特許第5935449号(P5935449)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5935449活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、ガラス用コーティング剤、および該コーティング剤の硬化塗膜を有するガラス材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5935449
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、ガラス用コーティング剤、および該コーティング剤の硬化塗膜を有するガラス材
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/32 20060101AFI20160602BHJP
   C08G 77/442 20060101ALI20160602BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20160602BHJP
   C09D 183/10 20060101ALI20160602BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20160602BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20160602BHJP
   C09D 183/06 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   C08G59/32
   C08G77/442
   C09D4/02
   C09D183/10
   C09D183/04
   C09D5/00 Z
   C09D183/06
【請求項の数】3
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-80359(P2012-80359)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-209507(P2013-209507A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2015年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】村川 卓
(72)【発明者】
【氏名】清家 奈緒之
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/008415(WO,A1)
【文献】 特開2012−007147(JP,A)
【文献】 特開2011−246582(JP,A)
【文献】 特開2003−040650(JP,A)
【文献】 特開2002−167237(JP,A)
【文献】 特開2001−207122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00−59/72
C08G 77/00−77/62
C09D 4/00−4/06
5/00−5/46
183/00−183/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)および/または下記一般式(2)で表される構造単位と、シラノール基および/または加水分解性シリル基と、エポキシ基とを有するポリシロキサンセグメント(a1)と、ビニル系重合体セグメント(a2)とが下記一般式(3)で表される結合により結合された複合樹脂(A)100質量部と、加水分解性シリル基を有するポリシロキサン(B)5〜200質量部と、加水分解性シリル基を有する単量体(C)5〜200質量部と、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレート(D)10〜500質量部とを含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であって、前記ビニル系重合体セグメント(a2)が、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリ(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、2−トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリクロロシランからなる群より選ばれる1以上の単量体を必須原料とした共重合体であり、かつ、その数平均分子量が1,000〜50,000の範囲であり、前記加水分解性シリル基を有する単量体(C)が、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリクロロシランからなる群より選ばれる1以上の単量体であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【化1】
【化2】
(一般式(1)および(2)中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数3〜8のシクロアルキル基、アリール基、または炭素原子数7〜12のアラルキル基である。)
【化3】
(一般式(3)中、炭素原子は前記ビニル系重合体セグメント(a2)の一部分を構成し、酸素原子のみに結合したケイ素原子は、前記ポリシロキサンセグメント(a1)の一部分を構成する。)

【請求項2】
請求項1記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を含有することを特徴とするガラス用コーティング剤。
【請求項3】
請求項2記載のガラス用コーティング剤からなる硬化塗膜を有することを特徴とするガラス材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスに密着性が高いコーティング剤として用いることができる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、ガラス用コーティング剤、および該コーティング剤の硬化塗膜を有するガラス材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、耐久性が要求される材料の表面にコーティング剤を塗布、硬化させた塗膜により、耐擦り傷性、耐酸性、耐アルカリ性、耐溶剤性等の耐久性を付与することが行われている。このようなコーティング剤に用いることのできる材料として、ポリシロキサンセグメントとビニル系重合体セグメントを有する複合樹脂、多官能アクリレートおよび光重合開始剤を含有する紫外線硬化性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この紫外線硬化性樹脂組成物は、被塗装物に耐擦り傷性、耐酸性、耐アルカリ性、耐溶剤性等の高い耐久性を付与できるが、被塗装物がガラス基材の場合、硬化塗膜の密着性が低く、剥がれやすいという問題があった。
【0003】
そこで、ガラス基材に対して高い密着性を有し、耐擦り傷性、耐酸性、耐アルカリ性、耐溶剤性等の高い耐久性を付与できる材料が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−328354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ガラス基材に対して高い密着性を有するコーティング剤として用いることができる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、ガラス用コーティング剤、および該コーティング剤の硬化塗膜を有するガラス材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記の課題を解決するため鋭意研究した結果、特定のシロキサン構造単位、シラノール基および/または加水分解性シリル基およびエポキシ基を有するポリシロキサンセグメントとビニル系重合体セグメントとが結合された複合樹脂と、加水分解性シリル基を有するポリシロキサンと、加水分解性シリル基を有する単量体と、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレートと、光重合開始剤とを含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、ガラス基材に対して高い密着性を有することを見出し、発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)および/または下記一般式(2)で表される構造単位と、シラノール基および/または加水分解性シリル基と、エポキシ基とを有するポリシロキサンセグメント(a1)と、ビニル系重合体セグメント(a2)とが下記一般式(3)で表される結合により結合された複合樹脂(A)100質量部と、加水分解性シリル基を有するポリシロキサン(B)5〜200質量部と、加水分解性シリル基を有する単量体(C)5〜200質量部と、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレート(D)10〜500質量部とを含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に関する。また、該組成物を用いたガラス用コーティング剤および該コーティング剤の硬化塗膜を有するガラス材に関する。
【0008】
【化1】
【0009】
【化2】
(一般式(1)および(2)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数3〜8のシクロアルキル基、アリール基、または炭素原子数7〜12のアラルキル基である。)
【0010】
【化3】
(一般式(3)中、炭素原子は前記ビニル系重合体セグメント(a2)の一部分を構成し、酸素原子のみに結合したケイ素原子は、前記ポリシロキサンセグメント(a1)の一部分を構成する。)
【発明の効果】
【0011】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、ガラス材に対して高い密着性を有することから、ガラス材の表面に耐擦り傷性、耐酸性、耐アルカリ性、耐溶剤性等の耐久性を付与するガラス用コーティング剤として好適に用いることができる。また、このガラス用コーティング剤は、食器、窓ガラス、レンズ、鏡、各種ディスプレイ(液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等)の画面に用いるガラス板、蛍光灯、白熱電球、実験ガラス器具等のガラス材に適用できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、下記一般式(1)および/または下記一般式(2)で表される構造単位と、シラノール基および/または加水分解性シリル基と、エポキシ基とを有するポリシロキサンセグメント(a1)と、ビニル系重合体セグメント(a2)とが下記一般式(3)で表される結合により結合された複合樹脂(A)100質量部と、加水分解性シリル基を有するポリシロキサン(B)5〜200質量部と、加水分解性シリル基を有する単量体(C)5〜200質量部と、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレート(D)10〜500質量部とを含有するものである。
【0013】
【化4】
【0014】
【化5】
(一般式(1)および(2)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数3〜8のシクロアルキル基、アリール基、または炭素原子数7〜12のアラルキル基である。)
【0015】
【化6】
(一般式(3)中、炭素原子は前記ビニル系重合体セグメント(a2)の一部分を構成し、酸素原子のみに結合したケイ素原子は、前記ポリシロキサンセグメント(a1)の一部分を構成する。)
【0016】
まず、本発明で用いる複合樹脂(A)について説明する。前記複合樹脂(A)は、前記一般式(1)および/または前記一般式(2)で表される構造単位と、シラノール基および/または加水分解性シリル基と、エポキシ基とを有するポリシロキサンセグメント(a1)と、ビニル系重合体セグメント(a2)とが、前記一般式(3)で表される結合により結合されたものである。
【0017】
後述するポリシロキサンセグメント(a1)が有するシラノール基および/または加水分解性シリル基と、後述するビニル系重合体セグメント(a2)が有するシラノール基および/または加水分解性シリル基とが脱水縮合反応して、前記一般式(3)で表される結合が生じる。従って前記一般式(3)中、炭素原子は前記ビニル系重合体セグメント(a2)の一部分を構成し、酸素原子のみに結合したケイ素原子は、前記ポリシロキサンセグメント(a1)の一部分を構成する。
【0018】
複合樹脂(A)の形態としては、例えば、前記ポリシロキサンセグメント(a1)が前記重合体セグメント(a2)の側鎖として化学的に結合したグラフト構造を有する複合樹脂、前記重合体セグメント(a2)と前記ポリシロキサンセグメント(a1)とが化学的に結合したブロック構造を有する複合樹脂等が挙げられる。
【0019】
前記ポリシロキサンセグメント(a1)は、前記一般式(1)および/または前記一般式(2)で表される構造単位と、シラノール基および/または加水分解性シリル基と、エポキシ基とを有するセグメントである。
【0020】
具体的には、前記一般式(1)および(2)におけるR、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子3〜8のシクロアルキル基、アリール基、または炭素原子7〜12のアラルキル基である。
【0021】
前記炭素原子数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基等が挙げられる。
【0022】
前記炭素原子数3〜8のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0023】
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−ビニルフェニル基、3−イソプロピルフェニル基等が挙げられる。
【0024】
前記炭素原子数7〜12のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0025】
前記複合樹脂(A)中の前記ポリシロキサンセグメント(a1)は、エポキシ基を有し、そのエポキシ当量は、前記複合樹脂(A)全体に対して、900〜17,000g/eq.の範囲であることが好ましい。さらに、2,500〜6,000g/eq.の範囲であると、長期保存安定性と、硬化性樹脂組成物としたときの常温硬化性に優れるため、特に好ましい。
【0026】
ポリシロキサンセグメント(a1)にエポキシ基を導入するには、後述する複合樹脂(A)の製造時に、エポキシ基を有するシラン化合物を使用すればよい。前記シラン化合物としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロペニルオキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイミノオキシシラン等のシラン化合物;前記シラン化合物とグリシドールとの付加物;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するシラン化合物とジエポキシ化合物との付加物などが挙げられる。これらは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。また、これらの中でも、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロペニルオキシシランは、硬化性に優れることから好ましい。
【0027】
本発明においてシラノール基とは、ケイ素原子に直接結合した水酸基を有するケイ素含有基である。該シラノール基は具体的には、前記一般式(1)および/または前記一般式(2)で表される構造単位の酸素原子が水素原子と結合して生じたシラノール基であることが好ましい。
【0028】
また本発明において加水分解性シリル基とは、ケイ素原子に直接結合した加水分解性基を有するケイ素含有基であり、具体的には、例えば、一般式(4)で表される基が挙げられる。
【0029】
【化7】
【0030】
(一般式(4)中、Rはアルキル基、アリール基、またはアラルキル基の1価の有機基であり、Rはハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基、フェノキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、イミノオキシ基、またはアルケニルオキシ基の加水分解性基である。また、Xは0〜2の整数である。)
【0031】
前記Rにおけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基等が挙げられる。
【0032】
前記Rにおけるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−ビニルフェニル基、3−イソプロピルフェニル基等が挙げられる。
【0033】
前記Rにおけるアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0034】
前記Rにおけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0035】
前記Rにおけるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、第二ブトキシ基、第三ブトキシ基等が挙げられる。
【0036】
前記Rにおけるアシロキシ基としては、例えば、ホルミルオキシ、アセトキシ、プロパノイルオキシ、ブタノイルオキシ、ピバロイルオキシ、ペンタノイルオキシ、フェニルアセトキシ、アセトアセトキシ、ベンゾイルオキシ、ナフトイルオキシ等が挙げられる。
【0037】
前記Rにおけるアリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ等が挙げられる。
【0038】
前記Rにおけるアルケニルオキシ基としては、例えば、ビニルオキシ基、アリルオキシ基、1−プロペニルオキシ基、イソプロペニルオキシ基、2−ブテニルオキシ基、3−ブテニルオキシ基、2−ペテニルオキシ基、3−メチル−3−ブテニルオキシ基、2−ヘキセニルオキシ基等が挙げられる。
【0039】
前記Rで表される加水分解性基が加水分解されることにより、一般式(4)で表される加水分解性シリル基はシラノール基となる。また、前記Rとしては、加水分解性に優れることから、メトキシ基またはエトキシ基が好ましい。
【0040】
また、前記加水分解性シリル基は、前記一般式(1)および/または前記一般式(2)で表される構造単位の酸素原子が前記加水分解性基と結合もしくは置換されている加水分解性シリル基であることが好ましい。
【0041】
前記シラノール基や前記加水分解性シリル基は、シラノール基中の水酸基や加水分解性シリル基中の前記加水分解性基の間で加水分解縮合反応が進行するので、得られる塗膜のポリシロキサン構造の架橋密度が高まり、耐溶剤性などに優れた塗膜を形成することができる。また、ポリシロキサンセグメント(a1)が有するシラノール基や加水分解性シリル基は、後述するビニル系重合体セグメント(a2)とを、前記一般式(3)で表される結合を介して結合させる際にも用いる。
【0042】
本発明においては、前記ポリシロキサンセグメント(a1)を、複合樹脂(A)の固形分量に対して20〜70質量%含むことが好ましく、それにより本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化塗膜の耐候性を向上することができる。
【0043】
前記複合樹脂(A)中のビニル系重合体セグメント(a2)としては、例えば、アクリル重合体、フルオロオレフィン重合体、ビニルエステル重合体、芳香族ビニル重合体、ポリオレフィン重合体等のビニル系重合体セグメントである。これらは用途により適宜選択することが好ましい。
【0044】
前記アクリル重合体からなるビニル系重合体セグメントは、アクリル単量体を単独重合または共重合することで得られる。前記アクリル単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の炭素原子数が1〜22のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、2−フェニルエチル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、4−メトキシブチル(メタ)アクリレート等のω−アルコキシアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジ−2−ヒドロキシエチルフマレート、モノ−2−ヒドロキシエチルモノブチルフマレート、ポリエチレングルコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、α、β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル(例えば、株式会社ダイセル製のカプロラクトン付加モノマーである製品名「プラクセルFM」、「プラクセルFA」等)、またはこれらとε−カプロラクトンとの付加物等の水酸基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0045】
なお、本発明において、「(メタ)アクリロイル」とは、メタクリロイルとアクリロイルの一方または両方をいい、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの一方または両方をいう。
【0046】
前記アクリル重合体からなるビニル系重合体セグメントの原料として、上記のアクリル単量体の他に、ビニル単量体を共重合しても構わない。前記ビニル共重合体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;クロトン酸メチル、クロトン酸エチル等のクロトン酸のアルキルエステル;ジメチルマレート、ジ−n−ブチルマレート、ジメチルフマレート、ジメチルイタコネート等の不飽和二塩基酸のジアルキルエステル;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン;フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン等のフルオロオレフィン;エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のシクロアルキルビニルエーテル;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−(メタ)アクリロイルピロリジン、N−ビニルピロリドン等の3級アミド基を有するビニル単量体などが挙げられる。これらは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0047】
また、前記ビニル系重合体セグメント(a2)は、前記ポリシロキサンセグメント(a1)と一般式(3)で表される結合により結合された複合樹脂(A)とするために、ビニル系重合体セグメント(a2)中の炭素原子に直接結合したシラノール基および/または加水分解性シリル基を有する。これらのシラノール基および/または加水分解性シリル基は、後述の複合樹脂(A)の製造において一般式(3)で表される結合となってしまうために、最終生成物である複合樹脂(A)中のビニル系重合体セグメント(a2)にはほとんど存在しない。しかしながら、ビニル系重合体セグメント(a2)にシラノール基および/または加水分解性シリル基が残存していても何ら問題はなく、前記重合性二重結合を有する基の硬化反応による塗膜形成の際に、該硬化反応と平行して、シラノール基中の水酸基や加水分解性シリル基中の前記加水分解性基の間で加水分解縮合反応が進行するので、得られる塗膜のポリシロキサン構造の架橋密度が高まり、耐溶剤性などに優れた塗膜を形成することができる。
【0048】
炭素原子に直接結合したシラノール基および/または加水分解性シリル基をビニル系重合体セグメント(a2)に導入するには、上記のアクリル単量体、ビニル単量体とともに、炭素結合に直接結合したシラノール基および/または加水分解性シリル基を有する単量体を共重合させる。
【0049】
炭素原子に直接結合したシラノール基および/または加水分解性シリル基を有する単量体としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリ(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、2−トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン等が挙げられる。これらの中でも、加水分解反応を容易に進行でき、また反応後の副生成物を容易に除去することができることからビニルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。また、これらは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0050】
上記の各単量体を共重合させる際の重合方法は特に限定はなく、公知の重合方法によりビニル系重合体セグメント(a2)を得ることができる。例えば、塊状ラジカル重合法、溶液ラジカル重合法、非水分散ラジカル重合法等の種々の重合法を採用することができる。これらの中でも、重合反応が容易な溶液ラジカル重合法が好ましい。
【0051】
前記溶液ラジカル重合法は、単量体を有機溶剤中で、重合開始剤を使用して重合させる方法であるが、ここで用いる有機溶媒としては、例えば、アルコール化合物、ケトン化合物、エステル化合物、エーテル化合物、アミド化合物、スルホキシド化合物、炭化水素化合物が好ましく、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール、3−メトキシブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらは、沸点、相溶性、重合性を考慮して適宜選択することができる。また、これらの有機溶剤は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0052】
前記重合開始剤としては、例えば、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド化合物;1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(4,4−ジtert−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジtert−アミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジtert−ヘキシルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジtert−オクチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジクミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等のパーオキシケタール化合物;クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド化合物;デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド化合物;ビス(tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシカーボネート化合物;tert−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等のパーオキシエステル化合物などの有機過酸化物と、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等のアゾ化合物とが挙げられる。
【0053】
前記ビニル系重合体セグメント(a2)の数平均分子量としては、数平均分子量(以下、「Mn」と略記する。)に換算して500〜200,000の範囲であることが好ましく、前記複合樹脂(A)を製造する際の増粘やゲル化を防止でき、かつ耐久性に優れる。また、Mnは700〜100,000の範囲がより好ましく、1,000〜50,000の範囲が、基材上に層を形成させる際に良好な膜を形成できる等の理由からなお好ましい。
【0054】
本発明で用いる複合樹脂(A)の製造方法としては、例えば、下記の(方法1)〜(方法3)の方法が挙げられる。
【0055】
(方法1)
前記アクリル単量体、ビニル単量体、および炭素原子に直接結合したシラノール基および/または加水分解性シリル基を有する単量体を共重合させて、炭素結合に直接結合したシラノール基および/または加水分解性シリル基を含有するビニル系重合体セグメント(a2)を得る。これとシラン化合物とを混合し、加水分解縮合反応させる。このとき、生成するポリシロキサン中にエポキシ基を導入するために、シラノール基および/または加水分解性シリル基とエポキシ基とを有するシラン化合物も同時に使用する。また、他に導入したい基がある場合は、導入したい基を有するシラン化合物を併用する。例えば、アリール基を導入する場合は、アリール基とシラノール基および/または加水分解性シリル基とを有するシラン化合物を適宜併用すればよい。
【0056】
この方法1においては、シラン化合物のシラノール基あるいは加水分解性シリル基と、炭素結合に直接結合したシラノール基および/または加水分解性シリル基を含有するビニル系重合体セグメント(a2)が有するシラノール基および/または加水分解性シリル基とが加水分解縮合反応し、前記エポキシ基を有するポリシロキサンセグメント(a1)が形成されると共に、前記エポキシ基を有するポリシロキサンセグメント(a1)と、ビニル系重合体セグメント(a2)とが前記一般式(3)で表される結合により複合化された複合樹脂(A)が得られる。
【0057】
(方法2)
方法1と同様にして、炭素結合に直接結合したシラノール基および/または加水分解性シリル基を含有するビニル系重合体セグメント(a2)を得る。一方、シラン化合物(エポキシ基を導入するために、シラノール基および/または加水分解性シリル基とエポキシ基とを有するシラン化合物を使用する。他に導入したい基がある場合は、導入したい基を有するシラン化合物を併用する。)を加水分解縮合反応させ、エポキシ基を有するポリシロキサンセグメント(a1)を得る。次いで、ビニル系重合体セグメント(a2)が有するシラノール基および/または加水分解性シリル基と、エポキシ基を有するポリシロキサンセグメント(a1)が有するシラノール基および/または加水分解性シリル基とを加水分解縮合反応をさせる。
【0058】
(方法3)
方法1と同様に、炭素結合に直接結合したシラノール基および/または加水分解性シリル基を含有するビニル系重合体セグメント(a2)を得る。一方、方法2と同様にして、エポキシ基を有していても有してなくてもよいポリシロキサンセグメント(a1)を得る。更に、前記ポリシロキサンセグメント(a1)中にエポキシ基を導入するために、シラノール基および/または加水分解性シリル基とエポキシ基とを有するシラン化合物、および、他に導入したい基がある場合は、必要に応じて、導入したい基を有するシラン化合物等とを混合し、加水分解縮合反応させる。
【0059】
また、重合性二重結合を有する基を導入する際に使用する重合性二重結合を有する基とシラノール基および/または加水分解性シリル基とを併有するシラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリ(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、2−トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン等を併用する。これらの中でも、加水分解反応を容易に進行でき、また反応後の副生成物を容易に除去することができることから、ビニルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0060】
また、その他、前記(方法1)〜(方法3)で用いるシラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、iso−ブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等のオルガノトリアルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシランもしくは等のジオルガノジアルコキシシラン;メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン等のクロロシランが挙げられる。これらの中でも、加水分解反応が容易に進行し、また反応後の副生成物を容易に除去することが可能なオルガノトリアルコキシシランやジオルガノジアルコキシシランが好ましい。
【0061】
また、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン等のテトラアルコキシシランまたはその部分加水分解縮合物を、本発明の効果を損なわない範囲で併用することもできる。前記4官能アルコキシシラン化合物またはその部分加水分解縮合物を併用する場合には、前記ポリシロキサンセグメント(a1)を構成する全ケイ素原子に対して、該4官能アルコキシシラン化合物の有するケイ素原子が、20モル%を超えない範囲となるように併用することが好ましい。
【0062】
また、前記シラン化合物には、ホウ素、チタン、ジルコニウムあるいはアルミニウムなどのケイ素原子以外の金属アルコキシド化合物を、本発明の効果を損なわない範囲で併用することもできる。例えば、ポリシロキサンセグメント(a1)を構成する全ケイ素原子に対して、上述の金属アルコキシド化合物の有する金属原子が、25モル%を超えない範囲で併用することが好ましい。
【0063】
前記(方法1)〜(方法3)における加水分解縮合反応は、前記加水分解性基の一部が水などの影響で加水分解され水酸基を形成し、次いで該水酸基同士、あるいは該水酸基と加水分解性基との間で進行する進行する縮合反応をいう。該加水分解縮合反応は、公知の方法で反応を進行させることができるが、前記製造工程で水と触媒とを供給することで反応を進行させる方法が簡便で好ましい。
【0064】
使用する触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、燐酸等の無機酸;p−トルエンスルホン酸、燐酸モノイソプロピル、酢酸等の有機酸;水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム等の無機塩基;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタン酸エステル;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリ−n−ブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、モノエタノールアミン、イミダゾール、1−メチルイミダゾール等の各種の塩基性窒素原子を含有する化合物;テトラメチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、ジラウリルジメチルアンモニウム塩等の各種の4級アンモニウム塩であって、対アニオンとして、クロライド、ブロマイド、カルボキシレートもしくはハイドロオキサイドなどを有する4級アンモニウム塩;ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、オクチル酸錫またはステアリン酸錫など錫カルボン酸塩等が挙げられる。これらの触媒は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0065】
前記触媒の添加量に特に限定はないが、一般的には前記シラノール基または加水分解性シリル基を有する各々の化合物全量に対して、0.0001〜10質量%の範囲で使用することが好ましく、0.0005〜3質量%の範囲で使用することがより好ましく、0.001〜1質量%の範囲で使用することが特に好ましい。
【0066】
また、供給する水の量は、前記シラノール基または加水分解性シリル基を有する各々の化合物が有するシラノール基または加水分解性シリル基1モルに対して0.05モル以上が好ましく、0.1モル以上がより好ましく、特に好ましくは、0.5モル以上である。
これらの触媒および水は、一括供給でも逐次供給であってもよく、触媒と水とを予め混合したものを供給しても良い。
【0067】
前記(方法1)〜(方法3)における加水分解縮合反応を行う際の反応温度は、0℃〜150℃の範囲が適切であり、好ましくは、20℃〜100℃の範囲内である。また、反応の圧力としては、常圧、加圧下または減圧下の、いずれの条件においても行うことができる。また、前記加水分解縮合反応において生成しうる副生成物であるアルコールや水は、必要に応じ蒸留などの方法により除去してもよい。
【0068】
前記(方法1)〜(方法3)における各々の化合物の仕込み比率は、所望とする本発明で使用する複合樹脂(A)の構造により適宜選択される。中でも、得られる塗膜の耐久性が優れることから、ポリシロキサンセグメント(a1)の含有率が20〜70質量%となるよう複合樹脂(A)を得るのが好ましく、30〜70質量%が更に好ましい。
【0069】
前記(方法1)〜(方法3)において、ポリシロキサンセグメントとビニル系重合体セグメントをブロック状に複合化する具体的な方法としては、ポリマー鎖の片末端あるいは両末端のみに前記したシラノール基および/または加水分解性シリル基を有するような構造のビニル系重合体セグメントを中間体として使用し、例えば、(方法1)であれば、当該ビニル系重合体セグメントに、シラン化合物を混合し、加水分解縮合反応させる方法が挙げられる。
【0070】
一方、前記(方法1)〜(方法3)において、ビニル系重合体セグメントに対してポリシロキサンセグメントをグラフト状に複合化させる具体的な方法としては、ビニル系重合体セグメントの主鎖に対し、前記したシラノール基および/または加水分解性シリル基をランダムに分布させた構造を有するビニル系重合体セグメントを中間体として使用し、例えば、(方法2)であれば、当該ビニル系重合体セグメントが有するシラノール基および/または加水分解性シリル基とシラン化合物とを加水分解縮合させる方法を挙げることができる。
【0071】
本発明で用いる加水分解性シリル基を有するポリシロキサン(B)について説明する。前記ポリシロキサン(B)は、シラン化合物を部分加水分解縮合させて得られるものである。前記シラン化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン等のテトラアルコキシシラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、iso−ブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等のオルガノトリアルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシランもしくは等のジオルガノジアルコキシシラン;メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン等のクロロシランが挙げられる。これらは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0072】
前記ポリシロキサン(B)の中でも、下記一般式(5)で表されるテトラアルコキシシランを部分加水分解したアルキルシリケートオリゴマーが好ましい。また、前記アルキルシリケートオリゴマーの中でも、下記一般式(5)中のRがメチル基であるメチルシリケートオリゴマーは加水分解速度が速く、反応性も高いことから好ましい。
【0073】
【化8】
(一般式(5)中、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基であり、nは2〜100の整数である。)
【0074】
本発明で用いる加水分解性シリル基を有する単量体(C)について説明する。前記単量体(C)としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリ(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、2−トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン等が挙げられる。これらは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。また、これらの中でも、(メタ)アクリロイル基を有するものは、活性エネルギー線照射後の二重結合の反応性が良好なため、塗膜物性を向上することから好ましい。
【0075】
本発明で用いる1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレート(D)について説明する。前記多官能アクリレート(D)としては、例えば、1,2−エタンジオールジアクリレート、1,2−プロパンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシ)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。また、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有しているウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート等も挙げられる。これらは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0076】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中の前記複合樹脂(A)、前記ポリシロキサン(B)、前記単量体(C)、および前記多官能アクリレート(D)のそれぞれの配合量は、前記複合樹脂(A)100質量部に対して、前記ポリシロキサン(B)が5〜200質量部、前記単量体(C)が5〜200質量部、前記多官能アクリレート(D)が10〜500質量部であるが、各成分間の相溶性、基材への付着性の観点から、前記複合樹脂(A)100質量部に対して、前記ポリシロキサン(B)が10〜150重量部、前記単量体(C)が5〜150重量部、前記多官能アクリレート(D)が20〜350重量部であることが好ましい。
【0077】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、基材に塗布後、活性エネルギー線を照射することで硬化塗膜とすることができる。この活性エネルギー線とは、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線をいう。活性エネルギー線として紫外線を照射して硬化塗膜とする場合には、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に光重合開始剤(E)を添加し、硬化性を向上することが好ましい。また、必要であればさらに光増感剤を添加して、硬化性を向上することもできる。一方、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線を用いる場合には、光重合開始剤(E)や光増感剤を用いなくても速やかに硬化するので、特に光重合開始剤(E)や光増感剤を添加する必要はない。
【0078】
前記光重合開始剤(E)としては、分子内開裂型光重合開始剤および水素引き抜き型光重合開始剤が挙げられる。分子内開裂型光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン;2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系化合物;ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステル等が挙げられる。
【0079】
一方、水素引き抜き型光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;ミヒラ−ケトン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系化合物;10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン等が挙げられる。これらの光重合開始剤(E)は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0080】
また、前記光増感剤としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン等のアミン、o−トリルチオ尿素等の尿素、ナトリウムジエチルジチオホスフェート、s−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルホネート等の硫黄化合物などが挙げられる。
【0081】
これらの光重合開始剤および光増感剤の使用量は、本発明の活性エネルギー線硬化型水性塗料中の不揮発成分100質量部に対し、各々0.05〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
【0082】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、ガラス材に対して高い密着性を有することから、ガラス材の表面に耐擦り傷性、耐酸性、耐アルカリ性、耐溶剤性等の耐久性を付与するガラス用コーティング剤として好適に用いることができる。
【0083】
上記のガラス用コーティング剤は、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を含有するものであるが、その他の配合物として、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、有機顔料、無機顔料、顔料分散剤等の添加剤を使用することができる。
【0084】
また、上記のガラス用コーティング剤の被塗装物となるガラス材としては、例えば、食器、窓ガラス、レンズ、鏡、各種ディスプレイ(液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等)の画面に用いるガラス板(タッチパネルのものも含む。)、携帯電話やスマートフォンのガラス製筐体、蛍光灯、白熱電球、実験のガラス器具等が挙げられる。
【0085】
また、本発明のガラス用コーティング剤の塗装方法としては、用途により異なるが、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、コンマコーター、ナイフコーター、エアナイフコーター、カーテンコーター、キスコーター、シャワーコーター、ホイーラーコーター、スピンコーター、ディッピング、スクリーン印刷、スプレー、アプリケーター、バーコーター等の方法が挙げられる。
【0086】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物またはガラス用コーティング剤を硬化させる活性エネルギー線としては、上記の通り、紫外線、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線であるが、具体的なエネルギー源または硬化装置としては、例えば、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、カーボンアーク、キセノンランプ、複写用高圧水銀灯、中圧または高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、自然光等を光源とする紫外線、または走査型、カーテン型電子線加速器による電子線等が挙げられる。
【実施例】
【0087】
以下に本発明を具体的な実施例を挙げてより詳細に説明する。
【0088】
(合成例1:ポリシロキサン(a−1−1)の製造)
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管および窒素ガス導入口を備えた反応容器に、メチルトリメトキシシラン(以下、「MTMS」と略記する。)1,417質量部およびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン83質量部を仕込んで、窒素ガスの通気下、攪拌しながら、60℃まで昇温した。次いで、n−ブチルアシッドホスフェート(堺化学株式会社製「Phoslex A−4」)0.2質量部および脱イオン水211.1質量部からなる混合物を、5分間かけて滴下した。滴下終了後、反応容器中を80℃まで昇温し、4時間攪拌することにより加水分解縮合反応を行い、反応生成物を得た。得られた反応生成物中に含まれるメタノールおよび水を、1〜30kPaの減圧下、60℃の条件で除去することにより、数平均分子量が1,000で、有効成分が75.2質量%のポリシロキサン(a−1−1)を得た。
【0089】
なお、前記の「有効成分」とは、使用したシランモノマーのメトキシ基が全て加水分解縮合反応した場合の理論収量(質量部)を、加水分解縮合反応後の実収量(質量部)で除した値、すなわち、〔シランモノマーのメトキシ基が全て加水分解縮合反応した場合の理論収量(質量部)/加水分解縮合反応後の実収量(質量部)〕の式により算出したものである。
【0090】
また、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。ただし、装置として、昭和電工株式会社製「Shodex GPC SYSTEM−21」を、GPCカラムとして、昭和電工株式会社製「Shodex Asahipak GF−7M HQ」を、GPCの展開溶媒として20mMのLiBrジメチルホルムアミド溶液を用いた。
【0091】
(合成例2:ビニル系重合体(a−2−1)の製造)
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管および窒素ガス導入口を備えた反応容器に、フェニルトリメトキシシラン(以下、「PTMS」と略記する。)23.2質量部、ジメチルジメトキシシラン(以下、「DMDMS」と略記する。)28質量部および酢酸n−ブチル348.8質量部を仕込んで、窒素ガスの通気下、攪拌しながら、95℃まで昇温した。次いで、メチルメタクリレート(以下、「MMA」と略記する。)125.2質量部、n−ブチルメタクリレート74.4質量部、n−ブチルアクリレート(BA)91.6質量部、メタクリル酸4質量部、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(以下、「MPTMS」と略記する。)12質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート92.8質量部、酢酸n−ブチル 40質量部およびtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート30質量部からなる混合物を、4時間かけて滴下した。さらに95℃で2時間撹拌した後、n−ブチルアシッドホスフェート(堺化学株式会社製「Phoslex A−4」)0.064質量部および脱イオン水14.6質量部の混合物を、5分間かけて滴下し、95℃で4時間攪拌することにより、PTMS、DMDMS、MPTMSの加水分解縮合反応を進行させ、ビニル系重合体(a−2−1)の溶液を得た。
【0092】
(合成例3:複合樹脂(A1)の製造)
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管および窒素ガス導入口を備えた反応容器に、合成例2で得られたビニル重合体(a−2−1)512.4質量部および合成例1で得られたポリシロキサン(a−1−1)107質量部を仕込んで、5分間攪拌した後、脱イオン水34.9質量部を加え、80℃で4時間攪拌を行い、ビニル重合体(a−2−1)とポリシロキサン(a−1−1)の加水分解縮合反応を行った。得られた反応生成物を、1〜30kPaの減圧下で、60℃の条件で2時間蒸留することにより、生成したメタノールおよび水を除去した。次いで、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートと酢酸n−ブチルとの混合溶剤(質量比で1:1)を加えて、不揮発分が55質量%であるポリシロキサンセグメントとビニル重合体セグメントを有する複合樹脂(A1)を含有する液を得た。
【0093】
(合成例4:複合樹脂(RA1)の製造)
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管および窒素ガス導入口を備えた反応容器に、PTMS 191質量部を仕込んで、120℃まで昇温した。次いで、MMA 169質量部、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン11質量部およびtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート18質量部からなる混合物を、前記反応容器中へ4時間かけて滴下した。その後、同温度で16時間撹拌し、トリメトキシシリル基を有するビニル重合体(a−2−2)を得た。次いで、前記反応容器の温度を80℃に調整し、MTMS 131質量部、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン226質量部、DMDMS 116質量部を、前記反応容器中へ添加した。次いで、iso−プロピルアシッドホスフェート(堺化学株式会社製「Phoslex A−3」)6.3質量部および脱イオン水97質量部との混合物を、5分間かけて滴下し、120℃で2時間撹拌することにより加水分解縮合反応させ、反応生成物を得た。次いで、前記反応生成物を、1〜30kPaの減圧下で、60℃の条件で2時間蒸留することにより、生成したメタノールおよび水を除去した。次いで、次いで、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートと酢酸n−ブチルとの混合溶剤(質量比で1:1)を加えて、不揮発分が55質量%であるポリシロキサンセグメントとビニル重合体セグメントからなる複合樹脂(RA1)を含有する液を得た。
【0094】
(実施例1)
合成例3で得られた複合樹脂(A1)を含有する液(不揮発分55質量%)109.1質量部(複合樹脂(A1)として60質量部)、メチルシリケート(三菱化学株式会社製「MKCシリケート51」;以下、「メチルシリケート」と略記する。)10質量部、MPTMS 5質量部および多官能アクリレート(東亞合成株式会社製「アロニックス M−305」、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物でペンタエリスリトールトリアクリレート比率60質量%;以下、「PETA」と略記する。)25質量部を十分に攪拌した後、光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア184」、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;以下、「HCHPK」と略記する。)3質量部を添加して撹拌し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(1)を得た。
【0095】
(実施例2)
合成例3で得られた複合樹脂(A1)を含有する液(不揮発分55質量%)27.3質量部(複合樹脂(A1)として15質量部)、メチルシリケート20質量部、MPTMS 20質量部およびPETA 45質量部を十分に攪拌した後、HCHPK 3質量部を添加して撹拌し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(2)を得た。
【0096】
(実施例3)
合成例3で得られた複合樹脂(A1)を含有する液(不揮発分55質量%)45.5質量部(複合樹脂(A1)として25質量部)、メチルシリケート10質量部、MPTMS 5質量部およびPETA 60質量部を十分に攪拌した後、HCHPK 3質量部を添加して撹拌し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(3)を得た。
【0097】
(比較例1)
合成例3で得られた複合樹脂(A1)を含有する液(不揮発分55質量%)9.1質量部(複合樹脂(A1)として5質量部)、メチルシリケート20質量部、MPTMS 20質量部およびPETA 55質量部を十分に攪拌した後、HCHPK 3質量部を添加して撹拌し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(R1)を得た。
【0098】
(比較例2)
合成例3で得られた複合樹脂(A1)を含有する液(不揮発分55質量%)45.5質量部(複合樹脂(A1)として25質量部)、MPTMS 20質量部およびPETA 55質量部を十分に攪拌した後、HCHPK 3質量部を添加して撹拌し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(R2)を得た。
【0099】
(比較例3)
合成例3で得られた複合樹脂(A1)を含有する液(不揮発分55質量%)27.3質量部(複合樹脂(A1)として15質量部)、メチルシリケート45質量部、MPTMS 20質量部およびPETA 20質量部を十分に攪拌した後、HCHPK 3質量部を添加して撹拌し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(R3)を得た。
【0100】
(比較例4)
合成例3で得られた複合樹脂(A1)を含有する液(不揮発分55質量%)81.8質量部(複合樹脂(A1)として45質量部)、メチルシリケート25質量部PETA 30質量部を十分に攪拌した後、HCHPK 3質量部を添加して撹拌し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(R4)を得た。
【0101】
(比較例5)
合成例3で得られた複合樹脂(A1)を含有する液(不揮発分55質量%)18.2質量部(複合樹脂(A1)として10質量部)、メチルシリケート20質量部、MPTMS 50質量部およびPETA 20質量部を十分に攪拌した後、HCHPK 3質量部を添加して撹拌し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(R5)を得た。
【0102】
(比較例6)
合成例3で得られた複合樹脂(A1)を含有する液(不揮発分55質量%)18.2質量部(複合樹脂(A1)として10質量部)、メチルシリケート5質量部、MPTMS 10質量部およびPETA 75質量部を十分に攪拌した後、HCHPK 3質量部を添加して撹拌し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(R6)を得た。
【0103】
(比較例7)
合成例4で得られた複合樹脂(RA1)を含有する液(不揮発分55質量%)109.1質量部(複合樹脂(RA1)として60質量部)、メチルシリケート10質量部、MPTMS 5質量部およびPETA 25質量部を十分に攪拌した後、HCHPK 3質量部を添加して撹拌し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(R7)を得た。
【0104】
上記の実施例1〜3および比較例1〜7で得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(1)〜(3)および(R1)〜(R7)について、ガラス材に対する密着性を下記の方法で行った。
【0105】
[評価用硬化塗膜の作製]
ガラス板(厚さ2mm)上に、乾燥後の膜厚が15μmになるように活性エネルギー線硬化性樹脂組成物をスプレー塗装して、乾燥機中で60℃の温度で10分間の予備乾燥後した後、出力80W/cmの高圧水銀ランプを用いて、照射量0.8J/cmの紫外線照射を行い、評価用硬化塗膜を作製した。なお、比較例3で得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(R3)は硬化塗膜が白濁したため、比較例5で得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(R5)は紫外線照射により十分に硬化できなかったため、下記のガラス密着性の評価を行わなかった。
【0106】
[ガラス密着性の評価]
上記で得られたガラス板上の硬化塗膜に、JIS K−5400 碁盤目試験法に基づいて測定した。前記硬化塗膜の上にカッターで1mm幅の切込みを入れ碁盤目の数を100個とし、全ての碁盤目を覆うようにセロハンテープを貼り付け、すばやく引き剥がして付着して残っている碁盤目の数から、下記の基準によりガラス密着性を評価した。
○:95〜100個
△:60〜94個
×:59個以下
【0107】
各活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の組成およびガラス密着性の評価結果を表1に示す。
【0108】
【表1】
【0109】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物である実施例1〜3のものは、非常に高いガラスに対する密着性を有することが分かった。
【0110】
一方、比較例1は、(A)成分に対する(B)〜(D)成分の配合量が本発明で規定した上限を超える例であるが、ガラス板には全く密着せず、ガラス密着性が不良であることが分かった。
【0111】
比較例2は、(B)成分の配合を配合しなかった例であるが、ガラス板に対して半数の塗膜が密着せず、ガラス密着性が不良であることが分かった。
【0112】
比較例3は、(A)成分に対する(B)成分の配合量が本発明で規定した上限を超える例であるが、硬化塗膜が白濁するという問題があることが分かった。
【0113】
比較例4は、(C)成分の配合を配合しなかった例であるが、ガラス板に対して3割程度の塗膜が密着せず、ガラス密着性がやや不良であることが分かった。
【0114】
比較例5は、(A)成分に対する(C)成分の配合量が本発明で規定した上限を超える例であるが、紫外線照射により十分に硬化できず、硬化塗膜が得られないという問題があることが分かった。
【0115】
比較例6は、(A)成分に対する(D)成分の配合量が本発明で規定した上限を超える例であるが、ガラス板には全く密着せず、ガラス密着性が不良であることが分かった。
【0116】
比較例7は、(A)成分として、エポキシ基を有するポリシロキサンセグメントから得られた複合樹脂の代わりに、アクロイル基を有するポリシロキサンセグメントから得られた複合樹脂を用いた例であるが、ガラス板には全く密着せず、ガラス密着性が不良であることが分かった。