(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施形態]
以下、本発明の実施形態として撮像装置(電子カメラ)を説明する。
【0012】
図1は、電子カメラの構成例を示す図である。
図1に示すとおり電子カメラ11には、撮影光学系12と、撮像部13と、画像処理エンジン14と、第1メモリ15と、第2メモリ16と、記録I/F17と、表示部18と、操作部19とが備えられる。このうち撮像部13、第1メモリ15、第2メモリ16、記録I/F17、表示部18、操作部19の各々は、画像処理エンジン14に接続されている。また、操作部19は、ユーザの操作(例えば撮影指示など)を受け付けるスイッチである。
【0013】
撮影光学系12は、AFのためのフォーカシングレンズを含む複数のレンズで構成される。なお、
図1では、簡単のため撮影光学系12を1枚のレンズで表す。
【0014】
撮像部13は、撮影光学系12が形成した被写界の像を撮像するモジュールである。例えば、撮像部13は、光電変換を行う撮像素子と、撮像素子の出力に対してアナログ信号処理やA/D変換処理などを施す信号処理回路とを含んでいる。また、撮像素子の撮像面には、例えば公知のベイヤ配列に従ってRGBのカラーフィルタが配置されている。これによって撮像素子は、カラー画像を取得することができる。
【0015】
また、電子カメラ11が撮像モードであるとき、撮像部13は、観測用の画像(スルー画像)を繰り返し取得する。また、撮像部13は、ユーザの撮影指示に応じて記録用の画像(詳細画像)を取得する。また、電子カメラ11が撮像モードであるとき、なお、撮像部13で取得された画像のデータは、画像処理エンジン14に入力される。
【0016】
画像処理エンジン14は、電子カメラ11の動作を統括的に制御するプロセッサである。例えば、画像処理エンジン14は、撮像モードにおいて、スルー画像を用いたAF制御、AE制御などを行う。また、画像処理エンジン14は、撮像部13が取得した画像のデータに対して、色補間、ホワイトバランス補正、階調変換、色空間変換などの画像処理を施す。さらに、画像処理エンジン14は、プログラムの実行により、候補抽出部21、評価部22、履歴作成部23、被写体選出部24として機能する。なお、候補抽出部21、評価部22、履歴作成部23、被写体選出部24の動作については後述する。
【0017】
第1メモリ15は、画像のデータ等を一時的に記憶するメモリであって、例えば揮発性の記憶媒体であるSDRAMで構成される。また、第2メモリ16は、画像処理エンジン14で実行するプログラムや、このプログラムで使用される各種データを記憶するメモリであって、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性メモリで構成される。
【0018】
記録I/F17は、不揮発性の記憶媒体20を接続するためのコネクタを有している。そして、記録I/F17は、コネクタに接続された記憶媒体20に対して画像のデータの書き込み/読み込みを実行する。なお、記憶媒体20は、例えば、ハードディスクや、半導体メモリを内蔵したメモリカードである。なお、
図1では記憶媒体20の一例としてメモリカードを図示する。
【0019】
表示部18は、例えば、電子カメラ11の背面に設けられた液晶モニタである。この表示部18は、スルー画像のリアルタイム表示や、詳細画像の再生表示、詳細画像の撮影後確認表示などを行う。
【0020】
図2は、撮像モードにおける画像処理エンジン14の動作フローチャートである。以下、
図2の各ステップを順に説明する。なお、この撮像モードは、静的な被写体の撮影に有効な「被写体追尾機能」を有している。
【0021】
ステップS11:画像処理エンジン14は、撮像部13を駆動してスルー画像を取得すると共に、そのスルー画像を表示部18へ送出する。なお、このスルー画像の取得及び表示は、例えば1/30秒のフレーム周期で繰り返され、その結果、カメラの被写界の様子が表示部18にリアルタイムで表示される(ビューファインダ表示)。
【0022】
ここでは、
図3に示すようなスルー画像が順次に取得されたと仮定する。
図3では、各フレームのスルー画像に対して取得順序を表す番号(フレーム番号)を付した。因みに、
図3に示した各スルー画像は、おおよそ以下の状況で取得されたものである。
【0023】
・フレーム番号#1〜#10:カメラの構図の主要部としてイルカの遊具が捉えられている期間。
【0024】
・フレーム番号#11〜#13:カメラの構図の主要部がイルカの遊具からアヒルの遊具へと移行する期間。
【0025】
・フレーム番号#14〜#23:カメラの構図の主要部としてアヒルの遊具が捉えられている期間。
【0026】
・フレーム番号#24:カメラの構図の主要部がアヒルの遊具からイルカの遊具へと移行する期間。
【0027】
なお、本実施形態では、各フレームのスルー画像が取得される毎に(すなわち1フレーム周期内に)、以下のステップS12〜S19の処理が実行されるものと仮定する。
【0028】
ステップS12:画像処理エンジン14の候補抽出部21は、抽出基準の異なる複数種類の抽出処理によりスルー画像から被写体候補領域を抽出する。抽出処理の詳細は後述するが、ここでは、以下の9通りの抽出区分の抽出処理が採用されたと仮定する。
【0029】
・第1の抽出区分:輝度方向(Y方向)の閾値Y1による抽出処理。
【0030】
・第2の抽出区分:第1色差方向(Cb方向)の閾値B1による抽出処理。
【0031】
・第3の抽出区分:第2色差方向(Cr方向)の閾値R1による抽出処理。
【0032】
・第4の抽出区分:Y方向の閾値Y2(Y2<Y1)による抽出処理。
【0033】
・第5の抽出区分:Cb方向の閾値B2(B2<B1)による抽出処理。
【0034】
・第6の抽出区分:Cr方向の閾値R2(R2<R1)による抽出処理。
【0035】
・第7の抽出区分:Y方向の閾値Y3(Y3<Y2)による抽出処理。
【0036】
・第8の抽出区分:Cb方向の閾値B3(B2<B2)による抽出処理。
【0037】
・第9の抽出区分:Cr方向の閾値R3(R3<R2)による抽出処理。
【0038】
図4は、抽出された被写体候補領域を抽出区分毎に示す図である。
図4において、白画素(画素値=1)のまとまりが個々の被写体候補領域を示しており、黒画素(画素値=ゼロ)の存在領域は、被写体候補領域以外の領域を示している。但し、本ステップにおける候補抽出部21は、抽出された被写体候補領域の中から、一定の基準を満たさないものについては、被写体候補領域から除外する。一定の基準を満たさないものとは、例えば、フレーム内における被写体候補領域の総面積と比して面積が一定未満であるものや、フレームの縁部にかかっているものなどである。
【0039】
ステップS13:画像処理エンジン14の評価部22は、ステップS12で抽出された被写体候補領域の各々について、被写体らしさの評価値を算出する。個々の被写体候補領域の評価値は、例えば以下の式によって算出することができる。
【0040】
評価値=((領域内の画素数)^γ)/(慣性モーメント)、
慣性モーメント=(モーメント中心から画素までの距離の二乗)の領域内総和
なお、式における「γ」は、1以上の所定値であり、「モーメント中心」は、前フレームから選出された被写体領域(後述)の位置に応じて設定された座標である。具体的には、前フレームから選出された被写体領域の重心、前フレームから選出された被写体領域の包絡枠の中心の何れかに設定される。なお、被写体領域の重心(領域内の画素値の分布も考慮する)の代わりに、被写体領域の中心(領域内の画素値の分布は考慮せず)を使用してもよい。また、現フレームが初期フレーム(撮像モードの開始当初のフレーム)であった場合や、前フレームから被写体領域が1つも選出されなかった場合には、フレームの中心をモーメント中心とする。
【0041】
したがって、面積が広く、まとまり度が高く、前フレームの被写体領域(又はフレーム中央)に近い被写体候補領域ほど、被写体らしさの評価値は高くなる。例えば、
図5に示す2つの被写体候補領域5A、5Bを比較すると、2つの被写体候補領域5A、5Bの間では、面積やまとまり度の差異は小さいが、モーメント中心(
図5における×印)からの距離は被写体候補領域5Bの方が確実に短いので、被写体候補領域5Bの方が慣性モーメントは小さくなり、被写体候補領域5Bの方が被写体らしさの評価値は高くなる。
【0042】
続いて、評価部22は、各被写体候補領域を、それらの評価値によって順位付けする。具体的には、各被写体候補領域に対して、評価値の高いものから順に順位を付与する。
【0043】
ここでは、評価部22は、最終的に順位が4位より低位であったものを被写体候補領域から除外し、順位が3位より高位であるもののみを被写体候補領域として残すこととする。
【0044】
なお、本ステップの評価部22は、前述した9つの抽出区分に対して優先順位を予め決めておき、仮に、複数の被写体候補領域の間で評価値が等しくなった場合には、それら被写体候補領域の抽出区分と予め決めた優先順位とに応じて、それら被写体候補領域を順位付けすることが望ましい。
【0045】
ステップS14:画像処理エンジン14の履歴作成部23は、ステップS13において第1位及び第2位となった被写体候補領域の各々の抽出区分を示す番号(区分番号)を、評価履歴へ書き込む。
【0046】
但し、履歴作成部23は、現フレームが初期フレームであった場合には、区分番号を書き込む前に、評価履歴における全ての区分番号(履歴データ)をクリアする。また、履歴作成部23は、第2位の被写体候補領域が存在しない場合には、第2位に対応する区分番号が存在しないことを示す符号を評価履歴へ書き込み、第1位の被写体候補領域が存在しない場合には、第1位に対応する区分番号が存在しないことを示す符号を評価履歴へ書き込む。
【0047】
図6は、フレーム番号#1〜#24に関する評価履歴のイメージである。なお、
図6では24フレーム分の履歴データを示したが、被写体領域の選出(ステップS16)に使用される履歴データは、現フレームを含めて最新5フレーム分の履歴データのみであるので(詳細は後述。)、ここでは、評価履歴のデータサイズを5フレーム分とし、現フレームの履歴データ(区分番号)が評価履歴へ書き込まれる際には、現フレームを含めて最新5フレームより古いフレームの履歴データについては評価履歴から消去される(上書きされる)ものと仮定する。このように、評価履歴を更新する際に不要な履歴データを消去すれば、評価履歴のデータサイズを最小限に抑えることができる。
【0048】
ステップS15:画像処理エンジン14は、更新後の評価履歴を参照し、現フレームを含めて最新5フレーム分の履歴データが評価履歴に蓄積済みであるか否かを判別する。そして、最新5フレーム分の履歴データが蓄積済みであった場合は、被写体領域の選出を行うべくステップS16へ移行し、蓄積済みでなかった場合は、被写体領域の選出を省略してステップS11へ戻る。
【0049】
ステップS16:画像処理エンジン14の被写体選出部24は、評価履歴(=現フレームを含めて最新5フレーム分の評価履歴)に基づき、例えば以下の手順(a)〜(c)により現フレームの被写体候補領域から被写体領域を選出する。ここでは簡単のため、選出される被写体領域の個数を1と仮定する。
【0050】
(a)被写体選出部24は、現フレームにおける第1位の被写体候補領域の区分番号が評価履歴(=現フレームを含めて最新5フレーム分の評価履歴)に出現した回数をカウントし、その回数が3以上である場合には、その被写体候補領域を現クレームの被写体領域として選出する。但し、その回数が2以下であった場合には、第2位の被写体候補領域の検討を行うために、手順(b)へ移行する。
【0051】
(b)被写体選出部24は、現フレームにおける第2位の被写体候補領域の区分番号が評価履歴(=現フレームを含めて最新5フレーム分の評価履歴)に出現した回数をカウントし、その回数が3以上である場合には、その被写体候補領域を現クレームの被写体領域として選出する。但し、その回数が2以下であった場合には、第3位の被写体候補領域の検討を行うために、手順(c)へ移行する。
【0052】
(c)被写体選出部24は、現フレームにおける第3位の被写体候補領域の区分番号が評価履歴(=現フレームを含めて最新5フレーム分の評価履歴)に出現した回数をカウントし、その回数が3以上である場合には、その被写体候補領域を現クレームの被写体領域として選出する。但し、その出現の回数が2以下であった場合には、被写体領域の選出を行わずに次のステップS17へ移行する。
【0053】
例えば、
図7に示すとおり現フレーム(#i)における第1位の区分番号が「4」であり、現フレーム(#i)における第2位の区分番号が「9」であり、現フレーム(#i)における第3位の区分番号が「3」であり、最新5フレーム分の評価履歴における区分番号「4」の出現回数は1であり、最新5フレーム分の評価履歴における区分番号「9」の出現回数は5であり、最新5フレーム分の評価履歴における区分番号「3」の出現回数はゼロであったとする。
【0054】
この場合、現フレームにおける第1位の区分番号「4」は、出現回数の基準(3以上)を満たさないために、区分番号4の被写体候補領域が被写体領域として選出されることはなく、第2位である区分番号9の被写体候補領域が被写体領域として選出される。
【0055】
すなわち、被写体選出部24は、現フレームにおける上位の被写体候補領域であっても、その被写体候補領域の区分番号が評価履歴に一定回数以上に亘って出現していなかった場合には、その被写体候補領域を被写体領域に選出しない。
【0056】
したがって、或る被写体候補領域が被写体領域として選出されるタイミングは、その被写体候補領域が上位となったタイミングではなく、その被写体候補領域の区分番号が候補履歴に一定回数以上出現したタイミングである。
【0057】
このように、或る被写体候補領域が被写体領域に選出されるまでに一定の猶予を設けておけば、カメラの構図が不安定な期間、或いは一定基準を満たす被写体候補領域が1つも発現していない期間に、被写体領域の選出結果が不安定になること(頻繁に切り替わること)を防止できる。
【0058】
なお、
図8には、フレーム番号#1〜#24に関する評価履歴と共に、フレーム番号#1〜#24に関する選出履歴を示した(
図8の最下段)。
図3、
図8を参照すると明らかなとおり、カメラの構図が不安定な期間、或いは一定基準を満たす被写体候補領域が1つも発現していない期間(#11〜#13、#24)には、当然ながら、被写体領域は選出されない。また、カメラの構図が安定し、かつ一定基準を満たす被写体候補領域が発現している期間(#1〜#10、#14〜#23)であっても、その期間が一定期間を超えるまで(#4まで、#15まで)は、被写体領域は選出されない。
【0059】
ステップS17:画像処理エンジン14は、ステップS16において被写体領域が選出されたか否かを判別し、選出された場合には、枠表示制御・AF制御・AE制御を行うべくステップS18へ移行し、選出されなかった場合には、それらの制御を省略してステップS11へ戻る。
【0060】
ステップS18:画像処理エンジン14は、選出された被写体領域の包絡枠のイメージ(枠イメージ)を表示部18上に重畳表示(オーバーレイ表示)する。
【0061】
また、画像処理エンジン14は、選出された被写体領域又はその包絡枠を対象としてAF制御を行う。具体的には、選出された被写体領域内又は包絡枠内に写っている物体にピントが合うようにフォーカシングレンズの位置を調整する。
【0062】
また、画像処理エンジン14は、選出された被写体領域又はその包絡枠を対象としてAE制御を行う。具体的には、選出された被写体領域内又は包絡枠内に写っている物体の明るさに適した露出(適正露出)に撮像素子の露出(撮像素子のシャッタースピードと撮影光学系の絞り値との組み合わせ)を調整する。
【0063】
したがって、カメラの構図が不安定な期間、或いは一定基準を満たす被写体候補領域が1つも発現していない期間には、枠表示制御、AF制御、AE制御が休止される。また、カメラの構図が安定し、かつ一定基準を満たす被写体候補領域が発現している期間であっても、その期間が一定期間を超えるまでは、枠表示制御、AF制御、AE制御の各々が猶予される。
【0064】
図9には、フレーム番号#1〜#24に関する枠表示の様子を示した。
図8、
図9を参照すると明らかなとおり、カメラの構図が不安定な期間、或いは一定基準を満たす被写体候補領域が1つも発現していない期間(#11〜#13、#24)には、被写体領域が選出されないので、枠表示も行われない。また、カメラの構図が安定し、かつ一定基準を満たす被写体候補領域が発現している期間(#1〜#10、#14〜#23)であっても、その期間が一定期間を超えるまで(#4まで、#15まで)は、被写体領域が選出されないので、枠表示も行われない。
【0065】
ステップS19:画像処理エンジン14は、操作部19を介してユーザから撮影指示が入力されたか否かを判別し、入力された場合はステップS20へ移行し、入力されなかった場合はステップS11へ移行する。
【0066】
ステップS20:画像処理エンジン14は、撮像部13を駆動して記録用の詳細画像を取得すると、その詳細画像を適切な形式で記憶媒体20へ記録し、フローを終了する。
【0067】
[第1実施形態の作用効果]
以上、本実施形態の撮像装置(11)は、撮像素子が順次に生成する複数のフレームの各々から、複数種類の抽出基準により複数の被写体候補領域を抽出する抽出手段(21)と、抽出した複数の被写体候補領域の各々に対して被写体らしさ評価を行う評価手段(22)と、高評価を得た被写体候補領域の抽出基準の種類(区分番号)を、少なくとも所定フレーム周期に亘って記憶することにより評価履歴を作成する作成手段(23)と、現フレームに関する評価の結果と、過去フレームに関する評価履歴とに基づき、現フレームの被写体領域を選出する選出手段(24)とを備える。
【0068】
したがって、本実施形態の撮像装置(11)は、評価履歴を使用しない場合よりも、被写体領域の選出結果を安定させることができる。
【0069】
なお、選出手段(24)は、現フレームにおいて高評価を得た被写体候補領域の抽出基準(区分番号)が、評価履歴に一定以上の回数に亘って登場していた場合にのみ、被写体領域の選出を行う。
【0070】
したがって、本実施形態の撮像装置(11)では、或る被写体候補領域が被写体領域に選出されるのは、その被写体候補領域が上位となったタイミングではなく、その被写体候補領域の抽出基準の候補履歴における登場回数が一定以上となったタイミングである。
【0071】
また、本実施形態の撮像装置(11)は、被写体領域の範囲を示すマークをモニタへ表示する表示制御手段を更に備える。また、本実施形態の撮像装置(11)は、被写体領域を対象として露出制御を行う露出制御手段を更に備える。また、本実施形態の撮像装置(11)は、被写体領域を対象として焦点調節を行う焦点調節手段を更に備える。
【0072】
したがって、本実施形態の撮像装置(11)は、マークの表示先、撮像装置の露出、撮像装置の焦点の各々を安定させることができる。
【0073】
また、本実施形態の撮像装置(11)は、評価履歴の作成が開始されてから所定フレーム周期が経過するまでの期間中は、選出手段(24)を休止させる。
【0074】
したがって、本実施形態の撮像装置(11)は、被写体領域の選出結果が不安定となり易い期間の無駄な処理を省略することができる。
【0075】
また、抽出手段(21)は、フレームを複数の閾値で二値化することにより複数の二値化画像を生成し、複数の二値化画像の各々から被写体候補領域を抽出する。したがって、複数種類の抽出基準による被写体候補領域の抽出は、確実に行われる。
【0076】
また、評価手段(22)は、被写体候補領域の慣性モーメントと被写体候補領域の面積とに基づき被写体候補領域の被写体らしさ評価を行う。したがって、被写体らしさの評価は正確に行われる。
【0077】
また、評価手段(22)は、現フレームに関する評価では、慣性モーメントの中心を、前フレームで選出された被写体領域の位置に応じて設定する。したがって、被写体らしさの評価は、より正確に行われる。
【0078】
[被写体抽出処理の説明]
以下、被写体抽出処理(ステップS12)を詳しく説明する。この抽出処理は、例えば以下の手順(a)〜(f)からなる。このうち手順(b)、(c)、(d)の順序は、変更が可能である。また、手順(b)、(c)、(d)のうち少なくとも2つの手順を並列に実行することも可能である。
【0079】
(a)候補抽出部21は、スルー画像に対して色空間変換を施し、スルー画像の色空間をRGB空間からYCbCr空間へと変換する。
【0080】
(b)候補抽出部21は、スルー画像のY成分(Y画像)に対して互いに異なる閾値を使用した複数通り(ここでは3通りとする。)の二値化処理を施し、二値化画像M(Y1)、M(Y2)、M(Y3)を取得する(
図4の左列を参照。)。このうち、二値化画像M(Y1)は、Y画像において第1閾値Y1より大きな領域に白画素(画素値=1)を配し、かつそれ以外の領域に黒画素(画素値=ゼロ)を配したものであり、二値化画像M(Y2)は、Y画像において第2閾値Y2(Y2<Y1)より大きな領域に白画素を配し、かつそれ以外の領域に黒画素を配したものであり、二値化画像M(Y3)は、Y画像において第3閾値Y3(Y3<Y2)より小さな領域に白画素を配し、かつそれ以外の領域に黒画素を配したものである。なお、閾値Y1、Y2、Y3は、例えば以下のとおり設定される。
【0081】
Y1=Ave+ασ、
Y2=Ave+σ、
Y3=Ave−βσ、
但し、AveはY画像の平均画素値であり、σはY画像の画素値の標準偏差であり、α、βは、1以上の所定値である。
【0082】
(c)候補抽出部21は、スルー画像のCb成分(Cb画像)に対して互いに異なる閾値を使用した複数通り(ここでは3通りとする。)の二値化処理を施し、二値化画像M(B1)、M(B2)、M(B3)を取得する(
図4の中央列を参照。)。このうち、二値化画像M(B1)は、Cb画像において第1閾値B1より大きな領域に白画素(画素値1)を配し、かつそれ以外の領域に黒画素(画素値0)を配したものであり、二値化画像M(B2)は、Cb画像において第2閾値B2(B2<B1)より大きな領域に白画素を配し、かつそれ以外の領域に黒画素を配したものであり、二値化画像M(B3)は、Cb画像において第3閾値B3(B3<B2)より小さな領域に白画素を配し、かつそれ以外の領域に黒画素を配したものである。なお、閾値B1、B2、B3は、例えば以下のとおり設定される。
【0083】
B1=Ave+ασ、
B2=Ave+σ、
B3=Ave−βσ、
但し、AveはCb画像の平均画素値であり、σはCb画像の画素値の標準偏差であり、α、βは、1以上の所定値である。
【0084】
(d)候補抽出部21は、スルー画像のCr成分(Cr画像)に対して互いに異なる閾値を使用した複数通り(ここでは3通りとする。)の二値化処理を施し、二値化画像M(R1)、M(R2)、M(R3)を取得する(
図4の右列を参照。)。このうち、二値化画像M(R1)は、Cr画像において第1閾値R1より大きな領域に白画素(画素値1)を配し、かつそれ以外の領域に黒画素(画素値0)を配したものであり、二値化画像M(R2)は、Cr画像において第2閾値R2(R2<R1)より大きな領域に白画素を配し、かつそれ以外の領域に黒画素を配したものであり、二値化画像M(R3)は、Cr画像において第3閾値R3(R3<R2)より小さな領域に白画素を配し、かつそれ以外の領域に黒画素を配したものである。なお、閾値R1、R2、R3は、例えば以下のとおり設定される。
【0085】
R1=Ave+ασ、
R2=Ave+σ、
R3=Ave−βσ、
但し、AveはCr画像の平均画素値であり、σはCr画像の画素値の標準偏差であり、α、βは、1以上の所定値である。
【0086】
(e)候補抽出部21は、二値化画像M(Y1)、M(Y2)、M(Y3)、M(B1)、M(B2)、M(B3)、M(R1)、M(R2)、M(R3)の各々に対してラベリング処理を行い、それら二値化画像の各々における白画素のまとまりを、被写体候補領域として抽出する。
【0087】
なお、二値化画像M(Y1)を使用した抽出区分が前述した第1の抽出区分であり、二値化画像M(B1)を使用した抽出区分が前述した第2の抽出区分であり、二値化画像M(R1)を使用した抽出区分が前述した第3の抽出区分であり、二値化画像M(Y2)を使用した抽出区分が前述した第4の抽出区分であり、二値化画像M(B2)を使用した抽出区分が前述した第5の抽出区分であり、二値化画像M(R2)を使用した抽出区分が前述した第6の抽出区分であり、二値化画像M(Y3)を使用した抽出区分が前述した第7の抽出区分であり、二値化画像M(B3)を使用した抽出区分が前述した第8の抽出区分であり、二値化画像M(R3)を使用した抽出区分が前述した第9の抽出区分である。
【0088】
(f)候補抽出部21は、手順(e)で抽出された被写体候補領域の中から一定の基準を満たさないもの、例えば、二値化画像における被写体候補領域の総面積と比して面積が一定未満であるものや、二値化画像の縁部にかかっているものなどを、被写体候補領域から外す。なお、この手順(f)における基準は、区分毎に設定されることが望ましい。
【0089】
[実施形態の補足]
なお、上述したステップS14では、評価履歴に書き込むべき区分番号を、2位以上の区分番号のみとしたが、N位以上の区分番号のみとしてもよい(但し、N:自然数)。
【0090】
また、本実施形態では、被写体らしさの評価結果(区分番号)を蓄積した評価履歴を作成し、その評価履歴に基づき現フレームの被写体領域を選出した。しかし、本実施形態では、被写体領域の選出結果(区分番号)を蓄積した選出履歴を評価履歴と共に作成し、その評価履歴と選出履歴との双方に基づき現フレームの被写体領域を選出してもよい。
【0091】
また、本実施形態では、1フレームから選出される被写体領域の数を単数としたが、複数としてもよい。その場合、枠表示は、選出された複数の被写体領域の各々について行い、AF制御及びAE制御は、最上位の被写体領域を対象として行えばよい。また、1フレーム内に複数の枠イメージを同時に表示する場合は、それらの枠イメージを順位に応じて色分けしてもよい。
【0092】
また、本実施形態では、被写体候補領域の抽出区分を、以下の9通りに設定した。
【0093】
・第1の抽出区分:輝度方向(Y方向)の閾値Y1による抽出処理。
【0094】
・第2の抽出区分:第1色差方向(Cb方向)の閾値B1による抽出処理。
【0095】
・第3の抽出区分:第2色差方向(Cr方向)の閾値R1による抽出処理。
【0096】
・第4の抽出区分:Y方向の閾値Y2(Y2<Y1)による抽出処理。
【0097】
・第5の抽出区分:Cb方向の閾値B2(B2<B1)による抽出処理。
【0098】
・第6の抽出区分:Cr方向の閾値R2(R2<R1)による抽出処理。
【0099】
・第7の抽出区分:Y方向の閾値Y3(Y3<Y2)による抽出処理。
【0100】
・第8の抽出区分:Cb方向の閾値B3(B2<B2)による抽出処理。
【0101】
・第9の抽出区分:Cr方向の閾値R3(R3<R2)による抽出処理。
【0102】
しかしながら、本実施形態における抽出区分の組み合わせは、上記9通りの組み合わせに限定されることはない。例えば、YCbCr空間上の所定面を閾値として使用した抽出処理や、色以外の閾値による抽出処理などを、本実施形態の抽出区分の1つに採用してもよい。
【0103】
また、本実施形態では、被写体候補領域の抽出区分の数を9としたが、8以下、又は、10以上としてもよい。
【0104】
また、本実施形態のステップS16では、或る被写体候補領域を被写体領域に選定するための条件を、「その被写体候補領域の区分番号が最新5フレーム分の評価履歴に3回以上出現していること」としたが、これに限定されることはない。この条件は、「その被写体候補領域の区分番号が最新Mフレーム分の評価履歴にK回以上出現していること」であればよい(但し、M>Kであり、K、Mは何れも自然数である。)。
【0105】
また、本実施形態のステップS16では、或る被写体候補領域を被写体領域に選定するための出現回数の閾値K、或いは、出現頻度の閾値K/Mを、可変としてもよい。因みに、この閾値が大きいときほど、ステップS18における制御(枠表示制御、AF制御、AE制御)を安定化することができ、この閾値が小さいときほど、ステップS18における制御の応答性を高めることができる。
【0106】
また、本実施形態では、被写体領域の選出結果を、枠表示制御、AF制御、AE制御に使用したが、他の処理、例えばホワイトバランス制御などに使用してもよい。
【0107】
また、本実施形態では、選出された被写体領域の位置を示すマークとして枠イメージを使用したが、他のマーク(例えば、被写体領域の輪郭を示す輪郭イメージなど)を使用してもよい。
【0108】
また、本実施形態のカメラは、レンズ交換式のカメラ、コンパクトカメラの何れにも適用が可能である。但し、本実施形態のカメラは、動的な被写体よりも静的な被写体を撮影することの多いコンパクトカメラに好適と考えられる。
【0109】
また、本実施形態では、被写体候補領域の抽出処理、被写体領域の選出処理、選出結果に基づく各処理(枠表示制御、AF制御、AE制御)の全てを、プログラムによってソフトウエア的に実現したが、それら処理の一部又は全部を例えばASICによりハードウエア的に実現してもよい。