(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリカーボネート樹脂とアクリル樹脂を溶融共押出して形成され、ポリカーボネート樹脂からなる層の少なくとも一方の面にアクリル樹脂からなる層を備える積層板であって、
押出方向に直交する断面での、厚み方向における該ポリカーボネート樹脂層の一方の面からの距離(L)をX軸に、その距離(L)における、波長546nmの光に対する複屈折率(N0)と、該積層板を80℃で1時間加熱した後の該距離(L)における、波長546nmの光に対する複屈折率(N1)との差(ΔN)をY軸にプロットし、最小二乗法により算出するXとYの一次式における傾きの値の絶対値が0.3以下となることを特徴とする積層板。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の積層板は、ポリカーボネート樹脂とアクリル樹脂を溶融共押出して形成され、ポリカーボネート樹脂からなる層(以下、ポリカーボネート樹脂層という。)の少なくとも一方の面にアクリル樹脂からなる層(以下、アクリル樹脂層という。)を備えるものである。
【0012】
前記ポリカーボネート樹脂としては、例えば二価フェノールとカルボニル化剤とを界面重縮合法や溶融エステル交換法等で反応させることにより得られるもの、カーボネートプレポリマーを固相エステル交換法等で重合させることにより得られるもの、環状カーボネート化合物を開環重合法で重合させることにより得られるもの等が挙げられる。
【0013】
前記二価フェノールとしては、例えばハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエステル等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
【0014】
中でも、ビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンからなる群より選ばれる二価フェノールを単独で、または2種以上用いるのが好ましく、特に、ビスフェノールAの単独使用や、ビスフェノールAと、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンと、ビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンからなる群より選ばれる1種以上の二価フェノールとの併用が好ましい。
【0015】
前記カルボニル化剤としては、例えばホスゲン等のカルボニルハライド、ジフェニルカーボネート等のカーボネートエステル、二価フェノールのジハロホルメート等のハロホルメート等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
【0016】
ポリカーボネート樹脂には、ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂を混合してもよい。熱可塑性樹脂の含有量割合は、ポリカーボネート樹脂と熱可塑性樹脂の合計100重量%を基準として、50重量%未満、好ましくは30重量%未満である。
【0017】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
【0018】
前記アクリル樹脂としては、例えば、メタクリル樹脂が用いられる。メタクリル樹脂は、メタクリル酸エステルを主体とする重合体であり、メタクリル酸エステルの単独重合体であってもよいし、メタクリル酸エステル50重量%以上とこれ以外の単量体50重量%以下との共重合体であってもよい。ここで、メタクリル酸エステルとしては、通常、メタクリル酸のアルキルエステルが用いられる。
【0019】
メタクリル樹脂の好ましい単量体組成は、全単量体を基準として、メタクリル酸アルキルが50〜100重量%、アクリル酸アルキルが0〜50重量%、これら以外の単量体が0〜49重量%であり、より好ましくは、メタクリル酸アルキルが50〜99.9重量%、アクリル酸アルキルが0.1〜50重量%、これら以外の単量体が0〜49重量%である。
【0020】
メタクリル酸アルキルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられ、そのアルキル基の炭素数は通常1〜8、好ましくは1〜4である。中でもメタクリル酸メチルが好ましく用いられる。
【0021】
アクリル酸アルキルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられ、そのアルキル基の炭素数は通常1〜8、好ましくは1〜4である。
【0022】
メタクリル酸アルキル及びアクリル酸アルキル以外の単量体としては、例えば、単官能単量体、すなわち分子内に重合性の炭素−炭素二重結合を1個有する化合物であってもよいし、多官能単量体、すなわち分子内に重合性の炭素−炭素二重結合を少なくとも2個有する化合物であってもよいが、単官能単量体が好ましく用いられる。
この単官能単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化アルケニル、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、N−置換マレイミドなどが挙げられる。
また、多官能単量体としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートなどの多価アルコールのポリ不飽和カルボン酸エステル、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ケイ皮酸アリルなどの不飽和カルボン酸のアルケニルエステル、フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートなどの多塩基酸のポリアルケニルエステル、ジビニルベンゼンなどの芳香族ポリアルケニル化合物などが挙げられる。
【0023】
なお、上記のメタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキル、及びこれら以外の単量体は、それぞれ、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
【0024】
メタクリル樹脂は、耐熱性の観点から、そのガラス転移温度が70℃以上であることが好ましく、80℃以上であるのがより好ましく、更には90℃以上であることが好ましい。このガラス転移温度は、単量体の種類やその割合を調整することにより、適宜設定することができる。
【0025】
メタクリル樹脂は、上記単量体成分を、懸濁重合、乳化重合、塊状重合などの方法により重合させることにより、調製することができる。その際、好適なガラス転移温度を得るため、又は好適な樹脂板への成形性を示す溶融粘度を得るためなどに、重合時に適当な連鎖移動剤を使用することが好ましい。連鎖移動剤の添加量は、単量体の種類やその割合などに応じて、適宜決定すればよい。
【0026】
アクリル樹脂には、アクリル樹脂以外の熱可塑性樹脂を混合してもよい。熱可塑性樹脂の含有量割合は、アクリル樹脂と熱可塑性樹脂の合計100重量%を基準として、50重量%未満、好ましくは30重量%未満である。
熱可塑性樹脂としては、上述のポリカーボネート樹脂に混合することのできる熱可塑性樹脂として例示したものと同様のものが挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
【0027】
アクリル樹脂には、ゴム粒子を添加してもよい。アクリル樹脂にゴム粒子を添加することで、該アクリル樹脂とポリカーボネート樹脂とを溶融共押出成形して得られる積層板の耐衝撃性を向上させることができる。ここで、ゴム粒子としては、例えば、アクリル系ゴム粒子、ブタジエン系ゴム粒子、スチレン−ブタジエン系ゴム粒子などのものを用いることができるが、中でも、耐候性、耐久性の点から、アクリル系ゴム粒子が好ましく用いられる。
【0028】
前記アクリル系ゴム粒子は、弾性重合体の層を20〜60重量%程度内在するものであるのがよく、最外層として硬質層を有するものであるのがよく、さらに最内層として硬質層を有するものでもよい。
【0029】
前記弾性重合体の層は、ガラス転移点(Tg)が25℃未満のアクリル系重合体の層であるのがよく、具体的には、低級アルキルアクリレート、低級アルキルメタクリレート、低級アルコキシアルキルアクリレート、シアノエチルアクリレート、アクリルアミド、ヒドロキシ低級アルキルアクリレート、ヒドロキシ低級アルキルメタクリレート、アクリル酸およびメタクリル酸からなる群より選ばれる1種以上の単官能単量体を、アリルメタクリレート等の多官能単量体で架橋させてなる重合体の層であるのがよい。
【0030】
前記低級アルキルアクリレート等における低級アルキル基としては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル基等の炭素数1〜6の直鎖または分岐したアルキル基が挙げられ、前記低級アルコキシアルキルアクリレートにおける低級アルコキシ基としては、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ基等の炭素数1〜6の直鎖または分岐したアルコキシ基が挙げられる。また、前記単官能単量体を主成分として共重合体とする場合には、共重合成分として、例えばスチレン、置換スチレン等の他の単官能単量体を共重合させてもよい。
【0031】
前記硬質層は、Tgが25℃以上のアクリル系重合体の層であるのがよく、具体的には、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートを単独で、または主成分として重合させたものであるのがよい。前記炭素数1〜4のアルキル基としては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル等の直鎖または分岐したアルキル基が挙げられる。
【0032】
炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートを主成分として共重合体とする場合には、共重合成分としては、他のアルキルメタクリレートやアルキルアクリレート、スチレン、置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の単官能単量体を用いてもよいし、さらにアリルメタクリレート等の多官能単量体を加えて架橋重合体としてもよい。前記アルキルメタクリレート等におけるアルキル基としては、例えば前記した低級アルキル基で例示したのと同じ炭素数1〜6の直鎖または分岐したアルキル基等が挙げられる。
【0033】
上記したアクリル系ゴム粒子は、例えば特公昭55−27576号公報、特開平6−80739号公報、特開昭49−23292号公報等に記載されている。
【0034】
アクリル系ゴム粒子の含有量割合は、アクリル樹脂およびアクリル系ゴム粒子の合計100重量%を基準として、3〜20重量%が好ましく、5〜15重量%がより好ましい。アクリル系ゴム粒子の含有量があまり少ないと、積層板の耐衝撃性を向上させ難く、アクリル系ゴム粒子の含有量があまり多いと、積層板の表面硬度が低下し易く、好ましくない。
【0035】
ポリカーボネート樹脂とアクリル樹脂には、それぞれ必要に応じて、例えば光拡散剤や艶消し剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、耐衝撃剤、高分子型帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤、滑剤、染料、顔料などを添加してもよい。
【0036】
本発明の積層板は、押出方向に直交する断面での、厚み方向における該ポリカーボネート樹脂層の一方の面からの距離(L)をX軸に、その距離(L)における、波長546nmの光に対する複屈折率(N
0)と、該樹脂板を80℃で1時間加熱した後の該距離(L)における、波長546nmの光に対する複屈折率(N
1)との差(ΔN)をY軸にプロットし、最小二乗法により算出するXとYの一次式における傾きの値の絶対値(a)が0.3以下、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.1以下となるものである。また、該絶対値(a)の下限値としては、好ましくは0以上、より好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.03以上である。該絶対値(a)が、上記所定の範囲にあることで、該積層板は、高温環境下での反り変形が抑制される。この理由としては、以下の理由が推察される。
【0037】
すなわち、積層板は、押出成形の際に該積層板内部に残留応力が発生し、該残留応力に異方性があると、該積層板を高温環境下に暴露した際に、残留応力の緩和に伴い該積層板に反り変形が生じる。そのため、該積層板の残留応力の大きさが、厚み方向における前記距離(L)によって大きく変動するほど、反り変形量も大きくなる。積層板の複屈折率は、分子配向に起因する成分と、応力に起因する成分とが足し合わされたものとなっており、残留応力が緩和されると、応力が低減された分、複屈折率も小さくなる。したがって、加熱の前後における複屈折率の変化量が、厚み方向において大きく変動しなければ、つまり、前記傾きの値の絶対値(a)が前記所定の範囲であれば、反り変形が抑制されると推察される。
【0038】
前記距離(L)は、押出方向に直交する断面での、厚み方向における前記ポリカーボネート樹脂層の一方の面からの距離であり、積層板を押出方向に直交する方向(幅方向)で切断し、得られた切断面において、ポリカーボネート樹脂層の一方の面から他方の面に渡って、一方の面からの距離を測定すればよい。前記距離(L)の最小値は0であり、距離(L)が最小値となる位置は、前記ポリカーボネート樹脂層の一方の面である。また、前記距離(L)の最大値は前記積層板の厚さに相当し、距離(L)が最大値となる位置は、前記ポリカーボネート樹脂層の他方の面である。ここで、前記ポリカーボネート樹脂層の一方の面は、ポリカーボネート樹脂層の両方の面のうち、いずれの面であっても良いが、積層板が後述する2層構成の場合は、積層板を溶融押出して形成したときに、第1冷却ロールに接触したポリカーボネート樹脂層面であることが好ましく、積層板が後述する3層構成の場合は、第1冷却ロールに接触したアクリル樹脂層に接するポリカーボネート樹脂層面であることが好ましい。
【0039】
前記複屈折率(N
0)および前記複屈折率(N
1)は、それぞれ、前記距離(L)における複屈折率および前記積層板を80℃で1時間加熱した後の該距離(L)における複屈折率であり、該積層板の加熱前後において、押出方向に直交する断面を切り出し、この切断面について、顕微複屈折イメージングシステムAbrio((株)東京インスツルメンツ製)を用いて、波長546nmの光を試料に入射させ、距離(L)における複屈折率を測定すればよい。
そして、このようにして測定した複屈折率(N
0)と複屈折率(N
1)との差分がΔNとなる。
【0040】
前記絶対値(a)を所定の範囲とするためには、例えば、後述するように、最終冷却ロールより1つ手前の冷却ロールの周速度(V2)と最終冷却ロールの周速度(V3)との周速度比(V3/V2)を1を超えるものと
すればよい。また、本発明のある実施態様では、前記絶対値(a)を所定の範囲とするために、例えば、このように周速度比(V3/V2)を1を超えるものとすることに加え、ダイから押出された溶融樹脂が最終冷却ロールより1つ手前の冷却ロールに巻き掛けられているときに、該溶融樹脂の該冷却ロールと接触していない面を加
熱すればよい。
【0041】
積層板は、通常、シート状ないしフィルム状であり、その厚みは、通常0.4〜2.0mm、好ましくは0.5〜1.5mmである。積層板は、ポリカーボネート樹脂層の少なくとも一方の面にアクリル樹脂層を備えていればよく、ポリカーボネート樹脂層の一方の面にアクリル樹脂層を備える2層構成でもよいし、ポリカーボネート樹脂層の両方の面にアクリル樹脂層を備える3層構成でもよいが、高温環境下や高湿環境下での反り難さの観点から、3層構成であることが好ましい。3層構成である場合、ポリカーボネート樹脂層の一方の面に備えるアクリル樹脂層と、ポリカーボネート樹脂層の他方の面に備えるアクリル樹脂層とは、組成や厚みが互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0042】
かくして得られる本発明の積層板は、高温環境下での反り変形が抑制されるので、照明のカバーや看板、建材や電気製品、携帯電話や液晶テレビのような光学用途など、広く利用され、光学用途として特には、導光板、タッチパネル基板、ディスプレイ保護板として用いることができ、中でも、導光板やタッチパネル基板として好ましく用いられる。タッチパネルや液晶ディスプレイの用途としては、例えばテレビやコンピューターのモニター、携帯電話やPHS(Personal Handy−phone System)、PDA(Personal Digital Assistant)等の携帯型情報端末の表示窓、デジタルカメラやハンディ型ビデオカメラのファインダー部、携帯型ゲーム機の表示窓等が挙げられる。
【0043】
本発明の積層板から、導光板を作製するには、積層板を必要な大きさに切断処理すればよい。また、タッチパネル基板やディスプレイ保護板を作製するには、まず必要に応じて押出板に印刷、穴あけ等の加工を行い、次いで押出板を必要な大きさに切断処理すればよい。しかるのちに、積層板をディスプレイにセットすれば、タッチパネル基板やディスプレイ保護板として、好適に使用することができる。
【0044】
積層板は、該積層板の少なくとも一方の面に硬化被膜を形成して、耐擦傷性積層板としてもよい。該積層板の両方の面に硬化被膜を形成する場合には、両方の面の硬化被膜の組成や厚みは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0045】
前記硬化被膜は、硬化性塗料組成物を硬化させて形成されている。該硬化性塗料組成物は、耐擦傷性をもたらす硬化性化合物を必須成分とし、必要に応じて、例えば硬化触媒、導電性粒子、溶媒、レベリング剤、安定化剤、酸化防止剤、着色剤等を含有するものである。
【0046】
前記硬化性化合物としては、例えばアクリレート化合物、ウレタンアクリレート化合物、エポキシアクリレート化合物、カルボキシル基変性エポキシアクリレート化合物、ポリエステルアクリレート化合物、共重合系アクリレート化合物、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエーテルエポキシ樹脂、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物等が挙げられる。中でも、硬化被膜の耐擦傷性の点から、多官能アクリレート化合物、多官能ウレタンアクリレート化合物、多官能エポキシアクリレート化合物等のラジカル重合系の硬化性化合物や、アルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン等の熱重合系の硬化性化合物等が好ましく用いられる。これらの硬化性化合物は、例えば電子線、放射線、紫外線等のエネルギー線を照射することにより硬化するものであるか、加熱により硬化するものであるのがよい。これらの硬化性化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、複数の化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
特に好ましい硬化性化合物は、分子中に少なくとも3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。ここで、(メタ)アクリロイルオキシ基とは、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基をいい、その他、本明細書において、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等というときの「(メタ)」も同様の意味である。
【0048】
分子中に少なくとも3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する前記化合物としては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ−またはテトラ−(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ−、テトラ−、ペンタ−またはヘキサ−(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ−、ペンタ−、ヘキサ−またはヘプタ−(メタ)アクリレートのような、3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート;分子中にイソシアナト基を少なくとも2個有する化合物に、水酸基を有する(メタ)アクリレートを、イソシアナト基に対して水酸基が等モル以上となる割合で反応させて得られ、分子中の(メタ)アクリロイルオキシ基の数が3個以上となったウレタン(メタ)アクリレート〔例えば、ジイソシアネートとペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートの反応により、6官能のウレタン(メタ)アクリレートが得られる〕;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、ここには単量体を例示したが、これら単量体のままで用いてもよいし、例えば2量体、3量体等のオリゴマーの形になったものを用いてもよい。また、単量体とオリゴマーを併用してもよい。これらの(メタ)アクリレート化合物は、それぞれ単独か、または2種以上を混合して用いられる。
【0049】
分子中に少なくとも3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する前記化合物は、市販のものを用いることができ、具体例としては、例えばいずれも新中村化学工業(株)製の“NKハ−ド M101”(ウレタンアクリレート系)、“NKエステル A−TMM−3L”(ペンタエリスリトールトリアクリレート)、“NKエステル A−TMMT”(ペンタエリスリトールテトラアクリレート)、“NKエステル A−9530”(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)および“NKエステル A−DPH”(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)、日本化薬(株)製の“KAYARAD DPCA”(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)、サンノプコ(株)製の“ノプコキュア 200”シリーズ、大日本インキ化学工業(株)製の“ユニディック”シリーズ等が挙げられる。
【0050】
なお、硬化性化合物として分子中に少なくとも3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を用いる場合には、必要に応じて、他の硬化性化合物、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートのような、分子中に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を併用してもよいが、その使用量は、分子中に少なくとも3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物100重量部に対して、通常20重量部までである。
【0051】
前記硬化性塗料組成物を紫外線で硬化させる場合には、硬化触媒として光重合開始剤を使用するのがよい。該光重合開始剤としては、例えばベンジル、ベンゾフェノンやその誘導体、チオキサントン類、ベンジルジメチルケタール類、α−ヒドロキシアルキルフェノン類、ヒドロキシケトン類、アミノアルキルフェノン類、アシルホスフィンオキサイド類等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。光重合開始剤の使用量は、硬化性化合物100重量部に対して、通常0.1〜5重量部である。
【0052】
前記光重合開始剤は、市販のものを用いることができ、具体例としては、例えばいずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の“IRGACURE 651”、“IRGACURE 184”、“IRGACURE 500”、“IRGACURE 1000”、“IRGACURE 2959”、“DAROCUR 1173”、“IRGACURE 907”、“IRGACURE 369”、“IRGACURE 1700”、“IRGACURE 1800”、“IRGACURE 819”、“IRGACURE 784”等の、IRGACURE(イルガキュア)シリーズおよびDAROCUR(ダロキュア)シリーズ、いずれも日本化薬(株)製の“KAYACURE ITX”、“KAYACURE DETX−S”、“KAYACURE BP−100”、“KAYACUREBMS”、“KAYACURE 2−EAQ”等の、KAYACURE(カヤキュア)シリーズ等が挙げられる。
【0053】
前記硬化性塗料組成物に導電性粒子を含有させることにより、硬化被膜に帯電防止性を付与することができる。前記導電性粒子としては、例えばアンチモン−スズ複合酸化物、リンを含有する酸化錫、5酸化アンチモン等の酸化アンチモン、アンチモン−亜鉛複合酸化物、酸化チタン、インジウム−錫複合酸化物(ITO)のような無機粒子が好ましく用いられる。前記導電性粒子は、固形分濃度が10〜30重量%程度のゾルの形態で使用することもできる。
【0054】
前記導電性粒子の粒子径は、通常0.5μm以下であり、硬化被膜の帯電防止性や透明性の点からは、平均粒子径で表して、好ましくは0.001μm以上であり、また好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下である。導電性粒子の平均粒子径が小さい程、耐擦傷性積層板のヘイズを低くすることができ、透明性を高めることができる。
【0055】
前記導電性粒子の使用量は、硬化性化合物100重量部に対して、通常2〜50重量部、好ましくは3〜20重量部である。導電性粒子の使用量が多い程、硬化被膜の帯電防止性が向上する傾向にあるが、導電性粒子の使用量があまり多いと、硬化被膜の透明性が低下するので好ましくない。
【0056】
前記導電性粒子は、例えば気相分解法、プラズマ蒸発法、アルコキシド分解法、共沈法、水熱法等により製造することができる。また、導電性粒子の表面は、例えばノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等で表面処理されていてもよい。
【0057】
前記硬化性塗料組成物には、その粘度調整等を目的として、溶媒を含有させるのがよく、特に導電性粒子が含まれる場合には、その分散のために溶媒を含有させるのがよい。導電粒子および溶媒を含有する硬化性塗料組成物を調製する場合には、例えば導電性粒子および溶媒を混合して、溶媒に導電性粒子を分散させた後、この分散液を硬化性化合物と混合してもよいし、硬化性化合物と溶媒を混合した後、この混合液に導電性粒子を分散させてもよい。
【0058】
前記溶媒は、硬化性化合物を溶解することができ、かつ塗布後に容易に揮発し得るものであるのがよく、また塗料成分として導電性粒子を用いる場合には、それを分散させることができるものであるのがよい。このような溶媒としては、例えばジアセトンアルコール、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノールのようなアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコールのようなケトン類、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル類、水等が挙げられる。溶媒の使用量は、硬化性化合物の性状等に合わせて、適宜調整すればよい。
【0059】
前記硬化性塗料組成物にレベリング剤を含有させる場合には、シリコーンオイルが好ましく用いられ、その例としては、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、アルキル・アラルキル変性シリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、メチル水素シリコーンオイル、シラノール基含有シリコーンオイル、アルコキシ基含有シリコーンオイル、フェノール基含有シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、カルボン酸変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル等が挙げられる。これらのレベリング剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いることもできる。レベリング剤の使用量は、硬化性化合物100重量部に対して、通常0.01〜5重量部である。
【0060】
前記レベリング剤は、市販のものを用いることができ、具体例としては、例えばいずれも東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製の“SH200−100cs”、“SH28PA”、“SH29PA”、“SH30PA”、“ST83PA”、“ST80PA”、“ST97PA”および“ST86PA”、いずれもビック・ケミー・ジャパン(株)製の“BYK−302”、“BYK−307”、“BYK−320”および“BYK−330”等が挙げられる。
【0061】
こうして得られる硬化性塗料組成物を、前記積層板の少なくとも一方の面に塗布して、硬化性塗膜とし、次いで硬化させて、硬化被膜とすることにより、耐擦傷性積層板が得られる。硬化性塗料の塗布は、例えばバーコート法、マイクログラビアコート法、ロールコート法、フローコート法、ディップコート法、スピンコート法、ダイコート法、スプレーコート法等のコート法により行えばよい。硬化性塗膜の硬化は、硬化性塗料組成物の種類に応じて、エネルギー線の照射や加熱等により行えばよい。
【0062】
エネルギー線の照射により硬化させる場合のエネルギー線としては、例えば紫外線、電子線、放射線等が挙げられ、その強度や照射時間等の条件は、硬化性塗料組成物の種類に応じて適宜選択される。また、加熱により硬化させる場合において、その温度や時間等の条件は、硬化性塗料組成物の種類に応じて適宜選択されるが、加熱温度は、樹脂基板が変形を起こさないよう、一般的には100℃以下であるのが好ましい。硬化性塗料組成物が溶媒を含有する場合には、塗布後、溶媒を揮発させた後に硬化性塗膜を硬化させてもよいし、溶媒の揮発と硬化性塗膜の硬化とを同時に行ってもよい。
【0063】
前記硬化被膜の厚みは、好ましくは0.5〜50μmであり、より好ましくは1〜20μmである。硬化被膜の厚みが小さい程、亀裂が生じ難くなる傾向にあるが、あまり小さいと、耐擦傷性が不十分になり好ましくない。
【0064】
得られた耐擦傷性積層板には、必要に応じて、その表面に、コート法やスパッタ法、真空蒸着法等により反射防止処理を施してもよい。また、別途作製した反射防止性のシートを耐擦傷性積層板の片面または両面に貼合して、反射防止効果を付与してもよい。
【0065】
かくして得られる耐擦傷性積層板は、高温環境下での反り変形が抑制され、かつ、耐衝撃性と表面硬度に優れるので、各種用途に用いることができるが、中でもディスプレイ保護板として好ましく用いられ、特にタッチパネルディスプレイ保護板としてより好ましく用いられる。保護されるディスプレイの種類としては、例えばCRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイ等が挙げられる。また、保護されるディスプレイの用途としては、例えばテレビやコンピューターのモニター、携帯電話やPHS、PDA等の携帯型情報端末の表示窓、デジタルカメラやハンディ型ビデオカメラのファインダー部、携帯型ゲーム機の表示窓等が挙げられる。本発明の耐擦傷性樹脂板は、特に液晶ディスプレイやELディスプレイ等による携帯型情報端末の表示窓保護板として好ましく用いられる。
【0066】
本発明の耐擦傷性積層板から、ディスプレイ保護板を作製するには、まず必要に応じて印刷、穴あけ等の加工を行い、必要な大きさに切断処理すればよい。しかるのちに、ディスプレイにセットすれば、ディスプレイを効果的に保護することができる。その際、積層板の一方の面に硬化被膜が形成してなる耐擦傷性積層板の場合、硬化被膜が表側(視認者側)になるように設置するのがよい。
【0067】
本発明の積層板は、ポリカーボネート樹脂層の少なくとも一方の面にアクリル樹脂層を備えるように溶融押出成形により製造される。以下、本発明にかかる積層板の製造方法の一実施形態について、
図1を参照して詳細に説明する。
【0068】
図1は、本発明の一実施態様に係る積層板の製造方法を示す概略説明図である。
図1に示すように、ポリカーボネート樹脂を押出機1Aに投入し、アクリル樹脂を押出機1Bに投入して、それぞれ溶融混練を行う。なお、
図1では、2台の押出機を使用しているが、押出機の数は、3台以上でもよく、樹脂層の積層数や用いる樹脂の種類によって、適宜変更すればよい。
【0069】
溶融混練されたポリカーボネート樹脂とアクリル樹脂は、それぞれフィードブロック2に供給され、ポリカーボネート樹脂層の一方の面にアクリル樹脂層を備える2層構成、またはポリカーボネート樹脂層の両方の面にアクリル樹脂層を備える3層構成となるように溶融積層一体化した後、ダイ3から板状の溶融樹脂4として押出される。
【0070】
押出機1A、1Bとしては、例えば、一軸押出機、二軸押出機などが挙げられる。また、
図1では、フィードブロックとTダイとを組み合わせて用いているが、マルチマニホールドダイを用いてもよい。
【0071】
ダイ3から押出された溶融樹脂4は、冷却ユニット5で成形・冷却される。冷却ユニット5は、少なくとも3本の冷却ロール51、52、53を備えている。
【0072】
溶融樹脂4は、第1冷却ロール51と第2冷却ロール52との間に挟み込まれ、第2冷却ロール52に巻き掛けた状態で、さらに第2冷却ロール52と第3冷却ロール53との間に挟み込んで成形・冷却して、積層板6が得られる。積層板6は、第2冷却ロール52に巻き掛けられているときに、冷却ロール52と接触していない面がヒーター(図示しない)で加熱されてもよい。このように、ヒーターで加熱することで、積層板の高温環境下での反り変形を抑制することができる。
【0073】
溶融樹脂4が、ポリカーボネート樹脂層の一方の面にアクリル樹脂層を備える2層構成であるとき、該溶融樹脂4のポリカーボネート樹脂層面が第1冷却ロール51に接するように、該溶融樹脂4を第1冷却ロール51と第2冷却ロール52との間に挟み込むのが好ましい。
【0074】
第1〜第3冷却ロール51〜53は、少なくとも1つのロールがモーターなどの回転駆動手段に接続されており、各ロールが所定の周速度で回転するように構成されている。
【0075】
第2冷却ロール52の周速度(V2)と、第3冷却ロール53の周速度(V3)との周速度比(V3/V2)
は1を超えて
おり、1.001以上であるの
が好ましい。このように、周速度比(V3/V2)を所定の範囲とすることで、積層板6の高温環境下での反り変形を抑制することができる。
【0076】
周速度比(V3/V2)の上限値としては、溶融樹脂4を引取り可能であって、本発明の効果を奏する限りにおいて特に限定されないが、1.100以下であるのが好ましく、1.050以下であるのがより好ましく、1.010以下であるのがさらに好ましく、1.006以下であるのが特に好ましい。
【0077】
第1〜第3冷却ロール51〜53の周速度(V1)〜(V3)としては、通常、0.5〜6m/秒であり、1〜5m/秒であるのが好ましく、2〜4m/秒であるのがより好ましく、この数値範囲内で、周速度比(V3/V2)を1を超えるようにするのが好ましい。
【0078】
第1〜第3冷却ロール51〜53としては、特に限定されず、従来の押出成形で使用されている通常の冷却ロールを採用することができる。具体例としては、ドリルドロール、スパイラルロール、金属弾性ロール、ゴムロールなどが挙げられる。第1〜第3冷却ロール51〜53の表面状態は、例えば鏡面であってもよく、模様や凹凸などを有していてもよい。
【0079】
前記弾性ロールとしては、例えば略円柱状の軸ロールと、この軸ロールの外周面を覆うように配置された円筒形の金属製薄膜と、前記軸ロールと金属製薄膜との間に封入された水や油等からなる流体とを備え、さらに前記流体を温度制御することによって温度制御可能に構成された弾性ロール(A)や、略円柱状のゴムロールの外周面に金属製薄膜を巻いた弾性ロール(B)等が挙げられる。これら弾性ロール(A)、(B)における金属製薄膜は、例えばステンレス鋼等からなり、その厚さとしては0.2〜3mm程度が好ましい。
【0080】
第1〜第3冷却ロール51〜53は、金属ロールおよび弾性ロールから選ばれる1種で構成してもよいし、金属ロールと弾性ロールとを組み合わせて構成してもよい。金属ロールと弾性ロールとを組み合わせて第1〜第3冷却ロール51〜53を構成する場合には、強度や熱収縮の異方性等が低減された積層板を得ることができる。
【0081】
すなわち、溶融樹脂4を金属ロールと弾性ロールとの間に挟み込むと、弾性ロールが溶融樹脂4を介して金属ロールの外周面に沿って凹状に弾性変形し、弾性ロールと金属ロールとが溶融樹脂4を介して所定の接触長さで接触する。これにより、金属ロールと弾性ロールとが、溶融樹脂4に対して面接触で圧着するようになり、これらロール間に挟み込まれた溶融樹脂4は面状に均一加圧されながら製膜される。その結果、製膜時の歪みが低減され、強度や熱収縮の異方性が低減された積層板6が得られる。
【0082】
金属ロールと弾性ロールとを組み合わせる場合には、第1冷却ロール51を弾性ロールで構成し、第2、第3冷却ロール52、53を金属ロールで構成するのが好ましい。また、第1冷却ロール51を構成する前記弾性ロールは、弾性ロール(A)であるのが好ましい。これにより、金属ロールと弾性ロールとを組み合わせることにより得られる効果を高めることができる。
【0083】
冷却ロールは、3本に限られない。例えば、4本の冷却ロールを用いる場合、ダイから押出された溶融樹脂は、第1冷却ロールと第2冷却ロールとの間に供給され、第2冷却ロールの下部を約半周して、第2冷却ロールと第3冷却ロールとの間に供給される。次いで、溶融樹脂は、第3冷却ロールの上部を約半周して、第3冷却ロールと第4冷却ロールとの間に供給される。
【0084】
第3冷却ロール53に巻きかけられて得られる積層板6は、さらに引取ロール(図示しない)により引取られる。積層板6は、第3冷却ロール53から引取ロールに至るまでの間に、少なくとも一方の面がヒーター(図示しない)で加熱されてもよい。このように、ヒーターで加熱することで、積層板の高温環境下での反り変形を抑制することができる。
【0085】
ヒーターは、積層板6を加熱することができれば、特に限定されず、例えば遠赤外線ヒーター、熱風ヒーター(熱風発生器)などが挙げられる。加熱は、積層板6を構成するポリカーボネート樹脂およびアクリル樹脂の熱変形温度(Th)以上で行うのが好ましく、Th〜(Th+50℃)の範囲で行うのがより好ましく、(Th+5℃)〜(Th+30℃)の範囲で行うのがさらに好ましい。また、加熱される時間は、特に限定されず、好ましくは1〜500秒、より好ましくは5〜300秒である。なお、加熱時間とは、積層板5の表面上のある地点がヒーターで加熱され始め、該地点がヒーターの外部に出て加熱されなくなるまでの時間のことをいう。
【実施例】
【0086】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0087】
実施例および比較例で使用した押出装置の構成は、以下の通りである。
押出機1A:スクリュー径65mm、一軸、ベント付きの押出機(日立造船(株)製)。
押出機1B:スクリュー径45mm、一軸、ベント付きの押出機(日立造船(株)製)。
フィードブロック2:2種3層分配のフィードブロック(日立造船(株)製)。
ダイ3:Tダイ(樹脂吐出口幅1400mm、リップ間隔1mm(日立造船(株)製))。
冷却ユニット5:横型、直径250mmの第1〜第3冷却ロール51〜53を用いた。これら第1〜第3冷却ロール51〜53は、モーターに接続して、各々が所定の周速度で独立して回転するように構成した。また、第1〜第3冷却ロール51〜53の上述した以外の構成は、次の通りである。
【0088】
第1冷却ロール51:後述する弾性ロールを用いた。
第2、第3冷却ロール52、53:ステンレス鋼製のスパイラルロールを用いた。
【0089】
第1冷却ロール51で用いた弾性ロールは、軸ロールの外周面を覆うように金属製薄膜を配置し、軸ロールと金属製薄膜との間に流体を封入した弾性ロールを用いた。
軸ロール、金属製薄膜および流体は、次の通りである。
【0090】
軸ロール:ステンレス鋼製のものを用いた。
金属製薄膜:厚さ2mmのステンレス鋼製の鏡面金属スリーブを用いた。
流体:油を用いた。なお、この油を温度制御することによって、弾性ロールを温度制御可能にした。より具体的には、温度調節機のON−OFF制御により前記油を加熱、冷却して温度制御可能にし、軸ロールと金属製薄膜との間に循環させた。
【0091】
以下の実施例および比較例では、以下に示すポリカーボネート樹脂、メタクリル樹脂およびアクリル系ゴム粒子を使用した。
・ポリカーボネート樹脂:住友ダウ(株)製の「カリバー 301−10」(熱変形温度:140℃)を用いた。
・メタクリル樹脂:メタクリル酸メチル97.8%とアクリル酸メチル2.2%とからなる単量体のバルク重合により得られた熱可塑性重合体(熱変形温度:104℃)のペレットを用いた。なお、このガラス転移温度は、JIS K7121:1987に従い、示差走査熱量測定により加熱速度10℃/分で求めた補外ガラス転移開始温度である。
・アクリル系ゴム粒子:最内層は、メタクリル酸メチル93.8%とアクリル酸メチル6.0%とメタクリル酸アリル0.2%とからなる単量体の重合により得られた硬質重合体であり、中間層は、アクリル酸ブチル81%とスチレン17%とメタクリル酸アリル2%とからなる単量体の重合により得られた弾性重合体であり、最外層はメタクリル酸メチル94%とアクリル酸メチル6%とからなる単量体の重合により得られた硬質重合体であり、最内層/中間層/最外層の重量割合が35/45/20であり、中間層の弾性重合体の層の平均粒子径が0.22μmである、乳化重合法によって得られた球形3層構造のゴム粒子を用いた。ゴム粒子の平均粒子径は、ゴム粒子をメタクリル樹脂と混合してフィルム化し、その断面において酸化ルテニウムにより弾性重合体(中間層)を染色し、電子顕微鏡で観察して、染色された部分の直径から求めた。
【0092】
(実施例1)
まず、アクリル樹脂層の形成材料として、メタクリル樹脂とアクリル系ゴム粒子とを、メタクリル樹脂とアクリル系ゴム粒子の合計100重量%を基準に、アクリル系ゴム粒子が6重量%となるようにスーパーミキサーで混合し、二軸押出機にて溶融混錬して、メタクリル樹脂とアクリル系ゴム粒子からなるメタクリル樹脂組成物をペレットとして得た。
【0093】
次いで、押出機1A、押出機1B、フィードブロック2、ダイ3および第1〜3冷却ロール51〜53を
図1に示すように配置した。ここで、第2、第3冷却ロール52、53を、表1に示す周速度V2、V3で回転させた。
【0094】
さらに、ポリカーボネート樹脂を押出機1Aで、メタクリル樹脂組成物を押出機1Bでそれぞれ溶融混練し、これらをフィードブロック2に供給した。そして、これらをフィードブロック2を介してポリカーボネート樹脂層の両方の面にアクリル樹脂層を備え、ダイ3からフィルム状の溶融樹脂4を押出した。この押出された溶融樹脂4を第1冷却ロール51と第2冷却ロール52との間に挟み込み、次いで第2冷却ロール52に巻き掛けながら第2冷却ロール52と第3冷却ロール53との間に挟み込み、さらに第3冷却ロール53に巻き掛けて冷却して、厚さ0.86mmのポリカーボネート樹脂層の両方の面に厚さ0.07mmのアクリル樹脂層を備える総厚み1.00mmの3層構成の積層板6を得た。
【0095】
(実施例2)
第2、第3冷却ロール52、53を、表1に示す周速度V2、V3で回転させ、さらに、第2冷却ロール52の鉛直下向き方向にヒーター(日立造船(株)製の遠赤パネルヒーター)を設置し、該ヒーターで、第2冷却ロール52に巻き掛けられた溶融樹脂4の下面(第2冷却ロール52との非接触面)を300℃で10秒間加熱した以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ0.86mmのポリカーボネート樹脂層の両方の面に厚さ0.07mmのアクリル樹脂層を備える総厚み1.00mmの3層構成の積層板6を得た。
【0096】
(実施例3)
第2、第3冷却ロール52、53を、表1に示す周速度V2、V3で回転させ、さらに、2種3層分配のフィードブロックに代えて2種2層分配のフィードブロック(日立造船(株)製)を用い、該フィードブロックを介して、押出機1Aからフィードブロックに供給されるポリカーボネート樹脂層の一方の面に、押出機1Bからフィードブロックに供給されるアクリル樹脂層を備え、ダイ3から押出されるフィルム状の溶融樹脂4を第1冷却ロール51と第2冷却ロール52との間に挟み込むときにポリカーボネート樹脂層面が第1冷却ロール51に接触するようにした以外は、実施例2と同様の操作を行い、厚さ0.93mmのポリカーボネート樹脂層の一方の面に厚さ0.07mmのアクリル樹脂層を備える総厚み1.00mmの2層構成の積層板6を得た。
【0097】
(比較例1)
第2、第3冷却ロール52、53を、表1に示す周速度V2、V3で回転させた以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ0.86mmのポリカーボネート樹脂層の両方の面に厚さ0.07mmのアクリル樹脂層を備える総厚み1.00mmの3層構成の積層板6を得た。
【0098】
(比較例2)
第2、第3冷却ロール52、53を、表1に示す周速度V2、V3で回転させ、さらに、第3冷却ロール53の鉛直上向き方向にヒーター(日立造船(株)製の遠赤パネルヒーター)を設置し、該ヒーターで、第3冷却ロール53に巻き掛けられた溶融樹脂4の上面(第3冷却ロール53との非接触面)を300℃で10秒間加熱した以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ0.86mmのポリカーボネート樹脂層の両方の面に厚さ0.07mmのアクリル樹脂層を備える総厚み1.00mmの3層構成の積層板6を得た。
【0099】
<評価>
得られた各積層板(実施例1〜3および比較例1、2)について、絶対値(a)の評価、および高温環境下での反り変形の評価を行った。評価方法を以下に示すとともに、その結果を表1に示す。
【0100】
(絶対値(a)の評価方法)
まず、積層板から、該積層板における押出方向に対して直行する方向(幅方向)での中心位置が中心となるように幅方向の長さを6mmとし、押出方向の長さを100μmとし、厚み方向の長さを1mmとして、試験片を切り出した。次いで、この試験片の一方の切断面について、顕微複屈折イメージングシステムAbrio((株)東京インスツルメンツ製)を用いて、波長546nmの光を該切断面から入射させて、幅方向の中心位置での、厚み方向におけるポリカーボネート樹脂層の一方の面からの距離(L)での複屈折率(N0)を測定した。ここで、このポリカーボネート樹脂層の一方の面は、積層板が2層構成の場合は、積層板を溶融押出して形成したときに、第1冷却ロールに接触したポリカーボネート樹脂層面とし、積層板が3層構成の場合は、第1冷却ロールに接触したアクリル樹脂層に接するポリカーボネート樹脂層面とした。さらに、該積層板を80℃で1時間加熱した後、同様に試験片を切り出し、距離(L)における複屈折率(N1)を同様に測定した。そして、距離(L)をX軸に、該距離(L)における、複屈折率(N0)と複屈折率(N1)との差(ΔN)をY軸にプロットし、最小二乗法により算出するXとYの一次式における傾きの値の絶対値を、絶対値(a)として算出した。
【0101】
(反り変形の評価方法)
まず、積層板から試験片を切り出した。試験片の形状は、押出方向に85mm、押出方向に対して直交する方向(幅方向)に55mmとした。この試験片を、凸反りとなっている面を下向きにして定盤の上に載置し、4隅の浮き上がり量を位置センサ((株)キーエンス製)で測定し、その測定値の平均値を初期反り量とした。
【0102】
次いで、試験片を、押出方向が鉛直となるように吊るした状態で、温度120℃に設定した恒温機内に設置し、1時間保持した。その後、試験片の4隅の浮き上がり量を前記初期反り量と同様にして測定し、加熱反り量を求めた。また、初期反り量と加熱反り量とを式:加熱反り量−初期反り量に当てはめ、反り変移量を算出した。
【0103】
【表1】