(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5937875
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】石灰窒素を用いたマグネシウム製錬方法
(51)【国際特許分類】
C22B 26/22 20060101AFI20160609BHJP
C22B 5/16 20060101ALI20160609BHJP
C22B 9/02 20060101ALI20160609BHJP
C22B 9/10 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
C22B26/22
C22B5/16
C22B9/02
C22B9/10 101
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-94505(P2012-94505)
(22)【出願日】2012年4月18日
(65)【公開番号】特開2013-221194(P2013-221194A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】513125913
【氏名又は名称】オリコン・エナジー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(74)【代理人】
【識別番号】100078662
【弁理士】
【氏名又は名称】津国 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100146031
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100132540
【弁理士】
【氏名又は名称】生川 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100125106
【弁理士】
【氏名又は名称】石岡 隆
(72)【発明者】
【氏名】阿部 利彦
(72)【発明者】
【氏名】小濱 泰昭
(72)【発明者】
【氏名】坂本 満
【審査官】
祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
佐藤誠、松木健三、倉田由朗、今野繁徳,酸化マグネシウムとカルシウムシアナミドとの反応,山形大学紀要(工学),日本,1966年 1月14日,第9巻第1号,p93−p103
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 5/00
C22B 9/00
C22B 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水または水を含んでなる溶液に石灰窒素を投入し、石灰窒素中の生石灰または消石灰を溶解するとともにカルシウムシアナミドを沈殿せしめ、この沈殿物を回収し、マグネシウム化合物の還元剤として利用することを特徴とするマグネシウム製錬方法。
【請求項2】
水または水を含んでなる溶液に石灰窒素を投入することで、石灰窒素中の生石灰または消石灰を溶解した当該水または水を含んでなる溶液の上澄み液をマグネシウムイオン含有溶液に投入し、上澄み液中に溶解している生石灰または消石灰とマグネシウムイオン含有溶液中のマグネシウムイオンとの反応により水酸化マグネシウムを沈殿せしめ、この沈殿物を加熱脱水して酸化マグネシウムを得る工程、及び石灰窒素中の生石灰または消石灰を溶解した際に沈殿したカルシウムシアナミドにて酸化マグネシウムを還元しマグネシウムを製錬する工程を備えることを特徴とするマグネシウム製錬方法。
【請求項3】
マグネシウムイオン含有溶液に石灰窒素を投入し、石灰窒素中の生石灰または消石灰を溶解するとともにカルシウムシアナミドを沈殿せしめ、同時に溶解した生石灰または消石灰とマグネシウムイオン含有溶液中のマグネシウムイオンとの反応により水酸化マグネシウムを沈殿せしめ、該カルシウムシアナミドと該水酸化マグネシウムが混合した沈殿物を混合加熱処理してマグネシウムを製錬することを特徴とするマグネシウム製錬方法。
【請求項4】
混合加熱処理は、混合物中の水酸化マグネシウムを加熱脱水して酸化マグネシウムを得る脱水処理工程と、該酸化マグネシウムをカルシウムシアナミドにて加熱還元する還元処理工程より構成される請求項3に記載のマグネシウム製錬方法。
【請求項5】
脱水処理工程における加熱温度を350℃〜450℃とすることを特徴とする請求項4に記載のマグネシウム製錬方法。
【請求項6】
マグネシウムイオン含有溶液が苦汁または海水である請求項2から請求項5のうちいずれか1項に記載のマグネシウム製錬方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネシウムの製錬方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、一般的に知られているマグネシウムの製錬方法として、「電解法」、「ピジョン法」、「炭素還元法」がある。
【0003】
「電解法」によるマグネシウム製錬方法では、溶融塩化マグネシウムMgCl2中に酸化マグネシウムMgOと炭素粉を入れて、炭素電極を用いた電気分解により金属マグネシウムを得る。特許文献1には、塩化マグネシウムから電解法にてマグネシウムを製錬する方法について開示されている。この方法は、原理上、多量の電力を消費とする点がデメリットである。また、原料として無水塩化マグネシウムMgCl2を必要とするが、この塩化マグネシウムは、ほとんどが6水塩(MgCl2・6H2O)であって、無水化するには塩酸ガスやアンモニア中で熱処理する、あるいは、塩化アンモニウムと混合して加熱するなど、面倒な前処理が必要である。また、電解処理中に塩素ガスが発生するので、面倒な排ガス処理が必要である。このような理由で、現在電解法は、全製錬量の2割以下しか使われていない。
【0004】
「ピジョン法」によるマグネシウム製錬方法では、2(MgO+CaO)+Fe−75%Si(フェロシリコン)→2Mg+Ca2SiO2を基本とする反応で金属マグネシウムを得る。固体反応なので、前処理として原料の混合粉末を200MPa以上で圧縮し、その後真空中、1150℃以上にて加熱すると、マグネシウム蒸気が発生し、これを凝縮すると、金属マグネシウムが得られる。この方法は、比較的簡単な方法であって、電解法のような塩素ガスの発生もない。従って熱源さえあれば容易に実施できる方法である。このために、現在のマグネシウム製錬の8割以上はピジョン法によって行われているが、このピジョン法の問題点として、「(1)1トンのマグネシウムを得るのに11トンの石炭を必要とするほど、エネルギー消費が多い」、「(2)還元剤として75%Siのフェロシリコンを必要とする。フェロシリコンはアーク炉で合成されるので高価である」ことがあげられる。
【0005】
「炭素還元法」によるマグネシウム製錬方法では、鉄製錬のようにMgOを炭素で還元する(MgO+CO→Mg+CO2)。ピジョン法はMgOを75%フェロシリコンによって金属マグネシウムに還元する方法であって、1150℃という工業的には比較的低い温度で操業できる特徴がある一方、「炭素還元法」は、炭素という安価な還元剤が使用できるが1900℃以上の高温でなければ反応が進まない。さらに、このような高温では逆反応Mg+CO2→MgO+COが起きるので、発生するマグネシウム蒸気を急激に冷却する必要がある。これら2つの理由で「炭素還元法」によるマグネシウム製錬は実施されていない。
【0006】
また、これらに代わる技術として、カルシウムカーバイドを還元剤として用いて、塩化マグネシウムを還元しマグネシウムを製錬する技術が、非特許文献1に開示されている。カルシウムカーバイド(CaC2)は、水と反応すると容易にアセチレンガスを発生するため、以前はアセチレンランプのガス発生材料として多く用いられていた。この事実から容易に分るように、カルシウムカーバイドは、きわめて危険かつ取り扱いが面倒な物質である。このために、カルシウムカーバイドは表面積を減らして空気中の水分との反応を低減するよう塊状で製品化される。カルシウムカーバイドをマグネシウムの還元剤として用いるには微粉砕する必要があるが、カルシウムカーバイドは石のように硬いので微粉砕は容易ではない。また、カルシウムカーバイドの微粉は空気中の水分と反応してアセチレンガスを発生するため危険であり、異臭をともなうことも、取り扱いを面倒にしている。
【0007】
また、カルシウムシアナミドを還元剤として用いて、塩化マグネシウムを還元しマグネシウムを製錬する技術、および、カルシウムシアナミドを還元剤として用いて、酸化マグネシウムを還元しマグネシウムを製錬する技術が、非特許文献2に開示されているが、同文献に示されているように、カルシウムシアナミドの合成のために、一般には入手できない「ジシアンジアミド」を原料として使用することが必要であるため、純度の高いカルシウムシアナミドは非常に高価であり、他の方法に比較して大幅な製造コスト増となる。
【0008】
上記のとおり、現在マグネシウム製錬方法として、使用/提案されている各種の方法は、(1)製錬時のエネルギー消費が大きい、(2)製錬に使用する原料が高価あるいは入手困難、(3)製錬に危険をともなう場合がある、等の課題があり、製錬コストが高くならざるを得ない状況となっている。
【0009】
このような状況の中、出願人らは肥料・農薬として広く使用されている石灰窒素がマグネシウム製錬の還元剤として有効であることを発見し、本出願に先立ち、石灰窒素を用いたマグネシウム製錬方法について出願している。(特願2012−70279)
【0010】
この石灰窒素はカルシウムカーバイドと窒素ガスを高温で反応させて製造されており、成分はカルシウムシアナミドが40〜55%であって、製造過程での不純物及び肥料成分として生石灰CaOや炭素、ケイ酸、鉄、カルシウムカーバイドが残りの60〜45%程度含まれている。肥料として作られる石灰窒素は、安全な物質であって、カルシウムカーバイドのように空気中の水分と反応して可燃性ガスを発生することも、異臭を発することもない。また、肥料として市販されているので、安価に入手することができ、その形態も粉状あるいは粒状であるため、微粉砕も簡単に行える。この石灰窒素をマグネシウムの還元剤として使用することにより、製錬コストを低く抑えることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−96558公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Pergamon Press 「Principle of Magnesium Technology」 E.F.Emley著 p49(1966刊行)のp.49
【非特許文献2】山形大学紀要(工学) 第9巻 第1号(1966)「酸化マグネシウムとカルシウムシアナミドとの反応」 佐藤著 p.93−103
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
出願人らが本出願に先立ち出願したマグネシウム製錬方法は、石灰窒素をマグネシウムの還元剤として使用するものであるが、先出願に記載されている「苦汁を脱水して得られる塩基性マグネシウムMg(OH)Clをマグネシウムの原料として使用する」実施形態の場合、製錬時に少量の塩酸ガス、塩素ガスが発生する問題があった。この問題を回避するには苦汁の加熱温度を800℃まで上げて、酸化マグネシウムに酸化すればよいが、加熱時に塩酸ガス、塩素ガスの発生が増加し、燃料費がかなり増えてしまう問題があった。
【0014】
また還元剤である石灰窒素の中には、実質的に還元物質としてはたらくカルシウムシアナミドが40〜55%しか含まれない(残部は石灰と炭素)ため、還元効率が低くなってしまう問題があった。例として酸化マグネシウムを還元する場合について考えると、還元用の石灰窒素(55%)+酸化マグネシウムの混合粉末に占める酸化マグネシウムの比率は18.4%となる。現在もっとも主流なマグネシウム製錬法として使用されているピジョン法の混合粉末(MgO+CaO+FeSi)でMgO(酸化マグネシウム)が占める比率は35%なので、石灰窒素法の還元効率はピジョン法に劣ってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
以上の課題に鑑み、本願発明は、以下の技術を用いて上記の課題を解決した。
【0016】
本発明は、水または水を含んでなる溶液に石灰窒素を投入し、石灰窒素中の生石灰または消石灰を溶解するとともにカルシウムシアナミドを沈殿せしめ、この沈殿物を回収し、マグネシウム化合物の還元剤として利用することを特徴とするマグネシウム製錬方法である。
【0017】
または、水または水を含んでなる溶液に石灰窒素を投入することで、石灰窒素中の生石灰または消石灰を溶解した当該水または水を含んでなる溶液の上澄み液をマグネシウムイオン含有溶液に投入し、上澄み液中に溶解している生石灰または消石灰とマグネシウムイオン含有溶液中のマグネシウムイオンとの反応により水酸化マグネシウムを沈殿せしめ、この沈殿物を加熱脱水して酸化マグネシウムを得る工程、及び石灰窒素中の生石灰または消石灰を溶解した際に沈殿したカルシウムシアナミドにて酸化マグネシウムを還元しマグネシウムを製錬する工程を備えることを特徴とするマグネシウム製錬方法としてもよい。
【0018】
または、マグネシウムイオン含有溶液に石灰窒素を投入し、石灰窒素中の生石灰または消石灰を溶解するとともにカルシウムシアナミドを沈殿せしめ、同時に溶解した生石灰または消石灰とマグネシウムイオン含有溶液中のマグネシウムイオンとの反応により水酸化マグネシウムを沈殿せしめ、該カルシウムシアナミドと該水酸化マグネシウムが混合した沈殿物を混合加熱処理してマグネシウムを製錬することを特徴とするマグネシウム製錬方法としてもよい。
【0019】
その際、この混合加熱処理は、混合物中の水酸化マグネシウムを加熱脱水して酸化マグネシウムを得る脱水処理工程と、該酸化マグネシウムをカルシウムシアナミドにて加熱還元する還元処理工程より構成されることがより好ましい
【0020】
加えて、上記脱水処理工程における加熱温度を350℃〜450℃とすることがより好ましい。
【0021】
これらの発明においては、マグネシウムイオン含有溶液が苦汁または海水であることがより好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、石灰窒素中の石灰分を水溶液中に溶解除去することができ、純度の高いカルシウムシアナミドを得ることができる。同時に、水溶液中の塩素を塩化カルシウムとして水溶液中に溶解させたまま、水溶液中のマグネシウム成分は水酸化マグネシウムとして沈殿回収することができる。カルシウムシアナミドを高純度化することによって、マグネシウム製錬のための加熱に必要なエネルギーを大幅に減らすことが可能となり還元効率を高めることができる。併せて、塩素を含まないマグネシウム製錬の原料が得られるので、塩酸ガスの発生をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】酸化マグネシウムと石灰窒素混合粉末の太陽炉製錬
【
図3】本発明におけるマグネシウムの製錬プロセス1(第一の実施形態)
【
図4】本発明におけるマグネシウムの製錬プロセス2(第二の実施形態)
【
図5】本発明におけるマグネシウムの製錬プロセス3(第三の実施形態)
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第一の実施形態)石灰窒素は約40〜55%のカルシウムシアナミドを含んでおり、残部はほぼ石灰分(生石灰、消石灰)である。カルシウムシアナミドは冷水にはほぼ不溶であるが、生石灰はCaO+H2O→Ca(OH)2の反応で容易に消石灰となり、消石灰は溶液1リットルあたり常温で約1.5g溶解する。そのため、石灰窒素を水、苦汁、海水等の水溶液中に投入すれば、カルシウムシアナミドはほぼ溶けずに沈殿し、それに対し、石灰分は、全溶に十分な量の水溶液があれば水溶液中に溶解する。(これらの反応に寄与する各物質の溶解度は、「
図6」の通りである。)そのため、この沈殿物は石灰窒素に比較して、多くのカルシウムシアナミドを含むことになり、この沈殿物を回収し乾燥させ、酸化マグネシウム等のマグネシウム化合物と混合し、電気炉や太陽炉にて加熱すれば、この沈殿物中に含まれるカルシウムシアナミドが還元剤としてはたらき、マグネシウム化合物が還元されマグネシウムを得ることができる。
【0025】
(第二の実施形態)水溶液中で塩化マグネシウムは消石灰と反応(MgCl2+Ca(OH)2→Mg(OH)2+CaCl2)し、マグネシウムは水酸化マグネシウムとして沈殿し、塩素は塩化カルシウムとして水溶液中に溶解する。(これらの反応に寄与する各物質の水に対する溶解度は、「
図6」の通りである。)第一の実施形態において、カルシウムシアナミドが沈殿したあとの上澄み液は、その液中に溶解した石灰分を多く含むため、この上澄み液を苦汁や海水に投入すると、苦汁や海水中に含まれる塩化マグネシウムと石灰とが反応し、水酸化マグネシウムが沈殿する。この沈殿した水酸化マグネシウムを加熱脱水して酸化マグネシウムとしたのち、第一の実施形態で得られたカルシウムシアナミドを含む沈殿物と混合し、電気炉や太陽炉にて加熱すれば、カルシウムシアナミドが還元剤としてはたらき、酸化マグネシウムが還元されマグネシウムを得ることができる。
【0026】
(第三の実施形態)第一の実施形態において、水溶液として、苦汁、海水を使用した場合、これらの水溶液中には塩化マグネシウムが存在するため、カルシウムシアナミドの沈殿と同時に、水酸化マグネシウムの沈殿も起こる。そのため、その沈殿物は、カルシウムシアナミドと水酸化マグネシウム双方を含む混合物である。この混合物を、電気炉および太陽炉にて加熱すれば、水酸化マグネシウムは脱水して酸化マグネシウムとなり、この酸化マグネシウムがカルシウムシアナミドにより還元されて、マグネシウムを得ることができる。
【0027】
第三の実施形態においては、加熱温度が高すぎると水酸化マグネシウムより生じる水蒸気とカルシウムシアナミドが反応しアンモニアを生成してしまう。このために、混合後の加熱過程は、アンモニア生成反応が起きない程度の低温で混合物を加熱して、混合物中の水酸化マグネシウムを脱水し酸化マグネシウムとする脱水処理工程とその後さらに高温に加熱して、酸化マグネシウムをカルシウムシアナミドにて還元する還元処理工程の二工程とすることが望ましい。
【0028】
この脱水処理工程の温度は350℃〜450℃とすると、アンモニア生成反応が起きにくく、かつ、水酸化マグネシウムの脱水反応が進む。
【0029】
次に、本願発明の詳細を実施例に基づいて説明する。なお、この実施例は当業者の理解を容易にするためのものである。すなわち、本願発明は明細書の全体に記載される技術思想によってのみ限定されるものであり、本実施例によってのみ限定されるものでないことは理解されるべきことである。
【実施例1】
【0030】
1リットルの水に10.0gの石灰窒素(カルシウムシアナミド40%)を加えたところ、不溶なカルシウムシアナミドを主体とする沈殿物が生じた。これを吸引濾過し90℃で空気乾燥したところ、7.30gのカルシウムシアナミドを主体とする物質が得られた。重量計算の結果、約55%の純度のカルシウムシアナミドであると考えられる。これを酸化マグネシウムとともに乳鉢で混合し、2000気圧でプレスして直径15mmのペレットにしたのち、これを真空炉の長尺石英管に入れて10Paの減圧下で1250℃に加熱したところマグネシウムの蒸着膜が石英管に付着した。
【実施例2】
【0031】
10gの水酸化マグネシウムを単独で気中加熱し、その重量変化を測定したところ「
図7」のような結果が得られた。酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムの重量比は0.69:1であることから、350℃から400℃の間で脱水反応が起き、水酸化マグネシウムが酸化マグネシウムとなっていることがわかる。
【実施例3】
【0032】
40%の石灰窒素10gを1リットルの水に漬けて、その上澄み900mlほどを別容器に移して、それに密度が1.273g/cm3である50ミリリットルの苦汁(50%塩化マグネシウム六水塩)をいれたところ、多量の水酸化マグネシウムの白色沈殿が生じた。これを吸引濾過し90℃で空気中乾燥し、6.41gの水酸化マグネシウムを得た。これを400℃にて1時間加熱して4.62gの酸化マグネシウムを得た。また石灰窒素溶液の沈殿物を、吸引濾過し90℃で空気乾燥したところ、7.23gのカルシウムシアナミドを主体とする物質が得られた。これらを乳鉢で混合し、2000気圧でプレスして直径15mmのペレットにしたのち、これを真空炉の長尺石英管に入れて10Paの減圧下で1250℃に加熱したところマグネシウムの蒸着膜が石英管に付着した。
【実施例4】
【0033】
50ミリリットルの苦汁を水で0.5リットルに希釈して10.0gの石灰窒素を加えたところ、大量の灰色沈殿を生じた。これはカルシウムシアナミドと水酸化マグネシウムを主体とする沈殿物である。これを吸引濾過し90℃にて空気中乾燥したところ9.122gの乾燥粉を得た。このうち2.6gを400℃にて1時間加熱したものを、2000気圧でプレスして直径15mmのペレットにしたのち、これを真空炉の長尺石英管に入れて10Paの減圧下で1250℃に加熱したところマグネシウムの蒸着膜が石英管に付着した。
【符号の説明】
【0034】
1 圧縮固化した試料
2 蒸発して管に付着したマグネシウム箔
3 透明石英管
4 真空排気
5 凹面鏡
6 入射太陽光
7 黒鉛製ルツボ
8 焦点位置