【実施例】
【0039】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。尚、核磁気共鳴(NMR)は核磁気共鳴装置(バリアン社製、400MR)で測定し、マススペクトル(MS)は二重収束質量分析装置(日本電子社製、SX102型)で測定した。
【0040】
(化合物1の合成)
下記反応式に示すようにして化合物1を合成した。
【化7】
【0041】
3,6−ジブロモ−9−エチルカルバゾール(500mg,1.42mmol)、4−4−ピリジンボロン酸(435mg,3.54mmol)及びテトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウムPd(PPh
3)
4(164mg,0.14mmol)を三つ口フラスコに入れ、Ar雰囲気にし、1M Na
2CO
3aq(5ml)、DMF(N,N−dimethylformamide)(15ml)を加え、100℃で11時間反応させた。
反応溶液を乾燥後、ジクロロメタンと水で有機層を抽出した。カラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ジクロロメタン:MeOH=4:1)、再沈殿(良溶媒:ジクロロメタン、貧溶媒:ヘキサン)、再結晶(良溶媒:ジクロロメタン、貧溶媒:ヘキサン)の順に精製を行った。
薄黄色の針状結晶80mg(収率16%)を得た。
1HNMR、HRMSスペクトルより、化合物1であることを確認した。
【0042】
得られた化合物1のNMRとMSの測定結果は以下の通りであった。
1H-NMR スペクトル(500MHz) Acetone-d
6 / TMS
σ=8.82(2H, d, J=1.9 Hz), σ=8.65(4H, dd, J
1=4.4 Hz, J
2=1.7 Hz), σ=7.95 (2H, dd, J
1=8.6 Hz, J
2=1.9 Hz),σ=7.82 Hz (4H, dd, J
1=4.4 Hz, J
2=1.7 Hz), σ=7.78 (2H, d, J=8.6 Hz), σ=4.61 (2H, q, J=7.20 Hz), σ=1.49 (3H, t, J=7.20 Hz)
HRMS スペクトル:HRMS(ESI) : m/z=350.1653 [M+H]
+ ; calcd. For C
24H
20N
3: 350.1652
mp. 243-244℃
【0043】
(化合物3の合成)
下記反応式に示すように、化合物2の合成を経由し、化合物3を合成した。
【化8】
【0044】
まず、以下のようにして、化合物2を合成した。
3,6−ジブロモカルバゾール(500mg,1.42mmol)をDMF(10ml)に溶解させ、水素化ナトリウム(102mg,4.25mmol)を少量ずつ加えていくと溶液が透明から黄色へと変化した。
次に1−ヨードブタン(0.8ml,7.08mmol)を加えると溶液の色はしだいに透明になった。
2時間後、反応を終了し、溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。
その後、0.1M NaOH水溶液、ジクロロメタンを加え、有機層を抽出した。
有機層を濃縮、乾燥後、透明で粘性のある固体(765mg)を得た。
1HNMR、HRMSスペクトルより、化合物2であることを確認した。なお、化合物2の精製は行わずに、化合物3の合成に用いた。
【0045】
得られた化合物2のNMRとMSの測定結果は以下の通りであった。
1H-NMR スペクトル(500MHz)
Acetone-d
6 / TMS
σ=8.20 (2H, s), σ=7.44 (2H, d, J=8.7 Hz), σ=7.36 (2H, d, J=8.7 Hz), σ=4.20 (2H, t, J=7.0 Hz), σ=1.65 (2H, m), σ=1.21 (2H, m), σ=0.77 (3H, t, J=7.5 Hz)
MS スペクトル:MS(APCI) : m/z=378.9567 [M+H]
+; calcd. For C
16H
15Br
2N
1: 378.9566
【0046】
続いて、化合物2を用い、以下のようにして、化合物3を合成した。
化合物2(1.00g,2.62mmol)、4−(5−トリブチルスタニル−2−チオフェニル)ピリジン(2.50g,5.55mmol)およびテトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウムPd(PPh
3)
4(151mg,0.13mmol)をDMF(30ml)に溶解させ、90°C、Ar雰囲気下で2時間攪拌した。
反応終了後、反応溶液を水(200ml)に注ぎ、析出した固体をろ過した。
ろ物を乾燥後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 CH
2Cl
2:MeOH=20:1)により分離精製し、その後にジクロロメタンで再結晶を行った。
1HNMR、HRMSスペクトルより、化合物3であることを確認した。収量は537mg(収率38%)であった。
【0047】
得られた化合物3のNMRとMSの測定結果は以下の通りであった。
1H-NMR スペクトル(500MHz) Dimethyl Sulfoxide-d
6 / TMS
σ=8.27 (2H, d J=1.8 Hz), σ=8.15 (4H, dd, J
1=4.5 Hz, J
2=1.6 Hz), σ=4.44 (2H, d, J=3.9 Hz), σ=7.42(2H, dd, J
1=8.8 Hz, J
2=1.8 Hz), σ=7.27 (2H, d, J=8.8 Hz), σ=7.24 (4H, dd, J
1=4.5 Hz, J
2=1.6 Hz), σ=7.23 (2H, d, J=3.9 Hz), σ=4.01 (2H, t, J=7.0 Hz), σ=1.34 (2H, m), σ=0.87(2H, m), σ=0.44 (3H, t,J=7.4 Hz)
MS スペクトル:HRMS (ESI) : m/z= 542.1716 [M+H]
+ ; calcd. For C
34H
28N
3S
2: 542.1719
mp. 236-237℃
【0048】
得られた化合物1、3をそれぞれ1,4−ジオキサンに溶解して、それぞれ濃度:2×10
−5Mの吸光度測定用試料を得た。得られたそれぞれの吸光度測定用試料を紫外可視分光光度計(島津製作所社製、UV−3150)に供給して吸光スペクトルを測定した。
【0049】
また、得られた化合物1、3をそれぞれ1,4−ジオキサンに溶解して、それぞれ濃度2×10
−6Mの蛍光測定用試料を得た。得られたそれぞれの蛍光測定用試料を蛍光分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、F−4500)に供給し、蛍光スペクトルを測定した。
【0050】
化合物1、3の吸光スペクトル及び蛍光スペクトルを
図3(A)、(B)にそれぞれ示す。
【0051】
また、得られたそれぞれの蛍光測定用試料を蛍光量子収率測定装置(浜松ホトニクス社製、C−9920−01)に供給して蛍光量子収率を測定した。得られた蛍光量子収率と上記吸収スペクトル及び蛍光から読み取った吸収極大波長(モル吸収係数)及び蛍光極大波長を表1に示した。
【0052】
【表1】
【0053】
得られた化合物3をテトラヒドロフランに溶解して濃度1×10
−4Mの溶液を作製した。得られた溶液に酸化チタンを添加し、25℃で16時間浸漬した後、酸化チタンを取り出し乾燥して赤外線スペクトル(IR)測定用試料を得た。得られた化合物3と、化合物3を用いて得られた試料を用いて、フーリエ変換赤外分光光度計(パーキンエルマー社製、Spectrum−One)で赤外線(IR)スペクトルを測定して結果を
図4に示した。
【0054】
また、参考例として、
図5に、下式に示したアクセプターとしてピリジン環含有基を一分子中に一つのみ有するD−π−A型化合物である化合物NI3、NI4について、酸化チタンへの吸着前後のIRスペクトルを示している。この化合物NI3、NI4のIRスペクトルは、非特許文献1から引用したものである。
【化9】
【0055】
図4のIRスペクトルに示されているように、化合物3が酸化チタンに吸着すると、1600cm
−1付近の吸収ピークが高波数側にシフトしており、これはピリジン環の窒素原子と酸化チタンのチタン原子の間で強固な配位結合を形成していることを示している。従って、このIRスペクトルから、化合物3が酸化チタンに対し、ほぼ配位結合によって強固に吸着していることを示している。
【0056】
一方、化合物NI3及びNI4では、
図5に示すように、1600cm
−1の吸収ピークが一部高波数側にシフトせず残っている(破線円で囲っている箇所)ことがわかる。この吸収ピークは、配位結合していないことに起因して現れるピークであり、水素結合によるものと考えられる。
図4の化合物3の場合では、化合物NI3、NI4における上記の吸収ピークはほぼ見受けられないことから、化合物3においては、アクセプターを2つ備えたことにより、ほぼ配位結合によって吸着することがわかった。
【0057】
続いて、化合物1及び化合物3を用いて色素増感太陽電池を作成し、色素吸着量及び光電変換効率を評価した。
【0058】
FTOガラス板(日本板硝子社製、13Ω/cm
2)の一面にドクターブレードを用いて酸化チタンペースト(日揮触媒化成社製、PST−18NR)を塗布し、450℃で50分間焼成して厚さ9μmの酸化チタン層を形成した。次に、化合物1及び3を、濃度:1×10
−4Mのテトラヒドロフラン溶液に25℃で16時間浸漬した後、取り出し、乾燥して第1電極を得た。第1電極の酸化チタン層に電解質溶液(0.1Mヨウ化リチウム、0.05Mヨウ素及び0.6M1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムヨードジドのアセトニトリル溶液)を数滴たらし、パラフィルムスペーサーを介して第2電極である白金蒸着ガラス板を積層し、両端をクリップで固定して、第1電極と第2電極の間に電解質溶液層を形成して色素増感太陽電池セルを得た。
【0059】
得られた色素増感太陽電池セルにソーラーシミレータ(旭スペクトラ社製、HAL−302)でAM1.5、100mWcm
−2の疑似太陽光を照射(照射面積0.25cm
2)し、ポテンシオスタガット/ガルバノスタット(北斗電工社製、HA−501G)で電流−電圧曲線を測定した。得られた電流−電圧曲線から短絡電流及び開放光起電圧を読み取り、結果を表2に示した。また、短絡電流及び開放光起電圧からフィルファクター及び光電変換効率を計算して結果を表2に示した。
【0060】
また、表2には、参考例として、上述した化合物NI3、NI4の色素吸着量のデータを掲載している。これらは非特許文献1から引用したものである。
【0061】
【表2】
【0062】
化合物3の色素吸着量が10.8×10
16であり、化合物NI3、NI4に比べて2倍以上であり、吸着量が大幅に増大していることがわかる。
【0063】
なお、化合物1の色素吸着量は、NI3及びNI4よりもやや少ない結果となった。化合物1では、カルバゾールイル基の両端にピリジン環が直接結合し、結合間距離が短いことから、両方のピリジン環の窒素が同じ方向、即ち、酸化チタン層を向きにくいことによる影響と考えらえる。