行って硬化させる画像表示用装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を照射して硬化する際に光が直接当たらない部分も硬化することが可能であり、かつ当該硬化により透明性の高い硬化物を得ることが可能な液状光硬化性樹脂組成物に関する。また、本発明は、この液状光硬化性樹脂組成物の硬化物を用いた、光学フィルム、透明基板、レンズ、接着剤、粘着剤、充填剤、光導波路、太陽電池用部材、発光ダイオード(LED)、フォトトランジスタ、フォトダイオード、固体撮像素子等の光半導体素子、画像表示用装置、照明装置等の光学部材と、これら光学部材のうちの特に画像表示用装置及びその製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化性樹脂組成物は、一般的に光(紫外線等)を照射することにより、重合開始剤から活性ラジカル又は酸などが発生し、重合性化合物が重合する。しかし、陰影部や狭隙部などの光が到達しない暗部は硬化しない。したがって、光硬化性樹脂組成物を例えば接着剤として用いる場合には、被着体が透明なものに制限されるという問題がある。また、光硬化性樹脂組成物を複雑な形状の成形型に注型し、光照射して注型品を得る場合、注型品の一部が十分に硬化されないことがあるという問題がある。
これらの問題を解決するために、暗反応硬化性樹脂組成物を用いることが行われている。なお、ここで「暗反応硬化性」とは、一度光を照射して組成物の反応硬化性を惹起すると、光照射を停止しても重合反応が維持する性質をいう。
【0003】
例えば、特許文献1には、エポキシ樹脂及びカチオン重合触媒からなる紫外線硬化型樹脂組成物に対して、予めガラス製の細管内に収容した状態で紫外線を万遍なく照射した後、注型又は塗布することが記載されている。
また、特許文献2には、不飽和二重結合を有する重合性化合物、スルフィミド化合物、アミン化合物、及びメタロセン錯体を含む暗反応硬化組成物に対して、予め光照射した後被着体に張り合わせる等して嫌気状態にすることにより、硬化反応を進行させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平4−26333号公報
【特許文献2】特開平11−50014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている暗反応性樹脂組成物は、ガラス製の細管内に収容した状態で万遍なく紫外線を照射している途中で硬化が速やかに進行してしまうと、硬化物が細管から流出できなくなることから、硬化反応を遅くする必要が生じ、硬化に長時間を要するという問題がある。
また、特許文献2に記載されている暗反応性樹脂組成物は、暗反応硬化性を付与するためにメタロセン錯体等の多くの成分を用いる必要があり、また嫌気状態にしないと硬化反応が十分に進行しないという問題もある。
更に、特許文献1,2の樹脂組成物は、注型や塗布の前工程として、予めガラス製の細管内に収容する等して樹脂組成物に万遍なく光照射する工程を実施する必要があり、煩雑である。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、メタロセン錯体を用いたり、注型や塗布の前に光照射工程を実施したりすることなく、光を照射して硬化する際に光が直接当たらない部分も硬化することが可能であり、かつ当該硬化により透明性の高い硬化物を得ることが可能な液状光硬化性樹脂組成物を提供することを目的とするものである。また、本発は、この液状光硬化性樹脂組成物を用いた光学部材、画像表示装置及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定のエチレン性不飽和結合含有成分及び光重合開始剤を含む液状光硬化性樹脂組成物であって、光重合開始剤が370〜420nmの範囲内に極大吸収波長を有するものであり、当該極大吸収波長におけるエチレン性不飽和結合含有成分(1)の透過率が90%以上であると、陰影部や狭隙部等(「遮光部」ということがある)を良好に硬化できることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[10]に関する。
[1]分子内にエチレン性不飽和基を有する重合体(A)及び分子内にエチレン性不飽和基を有する単量体(B)を含むエチレン性不飽和結合含有成分(1)、並びに光重合開始剤(2)、を含む液状光硬化性樹脂組成物であって、光重合開始剤(2)が370〜420nmの範囲内に極大吸収波長を有するものであり、前記極大吸収波長におけるエチレン性不飽和結合含有成分(1)の透過率が88%以上である液状光硬化性樹脂組成物。
[2]更に、蛍光体(3)を含む[1]に記載の液状光硬化性樹脂組成物。
[3]前記蛍光体(3)が、励起波長を300〜400nmの範囲内に有し、蛍光波長を350〜450nmの範囲内に有する[2]に記載の液状光硬化性樹脂組成物。
[4]前記蛍光体(3)が、ピレン、ベンゾピレン、ペリレン、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、及びクマリンからなる群から選ばれる少なくとも1種である[2]又は[3]に記載の液状光硬化性樹脂組成物。
[5]前記蛍光体(3)の含有量が、前記エチレン性不飽和結合含有成分(1)100質量部に対して0.001〜2質量部である[2]〜[4]のいずれかに記載の液状光硬化性樹脂組成物。
[6]分子内にエチレン性不飽和結合を有する重合体(A)が、(メタ)アクリロイル基を有するウレタン重合体である[1]〜[5]のいずれかに記載の液状光硬化性樹脂組成物。
[7]エチレン性不飽和結合含有成分(1)中における分子内にエチレン性不飽和結合を有する重合体(A)の含有量が、60〜95質量%である[1]〜[6]のいずれかに記載の液状光硬化性樹脂組成物。
[8]
画像表示部を有する画像表示ユニットと、外周縁に沿う遮光部を有する保護パネルとの間隙、又はタッチパネルと外周縁に沿う遮光部を有する保護パネルとの間隙の充填用である[1]〜[7]のいずれかに記載の液状光硬化性樹脂組成物。
[9][1]〜[8]のいずれかに記載の液状光硬化性樹脂組成物を光照射により硬化してなる光学部材。
[10]画像表示部を有する画像表示ユニットと、外周縁に沿う遮光部を有する保護パネルと、前記画像表示ユニットと前記保護パネルとの間に存在する樹脂層とを含む積層構造を有する画像表示用装置であって、前記樹脂層は、[1]〜[8]のいずれかに記載の液状光硬化性樹脂組成物の硬化物である画像表示用装置。
[11]画像表示部を有する画像表示ユニットと、タッチパネルと、外周縁に沿う遮光部を有する保護パネルと、タッチパネルと前記保護パネルとの間に存在する樹脂層とを含む積層構造を有する画像表示用装置であって、前記樹脂層は、[1]〜[8]のいずれかに記載の液状光硬化性樹脂組成物の硬化物である画像表示用装置。
[12]
画像表示部を有する画像表示ユニット又はタッチパネルと、外周縁に沿う遮光部を有する保護パネルとを対向配置し、これらの間隙に液状光硬化性樹脂組成物を介在させて該液状光硬化性樹脂組成物を硬化させる画像表示用装置の製造方法であって、前記間隙に[1]〜[8]のいずれかに記載の液状光硬化性樹脂組成物を介在させ、少なくとも前記保護パネル面側から光照射を行って硬化させる画像表示用装置の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、メタロセン錯体を用いたり、注型や塗布の前に光照射工程を実施したりすることなく、陰影部や狭隙部等(遮光部)を良好に硬化することが可能であり、かつ当該硬化により透明性の高い硬化物を得ることが可能な液状光硬化性樹脂組成物、この液状光硬化性樹脂組成物を用いた光学部材、画像表示用装置及びこの装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】液晶表示装置の一実施形態を模式的に示す側面断面図である。
図2】別の液晶表示装置の実施形態を模式的に示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本明細書における「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味する。同様に「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリロイル」とは「アクリロイル」及びそれに対応する「メタクリロイル」を意味する。
また、「液状」とは、常温(25℃)において液状であることを指す。
【0012】
[液状光硬化性樹脂組成物]
本発明の液状光硬化性樹脂組成物は、分子内にエチレン性不飽和基を有する重合体(A)及び分子内にエチレン性不飽和基を有する単量体(B)を含むエチレン性不飽和結合含有成分(1)、並びに光重合開始剤(2)、を含む液状光硬化性樹脂組成物であって、光重合開始剤(2)が370〜420nmの範囲内に極大吸収波長を有するものであり、前記極大吸収波長におけるエチレン性不飽和結合含有成分(1)の透過率が88%以上であるものである。
本発明の液状光硬化性樹脂組成物によると、照射光から陰影部や狭隙部等の遮光部に散乱する光で、遮光部を良好に硬化することができる。
そのため、本発明の液状光硬化性樹脂組成物は、画像表示部を有する画像表示ユニットと、外周縁に沿う遮光部を有する保護パネルとの間隙の充填用に好適に用いられる。
【0013】
<エチレン性不飽和結合含有成分(1)>
エチレン性不飽和結合含有成分(1)は、分子内にエチレン性不飽和結合を有する重合体(A)、及び分子内にエチレン性不飽和基を有する単量体(B)を含むものである。また、このエチレン性不飽和結合含有成分(1)は、光重合開始剤(2)の370〜420nmの範囲内に存在する極大吸収波長におけるエチレン性不飽和結合含有成分(1)の透過率が88%以上であるものである。
まず、エチレン性不飽和結合含有成分(1)の各成分について説明し、次いで、これら成分を含むエチレン性不飽和結合含有成分(1)の性質について説明する。
【0014】
(分子内にエチレン性不飽和結合を有する重合体(A))
分子内にエチレン性不飽和結合を有する重合体(A)としては、例えば、(メタ)アクリロイル基を有するポリエステルオリゴマー、(メタ)アクリロイル基を有するウレタン重合体、(メタ)アクリロイル基を有するアクリルアクリレート重合体等が挙げられる。
これらの中でも特に、液状光硬化性樹脂組成物に柔軟性が付与され、画像表示ユニットと保護パネルの貼り合わせが容易となること、並びに硬化物の強靭性及び種々の特性のバランスの観点から、(メタ)アクリロイル基を有するウレタン重合体が好ましい。
なお、本発明において、重合体とは、重量平均分子量が1,000以上であるものをいう。
【0015】
〔(メタ)アクリロイル基を有するウレタン重合体の製造方法〕
(メタ)アクリロイル基を有するウレタン重合体は、例えば、(i)ジオール化合物と、(ii)イソシアネート基を有する化合物とを反応させて得られた化合物(以下、ウレタンオリゴマーと呼ぶ場合もある)に、(iii)モノヒドロキシ(メタ)アクリレート、(iv)(メタ)アクリロイル基を有するモノカルボン酸、又は(v)(メタ)アクリロイル基を有するモノイソシアネート化合物を反応させることで得ることができる。
【0016】
≪(i)ジオール化合物≫
(i)ジオール化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブタジエンジオール、ポリイソプレンジオール、水添ポリブタジエンジオール、水添ポリイソプレンジオール等のポリオレフィンジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール、シリコーンジオール等が挙げられる。これらの中でも特に、硬化性及び密着性の観点からポリオレフィンジオールが好ましい。
【0017】
≪(ii)イソシアネート基を有する化合物≫
(ii)イソシアネート基を有する化合物としては、例えば、下記一般式(I)で表されるジイソシアネート化合物が挙げられる。
OCN−X−NCO (I)
[式(I)中、Xは2価の有機基を示す。]
上記一般式(I)中のXで示される2価の有機基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキレン基、未置換若しくはメチル基等の炭素数1〜5の低級アルキル基で置換されているフェニレン基及びナフチレン基等のアリーレン基が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、より好ましくは1〜18である。また、上記Xで示される2価の有機基としては、フェニレン基、キシリレン基、ナフチレン基、ジフェニルメタン−4,4'−ジイル基、ジフェニルスルホン−4,4'−ジイル基等の芳香環を有する基が挙げられる。また、水添ジフェニルメタン−4,4'−ジイル基も挙げられる。
【0018】
また、上記一般式(I)で表されるジイソシアネート類としては、例えば、ジフェニルメタン−2,4'−ジイソシアネート;3,2'−、3,3'−、4,2'−、4,3'−、5,2'−、5,3'−、6,2'−又は6,3'−ジメチルジフェニルメタン−2,4'−ジイソシアネート;3,2'−、3,3'−、4,2'−、4,3'−、5,2'−、5,3'−、6,2'−又は6,3'−ジエチルジフェニルメタン−2,4'−ジイソシアネート;3,2'−、3,3'−、4,2'−、4,3'−、5,2'−、5,3'−、6,2'−又は6,3'−ジメトキシジフェニルメタン−2,4'−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−3,3'−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−3,4'−ジイソシアネート等のジフェニルメタンジイソシアネート化合物及びこれらの水添物;ジフェニルエーテル−4,4'−ジイソシアネート;ベンゾフェノン−4,4'−ジイソシアネート;ジフェニルスルホン−4,4'−ジイソシアネート;トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート等のトリレンジイソシアネート;m−キシリレンジイソシアネート;p−キシリレンジイソシアネート;1,5−ナフタレンジイソシアネート;4,4'−〔2,2−ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン〕ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート;2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート;4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート;水添m−キシリレンジイソシアネート;リジンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式イソシアネートが挙げられる。これらのジイソシアネート類のうち、式(I)中のXが脂肪族基を有する基である脂肪族ジイソシアネート化合物を使用することが好ましい。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、イソシアネート基を有する化合物として、一般式(I)で表されるジイソシアネート類と共に、三官能以上のポリイソシアネートを用いてもよい。
【0019】
また、上記一般式(I)で表されるジイソシアネート類は、経日変化を避けるために必要なブロック剤で安定化したものを使用してもよい。ブロック剤としては、ヒドロキシアクリレート、メタノールを代表とするアルコール、フェノール、オキシム等が挙げられるが、特に制限はない。
【0020】
≪(i)ジオール化合物と、上記一般式(I)で表されるジイソシアネートの配合割合≫
上記(i)ジオール化合物と、上記一般式(I)で表されるジイソシアネート類とを反応させる際の配合割合は、生成するウレタンオリゴマーの数平均分子量、及び生成するウレタンオリゴマーの末端を水酸基にするかイソシアネート基にするかで適宜調整される。
【0021】
ウレタンオリゴマーの末端をイソシアネート基にする場合、イソシアネート基数と水酸基数との比率(イソシアネート基数/水酸基数)が、1.01以上になるように調整することが好ましく、数平均分子量を大きくする観点からは2未満に調整することが好ましい。このような比率にすることにより、末端がイソシアネート基であるウレタンオリゴマーができる。(メタ)アクリロイル骨格を導入するための化合物としては、例えば、後述する(iii)モノヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0022】
一方、ウレタンオリゴマーの末端を水酸基にする場合、水酸基数とイソシアネート基数との比率(水酸基数/イソシアネート基数)が、1.01以上になるように配合割合を調整することが好ましく、数平均分子量を大きくする観点からは2未満に調整することが好ましい。
ウレタンオリゴマーの末端が水酸基である場合、後述する(iv)(メタ)アクリロイル基を有するモノカルボン酸類、(v)(メタ)アクリロイル基を有するモノイソシアネート化合物等の水酸基と反応可能な化合物と、ウレタンオリゴマーの末端の水酸基とを反応させることで、(メタ)アクリロイル基を2つ有するウレタンオリゴマーを得ることができる。
【0023】
≪(iii)モノヒドロキシ(メタ)アクリレート≫
上記(iii)モノヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、上記各(メタ)アクリレートのカプロラクトン又は酸化アルキレン付加物、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリルレート、2−アクリロキシエタノール等が挙げられる。これらのモノヒドロキシ化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
≪(iv)(メタ)アクリロイル基を有するモノカルボン酸類、(v)(メタ)アクリロイル基を有するモノイソシアネート化合物≫
(iv)(メタ)アクリロイル基を有するモノカルボン酸類としては(メタ)アクリル酸等が挙げられ、(v)(メタ)アクリロイル基を有するモノイソシアネート化合物としては2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
〔(メタ)アクリロイル基を有するウレタン重合体の他の製造方法〕
また、(メタ)アクリロイル基を有するウレタン重合体は、上記以外の方法で製造することもできる。
(メタ)アクリロイル基を有するウレタン重合体の上記以外の製造方法としては、例えば、(i)ジオール化合物と、(iii)モノヒドロキシ(メタ)アクリレートを各々所定量混合し、所定の温度に昇温した後、(ii)イソシアネート基を有する化合物の所定量を所定の時間かけて、(i)成分と(iii)成分の混合物中に加えて反応させることでも得ることができる。
なお、(メタ)アクリロイル基を有するウレタン重合体は、上述の成分を用いて従来公知の方法、例えば、p−メトキシフェノール等の重合禁止剤及びジブチル錫ジラウレート等の触媒の存在下で上述の成分を反応させる方法で製造することができる。
【0026】
〔分子内にエチレン性不飽和結合を有する重合体(A)の重量平均分子量〕
分子内にエチレン性不飽和結合を有する重合体(A)の重量平均分子量は、硬化性、可とう性、作業性及び耐湿熱信頼性の観点から、1,000〜50,000であることが好ましく、2,000〜40,000であることがより好ましく、3,000〜30,000であることが特に好ましい。
なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって下記の条件で測定することができる。
(GPC条件)
測定機器:HLC−8320GPC[東ソー(株)]
分析カラム:TSKgel SuperMultipore HZ−H(3本連結)
[東ソー(株)]
ガードカラム:TSKguardcolumn SuperMP(HZ)−H[東ソー(株)]
溶離液:THF
測定温度:25℃
なお、重量平均分子量(Mw)は、分子量Miの分子がNi個存在するとして、以下のように定義される。
Mw=Σ(Nii2)/ΣNii=ΣWii
(Wi=分子量Miの分子の重量分率=Nii/ΣNii
【0027】
〔分子内にエチレン性不飽和結合を有する重合体(A)の含有量〕
分子内にエチレン性不飽和結合を有する重合体(A)の含有量は、エチレン性不飽和結合含有成分(1)の総量に対して、60〜95質量%が好ましく、75〜93質量%がより好ましく、80〜92質量%が更に好ましい。60質量%以上であると、硬化収縮性が良好になる(硬化収縮率が低減する)。95質量%以下であると、相対的に分子内にエチレン性不飽和基を有する単量体(B)の含有量が多くなり、硬化性及び密着性が向上する。
【0028】
(分子内にエチレン性不飽和基を有する単量体(B))
本発明の液状光硬化性樹脂組成物は、分子内にエチレン性不飽和基を有する単量体(B)を含有する。当該単量体(B)を含まないと、液状光硬化性組成物が硬化性及び密着性に劣るものとなる。また、単量体(B)の含有量が少ないと、硬化収縮性が良好になる。
上記観点から、エチレン性不飽和結合含有成分(1)中における分子内にエチレン性不飽和基を有する単量体(B)の含有量は、(1)成分の総量に対して、5〜40質量%が好ましく、7〜25質量%がより好ましく、8〜20質量%が更に好ましい。
なお、本発明において、単量体とは、分子量が1,000未満であるものをいう。
単量体の分子量は、組成式における構成原子の原子量から計算されるものとする。
分子内にエチレン性不飽和結合を有する単量体(B)としては、特に制限はなく、分子内に1個のエチレン性不飽和基を有する単量体(b1)、及び分子内に2個以上のエチレン性不飽和基を有する単量体(b2)が挙げられる。
【0029】
〔分子内に1個のエチレン性不飽和基を有する単量体(b1)〕
分子内に1個のエチレン性不飽和基を有する単量体(b1)としては、アクリル酸、メタクリル酸、それらの誘導体(以下、(メタ)アクリル酸系誘導体という場合もある)が好ましいものとして挙げられる。
【0030】
具体的には、分子内に1個のエチレン性不飽和基を有する単量体(b1)(以下、(b1)成分ということがある)としては、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールエチルエーテルの(メタ)アクリル酸エステル、トリエチレングリコールブチルエーテルの(メタ)アクリル酸エステル、ジプロピレングリコールメチルエーテルの(メタ)アクリル酸エステル等のポリアルキレングリコールアルキルエーテルの(メタ)アクリル酸エステル、ヘキサエチレングリコールフェニルエーテルの(メタ)アクリル酸エステル等のポリアルキレングリコールアリールエーテルの(メタ)アクリル酸エステル、ノニルフェノキシポリエチレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル等のアルキル基の炭素数が4〜12のアルキルフェノキシポリエチレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル(エチレングリコールの構造単位の平均値が1〜20)、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロデカトリエン(メタ)アクリレート等の脂環式基を有する(メタ)アクリル酸エステル、ヘプタデカフロロデシル(メタ)アクリレート等のフッ素化アルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。硬化収縮率をより低減できる観点からは、アルキル基の炭素数が4〜12のアルキルフェノキシポリエチレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル(エチレングリコールの構造単位の平均値が1〜20)が好ましい。また、耐湿熱信頼性及び塗工時の作業性の観点からは、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び(メタ)アクリロイルモルホリンが好ましい。
これらの分子内に1個のエチレン性不飽和基を有する単量体(b1)は、1種で又は2種以上併用して用いることができる。
【0031】
なお、上記の(メタ)アクリル酸系誘導体と共に又は代えて、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和結合を分子内に1個有する単量体を使用することもできるが、(メタ)アクリル酸系誘導体が好ましい。
【0032】
〔分子内に2個以上のエチレン性不飽和基を有する単量体(b2)〕
上記の分子内に1個のエチレン性不飽和基を有する単量体(b1)と共に分子内に2個以上のエチレン性不飽和結合を有する単量体(b2)(以下(b2)成分ということがある)を使用することができる。
【0033】
分子内に2個以上のエチレン性不飽和基を有する単量体(b2)を用いる場合は、硬化性、密着性及び硬化収縮性の観点から、分子内にエチレン性不飽和基を有する単量体(B)中における分子内に2個以上のエチレン性不飽和基を有する単量体(b2)の含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましく、1〜5質量%が更に好ましい。
【0034】
分子内に2個以上のエチレン性不飽和基を有する単量体(b2)としては、分子内に1個のエチレン性不飽和基を有する単量体(b1)の場合と同様に、アクリル酸、メタクリル酸、及びそれらの誘導体((メタ)アクリル酸系誘導体)が好ましい。
【0035】
このような分子内に2個以上のエチレン性不飽和結合を有する単量体(b2)としては、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】
分子内に2個以上のエチレン性不飽和結合を有する単量体(b2)としては、さらに、一般式(a)
【0037】
【化1】
【0038】
(ただし、式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、エチレン基又はプロピレン基を示し、m及びnはそれぞれ独立に、1〜5の整数を示し、m及びnがそれぞれ2以上の場合、複数のR1−Oは同一でも異なっていてもよく、複数のR2−Oは同一でも異なっていてもよい。)で示されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のジアクリレート、一般式(b)
【0039】
【化2】
【0040】
(ただし、式中、a及びbはそれぞれ1を示す)で示されるビスフェノールAのエピクロルヒドリン変性物とアクリル酸の付加エステル化物、一般式(c)
【0041】
【化3】
【0042】
(ただし、式中、R3及びR4は、それぞれ独立にエチレン基又はプロピレン基を示し、c及びdはそれぞれ独立に、1〜5の整数を示し、c及びdがそれぞれ2以上の場合、複数のR3−Oは同一でも異なっていてもよく、複数のR4−Oは同一でも異なっていてもよい。)で示されるリン酸のアルキレンオキシド付加物のジアクリレート、一般式(d)
【0043】
【化4】
【0044】
(ただし、式中、e及びfはそれぞれ1を示す)で示されるフタル酸のエピクロルヒドリン変性物とアクリル酸の付加エステル化物、一般式(e)
【0045】
【化5】
【0046】
(ただし、式中、g及びhは1を示す)で示される1,6−ヘキサンジオールのエピクロルヒドリン変性物とアクリル酸の付加エステル化物(アクリル基を一分子中に2個有するもの)、一般式(f)
【0047】
【化6】
【0048】
(ただし、式中、R5はエチレン基又はプロピレン基を示し、3個のiはそれぞれ独立に、1〜5の整数を示し、iが2以上の場合、複数のR5−Oは同一でも異なっていてもよい。)で示されるリン酸のアルキレンオキシド付加物のトリアクリレート、一般式(g)
【0049】
【化7】
【0050】
(ただし、式中、R6、R7及びR8は、それぞれ独立にエチレン基又はプロピレン基を示し、j、k及びpはそれぞれ独立に、1〜3の整数を示し、j、k及びpがそれぞれ2以上の場合、複数のR6−O、R7−O及びR8−Oはそれぞれにおいて同一でも異なっていてもよい。)で示されるトリメチロールプロパンのアルキレンオキシド付加物のトリアクリレートなどが挙げられる。
なお、上記の(メタ)アクリル酸系誘導体と共に又は代えて、それ以外のエチレン性不飽和結合を分子内に2個以上有する単量体(ジビニルベンゼン等)を使用することもできるが、(メタ)アクリル酸系誘導体が好ましい。
これらの分子内に2個以上のエチレン性不飽和結合を有する単量体(b2)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
(エチレン性不飽和結合含有成分(1)の透過率)
エチレン性不飽和結合含有成分(1)は、光重合開始剤(2)の370〜420nmの範囲内に存在する極大吸収波長の透過率が、88%以上である。88%未満であると、照射光から陰影部や狭隙部等に漏れる光で、遮光部を良好に硬化することができない。この観点から、透過率は90%以上がより好ましく、91%以上が更に好ましい。この透過率は、エチレン性不飽和結合含有成分(1)中の各成分の種類及び含有量を変えることにより適宜調整することができる。
ここで、「透過率」とは、日本工業規格Z8722に記載された方法に基づいて測定した分光透過率値である。
次に、エチレン性不飽和結合含有成分(1)の透過率の調整方法について説明する。PETフィルムの上に、厚さ100μmのスペーサーを配置し、エチレン性不飽和結合含有成分(1)を流し込んだ後、PETフィルムで覆い、UV露光後、PETフィルムを剥がして、厚さ100μmのフィルムを得た。このフィルムを試料として、分光高度計(日立製作所製、U−3310型)で300〜400nmの範囲の透過率を測定した。
【0052】
(エチレン性不飽和結合含有成分(1)の含有量)
エチレン性不飽和結合含有成分(1)の含有量は、エチレン性不飽和結合含有成分(1)と光重合開始剤(2)との総量に対して、95〜99.99質量%であることが好ましく、97〜99.99.95質量%であることがより好ましく、98〜99.9質量%であることが更に好ましい。
【0053】
(エチレン性不飽和結合含有成分(1)の平均官能基数)
エチレン性不飽和結合含有成分(1)(以下、(1)成分ということがある)における平均官能基数は、液状光硬化性樹脂組成物の粘度及び硬化収縮率をより低減できる観点から、0.5〜2であることが好ましく、0.5〜1.5であることがより好ましく、0.5〜1であることが更に好ましい。なお、「官能基数」とは(1)成分の1分子中のエチレン性不飽和結合の数を示し、「平均官能基数」とは、(1)成分全体における分子当りのエチレン性不飽和結合数の平均値を示す。平均官能基数は、(1)成分を調製するときの各構成成分のモル数から算出できる。また、(1)成分の1H−NMRの積分値からも平均官能基数を算出することができる。
【0054】
<光重合開始剤(2)>
光重合開始剤(2)としては、370〜420nmの範囲内に極大吸収波長を有するものが用いられる。極大吸収波長が370〜420nmの範囲外にあると、照射光から陰影部や狭隙部等に散乱する光で、遮光部を良好に硬化することができない。
具体的には、光重合開始剤(2)としては、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド(極大吸収波長:390nm)、2,4,6−トリメチルベンゾイルージフェニル−フォスフィンオキサイド(極大吸収波長:380nm)、ビス(2,4、6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(極大吸収波長:380nm)等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用しても良い。
【0055】
光重合開始剤(2)には、極大吸収波長が370nm未満の開始剤を併用しても良い。併用することにより、露光部分の硬化が十分進行するという効果を有する。
具体的には、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン(極大吸収波長:330nm)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(極大吸収波長:340nm)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(極大吸収波長:320nm)、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルーベンジル)−1−(4−モリフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン(極大吸収波長:330nm)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(極大吸収波長:330nm)、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(極大吸収波長:340nm)、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]―,1−(0−アセチルオキシム)、オキシ−フェニル−アセチックアッシド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]―エチルエステルとオキシ−フェニル−アセチックアッシド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]―エチルエステルの混合物(極大吸収波長:330nm)、フェニルグリオキシリックアッシドメチルエステル(極大吸収波長:340nm)等が挙げられる。これらは1種または2種以上を併用しても良い。
【0056】
本発明において光重合開始剤(2)の含有量は、(1)成分100質量部に対して0.01〜5質量%が好ましく、0.05〜3質量%がより好ましく、0.1〜2質量%が特に好ましい。濃度が5質量%以上であると、硬化物の着色の要因となる。また、0.01質量%以下であると、遮光部が十分硬化されない。
【0057】
<蛍光体(3)>
蛍光体(3)としては、励起波長が300〜400nmにあり、蛍光波長が350〜450nmにあることが好ましいものとして挙げられる。
その理由は次のとおりであると推測される。すなわち、本発明における光重合開始剤(B)は370〜420nmの範囲内に極大吸収波長を有するため、300〜400nmの範囲内の波長は充分に吸収することができない。これに対し、蛍光体(C)は、このような光硬化反応に用いられる紫外光を吸収し、当該極大吸収波長に近い波長(350〜450nm)の蛍光を放射するため、蛍光を陰影部に存在する光重合開始剤(B)が良好に吸収する。これにより、光重合開始剤(B)の重合開始作用が十分に発現され、遮光部が十分硬化されるものと考えられる。
【0058】
蛍光体(3)としては、具体的には、ピレン、ベンゾピレン、ペリレン、アントラセン、ジメチルアントラセン、ナフタレン、ナフタレンカルボン酸、フェナントレン、クマリン等が挙げられる。これらの中では、黄着色のないピレン、ベンゾピレン、ペリレン、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、クマリンが好ましい。また、クマリンの中でも、透明性をより向上できる観点から、7−ヒドロキシ-4-メチルクマリン、4−ヒドロキシ-7-メチルクマリン等のヒドロキシメチルクマリンが好ましい。
蛍光体(3)を用いる場合の含有量は、遮光部の硬化性及び透明性の向上の観点から、(1)成分100質量部に対して、0.001〜2質量%が好ましく、0.005〜1質量%がより好ましく、0.01〜0.5質量%が特に好ましい。
【0059】
<その他の成分>
本発明の液状光硬化性樹脂組成物は、必要に応じて様々な添加剤を含有しても良く、例えば、シランカップリング剤等の密着性向上剤、ヒンダードアミン系の光安定剤やフェノール系やリン系の酸化防止剤、硬化促進剤、チオール化合物等の連鎖移動剤、染料、充填剤、顔料、チキソトロピー付与剤、可塑剤、難燃剤、離型剤、界面活性剤、滑剤、帯電防止剤、各種フィラー、重金属不活性化剤などの添加剤を加えることができる。これらは、一種または二種以上を併用しても良い。
【0060】
また、本発明の液状光硬化性樹脂組成物においては、耐湿熱信頼性、及び硬化物中の気泡発生を抑制する観点から、有機溶媒(溶剤)は実質的に含まない方が好ましい。「実質的に」とは、本発明の液状光硬化性樹脂組成物の光硬化後の特性を著しく低下させない程度で、有機溶媒が液状光硬化性樹脂組成物中に微量(1質量%以下)に存在してもよいことを意味するが、好ましくは含有しないことである。
液状光硬化性樹脂組成物が実質的に有機溶媒を含有しない場合、液状光硬化性樹脂組成物の粘度(25℃)は、10〜50,000mPa・sであることが好ましく、100〜10,000mPa・sであることがより好ましく、500〜5,000mPa・sであることが特に好ましい。粘度は、E型粘度計(東機産業製RE−80L)より、3°cone rotorを用いて0.5rpmで測定した値とする。
【0061】
[光学部材]
本発明の光学部材は、上記の液状光硬化性樹脂組成物を光照射により硬化してなるものである。
この光学部材としては、例えば、光学フィルム、光学シート、透明基板、レンズ、接着
剤、光導波路、太陽電池用部材、発光ダイオード(LED)、フォトトランジスタ、フォ
トダイオード、固体撮像素子等の光半導体素子、照明装置、画像表示用装置等が挙げられ
る。特に、画像表示用装置に用いることが好適である。
【0062】
[画像表示用装置]
本発明の画像表示用装置は、画像表示部を有する画像表示ユニットと、外周縁に沿う遮光部を有する保護パネルと、前記画像表示ユニットと前記保護パネルとの間に存在する樹脂層とを含む積層構造を有する画像表示用装置であって、前記樹脂層が、上記の液状光硬化性樹脂組成物の硬化物であるものである。
また、本発明の画像表示用装置は、画像表示部を有する画像表示ユニットと、タッチパネルと、外周縁に沿う遮光部を有する保護パネルと、前記タッチパネルと前記保護パネルとの間に存在する樹脂層とを含む積層構造を有する画像表示用装置であって、前記樹脂層が、上記の液状光硬化性樹脂組成物の硬化物であるものである。
この画像表示用装置の製造方法は、画像表示部を有する画像表示ユニット又はタッチパネルと、外周縁に沿う遮光部を有する保護パネルとを対向配置し、これらの間隙に液状光硬化性樹脂組成物を介在させて該液状光硬化性樹脂組成物を硬化させる画像表示用装置の製造方法であって、上記の液状光硬化性樹脂組成物を介在させ、少なくとも前記保護パネル面側から光照射を行って硬化させるものである。
次に、画像表示用装置の一例である液晶表示装置について説明する。
【0063】
<液晶表示装置>
図1は、液晶表示装置の一実施形態を模式的に示す側面断面図である。図1に示す液晶表示装置は、バックライトシステム50、偏光板22、液晶表示セル10及び偏光板20がこの順で積層されてなる画像表示ユニット1と、液晶表示装置の視認側となる偏光板20の上面に設けられた樹脂層32と、その表面に設けられた透明保護基板(保護パネル)40とから構成される。樹脂層32は、本実施形態の液状光硬化性樹脂組成物の硬化体から構成される。
【0064】
図2は、液晶表示装置の一実施形態である、タッチパネルを搭載した液晶表示装置を模式的に示す側面断面図である。図2に示す液晶表示装置は、バックライトシステム50、偏光板22、液晶表示セル10及び偏光板20がこの順で積層されてなる画像表示ユニット1と、液晶表示装置の視認側となる偏光板20の上面に設けられた樹脂層32と、樹脂層32の上面に設けられたタッチパネル30と、タッチパネル30の上面に設けられた樹脂層31と、その表面に設けられた透明保護基板40とから構成される。樹脂層31,32は、本実施形態の液状光硬化性樹脂組成物の硬化体から構成される。
なお、図2の液晶表示装置においては、画像表示ユニット1とタッチパネル30との間、及びタッチパネル30と透明保護基板40との間の両方に樹脂層が介在しているが、樹脂層はこれらの少なくとも一方に介在していればよい。また、タッチパネルがオンセルとなる場合は、タッチパネルと液晶表示セルが一体化される。その具体例としては、図1の液晶表示装置の液晶表示セル10が、オンセルで置き換えられたものが挙げられる。
図2おいて、外周縁に沿う遮光部を有する保護パネルを用いる場合、少なくとも樹脂層31は本発明の液状光硬化性樹脂組成物を用いることが特に好適である。
前記樹脂層31又は32の光透過率は、可視光領域(波長:380〜780nm)の光線に対して90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
【0065】
図1及び2に示す液晶表示装置によれば、本実施形態の液状光硬化性樹脂組成物の硬化体を樹脂層31又は32として備えるので、耐衝撃性を有し、二重写りがなく鮮明でコントラストの高い画像が得られる。
【0066】
液晶表示セル10は、当技術分野で周知の液晶材料から構成されるものを使用することができる。また、液晶材料の制御方法によって、TN(Twisted Nematic)方式、STN(Super−twisted nematic)方式、VA(Virtical Alignment)方式、IPS(In−Place−Switching)方式等に分類されるが、いずれの制御方法を使用した液晶表示セルであってもよい。
偏光板20及び22としては、当技術分野で一般的な偏光板を使用することができる。それら偏光板の表面は、反射防止、防汚、ハードコート等の処理がなされていてもよい。そのような表面処理は、偏光板の片面に対して、又はその両面に対して実施されていてよい。
タッチパネル30としては、当技術分野で一般的に用いられているものを使用することができる。
樹脂層31又は32は、例えば0.02mm〜3mmの厚さで形成することができる。特に、本実施形態の液状光硬化性樹脂組成物においては厚膜に対して有効であり、0.1mm以上の樹脂層31又は32を形成する場合に好適に用いることができる。
透明保護基板40としては、一般的な光学用透明基板を使用することができる。その具体例としては、ガラス板、石英板等の無機物の板、アクリル樹脂板、ポリカーボネート板等の樹脂板、厚手のポリエステルシート等の樹脂シートが挙げられる。高い表面硬度が必要とされる場合にはガラス、アクリル樹脂等の板が好ましく、ガラス板がより好ましい。
これらの透明保護基板の表面には、反射防止、防汚、ハードコート等の処理がなされていてもよい。そのような表面処理は、透明保護基板の片面に対して、又は両面に対して実施されていてよい。透明保護基板は、その複数枚を組み合わせて使用することもできる。
バックライトシステム50は、代表的には反射板等の反射手段とランプ等の照明手段とから構成される。
【0067】
上述の図1の液晶表示装置は、画像表示ユニット1と透明保護基板(保護パネル)40との間に上記本実施形態の液状光硬化性樹脂組成物を介在させる工程と、上記保護パネル40面側から光照射して上記液状光硬化性樹脂組成物を硬化させ、樹脂層32を形成する工程と、を含む製造方法により製造することができる。
画像表示ユニット1と保護パネル40との間に、液状光硬化性樹脂組成物を介在させる方法としては、例えばディスペンサーを用いて、画像表示ユニット1又は保護パネル40上に液状光硬化性樹脂組成物を塗布した後に真空(減圧)又は大気圧で貼合する方法や、一定の間隔を開けて配置された画像表示ユニット1及び保護パネル40の間に液状光硬化性樹脂組成物を注型する方法が挙げられる。なお、液状光硬化性樹脂組成物を注型する際には、画像表示ユニット1及び保護パネル40の周囲にダム(液状光硬化性樹脂組成物の流出を防止するための枠体)を形成してもよい。
【0068】
上述の図2の液晶表示装置は、画像表示ユニット1と前記タッチパネル30との間、及び/又は、前記タッチパネル30と前記保護パネル40との間に上記本実施形態の液状光硬化性樹脂組成物を介在させる工程と、上記保護パネル40面側から光照射して上記液状光硬化性樹脂組成物を硬化させ、樹脂層32,31を形成する工程と、を含む製造方法により製造することができる。液状光硬化性樹脂組成物を介在させる方法としては、上述の図1の液晶表示装置の場合と同様の方法が挙げられる。
【0069】
上記光照射は、例えば、紫外線照射装置を用いて、露光量500mJ/cm2〜5000mJ/cm2の条件で行うことができる。なお露光量とは、オーク社製 紫外線照度計UV−M02(受光器:UV−36)等で測定できる照度に照射時間(秒)を掛けた値をいう。また、紫外線照射用の光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、LEDランプ等であってよいが、高圧水銀灯、又はメタルハライドランプを使用することが好ましい。
なお、光照射の際は、保護パネル40面側からの照射と、側面から照射を併用してもよい。
また、光照射と同時に液状光硬化性樹脂組成物を含む積層体を加熱する等して、硬化を促進させることもできる。
【0070】
以上、本実施形態の液状光硬化性樹脂組成物を用いることにより製造することが可能な液晶表示装置について説明したが、本実施形態の液状光硬化性樹脂組成物を用いることにより製造することが可能な画像表示用装置はこれに限られず、プラズマディスプレイ(PDP)、陰極線管(CRT)、電界放出ディスプレイ(FED)、有機ELディスプレイ、3Dディスプレイ、電子ペーパー等に適用することも可能である。
【実施例】
【0071】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲を限定するものではない。
<原料等>
なお、原料等としては、次のものを用いた。
(1) 分子内にエチレン性不飽和結合を有する重合体(A)
(ウレタンアクリレート1)
ウレタンアクリレート1は以下のように合成した。
冷却管、温度計、攪拌装置、滴下漏斗及び空気注入管を備える反応容器にポリプロピレングリコール(分子量2000)1225.4g(0.613mol)、不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε−カプロラクトン(プラクセルFA2D:ダイセル化学工業株式会社製、分子量:344)68.8g(0.2mol)、ブタノール52.3g(0.71mol)、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.5g、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.3gを入れた。空気を流しながら70℃に昇温後、70〜75℃で攪拌しつつTMDI(2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートと2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの混合物、混合比:4:6(質量比))209.8g(1mol)を2時間かけて均一滴下し、反応を行った。
滴下終了後、5時間反応させたところで、IR測定によりイソシアネートが消失したことを確認して反応を終了し、ポリプロピレングリコールとTMDIを繰り返し単位として有し、エチレン性不飽和結合を有するポリウレタンアクリレート(重量平均分子量7,000、平均官能基数=0.5(仕込み量からの計算値))を得た。
【0072】
(ウレタンアクリレート2)
ウレタンアクリレート2は以下のように合成した。
冷却管、温度計、攪拌装置、滴下漏斗及び空気注入管を備える反応容器にポリプロピレングリコール(分子量4000)2450.8g(0.613mol)、不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε−カプロラクトン(プラクセルFA2D:ダイセル化学工業株式会社製、分子量:344)68.8g(0.2mol)、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.5g、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.3gをとった。空気を流しながら70℃に昇温後、70〜75℃で攪拌しつつTMDI(2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートと2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの混合物、混合比:4:6(質量比))209.8g(1mol)を2時間かけて均一滴下し、反応を行った。
滴下終了後、5時間反応させたところで、IR測定によりイソシアネートが消失したことを確認して反応を終了し、ポリプロピレングリコールとTMDIを繰り返し単位として有し、エチレン性不飽和結合を有するポリウレタンアクリレート(重量平均分子量12,000、平均官能基数=0.5(計算値))を得た。
【0073】
(2) 分子内に1個のエチレン性不飽和基を有する単量体(b1)
FA−314A:日立化成工業株式会社製(ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、分子量:452(エチレングリコール鎖の数を4として計算した)
アクリロイルモルホリン:興人製、分子量:141
4−ヒドロキシブチルアクリレート:日立化成工業株式会社製、分子量:144
【0074】
(3) 光重合開始剤(2)
次の光重合開始剤は、すべてBASF社製である。尚、各重合開始剤の極大吸収波長は、カタログに記載の値である。
イルガキュア−184(商品名);1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(極大吸収波長330nm)(以下、i−184と称することがある)
イルガキュア−1870;ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド(極大吸収波長390nm)とi−184(極大吸収波長330nm)の混合物(以下、i−1870と称することがある)
イルガキュア−4265;2,4,6−トリメチルベンゾイルージフェニル−フォスフィンオキサイド(極大吸収波長380nm)と後述のD−1173(極大吸収波長330nm)の混合物(以下、i−4265と称することがある)
ダロキュア−TPO;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(極大吸収波長380nm)(以下、D−TPOと称することがある)
イルガキュア−819; ビス(2,4、6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(極大吸収波長380nm)(以下、i−819と称することがある)
イルガキュア−2959;1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(極大吸収波長280nm)(以下、i−2959と称することがある)
イルガキュア−907;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(極大吸収波長300nm)(以下、i−907と称することがある)
イルガキュア−369;2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(極大吸収波長320nm)(以下、i−369と称することがある)
イルガキュア−379;2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モリフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン(極大吸収波長320nm)(以下、i−379と称することがある)
ダロキュアー1173;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(極大吸収波長320nm)(以下、D−1173と称することがある)
イルガキュア−651;2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(極大吸収波長340nm)(以下、i−651と称することがある)
イルガキュア−OXE02;エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]―,1−(0−アセチルオキシム)(極大吸収波長340nm)(以下、i−OXE02と称することがある)
イルガキュア−754;オキシーフェニルーアセチック アッシド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]―エチルエステルとオキシ−フェニル−アセチック アッシド2−[2−ヒドロキシーエトキシ]―エチルエステルの混合物(極大吸収波長345nm)(以下、i−754と称することがある)
ダロキュアーMBF;フェニルグリオキシリックアッシドメチルエステル(極大吸収波長350nm)(以下、D−MBFと称することがある)
【0075】
(4) 蛍光体(3)
7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン:和光純薬株式会社製
アントラセン:和光純薬株式会社製
なお、各蛍光体(3)の励起波長及び蛍光波長は、表1,2に示すとおりである。
【0076】
<実施例1>
重合体(A)としてウレタンアクリレート1(32.24g)及びウレタンアクリレート2(57.31g)、単量体(b1)としてFA−314(3.98g)、アクリロイルモルホリン(2.49g)及び4−ヒドロキシブチルアクリレート(3.48g)、光重合開始剤(2)としてi−1870(0.25g)、蛍光体(3)として7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン(0.01g)をスクリュー管に加え、自公転ミキサで攪拌し、液状光硬化性樹脂組成物を得た。
【0077】
<実施例2〜10>
実施例2〜10では、光開始剤(2)及び蛍光体(3)を表1のように変えて調整した以外は、実施例1と同じ方法で液状光硬化性樹脂組成物を得た。
【0078】
<比較例1〜11>
比較例1〜11では、配合量を表1のように変えて調整した以外は、実施例1と同じ方法で液状光硬化性樹脂組成物を得た。
【0079】
【表1】

*表中の数値単位は全て質量部とする。
【0080】
【表2】
*表中の数値単位は全て質量部とする。
【0081】
<評価>
(透過率)
エチレン性不飽和結合含有成分(1)の透過率(分光透過率値)を、日本工業規格Z8722に記載された方法に基づいて測定した。具体的には、PETフィルムの上に、厚さ100μmのスペーサーを配置し、エチレン性不飽和結合含有成分(1)を流し込んだ後、PETフィルムで覆い、UV露光後、PETフィルムを剥がして、厚さ100μmのフィルムを得た。このフィルムを試料として、分光高度計(日立製作所製、U−3310型)で300〜400nmの範囲の透過率を測定した。
【0082】
(陰影部の硬化の評価)
上記実施例及び比較例で得られた液状光硬化性樹脂組成物の硬化性は、以下の方法で評価した。すなわち、10×10cmのガラス上に、3cm×3cmの穴の開いた厚さ100μmのスペーサを敷き、この穴内に光樹脂組成物を充填したあとに、10cm×10cmのガラスで上からカバーした。次に3cm×3cmの樹脂部分の半分を黒い布で覆い、この樹脂部分の半分を陰影部とし、他の半分を光照射部とした。次に、露光機(キタムラ製縦型露光機、ハイパワーメタルハライドランプ)を用いて、1000mJ/cm2エネルギー量で光硬化した。その後、黒い布及びカバーガラスを外し、硬化したサンプルを取り出した。サンプルのうち、陰影部と光照射部との境界よりも陰影部側に硬化している長さ(mm)を「硬化長」として測定した。
実施例1〜10で得られた液状光硬化性樹脂組成物は、陰影部の硬化性に優れていた。また、全光線透過率が高く、透明性にも優れていた。一方、比較例1〜11で得られた液状光硬化性樹脂組成物は、陰影部が硬化しなかった。
【符号の説明】
【0083】
1 画像表示ユニット
10 液晶表示セル
20,22 偏光板
30 タッチパネル
31,32 樹脂層
40 透明保護基板(保護パネル)
50 バックライトシステム
図1
図2