特許第5935701号(P5935701)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5935701差動信号伝送用ケーブルの回路基板への接続方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5935701
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】差動信号伝送用ケーブルの回路基板への接続方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 11/00 20060101AFI20160602BHJP
   H05K 3/32 20060101ALI20160602BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20160602BHJP
   H01B 7/17 20060101ALI20160602BHJP
   H01R 43/02 20060101ALI20160602BHJP
   H01B 7/20 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   H01B11/00 J
   H05K3/32 C
   H01B7/00 306
   H01B7/18 D
   H01R43/02 B
   H01B7/20
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-9083(P2013-9083)
(22)【出願日】2013年1月22日
(65)【公開番号】特開2014-143002(P2014-143002A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2015年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080001
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100108279
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100113642
【弁理士】
【氏名又は名称】菅田 篤志
(74)【代理人】
【識別番号】100117008
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 章子
(74)【代理人】
【識別番号】100147430
【弁理士】
【氏名又は名称】坂次 哲也
(72)【発明者】
【氏名】西村 慶
(72)【発明者】
【氏名】南畝 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】瀬谷 修
【審査官】 和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−019234(JP,A)
【文献】 特開2012−099434(JP,A)
【文献】 特開平10−041021(JP,A)
【文献】 特開2005−268005(JP,A)
【文献】 特開昭56−022057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00− 7/20
H01B 11/00
H01R 43/00−43/02
H05K 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の信号線導体と、前記信号線導体の周囲に設けられる絶縁体と、前記絶縁体の周囲に設けられる外部導体とを備えたケーブルアッシーを準備するケーブルアッシー準備工程と、
シグナルパッドおよびグラウンドパッドが設けられる回路基板を準備する回路基板準備工程と、
前記絶縁体と前記外部導体との間に設けられ、前記外部導体を前記グラウンドパッドに接続するときの熱が前記絶縁体に伝達されるのを抑制する断熱部材を準備する断熱部材準備工程と、
前記絶縁体と前記外部導体との間に、前記断熱部材を設ける断熱部材装着工程と、
前記信号線導体を前記シグナルパッドに、前記外部導体の前記断熱部材と重畳した部分を前記グラウンドパッドにそれぞれ臨ませて電気的に接続する接続工程と、
を備える、差動信号伝送用ケーブルの回路基板への接続方法。
【請求項2】
請求項記載の差動信号伝送用ケーブルの回路基板への接続方法において、
前記外部導体はシート状に形成され、前記外部導体を一旦剥いて前記断熱部材を前記絶縁体に装着し、剥かれた前記外部導体を前記断熱部材に巻いて前記絶縁体と前記外部導体との間に前記断熱部材が設けられる、差動信号伝送用ケーブルの回路基板への接続方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の差動信号伝送用ケーブルの回路基板への接続方法において、
前記断熱部材は、前記絶縁体に被せられる金属管により形成される、差動信号伝送用ケーブルの回路基板への接続方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の差動信号伝送用ケーブルの回路基板への接続方法において、
前記外部導体が、前記グラウンドパッドに溶接により接続される、差動信号伝送用ケーブルの回路基板への接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の信号線導体を備え、位相を180度反転させた差動信号を伝送する差動信号伝送用ケーブルの回路基板への接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、数Gbit/s以上の高速デジタル信号を扱うサーバやルータ,ストレージ製品等の機器においては、差動インターフェース規格、例えばLVDS(Low Voltage Differential Signal)が採用され、各機器間あるいは機器内の各回路基板間では、差動信号伝送用ケーブルを用いて差動信号の伝送が行われている。差動信号は、システム電源の低電圧化を実現しつつ外来ノイズに対する耐性が高いという特徴を有している。
【0003】
差動信号伝送用ケーブルは一対の信号線導体を備え、各信号線導体には、位相を180度反転させたプラス側信号およびマイナス側信号がそれぞれ伝送されるようになっている。そして、これらの2つの信号の電位差が信号レベルとなって、例えば、電位差がプラスであれば「High」,マイナスであれば「Low」として、当該信号レベルが受信側で認識されるようになっている。
【0004】
このような差動信号を伝送する差動信号伝送用ケーブルとしては、例えば、特許文献1に記載された技術が知られている。特許文献1に記載された技術は、所定間隔で平行に並べられた一対の信号線導体を備え、これらの各信号線導体は絶縁体によって覆われている。つまり、各信号線導体は絶縁体によって所定間隔で平行に保持されている。また、絶縁体の周囲はシート状の外部導体によって覆われており、さらに、外部導体の周囲は保護外皮としてのシースによって覆われている。
【0005】
そして、差動信号伝送用ケーブルの長手方向端部を順次段剥きすることで、各信号線導体および外部導体の一部がそれぞれ外部に露出されている。外部導体の露出部分には、金属製のシールド接続端子が、加締めによって接続されている。シールド接続端子は、板状金属と当該板状金属に一体成形されたはんだ接続ピンとを備え、板状金属は、加締め時に外部導体の形状に倣って塑性変形されるようになっている。これにより、外部導体とシールド接続端子とが電気的に接続され、外部導体がシールド接続端子を介して回路基板のグラウンドパッドに電気的に接続されるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−099434号公報(図1図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の特許文献1に記載された差動信号伝送用ケーブルによれば、外部導体をグラウンドパッドに直にはんだ接続するものに比して、はんだ接続作業で用いるコテ先の熱[約350℃]が外部導体に伝達され難くなっており、これにより絶縁体が熱により変形したり溶融したりするのを抑制することができる。しかしながら、シールド接続端子を外部導体の形状に沿わせて加締め加工する際に、外部導体の内側にある絶縁体が加締め力により弾性変形し、ひいては絶縁体のさらに内側にある各信号線導体間の距離が変化して設計寸法通りにならないという製造上の問題が起こり得る。これにより、差動信号伝送用ケーブルの電気的特性が製品毎にばらつくという問題を生じ得る。
【0008】
本発明の目的は、製品毎に安定した電気的特性を得ることができる差動信号伝送用ケーブルの回路基板への接続方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の他の態様では、一対の信号線導体と、前記信号線導体の周囲に設けられる絶縁体と、前記絶縁体の周囲に設けられる外部導体とを備えたケーブルアッシーを準備するケーブルアッシー準備工程と、シグナルパッドおよびグラウンドパッドが設けられる回路基板を準備する回路基板準備工程と、前記絶縁体と前記外部導体との間に設けられ、前記外部導体を前記グラウンドパッドに接続するときの熱が前記絶縁体に伝達されるのを抑制する断熱部材を準備する断熱部材準備工程と、前記絶縁体と前記外部導体との間に、前記断熱部材を設ける断熱部材装着工程と、前記信号線導体を前記シグナルパッドに、前記外部導体の前記断熱部材と重畳した部分を前記グラウンドパッドにそれぞれ臨ませて電気的に接続する接続工程と、を備える。
【0011】
本発明の他の態様では、前記外部導体はシート状に形成され、前記外部導体を一旦剥いて前記断熱部材を前記絶縁体に装着し、剥かれた前記外部導体を前記断熱部材に巻いて前記絶縁体と前記外部導体との間に前記断熱部材が設けられる。
【0012】
本発明の他の態様では、前記断熱部材は、前記絶縁体に被せられる金属管により形成される。
【0013】
本発明の他の態様では、前記外部導体が、前記グラウンドパッドに溶接により接続される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、絶縁体と外部導体との間に、外部導体を回路基板のグラウンドパッドに接続するときの熱が絶縁体に伝達されるのを抑制する断熱部材を設けるので、絶縁体の熱による変形や溶融を抑制した状態のもとで、外部導体をグラウンドパッドに直接接続することができる。したがって、従前のような加締め加工を省略することができ、絶縁体には加締め力が負荷されない。よって、絶縁体が弾性変形されるのを抑制して、ひいては各信号線導体間の距離を設計寸法通りにでき、製品毎に安定した電気的特性を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態1に係る差動信号伝送用ケーブルと回路基板との接続構造を示す斜視図である。
図2】(a),(b)は、図1の差動信号伝送用ケーブルの詳細構造を説明する説明図である。
図3図1のA矢視図である。
図4図1のB矢視図である。
図5】(a)は差動信号伝送用ケーブルの組み立て手順を示す斜視図、(b)は差動信号伝送用ケーブルの回路基板への接続手順を示す斜視図である。
図6】実施の形態2に係る差動信号伝送用ケーブルの図3に対応した図である。
図7】他の回路基板への接続構造(実施の形態3)を示す斜視図である。
図8】他の回路基板への接続構造(実施の形態4)を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態1について図面を用いて詳細に説明する。
【0017】
図1は実施の形態1に係る差動信号伝送用ケーブルと回路基板との接続構造を示す斜視図を、図2(a),(b)は図1の差動信号伝送用ケーブルの詳細構造を説明する説明図を、図3図1のA矢視図を、図4図1のB矢視図をそれぞれ示している。
【0018】
図1ないし図4に示すように、実施の形態1に係る差動信号伝送用ケーブル10は、一対の信号線導体11を備えている。各信号線導体11のうちのいずれか一方には差動信号としてのプラス側信号が伝送され、各信号線導体11のうちのいずれか他方には差動信号としてのマイナス側信号が伝送されるようになっている。各信号線導体11は、例えば、その表面に錫めっき処理が施された軟銅線(Tinned Annealed Copper Wire)によって形成され、各信号線導体11は絶縁体12によって被覆されている。
【0019】
絶縁体12は、差動信号伝送用ケーブル10に柔軟性を持たせるために、例えば、発泡ポリエチレン(Foamed Poly-Ethylene)によって形成され、その断面形状は略楕円形形状に形成されている。絶縁体12は、各信号線導体11を所定間隔で平行に並ぶよう保持しており、各信号線導体11の周囲には、略同等の肉厚となるよう絶縁体12が配置されている。ここで、絶縁体12の材料である発砲ポリエチレンの溶融温度は[110℃〜120℃]に設定されている。
【0020】
ただし、絶縁体12は、図示のような断面形状が略楕円形形状のものに限らず、例えば、絶縁体12の断面形状を、一対の長さが等しい平行線と一対の半円形形状とからなる陸上競技場のトラック(Track)に略等しい形状としても良い。
【0021】
各信号線導体11の長手方向に沿う大部分は絶縁体12の内部に配置されており、各信号線導体11の長手方向端部(図1中左側)は、絶縁体12の外部に露出されている。各信号線導体11の露出部分はシグナルパッド接続部11aとなっており、当該シグナルパッド接続部11aは、それぞれ回路基板20のシグナルパッド22にレーザー溶接等の溶接手段(図示せず)により電気的に接続されている。
【0022】
ここで、図3の濃色の網掛部分がレーザー溶接された部分を示しており、シグナルパッド接続部11aとシグナルパッド22との接触部分をレーザー光で加熱することにより両者は一体化されている。レーザー光による加熱時間は一瞬であるため、レーザー光の熱は絶縁体12に伝達し難くなっており、よって、絶縁体12が熱で変形したり溶融したりするようなことは無い。なお、シグナルパッド接続部11aおよびシグナルパッド22は、レーザー溶接による接続に限らず、はんだによる接続であっても良い。
【0023】
絶縁体12の周囲には、外来ノイズの影響を抑制するために外部導体13が設けられている。外部導体13は、例えば、シート状の銅箔によって形成され、絶縁体12の周囲を覆うように巻かれている。ただし、外部導体13としては、銅箔に限らず他の金属箔であっても良く、さらには軟銅線等の金属細線を編み込んだ編組シートであっても良い。
【0024】
外部導体13の長手方向に沿う大部分はシース14によって被覆されており、外部導体13の長手方向端部(図1中左側)は、シース14の外部に露出されている。ここで、シース14は、例えば、耐熱PVC(Heat Resistant Polyvinyl Chloride)によって形成され、差動信号伝送用ケーブル10を保護する外皮として機能している。
【0025】
外部導体13の外部に露出した部分、つまり外部導体13の長手方向端部には、導電性に優れた銅等の金属管よりなる断熱部材15が設けられている。断熱部材15は、外部導体13を一旦剥いて絶縁体12に装着され、その後、剥かれた外部導体13を断熱部材15の周囲に巻いて、絶縁体12と外部導体13との間に挟まれるようにして設けられている。断熱部材15は、外部導体13を回路基板20のグラウンドパッド23に接続するときの熱、つまりレーザー溶接による熱が、絶縁体12に伝達されるのを抑制するようになっている。
【0026】
ここで、図2(b)に示すように、断熱部材15の厚み寸法t1は、外部導体13の厚み寸法t2に比して、例えば10倍以上の厚い厚み寸法に設定されている(t1≫t2)。これにより、レーザー光の熱は絶縁体12に伝達し難くなっており、ひいては絶縁体12が熱で変形したり溶融したりするようなことは無い。
【0027】
断熱部材15は、絶縁体12の長手方向端部に嵌合するよう被せられており、これにより、差動信号伝送用ケーブル10の組み立て途中等において、断熱部材15が絶縁体12から脱落する等の不具合の発生を無くしている。また、断熱部材15と絶縁体12との間には隙間(つまり空気層)が殆ど存在しないため、差動信号伝送用ケーブル10の当該部分における誘電率の変化を抑制し、電気的特性が悪化するのを防止している。
【0028】
外部導体13の断熱部材15に対応した部分、つまり外部導体13の断熱部材15と重畳した部分には、一対のグラウンドパッド23がレーザー溶接等の溶接手段により接続されるようになっている。ここで、図3に示すように、各グラウンドパッド23は、外部導体13の略楕円形形状の長軸方向に沿う両側に配置されている。このように、外部導体13を中心として、長軸方向に鏡像対称となるよう各グラウンドパッド23が配置されるようにすることで、各信号線導体11を流れる電気信号のバランスを良好な状態とし、ひいては差動信号伝送用ケーブル10の電気的特性を向上させている。
【0029】
ここで、図4に示すように、差動信号伝送用ケーブル10の長手方向に沿う断熱部材15の長さ寸法L1は、各グラウンドパッド23の基板本体21からの突出長さL2に対応させて設定されている。例えば、各グラウンドパッド23の突出長さがより長い場合には、それに対応させて断熱部材15の長さ寸法も長くする。要は、各グラウンドパッド23を外部導体13にレーザー溶接する際に、溶接部が断熱部材15の領域に位置するような寸法関係に設定する。
【0030】
図1図3および図4に示すように、差動信号伝送用ケーブル10が電気的に接続される回路基板20は、樹脂製の基板本体21を備え、当該基板本体21には、一対のシグナルパッド22と一対のグラウンドパッド23とがインサート成形により設けられている。各シグナルパッド22および各グラウンドパッド23は、基板本体21の表面(図中上側の面)に露出されており、また、各シグナルパッド22および各グラウンドパッド23の長手方向に沿う差動信号伝送用ケーブル10側(図4中右側)は、基板本体21からそれぞれ突出されている。ここで、各シグナルパッド22と各グラウンドパッド23との区別を判り易くするために、各グラウンドパッド23には薄色の網掛けを施している。
【0031】
各シグナルパッド22の基板本体21からの突出長さはL3に設定され、各グラウンドパッド23の基板本体21からの突出長さはL2に設定されている。各シグナルパッド22の先端部は差動信号伝送用ケーブル10の絶縁体12に突き当てられており、これにより差動信号伝送用ケーブル10は回路基板20に対して位置決めされている。ここで、各シグナルパッド22の突出長さL3は、各グラウンドパッド23の突出長さL2の略半分の長さ寸法に設定されている。
【0032】
各シグナルパッド22および各グラウンドパッド23は、差動信号伝送用ケーブル10の各シグナルパッド接続部11aおよび外部導体13の略楕円形形状の長軸方向に沿う両側に対応して、所定間隔で並んで配置されている。各グラウンドパッド23の離間寸法はSに設定され、当該離間寸法Sは、外部導体13の長軸方向に沿う幅寸法Wよりも若干小さい寸法に設定されている(S<W)。
【0033】
このように、断熱部材15を長さ寸法L1,各グラウンドパッド23を突出長さL2,各シグナルパッド22を突出長さL3に設定するとともに、各グラウンドパッド23の離間寸法をS,外部導体13の幅寸法をWに設定している。また、各シグナルパッド22の先端部を差動信号伝送用ケーブル10の絶縁体12に突き当てている。これにより、差動信号伝送用ケーブル10の回路基板20への接続時において、差動信号伝送用ケーブル10を回路基板20に対して位置決めし易くしている。
【0034】
次に、以上のように形成した差動信号伝送用ケーブル10の回路基板20への接続方法について、図面を用いて詳細に説明する。
【0035】
図5(a)は差動信号伝送用ケーブルの組み立て手順を示す斜視図を、(b)は差動信号伝送用ケーブルの回路基板への接続手順を示す斜視図をそれぞれ示している。
【0036】
[ケーブルアッシー準備工程]
図5に示すように、まず、別の製造工程で製造されたケーブルアッシーCAを準備する。ここで、ケーブルアッシーCAとは、一対の信号線導体11と、信号線導体11の周囲に設けられる絶縁体12と、絶縁体12の周囲に設けられる外部導体13と、外部導体13の周囲に設けられるシース14とを備え、断熱部材15を装着していないサブアッセンブリの状態を指している。
【0037】
[回路基板準備工程]
次に、別の製造工程で製造された回路基板20、つまり、各シグナルパッド22,各グラウンドパッド23が設けられた回路基板20を準備する。
【0038】
[断熱部材準備工程]
さらに、別の製造工程で製造された断熱部材15を準備する。ここで、断熱部材15は、ケーブルアッシーCAの絶縁体12の略楕円形形状に合わせて金属管を押圧変形させた後に、当該金属管を長さ寸法L1(図4参照)に切断することで形成されている。
【0039】
なお、上述の[ケーブルアッシー準備工程],[回路基板準備工程]および[断熱部材準備工程]は、それぞれ別の製造工程で製造されるため、その順番は入れ替えても構わない。
【0040】
[接続部形成工程]
ケーブルアッシーCA,回路基板20および断熱部材15を準備した後は、ケーブルアッシーCAの長手方向端部を順次段剥きする処理を施す。具体的には、ケーブルアッシーCAの長手方向端部から所定長さの分、絶縁体12および外部導体13を取り除いて各信号線導体11の長手方向端部を露出させる。これにより回路基板20の各シグナルパッド22に電気的に接続される各シグナルパッド接続部11aを形成する。さらには、外部導体13の端部から所定長さの分、シース14を取り除いて外部導体13を露出させる。これにより、接続部形成工程が完了する。ここで、外部導体13の露出部分の長さは、断熱部材15の長さ寸法L1よりも長い長さ寸法に設定する。
【0041】
[断熱部材装着工程]
次に、絶縁体12の周囲に巻かれた外部導体13を、図中矢印(1)に示すように一旦剥いて、その内側にある絶縁体12を外部に露出させる。具体的には、外部導体13を絶縁体12に巻いて形成された重ね合わせ部Gの段差に、図示しない治具等を差し込むことにより、外部導体13をケーブルアッシーCAの短手方向両側に開くようにする。その後、図中矢印(2)に示すように、外部導体13を剥いて露出された絶縁体12に断熱部材15を臨ませる。そして、ケーブルアッシーCAの長手方向一側(図中左側)から断熱部材15を絶縁体12に嵌合させるよう被せる。このとき、断熱部材15の長手方向端部と絶縁体12の長手方向端部とが同じ位置になるように嵌合量を調整する。
【0042】
次いで、絶縁体12に被せられた断熱部材15に対し、一旦剥かれた外部導体13を、図中矢印(3)に示すように元に戻すようにする。つまり、外部導体13によって断熱部材15を巻くようにする。ここで、外部導体13が断熱部材15から剥がれるのを防止するために、導電性を有する材料よりなる導電性接着剤(図示せず)を用い、外部導体13を断熱部材15に接着する。これにより、断熱部材装着工程が完了し、差動信号伝送用ケーブル10が完成する。
【0043】
[接続工程]
次に、図中矢印(4)に示すように、完成した差動信号伝送用ケーブル10の各シグナルパッド接続部11aの先端部を、回路基板20の各シグナルパッド22上に配置するとともに、外部導体13によって覆われた断熱部材15を、各グラウンドパッド23間に配置する。ここで、各シグナルパッド22の先端部が差動信号伝送用ケーブル10の絶縁体12に突き当てられるようにする。これにより、差動信号伝送用ケーブル10を回路基板20の正規位置に位置決めすることができる(図4参照)。
【0044】
その後、図中矢印(5)に示すように、溶接治具T(ここではレーザー溶接機)を、各シグナルパッド22および各グラウンドパッド23に臨ませる。そして、各シグナルパッド接続部11aを各シグナルパッド22に電気的に接続するとともに、外部導体13の断熱部材15と重畳した部分を各グラウンドパッド23に電気的に接続する。これにより、接続工程が完了し、差動信号伝送用ケーブル10の回路基板20への接続作業が終了する。
【0045】
ここで、溶接治具Tの操作については、作業者による手作業でも溶接装置による自動作業でも可能であるが、製品間のばらつきを無くし歩留まりを向上させるためにも、溶接装置による自動作業とするのが望ましい。
【0046】
以上詳述したように、実施の形態1に係る差動信号伝送用ケーブル10およびその回路基板20への接続方法によれば、絶縁体12と外部導体13との間に、外部導体13を回路基板20のグラウンドパッド23に接続するときの熱が絶縁体12に伝達されるのを抑制する断熱部材15を設けたので、絶縁体12の熱による変形や溶融を抑制した状態のもとで、外部導体13をグラウンドパッド23に直接接続することができる。したがって、従前のような加締め加工を省略することができ、絶縁体12には加締め力が負荷されない。よって、絶縁体12が弾性変形されるのを抑制して、ひいては各信号線導体11間の距離を設計寸法通りにでき、製品毎に安定した電気的特性を得ることが可能となる。
【0047】
また、実施の形態1に係る差動信号伝送用ケーブル10およびその回路基板20への接続方法によれば、外部導体13を一旦剥いて、その後元に戻すことで絶縁体12と外部導体13との間に断熱部材15を設けるので、既存のケーブルアッシーCAを流用することができ、製造コストを削減することができる。
【0048】
次に、本発明の実施の形態2について図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0049】
図6は実施の形態2に係る差動信号伝送用ケーブルの図3に対応した図を示している。
【0050】
図6に示すように、実施の形態2に係る差動信号伝送用ケーブル30は、実施の形態1に比して、外部導体13の内側の構造が異なっている。上述した実施の形態1においては、略楕円形形状に形成した1つの絶縁体12の内側に、2本の信号線導体11を設けていた(図3参照)。これに対し、実施の形態2においては、断面が略円形形状に形成された絶縁体31の内側に1本の信号線導体32を設けたケーブル体33を2本平行に並べるようにしている。なお、信号線導体32の絶縁体31から露出された部分は、実施の形態1と同様に、シグナルパッド接続部32aとなっている。
【0051】
一対のケーブル体33は、外部導体13によって束ねられており、これにより各ケーブル体33の各信号線導体32間の距離が一定に保持されている。また、一対のケーブル体33を並べたことにより、断熱部材34の形状も変更されている。具体的には、断熱部材34の断面形状は、一対の長さが等しい平行線と一対の半円形形状とからなる陸上競技場のトラック(Track)に略等しい形状となっている。これにより、断熱部材34は、各ケーブル体33に嵌合するよう被せられている。なお、差動信号伝送用ケーブル30の回路基板20への接続方法については、実施の形態1と同様である。
【0052】
以上のように形成した実施の形態2においても、上述した実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。
【0053】
次に、本発明の実施の形態3について図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0054】
図7は他の回路基板への接続構造(実施の形態3)を示す斜視図を示している。
【0055】
図7に示すように、実施の形態3においては、実施の形態1に比して4本の差動信号伝送用ケーブル10を1つの回路基板40に纏めて接続できるようにした点が異なっている。つまり、回路基板40の基板本体41には、2本ずつ4組のシグナルパッド22が設けられている。また、基板本体41には、一対のシグナルパッド22と交互に並ぶようにして、合計5本のグラウンドパッド23が設けられている。
【0056】
ただし、隣り合う差動信号伝送用ケーブル10の間にある各グラウンドパッド23(合計3本)は、隣り合う差動信号伝送用ケーブル10に対して共通のグラウンドパッド23となっており、基板本体41の長手方向両側にある一対のグラウンドパッド23よりも幅広となっている。
【0057】
これにより、図5に示す溶接治具Tを用いて、隣り合う差動信号伝送用ケーブル10の外部導体13と、共通のグラウンドパッド23とを容易に電気的に接続できるようにしている。なお、4本の差動信号伝送用ケーブル10の回路基板40への接続方法については、実施の形態1と同様の方法によって1本ずつ順次行うようにする。
【0058】
以上のように形成した実施の形態3においても、上述した実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。
【0059】
次に、本発明の実施の形態4について図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0060】
図8は他の回路基板への接続構造(実施の形態4)を示す斜視図を示している。
【0061】
図8に示すように、実施の形態4においては、実施の形態1に比して回路基板20に設けられる各グラウンドパッド50の形状のみが異なっている。具体的には、各グラウンドパッド50の基板本体21からの突出された部分を屈曲成形させ、これにより差動信号伝送用ケーブル10の外部導体13の真横、つまり差動信号伝送用ケーブル10の略楕円形形状の長軸上に、各グラウンドパッド50がそれぞれ配置されるようになっている。
【0062】
以上のように形成した実施の形態4においても、上述した実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、実施の形態4においては、差動信号伝送用ケーブル10の長軸上に各グラウンドパッド50が配置されるので、図5に示す溶接治具Tを用いて、図中上方側あるいは下方側からのいずれの方向からでも、差動信号伝送用ケーブル10の外部導体13とグラウンドパッド50とを容易に電気的に接続することができる。
【0063】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記各実施の形態においては、回路基板20,40に、差動信号伝送用ケーブル10,30を電気的に接続して、当該状態のもとで接続作業を終了したものを示したが、本発明はこれに限らない。例えば、回路基板と差動信号伝送用ケーブルとの接続部分を樹脂モールドで被覆するようにしても良い。この場合、金属部分を埃や水分等から保護することができるので、長期に亘って良好な電気的特性を維持することが可能となる。
【符号の説明】
【0064】
10 差動信号伝送用ケーブル
11 信号線導体
12 絶縁体
13 外部導体
15 断熱部材
20 回路基板
22 シグナルパッド
23 グラウンドパッド
CA ケーブルアッシー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8