(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の絶縁粒子と、前記第2の絶縁粒子とによる前記導電粒子の被覆率が、前記導電粒子の総表面積に対して35〜75%である、請求項1に記載の絶縁被覆導電粒子。
前記異方導電性接着剤が、第1の接続端子を有する第1の回路部材と、第2の接続端子を有する第2の回路部材と、の間に介在させ加熱加圧することにより、前記第1の接続端子と前記第2の接続端子とを電気的に接続するための異方導電性接着剤であり、
前記加熱加圧における加熱温度が、第2の絶縁粒子のガラス転移温度より30℃以上高い、請求項9に記載の異方導電性接着剤。
前記異方導電性接着剤が、第1の接続端子を有する第1の回路部材と、第2の接続端子を有する第2の回路部材と、の間に介在させ加熱加圧することにより、前記第1の接続端子と前記第2の接続端子とを電気的に接続するための異方導電性接着剤であり、
前記加熱加圧における加熱温度が、第1の絶縁粒子のガラス転移温度より高い、請求項9又は10に記載の異方導電性接着剤。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0023】
図1は、絶縁被覆導電粒子の一実施形態を示す模式断面図である。本実施形態に係る絶縁被覆導電粒子4は、導電粒子12と、該導電粒子の外側に付着された複数の絶縁粒子13とを備える。導電粒子12は、プラスチック核体10及び該プラスチック核体を被覆する金属被膜11を有する。また、絶縁粒子13は、第1の絶縁粒子13aと、第2の絶縁粒子13bとを有し、導電粒子12の表面の一部を被覆する。
【0024】
本実施形態で用いる導電粒子12の平均粒径は1〜10μmであり、好ましくは2〜5μmであり、より好ましくは2〜3μmである。導電粒子12の平均粒径が1μm以上であると、電極の高さばらつきを吸収することができ、導通信頼性を向上することができる。また、導電粒子12の平均粒径が10μm以下であると、絶縁信頼性に優れる。
【0025】
ここで述べる導電粒子12の平均粒径は、電子顕微鏡(SEM)により数千〜数万倍の倍率で100個程度の導電粒子を撮影した後、画像解析により粒子直径を測定し、その平均を求めたものとする。本実施例における粒子直径はHITACHI S−4800(日立ハイテク株式会社製、商品名)により測定した。また、導電粒子12の平均粒径は、プラスチック核体10の平均粒径を上記と同様な方法で測定した後、金属被膜11の厚さを測定してそれらを合計して求めることもできる。なお、金属被膜11の厚さは、原子吸光光度計及びSEMの断面観察等の一般的な手法で測定することができる。
【0026】
導電粒子は金属のみからなる粒子であってもよく、めっき等の方法で有機又は無機核体に金属の導電性被膜を被覆したものでもよい。導電粒子の粒径のばらつきを小さくすることができる点から、プラスチック核体を金属被覆したものが好ましい。プラスチック核体10に金属被膜11を被覆する方法は特に限定されないが、例えばスパッタリング法及びめっき法が挙げられる。これらの中で、簡便性の点からめっき法が好ましい。
【0027】
めっき等で被覆する金属としては特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、パラジウム、ニッケル、錫、クロム、チタン、アルミニウム、コバルト、ゲルマニウム及びカドミウム等の金属、並びに、ITO及びはんだ等の金属化合物が挙げられる。耐腐食性の観点から、被覆する金属は、ニッケル、パラジウム及び金からなる群より選ばれる1つ以上の金属が好ましい。また、導通信頼性及び硬さを向上するため、カーボンナノチューブ及びカーボンブラック等のカーボン化合物を上記金属と混合することもできる。
【0028】
上記金属被膜11は、単層構造であってもよく、複数の層からなる積層構造であってもよい。単層構造である場合、めっき層としては、コスト、導通信頼性及び耐腐食性の観点からニッケルが好ましい。さらに、近年のガラス電極の平坦化を考えると、導通信頼性を向上するため、表面に突起を有するニッケルめっきが好ましい。また、複層構造である場合、導通信頼性等の観点から、ニッケルの外側に金又はパラジウムのような貴金属を有するものが好ましい。
【0029】
上記金属被膜11に突起を形成させる方法としては、めっきの異常析出による方法と芯材を用いる方法が挙げられるが、突起形状の均一化を考慮した場合、芯材を用いる方法が好ましい。芯材としては、ニッケル、炭素、パラジウム及び金等の導電性材料並びにプラスチック、シリカ及び酸化チタン等の非導電性材料が挙げられる。芯材に強磁性材料を用いると、絶縁粒子を被覆する段階で磁性凝集が大きくなり、絶縁粒子13を付着させることが困難になるため、例えば強磁性材料であるニッケルを芯材にする場合、芯材は更にリン等の非磁性材料をも含むのが好ましい。
【0030】
突起の大きさは、30〜300nmであることが好ましく、50〜200nmであることがより好ましい。突起の大きさが300nm以下であるとショート確率が低減し、大きさが30nm以上であるとより優れる導通信頼性が得られる。突起の被覆率は、導電粒子12の総表面積に対して5〜60%であることが望ましい。また、突起の大きさは、導電粒子12の平均粒径に含まれていないものとする。なお、突起の被覆率は、SEM像の画像解析により求めることができる。
【0031】
金属被膜11の厚みは特に限定されないが、0.001〜1.0μmが好ましく、0.005〜0.3μmがより好ましい。
【0032】
金属被膜11の厚みが0.001μm以上であると導通不良をより高度に防止でき、1μm以下であると導通信頼性により優れる。
【0033】
プラスチック核体10の材料は特に限定されないが、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン樹脂及びオレフィンとアクリル酸との共重合体等が挙げられる。導通信頼性の観点から、プラスチック核体10は、オレフィンとアクリル酸との共重合体であることが好ましく、ジビニルベンゼンとアクリル酸との共重合体であることがより好ましい。
【0034】
導電粒子12を被覆する絶縁粒子13としては、特性の異なる2種類の樹脂粒子を用いる。すなわち、絶縁粒子13は、第1の絶縁粒子13aと、該第1の絶縁粒子13aよりもTgが低い第2の絶縁粒子13bを含む。
【0035】
第2の絶縁粒子13bのTgは、第1の絶縁粒子13aのTgよりも5℃以上低いことが好ましく、10℃以上低いことがより好ましい。これにより、上記絶縁被覆導電粒子4を用いる異方導電性接着剤を回路接続の用途に用いる場合の加熱加圧するときの加熱温度により第1の絶縁粒子を完全に溶融せずに第2の絶縁粒子を充分に溶融し、導通信頼性及び絶縁信頼性が共に優れる絶縁被覆導電粒子4が得られる。なお、第2の絶縁粒子13bのTgと第1の絶縁粒子13aのTgとの差の上限は特に限定されないが、例えば50℃以下とすることができる。
【0036】
なお、異方導電性接着剤を回路接続の用途に用いる場合の加熱温度は一般的に120〜220℃であるため、上記のような第1の絶縁粒子13aのTgは、100〜150℃であるのが望ましい。
【0037】
第2の絶縁粒子13bは、導通信頼性を実質阻害しないように、溶融し易い方がよく、Tgが80〜120℃であることが好ましく、90〜120℃であることがより好ましい。Tgが80℃以上であると、熱圧着時に上記絶縁粒子が完全に溶融せず、絶縁信頼性がよりよくなる。Tgが120℃以下の場合、上記絶縁粒子が充分に溶融し、優れる導通信頼性を保つことができる。
【0038】
なお、第2の絶縁粒子13bのTgは、異方導電性接着剤の回路接続の用途に用いる場合の加熱加圧するときの加熱温度より30℃以上低い方がよい。第2の絶縁粒子13bのTgと、回路接続の用途に用いる場合の加熱加圧するときの加熱温度との差が30℃以上であると、充分な絶縁粒子の溶融が得られる。
【0039】
第1の絶縁粒子13aの平均粒径が、第2の絶縁粒子13bの平均粒径より大きいことが望ましい。好ましくは、第2の絶縁粒子13bの平均粒径は、第1の絶縁粒子13aの平均粒径の1/10〜1/1.5であり、より好ましくは、1/5〜1/1.5であり、更に好ましくは1/4〜1/2である。これにより、第2の絶縁粒子は、第1の絶縁粒子に被覆されていない隙間に付着して導電粒子を被覆することができる。
【0040】
第1の絶縁粒子13aの平均粒径は、200nmよりも大きく、500nm以下であることが好ましい。第1の絶縁粒子13aの平均粒径が200nmより大きい場合、絶縁スペーサーとして充分機能し、より優れる絶縁信頼性が得られる。また、平均粒径が500nm以下であると、該絶縁粒子をより容易に導電粒子12に被覆することができる。
【0041】
第2の絶縁粒子13bは、最後の絶縁安全装置として機能するだけでなく、絶縁被覆導電粒子4の樹脂への分散性を増加させる。かかる第2の絶縁粒子13bの平均粒径は、50〜200nmであることが好ましい。平均粒径が50nm以上であると、絶縁粒子の合成が容易になるだけではなく、絶縁スペーサーとして充分機能することができる。平均粒径が200nm以下であると、実質的に導通を阻害せず、更に、より良く第1の絶縁粒子に被覆されていない隙間に付着して導電粒子を被覆し、第1の絶縁粒子と第2の絶縁粒子による導電粒子の被覆率(以下、全被覆率ともいう。)を向上することができ、充分な絶縁信頼性が得られる。
【0042】
絶縁粒子13の粒径のばらつき(以下、CVともいう。)は10%以下であることが望ましく、3%以下であることがより望ましい。CVが10%以下であると、導通信頼性及び絶縁信頼性を向上することができる。
【0043】
なお、導電粒子12が突起を有する場合、絶縁粒子13を導電粒子12に付着し易くする観点から、絶縁粒子13の平均粒径は上記の突起よりも大きいことが望ましい。
【0044】
絶縁粒子13の形状は特に限定されず、球状であっても球状以外であってもよい。球状以外の形状は例えば扁平、赤血球状及び半円型である。なお、赤血球状は、くぼみが片側にしかないもの(おわん型)であってもよく、両側にあるものであってもよい。
【0045】
導電粒子に被覆する絶縁粒子としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリイミド樹脂等を含む粒子が挙げられる。
【0046】
中でもTgをより簡単に制御する観点から、Tgが100℃近辺であるアクリル酸メチル及びスチレンを架橋成分と共重合する架橋したプラスチック微粒子が好ましい。
【0047】
また、柔軟性と耐溶剤性を両立する観点から、シリコンを含むモノマーとアクリルとの共重合体等のような有機無機ハイブリッド型粒子を絶縁粒子として用いることもできる。
【0048】
絶縁粒子13の製造方法としてはソープフリー乳化重合が好ましい。
【0049】
絶縁粒子13は、信頼性を向上するために、炭素間の二重結合を有するアルコキシシランを含有する単量体組成物を用いた共重合体であることが好ましい。該アルコキシシランとしては、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。中でも、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを用いることが好ましい。
【0050】
炭素間の二重結合を有するアルコキシシランの含有量は、単量体組成物全量に対して0.5〜5モル%であることが好ましい。
【0051】
ラジカル重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルベンゾエート、ペルオキソ二硫酸カリウム、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2−アゾビスイソブチロ二トリル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
ソープフリー乳化重合を行う際には親水性のモノマーを入れることで、より安定的に粒子を合成することができて、粒径の制御もより容易になる。親水性モノマーの具体的な例としてはスチレンスルホン酸ナトリウム、メタクリル酸及びメタクリル酸ナトリウムが挙げられる。
【0053】
親水性モノマーの含有量は、単量体組成物全量に対して、0.1〜30モル%であることが好ましい。
【0054】
絶縁粒子13のTgは、架橋材の濃度又はアルキルアクリレート等の成分を入れることで調整することは可能である。架橋材の添加は、Tgを上昇させる傾向があり、逆に、アルキルアクリレート等の低Tgの成分の比率を上げることでTgを下げることができる。
【0055】
架橋剤は、Tgを上昇させる他、絶縁粒子の耐溶剤製及び耐熱性をも向上させる。架橋剤として具体的には、ジビニルベンゼン及びジアクリレート等が好ましい。また、架橋剤の含有量は合成のし易さの観点から、絶縁粒子13の全モノマーに対して0〜10モル%であることが好ましく、更に特性を鑑みると、架橋剤の含有量は1〜5モル%であることがより好ましい。
【0056】
ソープフリー乳化重合の方法は、当業者にとって周知である。好ましくは、例えば、合成用のモノマー、水及び重合開始剤をフラスコに入れて、窒素雰囲気下において100〜500min
−1(100〜500rpm)攪拌速度で撹拌しながら行う。全モノマーの含有量は溶媒の水に対して1〜20質量%であることが望ましい。
【0057】
また、ソープフリー乳化重合の重合温度は40〜90℃であることが好ましく、重合時間は2時間から15時間の範囲が好ましい。適切な重合温度及び時間は、当業者が適宜に選択することができる。
【0058】
絶縁粒子13を導電粒子12に付着させる方法としては、特に限定されないが、例えば官能基付きの導電粒子12に官能基付きの絶縁粒子13を付着させる方法等が挙げられる。そのため、絶縁粒子13は、外側に水酸基やシラノール基、カルボキシル基等反応性が良好な官能基を有していることが望ましい。
【0059】
導電粒子12の表面には、水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基及びアルコキシカルボニル基等の官能基が形成されていることが好ましい。導電粒子12がこれらの官能基を表面に有することにより、絶縁粒子13の表面の官能基と、脱水縮合による共有結合や水素結合等強固な結合を形成することができる。
【0060】
導電粒子12が金又はパラジウム表面を有する場合、金又はパラジウムに対して配位結合を形成するメルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基のいずれかを有する化合物を用いて金属層表面に水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基からなる群より選ばれる1つ以上の官能基を導入するとよい。具体的には、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、メルカプト酢酸メチル、メルカプトコハク酸、チオグリセリン、システイン等が用いられる。
【0061】
導電粒子12がニッケル表面を有する場合、ニッケルに対して強固な結合を形成するシラノール基若しくは水酸基を有する化合物、又は窒素化合物でニッケル表面に水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基からなる群より選ばれる1つ以上の官能基を導入するとよい。具体的にはカルボキシベンゾトリアゾール等が用いられる。
【0062】
金属層表面を上記化合物で処理する方法としては特に限定されないが、メタノール又はエタノール等の有機溶媒中に、メルカプト酢酸又はカルボキシベンゾトリアゾール等の化合物を10〜100mmol/Lの濃度で分散し、その中に金属層表面を有する導電粒子を分散させる方法がある。
【0063】
しかし、水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基を有する導電粒子12の表面電位(ゼータ電位)は、pHが中性領域であるとき、通常マイナスである。一方、水酸基を有する絶縁粒子13の表面電位も通常マイナスである。表面電位がマイナスの粒子の表面を、表面電位がマイナスの粒子で充分に被覆するのは難しい場合が多いが、これらの間に高分子電解質層を設けることにより、効率的に絶縁粒子13を導電粒子12に付着させることができる。
【0064】
さらに、高分子電解質層を設けることにより、導電粒子12の表面に絶縁粒子13を欠陥なく均一に被覆することができる。これにより、回路電極間隔が狭ピッチでも絶縁信頼性が確保される一方、電気的に接続する電極間では接続抵抗が低く、導通信頼性が良好である。
【0065】
官能基を有する絶縁粒子13を、高分子電解質を介して官能基を有する導電粒子12の外側に付着させる方法としては特に限定されないが、高分子電解質と絶縁粒子13とを交互に積層する方法が好ましい。より具体的な製造方法としては、
(1)官能基を有する導電粒子12を、高分子電解質を含む溶液に分散させ、官能基を有する導電粒子12の表面の少なくとも一部に高分子電解質を吸着させてリンスする工程と、
(2)高分子電解質を吸着させた導電粒子12を、絶縁粒子13を含む溶液に分散させ、高分子電解質を吸着させた、官能基を有する導電粒子12の表面の少なくとも一部に絶縁粒子を付着させてリンスする工程と、
を含む。上記の方法により、表面に高分子電解質と絶縁粒子13とが積層された絶縁被覆導電粒子4を製造できる。
【0066】
このような方法は、交互積層法(Layer−by−Layer assembly)と呼ばれる。交互積層法は、G.Decherらによって1992年に発表された有機薄膜を形成する方法である(Thin Solid Films、210/211、p831(1992))。この方法では、正電荷を有するポリマー電解質(ポリカチオン)と負電荷を有するポリマー電解質(ポリアニオン)とを含む水溶液に、基材を交互に浸漬させる。これにより、基板上に静電的引力によって吸着したポリカチオンとポリアニオンの組が積層して複合膜(交互積層膜)が得られる。
【0067】
交互積層法では、静電的な引力によって、基材上に形成された材料の電荷と、溶液中の反対電荷を有する材料とが引き合うことにより膜成長する。吸着が進行して電荷が中和されると、それ以上の吸着が起こらなくなる。したがって、ある飽和点までに至れば、それ以上膜厚が増加することは実質的にない。Lvovらは交互積層法を、微粒子に応用し、シリカ、チタニア及びセリアの各微粒子分散液を用いて、微粒子の表面電荷と反対電荷を有する高分子電解質を交互積層法で積層する方法を報告している(Langmuir、Vol.13、(1997)p6195−6203)。この方法を用いると、負の表面電荷を有する絶縁粒子とその反対電荷を持つポリカチオンであるポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(PDDA)又はポリエチレンイミン(PEI)等とを交互に積層することで、絶縁粒子と高分子電解質が交互に積層された微粒子積層薄膜を形成することが可能である。
【0068】
官能基を有する導電粒子12を、高分子電解質を含む溶液に浸漬した後、絶縁粒子13を含む分散液に浸漬する前に、溶媒のみのリンスによって余剰の高分子電解質を含む溶液を洗い流すことが好ましい。また、高分子電解質を吸着させた導電粒子12を、絶縁粒子13を含む分散液に浸漬した後も、溶液のみのリンスによって余剰の絶縁粒子13を含む分散液を洗い流すことが好ましい。
【0069】
このようなリンスに用いる溶液としては、水、アルコール、アセトン、及びそれらの混合溶媒等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
高分子電解質は、導電粒子12の表面に導入された上記官能基と吸着可能なものである。この高分子電解質は、上記官能基に例えば静電的に吸着されている。かかる高分子電解質としては、水溶液中で電離し、荷電を有する官能基を主鎖又は側鎖に持つ高分子(ポリアニオン又はポリカチオン)を用いることができる。ポリアニオンとしては、一般的に、スルホン酸、硫酸、カルボン酸等負の電荷を帯びることのできる官能基を有するものが挙げられるが、導電粒子12及び/又は絶縁粒子13の表面電位がマイナスの場合、ポリカチオンを用いるのがよい。ポリカチオンとしては、一般に、ポリアミン類等のように正荷電を帯びることのできる官能基を有するもの、例えば、PEI、ポリアリルアミン塩酸塩(PAH)、PDDA、ポリビニルピリジン(PVP)、ポリリジン、ポリアクリルアミド及びそれらを少なくとも1種以上を含む共重合体等を用いることができる。中でも、PEIは電化密度が高く、結合力が強いため、PEIを用いることが好ましい。
【0071】
これらの高分子電解質の中でも、エレクトロマイグレーション及び腐食を避けるために、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)イオン、アルカリ土類金属(Ca、Sr、Ba、Ra)イオン及びハロゲン化物イオン(フッ素イオン、クロライドイオン、臭素イオン、ヨウ素イオン)を実質的に含まないものが好ましい。
【0072】
これらの高分子電解質は、いずれも水溶性又はアルコール等の有機溶媒に可溶なものである。高分子電解質の重量平均分子量としては、用いる高分子電解質の種類により一概には定めることができないが、一般に、1,000〜200,000のものが好ましく、10,000〜200,000のものがより好ましく、20,000〜100,000のものが更に好ましい。高分子電解質の重量平均分子量が1,000〜200,000であると、充分な導電粒子12の分散性が得られ、導電粒子12の平均粒径が3μm以下であっても、導電粒子12同士の凝集を防ぐことができる。
【0073】
上記高分子電解質溶液は、水又は有機溶媒の混合媒に溶解したものである。使用できる水溶性の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル等が挙げられる。
【0074】
なお、溶液中の高分子電解質の濃度は、一般に、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.03〜3質量%であることがより好ましく、0.1〜1質量%であることが更に好ましい。高分子電解質の濃度が0.01質量%〜10%であると、接着性を向上することができる。また、高分子電解質溶液のpHは、特に限定されない。
【0075】
また、高分子電解質の種類、重量平均分子量又は濃度を調整することにより、絶縁粒子13による導電粒子12の被覆率をコントロールすることができる。
【0076】
具体的には、PEI等電荷密度の高い高分子電解質を用いた場合、絶縁粒子13による被覆率が高くなる傾向があり、PDDA等電荷密度の低い高分子電解質を用いた場合、絶縁粒子13による被覆率が低くなる傾向がある。また、高分子電解質の重量平均分子量が大きい場合、絶縁粒子13による被覆率が高くなる傾向があり、高分子電解質の重量平均分子量が小さい場合、絶縁粒子13による被覆率が低くなる傾向がある。さらに、高分子電解質を高濃度で用いた場合、絶縁粒子13による被覆率が高くなる傾向があり、高分子電解質を低濃度で用いた場合、絶縁粒子の被覆率が低くなる傾向がある。かかる高分子電解質の種類、重量平均分子量及び濃度は、当業者が適宜に選択することができる。
【0077】
導電粒子12の粒径が小さくなるにつれて磁性凝集が大きくなり、絶縁粒子を付着させるのが困難になる。その場合、導電粒子12の表面に好ましくは重量平均分子量が1,000以上のポリマーを有すると、導電粒子12の分散が促進され、付着が容易になる。
【0078】
また、絶縁粒子13も表面に重量平均分子量が500〜10,000、より好ましくは重量平均分子量が1,000〜4,000のポリマー又はオリゴマーが存在することが望ましい。かかるポリマー又はオリゴマーは、重量平均分子量が1,000〜4,000の官能基を有するシリコーンオリゴマーであることが望ましい。官能基としては、上記の高分子電解質と反応するものであるのが好ましく、グリシジル基、カルボキシル基、又はイソシアネート基がより好ましく、中でもグリシジル基が特に好ましい。これにより、絶縁粒子13の分散性をより良好にすると同時に、ポリマーもしくはオリゴマー上の官能基と、導電粒子12上の官能基とを反応させることでより強固な結合が期待できる。
【0079】
このように、化学反応性のポリマーを有する粒子同士を結合させることにより、従来にはない強固な結合が得られる。特に、導電粒子12の小径化及び絶縁粒子13の大径化に対応できる。
【0080】
第1の絶縁粒子13aの被覆率は、導電粒子12の総表面積に対して20〜50%であることが好ましい。第1の絶縁粒子13aの被覆率が20%以上であると、より良好な絶縁信頼性が得られる。一方、被覆率が50%以下であると、より優れた導通信頼性が得られる。被覆率とは、絶縁被覆導電粒子のSEM写真における導電粒子12の中心部(導電粒子12の外周円の直径の半分の長さを直径とし、当該外周円と同心円状の円)を解析することにより算出することができるものをいう。具体的には、上記SEM写真における導電粒子12の中心部の総表面積をW(導電粒子の粒子径から算出した面積)、上記SEM写真における導電粒子12の中心部のうち、絶縁粒子13で被覆されていると分析された部分の表面積をPとしたときに、被覆率はP/W×100(%)と表される。なお、本実施形態における上記被覆されていると分析された部分の表面積Pは、絶縁被覆導電粒子のSEM写真200枚から求めた表面積の平均値である。
【0081】
第1の絶縁粒子13aで被覆されていない導電粒子の表面が第2の絶縁粒子13bで覆われていることにより、より良好な絶縁信頼性が得られる。第1の絶縁粒子13a及び第2の絶縁粒子13bによる導電粒子の被覆率は、導電粒子の総表面積に対して35〜75%であることが好ましく、40〜75%であることがより好ましく、50〜75%であることが更に好ましく、60〜75%であることが最も好ましい。被覆率が35%以上であると、絶縁信頼性を向上することができる。一方、被覆率が75%以下であると、効率よく導電粒子を絶縁粒子で被覆することができる。
【0082】
絶縁被覆導電粒子において、一般的には、絶縁粒子の被覆率が高い場合、絶縁信頼性が高く導通信頼性が悪くなる傾向があり、絶縁粒子の被覆率が低い場合、導通信頼性が高く絶縁信頼性が悪くなる傾向がある。しかし、本実施形態のTgが異なる2種類の絶縁粒子を用いた場合、被覆率を上げても良好な導通信頼性が保たれ、絶縁信頼性と導通信頼性が共に優れる絶縁被覆導電粒子を得ることができる。
【0083】
また、積層量を容易にコントロールする観点から、絶縁粒子13は一層のみ被覆されているのが好ましい。
【0084】
上記の絶縁被覆導電粒子4は、加熱乾燥することにより絶縁粒子13と導電粒子12との結合を更に強化することができる。結合力が増す理由としては、例えば導電粒子12の表面に導入されたカルボキシル基等の官能基と、絶縁粒子13の表面に導入された水酸基等の官能基との化学結合の強化が挙げられる。加熱乾燥の温度としては60〜100℃、時間は10〜180分がよい。温度が60℃以上であると絶縁粒子13が導電粒子12から剥離し難くなり、100℃以下であると導電粒子12が変形し難くなる。同様に、加熱乾燥の時間が10分以上であると絶縁粒子が剥離し難く、180分以下であると導電粒子12が変形し難くなる。
【0085】
また、表面に官能基を有する絶縁被覆導電粒子4は更に、シリコーンオリゴマー及びオクタデシルアミン等で表面処理することができる。それにより、絶縁被覆導電粒子4の絶縁信頼性を向上させ、絶縁信頼性に優れる絶縁被覆導電粒子を得ることができる。さらに、必要に応じて縮合剤を用いることで絶縁信頼性をより向上することもできる。
【0086】
以上のようにして作製した絶縁被覆導電粒子4を接着剤5中に分散することで異方導電性接着剤として用いることができる。
【0087】
本実施形態の異方導電性接着剤の接着剤としては、熱硬化性樹脂と硬化剤との混合物が用いられる。熱硬化性樹脂としてはラジカル反応性樹脂、硬化剤として有機過酸化物等が挙げられる。また、紫外線等のエネルギー線硬化性樹脂も用いられる。かかる樹脂、硬化剤、有機過酸化物及びエネルギー線は、当業者が必要に応じて選択できる。
【0088】
本実施形態において、接着性の観点から、接着剤を構成する熱硬化性樹脂は好ましくはエポキシ樹脂である。用いられるエポキシ樹脂としては、エピクロルヒドリン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD等から誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリン、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等から誘導されるエポキシノボラック樹脂、ナフタレン環を含む骨格を有するナフタレン系エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエーテル、ビフェニル及び脂環式等の1つの分子内に2個以上のグリシジル基を有する化合物等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0089】
これらのエポキシ樹脂は、不純物イオン(Na
+、Cl
−等)及び加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることがエレクトロマイグレーション防止のために好ましい。
【0090】
また、硬化剤としては例えば潜在性硬化剤が用いられる。潜在性硬化剤としては、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド系、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド系等が挙げられる。
【0091】
接着後の応力を低減するため、あるいは接着性を向上するために、接着剤は更にブタジエンゴム、アクリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴム等のゴムを含有することができる。
【0092】
異方導電性接着剤はフィルム状としてもペースト状としても用いることができる。異方導電性接着剤をフィルム状にするためには、接着剤にフェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂をフィルム形成高分子として配合することが効果的である。これらの熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂の硬化時の応力緩和の効果も有する。また、フィルム形成性高分子が水酸基等の官能基を有する場合、接着性が向上するためより好ましい。
【0093】
異方導電性接着剤フィルムは、例えば、エポキシ樹脂、アクリルゴム、潜在性硬化剤からなる接着剤と、絶縁被覆導電粒子4とを有機溶剤に溶解又は分散させて液状化にする工程と、上記有機溶剤を含有する液状組成物を剥離性基材上に塗布する工程と、塗布された液状組成物から硬化剤の活性温度以下で有機溶剤を除去すること工程とを含む方法により得ることができる。このときに用いる有機溶剤は、材料の溶解性を向上する観点から芳香族炭化水素系と含酸素系との混合溶剤が好ましい。
【0094】
異方導電性接着剤フィルムにおいて、接着剤層を多層化することが好ましい。例えば、異方導電性を付与するために導電性接着層と、絶縁性接着層とをラミネートしてなる二層構成の異方導電性接着剤フィルム及び、導電性接着層と、両側に絶縁性接着層とをラミネートした三層構成の異方導電性接着剤フィルム等が挙げられる。なお、導電性接着層は、上述の絶縁被覆導電粒子を含む。絶縁性接着層を金属バンプ側に配置し、導電性接着層をガラス側に配置することにより、絶縁被覆導電粒子が効率よく金属バンプ側に補足されることができ、狭ピッチ接続に有利である。
【0095】
上記導電性接着層は、接続性の観点からなるべく薄い方が好ましい。一方、絶縁性接着層は導電性接着層よりも厚くて流動性が高い方が好ましい。具体的には導電性接着層の厚みは3〜15μmであり、絶縁性接着層の厚みは7〜20μmである。導電性接着層の厚みが3μm以上15μm以下とすることで、より良好な接続性が得られる。絶縁性接着層の厚みが7μm以上20μm以下であると、流動性に優れる。
【0096】
また、導電性接着層の含有量は、異方導電性接着剤フィルムの全質量の50質量%以下であることが好ましい。
【0097】
さらに、異方導電性接着剤フィルムは、ガラス基板又はITOとの接着性を強化するために、絶縁性接着層を導電性接着層の両面に配置した3層構成であることが好ましい。かかる3層構成の異方導電性接着剤フィルムにおける2層の絶縁性接着層の厚みは、同一でも異なっていてもよいが、例えば一方を2〜15μm、他方を7〜20μmとすることが好ましい。
【0098】
上記の異方導電性接着剤を用いた接続構造体の作製方法の一実施形態を、
図2を用いて説明する。
【0099】
図2は、本発明の絶縁被覆導電粒子を用いた異方導電性接着剤による回路接続方法の一実施形態を示す断面図である。ICチップ1及び該ICチップ上に設けられた金属バンプ2を有する第1の回路部材20と、ガラス基板8及び該ガラス基板上に設けられた電極7を有する第2の回路部材30とを、金属バンプ2及び電極7が向き合うように対向配置する。第1の回路部材20と、第2の回路部材30との間に異方導電性接着剤9を配置する。なお、電極7は、ITO(Indium Tin Oxide)又はIZO(Indium Zinc Oxide)電極である。異方導電性接着剤9は、第1の回路部材20側に配置される絶縁性接着層3、第2の回路部材30側に配置される絶縁性接着層6及び絶縁性接着層3と絶縁性接着層6との間に配置される導電性接着層40の3層構成である。導電性接着層40は、接着剤5及び該接着剤中に分散されている絶縁被覆導電粒子4から構成される。
【0100】
このような状態で全体を加熱及び加圧することにより、
図3の断面図に示されるように、第1の回路部材20と第2の回路部材30とが回路接続された接続構造体100が得られる。かかる加熱及び加圧の条件は、異方導電性接着剤9中の接着剤5の硬化性等に応じて、異方導電性フィルムが硬化して充分な接着強度が得られるように、適宜調整することができる。このようにして作製された接続構造体は、導電粒子が金属バンプ2上に補足され易くなるため、金属バンプとガラス基板8との間により高い導通信頼性が得られる。さらに、補足率向上により、隣接する回路電極間に流れる導電粒子の割合が低減し、絶縁信頼性が向上する。
【実施例】
【0101】
(導電粒子1の作製)
架橋度を調整したジビニルベンゼンとアクリル酸との共重合体からなり、表面にカルボキシル基を有するプラスチック核体を10g準備した。プラスチック核体の平均粒径は2.6μmであった。
【0102】
プラスチック核体の硬さは、2,746MPa(280kgf/mm
2)であった。なお、硬さは、200℃において粒子直径が20%変位したときの圧縮弾性率、20%K値として測定された。
【0103】
次に、プラスチック核体上に無電解ニッケルめっき及び無電解パラジウムめっきをこの順で行い、導電粒子を作製した。得られたニッケル層の厚みは100nmであり、パラジウム層の厚みは16nmであった。
【0104】
(絶縁粒子1〜9の作製)
500mlフラスコに入った純水400g中に表1に示す配合モル比に従ってモノマーを加えた。全モノマーの総量が、純水に対して10質量%になるように配合した。窒素置換後、70℃で撹拌しながら6時間加熱を行った。攪拌速度は300min
−1(300rpm)であった。なお、表1中、KBM−503(信越シリコーン社製、商品名)は、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランである。
【0105】
合成した絶縁粒子1〜9の平均粒径をHITACHI S−4800(日立ハイテク株式会社製、商品名)の画像解析により測定した。その結果を表1に示す。
【0106】
合成した絶縁粒子1〜9のTgを、DSC(パーキンエルマー社製DSC−7型)を用いて、サンプル量10mg、昇温速度5℃/分、測定雰囲気:空気の条件で測定した。
【0107】
【表1】
【0108】
(シリコーンオリゴマー1の調製)
攪拌装置、コンデンサー及び温度計を備えたガラスフラスコに、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン118gとメタノール5.9gを配合した溶液を加えた。さらに、活性白土5g及び蒸留水4.8gを添加し、75℃で一定時間攪拌した後、重量平均分子量1300のシリコーンオリゴマーを得た。得られたシリコーンオリゴマーは、水酸基と反応する末端官能基としてメトキシ基又はシラノール基を有するものである。得られたシリコーンオリゴマー溶液にメタノールを加えて、固形分20重量%の処理液を調製した。
【0109】
なお、シリコーンオリゴマーの重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)法によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算することにより算出した。GPCの条件を以下に示す。
GPC条件
ポンプ:日立 L−6000型((株)日立製作所社製、商品名)
カラム:Gelpack GL−R420、Gelpack GL−R430、Gelpack GL−R440(以上、(株)日立化成工業社製、商品名)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
測定温度:40℃
流量:2.05mL/分
検出器:日立 L−3300型RI((株)日立製作所社製、商品名)
【0110】
[絶縁被覆導電粒子]
(絶縁被覆導電粒子1)
メルカプト酢酸8mmolをメタノール200mlに溶解させて反応液を調製した。次に導電粒子1を10g上記反応液に加え、室温で2時間スリーワンモーターと直径45mmの攪拌羽で攪拌した。メタノールで洗浄後、孔径3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)を用いてろ過することで、表面にカルボキシル基を有する導電粒子を10g得た。
【0111】
次に重量平均分子量70,000の30%ポリエチレンイミン水溶液(和光純薬社製)を超純水で希釈し、0.3重量%ポリエチレンイミン水溶液を得た。上記表面にカルボキシル基を有する導電粒子10gを0.3重量%ポリエチレンイミン水溶液に加え、室温で15分攪拌した。その後、孔径3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)を用いて導電粒子をろ過し、ろ過された導電粒子を超純水200gに入れて室温で5分攪拌した。更に孔径3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)を用いて導電粒子をろ過し、上記メンブレンフィルタ上にて200gの超純水で2回洗浄を行った。これらの作業を行うことにより、吸着していないポリエチレンイミンが除去され、表面がアミノ基含有ポリマーで被覆された導電粒子が得られた。
【0112】
次に、絶縁粒子1をシリコーンオリゴマー1で処理し、表面にグリシジル基含有オリゴマーを有する絶縁粒子1のメタノール分散媒(第1の絶縁粒子のメタノール分散媒)を調製した。一方、絶縁粒子6も同様にシリコーンオリゴマー1で処理し、表面にグリシジル基含有オリゴマーを有する絶縁粒子6のメタノール分散媒(第2の絶縁粒子のメタノール分散媒)を調製した。
【0113】
上記表面がアミノ基含有ポリマーで被覆された導電粒子をイソプロピルアルコールに浸漬し、第1の絶縁粒子のメタノール分散媒を滴下した。第1の絶縁粒子の被覆率は、絶縁粒子1のメタノール分散媒の滴下量で調整した。次いで、第2の絶縁粒子のメタノール分散媒を滴下することで、絶縁被覆導電粒子1を作製した。第2の絶縁粒子の被覆率は、絶縁粒子6の滴下量で調整した。
【0114】
得られた絶縁被覆導電粒子1を縮合剤とオクタデシルアミンで処理し、洗浄して表面の疎水化を行った。その後80℃で1時間の条件で加熱乾燥させて絶縁被覆導電粒子1を作製した。
【0115】
(絶縁被覆導電粒子2〜11)
表2に記載の第1の絶縁粒子と第2の絶縁粒子を用いた以外は絶縁被覆導電粒子1と同様に絶縁被覆導電粒子2〜11を作製した。
【0116】
【表2】
【0117】
(実施例1)
酢酸エチルとトルエンを重量比1:1で混合した溶媒300gに、フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製、商品名:PKHC)100gと、アクリルゴム(ブチルアクリレート40重量部、エチルアクリレート30重量部、アクリロニトリル30重量部、グリシジルメタクリレート3重量部の共重合体、重量平均分子量:85万)75gとを溶解し、溶液を得た。この溶液にマイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ(エボキシ当量185、旭化成エポキシ株式会社製、商品名:ノバキュアHX−3941)300gと、液状エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ株式会社製、商品名:YL980)400gとを加えて撹拌した。得られた混合液に平均粒径が14nmのシリカを溶剤分散したシリカスラリー(日本アエロジル社製、商品名:R202)を加えて接着剤溶液1を調製した。シリカスラリーは、上記混合液の固形分全量に対してシリカ固形分の含有量が5重量%となるように加えた。
【0118】
ビーカーに、酢酸エチルとトルエンとを重量比1:1で混合した分散媒10gと、絶縁被覆導電粒子1を入れて超音波分散した。超音波分散の条件は、周波数が38kHZ、エネルギーが400W、体積が20Lの超音波槽(藤本科学、商品名:US107)に上記ビーカーを浸漬して1分間攪拌した。
【0119】
得られた絶縁被覆導電粒子1の分散液を接着剤溶液1中に分散した。得られた分散液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフイルム、厚み40μm)にロールコータで塗布し、90℃で10分間乾燥し、厚み10μmの接着剤フィルムAを作製した。この接着剤フィルムは単位面積当たり7万個/mm
2の絶縁被覆導電粒子を有する。
【0120】
また、接着剤溶液1をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフイルム、厚み40μm)にロールコータで塗布し、90℃で10分間乾燥し、厚み3μmの接着剤フィルムBを作製した。
【0121】
さらに、接着剤溶液1をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフイルム、厚み40μm)にロールコータで塗布し、90℃で10分間乾燥し厚み10μmの接着剤フィルムCを作製した。
【0122】
次に、接着剤フィルムB、接着剤フィルムA、接着剤フィルムCの順番で各接着剤フィルムをラミネートし、3層からなる異方導電性接着剤フィルムDを作製した。
【0123】
(実施例2)
絶縁被覆導電粒子1の代わりに絶縁被覆導電粒子2を用いた以外は実施例1と同様の方法で異方導電性接着剤フィルムDを作製した。
【0124】
(実施例3)
絶縁被覆導電粒子1の代わりに絶縁被覆導電粒子3を用いた以外は実施例1と同様の方法で異方導電性接着剤フィルムDを作製した。
【0125】
(実施例4)
絶縁被覆導電粒子1の代わりに絶縁被覆導電粒子4を用いた以外は実施例1と同様の方法で異方導電性接着剤フィルムDを作製した。
【0126】
(実施例5)
絶縁被覆導電粒子1の代わりに絶縁被覆導電粒子5を用いた以外は実施例1と同様の方法で異方導電性接着剤フィルムDを作製した。
【0127】
(実施例6)
絶縁被覆導電粒子1の代わりに絶縁被覆導電粒子6を用いた以外は実施例1と同様の方法で異方導電性接着剤フィルムDを作製した。
【0128】
(実施例7)
絶縁被覆導電粒子1の代わりに絶縁被覆導電粒子7を用いた以外は実施例1と同様の方法で異方導電性接着剤フィルムDを作製した。
【0129】
(実施例8)
絶縁被覆導電粒子1の代わりに絶縁被覆導電粒子8を用いた以外は実施例1と同様の方法で異方導電性接着剤フィルムDを作製した。
【0130】
(比較例1)
絶縁被覆導電粒子1の代わりに絶縁被覆導電粒子9を用いた以外は実施例1と同様の方法で異方導電性接着剤フィルムDを作製した。
【0131】
(比較例2)
絶縁被覆導電粒子1の代わりに絶縁被覆導電粒子10を用いた以外は実施例1と同様の方法で異方導電性接着剤フィルムDを作製した。
【0132】
(比較例3)
絶縁被覆導電粒子1の代わりに絶縁被覆導電粒子11を用いた以外は実施例1と同様の方法で異方導電性接着剤フィルムDを作製した。
【0133】
[接続サンプルの作製]
実施例及び比較例で作製した異方導電性接着剤フィルムDを用いて、金属バンプ(面積30×90μm
2、スペース8μm、高さ15μm、バンブ数362個)を備えているチップ(面積1.7×1.7mm
2、厚み0.5μm)と電極を備えているガラス基板(厚み0.7mm)との接続を、以下に示すように行った。
【0134】
異方導電性接着剤フィルムDを、電極を備えているガラス基板に温度が80℃、圧力が0.98MPa(10kgf/cm
2)の条件で貼り付けた後、セパレータを剥離し、チップに備えているバンプと電極を備えているガラス基板の位置合わせを行った。次いで、温度が190℃、圧力が39N/バンプ(40gf/バンプ)の条件でチップ上方から10秒間加熱及び加圧を行い、本接続を行った。なお、異方導電性接着剤フィルムDは、接着剤フィルムBがガラス基板側に、接着剤フィルムCが金属バンプ側になるように配置された。
【0135】
[絶縁抵抗試験及び導通抵抗試験]
実施例及び比較例で作製した異方導電性接着剤フィルムの絶縁抵抗試験及び導通抵抗試験を行った。異方導電性接着剤フィルムは金属バンプ間の絶縁抵抗が高く、金属バンプ/ガラス側電極間の導通抵抗が低いことが重要である。金属バンプ間の絶縁抵抗に関しては初期値の測定を行い、絶縁抵抗の値は20サンプルの平均値より算出した。また、絶縁抵抗が10
9Ω以上の場合の歩留まりを算出し、歩留まりが80%以上であるのを良品とした。また、吸湿耐熱試験は、気温60℃、湿度90%の条件で100時間、20Vで通電することにより行った。
【0136】
また、金属バンプ/ガラス基板側電極間の導通抵抗に関しては初期値及び吸湿耐熱試験後の値を測定し、導通抵抗の値は14サンプルの平均値より算出した。なお、吸湿耐熱試験は、気温85℃、湿度85%の条件で500時間放置することにより行った。
【0137】
[絶縁粒子の被覆率]
絶縁粒子の全被覆率(第1及び第2の絶縁粒子による被覆率)は、絶縁被覆導電粒子のSEM写真を撮影し画像解析し、上述の方法により算出した。被覆率は作製直後の値を測定した。また、第1の絶縁粒子の被覆率は、第1の絶縁粒子を導電粒子に被覆した後のものを同様に測定した。
【0138】
測定結果を表3に示す。各実施例のサンプルによれば、絶縁信頼性及び導通信頼性が共に優れる絶縁被覆導電粒子を提供できる。
【0139】
【表3】