【実施例】
【0039】
以下本発明を実施例により、具体的に説明する。
以下の実験装置及び化合物を利用して、エマルション及びマイクロカプセルを製造した。
【0040】
<実験装置>
電気毛管乳化装置は
図1に示した。装置の詳細は以下の通りである。
シリンジ:1ml
容器:50mlビーカー
正極:ステンレスニードル(注射針)、内径0.1mm、外径0.3mm
負極:リング型電極、内径6mm、外径8mm
ニードルとリング型電極の位置
水平方向:リング型電極の中止に、ニードルが設置されるように設置。
垂直方向:リング型電極とニードル先端の間が3mmになるように設置。
【0041】
<使用化合物>
界面活性剤1:プルロニックF68(一般式(1)においてx=80、y=30、z=80、Mw=8800)(株式会社ADEKA製)
界面活性剤2:プルロニックF88(一般式(1)においてx=102、y=39、z=102、Mw=11250)(株式会社ADEKA製)
界面活性剤3:プルロニックF108(一般式(1)においてx=148、y=56、z=148、Mw=16300)(株式会社ADEKA製)
界面活性剤4:プルロニックF127(一般式(1)においてx=102、y=66、z=102、Mw=12800)(株式会社ADEKA製)
界面活性剤5:プルロニックL122(一般式(1)においてx=11、y=66、z=11、Mw=4800)(株式会社ADEKA製)
界面活性剤6:ポリオキシエチレン(8)ラウリルエーテル
界面活性剤7:ソルビタンセスキオレート
PVA:ポリビニルアルコール(MP Biomedicals Inc.製、分子量22000)
PCL:ポリイプシロンカプトラクタム(シグマアルドリッチ社製、分子量14000)
PLGA:乳酸・グリコール酸共重合体(乳酸/グリコール酸=1/1、分子量7000〜1700、シグマアルドリッチ社製)
界面活性剤1〜5に関し、全分子量に対するポリオキシエチレン鎖の分子量の総和は、界面活性剤1で80.2質量%、界面活性剤2で79.9質量%、界面活性剤3で80.1質量%、界面活性剤4で70.1質量%、界面活性剤5で20.3質量%である。
【0042】
1.分析機器
実施例で得られたエマルションやマイクロカプセルは、以下の機器を使用して分析を行った。
SEM:走査型電子顕微鏡S−510(日立製作所株式会社製)
観察方法:カーボンテープを貼った試料台にマイクロカプセル溶液を数滴滴下後、減圧乾燥し、白金蒸着したものを観察した。
TEM:透過型電子顕微鏡H−7650(日立ハイテクノロジーズ社製)
観察方法:マイクロカプセル溶液をグリッドに数滴滴下した後、減圧乾燥して観察した。
DLS:動的光散乱法Nicomp 380ZLS改良型(Particle Sizing Systems社製)
【0043】
1.エマルションの製造及び粒径確認試験
図1における非水系溶媒Bとして、ジクロロメタン50mlにPCLを0.5g溶解させたものを使用し、水相Aとして純水に界面活性剤を0.1質量%になるように溶解させた水相を使用し、25℃の液温にて、電圧は2000V、水相Aをシリンジから導入速度0.286μl/sで導入して電気毛管乳化を行った。試験は試験1〜試験4を行い、エマルション製造直後及び保存後のエマルションの状態を目視観察及びDLS測定した。
【0044】
試験1:界面活性剤2
試験2:界面活性剤5
試験3:界面活性剤6
試験4:界面活性剤7
試験5:界面活性剤6+PVA
*試験4は、界面活性剤6を0.1質量%及びPVAを0.1質量%添加している。
【0045】
(目視観察結果)
界面活性剤にプルロニックを使用した試験1及び試験2の1日後のエマルションの状態は、製造直後と同様に均一の白濁溶液であった。しかし試験3〜試験5はいずれも、1日後で完全に2層分離していた。なお、PVAは一般的にエマルションの状態を安定化させる作用があるとされるが、本試験では効果はなかった。
【0046】
(DLSの結果)
試験1〜試験4で得られたエマルションについて製造直後及び保存後のエマルションの粒径をDLSで測定した。なお保存時間は、試験1及び試験2は24時間、試験3は6時間、試験4は12時間であり、測定結果をそれぞれ
図2〜
図5に示した。
試験1及び試験2は24時間後でも粒径はまったく変化ないが、試験3は6時間で、試験4は12時間で粒径が大きくなることが確認された。試験3及び試験4は目視試験の結果いずれも2層分離しているが、粒径が大きくなって粒子が沈殿したと考えられる。
【0047】
2−1.マイクロカプセル1の製造:液中乾燥法
図1における非水系溶媒Bとしてジクロロメタン50mlにPCLを0.5g溶解させたものを使用し、水相A(内水相)として純水に界面活性剤1を0.1質量%になるように溶解させた水相を使用し、25℃の液温にて、電圧は1000V、水相Aをシリンジから導入速度0.286μl/sで200μl導入して電気毛管乳化を行った。得られたエマルションを、純水に界面活性剤1を0.1質量%になるように溶解させた溶液(外水相)が150ml入った200mlビーカー内に5分かけてゆっくり添加した。なお、添加中はスターラーを使用してビーカー内の純水を300rpmの回転速度で撹拌し、液温は25℃で一定に保ち、1時間撹拌を続けて水中油中水型エマルションを得た。その後、加熱して外水相を除去し、PCLが外殻となるマイクロカプセル1を得た。
【0048】
2−2.マイクロカプセル2〜4の製造:液中乾燥法
界面活性剤の種類を変えた以外は、マイクロカプセル1と同様の方法でマイクロカプセル2〜4を製造した。界面活性剤2を使用したものがマイクロカプセル2、界面活性剤3を使用したものがマイクロカプセル3、及び界面活性剤4を使用したものがマイクロカプセル4である。なお、内水相及び外水相に使用した界面活性剤はいずれも同一の界面活性剤に変えている。
【0049】
2−3.マイクロカプセル5及び6の製造:液中乾燥法
界面活性剤の種類を変えた以外は、マイクロカプセル1と同様の方法でマイクロカプセル5及び6を製造した。マイクロカプセル5は内水相に界面活性剤2を使用し、外水相に界面活性剤6を使用した。マイクロカプセル6は内水相及び外水相ともに界面活性剤6を使用した。
【0050】
(試験結果)
得られたマイクロカプセルをSEMによって観察した。マイクロカプセル1〜4の結果を
図6に、マイクロカプセル2、5及び6の結果を
図7に示した。
図6の結果から、いずれもPCLのカプセルが確認できるが、界面活性剤1及び2を使用したマイクロカプセル1及び2が良好であった。中でもマイクロカプセル2は粒径も小さく、多くの粒子がカプセル化している。
図7の結果から、マイクロカプセル2はきれいなカプセルができているが、マイクロカプセル5はカプセル化率が悪くスフィア状粒子が多数できていた。またマイクロカプセル6はカプセルや粒子がまったくできていなかった。界面活性剤にプルロニック型以外を使用すると、カプセル化に弊害が現れることが確認できた。
【0051】
3.マイクロカプセル7〜9の製造:コアセルベーション法
図1における非水系溶媒Bとしてn−ヘキサン50mlを使用し、水相Aとして純水に界面活性剤2を0.1質量%になるように溶解させた水相を使用し、25℃の液温にて、水相Aをシリンジから導入速度0.286μl/sで200μl導入して電気毛管乳化を行った。なお電圧は1000V、1500V及び2000Vの3種類で行った。次に、得られたエマルションを50℃に加温し、スターラーにて300rpmで撹拌しながら、PLGAが2質量%のジクロロメタン溶液10mlを1ml/分の流速で導入した。更に、50℃を保ちながら1.5時間撹拌を続けた後、放冷してマイクロカプセル7〜9を得た。電圧1000Vで行ったものがマイクロカプセル7、1500Vがマイクロカプセル8、2000Vがマイクロカプセル9である。
【0052】
(試験結果)
得られたマイクロカプセルをTEMで観察し、DLSで粒度分布を確認した。結果は
図8に示した。
いずれのマイクロカプセルも1μm以下の粒子の大きさで、粒度分布も同様であり、電圧による変化はほとんどなかった。
【0053】
4.PCLとPLGAの比率を変えたマイクロカプセルの製造:液中乾燥法
図1における非水系溶媒Bとしてジクロロメタン50mlにPCLとPLGAを合計で0.5g溶解させたものを使用し、水相A(内水相)として純水に界面活性剤2を0.1質量%になるように溶解させた水相を使用し、25℃の液温にて、電圧は1000V、水相Aをシリンジから導入速度0.286μl/sで200μl導入して電気毛管乳化を行った。得られたエマルションを、純水に界面活性剤2を0.1質量%になるように溶解させた溶液(外水相)が150ml入った200mlビーカー内に5分かけてゆっくり添加した。なお、添加中はスターラーを使用してビーカー内の純水を300rpmの回転速度で撹拌し、液温は25℃で一定に保ち、1時間撹拌を続けて水中油中水型エマルションを得た。その後、加熱して外水相を除去してマイクロカプセルを得た。
【0054】
なお、PCLとPLGAの比率(質量比)は、PCL/PLGA=10/0、9/1、7/3、5/5、3/7、1/9、0/10の比率でそれぞれマイクロカプセルを製造した。SEM、TEM及びDLSの結果を
図9に示す。
また、PCL/PLGA=5/5については、電圧1000Vの他に、1500V及び2000Vでもマイクロカプセルの製造を行った。TEMの結果を
図10に示す。
【0055】
(試験結果)
図9より、PLGAの増加に伴い粒径が小さくなることが確認できた。また
図10より、PCL及びPLGAの混合系(5:5)では、1000Vで50〜500nmの粒径であるのに対し、1500Vや2000Vでは50〜80nmと極めてサイズの整ったマイクロカプセルが確認できた。また電圧が上がるに従い粒径も小さくなっていった。