(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1ガス配管を通じて第1のガスを拡散室に通してチャンバ内に供給し、被処理体をプラズマ処理する第1工程と、第2ガス配管を通じて第2のガスを前記拡散室に通してチャンバ内に供給し、被処理体をプラズマ処理する第2工程と、を交互に所定回数繰り返す半導体製造装置のガス供給方法であって、
前記第1ガス配管と前記拡散室は、第1のバルブの開閉により連通を制御し、
前記第2ガス配管と前記拡散室は、第2のバルブの開閉により連通を制御し、
前記第1ガス配管の第1のバルブよりも上流側に接続した第3のバルブの開閉により第1ガス配管内のガスを排出し、
前記第2ガス配管の第2のバルブよりも上流側に接続した第4のバルブの開閉により第2ガス配管内のガスを排出し、
前記第1工程の前に、前記第1のバルブを閉じかつ前記第3のバルブを閉め、前記第1のバルブ及び前記第3のバルブの上流の前記第1のガスにより前記第1ガス配管内の前記第1のガスの圧力を上昇させる第1の加圧工程と、
前記第2工程の前に、前記第2のバルブを閉じかつ前記第4のバルブを閉め、前記第2のバルブ及び前記第4のバルブの上流の前記第2のガスにより前記第2ガス配管内の前記第2のガスの圧力を上昇させる第2の加圧工程と、
排気用配管と前記拡散室は、第5のバルブの開閉により連通を制御し、
前記第1工程の開始及び前記第2工程の開始に応じて前記第5のバルブを開き、前記拡散室内のガスを排気する排気工程と、を含むことを特徴とする半導体製造装置のガス供給方法。
前記排気工程は、前記第1工程及び前記第2工程の開始と同時、開始直前又は開始直後のいずれかのタイミングに前記第5のバルブを開くことを特徴とする請求項1に記載の半導体製造装置のガス供給方法。
前記第1の加圧工程は、直前に実行されている前記第2工程中又は直前に実行された前記第2工程後に実行されることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体製造装置のガス供給方法。
前記第2の加圧工程は、直前に実行されている前記第1工程中又は直前に実行された前記第1工程後に実行されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体製造装置のガス供給方法。
第1ガス配管を通じて第1のガスを拡散室に通してチャンバ内に供給し、被処理体をプラズマ処理する第1工程と、第2ガス配管を通じて第2のガスを前記拡散室に通してチャンバ内に供給し、被処理体をプラズマ処理する第2工程と、を交互に所定回数繰り返す半導体製造装置のガス供給システムであって、
前記第1ガス配管と前記拡散室との連通を開閉により制御する第1のバルブと、
前記第2ガス配管と前記拡散室との連通を開閉により制御する第2のバルブと、
前記第1ガス配管の第1のバルブよりも上流側に接続され、開閉により第1ガス配管内のガスを排出する第3のバルブと、
前記第2ガス配管の第2のバルブよりも上流側に接続され、開閉により第2ガス配管内のガスを排出する第4のバルブと、
前記第1工程の前に、前記第1のバルブを閉じかつ前記第3のバルブを閉め、前記第1のバルブ及び前記第3のバルブの上流の前記第1のガスにより前記第1ガス配管内の前記第1のガスの圧力を上昇させる第1のガス供給機構と、
前記第2工程の前に、前記第2のバルブを閉じかつ前記第4のバルブを閉め、前記第2のバルブ及び前記第4のバルブの上流の前記第2のガスにより前記第2ガス配管内の前記第2のガスの圧力を上昇させる第2のガス供給機構と、
排気用配管と前記拡散室との連通を開閉により制御する第5のバルブと、
前記第1工程の開始及び前記第2工程の開始に応じて前記第5のバルブを開き、前記拡散室内のガスを排気する排気機構と、を含むことを特徴とするガス供給システム。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0023】
<はじめに>
一実施形態に係る堆積工程とエッチング工程を繰り返し行うプラズマ処理について、
図15及び
図16を参照しながら説明する。
図15は、一実施形態に係る堆積工程とエッチング工程を繰り返し行うプラズマ処理によるプラズマ発光強度の一例を示す図である。
図16は、一実施形態に係る堆積工程とエッチング工程を繰り返し行うプラズマ処理のエッチング結果の一例を示す図である。
【0024】
図15に示した堆積工程とエッチング工程を繰り返し行うプラズマ処理の一例では、堆積性ガスがエッチングガスより多く混合されたガスを導入する堆積工程と、エッチングガスが堆積性ガスより多く混合されたガスを導入するエッチング工程とを概ね10秒間隔で繰り返している。また、
図15に示すように、堆積工程とエッチング工程を繰り返し行うプラズマ処理では、堆積工程とエッチング工程の遷移点とプラズマ発光強度の変化点とを意図的にずらすようにして、堆積工程からエッチング工程へと遷移しても、しばらく堆積工程のプラズマ発光強度が維持されるようにプラズマの発生条件が制御される。同様にして、エッチング工程から堆積工程へと遷移しても、しばらくエッチング工程のプラズマ発光強度が維持されるようにプラズマの発生条件が制御される。このようにして、プラズマの過渡状態を意図的に形成した。
【0025】
これに対して、
図16の堆積工程とエッチング工程を繰り返し行うプラズマ処理のエッチング結果を得る工程、及び後述する本実施形態に係る堆積工程とエッチング工程を繰り返し行うプラズマ処理のエッチング結果を得る工程では、堆積工程とエッチング工程との切り替えのタイミングを一致させている。
【0026】
図16に示した堆積工程とエッチング工程を繰り返し行うプラズマ処理のエッチング結果の一例について説明する。本実施形態の堆積工程とエッチング工程を繰り返し行うプラズマ処理におけるプロセス条件は、以下の通りである。
圧力 :250(mTorr)
高周波電力 :プラズマ生成用HF 2500(W)/バイアス用LF 0(W)
堆積主体ガス :SiF
4/O
2=1000/500(sccm)
エッチング主体ガス:Ar/SF
6=640/860(sccm)
各工程時間 :1(min)
以上のプロセス条件に基づき、堆積ガスとエッチングガスとの混合比率を変えてエッチングした結果を示す。
図16(a)は、堆積ガス(成膜用ガス)91%、エッチングガス9%の混合比率で堆積工程とエッチング工程を繰り返し行うプラズマ処理を実行した結果である。膜厚は0.873μmであり、期待通りの厚さの保護膜が形成されている。
【0027】
一方、
図16(b)は、堆積ガス(成膜用ガス)80%、エッチングガス20%の混合比率で堆積工程とエッチング工程を繰り返し行うプラズマ処理を実行した結果である。膜厚は0.446μmであり、堆積ガス比を91%から80%に下げたところ、膜の厚さが約45%低下した。
【0028】
また、顕微鏡写真を見ると、
図16(a)では穴底の形状が良好であるのに対して、
図16(b)では穴底でエッチングが進んでいる。以上から、堆積ガス80%、エッチングガス20%の混合比率で堆積工程とエッチング工程を繰り返し行うプラズマ処理を実行した場合には、膜厚が薄く保護膜として機能していないことがわかる。
【0029】
さらに、堆積ガス80%、エッチングガス20%の混合比率で堆積工程とエッチング工程を繰り返し行うプラズマ処理を実行した場合のエッチングレートは3μm/min以下となり、エッチング性能が悪くなっていることがわかる。
【0030】
以上の考察から、上記2工程の切り替え時間を減らし、各工程のガスが極力混ざり合わないガス切り替え方法が構築できれば、エッチング性能を向上させ、良好なエッチング形状を得ることができる。以下に説明する本発明の一実施形態に係るガス供給システムでは、上記2工程の切り替え時間を減らすために、(1)〜(3)の特徴を有する。
(1)ガス供給源から拡散室内の経路として、堆積主体ガス(堆積性ガスをエッチング性ガスより多く混合した第1のガスに相当)をチャンバ内に供給するための第1のガス供給機構と、エッチング主体ガス(エッチング性ガスを堆積性ガスより多く混合した第2のガスに相当)をチャンバ内に供給するための第2のガス供給機構とを有するガス供給ラインを構成する。このようにガス供給ラインを複数に分け、ガスが混合されるガス拡散室の容積を極力小さくし、各工程間の切り替えの際に前工程で発生する残留ガスの混合を軽減する。
(2)各ガス供給ラインには制御装置により制御されるバルブを設け、バルブの開閉によりガス供給ラインの配管内圧力を制御する。ガスをチャンバ内に供給する前に、バルブを閉じ、ガス供給ラインの配管内圧力を上昇させて、チャンバ圧力との圧力勾配を生じさせる。ガス供給ラインの切り替え時、すなわち、バルブが開かれるときに、圧力勾配によりガスがチャンバ内の拡散室に短時間で移動する。これにより、拡散室内に残留した前工程のガスを拡散室外に押し出す効果も得られる。
(3)さらに、拡散室内に残留した前工程のガスを効率的に入れ替えるため排気ラインを持つ。
【0031】
以上の(1)〜(3)の機構を有する一実施形態に係るガス供給システムによれば、堆積工程とエッチング工程を繰り返し行うプラズマ処理の2工程で使用されるガス同士が切り替え時にほとんど混ざり合わない。これにより、それぞれの工程にて効率よく保護膜の成膜処理及びエッチング処理が実行され、堆積工程での性能及びエッチング工程での性能を改善することができる。また、堆積工程とエッチング工程を繰り返し行うプラズマ処理の周期を短縮することができ、エッチングレート及びレジスト膜に対するシリコン基板の選択比を高め、良好なエッチング形状を得ることができる。以下、本発明の一実施形態に係るガス供給システムについて詳細に説明する。
【0032】
[ガス供給システムの全体構成]
まず、本発明の一実施形態に係るガス供給システムの全体構成について、
図1を参照しながら説明する。
【0033】
本実施形態に係るガス供給システム10は、半導体製造装置30にて使用される。半導体製造装置30は、堆積性ガスをエッチング性ガスより多く混合した堆積主体ガス(第1のガス)を拡散室16aに通してチャンバC内に供給し、シリコン基板Wをプラズマ処理する堆積工程と、エッチング性ガスを堆積性ガスより多く混合したエッチング主体ガス(第2のガス)を拡散室16aに通してチャンバC内に供給し、シリコン基板Wをプラズマ処理するエッチング工程と、を交互に所定回数繰り返すプラズマ処理を実行する。これにより、例えば、載置台102に載置されたシリコン基板Wに所望の深穴が形成される。本実施形態では、堆積主体ガスは、SiF
4ガス及びO
2ガスを含んだ混合ガスである。また、本実施形態では、エッチング主体ガスは、SF
6ガス及びO
2ガスを含んだ混合ガスである。
【0034】
本実施形態に係るガス供給システム10は、ガス調整部115bを有している。ガス調整部115bは、ガス供給源20、半導体製造装置30、制御装置60、排気装置115cに連結されている。
【0035】
ガス調整部115bは、堆積工程用のガス供給ラインとしての第1のガス供給機構F1と、エッチング工程用のガス供給ラインとしての第2のガス供給機構F2とを有している。第1のガス供給機構F1により、堆積工程にて、堆積主体ガスがチャンバC内に供給される。また、第2のガス供給機構F2により、エッチング工程にて、エッチング主体ガスがチャンバC内に供給される。ガス調整部115bは、ガス供給源20から半導体製造装置30に堆積主体ガス及びエッチング主体ガスを所定のタイミングで交互に繰り返し供給する。ガス調整部115bは、第1のガス供給機構F1及び第2のガス供給機構F2の2つのガス供給ラインに加え、ガス排気ラインとしての排気機構F3を有している。
【0036】
第1のガス供給機構F1は、第1のガス供給用配管41、第1のガス導入用配管42及び第1のバルブ11を有している。第1のガス供給用配管41は、ガス供給源20に設けられた流量制御装置(FCS:Flow Control System)21から所定の流量に制御された堆積主体ガスを供給するための配管である。第1のガス供給用配管41には、第3のバルブ13を介して第1のバイパス配管45が連結されている。第1のバイパス配管45は、堆積主体ガスをバイパスさせ、排気させる。第1のバイパス配管45には、オリフィス48が設けられている。オリフィス48により第1のバイパス配管45内のガス流路を絞ることによって、エッチング工程と堆積工程との切り替わりのタイミングに第1のバイパス配管45内の急激な圧力変動を回避する。また、第1のバイパス配管45内の圧力をある程度高くすることによって、後程詳述する第1の加圧工程前後での第1のバイパス配管45内の圧力変動を低減させる。
【0037】
第1のバルブ11が開いているとき堆積工程が実行されている。堆積主体ガスは、第1のガス供給用配管41を通って第1のガス導入用配管42を流れ、チャンバC内のガスシャワーヘッド116に設けられた拡散室16aを介してチャンバC内に導入される。第1のバルブ11が閉じているとき、通常、第3のバルブ13は開に制御され、堆積主体ガスは、第1のバイパス配管45を通って排気装置115cにより排気される。排気装置115cの一例としては、ドライポンプ(Dry Pump)やターボモレキュラーポンプTMP(Turbo Molecular Pump)等が挙げられる。
【0038】
第1の加圧工程は、堆積工程前に堆積主体ガスをバイパスさせるための第1のバイパス配管45に設けられた第3のバルブ13を閉じ、堆積主体ガスをチャンバ内に供給するための第1のガス供給用配管41内に溜めて第1のガス供給用配管41内を加圧する工程である。
【0039】
通常、第1の加圧工程前に第1のガス導入用配管42に設けられた第1のバルブ11は閉じられている。このとき、第2のバルブ12は開き、エッチング工程が実行されている。第1の加圧工程では、第1のバルブ11が閉に制御されている状態で堆積工程前に第3のバルブ13を閉に制御し、ガス供給源20から供給される堆積主体ガスを第1のガス供給用配管41内に溜める。これにより、第1のガス供給用配管41内を加圧する(
図2参照)。その状態で、エッチング工程から堆積工程への切り替えのタイミングに第1のバルブ11が開に制御されたとき、第1のガス供給用配管41内の堆積主体ガスは一気に拡散室16aへと流れる。
【0040】
第2のガス供給機構F2は、第2のガス供給用配管43、第2のガス導入用配管44及び第2のバルブ12を有している。
【0041】
第2のガス供給用配管43は、ガス供給源20に設けられた流量制御装置(FCS)22から所定の流量に制御されたエッチング主体ガスを供給するための配管である。第2のガス供給用配管43には、第4のバルブ14を介して第2のバイパス配管46が連結されている。第2のバイパス配管46は、堆積工程中にエッチング主体ガスをバイパスさせ、排気させる。第2のバイパス配管46には、オリフィス49が設けられている。オリフィス49により第2のバイパス配管46内のガス流路を絞ることによって、エッチング工程と堆積工程との切り替わりのタイミングに第2のバイパス配管46内の急激な圧力変動を回避する。また、第2のバイパス配管46内の圧力をある程度高くすることによって、後程詳述する第2の加圧工程前後での第2のバイパス配管46内の圧力変動を低減させる。
【0042】
第2のバルブ12が開いているときエッチング工程が実行されている。エッチング主体ガスは、第2のガス供給用配管43を通って第2のガス導入用配管44を流れ、拡散室16aを介してチャンバC内に導入される。第2のバルブ12が閉じているとき、通常、第4のバルブ14は開に制御されるため、エッチング主体ガスは、第2のバイパス配管46を通って排気装置115cにより排気される。
【0043】
第2の加圧工程は、エッチング工程前にエッチング主体ガスをバイパスさせるための第2のバイパス配管46に設けられた第4のバルブ14を閉じ、エッチング主体ガスをチャンバ内に供給するための第2のガス供給用配管43内に溜めて第2のガス供給用配管43内を加圧する工程である。
【0044】
通常、第2の加圧工程前に第2のガス導入用配管44に設けられた第2のバルブ12は閉じられている。このとき、第1のバルブ11が開き、堆積工程が実行されている。第2の加圧工程では、第2のバルブ12が閉に制御されている状態でエッチング工程前に第4のバルブ14を閉に制御し、ガス供給源20から供給されるエッチング主体ガスを第2のガス供給用配管43内に溜める。これにより、第2のガス供給用配管43内を加圧する。その状態で、堆積工程からエッチング工程への切り替えのタイミングに第2のバルブ12が開に制御されたとき、第2のガス供給用配管43内のエッチング主体ガスは一気に拡散室16aへと流れる。
【0045】
排気機構F3は、拡散室16aに連通する排気用配管47を有し、排気用配管47には第5のバルブ15が設けられている。排気機構F3の第5のバルブ15は、堆積工程とエッチング工程を繰り返し行うプラズマ処理の各工程の切り替え時に開に制御される。これにより、拡散室16a内に存在する前工程のガスを強制的に排気する(排気工程)。
【0046】
制御装置60は、図示しないCPU等を有し、堆積工程及びエッチング工程の切り替えのタイミングに応じて、ガス供給源20から出力されるガス種及びガス流量の制御及び第1のバルブ11〜第5のバルブ15の開閉の制御を行う。本実施形態に係るガス供給システム10では、制御装置60によりバルブの開閉をコンピュータ制御することができる。なお、半導体製造装置30の具体的構成例については後程
図12を参照して説明する。
【0047】
以上に説明したように、かかる構成のガス供給システム10では、堆積工程とエッチング工程とを交互に繰り返すプラズマ処理に加圧工程と排気工程を追加する。加圧工程では、第3のバルブ13又は第4のバルブ14を堆積工程とエッチング工程との切り替えのタイミングより早く閉じる。これにより、切り替え時まで次工程のガスが第1のガス供給用配管41又は第2のガス供給用配管43内に溜まる。これにより、切り替え時に第1のガス供給用配管41又は第2のガス供給用配管43内に溜まったガスを拡散室16aに向けて高速に流すことができる。排気工程では、切り替え時に排気ラインの第5のバルブ15を開く。これにより、ガスシャワー内に存在する前工程のガスを強制的に排気することができる。このようにして本実施形態では、堆積工程及びエッチング工程の切り替えの際、加圧工程及び排気工程を行うことにより、拡散室16a内のガスを高速に入れ替え、ガスの切り替え時間を短縮することができる。これにより2工程で使用されるガス同士が切り替え時にほとんど混ざり合わないため、高いエッチングレートを維持しつつ選択比を高め、良好なエッチング形状を効率よく形成できる。
【0048】
[ガス供給システムの動作]
次に、本発明の一実施形態に係るガス供給システムの動作について、
図3及び
図4を参照しながら説明する。
図3は、一実施形態に係るガス供給システムを用いた堆積工程とエッチング工程を繰り返し行うプラズマ処理のフローチャートである。
図4は、一実施形態に係るガス供給システムを用いた堆積工程とエッチング工程を繰り返し行うプラズマ処理のシーケンスチャートである。制御装置60は、ROMやRAM等の記憶部に記憶されたレシピに従い、以下のフローチャートに示すガスの切り替えやバルブの開閉を制御する。
【0049】
本実施形態に係る堆積工程とエッチング工程を繰り返し行うプラズマ処理が開始されると、制御装置60は、堆積工程を実行する(ステップS100)。なお、ステップS100の堆積工程の前にエッチング工程が実行されてもよい。この時点は、
図4に「レシピ/オン」として示したタイミングであり、第1のバルブ11は開、第2のバルブ12は閉、第3のバルブ13は閉、第4のバルブ14は開となっている。これにより、堆積主体ガスは、第1のガス供給用配管41を通って第1のガス導入用配管42を流れ、チャンバC内のガスシャワーヘッド116に設けられた拡散室16aを介してチャンバC内に導入される(
図1参照)。
【0050】
また、このタイミングで第5のバルブ15が閉から開へ切り替えられ(ステップS120)、予め定められた排気時間経過後、開から閉へ切り替えられる(ステップS122)。これにより、拡散室16a内に存在する前工程のガスは強制的に排気される(排気工程)。
【0051】
制御装置60は、エッチング工程の実行前(ステップS102)の所定のタイミングに、第4のバルブ14を開から閉へ切り替える(ステップS110:第2の加圧工程)。この時点は、
図4に「切り替え前1」として示したタイミングである。これにより、エッチング工程前に第2のバルブ12が閉に制御されている状態で第4のバルブ14が閉に制御される。これにより、ガス供給源20から供給されるエッチング主体ガスは第2のガス供給用配管43内に溜まり、第2のガス供給用配管43内を加圧する。
【0052】
予め定められた堆積時間経過後、制御装置60は、エッチング工程を実行する(ステップS102)。この時点は、
図4に「切り替え1」として示したタイミングである。これにより、堆積工程からエッチング工程に切り替わる。このとき、第2のバルブ12が閉から開に制御され(ステップS112)、第1のバルブ11が閉に制御される。これにより、堆積主体ガスの供給は停止され、第2のガス供給用配管43内に溜まったエッチング主体ガスは一気に拡散室16aへと流れる。これにより、拡散室16a内のガス雰囲気は、瞬時に堆積主体ガスからエッチング主体ガスへと変わり、ガス切り替えのタイミングを短縮するとともに、前工程のガスと次工程のガスとの混合を極力回避ことができる。
【0053】
更に、「切り替え1」のタイミングには、第5のバルブ15が閉から開へ切り替えられ(ステップS124)、予め定められた排気時間経過後、開から閉へ切り替えられる(ステップS126)。これにより、拡散室16a内に存在する前工程のガス(ここでは、堆積主体ガス)は強制的に排気される。また、「切り替え1」のタイミングには、第3のバルブ13が閉から開に制御される。これにより、第1のガス供給用配管41内の堆積主体ガスは、第1のバイパス配管45から排気される。
【0054】
次に、制御装置60は、堆積工程及びエッチング工程を所定回数実行したかを判定する(ステップS104)。所定回数実行していれば本処理を終了する。所定回数実行していなければ、ステップS100に戻る。その際、制御装置60は、予め定められたエッチング時間経過後、エッチング工程から堆積工程に切り替え、堆積工程を実行するが(ステップS100)、その前に第3のバルブ13を開から閉へ切り替える(ステップS114:第1の加圧工程)。この時点は、
図4に「切り替え前2」のタイミングである。これにより、堆積工程前に第1のバルブ11が閉に制御されている状態で第3のバルブ13が閉に制御される。これにより、ガス供給源20から供給される堆積主体ガスは第1のガス供給用配管41内に溜まり、第1のガス供給用配管41内を加圧する。
【0055】
次に、制御装置60は、堆積工程を実行する(ステップS100)。この時点は、
図4に「切り替え2」として示したタイミングである。これにより、エッチング工程から堆積工程に切り替わる。このとき、第1のバルブ11が閉から開に制御され(ステップS116)、第2のバルブ12が閉に制御される。これにより、エッチング主体ガスの供給は停止され、第1のガス供給用配管41内の堆積主体ガスが一気に拡散室16aへと流れる。これにより、拡散室16a内のガス雰囲気は、瞬時にエッチング主体ガスから堆積主体ガスへと変わり、ガス切り替えのタイミングを短縮するとともに、前工程のガスと次工程のガスとの混合を極力回避ことができる。
【0056】
更に、「切り替え2」のタイミングには、第5のバルブ15が閉から開へ切り替えられ(ステップS120)、予め定められた排気時間経過後、開から閉へ切り替えられる(ステップS122)。これにより、拡散室16a内に存在する前工程のガス(ここでは、エッチング主体ガス)は強制的に排気される。また、「切り替え2」のタイミングには、第4のバルブ14が閉から開に制御される。これにより、第2のガス供給用配管43内のエッチング主体ガスは、第2のバイパス配管46から排気される。
【0057】
以上に説明したように、本実施形態に係るガス供給システム10によれば、堆積工程とエッチング工程を繰り返し行うプラズマ処理の2工程で使用されるガス同士が切り替え時にほとんど混ざり合わない。これにより、各工程にて効率よく保護膜の成膜処理及びエッチング処理が実行され、堆積工程での性能及びエッチング工程での性能を改善することができる。
【0058】
[加圧工程の開始と圧力の変動]
本実施形態に係るガス供給システム10では、2工程のガス切り替え前に加圧工程を設ける。そこで、以下では加圧工程の開始と圧力の変動について説明する。なお、流量制御装置(FCS)22に連結した第2のガス供給機構F2の流路系は、流量制御装置21に連結した第1のガス供給機構F1の流路系と同様である。よって、ここでは、第1のガス供給機構F1の流路系の加圧工程の開始と圧力変動について説明し、第2のガス供給機構F2の流路系についての説明は省略する。また、以下の説明ではモル数を用いて圧力変動を算出する。モル数は、質量/分子量で表され、ガス種によらない表現が可能であるため、異なる混合ガスにおいても統一的に説明することができる。
【0059】
図5に示したように、第3のバルブ13が開のときの第1のガス供給用配管41内のモル数n
1は状態方程式を用いて以下の式により算出される。
n
1=P
1V
1/RT
ここで、第1のガス供給用配管41内の圧力をP
1、体積をV
1とする。
【0060】
流量制御装置21から出力されるガス流量(1000sccm)をQ
1とする。第3のバルブを閉じた加圧工程開始からt秒後の第1のガス供給用配管41内の総モル数n
2は、流量制御装置21から第1のガス供給用配管41内に流入されるガス流量Q
1のモル数に時間tを乗算した値と、第1のガス供給用配管41内に存在していたモル数n
1とを加算した値となる。加圧工程開始からt秒後の第1のガス供給用配管41内の総モル数n
2を次式(1)に示す。
n
2=Q
1/RT×t+P
1V
1/RT・・・(1)
よって、加圧工程開始からt秒後の第1のガス供給用配管41内の圧力P
2は、式(1)及び上記状態方程式(n
1=P
1V
1/RT)を用いて次式(2)のように算出される。
P
2=Q
1/V
1×t+P
1・・・(2)
[切り替えバルブを開いた後の圧力]
次に、ガス切り替え後、拡散室16aの容積A中のガスが入れ替わるために必要なモル数を計算する。算出した必要モル数を加圧工程中に第1のガス供給用配管41内に貯えることができれば、2つの工程の切り替え時に拡散室16a内を瞬時に前工程のガス種から次工程のガス種に切り替えることができる。
【0061】
まず、第1のガス供給用配管41内を流れるガスが粘性流の場合、ハーゲン・ポアズイユの法則が成立する。このときの流量Qは次式で与えられる。
【0062】
Q=(5.236×10
−4/η)×(a
4/l)×P
u(P
u2−P
u1)(mTorr・l/sec)
ただし、P
u=(P
u2+P
u1)/2
ここで、P
u1は管の出口の圧力(mTorr)であり、P
u2は管の入口の圧力(mTorr)であり、P
uは平均圧力(mTorr)である。aは管の半径(cm)、lは管の長さ、ηはそのときの気体及び管の温度における気体の粘性係数(ポアズ、dyn/sec・cm
2)である。25℃の空気を例にとると、η
25=1.845×10
−4である。
【0063】
ハーゲン・ポアズイユの法則に基づき、切り替えバルブである
図4の第1のバルブ11を開いた後、第1のガス供給用配管41内では次式(3)の流体の時間変化を表す式が成り立つ。
【0064】
V
1dP
1/dt=−C
1(P
22−P
12)+Q
1・・・(3)
ここで、P
1は第1のガス供給用配管41内の圧力であり、V
1は第1のガス供給用配管41内の体積である。また、C
1は第1のガス供給用配管41内のコンダクタンスであり、P
2は拡散室16aの圧力であり、Q
1は流量制御装置21から流入されるガス流量である。式(3)は、第1のバルブ11を開けてから第1のガス供給用配管41内に流入又は流出するガスの状態を示す。
【0065】
同様にして、ハーゲン・ポアズイユの法則に基づき、第1のバルブ11を開いた後、拡散室16a内では次式(4)が成り立つ。
【0066】
V
2dP
2/dt=C
1(P
22−P
12)−Q
3−Q
4・・・(4)
ここで、P
2は拡散室16a内の圧力であり、V
2は拡散室16a内の体積である。また、C
1は第1のガス供給用配管41内のコンダクタンスであり、P
1は第1のガス供給用配管41内の圧力である。また、Q
3は拡散室16aからチャンバC内へ導入されるガス流量であり、Q
4は拡散室16aから排気用配管47を通って大気側へ流出するガス流量である。式(4)の状態方程式は、第1のバルブ11を開けてから拡散室16a内に流入又は流出するガスの状態を示す。
【0067】
式(3)に基づき第1のガス供給用配管41内の圧力の時間的変化は式(5)にて表される。
【0068】
dP
1/dt=−C
1(P
22−P
12)/V
1+Q
1/V
1・・・(5)
また、式(4)に基づき拡散室16a内の圧力の時間的変化は式(6)にて表される。
【0069】
dP
2/dt=C
1(P
22−P
12)/V
2−C
2(P
22−P
32)/V
2−C
3(P
22−P
42)/V
2・・・(6)
ここで、P
3は、チャンバ内の圧力であり、P
4は、排気側の圧力である。
【0070】
第1のガス供給用配管41内の圧力の時間的変化dP
1/dtを示した式(5)及び拡散室16a内の圧力の時間的変化dP
2/dtを示した式(6)の方程式を解くと、拡散室16a側に流入するガスのモル数と拡散室16aから流出するガスのモル数とが算出される。排気側に流出するガスのモル数とチャンバC内に流出するガスのモル数との和が、拡散室16a内の容積Aに達したとき、第1のガス供給用配管41側から同量のモル数のガスが拡散室16a内に流入していることになる。このとき、前工程のガスから次工程のガスへの切り替えが完全に完了したことになる。
【0071】
実際に式(5)及び式(6)の方程式を解くと、以下の結果が得られる。
【0072】
拡散室16a内の総モル数のガスが拡散室16aから流出するまでの時間は0.017秒であると算出される。つまり、0.017秒で拡散室16a内のガスはすべて流出し、前工程のガスから次工程のガスへの切り替えが完全に完了する。拡散室16a内のガスがほぼ瞬時に入れ替わることを示している。
【0073】
2つの工程の切り替えの際、拡散室16a内の残留ガスが、チャンバ内へ流出される量を極力減らし、排気ライン側へ流出される量を増やしたい。ここでは、拡散室16a内の総モル数は0.000409molである。
図6(a)を参照すると、配管径3/8(インチ)、内径φ7.52(mm)の場合、拡散室16aからチャンバC内へ流出する総モル数は、0.000175mol(0.017秒時)、拡散室16aから排気ラインへ流出する総モル数は、0.000235mol(0.017秒時)である。この結果、拡散室16aの残留ガスの約43%がチャンバC側に流出されてしまっていることがわかる。
【0074】
配管径1/4(インチ)、内径φ4.3(mm)の場合、拡散室16aからチャンバC内へ流出する総モル数は、0.000358mol(0.031秒時)、拡散室16aから排気ラインへ流出する総モル数は、0.000051mol(0.031秒時)である。この結果、拡散室16aの残留ガスの約88%がチャンバC側に流出され、配管径3/8の場合より更に悪い結果となっている。
【0075】
一方、配管径1/2(インチ)、内径φ10.4(mm)の場合、拡散室16aからチャンバC内へ流出する総モル数は、0.00007mol(0.009秒時)、拡散室16aから排気ラインへ流出する総モル数は、0.000342mol(0.009秒時)である。この結果、拡散室16aの残留ガスの約17%がチャンバC側に流出され、配管径3/8及び配管径1/4(の場合に比べて良好な結果となっていることがわかる。
【0076】
また、
図6(b)を参照すると、排気工程を設けない場合より、排気工程を設けた場合には切り替え時間が短縮され、配管径1/2(インチ)の場合、切り替え時間が最も短縮されていることがわかる。
【0077】
なお、第1のガスの設定流量は1000sccmである。これは、一秒毎に0.000693モルが流量制御装置21から流出することを示す。拡散室16a内に残留する総ガスが拡散室16aから流出するまでの時間0.017秒に、0.000011781モルが流量制御装置21から流出することになる。
【0078】
排気ラインを設けない一般的なシステムでは、拡散室16aの残留ガスが100%チャンバC内に流出され、プロセスによくない影響を及ぼす。
【0079】
[切り替えバルブ開放後の拡散室の圧力]
本実施形態では堆積工程及びエッチング工程の切り替え前に加圧工程を設け、第1のガス供給用配管41(第2のガス供給用配管43も同じ)内を加圧状態にしている。このため、第1のバルブ11を開いた瞬間、堆積主体ガスが圧力の高い第1のガス供給用配管41から圧力の低い拡散室16aに流れる。このため、拡散室16aの圧力は上昇する。よって、拡散室16aの圧力を通常状態でガスを流しているときの圧力まで早く降下させ、拡散室16aからチャンバCへのガスの導入速度を安定させたい。これにより、良好なプラズマ制御が可能となる。
図7では、切り替え時の第1のバルブ11の開放後の拡散室16aの圧力P
2(Torr)、排気ライン側へ流出するガスの流量をモル数で表した線、チャンバ側へ導入されるガスの流量をモル数で表した線、拡散室16a内の残ガスの流量をモル数で表した線が示されている。
【0080】
図7に示した結果から、排気ラインの配管径を大きくすれば、排気ライン側へ流出するガスのモル数が多くなるため、拡散室16aの圧力をより早く通常状態の圧力まで降下させることができることが予測される。
【0081】
ただし、排気ラインの配管径を大きくしすぎると、排気しすぎて、
図7の位置Pdで示したように、拡散室16aの圧力が一旦低下しすぎてしまう。一方、排気ラインの配管径を小さくしすぎると、拡散室16aの圧力を通常の圧力まで降下させるまでの時間が多くかかってしまう。そこで、排気しながら、通常の圧力まで降下してきたところ(
図7の位置Pa、ここでは0.3秒)で排気ラインの第5のバルブ15を閉じる。これにより、
図7の位置Pdで示したような拡散室16aの過度な圧力低下を防止し、拡散室16a内の圧力を通常の圧力まで迅速に降下させて安定させることができる。なお、拡大図に示しているように、約3/100秒で拡散室16a内のモル数は0になると推定される。
【0082】
[評価結果]
次に、本発明の一実施形態に係るガス供給システム10による堆積工程とエッチング工程を繰り返し行うプラズマ処理の実験結果について、
図8〜11を参照しながら説明する。
図8は、本実施形態に係る加圧工程の実験結果を示した図である。
図9は、本実施形態に係る排気工程の実験結果を示した図である。
図10は、
図8及び
図9の実験結果をグラフ化した図である。
図11は、本実施形態に係る加圧工程及び排気工程を加えた堆積工程とエッチング工程を繰り返し行うプラズマ処理の実験結果を示した図である。
【0083】
(加圧工程評価/
図8)
まず、堆積工程とエッチング工程を繰り返し行うプラズマ処理中に本実施形態に係る加圧工程を追加した場合の効果について説明する。
図8は、以下のプロセス条件に基づき堆積工程とエッチング工程を繰り返し行うプラズマ処理を実行中における、加圧工程の有無による深穴のエッチング結果の相違を示す。
図8には、(a)加圧工程なしの場合、(b)加圧工程を1秒間実行した場合、(c)加圧工程を2秒間実行した場合が示されている。プロセス条件は、以下の通りである。
1.堆積工程
圧力 :200(mTorr)
高周波電力 :プラズマ生成用HF 2500(W)/バイアス用LF 0(W)
堆積ガス :SiF
4/O
2=400/300(sccm)
温度 :20℃
工程時間 :0.02(min)
2.エッチング工程
圧力 :200(mTorr)
高周波電力 :プラズマ生成用HF 2500(W)/バイアス用LF 0(W)
エッチングガス:O
2/SF
6=100/600(sccm)
温度 :20℃
工程時間 :0.05(min)
また、本実験では、口径10μmのフォトレジスト膜5.5μmをマスクとして用いてシリコン基板上に深穴を形成した。
【0084】
この結果によれば、(b)(c)加圧工程が実行された場合、(a)加圧工程が実行されなかった場合に比べて、レジスト膜に対するシリコン基板の選択比(sel)が向上していることを確認できた。
【0085】
(排気工程評価/
図9)
次に、堆積工程とエッチング工程を繰り返し行うプラズマ処理中に本実施形態に係る排気工程を追加した場合の効果について説明する。
図9は、上記のプロセス条件に基づき堆積工程とエッチング工程を繰り返し行うプラズマ処理を実行中における、排気工程の有無による深穴のエッチング結果の相違を示す。
図9には、(a)排圧工程なしの場合、(b)排圧工程を0.5秒間実行した場合、(c)排圧工程を1秒間実行した場合が示されている。
【0086】
この結果によれば、(b)(c)排気工程が実行された場合には、(a)排圧工程が実行されなかった場合に比べて、レジスト膜に対するシリコン基板の選択比(sel)が向上していることを確認できた。
【0087】
図8及び
図9の実験結果をグラフ化した
図10を参照すると、特に、選択比を高めるためには、(a)加圧工程において1秒〜2秒程度の加圧時間が好ましく、(b)排気工程において0.5秒前後の排気時間が好ましいことがわかる。
【0088】
これらの結果から、加圧工程及び排気工程ともに拡散室16aでのガスの切り替え時間を短縮する効果があり、堆積工程で保護膜を生成する性能が向上したため、期待通りの保護膜が成膜され、エッチング工程においてレジスト膜の減りが抑えられ、選択比が向上したと推測される。
【0089】
(加圧工程+排気工程評価/
図11)
次に、堆積工程とエッチング工程を繰り返し行うプラズマ処理中に本実施形態に係る加圧工程及び排気工程を追加した場合の効果について説明する。
図11は、上記のプロセス条件に基づき堆積工程とエッチング工程を繰り返し行うプラズマ処理の実行中において、加圧工程及び排気工程の有無による深穴のエッチング結果の相違を示す。
図11には、(a)バルブ制御なし(加圧工程及び排気工程なし)の場合、(b)バルブ制御あり(加圧工程及び排気工程あり)の場合が示されている。各工程時間は次の通りである。
(a)加圧工程及び排気工程なしの場合
堆積工程 :2秒
エッチング工程 :5秒
(b)加圧工程及び排気工程ありの場合
堆積工程 :1秒
エッチング工程 :5秒
加圧工程 :1秒
排気工程 :0.5秒
この結果によれば、(b)加圧工程及び排気工程ありの場合には、(a)加圧工程及び排圧工程なしの場合に比べて、レジスト膜に対するシリコン基板の選択比(sel)が約6%向上し、さらにエッチングレート(E/R)が約6%向上していることを確認できた。また、スキャロップが軽減され、良好なエッチング形状が得られた。
【0090】
また、(a)加圧工程及び排圧工程なしの場合には、堆積工程2秒、エッチング工程5秒の7秒周期で堆積工程とエッチング工程を繰り返し行うプラズマ処理を実行していたが、(b)加圧工程及び排気工程ありの場合では、エッチング工程5秒に対して堆積工程1秒というように堆積工程を短くしても、良好な保護膜を形成できることがわかった。この場合、切り替え時間は1秒(加圧工程1秒、排気工程0.5秒)である。実験結果から、本実施形態によるガス供給システム10によれば、加圧工程及び排気工程を設けることによって、堆積工程に対するエッチング工程の時間を長くすることができ、エッチング工程の処理時間を堆積工程の処理時間より最大で5倍とすることが可能になる。
【0091】
以上に説明したように、本実施形態に係るガス供給システム10によれば、加圧工程と排気工程とを設けたことによりガスの切り替え時間を短縮し、また、切り替え時、前後工程のガスの混合を抑制することができる。これにより、堆積工程の時間を短縮しても適切な膜厚の保護膜を生成することができる。よって、堆積時間に対するエッチング時間を長くすることができ、より深く穴をエッチングすることができる。堆積時間に対するエッチング時間を長くすることができるため、エッチングレート(E/R)を高く維持することができる。さらに、選択比も改善され、良好なエッチング形状を得ることができる。また、堆積工程を短縮できるため、堆積工程とエッチング工程を繰り返し行うプラズマ処理の周期を短縮することができる。
【0092】
[半導体製造装置の全体構成]
最後に、本実施形態に係るガス供給システム10を使用する半導体製造装置30の一例について、
図12を参照しながら説明する。
【0093】
図12は、ガス供給システム10を使用する半導体製造装置30の全体構成を模式的に示す。半導体製造装置30は、内部が気密に保持され、電気的に接地されたチャンバCを有している。半導体製造装置30は、チャンバC外にて本実施形態に係るガス供給システム10と連結されている。ガス供給システム10は、所定の切り替えタイミングにチャンバC内に堆積主体ガスとエッチング主体ガスとを交互に繰り返し供給する。これにより、半導体製造装置30のチャンバC内にて生成されるプラズマによって、被処理体であるシリコン基板Wに堆積工程とエッチング工程を繰り返し行うプラズマ処理のエッチングが施されシリコン基板Wに所望の径の深穴を形成することができる。
【0094】
チャンバCは、円筒状であり、例えば表面を陽極酸化処理されたアルミニウム等から構成される。チャンバC内には、シリコン基板Wを水平に支持する載置台102が設けられている。載置台102は、例えば表面を陽極酸化処理されたアルミニウム等から構成され、下部電極としても機能する。載置台102は、導体の支持台104に支持されており、絶縁板103を介して昇降機構107により昇降可能となっている。昇降機構107は、チャンバCに配設され、ステンレス鋼よりなるベローズ108により覆われている。ベローズ108の外側にはベローズカバー109が設けられている。載置台102の上方の外周には、例えば単結晶シリコンで形成されたフォーカスリング105が設けられている。更に、載置台102及び支持台104の周囲を囲むように、例えば石英等からなる円筒状の内壁部材103aが設けられている。
【0095】
載置台102には、第1の整合器111aを介して第1の高周波電源110aが接続され、第1の高周波電源110aから所定周波数(27MHz以上例えば40MHz)のプラズマ生成用の高周波電力が供給されるようになっている。また、載置台102には、第2の整合器111bを介して第2の高周波電源110bが接続され、第2の高周波電源110bから所定周波数(13.56MHz以上例えば2MHz)のバイアス用の高周波電力が供給されるようになっている。一方、載置台102の上方には、載置台102と平行に対向するように上部電極として機能するシャワーヘッド116が設けられており、シャワーヘッド116と載置台102とは一対の電極として機能するようになっている。
【0096】
載置台102の上面には、基板Wを静電吸着するための静電チャック106が設けられている。静電チャック106は、絶縁体106bの間に電極106aを介在している。電極106aには直流電圧源112が接続され、直流電圧源112から電極106aに直流電圧が印加されることにより、クーロン力によって基板Wが吸着される。
【0097】
支持体104の内部には、冷媒流路104aが形成されている。冷媒流路104aには、冷媒入口配管104b、冷媒出口配管104cが接続されている。冷媒流路104a中に適宜冷媒として例えば冷却水等を循環させることにより、基板Wを所定の温度に制御する。基板Wの裏面側にヘリウムガス(He)等の冷熱伝達用ガス(バックサイドガス)を供給するための配管130が設けられている。
【0098】
シャワーヘッド116は、チャンバCの天井部分に設けられている。シャワーヘッド116は、本体部116aと電極板をなす上部天板116bとを有している。シャワーヘッド116は、絶縁性部材145を介してチャンバCの上部に支持されている。本体部116aは、導電性材料、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウムからなり、その下部に上部天板116bを着脱可能に支持する。
【0099】
本体部116aの内部には、ガスの拡散室16aが設けられ、拡散室16aの下部に位置するように、本体部116aの底部には多数のガス通流孔116dが形成されている。上部天板116bには、上部天板116bを厚さ方向に貫通するようにガス導入孔116eがガス通流孔116dと連通するように設けられている。このような構成により、拡散室16aに供給されたガスは、ガス通流孔116d及びガス導入孔116eを介してチャンバC内のプラズマ処理空間にシャワー状に導入される。なお、本体部116a等には、冷媒を循環させるための図示しない配管が設けられ、シャワーヘッド116を冷却して所望の温度に調整する。
【0100】
本体部116aには、拡散室16aへガスを導入するためのガス導入口116gが形成されている。ガス導入口116gには、ガス供給配管115aを介してガス調整部115bが接続されている。
【0101】
シャワーヘッド116には、ローパスフィルタ(LPF)151を介して可変直流電圧源152が電気的に接続されている。可変直流電圧源152は、オン・オフスイッチ153により給電のオン・オフが可能となっている。可変直流電圧源152、オン・オフスイッチ153は、制御装置60によって制御される。第1の高周波電源110a及び第2の高周波電源110bから高周波が載置台102に印加され、プラズマ処理空間にプラズマが発生する際には、必要に応じて制御装置60がオン・オフスイッチ153をオンに制御する。これにより、シャワーヘッド116に所定の直流電圧が印加される。
【0102】
チャンバCの側壁からシャワーヘッド116の高さ位置よりも上方に延びるように円筒状の接地導体101aが設けられている。この円筒状の接地導体101aは、その上部に天板を有している。チャンバCの底部には、排気口171が形成されている。排気口171には、排気装置173が接続されている。排気装置173は、真空ポンプを有し、真空ポンプを作動させることによりチャンバC内を所定の真空度まで減圧する。一方、チャンバCの側壁には、開閉により搬入出口174から基板Wを搬入又は搬出するためのゲートバルブ175が設けられている。
【0103】
載置台102の処理時における上下方向の位置に対応するチャンバCの周囲には、環状又は同心状に延在するダイポールリング磁石124が配置されている。ダイポールリング磁石124は、
図13の横断面図に示したように、リング状の磁性体からなるケーシング126内に、複数個(例えば16個)の異方性セグメント柱状磁石125を周方向に一定の間隔で配列する。
図13において、各異方性セグメント柱状磁石125の磁化の方向をケーシング126の周方向に従って少しずつずらすことにより、全体として一方向に向かう一様な水平磁界Bを形成することができる。
【0104】
したがって、載置台102とシャワーヘッド116との間の空間には、第1の高周波電源110aにより鉛直方向のRF電界が形成されるとともに、ダイポールリング磁石124により水平磁界Bが形成される。これらの直交電磁界を用いるマグネトロン放電により、載置台102の表面近傍に高密度のプラズマを生成することができる。
【0105】
再び
図12に戻り、制御装置60は、レシピに従い半導体製造装置30を制御する。制御装置60は、CPUを備え、半導体製造装置30の各部を制御するプロセスコントローラ61とユーザインターフェース62と記憶部63とを有する。ユーザインターフェース62は、工程管理者や半導体製造装置30を管理するためにコマンドの入力操作を行うキーボードや、半導体製造装置30の稼動状況を可視化して表示するディスプレイ等から構成されている。
【0106】
記憶部63には、半導体製造装置30にて実行される各種制御プログラムやデータがレシピとして格納されている。プロセスコントローラ61は、ユーザインターフェース62からの指示に従い、必要なレシピを記憶部63から読み出して実行することにより、チャンバC内で基板Wに所望のプロセスが施される。レシピは、コンピュータ読取可能な記憶媒体等に格納された状態であっても良く、通信を利用して利用可能な状態であってもよい。
【0107】
[応用例]
以上、本実施形態に係るガス供給システム10により基板Wに深穴を形成するエッチング処理を例に挙げて説明した。以下では応用例について、
図14を参照しながら説明する。
【0108】
応用例では、半導体チップの内部を貫通するスルーホール(TSV:Through−Silicon Via)の電極を用いて、上下の半導体チップ間を電気的に接続する立体配線技術に本実施形態に係る半導体製造装置30を使用する。
図14では、上部半導体チップ400の内部にスルーホール(TSV)405が形成されている。このスルーホール405に配線を通し、スルーホール405及びバンプ505を介して上部半導体チップ400のパッド電極410と下部半導体チップ500のパッド電極510とを導通する。
【0109】
ここでは、上記スルーホール405を、本実施形態に係るガス供給システム10を使用した半導体製造装置30により形成する。この3D配線によれば、径が30μm〜50μmのTSVに対してスルーホール405を形成することができる。
【0110】
これによれば、TSVの電極において、小型化、処理の高速化、消費電力の低下を図ることができる。また、TSVの製造過程において、堆積工程とエッチング工程を繰り返し行うプラズマ処理にて加圧工程及び排気工程を行うことによりガスの切り替え時間を短縮することができる。
【0111】
<おわりに>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0112】
例えば、本発明の排気工程は、エッチング工程及び堆積工程の開始と同時に第5のバルブを開いてもよいし、開始直前又は開始直後のいずれかのタイミングに排気用配管に設けられた第5のバルブを開いてもよい。
【0113】
また、第1の加圧工程は、直前に実行されている堆積工程中又は工程後に実行してもよい。
【0114】
また、本発明に係る半導体製造装置は、チャンバ内の平行平板電極間に生じる高周波の放電により容量結合プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)を生成する容量結合型プラズマ処理装置に限られず、例えば、チャンバの上面または周囲にアンテナを配置して高周波の誘導電磁界の下で誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)を生成する誘導結合型プラズマ処理装置、マイクロ波のパワーを用いてプラズマ波を生成するマイクロ波プラズマ処理装置等にも適用可能である。
【0115】
本発明においてプラズマ処理を施される被処理体は、シリコン基板、半導体ウエハ、フラットパネルディスプレイ(FPD:Flat Panel Display)用の大型基板、EL素子又は太陽電池用の基板等いかなるものであってもよい。