(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記算出部は、前記積算値から所定値を減じる減算処理を行い、減算結果と前記所定の閾値とを比較し、比較結果に基づいて前記界面の位置を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の界面レベル計。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
[第1の実施形態]
図1に第1の実施形態に係る界面レベル計の概略構成を示す。界面レベル計は、信号生成回路1、超音波センサ2、増幅回路3、アナログデジタル変換器(以下、A/D変換器と称する)4、表示部5、及び界面レベル算出部6を備えている。
【0018】
図2に示すように、超音波センサ2は送信部21及び受信部22を有し、汚泥等の懸濁物堆積層23とその上澄水24とを貯留する処理槽25の所定の高さに図示しない取付機構によって取り付けられている。送信部21は、信号生成回路1により生成された電気信号を超音波振動子に与え、処理槽25の底面に向かって超音波を送信する。
【0019】
送信部21から送信された超音波は、懸濁物堆積層23とその上澄水24との界面26や、界面26下の懸濁物、処理槽25の底面等によって反射される。反射波は受信部22によって受信される。受信部22は受信信号を増幅回路3へ出力する。
【0020】
図1に示すように、超音波センサ2の受信部22による受信信号は増幅回路3によって増幅され、A/D変換器4によりデジタル信号に変換された後、表示部5及び界面レベル算出部6へ出力される。
【0021】
表示部5は、A/D変換器4から受け取ったデジタル信号に基づいて、超音波送信からの時間経過に伴う反射強度(受信強度)の変化を示すグラフを表示領域51に表示する。表示領域51は、例えば
図3に示すように、縦軸に経過時間、横軸に反射強度をとるグラフを表示する。なお、超音波送信から受信までの時間は、超音波の反射位置の深さに対応するため、縦軸を深さとして表示することもできる。このように、表示部5の表示領域51は、処理槽25内の最新の超音波反射強度分布を表示することができる。
【0022】
また、表示部5の表示領域52は、後述する方法により界面レベル算出部6が算出した懸濁物堆積層23と上澄水24との界面26(
図2参照)の位置を表示する。表示領域52は、界面26の位置を数値表示してもよいし、トレンドグラフとして表示してもよい。
【0023】
界面レベル算出部6は、A/D変換器4から受け取ったデジタル信号に基づいて、懸濁物堆積層23と上澄水24との界面26の位置(深さ)を算出する。界面レベル算出部6による界面26の位置の算出方法について説明する。
【0024】
まず、
図2に示すように、超音波センサ2と界面26との間に気泡、浮遊汚泥、パイプ等の異物が存在しない場合について説明する。この場合、超音波の反射強度は、超音波送信からの時間経過に伴って
図4に示すように変化する。界面レベル算出部6は、反射強度が所定の閾値Rthを超えて急激に大きくなったタイミングまでの経過時間(t1)に基づいて、界面26までの距離(界面26の位置)を算出する。
【0025】
また、界面レベル算出部6は、時間t1以後に反射強度が急激に大きくなったタイミングまでの経過時間(t2)から、処理槽25の底面までの距離を算出することができる。界面レベル算出部6は、超音波センサ2の取り付け位置と、処理槽25の底面までの距離との対応関係を示すテーブルを保持しておき、このテーブルを参照して底面までの距離を求めてもよい。
【0026】
次に、超音波センサ2と界面26との間に気泡、浮遊汚泥、パイプ等の異物が存在する場合について説明する。
図5に示すように、超音波センサ2と界面26との間にパイプPが存在する場合、超音波の反射強度は、超音波送信からの時間経過に伴って
図6に示すように変化する。パイプPは金属やプラスチック等の固体で形成されているため、パイプPからの反射信号の強度は大きい。そのため、パイプPからの反射信号の強度が、界面26を検出するための閾値Rthより大きくなり、界面26の位置を誤検出するおそれがある。
【0027】
本実施形態において、界面レベル算出部6は、パイプPからの反射信号によって界面26の位置を誤検出することを防止するために、超音波送信から所定時間Tを経過するまでの受信信号を、界面位置の検出に使用する信号から除外する。これにより、界面レベル算出部6は、実際の界面26からの反射信号に基づいて界面26を正確に検出することができる。
【0028】
界面位置の算出に使用されない信号の受信時間である所定時間Tは、様々な方法で決定することができる。例えば、処理槽25内に設置されているパイプPの位置(深さ)が予め分かっている場合は、パイプPの位置と超音波の伝播速度から所定時間Tを決定することができる。
【0029】
また、表示領域51に表示されるグラフを参照して、ユーザが、図示しない入力手段を介して、所定時間Tを入力・設定できるようにしてもよい。入力手段は、例えばマウスやキーボードである。また、表示部5をタッチパネルで構成し、ユーザがタッチパネルを介して入力した所定時間Tが界面レベル算出部6に通知されるようにしてもよい。
【0030】
界面レベル算出部6は、このようにして算出した界面26の位置を表示部5に出力して、表示領域52に表示させる。これにより、表示領域52は、処理槽25内での懸濁物堆積層23と上澄水24との界面26の位置の最新情報を表示することができる。なお、界面26の位置は、上澄水の水面27からの距離、超音波センサ2からの距離、処理槽25の底面からの距離のいずれでもよく、またその他の基準点からの距離でもよい。
【0031】
また、界面レベル算出部6は、算出した界面26の位置情報を、外部ディスプレイ、外部メモリ、外部コンピュータ等の外部装置10へ出力してもよい。
【0032】
上述したように、本実施形態では、超音波送信から所定時間Tを経過するまでの受信信号を界面位置の検出に使用する信号から除外し、所定時間Tに対応する深さ領域を界面位置検出領域から除外する。言い換えれば、超音波送信から所定時間T経過以降に受信した受信信号を用いて界面位置を検出する。そのため、超音波センサ2と界面26との間に気泡、浮遊汚泥、パイプ等の異物が存在する場合でも、実際の界面26からの反射波に基づいて界面26の位置を正確に検出することができる。
【0033】
上記第1の実施形態において、懸濁物や粒子の堆積量や展開率が高くなり、界面26がパイプP等の異物よりも上方に位置する場合は、所定時間Tを短くすることで、界面26の位置を検出できる。
【0034】
上記第1の実施形態において、処理槽25内の懸濁物や粒子の径が小さい場合、沈降速度や堆積・圧密濃縮速度が低下し、界面26近傍の堆積状況が一定せず、また、濃度が薄く不均一になることがある。このような場合は、反射信号を所定時間又は所定数取得して平均化し、平均化した反射信号と閾値Rthとを比較して界面26の位置を検出することが好ましい。ここで、反射信号の平均化とは、送信部21からの超音波送信をトリガにした反射信号の受信を所定時間内に複数回行って複数の反射信号を取得するか、又は送信部21からの超音波送信をトリガにした反射信号の受信を所定回数行って複数(所定数)の反射信号を取得し、これら複数の反射信号の平均値を求めることである。
【0035】
例えば、複数の反射信号の平均化処理を行う平均化処理部を、受信部22と増幅回路3との間に設けることで、受信部22から増幅回路3に与えられる信号に対して平均化処理を行うことができる。また、平均化処理部を増幅回路3とA/D変換器4との間に設け、増幅回路3からA/D変換器4に与えられる信号に対して平均化処理を行ってもよい。あるいはまた、A/D変換器4から出力されるデジタル信号に対して平均化処理を行うように平均化処理部を設けてもよいし、界面レベル算出部6が平均化処理を行ってもよい。
【0036】
なお、平均化する反射信号の取得時間を長くする程、言い換えれば、平均化する反射信号の取得数を多くするほど、界面位置の検出精度は向上するが、検出に要する時間が長くなるため、界面位置の変化に対する追従性は低下する。界面位置の変化に即した値を検出するという観点から、1〜60秒の間に取得する5個以上の反射信号を平均化することが好ましい。
【0037】
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係る界面レベル計は、
図1に示す第1の実施形態に係る界面レベル計と同様の構成であるため、図示を省略する。本実施形態は、上記第1の実施形態と比較して、界面レベル算出部6による界面26の位置の検出方法が異なる。
【0038】
本実施形態では、界面レベル算出部6は、受信信号強度を時間方向(すわなち処理槽25の底面へ向かう方向)に積算し、積算値と閾値とを比較して界面の位置を検出する。
【0039】
例えば、
図5に示すように、超音波センサ2と界面26との間にパイプPが存在し、
図6に示すような超音波の反射強度の変化が起こっている場合、反射強度の積算値は
図7のようになる。界面レベル算出部6は、積算値と閾値Rth1とを比較し、積算値が閾値Rth1を超えた位置を界面26の位置として検出する。
【0040】
パイプPのような反射強度の大きい異物が界面26より上方に存在する場合、界面26への入射波が小さくなるため、界面26からの反射波も小さくなる。本実施形態では、反射強度の積算処理を行うことで、界面26からの反射強度が、異物からの反射強度に上乗せされるため、閾値Rth1との比較により界面26の位置を正確に検出することができる。
【0041】
界面レベル算出部6が、反射強度の積算値を表示部5に出力し、表示領域52に
図7のような反射強度の積算値分布が表示されるようにしてもよい。
【0042】
上記第2の実施形態において、処理槽25内の懸濁物や粒子の径が小さい場合、沈降速度や堆積・圧密濃縮速度が低下し、界面26近傍の堆積状況が一定せず、また、濃度が薄く不均一になることがある。このような場合は、反射信号を所定時間又は所定数取得して平均化し、平均化した反射信号の積算値と閾値Rth1とを比較して界面26の位置を検出することが好ましい。
【0043】
例えば、界面レベル算出部6が複数の反射信号の平均化処理を行い、平均化した反射信号の積算値を求める。あるいはまた、界面レベル算出部6が複数の反射信号の各々について積算処理を行い、複数の積算値に対して平均化処理を行った後に閾値Rth1と比較してもよい。
【0044】
このような反射信号の平均化処理及び積算処理を行うことで、懸濁物堆積層23内の層変化が曲率の変化となって現れるため、懸濁物堆積層23内での層界面を検出することができる。例えば、
図8に示すように、閾値Rth1により干渉沈降層の上面(界面26)位置を検出することができ、閾値Rth2より干渉沈降層と堆積濃縮層との界面位置を検出することができる。
【0045】
なお、平均化する反射信号の取得時間を長くする程、言い換えれば、平均化する反射信号の取得数を多くするほど、界面位置の検出精度は向上するが、検出に要する時間が長くなるため、界面位置の変化に対する追従性は低下する。界面位置の変化に即した値を検出するという観点から、1〜60秒の間に取得する5個以上の反射信号を平均化することが好ましい。
【0046】
上記第2の実施形態において、界面レベル算出部6は、受信強度の積算値を所定値(1より大きい値)で除算する除算処理を行ってもよい。この除算処理により、積算値に含まれているパイプP等の異物からの反射波成分を低減することができる。例えば、
図7に示す反射強度の積算値は、除算処理により
図9に示すようなものになる。異物からの反射波成分を低減することで、懸濁物堆積層23からの反射波に着目した界面判定が容易になり、界面位置の検出精度をさらに向上させることができる。上述した平均化処理及び積算処理を行った値に対して、この除算処理を行ってもよい。
【0047】
また、上記第2の実施形態において、界面レベル算出部6は、受信強度の積算値から所定値を減算し、積算値をシフトさせる減算処理(シフト処理)を行ってもよい。この減算処理により、積算値に含まれているパイプP等の異物からの反射波成分を低減することができる。例えば、
図7に示す反射強度の積算値は、減算処理により
図10に示すようなものになる。異物からの反射波成分を低減することで、懸濁物堆積層23からの反射波に着目した界面判定が容易になり、界面位置の検出精度をさらに向上させることができる。上述した平均化処理及び積算処理を行った値に対して、この減算処理を行ってもよい。
【0048】
また、上記第2の実施形態において、界面レベル算出部6は、受信強度の積算値に対して所定の係数aを乗算し、乗算結果に所定値bを加算し、算出結果と閾値とを比較して界面の位置を検出してもよい。係数a及び所定値bは、懸濁物堆積層23内の濃度分布を簡易的に表示するための任意の実数である。このような乗算処理及び加算処理を施した受信信号強度の積算値を表示することで、処理槽25内の状態をより詳細に把握することができる。
【0049】
[さらに別の実施形態]
第1及び第2の実施形態に係る界面レベル計においては、超音波反射強度をグレースケール又はカラーで表示するために、
図11に示すように、上記第1及び第2の実施形態に係る界面レベル計にグラフィック変換部7を設けてもよい。グラフィック変換部7は、A/D変換器4から受け取ったデジタル信号の値を、ディスプレイの階調に対応した値(画素データ)に変換する。例えば、カラー画像では、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色それぞれがkビット(=2
k階調、kは2以上の整数)で表現され、
図12に示すような対比により、256色を表現することができる。
【0050】
グラフィック変換部7は、生成した画素データを外部装置10へ出力する。外部装置10がディスプレイである場合は、超音波反射強度がグレースケール又はカラーで表示される。
【0051】
また、
図13に示すように、界面レベル計に、グラフィック変換部7により生成された画素データを記憶するメモリ8を設けてもよい。メモリ8は、
図14に示すように、1つの反射信号に対応するm個(mは2以上の整数)の画素データ60を1列に並べて1画素列とし、n個(nは2以上の整数)の反射信号の画素列を取得時間順に並べて画像データを作成する。メモリ8は、この画像データを表示部5に出力し、表示領域53に表示させる。これにより、ユーザは、処理槽25内の状態変化を、
図15に示すようなカラー画像で監視することができる。深さ表示(目盛)は、水面を基準としてもよいし、センサ下面や水槽の底面を基準としてもよい。メモリ8は、このような画像データを外部装置10へ出力してもよい。
【0052】
図16に示すように、メモリ8に複数の記憶領域S1〜Syを設けてもよい。記憶領域S1〜Syは、グラフィック変換部7からm+w個(wは0以上の整数)の画素データを受け取ると、表示領域53の1画素列分の表示データ(画素列データ)dとして格納する。記憶領域S1〜Syは、新しいデータd1の格納に伴い、今まで記憶していたデータのうち一番古いデータd2を廃棄(消去)する。
【0053】
記憶領域S1〜Syはそれぞれ表示データdをn+x個分(xは0以上の整数)格納することができる。また、
図16に示すように、表示データdにはグラフィック変換部7から受け取ったカラー表示用のm+w個の画素データだけでなく、界面レベル算出部6から受け取った界面レベルLV、図示しない水温センサから受け取った水温T、時刻Cを含めてもよく、これらを表示部5に出力してもよい。
【0054】
記憶領域S1〜Syは、設定されたインターバル(時間間隔)を空けて、次の新しい表示データdをグラフィック変換部7から受け取り、格納する。記憶領域S1〜Syに格納されているn+x個の表示データ(画素列データ)dのうち、新しい方からn個を用いることで、表示領域53に超音波受信強度分布の変遷をカラー表示することができる。また、表示データに界面レベルLVや水温Tが含まれている場合、表示領域53は、カラー画像と併せてあるいは単独で(画像データは消す)、界面レベルや水温の変遷を表示することができる。
【0055】
記憶領域S1〜Syはそれぞれ異なるインターバルが設定されている。例えば、記憶領域S1は1秒、記憶領域S2は3秒、記憶領域Sy−1は50分、記憶領域Syは100分のインターバルが設定され、表示領域53の画素列が200列ある(n=200)場合を考える。
【0056】
この時、記憶領域S1のデータを用いると、表示領域53には表示幅200秒(=1秒×200)の変遷を表示できる。同様に、記憶領域S2のデータを用いると表示幅10分(=3秒×200)、記憶領域Sy−1のデータを用いると表示幅約7日(≒50分×200)、記憶領域Syのデータを用いると表示幅約14日(≒100分×200)の変遷を表示できる。
【0057】
従って、どの記憶領域に格納されている表示データを用いるかによって、表示部5の表示領域53にカラー表示する超音波受信強度分布の変遷(
図15参照)の時間幅を変更することができる。制御部9は、表示する時間幅の切り替え指示に基づいて、指示された時間幅に対応する記憶領域に格納されている表示データが表示部5に出力されるように制御する。
【0058】
長い時間幅の強度分布の変遷を表示部5に表示する場合も、データサンプリングのインターバルを長くとって表示データdをn個もしくはn+x個保持していれば良く、すべての時間に渡るデータを保持する必要がないため、メモリ8の記憶容量を削減できる。
【0059】
また、表示画面の時間幅を切り替える際は、メモリ8内の複数の記憶領域S1〜Syのうちの表示データ取り出し先を切り替えるだけでよく、データの間引き抽出等が不要となるため、切り替えに要する時間を短縮し、表示エラーの発生を防止することができる。
【0060】
記憶領域S1〜Syのデータサンプリングのインターバルを、表示領域53に表示される時間幅に対応させるようにしてもよい。例えば、n=200で時間幅3分の表示データを記憶領域S1に格納させたい場合、データサンプリングのインターバルは0.9秒(=180秒÷200)となる。同様に、時間幅30分の表示データを記憶領域S3に格納させたい場合、データサンプリングのインターバルは9秒(=1800秒÷200)となる。記憶領域S1〜Syの各々のデータサンプリングのインターバルを制御部9が制御するようにしてもよい。
【0061】
上記実施形態及び変形例において、界面レベル計は、超音波センサでなく、反射型の光学式濁質濃度測定器を用いてもよい。
【0062】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。