(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
真空容器内部に配置され減圧された内側でプラズマが形成される処理室と、この処理室内の下部に配置されその上面に前記プラズマを用いた処理の対象の試料が載置される試料台と、この試料台上部の前記試料がその上に載せられる載置面を構成する誘電体製の絶縁膜及びこの絶縁膜の内部に配置され前記試料を吸着保持するための電力が供給される電極とを備えたプラズマ処理装置であって、
前記試料台が下部材と前記絶縁膜がその上面上方に配置された金属製の上部材とに分割可能に構成され、
前記上部材を貫通する貫通孔の内部に、前記電極に電気的に接続されたソケット及びこれの内側に下側から挿入されて接触するピンを含む給電部と、前記ソケットの外周に装着されたシール部材であって、前記貫通孔の内部の空間において前記ソケット上方で当該ソケットと前記電極とを接続する接続部を含む上側の空間と前記ピンが前記ソケットに接触した部分を含む略大気圧にされた下側の空間との間を気密に区画するシール部材とを備え、前記上側の空間が前記減圧された前記処理室に通路を介して連通されたプラズマ処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態を以下図面を参照して説明する。
本発明の実施の形態は、真空容器内部の処理室内に配置された試料台であって、半導体ウエハ等の基板状の試料を吸着させて保持しつつ、試料台上方の処理室内の空間に形成したプラズマを用いて試料の処理を行う試料台を含むプラズマ処理装置である。一般的にこのようなプラズマ処理装置では、試料が載せられる試料台は処理中に温度を所望の範囲内の値となるように調節されている。このような温度の制御は、試料台の内部に配置された流路に所定の値の範囲の温度に調節された熱交換媒体を流したり、試料台の内部にヒータを内蔵させヒータの発熱量を調節したりして行われている。
【0018】
また、本実施の形態では、試料は試料台の上部に配置された試料と同じ径かわずかに小さい直径を有した円形または一部が特定の形状に欠けた円形の載置面の上に載置され、試料と試料台との間に形成された静電気を用いて載置面上で吸着され保持される。このような試料台の試料を載置する載置面は絶縁膜が配置されて構成されている。
【0019】
この絶縁膜は溶射で形成されたり、あるいは、極めて薄い絶縁性のプレートが接着剤等によって貼り付けられたりする。ここで、前記絶縁膜の下面側に電極を形成し、電圧を印加することで、前記絶縁膜を挟んで試料内で分極が発生し、静電気により試料と前記試料台が吸着する構成をとっている。この静電気による吸着力(静電吸着力)により、試料と前記試料台の間の熱伝達効率が高められ、試料温度の制御性を高めている。
【0020】
このような従来の技術の例としては、特開昭57−64950号公報に開示のものが知られている。この従来技術では、絶縁膜の厚みは十分な静電気力が得られるように十分に薄くされ、50〜200μm程度の膜厚にされている。
【0021】
さらに、ヒータについても静電吸着用の電極と同様に絶縁膜の下面側に配置することで、絶縁膜の厚みを薄くするほどヒータの配置された表面から試料載置面までの熱抵抗が小さくなり試料載置面の温度制御性は向上する。
【0022】
ところで、前記静電吸着用の電極あるいはヒータへの給電部には、抜き差し可能な給電コンタクト部品が備え付けられており、この給電コンタクト部で給電ラインを切り離して、前記試料台を解体、交換可能な設計となっている。
【0023】
ここで、試料台は真空容器内に配置されており、給電コンタクト部品もプラズマ処理雰囲気内に配置される場合と給電コンタクト部品はプラズマ処理雰囲気外に配置される場合とが考えられる。このような試料台の構成を模式的に
図4に示す。
【0024】
図4は、このようなプラズマ処理装置の試料台の構成の概略を模式的に示す縦断面図である。
図4(a)は前者の構成を、
図4(b)は後者の構成を示している。
【0025】
図4(a)において、試料台は、金属製の部材である基材403とその上面に配置されたセラミクス等の絶縁性の材料による絶縁膜401と基材403の下方に配置され外周部分のボルト405によって締結されて上面が基材403の下面と接続される試料台ベース404とを備えている。また、絶縁膜401の内部には膜状に形成され試料Wが絶縁膜401上に載せられた状態で静電吸着するための電極402が配置されている。
【0026】
さらに基材403の内部には貫通孔が配置されており、貫通孔内部に収納された給電コンタクトソケット407が配置され、その上端部が貫通孔上部の開口から上方に突出して電極402の裏面に結合されている。これにより、電極402の裏面とが接続されて電極402と給電コンタクトソケット502は電気的に接続されている。
【0027】
さらに、試料台ベース404は、基材403に配置された上記貫通孔にその中心軸を合わせて配置された貫通孔を有しており、基材403と試料台ベース404とが基材403の高さが低くされた凸部の外周部において締結用のボルトによって締結され両者の下面と上面とが接触された状態で、両者を貫通する貫通孔も1つの孔として連結される。試料台ベース404の上記連結された貫通孔の下方から貫通孔内に挿入された給電コンタクトピン408の先端部は、給電コンタクトソケット407の凹み部内に差し込まれて前者の表面と後者の内側表面とが接触して両者が電気的に接続されることで、給電コンタクトピン408と電極402との間が電気的に接続される。この状態で、静電吸着用電源412からの所定の直流電圧が給電コンタクトピン408に印加されることで、給電コンタクトソケット407を経由して電極402に試料Wを吸着可能にするに足る所期の電圧が供給される。
【0028】
また、給電コンタクトピン408は下端部において円板状の絶縁スリーブ411と接合されており、絶縁スリーブ411の上面が試料台ベース404の下面と当接することで、連結された貫通孔内での給電コンタクトピン408の位置が定められて試料台207内で保持される。
図4(a)の例では、絶縁スリーブ411の当接する面の給電コンタクトピン408の外周側の部分にリング状に配置された溝を有しこの溝内に嵌め込まれた状態で絶縁スリーブ411が試料台ベース404下面と当接することでリングの内外を気密に区画するOリング等の真空シール409を備えている。
【0029】
しかし、真空シール409により気密に区画された試料台ベース404及び基材403の貫通孔の内側の真空空間410は、試料台ベース404と基材403との接続面の外周側で気密に区画されていない場合には処理室内と連通されていることになり、処理室内のガスやプラズマの成分の粒子が貫通孔内に進入してしまうことになる。
【0030】
一方、
図4(b)の場合には、基材403と試料台ベース404との当接面において上記貫通孔の外周を囲んで内外を気密に区画する真空シール409が配置されている。より具体的には、貫通孔の外周側の試料台ベース404の上面にOリング等真空シール409が嵌め込まれる溝が配置され、真空シール409が嵌め込まれた状態で基材403と試料台ベース404とを当接させて締結することで、真空シール409を上下から挟んでシール性能を発揮させる。このことにより、貫通孔内部と試料台207外部との間が気密に封止されて上記粒子の進入が低減される。
【0031】
図4(a)の場合では、給電コンタクトソケット407と給電コンタクトピン408との接触部分が処理室内の反応性の高い粒子や付着性の高い粒子と相互反応、例えば腐食等を生じて、長期間に渡り使用すると徐々に導通が損なわれて給電の性能が低下する虞があった。一方、
図4(b)の場合には、真空シール409の性能が発揮されていれば基材403と試料台ベース404との間のすき間で処理室内と連通することは抑制できるものの、これらが組み立てられた際の圧力が処理室内の圧力と大きく異なる(一般的には大気圧またはこれに近似した圧力で試料台207の組み立て、製造がなされることが一般的である)と、貫通孔内部と試料台207外部(処理室内)との間の気密を維持し気圧差に耐える部分は貫通孔の上端であって基材403上面を覆う絶縁膜401となり、絶縁膜401を溶射法で形成した場合には、膜の内部に必然的に形成される多数の気孔を通し貫通孔内と処理室内部との間が絶縁膜401を介して連通してしまい粒子が通過してしまうという問題が生じていた。さらには、これを解決するために気密性の高い絶縁性の材料から構成されたプレートを接着剤で接着する場合についても、接着剤の気密性が十分でなく接着剤内部を気体分子が通過したり、あるいは、接着剤がプラズマ処理雰囲気に晒されることで気密性が低下して製品寿命が短くなったりすることが問題だった。
【0032】
本発明は、このような問題点を解決するために、試料台の上部に配置された静電吸着用の電極あるいはヒータといった電力が供給される膜状の部材とこれらに電力を供給する給電ラインとの間を電気的に接続する部分を気密に区画して当該部分内を高圧、例えば大気圧と同等またはこれをわずかに上回る圧力にして、処理室内部からのガスや粒子の進入を低減して腐食や相互作用による生成物の生起を抑制し、かつ内外の高い圧力差を長期に渡り維持できる構成を備えて、試料台の上記電極やヒータによる機能が損なわれることを抑制して長期間に渡り高い信頼性を維持する作用・効果を奏するものである。
【0033】
〔実施例〕
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施例に係るプラズマ処理装置を備えた真空処理装置の全体の構成の概略を示す図である。
図1(a)は上方から見た横断面図であり、(b)は斜視図である。
【0034】
この図において、真空処理装置100は、その前方側の大気ブロック101とその背面側に配置されてこれと連結された真空ブロック102に分けられている。真空処理装置100の前方側の部分を構成する大気ブロック101は、大気圧下で試料を搬送、収納位置決め等をする部分であり、その後方に配置された真空ブロック102は大気圧から減圧された圧力下でウエハ等の試料を搬送し、処理等を行う部分である。真空ブロック102の大気ブロック101側の端部には、内部に収納された試料を内部に配置された台上に載置した状態で当該内部の圧力を大気圧と処理室や真空搬送室と同等の圧力まで減圧可能なロック室を備え、このロック室は大気ブロック101と真空ブロック102の真空搬送室とをゲートバルブ等の気密に区画できる手段により連通可能に構成されており、ロック室をインターフェースとして真空ブロック102は大気ブロック101と連結されている。
【0035】
大気ブロック101は内部に搬送ロボット109を備えた筐体106を有し、この筐体106の前面側には処理用又はクリーニング用の試料が収納されているカセットがその上に載せられるカセット台107が複数配置されている。搬送ロボット109は、筐体106内部の略大気圧にされた空間をカセット台107上に載せられたカセット内から処理前のウエハ取り出してロック室へ搬送する、あるいはロック室から処理済のウエハと取り出して元のカセットの元の位置に戻す動作を行う。
【0036】
真空ブロック102は内部が減圧される処理室を各々が有し、その処理室内部に配置された試料を処理室内に形成されたプラズマを用いて処理される処理ユニット103−1,103−2,103−3,103−4と、これらの処理ユニットに試料が減圧下で搬送される真空搬送室104及びこの真空搬送室104と大気ブロック101を接続するロック室105−1,105−2を備えている。真空搬送室104の内部の中央部には、試料をロック室105−1または105−2と処理ユニット103−1,103−2,103−3,103−4との間で搬送する搬送ロボット108が配置されている。この真空ブロック102は減圧されて高い真空度の圧力に維持可能なユニットである。
【0037】
図2に処理ユニット103における処理容器内部の構成の略図を示す。
図2は、
図1に示す実施例のプラズマ処理装置の処理容器の構成の概略を示す縦断面図である。
【0038】
本図において、処理容器は内部の円筒形状の処理室を覆う円板形状の蓋201及びその周囲を覆う円筒形状部分を備えた真空容器204を備えて構成されている。この処理室内部の空間は真空容器204の下方に配置された真空ポンプ206等の排気手段の動作により高い真空度に維持される。
【0039】
プラズマの形成に使用するガスが内部を流れて処理室内に供給されるガス経路が真空容器204に連結されている。ガス経路はその上にガス流量制御器208及び経路を開閉するバルブ209を備え、図示しないガス源からのガスは経路を流れつつガス流量制御器208によって流量を制御され、ガス経路の端部側で連結されたガス拡散板202の上方の空間で分散した後、ガス拡散板202に配置された複数個の貫通孔を通り下方の処理室内に導入される。処理室内の圧力は真空計213からの出力に基づいて図示しない制御装置が指令信号を、コンダクタンス調整バルブ205あるいは真空ポンプ206等の排気手段に発信し、排気手段による排気とガス経路からのガスの供給量との調節により処理室内が所望の圧力に調節される。
【0040】
処理室内部に導入された処理用のガスは、マグネトロン210から発生されるマイクロ波帯の電界とソレノイドコイル212により発生する磁場による共鳴現象により励起されプラズマ203が生成される。このとき、処理用ガス分子はイオンと電子に電離、あるいは、ラジカルに解離される。本実施例では、上記電界と磁界との相互作用によりプラズマ203を形成するものであるが、本発明はこのプラズマ形成の手段に限定されない。
【0041】
プラズマ203が形成される処理室は略円筒形状を有しており、その内部には試料がその上面に載置される円筒形状を有した試料台207が配置されている。被処理物である試料はその処理の際に試料台207の上面を構成する載置面上に載せられた状態で保持されてその位置が固定された状態で、試料の裏面と載置面との間に熱伝達ガスが供給されつつプラズマ203により処理が行われる。
【0042】
試料台207内部に配置された導電体製の円板上の電極には高周波バイアス電源211が接続されており、高周波バイアス電源211から供給されて電極に印加される高周波電圧により、プラズマ203の形成中に試料の表面に形成される電位とプラズマ203との電位差によってプラズマ中に形成されるイオン等の荷電粒子を載置面に載せられた試料の表面に引き込むことにより粒子と表面の材料との物理反応あるいはプラズマ203中に形成される高エネルギー状態の活性種(ラジカル)と試料表面との化学反応との相互反応によりエッチング処理が進行する。
【0043】
試料台207の上表面には絶縁膜が配置されており、処理の前に試料は絶縁膜で構成された載置面上に載置される。この絶縁膜を形成する方法としては、溶射法や薄型プレートの接着等の方法が挙げられる。
【0044】
試料台207の構成を
図3を用いてより詳細に説明する。
図3は、
図2に示すプラズマ処理装置の試料台の構成の概略を拡大して模式的に示す縦断面図である。試料台207は、金属等導電性の材料で構成された円板状の部材である基材311とその下方で基材311の下面に当接し外周側部においてボルト306により締結される円板状の試料台ベース312とに上下に大きく分けられる。
【0045】
本図において、試料Wは図示のように、試料台207を構成する金属製の円筒形の部材である基材311の円形の上面に配置された絶縁膜301で構成された載置面の上面に載置される。基材311の内部には、熱交換流体が内部を通流する流路305が配置され、流路305内部を循環する熱交換流体を所定の温度の範囲に調節することにより、前記試料台207の上面の温度を試料に適切な範囲となるように調節している。この熱交換流体の温度はサーキュレーター308によって所望の温度、流量に制御されている。
【0046】
さらに本実施例では、絶縁膜301の内部には膜状のヒータ302が配置されており、当該ヒータ302に電力をヒータ用電源307からの直流電力を供給することにより形成される熱量によって試料の載置面を加熱しその温度を調節している。試料台207の基材311の温度は基材311内部に配置された温度センサ304により検知され、温度センサ304と通信可能に接続されその出力を受信するコントローラー309は、検知結果の出力信号を受けて、これに基づいて、前記試料台207の載置面の温度、あるいは、試料Wの温度が所望の温度になるように、熱交換流体の温度、および、ヒータ302に供給される電力の大きさを調節している。
【0047】
さらに、絶縁膜301の内部には、試料Wが絶縁膜301上に載せられた状態でこれを静電気により吸着して保持するための静電吸着用の膜状の電極303が形成されている。この電極303に直流電圧を印加することで前記絶縁膜301を挟んで試料Wに分極が発生し、静電気力により試料Wは試料台に吸着(静電吸着)する。
【0048】
ここで、前記絶縁膜301の厚みは十分な静電気力が得られるように十分に薄くすることが好ましい。また前記絶縁膜301の前記絶縁膜の厚みを薄くするほど、ヒータ位置から試料載置面までの熱抵抗が小さくなり、試料載置面の温度制御性が向上する。本実施例に示す例では50〜200μm程度の膜厚としている。
【0049】
静電吸着用の膜状電極に直流電力を供給するための構成を
図5を用いて説明する。本実施例では、断面が中央部が外周部より高さの大きな凸形状を有した円板状の基材の当該中央部上の載置面を構成する絶縁膜内に溶射法により形成された膜状電極は、基材の上下方向に延びる貫通孔内に配置された給電用の配線(例えば同軸ケーブル等)との接続部をその裏面側に備えている。
図5は、このような接続部の構成の例を示す縦断面図である。なお、ここでは静電吸着用の電極について説明するが、絶縁膜内に溶射によりヒータを膜状に形成した場合のヒータにおいても同様である。
【0050】
本図に示す例では、試料台207を構成する基材403の凸部の上表面に所定の厚さの絶縁膜401が配置され、その内部には静電吸着用の電極402が配置されている。この図では、絶縁膜401の厚みを実際の厚みよりも厚く描いているが、その実際にはその厚みは薄くすることが好ましい。
【0051】
電極402の裏面側には、基材403の凸部上面に開口を備えた貫通孔内部に収納された給電コンタクトソケット502が配置され、その上端部が開口から上方に突出して電極402の裏面に結合されている。本例の給電コンタクトソケット502は、異なる径の複数の円筒形部分が同軸に繋がった一体の導電製の部材であり、外形はその上部の径が小さくされている。径が大きな下部の円筒部の中央部は円筒の下面に開口を有する円筒形空間を構成する凹み部502′が配置されている。本例では、凹み部502′の円筒形状の軸も上部、下部の円筒形状と同軸に配置されている。
【0052】
上部の円筒の上面と電極402の裏面とが接続されて電極402と給電コンタクトソケット502は電気的に接続されている。さらに、基材403の上記貫通孔の下方から貫通孔内に挿入された給電コンタクトピン506の先端部が凹み部502′内部に差し込まれて前者の表面と後者の内側表面とが接触して両者が電気的に接続されることで、給電コンタクトピン506と電極402との間が電気的に接続される。この状態で、所定の直流電圧が給電コンタクトピン506に印加されることで、給電コンタクトソケット502を経由して電極402に試料Wを吸着可能にするに足る所期の電圧が供給される。
【0053】
試料台207は、その上面に絶縁膜401を備えた基材403と当該基材403の円板形状の下面に接触して接続される円板形状を有した試料台ベース404とを備えている。試料台ベース404は、基材403に配置された上記貫通孔にその中心軸を合わせて配置された貫通孔を有しており、基材403と試料台ベース404とが基材403の高さが低くされた凸部の外周部において締結用のボルト405によって締結され両者の下面と上面とが接触されたた状態で、両者を貫通する貫通孔も1つの孔として連結される。
【0054】
基材403の貫通孔の内部には、内壁と接してこれを覆って挿入される絶縁性材料から構成された円筒形状の絶縁スリーブ503が挿入されて接着されている。この絶縁スリーブ503は後述の通り貫通孔に挿入された後に給電コンタクトソケット502がその中央部の凹み部内に挿入されて両者が接着され位置が固定される。給電コンタクトソケット502の下部の円筒部の外側壁は絶縁スリーブ503の円筒形状の凹み部内で位置が固定された状態で、絶縁スリーブ503の凹み部の内側壁との間にすき間が開けられるように配置されている。
【0055】
上記の給電コンタクトピン506は、複数の異なる径の円筒形状を有しその内部に円筒形の貫通孔が配置された絶縁スリーブ501が連結された貫通孔の内部に下方から挿入された状態で、絶縁スリーブ501の貫通孔内に絶縁スリーブ501の下方から挿入される。絶縁スリーブ501は上方から下方に向かって径が大きくなる円筒形状が連なった一体の絶縁性材料から構成された部材であって、その下部は試料台ベース404の貫通孔の径よりも大きくされた円筒または円板形状のフランジ部を備えている。当該フランジ部のリング状の上面は絶縁スリーブ501が連結された貫通孔内に挿入された状態で試料台ベース404の下面の当該貫通孔の開口外周の部分と当接する部分である。
【0056】
この当接により絶縁スリーブ501の高さ方向の位置が定められ、その上端部は基材403の貫通孔内において絶縁スリーブ503の凹み部の内側壁と給電コンタクトソケット502の下部の外側壁との間のすき間内に進入してこれらの間に所定のすき間を開けて位置が定められる。すなわち、絶縁スリーブ501の上部の円筒部が絶縁スリーブ503で覆われた基材403の貫通孔の内部に挿入されると共に絶縁スリーブ501の貫通孔の内部に給電コンタクトソケット502の下部の円筒部が挿入された、謂わば入れ子の状態となる。
【0057】
一方、給電コンタクトピン506は、その下部において円板状の絶縁性材料から構成された絶縁スリーブ507の中心部に挿入されており、この状態で両者の間が絶縁されると共に結合されている。絶縁スリーブ507の円板形状部分の上面は、給電コンタクトピン506が絶縁スリーブ501の貫通孔内に挿入された状態で絶縁スリーブ501の下部のフランジ部の下面に当接する面である。
【0058】
この絶縁スリーブ501,507が当接した状態で、絶縁スリーブ501に対する給電コンタクトピン506の先端部の位置、または基材403の貫通孔内において給電コンタクトソケット502、凹み部502′内表面に対する給電コンタクトピン506の高さ位置が、凹み部502′の底面(図上凹み部502′内の空間を覆う天井面に相当する面)との間に所定のすき間を開けた位置で定められる。また、凹み部502′の円筒形の空間の内側面は、円筒形状を有した給電コンタクトピン506の先端部であってその上下の円筒形状部分より径が大きくされた大径部または突起部の表面と接触して横方向(図上左右方向)の位置が決められるとともに両者の電気的な接触が実現される。
【0059】
給電コンタクトピン506及びこれに接続された絶縁スリーブ507が、試料台ベース404及び基材403の貫通孔内に挿入された絶縁スリーブ501の中央部の貫通孔内に挿入されて両者の位置が定まった状態で、円板または円筒形状のカバー511が絶縁スリーブ507の下方からこれを覆って配置され、カバー511は中央部の凹みの内側に絶縁スリーブ507を収納してこれを下方から覆うとともに凹み部の外周縁部の上面が試料台ベース404の絶縁スリーブ501,507の外周側の下面と当接する。この状態でボルト508がカバー511を貫通して試料台ベース404の下面に差し込まれて締めつけられることで両者が締結される。
【0060】
このとき、給電コンタクトソケット502及びこれに挿入されて接続された給電コンタクトピン506は絶縁スリーブ501の貫通孔の内側壁との間はすき間を開けてその位置が保持されている。また、基材403及び試料台ベース404の連結された貫通孔の内部で絶縁スリーブと基材403及び試料台ベース404の各々間はすき間が開けられて絶縁スリーブ501がその位置を保持されている。この構成により絶縁スリーブ501,503によって基材403または試料台ベース404と給電コンタクトソケット502または給電コンタクトピン506との間、ひいては電極402との間が電気的に絶縁される。
【0061】
さらに、この絶縁スリーブ501は、その貫通孔の内側壁であって給電コンタクトソケット502の下部円筒部の外側壁の外周側の壁にリング状に当該下部円筒部を囲んでリング状に配置された溝を備え、この溝内に嵌入されたOリング等の真空シール504を有している。この真空シール504が溝の絶縁スリーブ501の表面と給電コンタクトソケット502の下部円筒部の外側壁とに当接してこれらに押圧されて変形することで真空シール504の上下(図上上下)の空間の間を気密に区画する。
【0062】
さらには、絶縁スリーブ501と基材403または試料台ベース404との間にもこれらの間に挟まれて押圧されて気密に区画する真空シール505を有している。本実施例では、試料台ベース404の貫通孔の内側壁と絶縁スリーブ501の外側壁との間で絶縁スリーブ501の外側壁に配置されたリング状の溝部内に貫入されたOリング等の真空シール505が備えられている。
【0063】
これらの真空シール504,505によって、給電コンタクトソケット502及び給電コンタクトピン506の接触部を含む絶縁スリーブ501の貫通孔内部の空間510と基材403、試料台ベース404及び絶縁スリーブ501の間のすき間を含むすき間空間509とは、気密に区画される。基材403と試料台ベース404との間がその接触面の外周側部においてシールされていなければ、通常すき間空間509は処理室と同じ真空状態となる一方で、空間510は処理室内から区画された空間となり内部の圧力はカバー511が締結されて空間510内外が区画された際の大気圧またはこれに近い圧力となる。
【0064】
すなわち、給電コンタクトソケット502と給電コンタクトピン506の接触部は、処理室から区画されプラズマを形成して行われるエッチング等の処理に使用される腐食ガスや処理中に形成された処理室内の生成物が空間510内に進入することが抑制され、接触部の腐食や反応生成物の形成による電気的接続の性能の低下が低減される。これにより、給電性能は長期使用期間に渡り高い信頼性を維持することができる。
【0065】
さらに、すき間空間509は処理室内と同等の圧力となるため、
図4(b)に示す例のように、絶縁膜401や当該絶縁膜401と基材403との間を接合するための接着剤を挟んで大気圧と真空処理室の間を気密に封止することなく長期安定的に高真空を形成可能である。また、絶縁膜401において試料台207内部の空間と外部の処理室との間のシールするために膜厚を大きくする必要がなくなり、膜厚を薄くして、電極402による静電吸着力を高めるあるいは同じ吸着力を実現するために要する電力を小さくすることができる。本実施例では、絶縁膜401の基材403側の下面から試料Wと接する上面との間の厚さは、例えば50〜200μm程度にされている。
【0066】
本実施例の試料台において、これを保守、点検や部品交換等を行う際にこれを分解した状態を
図6に示す。
図6に示すように、プラズマ処理に長期使用した試料台207を分解して、部品を取り外し、処理室外に取り出して洗浄したり、あるいは、新品に交換したりすることができる。
【0067】
この際、上記のように本実施例の試料台207は、上方に配置された基材403と下方に配置されて締結された試料台ベース404とを備えて、これらの間を締結する外周側部分に配置されたボルト405を緩め外すことで、基材403を含む上部601と試料台ベース404を含む下部602に大きく分解される。この分解の際に、給電コンタクトソケット502とその先端部が凹み部502′内に挿入されてこれに接触していた給電コンタクトピン506は接触部分が上下に遊離して電気的、物理的接続が解消される。
【0068】
また、上部601は、基材403とともに絶縁膜401、絶縁スリーブ503とこれに接合された給電コンタクトソケット502とが上方に一体に取り外され、この一体を一式として交換可能となる。また、下部602は、ボルト508によりカバー511が試料台ベース404に締結された状態で、試料台ベース404とともに絶縁スリーブ501,507、給電コンタクトピン506、カバー511が一体に分離される。
【0069】
前記給電部の構造としては、
図5に示す方法は一例であり、例えば、
図7に示すようにしてもよい。本実施例では、給電コンタクトソケット702と絶縁スリーブ701の真空シール方法、および、絶縁スリーブ1と試料台ベース404の真空シール方法を変えた変更例である。いずれの場合においても、前記給電コンタクトソケットに真空シール面を形成している。その結果、給電コンタクトソケットと給電コンタクトピンの電気接続部はプラズマ処理雰囲気に触れず、かつ、試料載置面にある絶縁膜はすべてプラズマ処理室内に配置され絶縁膜に圧力差による負荷がかからない構造となっている。
【0070】
給電コンタクトソケット502を前記静電吸着用電極と結合させるための製作の工程について
図8に示す。本図では、絶縁膜401、および静電吸着用の電極402を共に溶射で形成する場合について示している。
【0071】
図8(a)では、まず基材403の貫通孔内に絶縁スリーブ503、および給電コンタクトソケット502を挿入し、これらを接着剤で接着して接合する。円筒形を有する貫通孔の内壁の形状は絶縁スリーブ503の外側の円筒形状部分の表面と同一か特定の公差の範囲で同じ形状に構成されている。基材403の貫通孔は、基材403の凸部の上面に配置された小径の円筒形貫通孔とこれに連通した下方の大径の円筒形の貫通孔とを備えており、絶縁スリーブ503は、これら大、小の内径を有する円筒形の内面に合致してこれらに合わせて大径、小径を有する円筒形の外形を備えており、貫通孔に挿入された状態で貫通孔の内壁の全体を覆うことができる。
【0072】
また、絶縁スリーブ503の中央部の円筒形の凹み部の底面(図上は上面)の中央には、給電コンタクトソケット502の上部の円筒部が挿入される貫通孔が上部円筒部と同一または特定の公差の範囲で同じ形状に絶縁スリーブ503の小径の円筒部の上面の開口まで連通されて配置されており、給電コンタクトソケット502の上部円筒部は上記の挿入がされた状態でその上端が基材403の凸部の上面より十分なだけ上方の突出する高さを有している。また、給電コンタクトソケット502の径の大きさが異なる上部、下部の円筒部が繋がる部分には段差部があり、段差部のリング状の上面は絶縁スリーブ503の凹み部のリング状の底面(上面)と当接して接着されることで、両者の接合の強度が大きくなる。
【0073】
次に、基材403の表面に絶縁膜801が溶射法により形成される。基材403の上面の上方に突出した給電コンタクトソケット502の上端部も当該絶縁膜801により基材403の上面と同様に覆われる(
図8(b))。
【0074】
次に、溶射法により形成された絶縁膜801の上面を研磨して基材403の底面からの絶縁膜801の上面高さが一定に近くなるようにする。この際、給電コンタクトソケット502の側面は溶射された絶縁膜801の溶融した各粒子と接着されており、その位置がズレたり周囲の膜の粒子が剥がれたりすることが抑制される。研磨の結果、得られた上面に給電コンタクトソケット502の先端部が露出している(
図8(c))。
【0075】
次に、平坦に近くされた絶縁膜801の上面の全体に静電吸着用の電極802の膜が溶射法により形成される。この際、給電コンタクトソケット502の先端部の上面にも電極802の膜が形成されることにより両者は機械的・電気的に結合される(
図8(d))。
【0076】
次に、絶縁膜801の上面全体に形成された静電吸着用の電極802用の膜を任意の電極用のパターン形状に加工する(
図8(e))。この後に、絶縁膜801及び電極802の上面に絶縁膜803を溶射法により形成した後、その上面を基材403の上面からの絶縁膜全体の厚さが所定の範囲の値となるように研磨して上面を平坦に近づける。この研磨の後に絶縁膜801,803が試料Wの載置面を構成する絶縁膜401となる(
図8(f))。
【0077】
絶縁膜803は絶縁膜801と同一の材料でも良く、別の絶縁性の材料を用いても良い。また、絶縁膜803の上面は、完全な平坦面に研磨することは時間と費用とを大きく要することから、この上に載せられる試料Wとの間に十分な熱伝達の量あるいは接触の面積を確保できるだけの表面粗さにする、あるいは特定の溝や突起の形状を形成することができる。このような方法で製作することにより、給電コンタクトソケット502は基材403に強固に密着し、電気的に導通される。
【0078】
給電コンタクトソケット502と、給電コンタクトピン506の変形例の構成を
図9に示す。
図9(a)は給電コンタクトピン506の先端部の突起部901は丸く膨らんだ形状になっておりその内部に空洞を有している。突起部901が給電コンタクトソケット502の凹み部502′の内部に挿入されて内側壁に接して中央側(ピンの中心軸側)に押圧されるとバネのように十分な反力をもって潰れるようになっている。
【0079】
また、
図9(b)の例では、給電コンタクトピン506の先端部の側壁には中心軸周りに溝が形成され、その溝の内部にコイルスプリングによる導電リング902が嵌め込まれている。これを給電コンタクトソケット502に差し込むことによって、導電リング902が押しつぶされて、電気的に接続される。
【0080】
図9(c)の例では、給電コンタクトピン506先端を給電コンタクトソケット502の凹み部502′の底面に押し付けて導通する。給電コンタクトピン506には先端部903を凹み部502′底面に押し付けて付勢する弾性体であるバネ904がついており、このバネ904の付勢力により給電コンタクトソケット502と給電コンタクトピン506との両者を確実に接触、導通させることができる。
【0081】
図9(a)〜(c)のいずれの場合においても、給電コンタクトソケット502、給電コンタクトピン506は電気抵抗の小さな素材で製作される。あるいは、電気抵抗の小さな素材の表面メッキが施されている。