(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5939118
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】基板処理装置、基板処理方法及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20160609BHJP
G03F 7/40 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
H01L21/30 570
G03F7/40 511
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-220632(P2012-220632)
(22)【出願日】2012年10月2日
(65)【公開番号】特開2014-75391(P2014-75391A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2014年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091513
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133776
【弁理士】
【氏名又は名称】三井田 友昭
(72)【発明者】
【氏名】上田 健一
【審査官】
植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−019969(JP,A)
【文献】
特開2005−259862(JP,A)
【文献】
特開2012−087983(JP,A)
【文献】
特開2004−031750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/40
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成されたパターンマスクの荒れを処理容器内にて溶剤の蒸気により改善する処理を行う基板処理装置において、
前記処理容器内に設けられ、前記基板を載置するための載置部と、
前記載置部に載置された基板を前記溶剤の露点温度よりも高い温度に加熱するための基板加熱部と、
前記載置部に載置された基板よりも上方の位置に設けられ、液溜めの空間を形成するように底部及び側周面を備えると共に開口部が形成された液溜め部と、
前記液溜め部に溶剤を供給するための溶剤供給部と、
前記液溜め部に貯留された溶剤を加熱して気化させるための溶剤加熱部と、
前記載置部に載置された基板と前記液溜め部との間に設けられ、前記溶剤の気化により得られた溶剤蒸気を前記処理容器内に自然拡散させるための拡散部材と、
前記処理容器内の雰囲気を排気するための排気部と、を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記溶剤供給部は、一枚の基板を処理するのに必要な量だけ溶剤を液溜め部に供給し、前記液溜め部に貯留された溶剤の蒸発が終了した後に、前記排気部による排気を行うように制御信号を出力する制御部を備えることを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記液溜め部は、横方向に複数配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記液溜め部の溶剤の蒸発が終了した後、液溜め部の温度を下げるための冷却機構を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記溶剤加熱部は、前記液溜め部の上方側に配置された輻射光源部であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
基板に形成されたパターンマスクの荒れを処理容器内にて溶剤の蒸気により改善する処理を行う基板処理方法において、
基板を処理容器内の載置部に載置する工程と、
前記載置部に載置された基板よりも上方の位置に設けられた液溜めの空間を形成するように底部及び側周面を備えると共に開口部が形成された液溜め部に溶剤を供給する工程と、
前記載置部に載置された基板を前記溶剤の露点温度よりも高い温度に加熱した後、前記液溜め部に貯留された溶剤を加熱して気化させ、前記載置部に載置された基板と前記液溜め部との間に設けられた拡散部材により、前記溶剤の気化により得られた溶剤蒸気を前記処理容器内に自然拡散させて基板の表面に供給する工程と、
この工程の後、前記処理容器内の雰囲気を排気する工程と、を含むことを特徴とする基板処理方法。
【請求項7】
前記液溜め部には、1枚の基板を処理するのに必要な量だけ溶剤が供給され、前記液溜め部に貯留された溶剤の蒸発が終了した後に、前記排気部による排気を行う工程を含むことを特徴とする請求項6記載の基板処理方法。
【請求項8】
溶剤の蒸発が終了した後、前記液溜め部を強制的に冷却する工程を含むことを特徴とする請求項6または7に記載の基板処理方法。
【請求項9】
溶剤を加熱して気化させる工程は、液溜め部の上方側に配置された輻射光源部からの輻射光の照射により溶剤を加熱する工程であることを特徴とする請求項6ないし8のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
基板に形成されたパターンマスクの荒れを処理容器内にて溶剤の蒸気により改善する処理を行う基板処理装置に用いられるコンピュータプログラムを記憶した記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、請求項6ないし9のいずれか一項に記載された基板処理方法を実行するようにステップ群が組み込まれていることを特徴とする記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に形成されたパターンマスクの荒れを溶剤により改善する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
露光、現像処理後に基板に形成されたレジストパターンの表面には、微細な凹凸が存在し、後の工程でエッチング処理を行うときに、この表面の凹凸がパターン線幅に悪影響を及ぼす場合があることが知られている。このため、レジストパターンのラフネス(LER;Line Edge Roughness)やパターン線幅のばらつき(LWR:Line Width Roughness)を改善するスムージング処理が提案されている。このスムージング処理は、レジストを溶解する有機溶剤蒸気をレジストパターンに吹き付けて、有機溶剤をレジストパターンの表層部に膨潤させることにより行われる。これにより、表層部が有機溶剤に溶解して平滑化され、パターン表面の荒れが改善されてパターン形状が修正される。
【0003】
スムージング処理の手法としては、特許文献1に示すように、ノズルと基板とを相対的に移動させながら、ノズルから溶剤蒸気を基板に対して供給し、基板の処理膜の表面のみを溶解することにより、基板の処理膜の表面荒れを改善する技術がある。この手法では、ノズルから基板表面に向かって、溶剤蒸気を圧送供給するため基板表面の特定の部位に向かって溶剤蒸気を噴出する。そのため溶剤蒸気の濃度を面内で均一にすることが難しくウエハ面内のラフネスの改善処理にばらつきが生じることがあった。また蒸気の噴出による気流のためにマスクパターンに「よれ」や「倒れ」などの乱れが生じることがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、基板に形成されたパターンマスクに溶剤蒸気を供給して、パターンマスクの荒れを改善する処理を行うにあたり、基板表面で均一性の高い処理を行うと共に、パターンのよれや倒れの発生を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の基板処理装置は、基板に形成されたパターンマスクの荒れを処理容器内にて溶剤の蒸気により改善する処理を行う基板処理装置において、
前記処理容器内に設けられ、前記基板を載置するための載置部と、
前記載置部に載置された基板を前記溶剤の露点温度よりも高い温度に加熱するための基板加熱部と、
前記載置部に載置された基板よりも上方の位置に設けられ、
液溜めの空間を形成するように底部及び側周面を備えると共に開口部が形成された液溜め部と、
前記液溜め部に溶剤を供給するための溶剤供給部と、
前記液溜め部に貯留された溶剤を加熱して気化させるための溶剤加熱部と、
前記載置部に載置された基板と前記液溜め部との間に設けられ、
前記溶剤の気化により得られた溶剤蒸気を
前記処理容器内に自然拡散させるため
の拡散部材と、
前記処理容器内の雰囲気を排気するための排気部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の基板処理方法は、基板に形成されたパターンマスクの荒れを処理容器内にて溶剤の蒸気により改善する処理を行う基板処理方法において、
基板を処理容器内の載置部に載置する工程と、
前記載置部に載置された基板よりも上方の位置に設けられた
液溜めの空間を形成するように底部及び側周面を備えると共に開口部が形成された液溜め部に溶剤を供給する工程と、
前記載置部に載置された基板を前記溶剤の露点温度よりも高い温度に加熱した後、前記液溜め部に貯留された溶剤を加熱して気化させ、前記載置部に載置された基板と前記液溜め部との間に設けられた拡散部材により、
前記溶剤の気化により得られた溶剤蒸気を
前記処理容器内に自然拡散させて基板の表面に供給する工程と、
この工程の後、前記処理容器内の雰囲気を排気する工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の記憶媒体は、基板に形成されたパターンマスクの荒れを処理容器内にて溶剤の蒸気により改善する処理を行う基板処理装置に用いられるコンピュータプログラムを記憶した記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、上述の基板処理方法を実行するようにステップ群が組み込まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、処理容器内で溶剤を加熱して蒸気を発生させ、自然拡散と拡散板の拡散(分散)作用により、処理雰囲気に濃度均一性の高い溶剤雰囲気を形成している。このため高い均一性を持って、基板表面におけるパターンマスクの荒れの改善処理(スムージング処理)を行うことができる。またパターンのよれや倒れの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係る基板処理装置を備えた塗布、現像装置の平面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る基板処理装置を備えた塗布、現像装置の斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る基板処理装置を示す縦断側面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る基板処理装置の拡散板の上面側の構成を示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る基板処理装置の液溜め部の構成を示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る基板処理装置の基板表面の平坦化の工程を示す説明図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る基板処理装置の基板表面の平坦化の工程を示す説明図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る基板処理装置の基板表面の平坦化の工程を示す説明図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係る基板処理装置の基板表面の平坦化の工程を示す説明図である。
【
図10】本発明の実施の形態に係る基板処理装置の基板表面の平坦化の工程を示す説明図である。
【
図11】本発明の実施の形態に係る基板処理装置の基板表面の平坦化の工程を示す説明図である。
【
図12】本発明の実施の形態に係る基板処理装置の基板表面の平坦化の工程を示す説明図である。
【
図13】本発明の他の実施の形態に係る基板処理装置の液溜め部の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係る基板処理装置1を組み込んだ塗布、現像装置に露光装置を接続したレジストパターン形成システムの一例について
図1及び
図2を参照しながら説明する。この装置は、キャリアブロックS1と、処理ブロックS2と、インターフェイスブロックS3と、を直線状に接続して構成されている。インターフェイスブロックS3には、さらに露光装置S4が接続されている。
キャリアブロックS1は、半導体ウエハ(以下ウエハという)Wが複数収納されたキャリアCを装置内に搬入出する役割を有し、キャリアCの載置台11と、開閉部12と、開閉部12を介してキャリアCからウエハWを搬送するための搬送機構13とを備えている。
【0012】
処理ブロックS2はウエハWに液処理を行うための第1〜第6の単位ブロックB1〜B6が下から順に積層されて構成され、各単位ブロックB1〜B6は、概ね同じ構成である。
図2において各単位ブロックB1〜B6に付したアルファベット文字は、処理種別を表示しており、BCTは反射防止膜形成処理、COTはレジスト膜形成処理、DEVは現像処理を表している。
図1中の単位ブロックの構成は、単位ブロックB5を代表して示している。
【0013】
単位ブロックB5には、キャリアブロックS1からインターフェイスブロックS3へ向かう直線状の搬送領域R5を移動するメインアームA5と、ウエハWに現像処理を施す現像ユニット10と、ウエハWを加熱、冷却するための熱系モジュール8を積層した棚ユニットU1〜U5と、を備えている。単位ブロックB5における棚U1の位置には、現像処理後のパターンマスクの荒れの処理を行う基板処理装置1が設けられている。単位ブロックB5内においては、メインアームA5により、モジュール間を搬送され夫々の処理ユニットとの間でウエハWの受け渡しが行われる。
【0014】
搬送領域R5のキャリアブロックS1側には、互いに積層された複数のモジュールにより構成されている棚ユニットU7が設けられている。搬送機構13とメインアームA5との間のウエハWの受け渡しは、棚ユニットU7のモジュールと受け渡しアーム30とを介して行なわれる。インターフェイスブロックS3は、処理ブロックS2と露光ステーションS4との間でウエハWの受け渡しを行うためのものであり、複数のモジュールが互いに積層された棚ユニットU8、U9、U10を備えている。
【0015】
この塗布、現像装置では、キャリアCにより搬送されたウエハWは搬送機構13により、処理ブロックS2に搬送され、反射防止膜形成(BCT)層B1(B2)→レジスト膜形成(COT)層B3(B4)の順に搬送され、インターフェイスブロックS3を介して露光装置S4へと搬送され露光処理が行われる。露光装置S4にて所定の露光処理が行われた後、棚ユニットU8の受け渡しモジュールに載置されて、処理ブロックS2へと戻される。戻されたウエハWは、単位ブロックB5、B6(DEV層)にて現像処理が行われ、パターンマスクが形成された後、基板処理装置1に搬送され、ここで後述の表面処理が行われる。次いで、当該ブロック内において、処理モジュール群に設けられた冷却モジュールに搬送され、ここで所定の温度例えば23℃に冷却された後、棚ユニットU7における搬送機構13のアクセス範囲の受け渡し台に搬送され、搬送機構13を介してキャリアに戻される。
【0016】
本発明の実施の形態に係る基板処理装置1の構成について
図3〜
図5を用いて説明する。なお図中の部材の高さ方向の寸法は、説明の便宜上、実寸法と異なるように示している。この基板処理装置1は、露光、現像処理によりパターンマスクであるレジストパターンが形成されたウエハWに対して、前記レジストパターンの荒れを改善する表面処理を行うための装置である。基板処理装置1は、筐体2を備え、筐体2の側面部には、搬送領域R5に設けられたメインアームA5との間でウエハWを受け渡すための開口部21が設けられている。筐体2の内部には処理雰囲気を形成するための処理容器3が設けられている。この処理容器3は基体4と、この基体4の上面を覆うように設けられた蓋体5とにより上下に分割可能に構成され、開閉自在な処理容器3をなすものであり、筐体2の底面部の上に支持部材22を介して支持されている。処理容器3は例えば扁平な円筒形状に形成される。
【0017】
基体4は、例えばステンレスにより扁平な円筒形状に構成され、その上面にウエハWを載置するための載置部であるステージ41を備えている。基体4の上面側の周縁部には、全周に亘ってOリング42が設けられており、蓋体5と重ね合され処理容器3を構成したときに、内部が気密となるように構成されている。このステージ41の内部には基板加熱部をなす加熱ヒータ43が設けられており、ステージ41に載置されるウエハが、後述する溶剤の露点温度より高く、当該溶剤の沸点よりも低い温度に加熱されるようになっている。また、このステージ41に対しては、昇降機構44により昇降自在に設けられた突き上げピン45により、前述の搬送領域R5に設けられたメインアームA5との間で、開口部21を介してウエハWの受け渡しが行われるようになっている。この例では、加熱ヒータ43はステージ41に内蔵されているが、ステージ41に載置されるウエハWが加熱される構成であればよい。
【0018】
蓋体5は下面が開口している扁平な円筒形状に構成され、側壁部26と天板部25とからなる。蓋体5は大部分がステンレス製であるがこの例では、後述の溶剤加熱部であるLED光源部65に対応する部位が石英により形成された石英窓27となっている。蓋体5は基体4の上面に接触して処理容器3を閉じた状態とする下降位置と、ウエハWをメインアームA5に対して受け渡すときの上昇位置との間で昇降できるように構成される。この例では蓋体5の昇降動作は、蓋体5の外周面に取り付けられた昇降アーム23を、筐体2の底面部に設けられた昇降機構24により駆動することにより行われる。蓋体5の側壁部26の下面は、その周縁領域が基体4の上面に、Oリング42を介して載置される接合面として構成される。
【0019】
蓋体5の内側には、天井面と隙間を介して対向するように、拡散板(整流板)51が設けられる。拡散板51はステンレスなどの熱伝導率の高い材料を用いて円板状に形成され、厚さ方向に貫通する孔部55が縦横に配列されたパンチングプレートとして構成されている。拡散板51は蓋体5の開口部50を塞ぐように設けられており、蓋体5と、基体4とを重ね合わせて処理容器3を閉じたときに、基体4のステージ41上のウエハWと隙間を介して対向するように設けられる。拡散板51には、例えば加熱ヒータや温調流路等により構成された図示しない温度調整機構が接続されており、拡散板51の温度調整が行われるようになっている。
【0020】
拡散板51の上方には、
図4に示すように拡散板51と隙間を介して支持部である細長い平板状の支持梁52が設けられている。支持梁52は上方から見ると処理容器3の中心から周方向に等間隔に放射状に八方に伸ばされており、各支持梁52は蓋体5の側壁部26に接続されている。
各支持梁52の上面側には、液溜め部53が設けられる。
図5も参照しながら説明すると、液溜め部53は上面が開口した扁平な円筒形状に形成されており、例えば材質としてステンレスが用いられる。液溜め部53の外底面には、熱の伝導を防止するためのシリコンプレート54が設けられている。液溜め部53は、上方から見て蓋体5の中心部にて支持梁52が交差する位置と、各支持梁52上で蓋体5の側壁部26の近傍の位置とに設けられている。即ち液溜め部53は、蓋体5の中心部と、側壁部26の近傍にて周回りに等間隔な8か所の部位と、に設けられている。各液溜め部53は蓋体5の天板部25と隙間を介して対向する高さ位置に配置される。
【0021】
液溜め部53には、液溜め部53に液体の状態の溶剤を供給するための溶剤ノズル6が設けられている。溶剤ノズル6は、供給管61を介して、貯留タンク62に接続されており、供給管61には、ポンプ、バルブ及び流量調整部などを含む供給制御部60が介設されている。溶剤ノズル6、供給制御部60及び供給管61は、溶剤を液溜め部53に供給する溶剤供給部を構成している。溶剤としては、レジスト膜を溶解する溶剤が用いられ、例えばNメチル2ピロリジノン(NMP)などが用いられる。液溜め部53の外側面には、冷却部をなす冷却管63が巻回して設けられている。冷却管63は、冷媒例えば冷却水を通流できるように構成されており、チラーやポンプなどにより構成される液溜め部冷却機構64と接続され、冷却管63に冷媒を通流させることで、液溜め部53を冷却できるように構成されている。
【0022】
天板部25の上面側には、溶剤を加熱して蒸気とするための溶剤加熱部となる輻射光源部が設けられる。輻射光源部としては例えばLED光源(以下LEDとする)65が用いられる。LED65は、天板部25の上面に下向き照射するように設けられ、各液溜め部53毎に設けられる。各LED65は、天板部25の石英窓27を透過して夫々の液溜め部53に光を照射できるように配置される。LED65は、例えば、液溜め部53が吸収する波長の光を照射するように構成されている。またLED65には、内部を通る冷却管67が設けられており、例えばチラーにより構成されるLED冷却機構66により冷却できるように構成されている。
【0023】
蓋体5の天板部25には、ガス供給口31が開口し、ガス供給口31はガス供給路35を介してガス供給源36に接続されている。また天板部25には、排気バルブ32を備えた排気管37が設けられている。さらに側壁部26には、蓋部5の内側から外側には貫通する排気口33が設けられる。ガス供給口31、図示しないガス供給路及びガス供給源は処理容器3内にパージガスを供給するためのパージガス供給部に相当し、排気管37、排気バルブ32及び排気口33は、排気部に相当する。
【0024】
基板処理装置1は制御部100を備える。この制御部100は例えばコンピュータからなり、プログラム、メモリ、CPUを備えている。プログラムは、後述の作用説明における一連の動作を実施するようにステップ群が組み込まれている。このプログラムは、コンピュータ記憶媒体、例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、光磁気ディスク等に収納され制御部100にインストールされる。
【0025】
続いて上述の塗布、現像装置の作用について説明するが、塗布、現像装置における全体的なウエハWの処理工程については、すでに述べていることからここでは、露光、現像処理後のパターンマスク荒れの処理を行う基板処理装置1の作用について
図6〜
図12を参照しながら説明する。なお開放弁32が閉じられた状態はハッチングを付して示しており、加熱ヒータ43がウエハWを加熱している状態は太いラインで示している。
まず
図6に示すように蓋体5が上昇され処理容器3が開口された後、搬送領域R5のメインアームA5によりウエハWが搬入される。ウエハWは、メインアームA5と突き上げピン45との協働作用により、メインアームA5より受け渡されてステージ41上に載置される。そして、蓋体5が下降され、基体4と密接されて処理容器3が閉じられる。その後、加熱ヒータ43により、ステージ41上のウエハWが溶剤の露点温度より高く、溶剤の沸点よりも低い温度、例えば50℃に加熱されると共に、拡散板51が溶剤の露点温度よりも高い温度であって、ステージ41上のウエハWよりも低い温度例えば40℃に加熱される。こうしてウエハWと拡散板51の温度を上昇させる。この時処理容器3の発する熱によりLED65では、その発熱による温度上昇を抑えるためLED冷却機構66により冷却される。
一方、
図7に示すように、溶剤供給部である溶剤ノズル6から溶剤が液溜め部53に供給され貯留される。液溜め部53への一回の供給量は、一枚のウエハWのスムージング処理を達成する量、つまり液溜め部53から溶剤が蒸発し切った時にスムージングが終了する量に設定されている。
【0026】
拡散板51及びウエハWの温度が安定し、液溜め部53に溶剤が貯留された後、
図8に示すように、LED65より液溜め部53に向けて光を照射する。LED65の発する光の波長は、液溜め部53が吸収する波長の光を照射する。そのため光の照射により直接または間接的に加熱され溶剤の温度が上昇して、蒸発が活発になる。この例では、液溜め部53の外面の底面部にシリコンプレート54を設けている。そのため液溜め部53に貯留された溶剤が、拡散板51の加熱の影響などによる下方からの熱の影響を受けにくくなっている。
【0027】
図9に示すように、加熱により発生した溶剤蒸気は自然拡散により処理容器3内に広がっていく。こうして9個の液溜め部53の各々から溶剤が蒸発して溶剤蒸気が自然拡散し、拡散板51を通って処理雰囲気内に広がり、処理容器3内に溶剤蒸気が充満する。拡散板51による溶剤蒸気の拡散に加えて、溶剤蒸発源である液溜め部53が分散して配置されていることから、水平方向における溶剤濃度のムラが抑えられた状態で溶剤蒸気がウエハWの表面に供給される。
【0028】
また拡散板51とステージ41とは、溶剤の露点よりも高い温度となるように加熱されていることから、拡散板51とステージ41とで挟まれた空間の垂直方向の温度勾配が小さくなっている。このため垂直方向の蒸気の濃度のムラの発生が抑えられている。さらに拡散板51とウエハWとを各々露点より高い温度としているため、結露による液滴の付着が抑えられている。また発明者は、溶剤蒸気を吹き付けずに自然拡散によりウエハWの雰囲気として供給する効果を実験により検証したところ、パターンマスクのよれや倒れといった乱れが減少する実験結果を得ることができた。
【0029】
図10に示すようにウエハWの雰囲気が溶剤蒸気で満たされるとパターンマスクの表面処理が速やかに行われる。この際ウエハWが溶剤の露点温度よりも高く、溶剤の沸点よりも低い温度に調整されているため、前記パターンマスク表面では、溶剤分子がレジストパターンに衝突し、パターン表面が溶剤により膨潤するものの、ウエハWの温度が高いため再び溶剤が揮発していく現象が繰り返し生じている。このため、前記パターンマスクでは、
図11に示すように、溶剤により下地膜92上に形成されたパターン9の表層部91のみが溶剤を吸収して膨潤し、この溶剤により当該部位ではレジスト膜が軟化して溶解するものの、パターンマスクの内部には浸透していかず、パターン形状の溶解や変形は抑えられる。この結果、パターンマスク表面の微細な凹凸のみが平坦化され、パターン9の表面の荒れが改善し、パターン線幅のばらつきが低減する。
【0030】
液溜め部53に貯留された溶剤がすべて蒸気となり、パターンマスクの表面処理が終了した後、
図12に示すように溶剤蒸気の排気が行われる。即ち蓋体5に設けられたガス供給口31を開き、処理容器3内にパージガスであるN
2ガスを供給する。同時に蓋部3の天井部の開放弁32を開いて、処理容器3の周方向に設けられた排気口33を開口して、溶剤蒸気を排気する。この排気工程は数秒程度の短い時間で行われ、パターンマスクの表面に、排気により生ずる気流が長時間吹き付けられないようにする。
【0031】
溶剤蒸気の排気が終了し、処理容器3内の溶剤蒸気雰囲気がN
2ガスに置き換えられた後、ステージ41の加熱が停止され、蓋体5が開かれて処理容器3が開口される。筐体2の外部の搬送領域R5に設けられたメインアームA5によりウエハWは基板処理装置1から搬出される。パターンマスクの表面処理が終わり、ウエハWが処理装置から搬出された後、液溜め部冷却機構64により液溜め部を冷却し、液溜め部53に熱が蓄積しないようにする。
【0032】
上述の実施の形態は、処理容器3内で溶剤を加熱して蒸気を発生させ、自然拡散と拡散板51の拡散(分散)作用により、処理雰囲気に濃度均一性の高い溶剤雰囲気を形成している。即ち、キャリアガスの圧送を必要としないため強制的な気流の発生が無く、このため高い均一性を持って、ウエハW表面におけるパターンマスク荒れの改善処理(スムージング処理)を行うことができる。またパターンのよれや倒れの発生を抑制することができると共に、パターン倒れやパターンよれの発生が抑えられる。そしてウエハW1枚ごとに溶剤を蒸発し切っているため、溶剤の供給量(間欠的に供給した場合には総供給量)を調整することで溶剤蒸気の濃度をコントロールすることができ、適切なスムージング処理を再現性よく行うことができる。更にまた、溶剤が蒸発しきった後にパージガスにより溶剤蒸気雰囲気を置換しているため、スムージング処理の停止のタイミングを容易にかつ再現性よく行うことができ、こうしたことから良好なスムージング処理を行うことができる。
【0033】
ウエハWの表面処理に用いられる溶剤としては、アセトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、γブチルラクトン、ピリジン、キシレン、ブタノール、乳酸エチル、エタノール、2−へプタノン、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、ジエチルエーテル、アニソール等でもよい。
液溜め部53の配置レイアウトは図の例に限らず、マトリックス状に配置されていてもよい。また液溜め部53の配置数は一個でもよいが複数であればより好ましい。さらに溶剤を加熱するための溶剤加熱部は、例えば溶剤にレーザーを照射するレーザー照射部であってもよいし、あるいは液溜め部53の周囲あるいは底部に配置されたヒータでもよい。
【0034】
また液溜め部53は、上面が開口していなくてもよく、例えば上面が塞がれており、液溜め部53の側面部の液面よりも高い位置に開口部があってもよい。また夫々の液溜め部53に蓋部を設けてもよい。
図13はこのような例を示し、液溜め部53の上面を覆う平板状の蓋部71を液溜め部53の側方から伸びる支持アーム72及び回転軸73を介して鉛直軸周りに旋回自在に設けている。また回転軸73には昇降機構74が組み合わせて設けられ、回転軸73の昇降により水平姿勢のまま上下に移動し、液溜め部53を密閉できるように構成されている。このような構成にすることで、溶剤蒸気によるスムージング処理が終了した後、蓋部71を閉じて、液溜め部53からの溶剤蒸気の流出を停止するようにしてもよい。この場合には蓋部71により液溜め部53を閉じることで溶剤蒸気の供給が停止される。
【符号の説明】
【0035】
1 基板処理装置
3 処理容器
4 基体
5 蓋体
31 ガス供給口
32 開放弁
33 排気口
41 ステージ
43 加熱ヒータ
51 拡散板
53 液溜め部
64 液溜め部冷却機構
65 LED
100 制御部
W ウエハ