(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガス化原料をガス化剤でガス化するガス化設備と、当該ガス化設備で生成されたガス化ガスを主燃料として酸化剤によって燃焼させるガスタービン燃焼器と、当該ガスタービン燃焼器から排出される燃焼排気ガスによって駆動するガスタービンと、当該ガスタービンから排出されたガスタービン燃焼排気ガスGから取り分けられたガスタービン燃焼排気ガスGpの水分を分離する汽水分離器と、当該汽水分離器を通過した後の前記ガスタービン燃焼排気ガスGpのうちの一部のガスタービン燃焼排気ガスGdを二酸化炭素として回収する二酸化炭素回収設備とを有し、前記ガスタービンから排出された前記ガスタービン燃焼排気ガスGをガスタービン燃焼排気ガスGrと前記ガスタービン燃焼排気ガスGpとに分け、前記ガスタービン燃焼排気ガスGrを前記ガスタービンの作動媒体としてリサイクルすると共に、前記ガスタービン燃焼排気ガスGpのうちの一部である前記ガスタービン燃焼排気ガスGdは前記二酸化炭素回収設備によって二酸化炭素として回収し、残りのガスタービン燃焼排気ガスGcは前記ガス化設備に前記ガス化原料を搬送する媒体として使用するガス化ガス発電プラントにおいて、前記ガスタービンから排出されてから前記二酸化炭素回収設備に供給される前の前記ガスタービン燃焼排気ガスG,Gp,Gdにメタン,一酸化炭素,水素,オゾンのうちの少なくとも一つを供給して前記ガスタービン燃焼排気ガスG,Gp,Gd中の一酸化窒素を二酸化窒素に酸化させてから、前記汽水分離器若しくは前記二酸化炭素回収設備に備えられている汽水分離器によって得られた凝縮水に前記二酸化窒素を吸収させて回収することを特徴とするCO2回収型ガス化ガス発電プラント。
ガス化原料をガス化剤でガス化するガス化設備と、当該ガス化設備で生成されたガス化ガスを主燃料として酸化剤によって燃焼させるガスタービン燃焼器と、当該ガスタービン燃焼器から排出される燃焼排気ガスによって駆動するガスタービンと、当該ガスタービンから排出されたガスタービン燃焼排気ガスGから取り分けられたガスタービン燃焼排気ガスGpの水分を分離する汽水分離器と、当該汽水分離器を通過した後の前記ガスタービン燃焼排気ガスGpのうちの一部のガスタービン燃焼排気ガスGdを二酸化炭素として回収する二酸化炭素回収設備とを有し、前記ガスタービンから排出された前記ガスタービン燃焼排気ガスGをガスタービン燃焼排気ガスGrと前記ガスタービン燃焼排気ガスGpとに分け、前記ガスタービン燃焼排気ガスGrを前記ガスタービンの作動媒体としてリサイクルすると共に、前記ガスタービン燃焼排気ガスGpのうちの一部である前記ガスタービン燃焼排気ガスGdは前記二酸化炭素回収設備によって二酸化炭素として回収し、残りのガスタービン燃焼排気ガスGcは前記ガス化設備に前記ガス化原料を搬送する媒体として使用するガス化ガス発電プラントにおいて、前記ガスタービンから排出されてから前記二酸化炭素回収設備に供給される前の前記ガスタービン燃焼排気ガスG,Gp,Gdに前記ガス化ガスの一部又は前記ガス化ガスから抽出されたメタン,一酸化炭素,水素のうちの少なくとも一つを供給して前記ガスタービン燃焼排気ガスG,Gp,Gd中の一酸化窒素を二酸化窒素に酸化させてから、前記汽水分離器若しくは前記二酸化炭素回収設備に備えられている汽水分離器によって得られた凝縮水に前記二酸化窒素を吸収させて回収することを特徴とするCO2回収型ガス化ガス発電プラント。
ガス化原料をガス化剤でガス化するガス化設備と、当該ガス化設備で生成されたガス化ガスを主燃料として酸化剤によって燃焼させるガスタービン燃焼器と、当該ガスタービン燃焼器から排出される燃焼排気ガスによって駆動するガスタービンと、当該ガスタービンから排出されたガスタービン燃焼排気ガスGから取り分けられたガスタービン燃焼排気ガスGpの水分を分離する汽水分離器と、当該汽水分離器を通過した後の前記ガスタービン燃焼排気ガスGpのうちの一部のガスタービン燃焼排気ガスGdを二酸化炭素として回収する二酸化炭素回収設備とを有し、前記ガスタービンから排出された前記ガスタービン燃焼排気ガスGをガスタービン燃焼排気ガスGrと前記ガスタービン燃焼排気ガスGpとに分け、前記ガスタービン燃焼排気ガスGrを前記ガスタービンの作動媒体としてリサイクルすると共に、前記ガスタービン燃焼排気ガスGpのうちの一部である前記ガスタービン燃焼排気ガスGdは前記二酸化炭素回収設備によって二酸化炭素として回収し、残りのガスタービン燃焼排気ガスGcは前記ガス化設備に前記ガス化原料を搬送する媒体として使用するガス化ガス発電プラントにおいて、前記ガスタービンから排出されてから前記二酸化炭素回収設備に供給される前の前記ガスタービン燃焼排気ガスG,Gp,Gdを触媒若しくは活性炭に接触させて前記ガスタービン燃焼排気ガスG,Gp,Gd中の一酸化窒素を二酸化窒素に酸化させてから、前記汽水分離器若しくは前記二酸化炭素回収設備に備えられている汽水分離器によって得られた凝縮水に前記二酸化窒素を吸収させて回収することを特徴とするCO2回収型ガス化ガス発電プラント。
ガス化原料をガス化剤でガス化するガス化設備と、当該ガス化設備で生成されたガス化ガスを主燃料として酸化剤によって燃焼させるガスタービン燃焼器と、当該ガスタービン燃焼器から排出される燃焼排気ガスによって駆動するガスタービンと、当該ガスタービンから排出されたガスタービン燃焼排気ガスGから取り分けられたガスタービン燃焼排気ガスGpの水分を分離する汽水分離器と、当該汽水分離器を通過した後の前記ガスタービン燃焼排気ガスGpのうちの一部のガスタービン燃焼排気ガスGdを二酸化炭素として回収する二酸化炭素回収設備とを有し、前記ガスタービンから排出された前記ガスタービン燃焼排気ガスGをガスタービン燃焼排気ガスGrと前記ガスタービン燃焼排気ガスGpとに分け、前記ガスタービン燃焼排気ガスGrを前記ガスタービンの作動媒体としてリサイクルすると共に、前記ガスタービン燃焼排気ガスGpのうちの一部である前記ガスタービン燃焼排気ガスGdは前記二酸化炭素回収設備によって二酸化炭素として回収し、残りのガスタービン燃焼排気ガスGcは前記ガス化設備に前記ガス化原料を搬送する媒体として使用するガス化ガス発電プラントにおいて、前記ガスタービンから排出されてから前記二酸化炭素回収設備に供給される前の前記ガスタービン燃焼排気ガスG,Gp,Gdをマンガン酸素酸液若しくは過酸化水素若しくは過酸化水素水中に吹き込んで前記ガスタービン燃焼排気ガスG,Gp,Gd中の一酸化窒素を二酸化窒素に酸化させてから、前記汽水分離器若しくは前記二酸化炭素回収設備に備えられている汽水分離器によって得られた凝縮水に前記二酸化窒素を吸収させて回収することを特徴とするCO2回収型ガス化ガス発電プラント。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1から
図7に、本発明のCO
2回収型ガス化ガス発電プラントの実施形態の一例を示す。なお、本実施形態では、本発明を
図1に全体構成を示す、セミクローズドサイクルガスタービンを含むCO
2回収型IGCCプラントに適用した場合を例に挙げて説明する。
【0016】
(プラントの全体構成及び本発明に纏わる構成)
本実施形態のガス化ガス発電プラントは、ガス化原料としての石炭Cをガス化剤としての酸素O
2でガス化するガス化設備としてのガス化炉2と、当該ガス化炉2で生成された石炭ガス化ガスCG1を精製するガス精製設備3と、当該ガス精製設備3で精製された石炭ガス化ガスCG2を主燃料として酸素O
2を主成分とする酸化剤によって燃焼させるガスタービン燃焼器5と、当該ガスタービン燃焼器5から排出される燃焼排気ガスFGによって駆動するガスタービン6と、当該ガスタービン6に結合されて電力を出力する発電機9Aと、ガスタービン6から排出されたガスタービン燃焼排気ガスGから取り分けられたガスタービン燃焼排気ガスGpの水分を分離する水洗塔・汽水分離器14,冷却器・汽水分離器15と、これら水洗塔・汽水分離器14,冷却器・汽水分離器15を通過した後のガスタービン燃焼排気ガスGpのうちの一部のガスタービン燃焼排気ガスGdを二酸化炭素として回収する二酸化炭素回収設備12とを有する。
【0017】
そして、このガス化ガス発電プラントは、ガスタービン燃焼器5においてCO
2添加O
2吹き石炭ガス化ガス燃料をO
2によって量論比燃焼させ、これにより得られた燃焼排気ガスFGによって駆動するガスタービン6から排出されたガスタービン燃焼排気ガスGを、当該ガスGから取り分けたガスタービン燃焼排気ガスGpと残りのガスタービン燃焼排気ガスGrとに分け、一部が取り分けられた残りのガスタービン燃焼排気ガスGrをガスタービン6の作動媒体としてリサイクルするようにしてガスタービン燃焼器5に供給し燃焼温度を調整して燃焼排気ガスFGとしてガスタービン6に導入し、取り分けられた一部のガスタービン燃焼排気ガスGpのうちの更に一部(ガスタービン燃焼排気ガスGd)は二酸化炭素回収設備12によってCO
2として回収すると共に残り(ガスタービン燃焼排気ガスGc)はガス化炉2へのガス化原料搬送用媒体として使用し、セミクローズドサイクルを構成する。
【0018】
すなわち、本実施形態のガス化ガス発電プラントにおけるセミクローズドサイクルガスタービンは、CO
2とH
2Oとを主成分とする燃焼排気ガスFGを作動媒体とするガスタービン燃焼を実現することにより、CO
2回収に伴うプラント熱効率の低下を抑制する石炭ガス化ガス発電を実現する。
【0019】
本実施形態のガス化ガス発電プラントは、さらに、ガスタービン6から排出される高温の燃焼排気ガスGの熱を利用して水蒸気STを発生させる排熱回収ボイラ7と、当該排熱回収ボイラ7で発生した水蒸気STによって駆動する蒸気タービン10と、当該蒸気タービン10に結合されて電力を出力する発電機9Bとを含み、すなわち、IGCCプラントとして構成されている。
【0020】
なお、
図1において、符号8はリサイクルされるガスタービン燃焼排気ガスGrを昇圧する圧縮機、符号CDは二酸化炭素回収設備12によって回収されたCO
2、符号FWは排熱回収ボイラ7に供給される給水、符号HGは圧縮機8による圧縮後のリサイクル排気ガス(Gr)をそれぞれ表す。
【0021】
また、排熱回収ボイラ7を通過したガスタービン燃焼排気ガスGの一部(燃焼排気ガスGp)を二酸化炭素回収設備12やガス化炉2に供給するライン上に、燃焼排気ガスGpを冷却すると共にハロゲンなどを除去するための水洗塔・汽水分離器14、圧縮機13B、冷却器・汽水分離器15、圧縮機13Cが適宜設けられ、また、燃焼排気ガスGp中の水銀を除去する処理16が適宜行われる。
【0022】
なお、排熱回収ボイラ7を通過した燃焼排気ガスG(そしてこれから分割されて二酸化炭素回収設備12やガス化炉2に供給されるために水洗塔・汽水分離器14に案内される燃焼排気ガスGp)はCO
2とH
2Oとが大部分を占め、水洗塔・汽水分離器14や冷却器・汽水分離器15などを通過して処理されることにより、H
2Oが分離してCO
2が大部分(概ね95%以上)を占めると共に数%のO
2が混入している状態になる。
【0023】
ここで、本発明のベースとなる上述のCO
2回収型IGCCプラントの個々の設備・装置やそれらを連系させて構成されたシステム自体は周知の技術であるので(例えば、前掲の非特許文献1,特開平04-244504,特開平06-288262,特開2002-61517,特開2002-188457,特開2002-235556などを参照)、本発明に関連する構成を中心に以下に説明し、その他の詳細についてはここでは省略する。
【0024】
ガス化炉2では、ガス化剤としての酸素O
2を供給することによってガス化原料としての石炭Cをガス化して石炭ガス化ガスCG1を発生させ、ガス精製装置3によって脱塵・脱硫してガスタービン燃焼器5に供給する石炭ガス化ガスCG2を生成する。ガス化炉2の負荷が上昇して所定以上の品位の石炭ガス化ガスCG2が生成されるようになると、これをガスタービン燃焼器5に供給する。
【0025】
なお、本発明におけるガス化原料は、石炭Cに限定されるものではなく、例えば石油,バイオマス,廃棄物などでも良い。また、本発明におけるガス化剤は、酸素O
2に限定されるものではなく、例えば空気,酸素富化空気などでも良い。
【0026】
ガスタービン燃焼器5は、ガスタービン燃焼排気ガスGをリサイクルした燃焼排気ガスGr中で、酸素O
2の供給を受けながら石炭ガス化ガスCG2を酸素燃焼させ、石炭ガス化ガス・O
2量論比燃焼を行う。
【0027】
ガスタービン6はガスタービン燃焼器5から排出される燃焼排気ガスFGを作動媒体として駆動し、これによって発電機9Aにおいて発電が行われる。
【0028】
ガスタービン6から排出される高温の燃焼排気ガスGは、排熱回収ボイラ7で給水FWに熱を受け渡して水蒸気STを発生させる。当該水蒸気STは蒸気タービン10に案内されて当該蒸気タービン10を駆動し、これによって発電機9Bにおいて発電が行われる。
【0029】
排熱回収ボイラ7を通過したガスタービン燃焼排気ガスGは、排ガスダンパ18の開度を調整することにより、圧縮機8に案内される燃焼排気ガスGrと水洗塔・汽水分離器14に案内される燃焼排気ガスGpとに分割される。
【0030】
圧縮機8に案内された燃焼排気ガスGrは圧縮されて高圧排気ガスHGとしてガスタービン燃焼器5に供給される。すなわち、排熱回収ボイラ7を通過してから圧縮機8に案内される燃焼排気ガスGrはリサイクル排気ガスである。
【0031】
一方、水洗塔・汽水分離器14に案内された燃焼排気ガスGpは、水洗塔・汽水分離器14→圧縮機13B→水銀除去処理16→冷却器・汽水分離器15→圧縮機13Cを経て、水銀やハロゲンなどを除去した後、流量コントロールバルブ19の開度調整などにより、貯留を目的に系外に排出されるCO
2を主成分とする燃焼排気ガスGdと、ガス化炉2へのガス化原料搬送用媒体として使用されるCO
2を主成分とする燃焼排気ガスGcとに分割される。
【0032】
CO
2回収・系外排出対象の燃焼排気ガスGdは、二酸化炭素回収設備12に案内されてCO
2が回収された後、煙突(図示省略)から系外に排出される。なお、周知の技術であるのでここでは詳細については省略するが、二酸化炭素回収設備12は複数の圧縮機と複数の汽水分離器とが備えられこれらを含むものとして構成される。
【0033】
一方、ガス化原料搬送用媒体としての燃焼排気ガスGcは、ガス化原料としての石炭Cをガス化炉2に搬送するためのガス化原料搬送用ガスとしてガス化炉2へのガス化原料供給ライン4に供給される。このガス化原料搬送用排気ガスGcはガス化原料と共にガス化炉2に投入されてガス化剤の一部になる。
【0034】
なお、排ガスダンパ18によるガスタービン燃焼排気ガスGのリサイクル排気ガスGrと他の燃焼排気ガスGpとへの分割の割合や、流量コントロールバルブ19による前記他の燃焼排気ガスGpのCO
2回収・系外排出対象排気ガスGdとガス化原料搬送用排気ガスGcとへの分割の割合は、CO
2回収型IGCCプラント全体としての設計条件や仕様などに基づいて適宜設定されるものであって特定の割合に限定されるものではない。具体的には例えば、CO
2回収・系外排出対象排気ガスGdとガス化原料搬送用排気ガスGcとの分割の割合が9:1で、最終的に、ガス化原料搬送用排気ガスGcとして、ガスタービン燃焼排気ガスG全体のおよそ1〜2%程度が使用される。
【0035】
ここで、例えば本実施形態のような排ガス循環によるセミクローズドサイクルのガス化ガス発電プラントでは、ガス化炉2で生成され排出される石炭ガス化ガスCG1に、ガス化の過程で石炭中の窒素化合物に起因して生成されるアンモニア(NH
3)が数百〜1万〔ppmv〕含まれることが予想される。
【0036】
そして、ガス精製装置3による石炭ガス化ガスCG1の精製に乾式法を採用した場合にはNH
3は除去されずにガスタービン燃焼器5にそのまま供給され、燃焼過程でフュエルNOxを生成し、しかも燃焼排気ガスG(Gr)のリサイクル循環によってフュエルNOx濃度が増加する。このため、ガス化ガス発電プラントとしての効率的な運転を維持したり、有害物質の排出を抑制するためには、燃焼排気ガスG中のNO濃度を低減させるように制御する必要がある。
【0037】
そこで、本発明のCO
2回収型ガス化ガス発電プラントは、ガスタービン6から排出されてから二酸化炭素回収設備12に供給される前のガスタービン燃焼排気ガスG,Gp,Gdにメタン(CH
4)ガス,一酸化炭素(CO)ガス,水素(H
2)ガス,オゾン(O
3)ガスのうちの少なくとも一つを供給してガスタービン燃焼排気ガスG,Gp,Gd中の一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO
2)に酸化させてから、水洗塔・汽水分離器14,冷却器・汽水分離器15若しくは二酸化炭素回収設備12に備えられている汽水分離器によって得られた凝縮水に二酸化窒素(NO
2)を吸収させて回収するようにしている。
【0038】
この場合、ガス化炉2で生成されたガス化ガスCG(即ちCG1,CG2)にはメタン(CH
4),一酸化炭素(CO),水素(H
2)が含まれているので、ガスタービン6から排出されてから二酸化炭素回収設備12に供給される前のガスタービン燃焼排気ガスG,Gp,Gdに、ガス化炉2で生成されたガス化ガスCG(特に、ガス精製設備3で精製されたガス化ガスCG2は生成されている点において好ましい)の一部又はガス化ガスCGから抽出されたメタン(CH
4)のガス,一酸化炭素(CO)のガス,水素(H
2)のガスのうちの少なくとも一つを供給してガスタービン燃焼排気ガスG,Gp,Gd中の一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO
2)に酸化させてから、水洗塔・汽水分離器14,冷却器・汽水分離器15若しくは二酸化炭素回収設備12に備えられている汽水分離器によって得られた凝縮水に二酸化窒素(NO
2)を吸収させて回収するようにしても良い。
【0039】
なお、本発明では、ガスタービン燃焼排気ガス中における以下の素反応を促進してNOをNO
2に酸化させるようにしている。
NO+NCO = CN+NO
2
NO+HO
2 = NO
2+OH
NO+OH = NO
2+H
NO+O
2 = NO
2+O
NO+O+M = NO
2+M
【0040】
なお、ガス化ガスからのCH
4やCOやCO
2やH
2の抽出自体は周知の技術であるのでここでは詳細については省略するが、具体的には例えば、深冷分離法や物理吸着法や化学吸収法や水素分離膜を用いる方法などを利用して抽出することができる。これらの方法はいずれも周知の技術であるのでここでは各々について詳細については省略するが、例えば深冷分離法は、ガスを圧縮液化し蒸留によって他の不純物を除去してから水素や一酸化炭素を選択的に分離・回収する手法である。また、水素分離膜を用いる方法は、水素だけを透す水素透過膜を利用して水素を分離する方法である。この水素分離膜を用いる方法をガス化ガスCG2に適用した場合には、水素を抽出することができ、一方で、残ったガスは一酸化炭素が高いガスになる。
【0041】
セミクローズドサイクルガスタービンを含むCO
2回収型IGCCプラントでは、二酸化炭素回収設備12による燃焼排気ガスGp中のCO
2の回収動力を低減させるため、燃焼排気ガスGp中の水分を汽水分離によって取り除き、純粋なCO
2(純度99%程度)に予めしてからCO
2の回収を行うようにしている。
【0042】
本発明によれば、ガスタービン燃焼排気ガスGp中のNOをNO
2に酸化させた上で、上記のCO
2の回収に関連して行われる汽水分離器14,15によるガスタービン燃焼排気ガスGpの汽水分離によって得られる凝縮水或いは二酸化炭素回収設備12によるガスタービン燃焼排気ガスGpからの二酸化炭素の回収の際に得られる凝縮水にNOxを吸収させて回収させることにより、燃焼排気ガスGp中の水分とNOxとが同時に回収される。なお、通常は、ガスタービン燃焼排気ガスGp中に30vol%程度のH
2Oが存在する。
【0043】
ここで、燃焼排気ガスFG(そして、ガスタービン6から排出されたガスタービン燃焼排気ガスG,Gp)中のO
2濃度が高い場合には、ガスタービン燃焼排気ガスGpをそのままガス化原料搬送用排気ガスGcとして使用すると、搬送中にガス化原料(石炭C)が燃焼反応・酸化反応などを起こしてしまうという問題がある。しかしながら、本発明によれば、NO→NO
2への酸化に燃焼排気ガスFG(G,Gp)中のO
2が使われるので、ガス化炉2へのガス化原料供給ライン4に供給する前に、ガス化原料搬送用排気ガスGc中の残留O
2濃度をガス化原料(石炭C)が搬送中に燃焼反応や酸化反応などを起こさない程度まで低減させるという作用効果も期待される。同様に、供給するCH
4,CO,H
2,O
3,COとH
2との混合ガス,ガス化ガス,又は,これらの混合ガスは燃焼排気ガスFG中のO
2によって酸化され、この酸化によって発生する反応熱は排熱回収ボイラで回収することにより、発電プラントの出力を増大させる効果も有する。
【0044】
(数値解析)
以下に、燃焼排気ガスに微量の燃料成分(CH
4,CO,H
2,COとH
2との混合ガス、のうちの一つ)を混合して燃焼排気ガス中のNOをNO
2に酸化させるプロセス(言い換えると、NO
2成分の生成挙動)について、反応過程を考慮する反応動力学に基づく数値解析の結果を示して説明する。
【0045】
数値解析には、MillarとBowmanとによって提案された素反応スキームを使用する(Miller,J.A., and Bowman,C.T.,“Mechanism and modeling of nitrogen chemistry in combustion”, Prog. Energy Combust. Sci., Vol.15, pp.287-338, 1989年 を参照)。
【0046】
前記文献の素反応スキームは、248式の素反応からなり、考慮されている化学種は51成分である。なお、素反応スキームは様々提案されているが、本願発明者により、ガス化ガス中のNH
3とNOとの反応について(Hasegawa,T.他,“Study of Ammonia Removal from Coal Gasified Fuel”, Combustion and Flame, Vol.114, pp.246-258, 1998年)、また、IGCC用ガスタービン燃焼器のNOx成分の生成特性について(Nakata T., Sato M., and Hasegawa T.,“Reaction Kinetics of Fuel NOx Formation for Gas Turbine conditions”, Trans. ASME, J. Eng. Gas Turbines Power, Vol.120, pp.474-480, 1998年)、一定の条件の下で解析結果と実験結果とが一致することが確認されている。
【0047】
熱力学データはJANAFの熱力学物性値を使用し、不明の物性値についてはGibbsの標準生成エネルギーと化学平衡定数との関係から導出する。すなわち、51成分の化学種が含まれる化学反応式系から、反応時間に対する各化学種濃度を求める微分方程式が51式作成される。この51式の非線形微分方程式系をGear法を用いて解くことにより、任意の反応時間後の各化学種濃度が求められる。また、反応過程において、全ての化学種は均一に混合されているものとし、拡散・混合過程は考慮せず、反応は一定温度で進行するものとする。
【0048】
数値解析は、燃焼排気ガスの組成を一定とし、表1に示す圧力条件(即ち、0.11〔MPa〕)のもとで燃焼排気ガス中に微量の燃料(CH
4,CO,H
2,COとH
2との混合ガス、のうちの一つ)を混合した場合について、反応動力学に基づく数値解析によって素反応を構成する化学種51成分の反応過程を計算する。
【0049】
燃料の供給量は、燃焼排気ガス中に残留するCO及びH
2を含め、燃焼排気ガス中に残留する微量のO
2成分を所定の濃度になるまで消費するのに必要な分量のCH
4を追加供給する。解析条件例を表1に示す。表1には、追加供給燃料としてCH
4を供給した場合のガス組成の例を示す。なお、反応温度については、反応温度がNOのNO
2への酸化特性に及ぼす影響を検討するため、50〜1000〔℃〕の範囲で変化させるようにしている。
【0051】
図2は、表1に示す解析条件例を用いた反応動力学に基づく数値解析によって反応過程を計算し、51成分のうちの主な化学種の時間変化を示している。温度条件は300〔℃〕、圧力条件は0.11〔MPa〕で概ね大気圧としている。
図2に示す結果から、反応時間の経過に伴って混合ガス中のNO及びOH成分が減少し、NO
2成分が逆に増加しており、反応時間0.03秒でNOの約95%がNO
2に酸化することが確認される。また、反応時間0.1秒以上でNOのほぼ100%がNO
2に酸化することが確認される。
【0052】
図3〜
図6は、燃焼排気ガス中に微量の燃料(CH
4,CO,H
2,COとH
2との混合ガスのうちの一つ)を混合(供給)したガスを対象に、NO
2成分の生成挙動に及ぼす反応温度の影響についての数値解析結果をそれぞれの燃料成分毎に比較して示している。なお、
図3〜
図6の縦軸はNOからNO
2への転換率で示している。
【0053】
数値解析では、燃焼排気ガスの組成を一定として、表1に示すCH
4を混合(供給)或いは表1におけるCH
4の代わりにCO,H
2,COとH
2との混合ガスのうちのいずれかを混合(供給)し、燃料の混合量は燃焼排気ガス中のCO及びH
2成分を含めて燃焼排気ガス中の微量のO
2成分が酸化するのに必要となる燃料成分量となるように、それぞれの燃料種の場合で設定している。
【0054】
図3は、燃焼排気ガスにCH
4を供給した場合(即ち、表1の通り)で、反応温度を50〜1000〔℃〕の範囲で変化させた場合のNO
2成分の生成挙動を示している(
図3には、分かり易さなどを考慮して、100,500,600,1000〔℃〕の場合の結果のみを示している)。いずれの反応温度においても、NOがNO
2に酸化することが確認される。ただし、600℃以上の高温条件では、酸化によって生成されたNO
2が反応時間の経過に伴ってNOに分解し、NO
2が減少することが確認される。すなわち、特定の反応時間でNO
2への酸化反応を制御する必要があることが知見される。また、反応温度が高くなるほど、NO
2になる酸化量のピーク値も減少することが確認される。
【0055】
一方で、500℃以下の低温条件の下では、反応温度の低下に伴って、NO
2への酸化に要する反応時間は僅かに長くなるものの、NOからNO
2への酸化率は高くなる傾向を示しており、時間が経過してもNOに分解することなく安定してNO
2の状態を維持することが確認される。
【0056】
以上より、実プラントでの運用を考慮して仮に1秒程度の反応時間を設定した場合、反応温度700℃以下とすることで燃焼排気ガス中のNOの95%以上がNO
2に酸化し、また、反応温度100℃以下とすることで酸化率が100%になることが確認される。
【0057】
図4は、CH
4の代わりにCOを供給した場合の数値解析結果を示している(この数値解析でも反応温度を50〜1000〔℃〕の範囲で変化させている。ただし、
図4には、分かり易さなどを考慮して、100,300,900,1000〔℃〕の場合の結果のみを示している)。NO
2成分の生成挙動に及ぼす反応温度の影響については、CH
4の場合と同様の傾向を示すものの、全体として、NOのNO
2への酸化の制御が難しくなることが確認される。すなわち、NOをNO
2に酸化するには、700℃以上の反応温度では0.1秒以下の反応時間で制御する必要があり、300℃以下の温度条件でも、100℃レベルの低温条件において反応時間1秒程度でNO
2への酸化率が95%程度になることが確認される。なお、反応温度350℃〜700℃の範囲ではNO
2成分量の変化は起きない。
【0058】
図5は、CH
4の代わりにH
2を供給した場合の数値解析結果を示している(この数値解析でも反応温度を50〜1000〔℃〕の範囲で変化させている。ただし、
図5には、分かり易さなどを考慮して、100,300,900,1000〔℃〕の場合の結果のみを示している)。NO
2成分の生成挙動に及ぼす反応温度の影響については、
図4に示すCOの場合と概ね同様の傾向を示すことが確認される。
【0059】
図6は、CH
4の代わりにCOとH
2との混合ガスを供給した場合の数値解析結果を示している(この数値解析でも反応温度を50〜1000〔℃〕の範囲で変化させている。ただし、
図6には、分かり易さなどを考慮して、100,300,1000〔℃〕の場合の結果のみを示している)。CO=74%,H
2=26%の組成割合でCOとH
2との混合ガスを供給する場合では、NO
2成分の生成挙動に及ぼす反応温度の影響については、
図4に示すCOや
図5に示すH
2の場合と概ね同様の傾向を示すことが確認される。
【0060】
また、
図7は、「NO→NO
2」の転換率が90%を示す反応時間に及ぼす供給ガス種類の影響を示している。横軸は供給ガス(CH
4+CO+H
2)中のCH
4の割合を示している。なお、供給ガスのうち、CH
4以外のCOとH
2との比率は一定(具体的には、CO:H
2=74:26)としている。供給ガス中のCH
4濃度が上昇するに伴って転換率90%を示す反応時間が短くなり、反応が早く行われていることが確認される。
【0061】
また、上述の数値解析においては、燃焼排気ガス中に残留する微量のO
2成分を所定の濃度になるまで消費するのに必要な分量を考慮してCH
4,CO,H
2,COとH
2との混合ガスを供給するようにし、そのような条件設定の下でNOのNO
2への酸化が十分に行われ得ることが確認される。このことから、CH
4,CO,H
2,COとH
2との混合ガスを供給してNOのNO
2への酸化が行われ、さらに、O
2濃度の調整(低減)も同時に行われることが確認される。なお、燃焼排気ガス中に残留するO
2成分の所定の濃度とは、具体的には例えば、ガス化原料搬送用排気ガスGc中のO
2濃度が0〜0.5〔vol%〕程度であることをいう。
【0062】
上述の数値解析の結果、特に
図3〜
図6に示す結果から、反応温度(即ち、燃焼排気ガスの温度)が1000〔℃〕程度のように高温である箇所においてNO酸化用燃料成分を供給する場合には反応時間(言い換えると、NO酸化用燃料成分が供給されてからの燃焼排気ガスの滞留時間・通過時間)を2〜3〔ms〕とすることにより、NOのNO
2への酸化について高い転換率を実現することができる。
【0063】
また、特に
図7に示す結果から、CH
4,CO,H
2を供給する場合には、これらのうちCH
4濃度が高いほど反応時間を短くすることができる。具体的には例えば、NOの90%をNO
2に酸化させるためには、COとH
2との混合ガスを供給する場合は反応時間を240〔ms〕とし、或いは、CH
4のみを供給する場合は反応時間を30〔ms〕とする。
【0064】
なお、反応時間の調整は、配管中などにおける燃焼排気ガスの滞留時間・通過時間を考慮してNO酸化用燃料成分の供給位置を選択することによって行う。なお、既存の配管等を前提にした滞留時間・通過時間では十分な滞留時間・通過時間(即ち、反応時間)を確保することができない場合には、例えば、配管を長くしたり、配管の断面を拡張したりすることにより、滞留時間・通過時間を強制的に長くすることが考えられる。
【0065】
(NOを酸化させるための燃料の供給場所)
ここで、ガスタービン燃焼排気ガスに対してNO酸化用燃料成分(具体的には、CH
4,CO,H
2,O
3,COとH
2との混合ガス、ガス化ガス,これらの混合ガスのうちのいずれか。以下同じ)を供給する地点Sとしては、ガスタービン6の排気出口から排熱回収ボイラ7を通過して排ガスダンパ18に至る区間Saのどこか(即ち、ガスタービン燃焼排気ガスGに対して供給する)、排ガスダンパ18によってリサイクル排気ガスGrと分割された後の水洗塔・汽水分離器14への案内ラインSb(即ち、燃焼排気ガスGpに対して供給する),水洗塔・汽水分離器14の出口から圧縮機13B及び水銀除去処理16を通過して冷却器・汽水分離器15の入口に至る区間Scのどこか(即ち、水洗塔・汽水分離器14を通過した後の燃焼排気ガスGpに対して供給する)、冷却器・汽水分離器15の出口から圧縮機13Cを通過して流量コントロールバルブ19によってCO
2回収・系外排出排気ガスGdとガス化原料搬送用排気ガスGcとに分割されるまでの区間Sdのどこか(即ち、冷却器・汽水分離器15を通過した後の燃焼排気ガスGpに対して供給する),又は、流量コントロールバルブ19から二酸化炭素回収設備12の入口までの案内ラインSe(即ち、CO
2回収・系外排出排気ガスGdに対して供給する)の5カ所が考えられる。
【0066】
ガスタービン6の排気出口から排ガスダンパ18までの区間Saのどこかで供給する場合、すなわち、ガスタービン燃焼排気ガスGに対して供給する場合には、既存のガス化ガス発電プラントを参考にすると、1300℃〜1500℃級ガスタービンであればガスタービン燃焼排気ガスGの温度は680〜770〔℃〕程度になっており(例えば前掲の非特許文献1を参照)、また、排ガスダンパ18によって分離される地点では100℃以下になっており、非常に高い温度から100℃以下の温度まで任意の反応温度を確保することができる。また、ガスタービン6の排気出口から排ガスダンパ18までの区間で反応時間として数秒程度を確保することができる。したがって、ガスタービン燃焼排気ガスG内のNO成分をNO
2に酸化することが可能である。
【0067】
また、煙道に隔壁を設けて二分割し、排ガスダンパ18をガスタービン6の出口付近に設けるようにすることで、リサイクル排気ガスGrとCO
2回収・系外排出排気ガスGdとに分割することができる。この場合、燃焼排気ガス中のNO成分のNO
2への酸化用に供給するNO酸化用燃料成分の量を低減することが可能になる。
【0068】
排ガスダンパ18によってリサイクル排気ガスGrと分割された後の水洗塔・汽水分離器14への案内ラインSbで供給する場合、すなわち、燃焼排気ガスGpに対して供給する場合には、燃焼排気ガスGpはガスタービン6の排気出口におけるガスタービン燃焼排気ガスGと比べてガス温度は低く100〔℃〕程度で、排気ガス量は5分の1以下になっている。したがって、分解すべきNO成分の量が少ないので、煙道を二分割するなどの付帯設備を設けること無く供給するNO酸化用燃料成分の供給量を少なくすることができる利点がある。この場合にはさらに、既設の設備に追設し易いなどの利点もある。
【0069】
水洗塔・汽水分離器14の出口から冷却器・汽水分離器15の入口までの区間Scのどこかで供給する場合、すなわち、水洗塔・汽水分離器14を通過した後の燃焼排気ガスGpに対して供給する場合には、燃焼排気ガスGp中のH
2Oの一部は汽水分離によって分離されており、排気ガス量は減少している。また、圧縮機13Bによって加圧されるために燃焼排気ガスGpの体積が更に小さくなっており、したがって、処理する排気ガス量が少なく、また、一部のNO
2は水洗塔・汽水分離器14において水分に溶解して除去されており、NO成分の酸化反応を抑制するNO
2成分の量が少ないので、NO酸化用燃料成分の供給量を少なくすることができる利点がある。この場合にはさらに、既設の設備に追設し易いなどの利点もある。
【0070】
冷却器・汽水分離器15の出口から流量コントロールバルブ19までの区間Sdのどこかで供給する場合、すなわち、冷却器・汽水分離器15を通過した後の燃焼排気ガスGpに対して供給する場合には、燃焼排気ガスGp中のH
2Oのほとんどが二回の汽水分離によって分離されており、排気ガス量は減少している。また、圧縮機13B及び圧縮機13Cによって加圧されるために燃焼排気ガスGpの体積が更に小さくなっており、したがって、処理する排気ガス量が少なく、また、一部のNO
2は水洗塔・汽水分離器14及び冷却器・汽水分離器15において水分に溶解して除去されており、NO成分の酸化反応を抑制するNO
2成分の量が少ないので、NO酸化用燃料成分の供給量を少なくすることができる利点がある。この場合にはさらに、既設の設備に追設し易いなどの利点もある。
【0071】
流量コントロールバルブ19から二酸化炭素回収設備12の入口までの案内ラインSeで供給する場合、すなわち、CO
2回収・系外排出排気ガスGdに対して供給する場合には、排気ガス成分中のH
2O成分量が少なくなっているものの、圧縮機13B及び圧縮機13C、水洗塔・汽水分離器14及び冷却器・汽水分離器15を経て処理するべき排気ガス量が最も少なくなっており、また、一部のNO
2は汽水分離器14,15において水分に溶解して除去されており、NO成分の酸化反応を抑制するNO
2成分の量が少ないので、NO酸化用燃料成分の供給量を少なくすることができる利点がある。この場合にはさらに、既設の設備に追設し易いなどの利点もある。
【0072】
上述のように、ガスタービン6の排気出口から二酸化炭素回収設備12の入口までの排気ガス案内ライン上であって、排気ガス成分や温度更には供給するNO酸化用燃料成分に応じて適当な位置で供給することによって、燃焼排気ガス中のNOをNO
2に転換し、汽水分離(CO
2の回収における汽水分離を含む)によってH
2Oに溶解して分離除去することができる。また、汽水分離器が複数ある場合には、排気ガス成分や温度条件及び供給するNO酸化用燃料成分に応じて供給位置を複数設けるなどの調整によって供給するNO酸化用燃料成分の量も少なくて済み、さらに、石炭搬送用の排気ガスGc中のO
2成分の低減も同時に実現できるので、ガス化ガス発電プラントの運転条件や熱効率等の仕様・性能に与える影響が小さい点で好ましい。
【0073】
前述の数値解析の結果や従来の観測結果などを踏まえると、NO酸化用燃料成分としてCH
4を供給する場合には、反応温度が400〜800〔℃〕程度且つ反応時間が数〜10〔ms〕以上で、或いは、反応温度が50〜400〔℃〕程度且つ反応時間が10〔ms〕以上でNOの90%以上がNO
2に酸化するので、ガスタービン燃焼排気ガス温度が前記温度であると共に前記反応時間が確保可能である箇所・区間がNO酸化用燃料成分の供給位置として好ましい。具体的には例えば、ガスタービン6の排気出口から排熱回収ボイラ7を通過して排ガスダンパ18に至る区間Sa内で反応時間が数〜10〔ms〕以上になる箇所がNO酸化用燃料成分の供給位置として好ましい。
【0074】
CH
4を供給する場合には、特に、反応温度が600〔℃〕程度では最適な反応時間は数〔ms〕〜100〔s〕程度であり、また、反応温度が700〔℃〕程度では最適な反応時間は数〔ms〕〜10〔s〕程度であり、これらの条件下においてNOの90%以上がNO
2に酸化するので、ガスタービン6の排気出口から排熱回収ボイラ7を通過して排ガスダンパ18に至る区間Sa内で燃焼排気ガスの温度が600〜700〔℃〕程度になる箇所がNO酸化用燃料成分の供給位置として設定され得る。
【0075】
CH
4を供給する場合には、また、反応温度が200〜500〔℃〕程度の範囲では最適な反応時間は10〔ms〕以上であり、この条件下においてNOの90%以上がNO
2に酸化するので、ガスタービン6の排気出口から排熱回収ボイラ7を通過して排ガスダンパ18に至る区間Sa内で燃焼排気ガスの温度が200〜500〔℃〕程度で反応時間(滞留時間・通過時間)が10〔ms〕以上になる箇所がNO酸化用燃料成分の供給位置として好ましい(ただし、ガスタービン燃焼排気ガスの温度が約300℃以下になるのは、排熱回収ボイラ7の途中から下流(即ち、排ガスダンパ18まで)の区間である)。
【0076】
CH
4を供給する場合には、また、反応温度が50〜100〔℃〕程度の範囲では最適な反応時間は30〔ms〕以上であり、この条件下においてNOの90%以上がNO
2に酸化するので、排熱回収ボイラ7の途中から排ガスダンパ18までの区間(Sa)の他にも案内ラインSb,区間Sc,区間Sd,案内ラインSeのいずれかで燃焼排気ガスの温度が50〜100〔℃〕程度で反応時間(滞留時間・通過時間)が30〔ms〕以上になる箇所がNO酸化用燃料成分の供給位置として好ましい。
【0077】
また、NO酸化用燃料成分としてCO,H
2,COとH
2との混合ガス,ガス化ガスを供給する場合には、反応温度が600〔℃〕程度でNOの90%以上がNO
2に酸化するので、ガスタービン6の排気出口から排熱回収ボイラ7の入口までの区間で燃焼排気ガスの温度が600〔℃〕程度で反応時間(滞留時間・通過時間)が10〔ms〕程度になる箇所がNO酸化用燃料成分の供給位置として好ましい。
【0078】
CO,H
2,COとH
2との混合ガス,ガス化ガスを供給する場合には、また、反応温度が300〔℃〕程度且つ反応時間が1〔s〕程度でNOの約40%がNO
2に酸化し、反応温度が200〔℃〕程度且つ反応時間が1〔s〕程度でNOの約70%がNO
2に酸化するので、排熱回収ボイラ7の途中から排ガスダンパ18までの区間(Sa)で燃焼排気ガスの温度が200〜300〔℃〕程度で反応時間(滞留時間・通過時間)が1〔s〕程度になる箇所がNO酸化用燃料成分の供給位置として好ましい。
【0079】
CO,H
2,COとH
2との混合ガス,ガス化ガスを供給する場合には、また、反応温度が50〜100〔℃〕程度の範囲では、反応時間が100〔ms〕程度でNOの約80%がNO
2に酸化し、反応時間が1〔s〕以上でNOの90%以上がNO
2に酸化するので、排熱回収ボイラ7の途中から排ガスダンパ18までの区間(Sa)の他にも案内ラインSb,区間Sc,区間Sd,案内ラインSeのいずれかで燃焼排気ガスの温度が50〜100〔℃〕程度で反応時間(滞留時間・通過時間)が約100〔ms〕以上になる箇所がNO酸化用燃料成分の供給位置として好ましい。
【0080】
また、CH
4を供給する場合も、CO,H
2,COとH
2との混合ガス,ガス化ガスを供給する場合も、特に、排ガスダンパ18によってリサイクル排気ガスGrと分割された後の水洗塔・汽水分離器14への案内ラインSb(即ち、燃焼排気ガスGpに対して供給する)において供給することにより、
1)供給するNO酸化用燃料成分が燃焼排気ガス中に残留する可能性を最も低減させることができる
2)NOのNO
2への酸化反応を最も長く維持することができる。そして、区間Sc,区間Sd,案内ラインSeに設置される複数の汽水分離器の全てによってNO
2の回収を図ることが可能であり、NO
2の回収率を最も高めることができる
3)ガスタービン燃焼排気ガスGと比べ、リサイクル排気ガスGrと分割された後であるためにガスタービン燃焼排気ガスGpの方が排ガス量が少ないので、具体的には定格温度条件で1/6.6になるので、供給するNO酸化用燃料成分の量も1/6.6に少なくすることができる
という効果が得られる。
【0081】
以上のように構成された本発明のCO
2回収型ガス化ガス発電プラントによれば、一酸化窒素を二酸化窒素に酸化させてから、汽水分離器14,15によって得られた凝縮水に二酸化窒素を吸収させて回収するようにしているので、循環排気ガス中のNO量又はNO
2量の増加を抑制して発電プラントの系外へのNOxの排出を抑制することができ、環境負荷の低減を図ることが可能になる。しかも、発電プラントの系内にもとより組み込まれている汽水分離器14,15によってガスタービン燃焼排気ガスGpから分離された凝縮水を用いるようにしているので、設備の大規模な追加をすること無く発電プラントの系外へのNOxの排出を抑制して環境負荷の低減を図ることが可能になる。
【0082】
さらに、本発明のCO
2回収型ガス化ガス発電プラントによれば、発電プラントの系外へのNOxの排出を抑制するための脱硝設備の設置コスト及び運用コストを削減することができると共に硝酸(HNO
3)は売却することができるので、コスト削減及び売却益の分だけ発電コストを低減させることが可能になる。加えて、供給するCH
4,CO,H
2,COとH
2との混合ガス,ガス化ガス,又はこれらの混合ガスは燃焼排気ガスFG中のO
2によって酸化され、また、燃焼排気ガス中に未燃焼成分であるCO,H
2が含まれる場合には供給するO
3によって酸化され、この酸化によって発生する反応熱は排熱回収ボイラで回収することにより、発電プラントの出力を増大させる効果も有する。
【0083】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるが本発明の実施の形態がこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の実施形態では
図1に全体構成を示す発電プラントに本発明を適用した場合を例に挙げて説明したが、本発明が適用され得る発電プラントは
図1に示すプラントに限定されるものではなく、ガスタービン燃焼器から排出される燃焼排気ガスによって駆動するガスタービンから排出されたガスタービン燃焼排気ガスの一部を希釈剤としてリサイクルすると共に残りの一部からCO
2を回収しつつ系外に排出するものであればどのようなものでも良い。
【0084】
また、上述の実施形態ではNOをNO
2に酸化させるために燃料ガスとしてCH
4,CO,H
2,O
3,COとH
2との混合ガス,ガス化ガス,又はこれらの混合ガスを供給するようにしているが、NOのNO
2への酸化のさせ方は上述のような燃料ガスを供給する方法には限られない。具体的には、触媒や活性炭を用いるようにしても良いし、また、マンガン酸素酸液や過酸化水素若しくは過酸化水素水などを用いるようにしても良い。これらの場合には、触媒や活性炭を格納してこれら触媒・活性炭と排気ガスとを接触させる設備、或いは、マンガン酸素酸液や過酸化水素若しくは過酸化水素水の貯留槽を備えてこれらマンガン酸素酸液・過酸化水素・過酸化水素水中に排気ガスを吹き込む設備を、区間Saのどこか,案内ラインSb,区間Scのどこか,区間Sdのどこか,案内ラインSeのいずれかに設けるようにする。また、これらの場合、触媒としては具体的には例えばプラチナやロジュームでコーティングされた酸化触媒などが用いられ、活性炭としては具体的には例えばヨウ素の酸化物やヨウ素のオキソ酸を吸着した活性炭などが用いられる。