(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0024】
本発明では、熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂中に分散された無機物質を含む誘電体用樹脂組成物であって、
前記無機物質は、酸化マグネシウム微粒子を含み、
当該誘電体用樹脂組成物は、1GHz以上の周波数および25℃の温度において、
比誘電率εが5以下であり、
品質係数指標Qfが5,000GHz以上であることを特徴とする誘電体用樹脂組成物が提供される。
【0025】
前述のように、特許文献1〜5に記載の誘電体材料は、高周波帯域で使用されるデバイスへの適用を考慮した場合、未だ十分な誘電特性を有するとは言い難い。特に、これらの文献に記載されている誘電体材料は、誘電損失が比較的大きいという問題がある。
【0026】
これに対して、本発明による誘電体用樹脂組成物は、1GHz以上の高周波帯域においても、有意に低い比誘電率、および有意に低い誘電損失を有するため、高周波帯域で使用されるデバイスに対しても、十分に適用することができる。
【0027】
なお、本願では、材料の誘電損失を表すパラメータとして、「品質係数指標Qf」を使用する。
【0028】
一般に、材料の誘電損失は、誘電正接(tanδ)を用いて表される。誘電正接(tanδ)は、誘電体内を伝播する電気信号が熱に変換されることにより損失する量を表すパラメータである。従って、誘電正接(tanδ)が小さい材料ほど、電気信号の損失が少なくなり、信号伝達率が向上する。
【0029】
また、誘電正接(tanδ)の逆数は、品質係数Qと呼ばれ、Q=1/tanδで表される。この品質係数Qと周波数fの積が「品質係数指標Qf」となる。
【0030】
品質係数指標Qfは、比較的小さな周波数範囲では、周波数fによらず一定とみなすことができる。このため、品質係数指標Qfは、材料の誘電損失を表すパラメータとして使用することができる。すなわち、品質係数指標Qfが大きな材料ほど、誘電損失が低く、本願において好適な材料と言える。
【0031】
本発明による誘電体用樹脂組成物において、品質係数指標Qfは、10000GHz以上であることが好ましい。
【0032】
(本発明による誘電体用樹脂組成物の構成)
次に、本発明による誘電体用樹脂組成物に含まれる各材料について、詳しく説明する。
【0033】
(酸化マグネシウム粒子)
本発明による誘電体用樹脂組成物は、無機物質として、酸化マグネシウム微粒子を含む。
【0034】
本発明による誘電体用樹脂組成物に使用される酸化マグネシウム微粒子は、いかなる方法で製造されたものであっても良い。酸化マグネシウム微粒子は、特に、高純度の金属マグネシウム蒸気と酸素との気相酸化反応を利用する気相法で製造することが好ましい。この方法では、純度が高く、欠陥が少ない良好な結晶性を有する酸化マグネシウム微粒子を製造することができる。
【0035】
良好な結晶性を有する酸化マグネシウム微粒子を使用することにより、最終的に得られる誘電体用樹脂組成物の比誘電率εおよび品質係数指標Qfを、よりいっそう低下させることができる。
【0036】
なお、本願において、酸化マグネシウム微粒子の結晶性は、酸化マグネシウム微粒子自身、または酸化マグネシウム微粒子を含む誘電体用樹脂組成物のX線回折分析により評価することができる。より具体的には、CuKα線での回折結果において、2θ≒42.9°の位置に現われる回折ピークの半価幅(ピーク高さの半分の高さにおける線幅)の値により、酸化マグネシウム微粒子の結晶性を判断することができる。なお、このピークは、酸化マグネシウムの結晶構造の(200)面に相当する。半価幅が狭いほど、酸化マグネシウム微粒子の結晶性は、高くなる。半価幅は、例えば、0.15゜以下であることが好ましい。
【0037】
酸化マグネシウム微粒子の粒径は、特に限られないが、例えば、50nm〜50μmの範囲である。酸化マグネシウム微粒子の粒径は、100nm〜50μmの範囲であることが好ましい。酸化マグネシウム微粒子の粒径が50nm未満の場合、最終的に得られる誘電体用樹脂組成物の誘電損失が増大し、品質係数指標Qf値が低下する可能性がある。また、酸化マグネシウム微粒子の粒径が50μmを越えると、樹脂を加えて成形体を製造したときに、表面の平滑性が低下する可能性がある。
【0038】
なお、本願において、「(微粒子の)粒径」とは、微粒子の平均粒径を意味するものとする。ここで、微粒子の平均粒径は、以下のように計測される。電子顕微鏡によって個々の粒子を観察し、最長部分を該粒子の粒径とする。このような方法で、100個以上の粒子について、粒径を計測する。得られた粒径計測結果を小さい順に並べた際に、中央に位置する値(中央値)を平均粒径とする。
【0039】
酸化マグネシウム微粒子には、本発明の目的に反しない範囲で、表面処理を実施しても良い。
【0040】
なお、以下、酸化マグネシウム微粒子の比誘電率をε
1とし、誘電正接をtanδ
1(=1/Q
1)とし、品質係数指標をQ
1fとする。
【0041】
(樹脂材料)
本発明では、誘電体用樹脂組成物に使用される樹脂材料として、熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂が使用される。
【0042】
本発明による誘電体用樹脂組成物に使用される熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂の種類は、最終的に得られる誘電体用樹脂組成物が前述の比誘電率εおよび品質係数指標Qfを満たす限り、特に限られない。
【0043】
ただし、一般に、酸化マグネシウムは、樹脂材料よりも高い比誘電率を有する(ε
1=約9程度)。そのため、両者を複合化して得られる誘電体用樹脂組成物の比誘電率εは、通常、樹脂材料の比誘電率(ε
2とする)よりも大きくなる。従って、誘電体用樹脂組成物の比誘電率εを低下させるには、樹脂材料の比誘電率ε
2は低い方が好ましい。
【0044】
同様に、樹脂材料の品質係数指標(Q
2fとする)は、できるだけ高いことが好ましい。なお、品質係数の場合は、樹脂材料と酸化マグネシウムとを複合化することにより、両者よりも高い品質係数指標Qfを有する樹脂組成物を形成することは、理論上不可能ではない。しかしながら、樹脂材料自体の品質係数指標Q
2fが低すぎると、樹脂組成物の品質係数指標Qfを十分に高くすることは難しくなる。ここで、樹脂材料の誘電正接をtanδ
2(=1/Q
2)としている。
【0045】
従って、使用される樹脂材料は、1GHz以上の周波数および25℃において、比誘電率ε
2が4以下であり、品質係数指標Q
2fが1000GHz以上であることが好ましい。
【0046】
この場合、前述の範囲の比誘電率εおよび品質係数指標Qfを有する誘電体用樹脂組成物を、比較的容易に得ることができる。
【0047】
本発明による誘電体用樹脂組成物に使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリ環状オレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、5−メチルペンテン樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、フッ素化ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、サーモトロピック液晶ポリマー系樹脂、芳香族ポリサルホン系樹脂、および芳香族ポリエーテル系樹脂が挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0048】
これらの熱可塑性樹脂は、いずれも、前述の要求を満たし、すなわち1GHz以上の周波数および25℃において、比誘電率ε
2が4以下であり、品質係数指標Q
2fが1000GHz以上である。
【0049】
本発明による誘電体用樹脂組成物に使用される熱硬化性樹脂としては、例えば、トリアジン系樹脂、熱硬化性ポリフェニレンエーテル類、多官能スチレン系樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、エポキシ系樹脂、および不飽和ポリエステル樹脂が挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0050】
これらの熱硬化性樹脂は、いずれも、前述の要求を満たし、すなわち1GHz以上の周波数および25℃において、比誘電率ε
2が4以下であり、品質係数指標Q
2fが1000GHz以上である。
【0051】
前述の熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とは、混合して使用しても良い。
【0052】
(誘電体用樹脂組成物)
本発明による誘電体用樹脂組成物は、前述の樹脂材料中に酸化マグネシウム微粒子を分散させることにより製造される。
【0053】
例えば、混練機または攪拌機等を用いて、樹脂材料中に酸化マグネシウム微粒子を直接分散させることにより、誘電体用樹脂組成物を製造しても良い。あるいは、樹脂材料を溶剤中に溶解させた後、この溶液に酸化マグネシウム微粒子を加えて混合しても良い。その後、溶剤を除去することにより、樹脂組成物が製造される。
【0054】
この他にも、各種方法で本発明による誘電体用樹脂組成物を製造することができる。
【0055】
なお、本発明による誘電体用樹脂組成物において、酸化マグネシウム微粒子の含有率は、5体積%以上90体積%未満であることが好ましい。
【0056】
酸化マグネシウム微粒子の含有率が5体積%未満の場合、十分に良好な特性が得られない場合がある。また、酸化マグネシウム微粒子の含有率が90体積%以上の場合、樹脂組成物の成形が難しくなる場合がある。
【0057】
本発明による誘電体用樹脂組成物には、本発明の目的に反しない範囲で、難燃剤、安定剤、可塑化剤、および/または強化剤等の添加剤をさらに加えても良い。
【0058】
本発明による誘電体用樹脂組成物の提供形態は、特に限られない。本発明による誘電体用樹脂組成物は、例えば、成形体の状態で提供しても良い。
【0059】
そのような成形体は、これに限られるものではないが、例えば、射出成形、圧縮成形、押出成形、および注型成形等の公知の方法により、製造することができる。
【0060】
また、本発明による誘電体用樹脂組成物は、共振周波数の温度依存性が小さいことが好ましい。本発明による誘電体用樹脂組成物を実際のデバイスに適用することを想定した場合、共振周波数が温度に対する影響を受けにくい方が、デバイスとして安定した特性を発揮することができるからである。例えば、本発明による誘電体用樹脂組成物は、0℃〜80℃の温度範囲において、共振周波数の温度係数TCfが±50ppm/℃の範囲であっても良い。
【0061】
また、本発明による誘電体用樹脂組成物は、熱膨張係数が小さいことが好ましい。
【0062】
本発明による誘電体用樹脂組成物は、以下に述べるように、導体(金属)や半導体部品と組み合わせて、各種高周波誘電体デバイスとして用いることができる。その際、金属や半導体と誘電体用樹脂組成物の間で熱膨張係数が大きく異なると、温度変化が与えられた場合に熱膨張係数の差異に由来するひずみが生じ、接合が剥がれてしまう等の不具合が生じるおそれがある。一般に、樹脂材料は、金属に比べて熱膨張係数が大きい。熱膨張係数の小さい酸化マグネシウムと複合化することにより、樹脂組成物の熱膨張係数を樹脂材料の値よりも小さくすることができる。
【0063】
例えば、本発明による誘電体用樹脂組成物は、15ppm/℃〜120ppm/℃の範囲の熱膨張係数を有しても良い。
【0064】
また、本発明による誘電体用樹脂組成物は、熱伝導率が大きいことが好ましい。
【0065】
前述のように、本発明による誘電体用樹脂組成物は、導体(金属)や半導体部品と組み合わせて、各種高周波誘電体デバイスとして用いることができる。そのようなデバイスを駆動させた場合、導体や半導体に発熱が生じる。発生した熱を効率的に散逸させることは、デバイスを安定して動作させる上で重要である。誘電体用樹脂組成物の熱伝導率が大きい場合、デバイスからより効果的に熱を散逸させることが可能になる。
【0066】
例えば、本発明による誘電体用樹脂組成物は、0.2W/mK〜5.0W/mKの範囲の熱伝導率を有しても良い。
【0067】
(本発明による誘電体用樹脂組成物の適用例)
本発明による誘電体用樹脂組成物は、1GHz以上の周波数帯域で使用される各種高周波誘電体デバイスに適用することができる。
【0068】
そのような高周波誘電体デバイスには、例えば、回路基板、伝送線路、誘電体フィルタ、誘電体アンテナ、誘電体共振器、キャパシタ、インダクタ、埋設デバイス、およびマルチチップモジュール等が含まれる。
【0069】
以下、本発明による誘電体用樹脂組成物を有する高周波誘電体デバイスの一例について説明する。
【0070】
図1には、本発明による誘電体用樹脂組成物が適用された伝送線路の模式図(斜視図)を示す。伝送線路(マイクロストリップ線路)100において、両導体110、120の間に、本発明による誘電体用樹脂組成物180が配置されている。
【0071】
図2には、本発明による誘電体用樹脂組成物が適用された別の伝送線路の模式図(斜視図)を示す。伝送線路(コプレーナ線路)200において、上部導体210a、210b、210cと下部導体220の間に、本発明による誘電体用樹脂組成物280が配置されている。
【0072】
図3には、本発明による誘電体用樹脂組成物が適用されたさらに別の伝送線路の模式図(斜視図)を示す。伝送線路300(スロット線路)において、上部導体310a、310bと下部導体320の間に、本発明による誘電体用樹脂組成物380が配置されている。
【0073】
図4には、本発明による誘電体用樹脂組成物が適用された誘電体フィルタの模式図(斜視図)を示す。誘電体フィルタ(帯域透過フィルタ)400において、上部導体410a〜410dと下部導体420の間に、本発明による誘電体用樹脂組成物480が配置されている。
【0074】
図5には、本発明による誘電体用樹脂組成物が適用された誘電体アンテナの模式図(斜視図)を示す。誘電体アンテナ(パッチアンテナ)500において、給電点515を有する上部導体510と下部導体520の間に、本発明による誘電体用樹脂組成物580が配置されている。
【0075】
図6には、本発明による誘電体用樹脂組成物が適用された誘電体共振器の模式図(斜視図)を示す。誘電体共振器(リング共振器)600において、リング導体610と下部導体620の間に、本発明による誘電体用樹脂組成物680が配置されている。
【0076】
図7には、本発明による誘電体用樹脂組成物が適用されたキャパシタの模式図(上面図)を示す。キャパシタ(インターディジタルキャパシタ)700において、櫛形導体710aおよび710bが本発明による誘電体用樹脂組成物780上に配置されている。
【0077】
図8には、本発明による誘電体用樹脂組成物が適用されたインダクタの模式図(上面図)を示す。インダクタ(スパイラルインダクタ)800において、スパイラル状の導体810aが本発明による誘電体用樹脂組成物880上に配置されている。
【0078】
図9には、本発明による誘電体用樹脂組成物が適用された多層基板の模式図(断面図)を示す。多層基板900は、本発明による誘電体用樹脂組成物980(980a〜980d)を複数積層することにより構成される。各誘電体用樹脂組成物980a〜980の表面、底面、および/または内部には、多層基板900の最表面に配置された半導体部品950と電気的に接合された配線910a、および半導体部品950と電気的に接合されていない配線910b等が設置される。
【0079】
前述のように、本発明による誘電体用樹脂組成物は、高周波帯域においても、有意に低い比誘電率、および有意に低い誘電損失を有する。
【0080】
従って、本発明による誘電体用樹脂組成物180〜980を備える高周波誘電体デバイス100〜900は、1GHz以上の高周波帯域においても、信号の伝送遅延および信号の損失が有意に抑制され、適正に作動させることができる。
【0081】
なお、
図1〜
図9に示した高周波誘電体デバイスは、単なる一例であって、本発明による誘電体用樹脂組成物は、他の高周波誘電体デバイスに適用されても良い。
【実施例】
【0082】
以下、本発明による実施例について説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0083】
(例1)
以下の方法で、誘電体用樹脂組成物(以下、「サンプル1」と称する)を製造し、その特性を評価した。
【0084】
(サンプル1の製造)
まず、酸化マグネシウム微粒子A(宇部マテリアル社製2000A)を準備した。この酸化マグネシウム微粒子Aの平均粒径は、0.2μmである。
【0085】
図10には、酸化マグネシウム微粒子AのX線回折分析結果を示す。分析には、株式会社リガク製のX線回折装置RINT2550を使用した。
【0086】
図10から、この酸化マグネシウム微粒子Aの(200)ピーク(2θ≒42.9゜)における半値幅は、約0.1゜であることがわかる。
【0087】
また、熱可塑性樹脂として、アイソタクティックポリプロピレン(商品名:ノバテックPP MA3、日本ポリケム株式会社製)(以下、「iPP」と称する)を準備した。
【0088】
次に、小型二軸混練機(ThermoHAAKE社製MiniLab)を用い、この熱可塑性樹脂中に酸化マグネシウム微粒子Aを混合し、200℃で溶融混練を行った。酸化マグネシウム微粒子Aの混合量は、全体に対して10vol%とした。
【0089】
その後、混合物を押出処理し、熱可塑性樹脂中に酸化マグネシウム微粒子Aが分散されたサンプル1を製造した。
【0090】
なお、サンプル1の形状は、50mm×50mm×厚さ1mmの板状、および全長10mm×直径5mmφの円柱状とした。
【0091】
以下の表1の「サンプル1」の欄には、使用樹脂、使用酸化マグネシウム微粒子の種類および物性値、ならびに酸化マグネシウム微粒子の混合比をまとめて示した。
【0092】
【表1】
(サンプル1の評価)
得られたサンプル1を用いて、比誘電率ε、誘電正接tanδ、共振周波数の温度依存性、熱膨張係数、および熱伝導率の各種特性を評価した。
【0093】
比誘電率ε、誘電正接tanδ、および共振周波数の温度依存性の測定には、板状サンプル1を使用した。比誘電率εおよび誘電正接tanδは、JIS R 1641に準拠し、25℃において、12GHzの空洞共振器をネットワークアナライザ(Agilent社製8720ES Sパラメータ・ベクトル・ネットワーク・アナライザ)に接続し、空洞共振法で測定した。
【0094】
得られた誘電正接tanδの値から、サンプル1の品質係数Qを算出した。また、この品質係数Qと共振周波数の積から、サンプル1の品質係数指標Qfを算定した。
【0095】
サンプル1の共振周波数の温度依存性は、同様の装置により、0℃と80℃における共振周波数を測定し、両者の差異を求めることにより評価した。
【0096】
熱膨張係数の測定には、円柱状サンプル1を使用し、ブルカー・エイエックスエス株式会社製熱膨張計TD5200SAを用いて測定を行った。
【0097】
熱伝導率の測定には、英弘精機株式会社製熱伝導率測定装置HC−110を用い、1枚法により実施した。測定には、板状サンプル1を使用した。
【0098】
前述の表1の「サンプル1」の欄には、比誘電率ε、誘電正接tanδ、品質係数指標Qf、共振周波数の温度係数TCf、熱膨張係数、および熱伝導率の各種測定結果をまとめて示した。
【0099】
(例2)
前述の例1の場合と同様の方法で、誘電体用樹脂組成物(以下、「サンプル2」と称する)を製造し、その特性を評価した。
【0100】
ただし、この例2では、酸化マグネシウム微粒子Aの混合量は、全体に対して15vol%とした。その他の製造条件は、例1の場合と同様である。
【0101】
得られたサンプル2を用いて、例1の場合と同様の方法で、比誘電率ε、誘電正接tanδ、共振周波数の温度依存性、熱膨張係数、および熱伝導率の各種特性を評価した。
【0102】
前述の表1の「サンプル2」の欄には、サンプル2の製造条件と、各種評価結果とをまとめて示した。
【0103】
(例3)
前述の例1の場合と同様の方法で、誘電体用樹脂組成物(以下、「サンプル3」と称する)を製造し、その特性を評価した。
【0104】
ただし、この例3では、酸化マグネシウム微粒子Aの混合量は、全体に対して20vol%とした。その他の製造条件は、例1の場合と同様である。
【0105】
得られたサンプル3を用いて、例1の場合と同様の方法で、比誘電率ε、誘電正接tanδ、共振周波数の温度依存性、熱膨張係数、および熱伝導率の各種特性を評価した。
【0106】
前述の表1の「サンプル3」の欄には、サンプル3の製造条件と、各種評価結果とをまとめて示した。
【0107】
(例4)
前述の例1の場合と同様の方法で、誘電体用樹脂組成物(以下、「サンプル4」と称する)を製造し、その特性を評価した。
【0108】
ただし、この例4では、酸化マグネシウム微粒子Aの混合量は、全体に対して25vol%とした。その他の製造条件は、例1の場合と同様である。
【0109】
得られたサンプル4を用いて、例1の場合と同様の方法で、比誘電率ε、誘電正接tanδ、共振周波数の温度依存性、熱膨張係数、および熱伝導率の各種特性を評価した。
【0110】
前述の表1の「サンプル4」の欄には、サンプル4の製造条件と、各種評価結果とをまとめて示した。
【0111】
(例5)
前述の例1の場合と同様の方法で、誘電体用樹脂組成物(以下、「サンプル5」と称する)を製造し、その特性を評価した。
【0112】
ただし、この例5では、酸化マグネシウム微粒子Aの混合量は、全体に対して30vol%とした。その他の製造条件は、例1の場合と同様である。
【0113】
得られたサンプル5を用いて、例1の場合と同様の方法で、比誘電率ε、誘電正接tanδ、共振周波数の温度依存性、熱膨張係数、および熱伝導率の各種特性を評価した。
【0114】
前述の表1の「サンプル5」の欄には、サンプル5の製造条件と、各種評価結果とをまとめて示した。
【0115】
(例6)
前述の例1の場合と同様の方法で、誘電体用樹脂組成物(以下、「サンプル6」と称する)を製造し、その特性を評価した。
【0116】
ただし、この例6では、酸化マグネシウム微粒子Aの混合量は、全体に対して40vol%とした。その他の製造条件は、例1の場合と同様である。
【0117】
得られたサンプル6を用いて、例1の場合と同様の方法で、比誘電率ε、誘電正接tanδ、共振周波数の温度依存性、熱膨張係数、および熱伝導率の各種特性を評価した。
【0118】
前述の表1の「サンプル6」の欄には、サンプル6の製造条件と、各種評価結果とをまとめて示した。
【0119】
(例7)
前述の例3の場合と同様の方法で、誘電体用樹脂組成物(以下、「サンプル7」と称する)を製造し、その特性を評価した。
【0120】
なお、この例7では、酸化マグネシウム微粒子Aの代わりに、酸化マグネシウム微粒子B(宇部マテリアル社製RF10C)を準備した。この酸化マグネシウム微粒子Bの平均粒径は、6.5μmである。
【0121】
図11には、酸化マグネシウム微粒子BのX線回折分析結果を示す。分析には、株式会社リガク製のX線回折装置RINT2550を使用した。
【0122】
図11から、この酸化マグネシウム微粒子Bの(200)ピーク(2θ≒42.9゜)における半値幅は、約0.122゜であることがわかる。
【0123】
その他の製造条件は、例3の場合と同様である。
【0124】
得られたサンプル7を用いて、例1の場合と同様の方法で、比誘電率ε、誘電正接tanδ、共振周波数の温度依存性、熱膨張係数、および熱伝導率の各種特性を評価した。
【0125】
前述の表1の「サンプル7」の欄には、サンプル7の製造条件と、各種評価結果とをまとめて示した。
【0126】
(例8)
前述の例3の場合と同様の方法で、誘電体用樹脂組成物(以下、「サンプル8」と称する)を製造し、その特性を評価した。
【0127】
なお、この例8では、酸化マグネシウム微粒子Aの代わりに、酸化マグネシウム微粒子C(宇部マテリアル社製RF98)を準備した。この酸化マグネシウム微粒子Cの平均粒径は、9μmである。
【0128】
図12には、酸化マグネシウム微粒子CのX線回折分析結果を示す。分析には、株式会社リガク製のX線回折装置RINT2550を使用した。
【0129】
図12から、この酸化マグネシウム微粒子Cの(200)ピーク(2θ≒42.9゜)における半値幅は、約0.082゜であることがわかる。
【0130】
その他の製造条件は、例3の場合と同様である。
【0131】
得られたサンプル8を用いて、例1の場合と同様の方法で、比誘電率ε、誘電正接tanδ、共振周波数の温度依存性、熱膨張係数、および熱伝導率の各種特性を評価した。
【0132】
前述の表1の「サンプル8」の欄には、サンプル8の製造条件と、各種評価結果とをまとめて示した。
【0133】
(例9)
前述の例3の場合と同様の方法で、誘電体用樹脂組成物(以下、「サンプル9」と称する)を製造し、その特性を評価した。
【0134】
なお、この例9では、酸化マグネシウム微粒子Aの代わりに、酸化マグネシウム微粒子D(宇部マテリアル社製500A)を準備した。この酸化マグネシウム微粒子Dの平均粒径は、0.05μmである。
【0135】
図13には、酸化マグネシウム微粒子DのX線回折分析結果を示す。分析には、株式会社リガク製のX線回折装置RINT2550を使用した。
【0136】
図13から、この酸化マグネシウム微粒子Cの(200)ピーク(2θ≒42.9゜)における半値幅は、約0.196゜であることがわかる。
【0137】
その他の製造条件は、例3の場合と同様である。
【0138】
得られたサンプル9を用いて、例1の場合と同様の方法で、比誘電率ε、誘電正接tanδ、共振周波数の温度依存性、熱膨張係数、および熱伝導率の各種特性を評価した。
【0139】
前述の表1の「サンプル9」の欄には、サンプル9の製造条件と、各種評価結果とをまとめて示した。
【0140】
表1に示すように、今回製造した誘電体用樹脂組成物(サンプル1〜サンプル9)は、いずれも、低い比誘電率ε(2.7〜4.3)および高い品質係数指標Qf(8842GHz〜25641GHz)を示した。特に、使用した酸化マグネシウム微粒子の(200)面に帰属されるピークの半価幅が0.15゜以下であるサンプル1〜サンプル8では、品質係数指標Qfは、10000GHzを超えており、極めて良好な品質係数指標Qfが得られることがわかった。
【0141】
また、サンプル1〜サンプル7は、いずれも、共振周波数の温度係数TCfが小さく(最大8.96ppm/℃以下)、熱膨張係数が小さく(最大112ppm/℃以下)、熱伝導率が高い(最小0.24W/mK以上)ことがわかった。
【0142】
このような特徴を有する誘電体用樹脂組成物は、高周波誘電体デバイス等に好適に用いることができる。