(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被加工物を保持面で保持するチャックテーブルと、該保持面に保持された被加工物を切削する切削ブレードが装着されたスピンドルを含む切削手段と、該切削手段を該チャックテーブルに対して切り込み送り方向に移動させる切り込み送り手段と、発光部と受光部とを有し該切削ブレードの該切り込み送り方向での先端位置を検出する刃先検出手段と、を備えた切削装置における該切削ブレードの刃先位置検出方法であって、
該切削ブレードを第一の原点から該刃先検出手段に向かって第一の速度で該切り込み送り方向に移動させ、第一の速度変更位置で第二の速度に減速し、該刃先検出手段の該発光部と該受光部との間に該切削ブレードを侵入させ、該発光部からの光線を所定量遮断することで該切削ブレードの該先端位置を検出する粗検出工程と、
該粗検出工程の後に、該第一の速度変更位置と該刃先検出手段との間の該刃先検出手段寄りの位置であって、かつ該切削ブレードが該発光部からの光線を遮断しない第二の原点から、該切削ブレードを該第一の速度よりも低速な第三の速度で該切り込み送り方向に移動させ、該粗検出工程での検出位置に対して検出誤差範囲よりも該第二の原点よりに離間した第二の速度変更位置で第四の速度に更に減速して、該刃先検出手段の該発光部と該受光部との間に該切削ブレードを侵入させ、該発光部からの光線を所定量遮断することで該切削ブレードの該先端位置を検出する精密検出工程と、
を含んで構成されることを特徴とする切削ブレードの刃先位置検出方法。
該第二の原点は、該切削ブレードが該発光部からの光線を遮断しない範囲における該刃先検出手段側の端部に位置する請求項1に記載の切削ブレードの刃先位置検出方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態に係る切削ブレードの刃先位置検出方法につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
[実施形態]
図1から
図7を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、切削ブレードの刃先位置検出方法に関する。
図1は、本発明の実施形態に係る切削装置1の構成を示す斜視図、
図2は、刃先検出手段80の拡大図、
図3は、実施形態に係る切削装置1のブロック図、
図4は、基準電圧の説明図、
図5は、実施形態に係る切削ブレードの刃先位置検出方法の説明図、
図6は、刃厚が薄い切削ブレード21を示す図、
図7は、刃厚が厚い切削ブレード21を示す図である。
【0012】
図1に示す切削装置1は、切削ブレード21を有する切削手段20と被加工物(図示せず)を保持したチャックテーブル10とを相対移動させることで、被加工物を切削加工するものである。本実施形態に係る切削装置1は、1スピンドルのダイサであるが、2個のスピンドルを有するダイサ、いわゆるデュアルダイサ(例えば、フェイシングデュアルダイサやパラレルデュアルダイサ)であってもよい。切削装置1は、チャックテーブル10と、切削手段20と、X軸移動手段40と、Y軸移動手段50と、Z軸移動手段60と、θ軸回転手段70と、刃先検出手段80と、撮像手段30とを含んで構成されている。
【0013】
チャックテーブル10は、上面に被加工物を保持するものである。チャックテーブル10は、保持部11を有している。保持部11は、被加工物をその裏面から吸引することで保持面11a(表面)で保持する。保持部11の保持面11aを構成する部分は、ポーラスセラミック等から形成された円板形状であり、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続されている。被加工物は、切削装置1により加工される加工対象であり、例えば、半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等である。
【0014】
切削手段20は、切削ブレード移動基台8に壁部5及び支持部4を介して搭載されている。切削手段20は、切削ブレード21と、スピンドル22と、スピンドルハウジング23と、切削液供給ノズル24とを含んでいる。切削手段20は、チャックテーブル10に保持された被加工物に切削液を供給しながら加工を行う。このとき、切削手段20は、撮像手段30によって撮像された被加工物の画像データに基づいて、被加工物の加工すべき領域を切削ブレード21により加工する。
【0015】
切削ブレード21は、チャックテーブル10の保持面11aに保持された被加工物を切削する。切削ブレード21は、略リング形状の極薄の切削砥石である。切削ブレード21は、スピンドル22の一端部に着脱自在に装着される。切削液供給ノズル24は、切削ブレード21による被加工物の加工中に、被加工物の加工点へ切削液を供給する。
【0016】
Y軸移動手段50は、チャックテーブル10に保持された被加工物と切削ブレード21とを
図1に示すY軸方向に相対移動させる割り出し送り手段に相当する。Y軸方向は、切削ブレード21の回転軸線の方向であり、鉛直方向と直交している。Y軸移動手段50は、Y軸パルスモータ51と、Y軸ボールねじ52と、一対のY軸ガイドレール53、53と、Y軸位置検出用スケール54と、Y軸位置検出用センサ55とを含んでいる。Y軸移動手段50は、Y軸パルスモータ51により発生した回転力によりY軸ボールねじ52を回転駆動させることで、切削ブレード移動基台8を装置本体3に対してY軸方向に移動させる。
【0017】
X軸方向は、割り出し送り方向および鉛直方向とそれぞれ直交している。X軸移動手段40は、チャックテーブル10に保持された被加工物を切削ブレード21に対してX軸方向に相対移動させる切削送り手段に相当する。X軸移動手段40は、X軸パルスモータ41と、X軸ボールねじ42と、一対のX軸ガイドレール43、43と、X軸位置検出用スケール44と、X軸位置検出用センサ45とを含んでいる。X軸移動手段40は、X軸パルスモータ41により発生した回転力によりX軸ボールねじ42を回転駆動させることで、テーブル移動基台2(チャックテーブル10)を一対のX軸ガイドレール43、43によりガイドしつつ装置本体3に対してX軸方向に移動させる。
【0018】
Z軸移動手段60は、チャックテーブル10に保持された被加工物に対して切削ブレード21をZ軸方向、すなわちスピンドル22がチャックテーブル10に接近及び離れる方向に相対移動させる切り込み送り手段に相当する。本実施形態のZ軸方向は、鉛直方向である。Z軸移動手段60は、切削ブレード移動基台8に設けられており、Z軸ボールねじ61と、Z軸パルスモータ62と、一対のZ軸ガイドレール63とを含んでいる。Z軸移動手段60は、Z軸パルスモータ62により発生した回転力によりZ軸ボールねじ61を回転させることで、支持部4を一対のZ軸ガイドレール63によりガイドしつつ装置本体3に対してZ軸方向に相対移動させる。
【0019】
また、Z軸移動手段60は、切削手段20のZ軸方向の位置を検出するZ軸位置検出機構を備えている。Z軸位置検出機構は、例えば、Z軸位置検出用スケールとZ軸位置検出用センサとを含むものである。
【0020】
θ軸回転手段70は、θ軸回転モータ71と、テーブル72とを含んでいる。テーブル72は、チャックテーブル10を搭載しており、チャックテーブル10の中心軸線を中心に回転できるように、θ軸回転モータ71を介してテーブル移動基台2に支持されている。テーブル72は、チャックテーブル10をその中心軸線を中心に、切削ブレード21に対して任意の角度回転又は連続回転の回転運動させることができる。
【0021】
撮像手段30は、複数の画素からなり、チャックテーブル10に保持された被加工物を撮像し、画像を生成する。撮像手段30は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサを用いたカメラ等であるが、これに限定されるものではない。
【0022】
制御手段6は、コンピュータを有する電子制御装置である。制御手段6は、X軸移動手段40、Y軸移動手段50、Z軸移動手段60およびθ軸回転手段70とそれぞれ接続されており、各手段40,50,60,70を制御する。
【0023】
(刃先位置検出装置)
ここで、本実施形態に係る切削ブレードの刃先位置検出方法を実行する刃先位置検出装置について説明する。刃先位置検出装置は、刃先検出手段80、Z軸移動手段60および制御手段6を含んで構成されている。
【0024】
図1に示すように、切削装置1は、刃先検出手段80を有している。刃先検出手段80は、切削ブレード21の切り込み送り方向での先端位置(下端位置)を検出する。刃先検出手段80は、チャックテーブル10の近傍、例えば、チャックテーブル10を保持する移動台73に配置されている。刃先検出手段80は、移動台73の上面の隅部、本実施形態では+X方向の端部でかつ−Y方向の端部となる隅部に配置されている。
【0025】
刃先検出手段80は、
図2に示すように、発光部81と、受光部82と、支持部材83とを有する。支持部材83は、移動台73の上面に固定されている。支持部材83は、鉛直方向上方、すなわち+Z軸方向に突出する第一突出部83aと第二突出部83bを有する。第一突出部83aと第二突出部83bとは、Y軸方向において隙間を空けて互いに対向している。第一突出部83aと第二突出部83bとの隙間は、切削ブレード21が侵入可能なブレード侵入部86である。ブレード侵入部86は、略U字形状の空間部であり、少なくとも切削手段20で使用可能な最大刃厚の切削ブレード21が侵入できるだけの幅を有している。ブレード侵入部86の底部は、−X方向へ向かうに従い鉛直方向下方に向かう傾斜を有している。
【0026】
発光部81は、第一突出部83aに設けられている。受光部82は、第二突出部83bに設けられている。発光部81と受光部82とはY軸方向において互いに対向して配置されている。発光部81は、例えば、光源87(
図3参照)として発光素子を有するものであり、受光部82に向けて光を照射する。受光部82は、例えば、受光素子を有するものである。
【0027】
支持部材83には、エアー供給ノズル84および洗浄水供給ノズル85が設けられている。洗浄水供給ノズル85は、ブレード侵入部86に侵入した切削ブレード21に対して洗浄水を供給し、切削ブレード21を洗浄するものである。エアー供給ノズル84は、ブレード侵入部86に侵入した切削ブレード21に対してエアーを供給し、洗浄水を吹き飛ばして切削ブレード21を乾燥させるものである。
【0028】
制御手段6は、本実施形態に係る切削ブレードの刃先位置検出方法を実行する機能を有している。
図3に示すように、制御手段6は、光電変換部31と、基準電圧設定部32と、電圧比較部33と、端部位置検出部34と、算出部35と、位置補正部36を有する。
【0029】
発光部81は、光源87が発生する光を受光部82に向けて照射する。光電変換部31は、受光部82の受光量を電圧に変換して出力する。光電変換部31は、受光部82の受光量に応じた電圧を出力するものであり、受光量が多い場合には、受光量が少ない場合よりも高い電圧を出力する。
【0030】
基準電圧設定部32は、基準電圧を設定して出力する。
図4に示すように、光電変換部31の出力電圧には、予め基準電圧が設定されている。基準電圧は、光電変換部31が出力する最大電圧よりも低い電圧であり、例えば、最大電圧が5Vである場合の基準電圧は、3Vとすることができる。
【0031】
電圧比較部33は、光電変換部31の出力電圧と基準電圧設定部32が出力する基準電圧とを比較し、比較結果の信号を出力する。電圧比較部33は、例えば、光電変換部31の出力電圧が基準電圧よりも高い場合と基準電圧以下である場合とで異なる信号を出力する。
【0032】
端部位置検出部34は、電圧比較部33から出力される信号と、Z軸移動手段60から取得する信号とに基づいて切削ブレード21の刃先位置(端部位置)を検出する。制御手段6は、切削ブレード21を降下させてブレード侵入部86に侵入させ、発光部81からの光線を遮断することにより切削ブレード21の刃先位置を検出する。ここで、刃先位置は、切削ブレード21により光線が遮断されたと判定されたときの切削手段20のZ軸方向の位置である。端部位置検出部34は、Z軸位置検出機構から切削手段20のZ軸位置を示す信号を取得する。端部位置検出部34は、切削ブレード21を降下させてブレード侵入部86に侵入させる際に電圧比較部33から出力される信号が基準電圧以下を示す信号となったときの切削手段20のZ軸位置を切削ブレード21の刃先位置として検出する。
【0033】
算出部35は、端部位置検出部34によって検出された端部位置に基づいて、切り込み送り方向の切削ブレード21の位置の補正量を算出する。また、算出部35は、切削ブレード21の刃先位置の変化に基づいて切削ブレード21の摩耗量を算出するようにしてもよい。
【0034】
位置補正部36は、算出部35によって算出された補正量や摩耗量に基づいて、切削ブレード21の切り込み送り方向の位置を補正する。位置補正部36によって補正された切削ブレード21の位置に基づいて、被加工物を加工するときの切削ブレード21の位置が制御される。
【0035】
(切削ブレードの刃先位置検出方法)
次に、本実施形態に係る切削ブレードの刃先位置検出方法について説明する。切削装置1では、適宜切削ブレード21の刃先位置を検出するセットアップが実行される。セットアップは、例えば、切削ブレード21が交換されたときや、所定枚数の被加工物の切削加工を行うごとに実行される。
【0036】
本実施形態に係る切削ブレードの刃先位置検出方法は、被加工物を保持面11aで保持するチャックテーブル10と、保持面11aに保持された被加工物を切削する切削ブレード21が装着されたスピンドル22を含む切削手段20と、切削手段20をチャックテーブル10に対して切り込み送り方向に移動させる切り込み送り手段(Z軸移動手段60)と、発光部81と受光部82とを有し切削ブレード21の切り込み送り方向での先端位置を検出する刃先検出手段80とを備えた切削装置1における切削ブレードの刃先位置検出方法であって、粗検出工程と精密検出工程を含む。
【0037】
本実施形態に係る切削ブレードの刃先位置検出方法は、粗検出工程で粗検出を行い、精密検出工程で高精度検出を行い、更にその際の各原点位置と速度変更位置を個別に位置づけることで、短時間で正確な測定を実行できるようにしたものである。
図5を参照して、各検出工程について説明する。
図5において、横軸は時間、縦軸は刃先検出手段80からの切り込み送り方向の距離を示す。なお、刃先検出手段80からの距離は、例えば、発光部81の位置を基準とすることができる。
【0038】
(粗検出工程)
粗検出工程は、切削ブレード21を第一の原点Z01から刃先検出手段80に向かって高速な第一の速度V1で切り込み送り方向(−Z方向)に移動させ、第一の速度変更位置Z11で第二の速度V2に減速し、刃先検出手段80の発光部81と受光部82との間に切削ブレード21を侵入させ、発光部81からの光線を所定量遮断することで切削ブレード21の先端位置を検出する工程である。
【0039】
制御手段6は、粗検出工程において、予め定められた第一の原点Z01から刃先検出手段80に向かって第一の速度V1で切削ブレード21を切り込み送り方向に移動させる。制御手段6は、刃先検出手段80のブレード侵入部86(発光部81の光軸)が切削ブレード21の刃先の真下に位置するように、予め切削手段20のX軸位置およびY軸位置を調節し、切削手段20を降下させる。第一の原点Z01は、例えば、Z軸移動手段60の原点位置であり、切削手段20をX軸方向やY軸方向に移動させても切削ブレード21が被加工物等に接触しないZ軸方向の高さ位置である。
【0040】
第一の速度V1は、例えばZ軸移動手段60が発生させる最高速度である。第一の速度V1を高速に設定することで、切削ブレード21の刃先位置の検出に要する時間を短縮することができる。第二の速度V2は、第一の速度V1よりも低速であり、例えば、Z軸パルスモータ62の脱調が起こりえない速度、言い換えるとZ軸移動手段60を急停止させてもZ軸パルスモータ62が脱調しない速度である。第二の速度V2は、例えば、Z軸パルスモータ62の脱調が起こりえない速度範囲の最大速度とされる。
【0041】
第一の速度変更位置Z11は、刃先検出手段80からZ軸方向に所定距離だけ離れた位置である。所定距離は、ブレーキ手段により切削手段20を停止させるために必要な切り込み送り方向の距離(停止距離)にマージンを加えた距離である。切削装置1は、Z軸移動手段60により切削手段20を移動させる間にZ軸パルスモータ62の脱調が発生すると、機械的なブレーキ手段によって切削装置20を停止させる。停止距離は、第一の速度V1で切削手段20を降下させる際にZ軸パルスモータ62の脱調が発生したときに、ブレーキ手段を作動させて切削手段20を停止させるまでに切削手段20が動いてしまう距離である。停止距離は、刃先検出手段80に切削手段20を接触させることなく、ブレーキ手段によって切削手段20を停止させることができるように定められる。なお、停止距離は、切削手段20で使用可能な最大径の切削ブレード21が装着された場合であっても刃先検出手段80に切削手段20を接触させることがないように定められることが望ましい。
【0042】
制御手段6は、第一の速度変更位置Z11において切削手段20のZ軸方向の移動速度を第一の速度V1から第二の速度V2に減速し、第二の速度V2で切削ブレード21を発光部81と受光部82との間に侵入させる。ここで、発光部81と受光部82との間に切削ブレード21を侵入させることは、発光部81と受光部82とを直線的に結ぶ領域を切削ブレード21によって遮ることだけでなく、ブレード侵入部86に切削ブレード21を侵入させることや、発光部81からの光線を遮る領域に切削ブレード21を侵入させることも含んでいる。
【0043】
切削ブレード21が発光部81からの光線を所定量遮断すると、光電変換部31の出力電圧が基準電圧以下となり、制御手段6は刃先検出手段80によって切削ブレード21の刃先を検出したと判定する。
図5の点Z21は、粗検出工程において検出された切削ブレード21の刃先の検出位置(以下、単に「粗検出工程での検出位置Z21」と称する。)である。
【0044】
(精密検出準備工程)
制御手段6は、粗検出工程において切削ブレード21の先端位置を検出すると、精密検出準備工程を実行する。精密検出準備工程では、切削ブレード21を第二の原点Z02まで刃先検出手段80から離間させる向きで切り込み送り方向に移動(上昇)させる。このときの切削ブレード21の移動速度は、例えば、第一の速度V1とされる。切削ブレード21を上昇させる際には、Z軸パルスモータ62の脱調が生じるような急停止や移動方向の反転などの指令がなされない。最高速度の第一の速度V1で切削ブレード21を上昇させることにより、切削ブレード21の先端位置を検出するための時間を短縮させることができる。
【0045】
第二の原点Z02は、第一の速度変更位置Z11よりも刃先検出手段80に近い位置であり、かつ切削ブレード21の刃厚等にかかわらず切削ブレード21が発光部81からの光線を遮断しないZ軸方向の位置である。
図6に示す切削ブレード21のZ軸方向の位置と、
図7に示す切削ブレード21のZ軸方向の位置とは、同一である。
図6に示すように刃厚が薄い切削ブレード21では光線88を遮断しない位置であっても、
図7に示すように刃厚が厚い切削ブレード21では光線88を遮断する場合がある。
図7に示すように、切削ブレード21によって反射された反射光89が受光部82に入射し、刃先位置の検出結果に影響を与える可能性がある。第二の原点Z02は、刃厚が厚い切削ブレード21であっても光線88を遮断しない位置であって、かつ刃先検出手段80に近いことが望ましい。第二の原点Z02は、第一の速度変更位置Z11と刃先検出手段80との間の刃先検出手段80寄りの位置であって、かつ切削ブレード21が発光部81からの光線を遮断しない位置であることが好ましい。第二の原点Z02は、例えば、刃先検出手段80と第一の速度変更位置Z11との間であって、かつ切削ブレード21が光線88を遮断しない範囲の刃先検出手段80側の端部に位置するものとすることができる。
【0046】
粗検出工程の実行後に切削ブレード21を第二の原点Z02まで上昇させることにより、切削ブレード21が光線88を遮らない状態で次の精密検出工程を開始することができる。第二の原点Z02は、例えば、切削ブレード21を下降させるときに、使用可能な最大刃厚の切削ブレード21が光線88を遮断し始めるZ軸方向の位置(以下、「遮断開始位置」と称する。)よりも+Z側の位置である。一例として、第二の原点Z02は、遮断開始位置よりも所定距離だけ+Z側の位置とされる。切削ブレード21の先端位置を検出するための時間を短縮する観点からは、第二の原点Z02はできるだけ−Z側の位置であること、すなわち刃先検出手段80に近い位置であることが好ましい。一例として、第二の原点Z02は、Z軸移動手段60の位置決め精度に応じた距離だけ遮断開始位置よりも+Z側の位置とされてもよい。
【0047】
(精密検出工程)
精密検出工程は、粗検出工程の後に実行されるものである。本実施形態では、精密検出工程は、精密検出準備工程の後に実行される。精密検出工程は、第二の原点Z02から、切削ブレード21を刃先検出手段80に向かって第一の速度V1よりも低速な第三の速度V3で切り込み送り方向に移動させ、粗検出工程での検出位置に対して検出誤差範囲よりも第二の原点Z02寄りに離間した第二の速度変更位置Z12で第四の速度V4に更に減速して、刃先検出手段80の発光部81と受光部82との間に切削ブレード21を侵入させ、発光部81からの光線を所定量遮断することで切削ブレード21の先端位置を検出する工程である。
【0048】
制御手段6は、まず、第二の原点Z02から第二の速度変更位置Z12まで、切削ブレード21を刃先検出手段80に向かって第三の速度V3で切り込み送り方向に移動させる。制御手段6は、第二の速度変更位置Z12で切削ブレード21の移動速度を第四の速度V4に減速する。第二の速度変更位置Z12は、粗検出工程での検出位置Z21に対して粗検出工程における検出誤差範囲よりも第二の原点Z02寄りに離間した位置である。切削ブレード21の刃先位置を検出する際の検出誤差は、検出回路の精度や切り込み送り方向の切削ブレード21の移動速度などに依存する。粗検出工程での検出位置Z21について、検出誤差が±α(αは正)とした場合、第二の速度変更位置Z12は、粗検出工程での検出位置Z21からαだけ第二の原点Z02寄りの位置よりも第二の原点Z02側の位置である。
【0049】
切削ブレード21の先端位置を検出するための時間を短縮する観点からは、第二の速度変更位置Z12はできるだけ−Z側の位置であること、すなわち刃先検出手段80に近い位置であることが好ましい。一例として、第二の速度変更位置Z12は、Z軸移動手段60の位置決め精度に応じた距離だけ検出誤差範囲よりも+Z側の位置とされてもよい。なお、第二の速度変更位置Z12は、切削ブレード21が発光部81からの光線88を遮った状態となる位置であってもよい。
【0050】
第三の速度V3は、第一の速度V1よりも低速であり、例えば、Z軸パルスモータ62の脱調が起こりえない速度、言い換えるとZ軸移動手段60を急停止させてもZ軸パルスモータ62が脱調しない速度である。第三の速度V3は、第二の速度V2よりも高速であっても、第二の速度V2よりも低速であっても、第二の速度V2と同一であってもよい。第三の速度V3は、例えば、Z軸パルスモータ62の脱調が起こりえない速度範囲の最大速度とされる。
【0051】
第四の速度V4は、第三の速度V3よりも低速である。第四の速度V4は、例えば、非常に低速であって切削ブレード21の刃先位置の精密な検出が可能な速度である。第四の速度V4は、切削ブレード21の刃先位置検出において許容される検出精度に基づいて定められることができる。低速な第四の速度V4で切削ブレード21が発光部81と受光部82との間に侵入することで、切削ブレード21が発光部81からの光線88を所定量遮断した位置(刃先位置)を精度よく精密に検出することができる。
図5の点Z22は、精密検出工程において検出された切削ブレード21の刃先の検出位置(以下、単に「精密検出工程での検出位置Z22」と称する。)である。切削ブレード21の刃先位置が検出されると、精密検出工程が終了する。精密検出工程での検出位置Z22は、最新の切削ブレード21の刃先位置として扱われる。算出部35は、精密検出工程での検出位置Z22に基づいて切削ブレード21の切り込み送り方向の位置の補正量を算出する。
【0052】
(比較工程)
精密検出工程の後で比較工程が実行されてもよい。比較工程は、粗検出工程での検出位置Z21と精密検出工程での検出位置Z22とを比較する工程である。制御手段6は、粗検出工程での検出位置Z21のZ座標と精密検出工程での検出位置Z22のZ座標との差が所定値以上である場合、誤検出と判定する。制御手段6は、誤検出と判定された場合、全ての検出位置Z21,Z22をリセットして粗検出工程から再度切削ブレード21の刃先位置の検出を実行する。なお、これに代えて、粗検出工程での検出位置Z21を有効にして粗検出工程の実行後からやり直すようにし、再度誤検出と判定された場合に粗検出工程に戻り再度切削ブレード21の刃先位置の検出を実行し直すようにしてもよい。
【0053】
(確認工程)
本実施形態では、更に確認工程が実行される。確認工程は、精密検出工程の後で実行されるものであり、比較工程が実行される場合には、比較工程で誤検出の判定がなされなかった場合にその後に実行される。確認工程は、更に切削ブレード21の刃先位置の検出を行い、この検出結果と精密検出工程での検出結果とに基づいて誤検出の有無を判定するものである。
【0054】
制御手段6は、確認工程において、切削ブレード21の刃先位置の検出を行う。このときの刃先位置の検出手順は、精密検出工程での検出手順と同様とすることができる。制御手段6は、確認工程において検出された切削ブレード21の歯先の検出位置(以下、単に「確認工程での検出位置」と称する。)のZ座標が精密検出工程での検出位置Z22のZ座標と比較して所定範囲以上に変化している場合、検出エラー(誤検出)と判定する。確認工程において誤検出と判定された場合、全ての検出位置をリセットして粗検出工程から再度切削ブレード21の刃先位置の検出を実行する。なお、これに代えて、粗検出工程での検出位置Z21を有効にして粗検出工程の実行後からやり直し、再度誤検出と判定された場合に粗検出工程から切削ブレード21の刃先位置の検出を実行し直すようにしてもよい。あるいは、確認工程での検出位置のみを無効として、確認工程をやり直し、再度誤検出と判定された場合に粗検出工程から切削ブレード21の刃先位置の検出を実行し直すようにしてもよい。
【0055】
[実施形態の変形例]
上記実施形態では、第一の速度V1はZ軸移動手段60が発生させる最高速度であったが、これには限定されない。第一の速度V1は、Z軸移動手段60が発生させることのできる速度範囲で適宜定めることができる。セットアップ時間を短縮するためには、第一の速度V1は、Z軸移動手段60が発生可能な範囲でより高速とされることが望ましい。
【0056】
上記の実施形態に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。