(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0017】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0019】
(実施の形態1)
《通信システムの概略構成》
図1は、本発明の実施の形態1による通信システムにおいて、その構成例および動作例を示す概略図である。
図2は、
図1の動作例を補足する図である。
図1に示す通信システムは、マルチシャーシスリンクアグリゲーションが設定される2台のスイッチ装置(ネットワーク中継装置)SW1,SW2と、複数(ここでは2台)のスイッチ装置SWU1,SWU2を備える。本明細書では、このマルチシャーシスリンクアグリゲーションが設定される2台のスイッチ装置SW1,SW2を総称してマルチシャーシスリンクアグリゲーション装置MLAGSWと呼ぶ。SW1,SW2のそれぞれは、ボックス型のスイッチ装置(ネットワーク中継装置)で実現される。
【0020】
スイッチ装置(第1および第2スイッチ装置)SW1,SW2のそれぞれは、複数(ここでは3個)のポートP1〜P3と、ブリッジ用ポートPbとを備える。SW1,SW2は、Pbを介して互いに通信回線(ブリッジ用通信回線)で接続される。スイッチ装置SWU1,SWU2のそれぞれは、3個のポートP1〜P3を含む。スイッチ装置(第3スイッチ装置)SWU1は、P1,P2がSW1,SW2のポート(第1ポート)P1にそれぞれ異なる通信回線を介して接続され、当該通信回線の接続元となるP1,P2にリンクアグリゲーション(マルチシャーシスリンクアグリゲーション)を設定する。SWU2は、P1,P2がSW1,SW2のポートP2にそれぞれ異なる通信回線を介して接続され、当該通信回線の接続元となるP1,P2にリンクアグリゲーション(マルチシャーシスリンクアグリゲーション)を設定する。
【0021】
本明細書では、このマルチシャーシスリンクアグリゲーションが設定されるポートをマルチシャーシスリンクアグリゲーショングループMLAGと呼ぶ。スイッチ装置SWU1は、自身のポートP1,P2にMLAG1を設定し、スイッチ装置SWU2は、自身のポートP1,P2にMLAG2を設定する。マルチシャーシスリンクアグリゲーション装置MLAGSWは、SWU1におけるMLAG1の設定に応じて、スイッチ装置SW1,SW2のポートP1にMLAG1を設定し、当該2個のP1を論理的(仮想的)に1個のポートとして機能させる。同様に、MLAGSWは、SWU2におけるMLAG2の設定に応じて、SW1,SW2のポートP2にMLAG2を設定し、当該2個のP2を論理的(仮想的)に1個のポートとして機能させる。
【0022】
また、
図1では、一例として、スイッチ装置SWU1のポートP3に、MACアドレスMA1を持つ端末TM1が接続され、スイッチ装置SWU2のポートP3に、MACアドレスMA2を持つ端末TM2が接続されている。更に、スイッチ装置SW1のポートP3に、端末TM3が接続され、スイッチ装置SW2のポートP3に、端末TM4が接続されている。
【0023】
《通信システム(前提)の概略構成ならびに問題点》
ここで、
図1の通信システムの前提として検討した通信システムの動作ならびに当該動作を用いた場合の具体的な問題点の一例について説明する。
図8は、本発明の前提として検討した通信システムにおいて、その構成および動作の一例を示す概略図である。
図9は、
図8の通信システムにおいて、その問題点の一例を示す説明図である。
図8の通信システムは、
図1の通信システムにおいてマルチシャーシスリンクアグリゲーション装置MLAGSWを構成するスイッチ装置SW1,SW2がスイッチ装置SW’1,SW’2に置き換わった構成となっている。
【0024】
マルチシャーシスリンクアグリゲーション装置MLAGSWでは、2台のスイッチ装置SW’1,SW’2の間で、各ポートと各ポートの先に存在するMACアドレスとの関係を表すアドレステーブルを共有化(同期化)することが求められる。そこで、
図8において、SW’1,SW’2は、フラッディングを利用してアドレステーブルの共有化(同期化)を行っている。具体的には、例えば、SW’1は、スイッチ装置SWU1を介して端末TM1から送信されたフレームFL1を受信し、その転送方法が非ユニキャスト(ブロードキャスト又はマルチキャスト)の場合に、当該フレームをブリッジ用ポートPbを含めて受信したポート以外のポート(P2,P3,Pb)からフラッディングする。スイッチ装置SW’2は、このフラッディングによって生成されたフレームFLBN1をPbで受信する。これによって、SW’1,SW’2は、共に、送信元MACアドレスとなるTM1のMACアドレスMA1を得ることができ、容易にアドレステーブルの共有化(同期化)を図ることが可能となる。
【0025】
このようなフラッディングは、例えば、端末TM1が非ユニキャストのフレームとなるARP(Address Resolution Protocol)リクエストを送信した場合や、あるいは、スイッチ装置SW’1がフレームFL1を受信した際に、FL1に含まれる宛先MACアドレスがSW’1のアドレステーブル内に存在しない場合に生じる。しかしながら、例えば、
図9に示すように、2台のスイッチ装置SW’1,SW’2の一方(ここではSW’2)は宛先MACアドレスが不明のフレームやARPリクエストをある程度の期間に渡って受信しないことがある。
【0026】
図9の例では、端末TM1から端末TM2に向けたフレームFL1をスイッチ装置SW’1が受信しており、TM2からTM1に向けたフレームFL2をスイッチ装置SW’2が受信している。この際に、スイッチ装置SWU1は、TM1からのフレームを受信した際に、当該フレームを、所定の規則に基づいてマルチシャーシスリンクアグリゲーショングループMLAG1が設定されたポートP1,P2のいずれか一方(ここではP1)を選択して転送する。同様に、スイッチ装置SWU2も、TM2からのフレームを受信した際に、当該フレームを、所定の規則に基づいてマルチシャーシスリンクアグリゲーショングループMLAG2が設定されたポートP1,P2のいずれか一方(ここではP2)を選択して転送する。
【0027】
当該所定の規則としては、例えば、送信元MACアドレス、宛先MACアドレス、送信元IP(Internet Protocol)アドレス、宛先IPアドレスの中のいずれか一つまたは複数を用いてハッシュ演算を行う方式等が挙げられる。ただし、当該所定の規則は、スイッチ装置SWU1,SWU2のそれぞれにおいて任意に定めることができる。その結果、
図9に示すように、端末TM1から端末TM2に向けたフレームFL1と、その逆方向のフレームFL2とでマルチシャーシスリンクアグリゲーション装置MLAGSW内で経由するスイッチ装置SW’1,SW’2が異なる場合がある。
【0028】
図9の場合、スイッチ装置SW’1は、フレームFL1を受信した際に、FL1に含まれる送信元MACアドレスMA1を自身のアドレステーブルMACTBL1に登録する。ただし、FL1に含まれる宛先MACアドレス(ここではMA2)はMACTBL1に登録されていないため、SW’1は、当該フレームを、受信したポート以外のポート(P2,P3,Pb)からフラッディングによって転送する。スイッチ装置SW’2は、このフラッディングによって生成されたフレームFLBN1をブリッジ用ポートPbで受信し、当該フレームに含まれる送信元MACアドレスMA1を自身のアドレステーブルMACTBL2に登録する。また、SW’2は、フレームFL2を受信した際に、FL2に含まれる送信元MACアドレスMA2をMACTBL2に登録する。この際に、SW’2は、SW’1の場合と異なり、FL2に含まれる宛先MACアドレス(ここではMA1)がMACTBL2に登録されているため、当該フレームを、フラッディングではなく、ユニキャストでスイッチ装置SWU1に向けて転送する。
【0029】
図9のような通信がある程度の期間に渡って継続的に行われた場合、スイッチ装置SW’2は、スイッチ装置SW’1からのフレームFLBN1によってMACアドレスMA1を継続的に得るため、当該期間においてフラッディングを行わない。したがって、SW’1は、MACアドレスMA2を当該期間において得ることができなくなる。その結果、当該期間において、SW’1は、フレームFL1を受信する度にフラッディングを行うことになる。このフラッディングによって、SW’1周りの各通信回線において通信帯域が圧迫されてしまう。
【0030】
《通信システムの概略動作》
そこで、
図1の通信システムでは、まず、スイッチ装置SW1は、
図9の場合と同様に、ポートP1で受信した送信元MACアドレスMA1および宛先MACアドレスMA2を含むフレームFL1をフラッディングによって受信したポート以外のポート(P2,P3,Pb)から転送している。スイッチ装置SW2は、このブリッジ用ポートPbから転送されたブリッジ用フレームFLB(FLBN1)によってMA1を入手するため、ポートP2で受信した送信元MACアドレスMA2および宛先MACアドレスMA1を含むフレームFL2をポートP1からユニキャストで転送する。この際に、SW2は、
図9の場合と異なり、FL2の転送方法が宛先のポートをポートP1とするユニキャストであってもブリッジ用フレームFLB(FLBC2)を生成し、それをPbからSW1に向けて転送する。
【0031】
その結果、スイッチ装置SW1は、このブリッジ用ポートPbから転送されたブリッジ用フレームFLB(FLBC2)によってMACアドレスMA2を入手するため、フレームFL1をフラッディングではなく、ポートP2からユニキャストで転送することが可能になる。その後は、
図2に示すように、SW1は、スイッチ装置SW2の場合と同様に、FL1の転送方法が宛先のポートをP2とするユニキャストであってもブリッジ用フレームFLB(FLBC1)を生成し、それをPbからSW2に向けて転送する。この場合、SW1がFL1を受信する度に、および、SW2がFL2を受信する度にアドレステーブルMACTBL1,MACTBL2が共有化(同期化)され、各アドレステーブルにおけるMACアドレスMA1,MA2はエージングによって削除されない。したがって、SW1,SW2において、
図9のようなフラッディングは発生せず、通信帯域を十分に確保することが可能になる。
【0032】
以上の動作例から判るように、MLAGSWを構成する第1スイッチ装置(例えばSW1)は、第1ポート(P1)で受信したフレーム(FL1)の転送方法がユニキャストであるか、非ユニキャストであるかに関わらず、ブリッジ用フレーム(FLB)を生成する。言い換えれば、第1スイッチ装置(例えばSW1)は、第1ポート(P1)でフレーム(FL1)を受信した場合に、ブリッジ用フレーム(FLB)を生成し、それをブリッジ用ポート(Pb)から転送する。
【0033】
一方、MLAGSWを構成する第2スイッチ装置(例えばSW2)は、ブリッジ用ポート(Pb)でブリッジ用フレーム(FLB)を受信した場合に、詳細な方法は後述するが、当該ブリッジ用フレーム(FLB)等に基づいて自身のアドレステーブル(MACTBL2)を更新する。なお、ここでは、スイッチ装置SW1が非ユニキャストおよびユニキャストで転送を行い、スイッチ装置SW2がユニキャストで転送を行う場合の動作例を示したが、勿論、SW2が非ユニキャストおよびユニキャストで転送を行い、SW1がユニキャストで転送を行う場合もある。すなわち、前述した第1スイッチ装置の動作は第2スイッチ装置にも同様に適用され、前述した第2スイッチ装置の動作は第1スイッチ装置にも同様に適用される。
【0034】
次に、ブリッジ用フレームFLBの詳細と、アドレステーブルMACTBL1,MACTBL2の具体的な更新方法について説明する。
図1に示すように、MLAGSWを構成する一方のスイッチ装置SW1は、アドレステーブルMACTBL1とリンクテーブルMLAGTBL1を備え、MLAGSWを構成する他方のスイッチ装置SW2も、アドレステーブルMACTBL2とリンクテーブルMLAGTBL2を備えている。
【0035】
リンクテーブルMLAGTBL1,MLAGTBL2は、スイッチ装置SW1,SW2のポート(第1ポート)P1を論理的に1個のポートとして機能させ、SW1,SW2のポートP2を論理的に1個のポートとして機能させるためのテーブルである。MLAGTBL1,MLAGTBL2では、SW1,SW2のポートP1にマルチシャーシスリンクアグリゲーショングループMLAG1が設定され、SW1,SW2のポートP2にマルチシャーシスリンクアグリゲーショングループMLAG2が設定されていることが示される。リンクテーブルは、例えば、ユーザがMLAG1,MLAG2を予め指示することで生成される。
【0036】
アドレステーブルMACTBL1,MACTBL2は、自身が持つ複数のポートと各ポートの先に存在するアドレス(MACアドレス)との関係を表すテーブルである。ここで、MACTBL1,MACTBL2では、マルチシャーシスリンクアグリゲーショングループMLAG1,MLAG2が設定されたポートは、マルチシャーシスリンクアグリゲーショングループMLAGのポートとして登録される。例えば、スイッチ装置SW1内のMACTBL1では、MLAG1のポートの先にアドレス(MACアドレス)MA1が存在していることが示され、これは、リンクテーブルMLAGTBL1に基づいて、SW1のポートP1の先にMA1が存在していることを意味する。
【0037】
図1において、スイッチ装置(第1スイッチ装置)SW1は、第1ポート(P1)で受信したフレーム(FL1)の転送方法が非ユニキャスト(ここでは宛先のポートとして第2ポート(P2)を含む非ユニキャスト)の場合に、中継用のブリッジ用フレームFLB(FLBN1)を生成する。また、
図2において、スイッチ装置(第1スイッチ装置)SW1は、第1ポート(P1)で受信したフレーム(FL1)の転送方法がユニキャスト(ここでは宛先のポートを第2ポート(P2)とするユニキャスト)の場合に、学習用のブリッジ用フレームFLB(FLBC1)を生成する。
【0038】
図3は、
図1および
図2において、ブリッジ用フレームFLBの構造例を示す概略図である。
図3に示すように、例えば、スイッチ装置SW1が第1ポート(P1)で受信したフレームFL(FL1)は、送信元アドレス(送信元MACアドレス)SMACおよび宛先アドレス(宛先MACアドレス)DMACを含んでいる。ブリッジ用フレームFLBは、例えば、当該FLに対して、受信したポートの識別子RPと、フレーム種別の識別子FTが付加された構造となっている。FTが学習用を意味する第1識別子の場合、FLBは学習用のブリッジ用フレームFLBCとなり、FTが中継用を意味する第2識別子の場合、FLBは中継用のブリッジ用フレームFLBNとなる。
【0039】
図1において、スイッチ装置SW1は、中継用のブリッジ用フレームFLB(FLBN1)を生成する際に、例えば、受信したポートの識別子RPをマルチシャーシスリンクアグリゲーショングループMLAG1として、フレーム種別の識別子FTを第2識別子とする。当該FLB(FLBN1)を受信したスイッチ装置SW2は、FLB(FLBN1)の中から、受信したポートの識別子RP(ここではMLAG1)と送信元アドレス(送信元MACアドレス)SMAC(ここではMA1)と第2識別子とを検出する。そして、SW2は、RP(MLAG1)とSMAC(MA1)とに基づいて、アドレステーブルMACTBL2を更新する。すなわち、SW2は、MA1をブリッジ用ポートPbではなく、マルチシャーシスリンクアグリゲーショングループMLAG1のポートに対応付けて登録する。言い換えれば、SW2は、MA1が自身のポートP1の先に存在するものとして登録する。
【0040】
さらに、スイッチ装置SW2は、フレーム種別の識別子FTとして第2識別子を検出したため、当該中継用のブリッジ用フレームFLB(FLBN1)を所定のポートから転送する。この際に、SW2は、例えば、FTとして第2識別子を検出した場合には、実際に受信したポート(Pb)に加えてMLAGのポートからは転送しないこととし、
図1の例では所定のポートをポートP3に定めて転送する。なお、SW2は、このP3からフレームを転送する際には、通常のフレーム(すなわち
図3においてRPやFTが削除されたフレームFL)に戻した上で転送する。
【0041】
一方、
図2において、スイッチ装置SW1は、学習用のブリッジ用フレームFLB(FLBC1)を生成する際に、例えば、受信したポートの識別子RPをマルチシャーシスリンクアグリゲーショングループMLAG1として、フレーム種別の識別子FTを第1識別子とする。当該FLB(FLBC1)を受信したスイッチ装置SW2は、前述した
図1の場合と同様に、FLB(FLBC1)の中から、受信したポートの識別子RP(ここではMLAG1)と送信元アドレス(送信元MACアドレス)SMAC(ここではMA1)と第1識別子とを検出する。そして、SW2は、RP(MLAG1)とSMAC(MA1)とに基づいて、アドレステーブルMACTBL2を更新する。
【0042】
ただし、スイッチ装置SW2は、前述した
図1の場合と異なり、フレーム種別の識別子FTとして第1識別子を検出したため、その後に転送を行う必要はなく、当該学習用のブリッジ用フレームFLB(FLBC1)を破棄する。したがって、学習用のブリッジ用フレームFLB(FLBC1)に関しては、必ずしも、
図3に示すような通常のフレームFL全体を含む必要はなく、アドレステーブルMACTBL2を更新するために、送信元MACアドレスSMACと受信したポートの識別子RPとを含んだ構造であればよい。
【0043】
また、
図2において、スイッチ装置(第1スイッチ装置)SW1は、より望ましくは、第1ポート(P1)で受信したフレーム(FL1)の転送方法がユニキャストの場合に、ブリッジ用ポートPbの通信帯域を勘案して学習用のブリッジ用フレームFLB(FLBC1)を生成する。すなわち、SW1は、所謂QoS(Quality of Service)機能を用い、予めPbに設定された通信帯域の制限範囲を満たす場合に、FLB(FLBC1)をPbから転送するように構成されることが望ましい。なお、中継用のブリッジ用フレームに対しては、このような通信帯域の制限範囲は設定されない。
【0044】
例えば、
図2では、スイッチ装置SW1,SW2が3個のポートP1〜P3を備える例を示したが、実際には、更に多くのポートを備える場合があり、当該ポートにはスイッチ装置や端末が適宜接続される。この場合、SW1,SW2は、この多くのスイッチ装置または端末から受信したフレームや、この多くのスイッチ装置または端末に向けて送信されるフレームを中継する。その結果、SW1,SW2のブリッジ用ポートPb間の通信回線(ブリッジ用通信回線)上で転送されるフレームも増大し易くなるため、ブリッジ用通信回線には広い通信帯域が必要とされる。このブリッジ用通信回線の通信帯域を十分に確保するためには、ブリッジ用通信回線上で転送されるフレームを可能な限り低減することが望ましい。そこで、前述したように通信帯域を制限することが有益となる。
【0045】
通信帯域を制限した場合、制限範囲を超える分のフレームは破棄されるが、実用上は、ある程度の頻度で破棄されないフレーム(学習用のブリッジ用フレームFLB(FLBC1))が得られることになる。このため、アドレステーブルのエージング期間内に高い確率でFLB(FLBC1)が到達できる程度の頻度が確保されれば、
図9で述べたようなフラッディングの問題は解決できる。すなわち、アドレステーブルのエージング期間に見合った頻度を確保できる程度に、通信帯域の制限範囲を設定することが望ましい。なお、
図1および
図2では、ブリッジ用通信回線を1本としているが、実際には、広い通信帯域が必要とされるため、複数のブリッジ用通信回線およびブリッジ用ポートPbが設けられ、当該複数のPbに対してリンクアグリゲーションが設定される。
【0046】
以上、本実施の形態1の通信システムおよびネットワーク中継装置を用いることで、代表的には、マルチシャーシスリンクアグリゲーションが設定される2台のネットワーク中継装置(スイッチ装置)において、アドレステーブルの共有化(同期化)を容易に実現することが可能になる。すなわち、比較例として、例えば、当該2台のスイッチ装置間でソフトウエア処理を用いてアドレステーブルの情報を適宜交換するような方式ではなく、前述したようにブリッジ用フレームを用いる方式であるため、処理が簡素となり、アドレステーブルの共有化(同期化)も容易となる。
【0047】
また、処理が簡素であるため、ハードウエア処理を用いてアドレステーブルの共有化(同期化)を高速に行うことが可能である。この場合、2台のスイッチ装置間でアドレステーブルの不整合が生じる期間を短縮することができる。また、アドレステーブルの共有化(同期化)によって、
図9に示したようなフラッディングの多発を防止できるため、通信帯域を十分に確保することが可能になる。さらに、前述したように、ブリッジ用ポートの通信帯域を制限することで、更なる通信帯域の確保も実現できる。
【0048】
(実施の形態2)
《通信システム(応用例)の概略構成および概略動作》
図4は、本発明の実施の形態2による通信システムにおいて、その構成例および動作例を示す概略図である。
図4の通信システムは、
図1の通信システムと同様の構成を備え、
図1の通信システムの動作に加えて、更に別の動作を行うものとなっている。
図1では、MLAGSWを構成するスイッチ装置SW1,SW2がマルチシャーシスリンクアグリゲーショングループMLAG1,MLAG2のポートからフレームを受信した場合の動作例を示したが、
図4では、SW1,SW2がMLAG1,MLAG2以外のポートP3からフレームを受信した場合の動作例を示している。
【0049】
図4において、図示は省略するが、例えば、端末TM3から端末TM2に向けたフレームがスイッチ装置SW1およびスイッチ装置SWU2を介する通信経路上をユニキャストで転送された場合、SW1およびSWU2は、自身のアドレステーブル上でTM3のMACアドレスMA3を学習する。その逆に、TM2からTM3に向けたフレームが、SWU2のマルチシャーシスリンクアグリゲーショングループMLAG2によってスイッチ装置SW2側に転送された場合、SW2は、当該フレームの宛先MACアドレス(MA3)が不明であるためフラッディングを発生してしまう。したがって、SW1,SW2は、
図1の場合と同様に、MLAG1,MLAG2以外のポートP3からフレームを受信した場合、当該フレームの転送方法がユニキャストであるか、あるいは非ユニキャストであるかに関わらず、ブリッジ用フレームを生成することが望ましい。
【0050】
そこで、
図4において、スイッチ装置SW1は、MACアドレスMA3を持つ端末TM3からのフレームFL3をポートP3で受信し、FL3の転送方法が非ユニキャスト(ここでは宛先のポートとしてP1およびP2を含む非ユニキャスト)の場合、中継用のブリッジ用フレームFLB(FLBN3)を生成し、それをブリッジ用ポートPbから転送する。また、スイッチ装置SW2は、MACアドレスMA4を持つ端末TM4からのフレームFL4をポートP3で受信し、FL4の転送方法がユニキャスト(ここでは宛先のポートをP1とするユニキャスト)の場合、学習用のブリッジ用フレームFLB(FLBC4)を生成し、それをPbから転送する。なお、学習用のブリッジ用フレームに関しては、
図1の場合と同様に、通信帯域を制限することが望ましい。
【0051】
ここで、
図3を参照して、中継用のブリッジ用フレームFLB(FLBN3)は、送信元MACアドレスSMACとしてMA3を、受信したポートの識別子としてP3を、フレーム種別の識別子FTとして中継用であることを表す第2識別子をそれぞれ含む。また、学習用のブリッジ用フレームFLB(FLBC4)は、送信元MACアドレスSMACとしてMA4を、受信したポートの識別子としてP3を、フレーム種別の識別子FTとして学習用であることを表す第1識別子をそれぞれ含む。
【0052】
中継用のブリッジ用フレームFLB(FLBN3)を受信したスイッチ装置SW2は、FLB(FLBN3)の中から検出した送信元MACアドレスSMAC(MA3)と、受信したポートの識別子(P3)に基づいてアドレステーブルMACTBL2を更新する。この際に、SW2は、例えば、MA3をスイッチ装置SW1のポートP3に対応付けて登録する。そして、SW2は、
図1の場合と同様に、FLB(FLBN3)の中から第2識別子を検出したため、当該FLB(FLBN3)を通常のフレームに戻して所定のポート(ここではP3)から転送する。
【0053】
また、学習用のブリッジ用フレームFLB(FLBC4)を受信したスイッチ装置SW1は、FLB(FLBC4)の中から検出した送信元MACアドレスSMAC(MA4)と、受信したポートの識別子(P3)に基づいてアドレステーブルMACTBL1を更新する。この際に、SW1は、例えば、MA4をスイッチ装置SW2のポートP3に対応付けて登録する。そして、SW1は、
図1の場合と同様に、FLB(FLBC4)の中から第1識別子を検出したため、当該FLB(FLBC4)を破棄する。
【0054】
このような動作により、スイッチ装置SW1,SW2は、マルチシャーシスリンクアグリゲーション装置MLAGSWとして、各ポートと各ポートの先に存在するMACアドレスとの関係をアドレステーブルに登録することができ、当該アドレステーブルを共有化(同期化)することができる。例えば、SW2は、端末TM2から端末TM3に向けたフレームをスイッチ装置SWU2を介して受信した場合、アドレステーブルMACTBL2に基づいて宛先のポートがSW1のポートP3であることを認識する。この場合、SW2は、例えば、受信したフレームに当該宛先のポートの識別子を付加したブリッジ用フレームを生成し、それをSW1に向けて転送する。SW1は、当該ブリッジ用フレームから当該宛先のポートの識別子を検出し、それに基づいて、当該ブリッジ用フレームを通常のフレームに戻してポートP3から転送する。
【0055】
(実施の形態3)
本実施の形態3では、実施の形態1および2の通信システムにおける、マルチシャーシスリンクアグリゲーション装置MLAGSWを構成するスイッチ装置(ネットワーク中継装置)SW1,SW2の主要な構成例および動作例について説明する。
【0056】
《スイッチ装置(ネットワーク中継装置)の概略構成》
図5(a)は、本発明の実施の形態3によるネットワーク中継装置において、その主要部の概略構成例を示すブロック図であり、
図5(b)は、
図5(a)におけるテーブルユニットの構成例を示す概略図である。
図5(a)に示すスイッチ装置(ネットワーク中継装置)SWは、例えば、フレーム転送制御部FFCTLと、テーブルユニットTBLUと、複数のポート(P1,P2,P3,…,Pb1,Pb2,…)を備えている。この内、Pb1,Pb2,…は、実施の形態1で述べたように、ブリッジ用ポートPbを構成し、Pb1,Pb2,…にはリンクアグリゲーションが設定されている。
【0057】
例えば、
図1のスイッチ装置SW1を例とすると、ポートP1,P2にはそれぞれ通信回線を介してスイッチ装置SWU1,SWU2が接続され、ポートP3には通信回線を介して端末TM3が接続される。また、ブリッジ用ポートPbには通信回線(ブリッジ用通信回線)を介してスイッチ装置SW2が接続される。テーブルユニットTBLUには、
図1等で述べたように、リンクテーブルMLAGTBLとアドレステーブルMACTBLが保持されている。
【0058】
フレーム転送制御部FFCTLは、ブリッジ用フレーム処理部BFCTLを含んでいる。FFCTLは、主に、テーブルユニットTBLUに基づいて、各ポート(P1,P2,P3,…,Pb)間でフレームを転送する際の通信経路の構築や、受信したフレームに基づいてアドレステーブルMACTBLの更新等を行う。この際に、BFCTLは、
図3に示したようなブリッジ用フレームFLBの生成や、ブリッジ用ポートPbから受信したブリッジ用フレームFLBの解析等を行う。
【0059】
《スイッチ装置(ネットワーク中継装置)の動作》
図6は、
図5(a)および
図5(b)のネットワーク中継装置の主要な動作例を示すフロー図であり、
図7は、
図6に続く主要な動作例を示すフロー図である。
図6において、まず、フレーム転送制御部FFCTLは、複数のポート(P1,P2,P3,…,Pb)からフレームを受信する(ステップS101)。次いで、FFCTLは、受信したフレームがブリッジ用フレームFLBであるか否かを判別する(ステップS102)。すなわち、FFCTLは、受信したポートがブリッジ用ポートPbであるか否かを判別する。
【0060】
ここで、ステップS102において、受信したフレームがブリッジ用フレームFLBでない場合について
図7を用いて説明する。
図7では、まず、フレーム転送制御部FFCTLは、受信したフレームの中の送信元MACアドレスSMACと、当該フレームを受信したポートの関係に基づいてアドレステーブルMACTBLを更新する(ステップS201)。この際に、FFCTLは、リンクテーブルMLAGTBLを参照し、受信したポートがマルチシャーシスリンクアグリゲーショングループMLAGが設定されたポートの場合には、MLAGのポートとしてMACTBLを更新する。
【0061】
次いで、フレーム転送制御部FFCTLは、アドレステーブルMACTBLに基づいて受信したフレームの宛先のポートを決定し、また、受信したフレームの転送方法を判別する(ステップS202)。すなわち、FFCTLは、例えば、受信したフレームの中の宛先MACアドレスDMACがMACTBLに存在する場合には転送方法をユニキャストとし、MACTBLに存在しない場合には転送方法を非ユニキャストとする。なお、例えば、受信したフレームが予めブロードキャストとして指定されたフレームの場合には、DMACは全て‘1’となるため、FFCTLは、転送方法を非ユニキャストとする。
【0062】
続いて、フレーム転送制御部FFCTLは、ステップS202での判別結果が非ユニキャストの場合には、ステップS204を実行し、ユニキャストの場合にはステップS207を実行する。ステップS204において、FFCTLは、受信したフレームFLをブリッジ用ポートPbを除いた宛先のポート(例えば、Pbと受信したポートを除いた全ポート)から非ユニキャストで転送する。次いで、FFCTL(ブリッジ用フレーム処理部BFCTL)は、受信したフレームFLに対して、受信したポートの識別子RPとフレーム種別の識別子FT(ここでは中継用の第2識別子)を付加して中継用のブリッジ用フレームFLBNを生成する(ステップS205)。そして、FFCTLは、当該中継用のブリッジ用フレームFLBNをブリッジ用ポートPbから転送する(ステップS206)。
【0063】
一方、ステップS207において、フレーム転送制御部FFCTLは、宛先のポートがブリッジ用ポートPbか否かを判別する。すなわち、例えば、
図1において、端末TM3から端末TM4に向けてSW1→SW2の通信経路上をユニキャストで転送されるフレームや、端末TM1から端末TM3に向けてSWU1→SW2→SW1の通信経路上をユニキャストで転送されるフレームを識別する。宛先のポートがPbの場合、FFCTLは、前述したステップS205,S206の処理を行う。ただし、このステップS205では、FFCTLは、実施の形態2で述べたように、受信したフレームに対して更に宛先のポートの識別子を付加してもよい。
【0064】
また、ステップS207において、受信したフレームの転送方法がユニキャストであり、かつ宛先のポートがブリッジ用ポートPbでない場合、フレーム転送制御部FFCTLは、Pbの通信帯域が制限範囲内であるか否かを判別する(ステップS208)。Pbの通信帯域が制限範囲内である場合、FFCTL(ブリッジ用フレーム処理部BFCTL)は、受信したフレームFLに対して、受信したポートの識別子RPとフレーム種別の識別子FT(ここでは学習用の第1識別子)を付加して学習用のブリッジ用フレームFLBCを生成する(ステップS209)。そして、FFCTLは、当該学習用のブリッジ用フレームFLBCをPbから転送する(ステップS210)。さらに、FFCTLは、受信したフレームFLを宛先のポートからユニキャストで転送する(ステップS211)。なお、ステップS208において、Pbの通信帯域が制限範囲を超える場合、FFCTLは、学習用のブリッジ用フレームを生成することなく、ステップS211を実行する。
【0065】
一方、
図6のステップS102において、受信したフレームがブリッジ用フレームFLBであった場合、フレーム転送制御部FFCTL(ブリッジ用フレーム処理部BFCTL)は、FLBの中から受信したポートの識別子RPと送信元MACアドレスSMACとフレーム種別の識別子FTを検出する(ステップS103)。続いて、FFCTLは、受信したポートの識別子RPと送信元MACアドレスSMACとに基づいてアドレステーブルMACTBLを更新する(ステップS104)。次いで、フレーム転送制御部FFCTLは、フレーム種別の識別子FTが学習用(すなわち第1識別子)であるか否かを判別する(ステップS105)。
【0066】
ステップS105において、フレーム種別の識別子FTが学習用(すなわち第1識別子)の場合、FFCTLは、当該学習用のブリッジ用フレームFLBCを破棄する(ステップS106)。ステップS105において、FTが学習用でない(すなわち中継用の第2識別子である)場合、FFCTLは、当該中継用のブリッジ用フレームFLBNを転送するための宛先のポートを決定する(ステップS107)。この際に、FFCTLは、例えば、ステップS207からステップS205へのフローで説明したように、FLBNに宛先のポートの識別子が付加されている場合には、ブリッジ用フレーム処理部BFCTLを用いて宛先のポートの識別子を検出し、それに基づいて宛先のポートを決定する。また、宛先のポートが不明の場合には、FFCTLは、ブリッジ用ポートPbとマルチシャーシスリンクアグリゲーショングループMLAGのポート以外のポートを宛先のポートとして決定する。そして、FFCTLは、FLBNを通常のフレームFLに戻して宛先のポートから転送する(ステップS108)。
【0067】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、前述した実施の形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0068】
例えば、前述した各実施の形態では、主に、レイヤ2(L2)レベルのスイッチ装置(ネットワーク中継装置)を例として説明を行ったが、勿論、レイヤ3(L3)レベルのスイッチ装置(ネットワーク中継装置)であっても同様に適用可能である。