特許第5936161号(P5936161)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5936161
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】デバイス製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20160602BHJP
   G03F 1/50 20120101ALI20160602BHJP
【FI】
   G03F7/20 501
   G03F1/50
【請求項の数】8
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2015-82399(P2015-82399)
(22)【出願日】2015年4月14日
(62)【分割の表示】特願2014-99341(P2014-99341)の分割
【原出願日】2011年12月13日
(65)【公開番号】特開2015-172753(P2015-172753A)
(43)【公開日】2015年10月1日
【審査請求日】2015年4月14日
(31)【優先権主張番号】特願2010-277937(P2010-277937)
(32)【優先日】2010年12月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100102901
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 篤司
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 祐一
【審査官】 松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−217100(JP,A)
【文献】 特開2006−251480(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/081234(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00−1/86、7/20−7/24、9/00−9/02
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロデバイスを製造するデバイス製造方法であって、
デバイスの機能・性能設計を行い、その機能を実現するためのパターン設計を行うことと、
リソグラフィ技術を用いて、ガラス基板上に前記設計したパターンの周囲に遮光領域が存在する複数の区画領域を形成し、該区画領域毎に前記ガラス基板を切り離して複数のマスクを製作することと、
前記複数のマスクのそれぞれを、順次、マスクと基板とを近接させて露光を行う露光装置に所定のインターバルで投入し、前記露光装置により、前記マスクが投入される毎に、その投入された前記マスクのパターンを前記インターバルに応じた数の基板のそれぞれに順次転写することと、
前記パターンが転写された前記基板を現像することと、を含むデバイス製造方法。
【請求項2】
前記転写することに先立って、
前記基板を多数、所定の材料を用いて製造することをさらに含む請求項1に記載のデバイス製造方法。
【請求項3】
前記マスクを製作することでは、縮小投影露光装置を用いたダブルパターニングプロセスにより、前記ガラス基板の一種であるガラスウエハ上に前記複数の区画領域を形成し、該区画領域毎に前記ガラスウエハを切り離して複数のマスクを製作する請求項1又は2に記載のデバイス製造方法。
【請求項4】
前記マスクを製作することでは、電子線露光装置を用いて、前記ガラス基板の一種であるガラスウエハ上に前記複数の区画領域を形成し、該区画領域毎に前記ガラスウエハを切り離して複数のマスクを製作する請求項1又は2に記載のデバイス製造方法。
【請求項5】
製作された前記複数のマスクをマスクバッファにストックすることと、
前記複数のマスクのそれぞれを、前記露光装置に投入するため、前記マスクバッファから取り出すことと、をさらに含む請求項3又は4に記載のデバイス製造方法。
【請求項6】
使用済みの前記複数のマスクをまとめて再利用のため洗浄することをさらに含む請求項1〜5のいずれか一項に記載のデバイス製造方法。
【請求項7】
前記転写することでは、前記露光装置として、
パターンが形成されたマスクに近接して配置される感光性の基板上に前記パターンを転写する露光装置であって、
エネルギビームで前記マスクを照明する照明光学装置と、
前記マスクのパターン領域の周囲に配置された複数のアクチュエータと、該複数のアクチュエータの前記基板に対向する側の面に固定され、前記マスクの前記パターン領域の周囲領域を上方から保持する変形自在のチャック部材と、を有し、前記マスクに対して、少なくとも所定平面に平行な面内の力を作用させるマスク保持装置と、
前記基板を保持して前記所定平面に沿って移動する基板保持装置と、
を備える露光装置を用いる請求項1〜6のいずれか一項に記載のデバイス製造方法。
【請求項8】
前記転写することでは、前記露光装置は、前記マスクにエネルギビームを照射し、前記マスクを介した前記エネルギビームで前記基板を露光することと、前記露光することと並行して前記基板を微動させて、前記マスクのパターンと前記基板上のパターンとの重ね合わせを行うことと、を含む露光方法により、前記投入された前記マスクのパターンを前記インターバルに応じた数の前記基板のそれぞれに順次転写する請求項1〜6のいずれか一項に記載のデバイス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロデバイスを製造するデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体素子、液晶表示素子又はプリント基板等をフォトリソグラフィ工程で製造する際に、フォトマスク又はマスク等(以下、「マスク」と総称する)を露光光で照明し、そのマスクに近接して配置される、感光材が塗布された基板上にそのマスクのパターンを焼き付けるプロキシミティ露光装置が使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、従来のプロキシミティ露光装置では、マスクのパターン面と基板上の感光材によって形成される感光層の表面とのギャップ(隙間)は、最小でも30μm程度であったため、解像度が悪く、今日の半導体デバイスの実用最小線幅64nm以下の線幅、例えば32nmを有するクリティカルなパターンを基板上に形成する際などには到底用いることができない。
【0004】
32nm以下の線幅のパターンを解像するには、最新の液浸タイプのArFスキャナ(スキャニングステッパ)を用いて、ダブルパターニング法による露光を行うか、あるいは、電子線又はX線(特にSOR光:シンクロトロン放射光)リソグラフィ技術を用いる必要がある。
【0005】
ダブルパターニングに対応した液浸タイプのArFスキャナは高価である。また、電子線リソグラフィは、ナノメータオーダーのパターンの形成を高精度で制御することができ、しかもウエハ上にマスクなしで直接描画が可能であるという利点がある。しかし、この反面、電子線リソグラフィは、スループットが低く、コストもかかることから、量産レベルにはほど遠いという欠点がある。
【0006】
また、電子線やX線を用いたリソグラフィでは、その露光方法に合わせてフォトレジストを開発する必要があり、感度、解像度、エッチング耐性等の面においてもまだ問題が多い。
【0007】
そこで、このような問題を解決する方法として、最近、照射する光の波長よりも十分小さなサイズの開口からしみ出す近接場光を光源とし、フォトレジストを感光させ、現像することにより、微細なパターンを形成する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この方法によれば、光源の波長に関わらず、ナノメータオーダーの空間分解能を得ることができる。
【0008】
しかしながら、例えば特許文献2に開示されるような実質的にコンタクト方式の露光方法では、マスクと基板との間に液体が介在しているとは言え、マスク破損、歩留まりの低下などを回避することは実際には困難である。従来のマスクは高価であるため、この破損は極力防止する必要があった。これに加え、この方式では、投影光学系が存在しないため、マスクの変形、例えばマスクの熱変形に起因するマスク上のパターンの変形(歪み、倍率変化)などに対応することが困難であり、重ね合わせ精度の悪化を防ぐことができなかった。この点は、従来のプロキシミティ露光装置においても同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,891,806号明細書
【特許文献2】米国特許第6,869,732号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、マイクロデバイスを製造するデバイス製造方法であって、デバイスの機能・性能設計を行い、その機能を実現するためのパターン設計を行うことと、リソグラフィ技術を用いて、ガラス基板上に前記設計したパターンの周囲に遮光領域が存在する複数の区画領域を形成し、該区画領域毎に前記ガラス基板を切り離して複数のマスクを製作することと、前記複数のマスクのそれぞれを、順次、マスクと基板とを近接させて露光を行う露光装置に所定のインターバルで投入し、前記露光装置により、前記マスクが投入される毎に、その投入された前記マスクのパターンを前記インターバルに応じた数の基板のそれぞれに順次転写することと、前記パターンが転写された前記基板を現像することと、を含むデバイス製造方法が、提供される。
【0011】
これによれば、リソグラフィ技術を用いて、ガラス基板上に前記設計した回路パターンの周囲に遮光領域が存在する複数の区画領域を形成し、該区画領域毎に前記ガラス基板を切り離して複数のマスクを製作するので、マスクの大量生産が可能になる。また、その生産した複数のマスクのそれぞれを、順次、マスクと基板とを近接させて露光を行う露光装置に所定のインターバルで投入し、前記露光装置により、前記マスクが投入される毎に、その投入された前記マスクのパターンを前記インターバルに応じた数の基板のそれぞれに順次転写する。従って、上記のインターバルを適切に定めることにより、マスクが限界を超えて汚染される前に、新たなマスクを投入することが可能になり、マスクの汚染に起因する歩留まりの低下を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態の露光装置の構成を概略的に示す図である。
図2図2(A)、図2(B)及び図2(C)は、それぞれXYスキャン露光用の小露光フィールド、Yスキャン露光用の中露光フィールド及び一括露光用のショット全面露光フィールドの設定について説明するための図である。
図3図1の露光装置で用いられるマスクの一例を示すパターン面側から見た平面図である。
図4図4(A)はマスクテーブルの側面図、図4(B)はマスクテーブルの底面図である。
図5】ウエハテーブルの縦断面図である。
図6】干渉計システムのX干渉計及びY干渉計の測長軸の配置をウエハステージとともに示す平面図である。
図7】アライメント装置の構成の一例を示す図である。
図8】複数対のアライメント系の検出領域の配置を説明するための図である。
図9】基板表面情報計測装置の概略的な構成を示す斜視図である。
図10図10(A)〜図10(C)は、基板表面情報計測装置の構成を、その計測の仕組みとともに説明するための図である。
図11図1の露光装置が備える主制御装置の入出力関係を説明するためのブロック図である。
図12図12(A)〜図12(E)は、パターン形成の一連の工程を説明するための図である。
図13図13(A)〜図13(C)は、基板表面情報計測装置を用いたウエハ表面情報の計測及び平坦度補正を説明するための図(その1)である。
図14】基板表面情報計測装置を用いたウエハ表面情報の計測及び平坦度補正を説明するための図(その2)である。
図15図15(A)〜図15(C)は、基板表面情報計測装置を用いたウエハ表面情報の計測及び平坦度補正を説明するための図(その3)である。
図16図16(A)〜図16(D)は、マスクとウエハのショット領域の重ね合わせの最適化を説明するための図である。
図17図17(A)及び図17(B)は、露光フィールド内における像面の最適化を説明するための図である。
図18図18(A)は露光動作時のマスクとウエハの干渉防止方法を説明するための図、図18(B)は図18(A)の拡大図である。
図19】デバイス製造方法の実施形態を説明するためのフローチャートである。
図20】複数の区画領域が形成されたガラスウエハの一例を示す図である。
図21図19のステップ207の具体例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、一実施形態について、図1図21に基づいて説明する。
【0014】
図1には、一実施形態に係る露光装置100の構成が概略的に示されている。この露光装置100は、ステップ・アンド・リピート方式のプロキシミティ露光装置である。以下では、図1における紙面左右方向をY軸方向、Y軸に直交する紙面直交方向をX軸方向、これらY軸及びX軸に直交する方向をZ軸方向として説明を行う。
【0015】
露光装置100は、照明系10、該照明系10からの露光光(照明光)ILにより照明されるマスクMを水平に保持するマスクテーブルMTB、マスクMの下方に所定のギャップを介してウエハWをほぼ水平に保持して、ステージベース上で水平面に平行に2次元移動するウエハステージWST、ステージベース上でウエハステージWSTと独立して2次元移動するアシストステージAST、及びこれらの制御系等を、備えている。
【0016】
照明系10は、照明ハウジング10Aと、照明ハウジング10A内に所定の位置関係で収容された不図示の光源と、照明光学系とを含む。照明ハウジング10Aは、床面(又はベースプレートなど)上に不図示の防振機構を介して配置されたボディBDを構成する支持部材38に、防振部材(不図示)を介して射出端部が支持されている。また、照明ハウジング10Aは、射出端と反対側の端部及びその他の部分が、支持部材38とは別の照明系支持部材(不図示)上に搭載されている。勿論、支持部材38の形状によっては、照明ハウジング10Aは、射出端と反対側の端部及びその他の部分が、支持部材38によって支持されていても良い。
【0017】
光源としては、例えば超高圧水銀ランプが用いられる。照明光学系は、楕円鏡、波長フィルタ板、コリメータレンズ、ズーム光学系、オプティカル・インテグレータ、リレー光学系(いずれも不図示)、可変視野絞り15、2次元走査ミラー装置21、及びコリメータレンズ32等を備えている。
【0018】
ここで、オプティカル・インテグレータとしては、例えばフライアイレンズが用いられている。オプティカル・インテグレータとしては、ロッドインテグレータ(内面反射型インテグレータ)、あるいは回折光学素子などを用いることもできる。
【0019】
可変視野絞り15は、矩形開口を形成する例えば2枚のL字状のブレード(又は4枚の矩形のブレード)を含み、可動ブラインドとも呼ばれる。可変視野絞り15は、主制御装置20(図1では不図示、図11参照)によって、開口設定情報に基づいてその開口が、任意の形状及び大きさの矩形状に設定される。本実施形態では、この可変視野絞り15の開口の設定によって、後述するように、露光フィールドが、3つの種類のいずれかに設定される。
【0020】
2次元走査ミラー装置21としては、例えば、磁界中のコイルへの通電によって生ずる電磁力を利用して2次元方向に動作する揺動型2次元走査装置を用いることができる。この揺動型2次元走査装置は、外周コイルが形成された枠体の内側に、内周コイルが形成されたミラーパネル(平面ミラー)を配置し、これらミラーパネルと枠体とを、互いに直交する第1、第2方向に延設された第1、第2のトーションバーによりそれぞれ揺動自在に保持してなる可動子を、永久磁石の磁界中に配置した機構部を備えている。ミラーパネルの内周コイルに電流を流すと、磁界の成分との相互作用によって電流値に応じた力が生じ、ミラーパネルを第1のトーションバーの復元力に釣り合う位置まで旋回させる。また枠体の外周コイルに電流を流すと、磁界の成分との相互作用によって電流値に応じた力が生じ、枠体を第2のトーションバーの復元力に釣り合う位置まで旋回させる。このようにしてミラーパネルが、第1、第2方向の軸周りに揺動する。
【0021】
図1では、この2次元走査ミラー装置21を構成するミラーパネルのみが代表的に示されている。以下では、ミラーパネルを2次元走査ミラー装置と同一の符号を用いて、ミラーパネル21とも表記する。
【0022】
本実施形態では、図1に示されるように、ミラーパネル21は、XY平面に対して角度α(αは鋭角)傾斜し、かつXZ平面に対して(90度−α)傾斜した状態で、X軸方向に所定の長さで延びている。ミラーパネル21は、該ミラーパネル21の反射面及びその裏面を除く4側面のうち、X軸方向の両側面を除く2側面の中心を通るX軸に垂直な軸(以下、第1の軸と称する)周りに揺動可能になるように、その2側面が一対の第1のトーションバーを介して枠体に取り付けられ、該枠体はミラーパネル21のX軸方向の両側面の中心を通るX軸に平行な軸(以下、第2の軸と称する)周りに揺動可能になるように、そのX軸方向の両側面が一対の第2のトーションバーを介して不図示の支持部材に支持されている。内周コイル及び外周コイルの両者に電流が供給されない基準状態において、ミラーパネル21及び枠体は、XY平面に対して45度傾斜している。なお、本実施形態の2次元走査ミラー装置21と同様の構成の揺動型2次元走査装置については、例えば、特開2003−295102号公報に詳細に開示されている。
【0023】
照明系10によると、光源が発する光を楕円鏡で集光して光源像を形成し、この光源像からの光の内で、波長フィルタ板により抽出されたフォトレジストを感光させる波長域の露光光(例えば波長436nmのg線、又は波長365nmのi線等)が、コリメータレンズ及びズーム光学系を経てオプティカル・インテグレータに入射する。そして、オプティカル・インテグレータによる2次光源からの露光光ILが、リレー光学系(光源からリレー光学系までの各光学部材はいずれも不図示)を介して可変視野絞り15に照射される。可変視野絞り15の開口を透過した露光光ILが、所定断面積の露光ビーム(以下では、露光ビームILと表記する)となってミラーパネル(2次元走査ミラー装置)21の反射面に照射され、該ミラーパネル21を介した露光ビームILが、コリメータレンズ32を経てマスクテーブルMTBに保持されたマスクMをほぼ均一な照度(その露光ビームILの照射領域内において)で照明する。
【0024】
本実施形態では、可変視野絞り15の開口の設定によって、例えば、図1に示される照明光学系の一部の光学系の光軸(便宜上AX1とする)を中心として、露光ビームILの断面形状及び大きさを種々変更(設定)可能である。ここで、光軸AX1は、照明光学系の光軸AX(例えば図6参照)と一致するが、ここでは、説明の便宜上から別の符号が用いられている。
【0025】
例えば、ウエハ上のショット領域の大きさとほぼ同じ大きさ、形状の光軸AX1に直交する面内でZ軸方向に長い長方形断面(第1の断面形状)、ショット領域とほぼ同じ長さのX軸方向のサイズを有し、ショット領域に比べてZ軸方向の長さが短い断面形状(第2の断面形状)、第2の断面形状に比べても格段に小さい正方形の断面形状(第3の断面形状)の設定が、少なくとも可能である。
【0026】
本実施形態では、第1の断面形状の露光ビームILの設定により、図2(C)に示される一括露光用のショット全面露光フィールドLEFが、設定され、第2の断面形状の露光ビームILの設定により、図2(B)に示されるYスキャン露光用の中露光フィールドMEFが、設定され、第3の断面形状の露光ビームILの設定により、図2(A)に示されるXYスキャン露光用の小露光フィールドSEFが、設定される。ここで、可変視野絞り15の開口の設定に応じて、主制御装置20(図11参照)によってズーム光学系(不図示)が駆動され、可変視野絞り15の開口部以外の部分に極力露光ビームILが照射されないように、すなわち露光フィールド(マスクM上の露光ビームILの照射領域)の設定の変更に伴う光量損失を抑えるようになっている。
【0027】
XYスキャン露光用の小露光フィールドSEFが設定された場合、露光の際には、ミラーパネル(2次元走査ミラー装置)21が主制御装置20によって制御され、図2(A)に示されるように、小露光フィールドSEFに照射される露光ビームILが、マスクMのパターン領域PA上をXY2次元方向に、例えば矢印の順序でスキャンされる。また、Yスキャン露光用の中露光フィールドMEFが設定された場合、露光の際には、ミラーパネル(2次元走査ミラー装置)21が主制御装置20によって制御され、図2(B)に示されるように、中露光フィールドMEFに照射される露光ビームILが、マスクMのパターン領域PA上をY軸方向に、例えば矢印の方向にスキャンされる。すなわち、本実施形態では、XY2次元スキャンの場合も、Yスキャンの場合も、露光中マスクテーブルMTB及びウエハステージWSTは巨視的には静止している。なお、マスクテーブルMTBとウエハステージWSTとを同期して、露光ビームに対してY軸方向に走査することで、Yスキャン及びXY2次元スキャンにおけるY方向スキャンを、行っても良い。この場合、ミラーパネル21に代えて、X軸周りにのみ揺動可能な反射ミラーを用いれば良い。勿論、露光ビームと、マスクテーブルMTB及びウエハステージWSTとを互いに逆向きに走査しても良い。
【0028】
前記マスクテーブルMTBには、回路パターンなどがそのパターン面(図1における下面)に形成されたマスクMが、例えば真空吸着により保持されている。これをさらに詳述すると、マスクMは、図3に一例が示されるように、ガラス基板と、そのガラス基板の一面に形成された所定のサイズ、例えば26mm×33mmの長方形のパターン領域PA及び該パターン領域PAの周囲の遮光領域CAとを有している。遮光領域CAは、そのパターン領域との境界近傍の一部、例えばパターン領域PAを囲む所定幅の領域を除き、後述するチャッキングエリアとなる。遮光領域CAは、大部分がチャッキングエリアとなるので、以下では、便宜上、チャッキングエリアを、遮光領域CAと同一の符号を用いてチャッキングエリアCAと称する。パターン領域PAは、実際には、遮光膜から成り、その内部に光露光装置の解像限界より細い線幅、例えば32nmのパターンを含む複数のパターン(等倍パターン)が開口部として形成されている。また、遮光領域CA内のパターン領域PAと境目の部分には、後述するアライメントマークが形成されている。
【0029】
図1に戻り、マスクテーブルMTBは、支持部材38に不図示の支持部材を介して吊り下げ状態で固定されている。マスクテーブルMTBは、図4(A)の側面図(+X方向から見た図)、及び図4(B)の底面図(−Z方向から見た図)に示されるように、マスクベースMBと、ピンチャックプラテン66と、平面ボイスコイルモータ(以下、平面VCMと略記する)65とを備えている。
【0030】
マスクベースMBは、不図示の支持部材を介して支持部材38に固定されており、中央部に矩形の開口68(図4(B)参照)を有する枠型部材である。開口68は、マスクMのパターン領域PAより一回り大きいパターン領域PAと相似の矩形状の開口である。ピンチャックプラテン66は、ピンチャックホルダであり、マスクベースMBと同様に、中央に開口68を有している。また、ピンチャックプラテン66の下面(−Z側の面)には、例えばエッチング加工により多数のピン状の突起部(ピン部)が形成され、マスクMのチャッキングエリアCAが、ピンチャックプラテン66の多数のピン部に圧接した状態で、マスクMが、ピンチャックプラテン66に例えば真空吸着によって保持されている。ここで、ピンチャックプラテン66には、マスクMを吸着するための真空排気路(不図示)が形成されている。なお、真空吸着に限らず、機械的な手段又は静電吸着により、マスクMをマスクテーブルMTBに保持させることもできるが、静電吸着による場合は、静電気によるマスクMのパターンの損傷に注意が必要である。また、本実施形態では、ピンチャックプラテン66は、フレキシブルな素材、あるいは力を加えたときに変形する(撓む)素材で且つ弾性を備えた素材、例えば膜部材により形成されている。
【0031】
平面VCM65は、マスクベースMBと、ピンチャックプラテン66との間に、開口68を囲むように開口68の外側に配置されている。
【0032】
上記の説明から明らかなように、本実施形態では、マスクベースMB、ピンチャックプラテン66及び平面VCM65に、これらを貫通する共通の開口68が形成されている
平面VCM65は、マスクベースMBの下面(−Z側の面)に固定された例えば複数のコイルから成る固定子62と、該固定子62に対向するようにその下方に配置された永久磁石を含む複数の可動子64と、を含む。ここで、平面VCM65は、X軸方向、Y軸方向に加えて、Z軸方向にも電磁力(ローレンツ力)を発生可能な磁気浮上型の平面モータである。この場合、複数の可動子のそれぞれが、電磁力により、X軸方向、Y軸方及びZ軸方向に可動であり、厳密に言えば、複数の可動子のそれぞれと対応する固定子62の一部(固定子62を構成する一部のコイル)とによって可動子と同数の磁気浮上型の平面モータが構成され、この複数の平面モータによって平面VCM65が構成されている。
【0033】
平面VCM65の固定子62を構成する複数のコイルに供給される電流の大きさ及び方向が、主制御装置20(図11参照)によって制御される。これにより、複数の可動子64(平面VCM65)のそれぞれが独立に制御され、ピンチャックプラテン66の所望の位置が任意の方向に(自在に)微小変形される。
【0034】
例えば、主制御装置20は、平面VCM65を用いてピンチャックプラテン66に、例えば図4(B)に白塗り矢印で示されるように、X軸方向、Y軸方向、及びθz方向(Z軸回りの回転方向)の力を加えることができ、これによりピンチャックプラテン66に吸着されたマスクMにX軸方向のシフト、Y軸方向のシフト、及びXY平面内の回転を生じさせることができる。また、平面VCM65は、パターン領域PAの両側からマスクMに対してX軸方向、Y軸方向の力を加えることができるので、パターン領域PAの両側から互いに反対向きの力を作用させることで、パターン領域の一部又は全部をX軸方向及びY軸方向に伸縮させることができる。従って、マスクMのパターン領域PAの歪みを、ある程度補正することが可能になる。
【0035】
また、主制御装置20は、平面VCM65の一部の可動子64を、個別にZ軸方向に駆動することで、ピンチャックプラテン66に吸着保持されたマスクMを平坦度良く保持するのみならず、大まかに撓み変形させる、例えば反らせることは可能である。ただし、マスクMのパターン領域PA部分にピンチャックプラテン66が対向していないので、パターン領域PAの凹凸を正確に補正することは容易ではない。なお、ここでは、平面VCM65の一部の可動子64を介してマスクMを変形させるものとしたが、マスクMを変形させるための構成は、これに限定されるものではない。
【0036】
図1に戻り、ウエハステージWSTは、不図示の防振機構を介して床面(又はベースプレートなど)上に配置されたベース盤71上に配置されている。ウエハステージWSTは、ステージ本体91と、該ステージ本体91上に固定されたウエハテーブルWTBとを有している。ウエハテーブルWTB上に、ウエハWが真空吸着等によって保持されている。
【0037】
ウエハステージWSTは、ベース盤71内のコイルアレイ(固定子)27Aと、ステージ本体91の底部に設けられた磁石アレイ(可動子)27Bと、から構成される磁気浮上方式のムービングマグネット型の平面モータによって、6自由度方向(X軸、Y軸、Z軸、θx(X軸回りの回転)、θy(Y軸回りの回転)、及びθzの各方向)に駆動される。すなわち、平面モータ(27A,27B)によって、ウエハステージWSTを駆動するウエハステージ駆動系27(図11参照)が構成されている。ウエハステージ駆動系27は、主制御装置20によって制御される。
【0038】
ウエハテーブルWTBは、図5に示されるように、本体部55と一種のピンチャック方式のウエハホルダであるウエハ保持機構54とを備えている。本体部55は、平面視で正方形状を有し、上面が開口した箱型部材56と、その開口部の外周付近を塞ぐ、蓋部材58とによって構成されている。蓋部材58は、その中央に後述するリム部の周壁に接する円形の開口58aが形成され、外形が本体部55と同形状の板部材から成る。蓋部材58の上面の高さは、ウエハテーブルWTBに保持されたウエハWとほぼ同一の高さになっている。
【0039】
ウエハ保持機構54は、箱型部材56の4つの側壁(周壁)にほぼ内接する状態で箱型部材56の底面に固定された円環状のリム部59と、リム部59の内部に収容された複数のアクチュエータ51と、これら複数のアクチュエータ51によって下方から支持されたピンチャック部材(テーブル部)60とを含む。ピンチャック部材60は、その上面に、エッチング加工により多数のピンPが形成されている。ウエハWは、不図示の真空排気系を介してウエハ保持機構54のリム部59の内部の空間が真空とされることで吸着され、その下面が多数のピンPに支持されている。ピンチャック部材60は、フレキシブルな素材、あるいは力を加えたときに変形する(撓む)素材で且つ弾性を備えた素材により形成されている。
【0040】
複数のアクチュエータ51のそれぞれは、例えば図5に示されるように、リム部59の内部空間にほぼ均等な間隔で2次元配列された複数のコイル51aと、該複数のコイル51aのそれぞれに対向して、上部に配置されたコイル51aと同一数(複数)の永久磁石51bと、該複数の永久磁石51bのそれぞれの上端とピンチャック部材60の裏面(下面)とを接続する接続部材51cとを有している。複数の永久磁石51bは、リム部59の高さ方向中央部にその周縁部が接続された平面視円形の膜部材61上に設置されている。
【0041】
アクチュエータ51は、上述の説明から明らかなように、一種のボイスコイルモータである。アクチュエータ51は、可動子である永久磁石51b(及び接続部材51c)をZ軸方向に駆動する駆動力を発生する。
【0042】
ここで、複数のアクチュエータ51を含んで、図11に示されるチャック駆動系63が構成され、該チャック駆動系63が、主制御装置20に接続されている。主制御装置20は、チャック駆動系63の複数のアクチュエータ51のそれぞれを独立に(個別に)駆動(制御)してピンチャック部材60の下面に与える力の分布を作ることにより、ピンチャック部材60に支持されたウエハWの表面の凹凸(平坦度)を補正することができる。
【0043】
なお、この場合、リム部59の上面の高さは、ピンチャック部材60の上端とほぼ同程度の高さであり、その上面にウエハWの外周縁部が載る。なお、アクチュエータ51は、VCMに限らず、例えばピエゾ素子などによって構成することも可能である。
【0044】
ウエハステージWSTの位置情報は、図1に示されるように、ウエハテーブルWTBの端面(側面)に鏡面加工により形成された反射面に測長ビームIBを照射するウエハレーザ干渉計システム(以下、「ウエハ干渉計システム」という)18によって、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出されている。このウエハ干渉計システム18はその少なくとも一部が、支持部材38から吊り下げ状態で支持されている。
【0045】
これを更に詳述すると、図6に示されるように、実際には、ウエハテーブルWTBの−X側の面が反射面17Xとされ、−Y側の面が反射面17Yとされ、これに対応してX軸方向位置計測用のレーザ干渉計(X干渉計)18X1,18X2、Y軸方向位置計測用のレーザ干渉計(Y干渉計)18Yがそれぞれ設けられている。ウエハステージWSTは、図6において実線で示される位置(例えば露光位置(図6では照明光学系の光軸AXが代表的に示されている))にあるときには、そのXY平面内の位置情報が、干渉計18X1、18Yにより計測され、図6において仮想線で示される位置(符号WST’で示される位置、例えばウエハ交換位置)にあるときには、そのXY平面内の位置情報が、干渉計18X2、18Yにより計測される。このうち、X干渉計(18X1,18X2)及びY干渉計18Yの一方、例えばY干渉計18Yは、測長軸を複数有する多軸干渉計である。
【0046】
また、図5では不図示であるが、ウエハ干渉計システム18は、X軸方向に離れて配置された一対のZ干渉計18Z1,18Z2図11参照)をも備えている。これらのZ干渉計18Z1,18Z2は、ステージ本体91の−Y側の側面に取り付けられた凹形状の移動鏡の一対の反射面(この一対の反射面は、XZ平面に垂直でかつXY平面に関して対称に傾斜している)のそれぞれにY軸に平行な一対の測長ビームを照射し、該移動鏡を介してその一対の測長ビームを、例えば支持部材38に固定された一対の固定鏡(不図示)のそれぞれに照射する。そして、Z干渉計18Z1,18Z2は、それぞれの反射光を受光して、各測長ビームの光路長を計測する。
【0047】
ウエハ干渉計システム18が備える各干渉計の計測値は、主制御装置20に供給される。主制御装置20は、X干渉計18X1、18X2の計測値に基づいて、ウエハステージWSTのX位置を計測し、Y干渉計18Yの計測値に基づいて、ウエハステージWSTのY位置の他、回転(θz方向の回転(ヨーイング)、及びピッチング(θx方向の回転))を計測する。また、主制御装置20は、Z干渉計18Z1,18Z2の計測値に基づいて、ウエハステージWSTの4自由度(Y,Z,θy,θz)方向の位置を算出する。Z干渉計18Z1,18Z2及びその計測値に基づく、ウエハステージの位置の算出方法は、例えば、米国特許出願公開第2009/0040488号明細書に詳細に開示されている。
【0048】
主制御装置20は、ウエハステージWSTの駆動(位置制御)に際し、ウエハステージWSTのヨーイング(θz方向の回転)として、Y干渉計18Yの計測値から得られる値、及びZ干渉計18Z1,18Z2の計測値から得られる値のいずれかを用いても良いし、両者の平均を用いても良い。また、主制御装置20は、ウエハステージWSTのピッチング(θx方向の回転)を、Y干渉計18YとZ干渉計18Z1,18Z2とによる計測値(Y位置)を用いて算出することもできる。
【0049】
なお、X干渉計(18X1,18X2)を多軸干渉計として、ウエハステージWSTのヨーイング(θz方向の回転)及びローリング(θy方向の回転)の少なくとも一方を計測可能に構成しても良い。また、反射面17X,17Yを用いて、ヨーイング(θz方向の回転)、ピッチング(θx方向の回転)、ローリング(θy方向の回転)が計測できる場合には、Z干渉計として、ウエハステージWSTのZ軸方向のみを計測する干渉計を用いても良い。なお、ウエハ干渉計システム18の代わり、あるいはウエハ干渉計システム18とエンコーダシステムを併用してウエハステージWSTの6自由度方向の位置情報を計測しても良い。
【0050】
主制御装置20は、上述したウエハステージWSTの位置情報(又は速度情報)に基づいて、ウエハステージ駆動系27を介してウエハステージWSTの6自由度方向の位置を制御する。
【0051】
アシストステージASTは、図1に示されるように、ステージ本体92と、該ステージ本体92上に固定されたテーブルTBとを含んでいる。アシストステージASTのステージ本体92とベース盤71との間には、前述と同様に、コイルアレイ(固定子)27Aとステージ本体92の底部に設けられた磁石アレイ(可動子)27Cとから成る磁気浮上型の平面モータ(27A,27C)が構成されており、該平面モータ(27A,27C)によって、アシストステージASTを6自由度方向に駆動可能なアシストステージ駆動系127(図11参照)が構成されている。アシストステージ駆動系127は、主制御装置20によって制御される。ただし、アシストステージASTは、必ずしも6自由度方向に可動でなくても良く、XY平面内の3自由度方向に可動であれば良い。アシストステージASTの位置情報は、アシストステージ干渉計118(図1では図示省略、図11参照)によって計測されている。
【0052】
アシストステージASTには、例えば、各種機能部材、例えばマスクM上に形成されたアライメントマークの空間像を像面上で計測する空間像計測器82、マスクテーブルMTBに対してマスクMをローディングするマスクローディング装置84、マスクMに帯電した静電気を除去する静電気除去装置86、及びマスクに対する異物の付着及びマスクの欠陥の有無を検査するマスク検査装置88(いずれも図1では図示省略、図11参照)等が設けられている。
【0053】
空間像計測器82としては、例えば米国特許出願公開第2002/0041377号明細書などに開示されるものと同様の構成のものを用いることができる。また、本実施形態で用いられるマスクMは、長辺が100mm以下の長方形のガラス部材であるから、このマスクMの搬送が可能な例えば小型のロボットアームなどをマスクローディング装置84としてアシストステージASTに設けることができる。また、静電気除去装置86によるマスクに帯電した静電気の除去については、例えば国際公開第2002/041375号に開示されている。マスク検査装置88としては、例えば小さなスポット状にしたレーザ光をマスクM上に照射し、その反射光を受光して本来あるべきパターンか異物かを判断するものを用いることができる。
【0054】
マスクMのパターン領域PAのX軸方向の両側の端部には、図7に示されるように、それぞれ互いに対を成す位置合わせ用のアライメントマークMMA及びMMBが、Y軸方向に沿って所定間隔で複数対形成されている。
【0055】
マスクテーブルMTBの上方には、マスクMの位置合わせ(アライメント)、又はマスクMとウエハWとの相互の位置合わせを行うために、マスクMの複数対のアライメントマークMMA及びMMBのそれぞれの上方近傍に、アライメント系ALA又はALBがそれぞれ設けられている。
【0056】
−X側の1つのアライメント系ALAは、図7に示されるように、マスクテーブルMTBの上方で、マスクMのパターン領域の−X側の僅かに外側の位置(マスクMのパターン面には、この位置にアライメントマークMMAが形成されている)にXY平面及びYZ平面のそれぞれに対して45度傾斜して配置されたダイクロイックミラー11A、該ダイクロイックミラー11Aの−X側に配置された第1対物レンズ12A等を含む。ダイクロイックミラー11Aは、コリメータレンズ32を透過した露光ビームILを透過させ、後述するアライメント光は反射する波長選択性を有している。
【0057】
アライメント系ALAは、さらに、アライメント用の光源8A、照明リレーレンズ9A、ハーフミラー7A、第2対物レンズ13A、及び撮像素子14A等を備えている。アライメント用の光源8Aとしては、露光ビームILとは波長域の異なるウエハW上のフォトレジストに対して非感光性のアライメント光(例えば波長500nm以上の光)を発生する例えばハロゲンランプ、LED、又はHe−Neレーザ光源等が使用される。
【0058】
アライメント系ALAにおいて、アライメント時には、光源8Aから射出されたアライメント光AL1は、照明リレーレンズ9A、ハーフミラー7A、第1対物レンズ12A及びダイクロイックミラー11Aを介してマスクMのアライメントマークMMA及びウエハW上を照明する。
【0059】
アライメントマークMMAからの反射光(ウエハW上にアライメントマークが在る場合には、ウエハW上のアライメントマークからの反射光を含む)が、ダイクロイックミラー11A、第1対物レンズ12A、ハーフミラー7A、及び第2対物レンズ13Aを介して撮像素子14Aの撮像面上に、アライメントマークMMA(及びウエハW上のアライメントマーク)の像を結像する。
【0060】
+X側の1つのアライメント系ALBは、光源8B、照明リレーレンズ9B、ハーフミラー7B、ダイクロイックミラー11B、第1対物レンズ12B、第2対物レンズ13B、及び撮像素子14Bを含み、上述のアライメント系ALAと左右対称であるが同様に構成されている。光源8Bからのアライメント光AL2のもとで、マスクM上のアライメントマークMMB(更に場合によってウエハW上のアライメントマーク)の像が撮像素子14Bの撮像面に結像される。
【0061】
上記複数対のアライメント系ALA、ALBの検出領域MAA、MABは、図8に示されるように、マスクM上のアライメントマークMMA及びMMBの配置に対応して、その配置が定められている。マスクM上には、図8に示されるように、マスクMのパターン領域PAの中心、すなわちマスクセンタCCから−X側及び+X側にそれぞれ等距離離れた位置に一対のアライメントマーク(以下、便宜上、適宜アライメントマークMMA1及びMMB1と表記する)が形成され、この一対のアライメントマークMMA1及びMMB1の+Y側及び−Y側に、それぞれ複数対、例えば2対のアライメントマークMMA及びMMBが等間隔で配置されている。複数対のアライメント系ALA、ALBのそれぞれからの検出信号は、主制御装置20に供給される(図11参照)。
【0062】
複数対のアライメント系ALA、ALBのダイクロイックミラー11A、11Bのそれぞれとコリメータレンズ32との間には、コリメータレンズ32を介してダイクロイックミラー11A,11Bに至る露光ビームILの光路を開閉するシャッタ25A、25Bが、配置されている。シャッタ25A、25Bの開閉は、主制御装置20によって行われる(図11参照)。すなわち、後述するマスクMの位置合わせ後、ウエハW上にマスクMのパターンとともに、マスクM上のアライメントマークMMA及びMMBをも転写する必要がある場合には、主制御装置20は、シャッタ25A、25Bを開いた状態で、マスクMを用いて後述するようにしてプロキシミティ方式の露光を行う。一方、マスクMの位置合わせ後、ウエハW上にマスクMのパターンのみを転写する必要がある場合(マスクM上のアライメントマークMMA及びMMBを転写しない場合)には、主制御装置20は、シャッタ25A、25Bを閉じ、この状態で、マスクMを用いて後述するようにしてプロキシミティ方式の露光を行う。このように、シャッタ25A,25Bは、これを開閉することで、マスクMのアライメントマークのウエハW上への転写、非転写を簡単に切り替えるために用いられる。
【0063】
本実施形態では、さらに、ボディBDの支持部材38の下面に、図1に示されるように、露光位置から−Y方向に所定距離離れた位置に、一対の基板表面情報計測装置(以下、表面情報計測装置と略記する)50a,50bが、Y軸方向に所定間隔で設置されている。表面情報計測装置50a,50bは、図9に表面情報計測装置50aを代表適に取り上げて斜視図にて示されるように、X軸方向に沿って配列された多数のセンサモジュール(センサユニット又はセンサ機構)SR1、SR2、SR3、……、SRを含んでいる。
【0064】
これらセンサモジュールSR1、SR2、SR3、……、SRのそれぞれは、そのうちの1つのセンサモジュールSR1を代表的に採り上げて示される図10(A)からわかるように、支持部材38の下面に固定された土台44と、該土台44の下面にその上端が固定された、+X方向から−X方向に見て、略逆Z字状の形状を有する板ばね46と、該板ばね46の下端に固定された浮上体48と、該浮上体48の上面に対向して土台44の下面に設けられ、浮上体48の上面との間のギャップを計測する静電容量センサ43とを含んでいる。
【0065】
更に、センサモジュールSR1は、浮上体48を所定高さ(所定のZ位置)で保持するための保持機構52を含んでいる。この保持機構52は、土台44の下面に固定されたコイルを含む電磁石(ソレノイド)52aと、該電磁石52aに対してZ軸方向に対向した位置で、浮上体48の上面に固定された磁性体部材52bと、を含む。この保持機構52によると、電磁石52aを構成するコイルに電流が供給されると、図10(A)に示されるように電磁石52aと磁性体部材52bとの間に磁気的吸引力が生じて、浮上体48が所定高さで保持されるようになっており、その一方で、電磁石52aを構成するコイルへの電流の供給が停止されると、図10(B)に示されるように、磁気的吸引力(浮上体48を保持する保持力)が解除され、浮上体48が、その自重によって下方(−Z方向)に移動する(下降する)。
【0066】
前記浮上体48は、例えば、ステンレスなどから構成されており、図10(B)に示されるようにウエハW表面に接触した状態にあるときに、ウエハWが一定速度(速度Vとする)で移動すると、図10(C)に示されるように、そのウエハWの移動により発生する気流の動圧により、所定距離(距離Lとする)だけ浮上する。なお、浮上体48の下面(−Z側面)の−Y側端部には、面取り部48aが設けられており、これにより、ウエハWの上面と浮上体48の下面との間に気流が形成されやすくなっている。
【0067】
このように構成されるセンサモジュールSR1によると、ウエハWが所定速度で移動すると、その速度に応じた距離だけ浮上体48が浮上するので、その速度を例えば速度Vに維持することにより、ウエハWと浮上体48との間の距離を一定(距離L)に維持することが可能である。したがって、ウエハの表面の凹凸に応じて浮上体48の高さ位置(Z軸方向位置)が変化するので、静電容量センサ43を用いて浮上体48の上面の位置を計測することにより、実質的にウエハWの表面の位置情報を計測することができる。
【0068】
図9に戻り、その他のセンサモジュールSR2、SR3、……SRも上記センサモジュールSR1と同様に構成されている。以下においては、説明の便宜上、センサモジュールSR2、SR3、……SRを用いた説明を行なう場合にも、上記符号と同一の符号を用いて説明するものとする。なお、各センサモジュールSR(i=1〜n)の浮上体48のX軸方向の幅が例えば5mmであり、ウエハWが直径300mmである場合には、センサモジュールは、X軸方向に沿って約60個配列される、すなわちn=60となる。
【0069】
表面情報計測装置50bは、配置位置が異なるが、表面情報計測装置50aと同様に構成されている。表面情報計測装置50aが、図6に示されるように、X干渉計18X2の測長軸上にほぼ一致してそのY位置が定められているのに対して、この位置より所定距離+Y側の位置に表面情報計測装置50bは配置されている。
【0070】
上述のように構成される本実施形態の表面情報計測装置50a、50bの使用方法等については、後述する。
【0071】
さらに、本実施形態では、ウエハステージWST上にも、図1及び図11に示されるように、表面情報計測装置50a、50bと同様に構成されたマスク表面情報計測装置50cが設けられている。マスク表面情報計測装置50cは、ウエハテーブルWTBの+Y側の端部に固定され、ウエハステージWSTのY軸方向の移動の際に、マスクMの表面情報(凹凸情報)を計測するために用いられる。
【0072】
図11には、本実施形態の露光装置100の制御系を中心的に構成する主制御装置20の入出力関係が、ブロック図にて示されている。主制御装置20は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リード・オンリ・メモリ)、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)等から成るいわゆるマイクロコンピュータ(又はワークステーション)を含み、装置全体を統括して制御する。
【0073】
次に、上記のように構成される本実施形態の露光装置100の一連の動作を説明するが、それに先だって、本実施形態で採用されている、近接場光を用いた露光(以下、適宜、近接場光露光と称する)、及びウエハ上の複数層のレジストを現像する過程で、所定のレジストの感光部の表面近傍にケイ素(Si)を付着させるシリル化(silylation)について説明する。本実施形態では、そのシリル化を所定のレジストの感光部の現像液に対する耐性を向上させるために用いる。かかる目的のシリル化については、例えば国際公開第2010/030018号(対応米国特許出願公開第2010/0068660号明細書)に詳細に開示されている。
【0074】
以下の説明で使用する図12(A)〜図12(E)は、パターン形成の一連の工程中のウエハW表面の一部の拡大断面図である。なお、図12(B)では、マスクMも併せて図示されている。また、ウエハW上に一例としてラインアンドスペースパターン(L/Sパターン)が形成されるものとし、該L/Sパターンの周期方向をX軸方向として、ウエハW表面の法線方向をZ軸方向としている。
【0075】
先ず、不図示の薄膜形成装置を用いて、半導体ウエハよりなるウエハWの表面にパターン形成用の薄膜(不図示)を形成する。次に、そのウエハWを不図示のコータ・デベロッパに搬送して、図12(A)に示されるように、ウエハW表面にシリル化しない通常のポジレジスト4を所定の厚さ(例えば0〜200nm程度)塗布する。続いて、ポジレジスト4の上に、低感度で(必要露光量が大きい)且つシリル化する特性を有するネガレジスト(ネガ型シリル化レジスト)3を所定の厚さ(例えば10nm程度)塗布する。なお、ウエハW上にポジレジスト4を塗布した後、及び/又はさらにネガレジスト3を塗布した後で、必要に応じてウエハWのプリベークを行うようにしても良い。
【0076】
次に、2層のレジスト(3,4)が塗布されたウエハWを露光装置100のウエハステージWST上に搬送し、ウエハWの各ショット領域にマスクMのL/Sパターンを近接場光を用いて露光転写する。この場合、図12(B)に示されるように、マスクMに露光ビームILが照射され、マスクMのパターン領域の遮光膜6に形成された開口部(L/Sパターン)から近接場光ELが染み出し、該近接場光ELによってウエハW上のネガレジスト3が露光される。この結果、図12(C)に示されるように、ネガレジスト3の開口部に対向する部分のみが感光部3Aとなる。
【0077】
次に、露光後のウエハWを露光装置100からコータ・デベロッパに搬送し、必要に応じて定在波効果軽減のために、ウエハWに対して現像前ベークであるPEB(post-exposure bake)を行う。
【0078】
次に、ウエハW上のネガレジスト3の感光部3Aのシリル化を行うために、図12(D)に示されるように、ウエハWのネガレジスト3及びポジレジスト4の表面に、ケイ素(Si)を含む例えばHMDS(ヘキサメチルジシラザン:Haxamethyldisilazane)のようなシリル化ガスSGを約150°Cの温度で流し、ウエハWを加熱する。この結果、図12(D)に示されるように、ネガレジスト3の感光部3Aの表面だけに、高エッチング耐性のケイ素を含む材料が付着したシリル化部3Sが形成される。
【0079】
次に、図12(E)に示されるように、ウエハW上のネガレジスト3及びポジレジスト4に対して、感光部3A以外の部分を次第に脱落させるための現像(エッチング)を行う。この工程はネガレジスト3(シリル化されていない部分)及びポジレジスト4を溶解する液体(以下、溶解液体と呼ぶ)を噴き付けることによって行われるため、ドライ現像又はレジストのエッチング(ネガレジストとポジレジストの両方を除去するエッチング)とも呼ぶことができる。
【0080】
すなわち、ウエハWの上方にあるノズル(不図示)から、溶解液体をウエハWに対して下方(−Z方向)に所定時間噴き付ける。この場合、ネガレジスト3の感光部3Aの表面にはシリル化部3Sが形成されているため、感光部3Aは確実に残される。そのドライ現像によって、図12(E)に示されるように、ネガレジスト3の感光部3Aの間の部分(ネガレジスト3の非感光部及びその下のポジレジスト4)が完全に脱落した時点でこのドライ現像を停止する。ウエハW上には、ポジレジスト4で嵩上げされたネガ型のレジストパターンが残される。
【0081】
なお、ネガレジスト3の感光部3Aの現像液に対する耐性を増すためには、シリル化以外のプロセスを用いても良い。
【0082】
また、本実施形態では、現像として、ポジレジストとネガレジストの両方に作用するエッチングであるドライ現像を行っている。その代わりに、ネガレジスト3だけに対して作用する現像(プラズマ状の現像液を噴き付ける異方性のドライ現像)を行っても良い。この場合には、現像後に、ポジレジスト4の非感光部が残されるため、非感光部のみを剥離する工程を実行することが好ましい。
【0083】
なお、上で説明したパターン形成の一連の工程(プロセス)は一例であって、このような特殊なプロセスに限らず、他のプロセス、例えばレジストのシリル化などを伴わない通常(従来通りの)のプロセスでも良い。
【0084】
また、本実施形態では、ウエハW上に1次元のL/Sパターンを転写しているが、ウエハW上にX方向、Y方向に周期性を持つ2次元のL/Sパターンを転写しても良い。この場合には、最終的にウエハW上に2次元の微細なパターンを形成できる。
【0085】
次に、本実施形態の露光装置100で行われる一連の動作について説明する。
【0086】
図13(A)には、ウエハテーブルWTB上に載置されたウエハに対する露光が終了し、ウエハ交換位置(本実施形態では、露光済みのウエハをウエハテーブルWTBからアンロードするとともに、次の露光対象であるウエハWをウエハテーブルWTB上にロードする位置)にウエハテーブルWTBが位置決めされ、新たなウエハWがロードされた状態が示されている。この状態においては、図13(A)から分かるように、ウエハWと表面情報計測装置50aの各センサモジュールSR(i=1〜n)を構成する浮上体48とは、対向していない。このとき、表面情報計測装置50aの各センサモジュールSR(i=1〜n)を構成する浮上体48は、ウエハテーブルWTBの上面と対向している。この状態では、各センサモジュールSRの保持機構52の電磁石52a(コイル)に、電流が供給されており、各センサモジュールSRの浮上体48の高さは、図10(A)に示される高さに設定されている。なお、ここではウエハ交換位置でウエハのアンロード及びロードが行われるものとしたが、これに限らず、露光済みのウエハをウエハテーブルWTBからアンロードする位置と、次の露光対象であるウエハWをウエハテーブルWTB上にロードする位置とは、異なっていても良い。
【0087】
また、このとき、表面情報計測装置50bの各センサモジュールSR(i=1〜n)を構成する浮上体48もウエハW(及びウエハテーブルWTB)と対向しておらず、表面情報計測装置50bの各センサモジュールSRの浮上体48の高さは、図10(A)に示される高さに設定されている。
【0088】
なお、表面情報計測装置50a、50bは、ウエハWの表面情報の計測に先立って、各センサモジュール間の計測誤差を検出するため、例えば平坦度が保障された基板(スーパーフラットウエハなど)をウエハテーブルWTB上に載置し、表面情報計測装置50a,50bのそれぞれによるその基板の計測結果を用いて、各静電容量センサ間のキャリブレーションを行っておくこととしても良い。このとき、ウエハ干渉計システム18によるウエハテーブルWTBの傾斜情報(θx方向の回転,θy方向の回転)を用いて、例えば計測前にその較正用の基板をXY平面と平行に設定する、あるいはその計測結果を補正するようにしても良い。また、ウエハ干渉計システム18の計測値(Z位置情報)と各センサモジュールの計測値との対応付けも行われている。
【0089】
主制御装置20は、この状態から、干渉計18X2、18Yの計測結果に基づいて、ウエハステージ駆動系27により、ウエハステージWSTを所定速度Vで+Y方向に等速駆動する。そして、ウエハWと表面情報計測装置50aの一部のセンサモジュールの浮上体48とが対向した状態(図13(B)では、複数のセンサモジュールのうち、ウエハWと対向したセンサモジュールが黒塗りされている)で、主制御装置20は、この一部のセンサモジュールを構成する保持機構52の磁気的吸引力(保持力)を解除する。なお、ここでは複数の浮上体48がウエハWと対向した時点で保持機構52による浮上体48の保持を解除するものとしたが、これに限られるものではなく、ウエハWと対向した浮上体48から順にその保持を解除しても良い。また、例えば、ウエハテーブルWTB上でその表面とウエハWの表面とがほぼ一致するようにウエハWが載置される場合、ウエハテーブルWTBと対向した後に、全ての浮上体の保持を一斉に解除する、あるいは中央付近に配置される浮上体から順にその保持を解除することとしても良い。このとき、浮上体48の保持の解除を、ウエハWと対向した時点で行っても良いし、あるいはその直前に行っても良い。
【0090】
このような保持力の解除を行うことにより、それらのセンサモジュールの浮上体48は、自重により図10(A)の状態から図10(B)の状態に移ろうとするが、ウエハWは既に所定速度Vで等速移動しているので、浮上体48の下面とウエハW上面との間に発生する気流の動圧により、浮上体48がウエハWに対して所定距離Lだけ浮上した状態が維持されるようになっている(図10(C)参照)。
【0091】
主制御装置20は、図13(B)において黒塗りされたセンサモジュールを用いて、浮上体48の上面と静電容量センサ43との間のギャップを検出する。そして、主制御装置20は、該検出結果(ウエハWの表面情報(各検出点のウエハW表面のZ位置(面位置)情報))を、干渉計18X2、18Yの値と対応付けてマッピングする。ここで、静電容量センサ43の計測結果は、ウエハステージWSTのZ軸方向の位置と、姿勢(ローリング及びピッチング)による影響を受けているおそれがある。そこで、本実施形態においては、各計測結果を、その計測時点におけるウエハ干渉計システム18の計測値に基づいて補正する。すなわち、静電容量センサ43による計測結果を変動させる変動要因を考慮して、ウエハ表面のZ位置情報の分布を計測する。以下においても同様である。
【0092】
一方、図13(B)の状態では、表面情報計測装置50bの各センサモジュールSR(i=1〜n)を構成する浮上体48はウエハWと対向しておらず、対向する直前でもない。
【0093】
マッピングの開始後、主制御装置20は、ウエハステージWSTが+Y方向に移動するのと並行して、マッピング結果(表面情報計測装置50aによる計測結果)に基づき、チャック駆動系63を介してマッピング終了部分についてウエハWの表面の凹凸(平坦度)の補正動作を開始する。
【0094】
その後は、図13(C)に示されるように、ウエハステージWSTが+Y方向に移動するのに伴って、ウエハWと対向する表面情報計測装置50aのセンサモジュールが増加するので、主制御装置20は、対向するセンサの保持機構52の保持力を解除する。なお、この間においても、所定のサンプリング間隔で、各センサモジュールを用いた計測、及びその計測結果(ウエハWの表面情報のマッピング結果)に基づくウエハWの表面の凹凸(平坦度)の補正動作が行われている。
【0095】
このようにして、図14に示される位置まで、ウエハステージWSTが+Y方向に移動すると、表面情報計測装置50bの一部のセンサモジュールを構成する浮上体48がウエハWと対向するようになる。そこで、主制御装置20は、その浮上体48の保持の解除を、ウエハWと対向した時点、あるいはその直前に行い、表面情報計測装置50bによるウエハWの表面情報の計測、すなわちウエハWの表面の凹凸(平坦度)の補正結果の確認動作を開始する。そして、確認の結果、平坦度が補正されていない部分があれば、主制御装置20は、直ちにその部分についてのウエハWの表面の凹凸(平坦度)の再度の補正を行う。
【0096】
このようにして、主制御装置20は、図15(A)に示される位置までウエハステージWSTが移動する間、ウエハWの表面情報の計測に用いられる表面情報計測装置50aのセンサモジュールを増加させつつ、上述のウエハWの表面情報のマッピング、該マッピング結果に基づくウエハWの表面の凹凸(平坦度)の補正動作、並びに表面情報計測装置50bを用いたウエハWの表面の凹凸(平坦度)の補正結果の確認動作(及び必要なウエハWの表面の凹凸(平坦度)の再度の補正動作)を、行う。
【0097】
そして、図15(A)の状態以降は、図15(B)、図15(C)に示されるように、ウエハWと対向しない表面情報計測装置50aのセンサモジュールが徐々に増える。このため、主制御装置20は、図15(A)に示される状態以降は、ウエハWの表面情報の計測に用いられる表面情報計測装置50aのセンサモジュールを減少させつつ、上述のウエハWの表面情報のマッピング、該マッピング結果に基づくウエハWの表面の凹凸(平坦度)の補正動作、並びに表面情報計測装置50bを用いたウエハWの表面の凹凸(平坦度)の補正結果の確認動作(及び必要なウエハWの表面の凹凸(平坦度)の再度の補正動作)を、行う。この際、主制御装置20は、ウエハWと対向しなくなった表面情報計測装置50aのセンサモジュール(又はウエハWと対向しなくなる直前のセンサモジュール)の保持機構52(電磁石52aのコイル)への電流の供給を開始し、それらのセンサモジュールを構成する浮上体48を所定高さ(図10(A)に示される高さ)で保持するようにする。
【0098】
以上のようにして、ウエハWのほぼ全面にわたる、表面情報の計測(マッピング)、該マッピング結果に基づくウエハWの表面の凹凸(平坦度)の補正動作、並びに表面情報計測装置50bを用いたウエハWの表面の凹凸(平坦度)の補正結果の確認動作(及び必要なウエハWの表面の凹凸(平坦度)の再度の補正動作)が行われる。なお、上述の説明では、ウエハWの表面情報の計測に用いられる表面情報計測装置50aのセンサモジュールの増減及びこれに伴うセンサモジュールを構成する保持機構52への電流の供給の停止、開始(浮上体48の高さ方向の位置の切り替え)について説明したが、表面情報計測装置50bについても、ウエハWの表面情報の計測に用いられるセンサモジュールの増減及びこれに伴うセンサモジュールを構成する保持機構52への電流の供給の停止、開始(浮上体48の高さ方向の位置の切り替え)が、上記と同様にして行われる。
【0099】
上記のウエハWの表面情報の計測(マッピング)、該マッピング結果に基づくウエハWの表面の凹凸(平坦度)の補正動作、並びに表面情報計測装置50bを用いたウエハWの表面の凹凸(平坦度)の補正結果の確認動作に引き続いて、主制御装置20は、ウエハステージWSTを、露光位置まで+Y方向にさらに移動する。
【0100】
この場合、ウエハWのほぼ全面にわたる、表面情報の計測(マッピング)が終了した後で、かつ表面情報計測装置50bを用いたウエハWの表面の凹凸(平坦度)の補正結果の確認動作が終了する前の所定の時点で、干渉計18X2からの測長ビームがウエハテーブルWTBの反射面に当たらなくなるので、主制御装置20は、干渉計18X2と干渉計18X1とが同時にウエハテーブルWTBの反射面に当たっている状態で、干渉計の繋ぎ動作を行っている。
【0101】
本実施形態では、主制御装置20は、上述したウエハWの表面情報の計測(マッピング)のため、ウエハステージWSTが、+Y方向に移動する際に、この表面情報の計測(マッピング)が開始されるのに先立って、マスク表面情報計測装置50cを用いて、マスクMの表面情報(凹凸情報)の計測を、行っている。マスクMの表面情報(凹凸情報)の計測結果は、主制御装置20により不図示のメモリに格納される。
【0102】
マスクMの表面情報(凹凸情報)の計測は、上述したウエハWの表面情報の計測と同様にして行われるが、その計測時に、マスク表面情報計測装置50cの複数のセンサモジュールが備える電磁石が、浮上体の自重を支持する磁気的な斥力を発生している点が異なる。なお、マスクMの表面情報(凹凸情報)の計測は、ウエハステージWSTがローディングポジションに戻る際に、行われても良い。
【0103】
主制御装置20は、上述のウエハステージWSTの+Y方向の移動に連続して、ウエハW上の第1ショット領域に対する露光を行うため、その第1ショット領域がマスクMのほぼ直下に位置する位置に、ウエハステージWSTを位置決めする。ここでは、ウエハW上の複数のショット領域に既に形成されたパターンに重ね合わせてマスクMのパターンを転写するものとする。この場合、主制御装置20は、前述した手順で、一対のアライメント系ALA、ALB及び平面VCM65を用いて、マスクMの位置合わせを行うとともに、前述したマスクMの位置合わせに用いられた一対のアライメント系ALA、ALBの計測結果に基づいて、ウエハステージWSTを微少駆動することで、マスクMとウエハW上の第1ショット領域との位置合わせ(アライメント)を行う。
【0104】
そして、位置合わせ後、前述した複数対のアライメント系ALA、ALBを用いて、それぞれのアライメント系の検出領域内にあるウエハW上のアライメントマークと、マスクM上のアライメントマークとを同時に計測することで、マスクMのパターン領域の歪みと、ウエハW上のショット領域に形成された下地パターンの歪みとの差(両者間の歪みのずれ)を求める。ここで、下地パターンとは、ウエハW上に予め形成されたパターンであって、その上にマスクMに形成されたパターンが重ね合わせて転写形成される下地となるパターンを意味する。
【0105】
そして、主制御装置20は、前述したXYスキャン露光用の小露光フィールドSEF、Yスキャン露光用の中露光フィールドMEF及び一括露光用のショット全面露光フィールドLEFのいずれかを、オペレータの指定、又は要求される露光精度に応じて、設定する。そして、主制御装置20は、設定した露光フィールドに対応する方式で、前述した近接場光を用いた露光を行い、マスクMのパターンを、ウエハW上の第1ショット領域に、重ね合わせて転写する。この際、主制御装置20は、上で求めたマスクMのパターン領域の歪みと、ウエハW上のショット領域に形成された下地パターンの歪みとの差の情報に基づいて、その差を極力小さくするように、ウエハステージWSTを、X、Y、θz方向に微少駆動(特に、XYスキャン露光又はYスキャン露光の場合、露光ビームILの進行に応じて駆動方向及び/又は駆動量を連続的に変更する)して、マスクMのパターンとウエハW上の第1ショット領域に形成された下地パターンとの重ね合わせを最適化する。この重ね合わせの最適化は、露光フィールド単位で行われる。
【0106】
例えば、マスクMのパターン領域PAに図16(A)に実線で示されるような歪みがあり、ウエハW上の下地パターンBPに図16(B)に実線で示されるような歪みがあるときを考える。この場合に、ショット全面露光フィールドLEFの設定の下での一括露光時に、上述の重ね合わせの最適化を行った場合には、露光フィールド内(この場合、ショット領域内)で図16(C)にハッチングで示されるようなマスクMのパターンと下地パターンとの重ね合わせが実現される。一方、XYスキャン露光用の小露光フィールドSEFの設定の下での、XYスキャン露光時に、上述の重ね合わせの最適化を行った場合には、小露光フィールドSEF内で図16(D)にハッチングで示されるようなマスクMのパターンと下地パターンとの重ね合わせが実現される。これより、露光フィールドが小さいほどきめ細かく制御可能で、重ね合わせ精度が向上することがわかる。
【0107】
また、特に、XYスキャン露光又はYスキャン露光を行う場合、主制御装置20は、露光中に、露光フィールド内における像面の最適化を、次のようにして行っている。すなわち、マスクMは、マスクテーブルMTBになるべく平坦になるようにチャックされているが、完全にはフラットではない。ただし、マスクMのパターン面の表面情報は前述のようにこの時点では計測済みである。そこで、主制御装置20は、図17(A)及び図17(B)に示されるように、露光ビームILの進行とともに、その露光ビームILが照射されている露光フィールド内では、マスクMのパターン面とウエハW上のレジスト表面との間のギャップGが、極力一定でかつ互いに平行になるように、マスクMのパターン面の表面情報及びウエハ干渉計システム18の計測値に基づいて、ウエハステージ駆動系27を介してウエハステージWSTをZレベリング駆動する。
【0108】
そして、ウエハW上の第1ショット領域に対する露光が終了すると、主制御装置20は、ウエハW上の第2ショット領域を、マスクMの真下に位置させるべく、ウエハステージWSTをX軸方向(又はY軸方向)に所定のステッピング距離だけ移動するショット間ステッピングを行う。このとき、本実施形態では、主制御装置20は、ウエハステージWSTとマスクMとの少なくとも一方を、Z軸方向に所定量駆動して、マスクMのパターン面とウエハW上のレジスト表面との間のギャップGを広げる。この理由は、次の通りである。近接場光を用いた露光には、パターンの線幅と同レベルのギャップGの制御が必要、換言すれば本実施形態では、そのようなギャップの制御が、上述のウエハステージWSTをZレベリング駆動により実現されている。このため、露光時のまま、ウエハステージWSTのショット間ステッピングを行うと、マスクMとウエハWとが干渉するおそれがあるので、これを確実に回避するために、ショット間ステッピングの際には、ギャップGを一旦広げることにしたものである。
【0109】
ウエハステージWSTのショット間ステッピング後、ウエハW上の第2ショット領域がマスクMのほぼ直下に位置決めされると、前述と同様にマスクMとウエハW上の第2ショット領域との位置合わせ(アライメント)を行う。ただし、マスクMとウエハW上の第1ショット領域との位置合わせに先立って、マスクMの位置合わせは終了しているので、主制御装置20は、前述の一対のアライメント系ALA、ALBの計測結果に基づいて、ウエハステージWSTを微少駆動することで、マスクMとウエハW上の第2ショット領域との位置合わせ(アライメント)を行う。マスクMとウエハ上の第3ショット領域以後のショット領域との位置合わせの場合も同様である。
【0110】
そして、前述と同様に、複数対のアライメント系ALA、ALBを用いて、マスクMのパターン領域の歪みと、ウエハW上のショット領域に形成された下地パターンの歪みとの差(両者間の歪みのずれ)を求めた後、ウエハW上の第2ショット領域にマスクMのパターンを転写すべく、前述と同様にして露光を行う。
【0111】
以降、上記と同様に、ショット間ステッピング、アライメント(マスクMのパターン領域の歪みと、ウエハW上の下地パターンの歪みとの差の計測を含む)及び露光を、順次繰り返して、ステップ・アンド・リピート方式で、ウエハW上の第3ショット領域以降のショット領域にマスクMのパターンを転写する。
【0112】
そして、ウエハW上の全ショット領域に対する露光が終了した段階で、主制御装置20は、再び図13(A)に示される位置にウエハステージWSTを移動し、ウエハWのアンロード及び新たなウエハのロードを行った後、前述と同様にして、新たなウエハのZ位置情報の分布の計測及び凹凸の補正、アライメント動作、及び露光動作等を順次実行する。
【0113】
ここで、複数枚のウエハWに対して、連続して上述した露光動作を繰り返すと、マスクMの熱変形に起因してマスクのパターン領域に歪みが生じることがある。そこで、主制御装置20は、所定のインターバル、例えば所定枚数のウエハWの露光が終了する毎に、前述のアシストステージASTに設けられた空間像計測器82を用いて、マスクMのパターン領域の歪みを計測し、次の露光が開始されるまでの間に、平面VCM65を用いてその歪みを補正している。
【0114】
そして、補正しきれなかったマスクMの歪み成分に起因する重ね合わせ誤差をも、前述のマスクMのパターンと下地パターンとの重ね合わせの最適化の際に補正(除去)している。
【0115】
しかるに、本実施形態では、露光中も、複数対のアライメント系ALA、ALBを用いて、それぞれのアライメント系の検出領域内にあるマスクM上のアライメントマークと、ウエハW上のアライメントマークとを同時に計測できる。従って、主制御装置20は、露光中も、その計測を継続しつつ、平面VCM60を用いてマスクMのパターン領域の歪みの補正及び上記の重ね合わせの最適化を行うこともできる。
【0116】
また、本実施形態では、上述の如く、主制御装置20が、ショット間ステッピングの際に前述のギャップGを一旦広げることで、マスクMとウエハWとが干渉するのを回避している。これに加えて、図18(A)及びこの図18(A)中の円内を拡大して模式的に示す図18(B)に示されるように、ウエハWに全体的に断面円弧状の上側凸の反りが生じるように、ピンチャック部材(テーブル部)60にウエハWを保持させる際、又はその後に、ピンチャック部材(テーブル部)60を複数のアクチュエータ51を介して変形させるとともに、マスクMに全体的に断面円弧状の下側凸の反りが生じるように、ピンチャックプラテン66にマスクMを保持させる際、又はその後に、ピンチャックプラテン66を平面VCM60を介して変形させることとしても良い。これにより、一例として図18(B)に示されるようにマスクMとウエハWとは、露光フィールド(露光ビームILの照射領域)内の部分のみが、近接し、他の部分は互いに離れた状態にすることができ、より確実に、マスクMとウエハWとの干渉を回避することが可能になる。ここで、マスクMの反り及びウエハWの反りの曲率半径の大きさは、露光フィールド内のギャップGの均一性が十分に確保できる範囲で設定される。
【0117】
なお、上記の説明では、マスクMとウエハWとの両者を変形させるものとしたが、これに限らず、マスクMとウエハWとの一方のみを上記の如く下側凸又は上側凸の反りが生じるように変形させる(反らす)だけでも良い。また、マスクMとウエハWとの少なくとも一方を事前に一括して反らしても良いし、1つあるいは複数のショット領域毎にマスクMとウエハWとの少なくとも一方を反らすようにしても良い。また、マスクMとウエハWとの少なくとも一方を反らすタイミングはステッピング直前でも良いし、ステッピング開始後でも良い。
【0118】
以上詳細に説明したように、本実施形態の露光装置100によると、マスクMを保持するマスクテーブルMTBは、マスクMのパターン領域の周囲(チャッキングエリアCA)を上方から保持するとともに、マスクMに対して少なくともXY平面に平行な面内の力を作用させることができる。このため、投影光学系を用いない露光装置100であるにもかかわらず、マスクMの変形、例えばマスクの熱変形に起因するマスクM上のパターンの変形(歪み、倍率変化)などに対応して、その変形が小さくなるように力を加えることができる。従って、マスクMのパターンとウエハW上の各ショット領域の下地パターンとの高精度な重ね合わせを実現することが可能になる。また、本実施形態の露光装置100を用いると、光露光装置の通常の露光による解像限界以下の線幅のパターンを含む微細パターンを、ダブルパターニング法などによらず実現することができる。さらに、露光装置100は、前述の装置構成の説明からわかるように、高額な投影光学系も液浸関係の装置も不要なので、従来の液浸露光装置などに比べて、製造コストを格段に低減させることが可能である。
【0119】
なお、上記実施形態では、露光装置100では、一括露光用のショット全面露光フィールドLEF、Yスキャン露光用の中露光フィールドMEF及びXYスキャン露光用の小露光フィールドSEFの3種類の大きさ及び形状の異なる露光フィールドを設定可能であるものとしたが、これに限らず、3種類の露光フィールドのうちの1つ又は2つのみが設定可能であっても良い。例えば、中露光フィールドMEF及び小露光フィールドSEFのみが設定可能であっても良い。かかる場合には、主制御装置20によって、マスクM及びウエハWと露光ビームILとを相対走査してウエハWを露光する走査露光が行われる。この場合、主制御装置20は、マスクM及びウエハWと露光ビームILとを静止させた状態でウエハWを露光する一括露光は行わない。また、上記実施形態では、一括露光用のショット全面露光フィールドLEF、Yスキャン露光用の中露光フィールドMEF及びXYスキャン露光用の小露光フィールドSEFの3種類の大きさ及び形状の異なる露光フィールドを設定可能で、それぞれの設定に応じた3種類の方式で露光が行われるものとしたが、上記3種類の露光フィールドに限らず、上記3種類とは異なる大きさ及び形状の他の露光フィールドのみ、あるいは他の露光フィールドと上記3つの露光フィールドの少なくとも1つとを設定可能にしても良い。この場合も、設定された露光フィールドに応じた方式の露光を行う。また、露光方式として、上述した3つの露光方式に限らず、これら3つの露光方式以外の他の方式のみ、あるいは他の方式と上記3つの方式の少なくとも1つとを組み合わせて採用しても良い。
【0120】
また、上記実施形態では、マスクMが、光露光装置の通常の露光による解像限界以下の線幅のパターンを含む微細パターンである場合について説明したが、上記実施形態の露光装置100は、このような微細パターンに限らず、光露光装置の通常の露光による解像限界より大きい線幅のパターンのウエハ上への転写にも好適に用いることができる。従って、ウエハ上に塗布すべきレジストも、二層レジストなどの多層レジストに限られないことは勿論である。
【0121】
また、上記実施形態では、近接場光を用いてウエハを露光し、該ウエハ上にマスクのーパターンを転写する場合について説明したが、例えば、光露光装置の通常の露光による解像限界より大きい線幅のパターンのウエハ上への転写する場合などには、近接場光を用いない通常の露光又は液浸露光を行なっても良い。かかる場合であっても、露光(上述の走査露光又は一括露光)と並行して、ウエハを微動させる等によって、マスクのパターンとウエハ上の下地パターンとの重ね合わせを最適化する手法は、マスクのパターンとウエハ上の下地パターンとの高精度な重ね合わせには有効である。
【0122】
なお、上記実施形態では、上述のマスクのパターンとウエハ上の下地パターンとの重ね合わせの最適化を露光フィールド単位で行う場合について説明したが、これに限らず、例えば、Yスキャン露光用の中露光フィールドMEF又はXYスキャン露光用の小露光フィールドSEFが設定された場合には、ショット領域単位又はショット領域を複数に等分した領域(設定された露光フィールドの大きさ及び形状と異なる)を単位として、上記重ね合わせの最適化を行なっても良い。また、これらの重ね合わせの最適化の単位毎に静止露光を行なっても良い。
【0123】
また、マスクのパターンとウエハ上のパターンとの重ね合わせの最適化として、ウエハステージWST及びマスクMの少なくとも一方を、X、Y、θz方向に微少駆動(特に、XYスキャン露光又はYスキャン露光の場合、露光ビームILの進行に応じて駆動方向及び/又は駆動量を連続的に変更する)とともに、その露光ビームILが照射されている露光フィールド内では、マスクMのパターン面とウエハW上のレジスト表面との間のギャップGが、極力一定でかつ互いに平行になるようにしても良いし、ウエハステージWST及びマスクMの少なくとも一方を、X、Y、θz方向に微少駆動するのみでも良いし、マスクMのパターン面とウエハW上のレジスト表面との間のギャップGが、極力一定でかつ互いに平行になるようにする(上述の像面の最適化を行う)のみでも良い。マスクのパターンとウエハ上のパターンとの重ね合わせの最適化の方式を、主制御装置20は、オペレータの指示に応じ、あるいは要求される露光精度及びスループットの少なくとも一方を考慮して決定しても良い。
【0124】
なお、上記実施形態の露光装置の光源は、超高圧水銀ランプに限らず、ArFエキシマレーザに限らず、KrFエキシマレーザ(出力波長248nm)、F2レーザ(出力波長157nm)、Ar2レーザ(出力波長126nm)、Kr2レーザ(出力波長146nm)などのパルスレーザ光源などを用いることも可能である。また、YAGレーザの高調波発生装置などを用いることもできる。この他、例えば米国特許第7,023,610号明細書などに開示されているように、DFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波(真空紫外光)を用いても良い。
【0125】
また、上記実施形態では、露光装置の照明光(露光ビーム)ILとしては波長100nm以上の光に限らず、波長100nm未満の光を用いても良いことはいうまでもない。特に波長が50nm以下、具体的には11nmあるいは13nm程度のEUV光などを用いても良い。
【0126】
なお、上記実施形態に係る表面情報計測装置50a,50bは、ウエハW上のレジストに接触することなくレジスト表面の凹凸を計測することができる。しかし、これに限らず、同様の計測が可能であれば、例えば2つの物体間の隙間(ギャップ)に流体を流し、その流速を計測することで、そのギャップの寸法を計測する計測装置(エアゲージとも呼ばれることがある)を用いて、ウエハ表面及び/又はマスクのパターン面の凹凸を計測しても良い。また、かかる計測装置を用いて、前述のギャップGを一定保ちながら、露光中のウエハステージのZレベリング駆動を行っても良い。なお、表面情報計測装置50a、50b及びマスク表面情報計測装置50cの少なくとも1つは、光学検出方式でも良い。
【0127】
また、上記実施形態の露光装置では、ウエハステージWSTの位置情報を計測する計測装置として、レーザ干渉計の代わりに、あるいはレーザ干渉計と併用してエンコーダシステムを用いても良いが、このエンコーダシステムとしては、ウエハテーブルWTB上にグレーティングが設けられ、これに対向してウエハステージWSTの外部、例えばボディBDを構成する支持部材38にエンコーダヘッドが配置される方式、及びこれとは反対に、ウエハテーブルWTB上にエンコーダヘッドが設けられ、これに対向してウエハステージWSTの外部、例えばボディBDを構成する支持部材38にグレーティングを有するスケール部材が配置される方式のいずれの方式を採用しても良い。前者の方式のエンコーダシステムとしては、例えば米国特許出願公開第2008/0088843号明細書などに開示されるのと同様のエンコーダシステムを用いることができ、後者の方式のエンコーダシステムとしては、例えば米国特許出願公開第2006/0227309号明細書などに開示されるのと同様のエンコーダシステムを用いることができる。アシストステージの位置情報を、エンコーダシステムにより計測する場合も同様である。
【0128】
なお、上記実施形態でパターンを形成すべき物体(エネルギビームが照射される露光対象の物体)はウエハに限られるものではなく、ガラスプレート、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど、他の物体でも良い。また、上記実施形態では、ガラス基板から成るマスクを用いるものとしたが、マスクは、ガラス基板以外の基板から成るものであっても良い。
【0129】
露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置、有機EL、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも上記実施形態を適用できる。
【0130】
また、上記実施形態の露光装置は、本願請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0131】
《デバイス製造方法》
次に上述した露光装置100をリソグラフィ工程で使用するデバイスの製造方法の実施形態について説明する。
【0132】
図19には、デバイス(ICあるいはLSI等の半導体チップ、液晶パネル、CCD、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン等)の製造例のフローチャートが示されている。図19に示されるように、まず、ステップ201(設計ステップ)において、デバイスの機能・性能設計(例えば、半導体デバイスの回路設計等)を行い、その機能を実現するためのパターン設計を行う。
【0133】
引き続き、ステップ202において、ガラス基板の一種であるガラスウエハ上に、リソグラフィ技術を用いて、マスクに対応する複数の区画領域を形成する。図20には、複数の区画領域SAが形成されたガラスウエハWの一例が示されている。このガラスウエハWの複数の区画領域SAのそれぞれには、ステップ201で設計した回路パターンが形成されたパターン領域と、その周囲のチャックエリアとなる遮光領域が形成されている。
【0134】
この場合、ガラスウエハW上に複数の区画領域SAを形成するので、パターン領域内に光露光装置の解像限界以下の線幅の微細パターンが含まれる場合であっても、最新の縮小投影露光装置、例えばArFエキシマレーサを露光光源とする液浸スキャナなどを用いて、いわゆるダブルパターニング法などを駆使することで、上記の微細パターンを含む複数の区画領域SAを形成することができる。この他、電子線露光装置を用いて、上記の微細パターンを形成することもできる。
【0135】
ここで、例えば、ガラスウエハW上への複数の区画領域の形成に、例えば縮小投影露光装置を用いる場合、ガラスウエハWに転写すべきマスターレチクルのパターンは、ガラスウエハW上へ転写される微細パターンの4倍以上の線幅を有する場合が殆どであり、上述の最新の縮小投影露光装置(ArFエキシマレーサを露光光源とする液浸スキャナ)などを用いて、いわゆるダブルパターニングによらない通常の露光により、レチクル基板上に形成すれば良い。すなわち、デバイスの製造に用いられる複数層の回路パターンをそれぞれ有するマスターレチクルのセットを短時間に作製することが可能である。ガラスウエハWのパターン領域に形成すべきパターンの線幅がさらに細くなった場合に、マスターレチクルのパターンを、ダブルパターニング法を用いて形成することもできる。ここで、ダブルパターニング法は、1回目の露光と2回目の露光との間でガラスウエハの現像を行わない、いわゆる二重露光法に限らず、1回目の露光後にその露光によってレジストパターンがその表面に形成されたガラスウエハを現像後に2回目の露光を行うダブルパターニング法をも含む。
【0136】
次のステップ203において、ガラスウエハWを、区画領域SA毎に、例えば不図示のダイシングソーを用いて切り離す(ダイシングする)。これにより、複数のマスク(等倍マスク)Mが、同時に(1度に)製造される。
【0137】
次に、ステップ204において、製作した複数のマスクをマスクバッファにストックする。ここで、マスクMは、等倍マスクであり、長辺の長さが100mm以下の大きさなので、複数同時にストックするマスクバッファは勿論、例えば使い捨てのコンタクトレンズなどのように、1枚1枚個別に取り扱いのようなマスクバッファに収納することとしても良い。
【0138】
次のステップ205では、露光装置に投入するため、マスクMをマスクバッファから取り出す。
【0139】
上記のステップ202〜ステップ205の少なくとも一部と並行して、ステップ206(ウエハ製造ステップ)において、シリコン等の材料を用いてウエハを製造する。
【0140】
次に、ステップ207(ウエハ処理ステップ)において、ステップ201〜ステップ206で用意したマスクとウエハとを使用して、リソグラフィ技術等によってウエハ上に実際の回路等を形成する。
【0141】
次いで、ステップ208(デバイス組立てステップ)において、ステップ207で処理されたウエハを用いてデバイス組立てを行う。このステップ208には、ダイシング工程、ボンディング工程、及びパッケージング工程(チップ封入)等の工程が必要に応じて含まれる。
【0142】
最後に、ステップ209(検査ステップ)において、ステップ208で作成されたデバイスの動作確認テスト、耐久テスト等の検査を行う。こうした工程を経た後にデバイスが完成し、これが出荷される。なお、上記の説明では、ステップ202〜ステップ205の少なくとも一部と並行して、ステップ206(ウエハ製造ステップ)を行うものとしたが、これに限らず、ステップ202に先だってシリコン等の材料を用いてウエハを製造するウエハ製造ステップを行っても良い。すなわち、デバイス製造工程とは無関係に、予めウエハメーカが製造したウエハを購入しておき、そのウエハを、ステップ207以下の各工程で用いても良い。
【0143】
図21には、半導体デバイス製造における、上記ステップ207の詳細なフロー例が示されている。図21において、ステップ211(酸化ステップ)においてはウエハの表面を酸化させる。ステップ212(CVDステップ)においてはウエハ表面に絶縁膜を形成する。ステップ213(電極形成ステップ)においてはウエハ上に電極を蒸着によって形成する。ステップ214(イオン打ち込みステップ)においてはウエハにイオンを打ち込む。以上のステップ211〜ステップ214それぞれは、ウエハ処理の各段階の前処理工程を構成しており、各段階において必要な処理に応じて選択されて実行される。
【0144】
ウエハプロセスの各段階において、上述の前処理工程が終了すると、以下のようにして後処理工程が実行される。この後処理工程では、まず、ステップ215(レジスト形成ステップ)において、ウエハW上にフォトレジスト(感光剤)を塗布する。ここで、上で説明した露光装置100を用いてマスクMのパターンを形成する場合には、パターン形成用の薄膜が形成されたウエハW上に前述したポジレジスト4及びネガ型シリル化レジスト3が積層状態で塗布される。
【0145】
引き続き、ステップ216(露光ステップ)において、露光装置100及びその露光方法によってマスクMの回路パターンをウエハWに転写する。これに先立って、マスクMが、露光装置100に投入される。この場合の回路パターンの転写は、前述したように、近接場光を用いたプロキシミティ方式で行われる。次いで、露光後のウエハWに対して、必要に応じ、PEBが行われ、さらにウエハW(上のネガレジスト3の感光部)のシリル化が行われる。
【0146】
次に、ステップ217(現像ステップ)においては露光されたウエハWを現像する。ここで、露光装置100を用いて前述の露光が行われた場合、例えば、ポジレジストとネガレジストの両方に作用するエッチングであるドライ現像が、行われる。
【0147】
次にステップ218(エッチングステップ)において、ウエハW上でそのレジストパターンをマスク層としてパターン形成を行うために、エッチング装置内で、ウエハWの加熱(キュア)及びエッチング等を含む基板処理が行われる。
【0148】
そして、ステップ219(レジスト除去ステップ)において、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く(剥離する)ことによって、ウエハW表面の薄膜部には、マスクMのパターンの等倍の回路パターンが形成される。
【0149】
これらの前処理工程と後処理工程とを繰り返し行うことによって、ウエハ上に多重に回路パターンが形成される。
【0150】
以上説明した本実施形態のデバイス製造方法を用いれば、露光工程(ステップ216)において上記実施形態の露光装置及びその露光方法が用いられるので、重ね合せ精度を高く維持しつつ、高スループットな露光を行うことができる。従って、微細パターンが形成された高集積度のマイクロデバイスを生産性良く製造することが可能になる。
【0151】
これに加え、本実施形態のデバイス製造方法では、露光装置100で用いられるマスクMを、ガラスウエハを基板として用いて製作するので、そのマスクMのパターンに非常に微細なパターンが含まれる場合であっても、その製作に縮小投影露光装置、電子線露光装置などを用いて、複数同時に作製することが可能になる。特に、縮小投影露光装置を用いる場合、1セットのマスターレチクル(例えば4倍)から、多数のコピーマスク(等倍)を作製できる。これにより、レチクルコストも削減可能である。また、マスターレチクルのセットを短時間に作製することが可能である。
【0152】
なお、露光装置100による露光は、極近接のプロキシミティ露光なので、マスクMの汚染が考えられるが、ガラスウエハを基板としてマスクMが製造されるので、製造コストが安価である。従って、使用済みの複数のマスクをまとめて再利用のため洗浄しても良いが、この洗浄を待たずに、複数のマスクMのそれぞれを、露光装置100に所定のインターバルで投入し、上記ステップ206において、露光装置100は、マスクMが投入される毎に、その投入されたマスクMのパターンを前記インターバルに応じた数のウエハのそれぞれに順次転写することとしても良い。この他、マスクMの再利用をすることなく、使い捨てにすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0153】
以上説明したように、本発明のデバイス製造方法は、半導体素子などの電子デバイスを製造するのに適している。
【符号の説明】
【0154】
3…ネガレジスト、3A…感光部、4…ポジレジスト、10…照明系、15…可変視野絞り、18…ウエハ干渉計システム、20…主制御装置、43…静電容量センサ、48…浮上体、50a,50b,50c…表面情報計測装置、51…アクチュエータ、51a…コイル、51b…永久磁石、51c…接続部材、54…ウエハ保持機構、60…ピンチャック部材、65…平面VCM、66…ピンチャックプラテン、86…静電気除去装置、88…マスク検査装置、100…露光装置、ALA,ALB…アライメント系、AST…アシストステージ、EL…近接場光、IL…照明光、LEF…ショット全面露光フィールド、M…マスク、MEF…中露光フィールド、MMA,MMB…アライメントマーク、MTB…マスクテーブル、PA…パターン領域、SEF…小露光フィールド、W…ウエハ、WTB…ウエハテーブル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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