(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記せん断力付与工程では、前記基板を挟持搬送する前記ローラ対は複数個設けられ、前記接合面に付与されるせん断力のせん断方向を交互に変えながら前記基板を複数個の前記ローラ対で搬送する請求項5に記載の金属回収方法。
前記高周波加熱工程と前記せん断力付与工程との間に備えられ、前記基板を変形させることで前記接合面における前記板部材と前記金属層との接合力を弱める接合力低減工程を備える請求項5又は6に記載された金属回収方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、溶媒などを用いる方法では、溶媒そのものの処理に対する環境負荷やコストの問題が生じる。
【0005】
本発明の課題は、溶媒を用いることなく、基板から金属を回収することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る金属回収装置は、板部材の板面に金属層が設けられた基板の前記金属層を高周波誘導加熱する高周波加熱手段と、前記高周波加熱手段により加熱された前記金属層と前記板部材との接合面にせん断力を付与して前記板部材と前記金属層とを分離するせん断力付与手段と、
を備え、前記せん断力付与手段は、前記基板を挟持搬送することで前記板部材と前記金属層との接合面にせん断力を付与する周速度の異なる2つのローラから構成されるローラ対を備え、前記基板を挟持搬送する前記ローラ対は複数個設けられ、前記接合面に付与されるせん断力のせん断方向を挟持搬送途中で変えるように、夫々の前記ローラ対を構成する前記ローラの周速度が決められることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、高周波加熱手段が、高周波誘導加熱により、基板の金属層を加熱する。金属層が加熱されることで、例えば、金属層と接触している板部材の接合面側が部分的に溶融し、板部材と金属層との接合面には、板部材と金属層との接合強度を弱める力が作用する。
【0008】
せん断力付与手段は、板部材と金属層との接合面にせん断力を付与する。板部材と金属層との接合強度が弱められているため、板部材と金属層とがせん断力付与手段によって付与されるせん断力により分離し、金属層が金属として回収される。
【0009】
このように、溶媒を用いることなく、基板から金属を回収することができる。
【0011】
また、周速度の異なる2つのローラ間で基板を挟持搬送することで、板部材と金属層との接合面にせん断力が生じる。高周波加熱手段により、板部材と金属層との接合強度が弱められているため、板部材と金属層とがこのせん断力により分離し、金属層が金属として回収される。
【0012】
このように、簡易な構成で板部材と金属層との接合面にせん断力を付与して基板から金属を回収することができる。
【0013】
本発明の
請求項2に係る金属回収装置は、
請求項1に記載において、前記基板を挟持搬送する前記ローラ対は複数個設けられ、前記接合面に付与されるせん断力のせん断方向を交互に変えるように、夫々の前記ローラ対を構成する前記ローラの周速度が決められることを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、複数個のローラ対が、接合面に付与されるせん断力のせん断方向を交互に変えるように基板を挟持搬送するため、効果的に板部材と金属層とを分離することができる。
【0015】
本発明の
請求項3に係る金属回収装置は、
請求項1又は2に記載において、前記基板を変形させることで前記接合面における前記板部材と前記金属層との接合力を弱める接合力低減手段を備えることを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、接合力低減手段が、基板を変形させることで接合面における板部材と金属層との接合力を弱めるため、効果的に板部材と金属層とを分離することができる。
【0017】
本発明の
請求項4に係る金属回収装置は、
請求項3に記載において、前記接合力低減手段は、前記基板を挟持搬送することで前記基板を変形させる2つの歯車から構成される歯車対を備えることを特徴とする。
【0018】
上記構成によれば、歯車対が、基板を挟持搬送することで基板が変形するため、簡易な構成で基板を変形させることができる。
【0019】
本発明の
請求項5に係る金属回収方法は、板部材の板面に金属層が設けられた基板の前記金属層を高周波誘導加熱する高周波加熱工程と、前記高周波加熱工程において加熱された前記金属層と前記板部材との接合面にせん断力を付与して前記板部材と前記金属層とを分離するせん断力付与工程と
、を備え、周速度の異なる2つのローラから構成されるローラ対が複数個設けられ、前記せん断力付与工程では、複数の前記ローラ対で前記基板を挟持搬送することで前記板部材と前記金属層との接合面にせん断力を付与すると共に、前記接合面に付与されるせん断力のせん断方向を挟持搬送途中で変えながら前記基板を複数個の前記ローラ対で搬送することを特徴とする。
【0020】
上記構成によれば、高周波加熱工程では、基板の金属層を高周波誘導加熱する。金属層が加熱されることで、例えば、金属層と接触している板部材の接合面側が部分的に溶融し、板部材と金属層との接合面には、板部材と金属層との接合強度を弱める力が作用する。
【0021】
せん断力付与工程では、板部材と金属層との接合面にせん断力を付与する。板部材と金属層との接合強度が弱められているため、板部材と金属層とがせん断力付与工程で付与されるせん断力により分離し、金属層が金属として回収される。
【0022】
このように、溶媒を用いることなく、基板から金属を回収することができる。
【0024】
また、せん断力付与工程では、周速度の異なる2つのローラから構成されるローラ対で基板を挟持搬送することで、板部材と金属層との接合面にせん断力が生じる。高周波加熱工程で、板部材と金属層との接合強度が弱められているため、板部材と金属層とがこのせん断力により分離し、金属層が金属として回収される。
【0025】
このように、簡易な構成で板部材と金属層との接合面にせん断力を付与して基板から金属を回収することができる。
【0026】
本発明の
請求項6に係る金属回収方法は、
請求項5に記載において、前記せん断力付与工程では、前記基板を挟持搬送する前記ローラ対は複数個設けられ、前記接合面に付与されるせん断力のせん断方向を交互に変えながら前記基板を複数個の前記ローラ対で搬送することを特徴とする。
【0027】
上記構成によれば、せん断力付与工程では、複数個のローラ対が、接合面に付与されるせん断力のせん断方向を交互に変えるように基板を挟持搬送するため、効果的に板部材と金属層とを分離することができる。
【0028】
本発明の
請求項7に係る金属回収方法は、
請求項5又は6に記載において、前記高周波加熱工程と前記せん断力付与工程との間に備えられ、前記基板を変形させることで前記接合面における前記板部材と前記金属層との接合力を弱める接合力低減工程を備えることを特徴とする。
【0029】
上記構成によれば、接合力低減工程で、基板を変形させることで接合面における板部材と金属層との接合力を弱めるため、効果的に板部材と金属層とを分離することができる。
【0030】
本発明の
請求項8に係る金属回収方法は、
請求項7に記載において、前記接合力低減工程では、2つの歯車から構成される歯車対で前記基板を挟持搬送することで前記接合面における前記板部材と前記金属層との接合力を弱めることを特徴とする。
【0031】
上記構成によれば、2つの歯車から構成される歯車対が、基板を挟持搬送することで基板を変形させるため、簡易な構成で基板を変形させることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、溶媒を用いることなく、基板から金属を回収することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
<第一実施形態>
本発明の第一実施形態に係る金属回収装置、及び金属回収方法の一例について
図1、
図2を用いて説明する。
【0035】
先ず、本実施形態に係る金属回収装置10(
図1(B)、
図2参照)によって金属が回収される基板の一例としての樹脂基板12(
図1(A)参照)について説明する。
【0036】
図1(A)に示されるように、樹脂基板12は、厚さ100〔μm〕とされるポリイミド系樹脂で成形された樹脂板12Aと、この樹脂板12Aの一方の面に電界メッキ処理により施された厚さ50〔μm〕の金属層の一例としての銅層12Bとを備えている。所謂樹脂基板12は、フレキシブル基板と同様の構成となっている。
【0037】
(金属回収装置)
次に、金属回収装置10について説明する。
【0038】
図1、
図2に示されるように、本実施形態に係る金属回収装置10は、樹脂基板12を高周波誘導加熱する高周波加熱手段の一例としての高周波加熱装置16(
図1参照)と、高周波加熱装置16で加熱された樹脂基板12の樹脂板12Aと銅層12Bとの接合面にせん断力を付与して樹脂板12Aと銅層12Bとを分離して銅層12Bを金属として回収するせん断力付与手段の一例としてのせん断力付与装置20(
図2参照)とを備えている。
【0039】
<高周波加熱装置>
図1(B)に示されるように、高周波加熱装置16は、円状に形成された誘導コイル18と、誘導コイル18の端部に接続され、この誘導コイル18に高周波電流を流すための電圧を印加する高周波電源14とを備えている。
【0040】
本実施形態では、一例として、誘導コイル18に高周波電流を流すことで、誘導コイル18の内側に配置された樹脂基板12に対して、150〜200kHzの高周波を出力数百Wで照射することができるようになっている。
【0041】
なお、樹脂基板12と誘導コイル18との空間配置関係については、適宜状況に応じて選択することができる。
【0042】
<せん断力付与装置>
図2に示されるように、せん断力付与装置20は、樹脂基板12を挟持搬送することで樹脂板12Aと銅層12Bとの接合面にせん断力を付与する周速度の異なる2つのローラ22A、22Bから構成されるローラ対22を複数個(本実施形態では一例として3個)備えている。
【0043】
複数個のローラ対22は、ローラ22Aの回転軸方向から見て、直線状に配置されている。これにより、一のローラ対22によって挟持搬送される樹脂基板12は、樹脂基板12の搬送方向の下流側に配置された他のローラ対22に引き渡され、他のローラ対22によって挟持搬送されるようになっている。
【0044】
また、ローラ対22を構成するローラ22Aと、ローラ22Bとには夫々図示せぬ駆動源又は制動源が備えられ、ローラ22Aとローラ22Bとは異なる周速度で回転するようになっている。
【0045】
具体的には、ローラ22Aには駆動源が回転力を付与し、ローラ22Aに対向するローラ22Bには回転力を付与せず制動源が制動力を付与する。この構成により、ローラ22Aとローラ22Bとの間にせん断力が生じることで、ローラ22Aとローラ22Bとで挟持搬送される樹脂基板12の樹脂板12Aと銅層12Bとの接合面にもせん断力が生じるようになっている。
【0046】
さらに、一のローラ対22と、一のローラ対22に対して樹脂基板12の搬送方向の下流側に配置された他のローラ対22とを比較すると、ローラ22Aとローラ22Bとの配置が逆になっている。これにより、他のローラ対22により挟持搬送されることで樹脂板12Aと銅層12Bとの接合面で生じるせん断力のせん断方向は、樹脂基板12の搬送方向の上流側に配置された一のローラ対22により挟持搬送されることで樹脂板12Aと銅層12Bとの接合面で生じるせん断力のせん断方向とは逆になるようになっている。
【0047】
なお、ローラ22Aの回転力(回転速度)、ローラ22Bの制動力、ローラ対22間の隙間の大きさ、又はローラ22A、22Bの材料等については、適宜状況に応じて選択することができる。
【0048】
(金属回収方法)
次に、前述した金属回収装置10を用いて、樹脂基板12から銅層12Bを回収する金属回収方法について説明する。
【0049】
この金属回収方法は、樹脂基板12の銅層12Bを高周波誘導加熱する高周波加熱工程と、樹脂基板12の樹脂板12Aと銅層12Bとの接合面にせん断力を付与して樹脂板12Aと銅層12Bとを分離して銅層12Bを銅として回収するせん断力付与工程と、を備えている。
【0050】
<高周波加熱工程>
図1(B)に示されるように、高周波加熱工程では、高周波加熱装置16に備えられた高周波電源14が、誘導コイル18に高周波電流を流すための電圧を印加する。
【0051】
誘導コイル18に高周波電流が流れることで、誘導コイル18の内側に配置された樹脂基板12に対して、150〜200kHzの高周波を出力数百Wで照射する。これにより、銅層12Bの表面付近に高密度のうず電流が発生し、そのジュール熱で銅層12Bが加熱される(発熱する)。
【0052】
銅層12Bが加熱されることで銅層12Bと接触している樹脂板12Aの接合面側が部分的に溶融し、樹脂板12Aと銅層12Bとの接合面には、樹脂板12Aと銅層12Bとの接合強度を弱める力が作用する。つまり、高周波誘導加熱の金属表面近傍の選択的・瞬間的加熱特性を利用し、銅層12Bと樹脂板12Aとの接合面を選択的に急激に加熱し、樹脂板12Aの接合面側を部分的に溶融する。
【0053】
<せん断力付与工程>
図2に示されるように、せん断力付与工程では、せん断力付与装置20に備えられた複数個(本実施形態では3個)のロー
ラ対22が、高周波加熱工程で樹脂板12Aと銅層12Bとの接合強度が弱められた樹脂基板12を挟持搬送する。
【0054】
具体的には、樹脂基板12の搬送方向の最も上流側に配置されたロー
ラ対22(図中の上側)の挟持部に樹脂基板12が投入され、このロー
ラ対22により投入された樹脂基板12がロー
ラ対22により挟持搬送される。
【0055】
ここで、ローラ22Aには回転力が付与され、ローラ22Aに対向するローラ22Bは制動力が付与されている。このため、ローラ22Aとローラ22Bとの間にせん断力が生じることで、ローラ22Aとローラ22Bとで挟持搬送される樹脂基板12の樹脂板12Aと銅層12Bとの接合面にもせん断力が生じる。詳細には、樹脂板12Aが銅層12Bに対して相対的に樹脂基板12の搬送方向の下流側へ引っ張れるようなせん断力が、樹脂板12Aと銅層12Bとの接合面に生じる。
【0056】
さらに、最も搬送方向の上流側に配置されたロー
ラ対22によって挟持搬送された樹脂基板12は、中央側に配置されたロー
ラ対22(図中の中央側)に引き渡され、今度は、このロー
ラ対22により樹脂基板12は挟持搬送される。
【0057】
ここで、このロー
ラ対(図中の中央側)では、搬送方向の上流側に配置されたロー
ラ対22(図中の上側)に比して、ローラ22Aとローラ22Bとの配置が逆になっている。このため、銅層12Bが樹脂板12Aに対して相対的に樹脂基板12の搬送方向の下流側へ引っ張れるようなせん断力が、樹脂板12Aと銅層12Bとの接合面に生じる。つまり、接合面に生じるせん断力のせん断方向が逆方向になる。
【0058】
さらに、中央側に配置されたロー
ラ対22によって挟持搬送された樹脂基板12は、搬送方向の下流側に配置されたロー
ラ対22(図中の下側)に引き渡され、今度は、このロー
ラ対22により樹脂基板12は挟持搬送される。
【0059】
ここで、このロー
ラ対(図中の下側)では、中央側に配置されたロー
ラ対22(図中の中央側)に比して、ローラ22Aとローラ22Bとの配置が逆になっている。このため、樹脂板12Aが銅層12Bに対して相対的に樹脂基板12の搬送方向の下流側へ引っ張れるようなせん断力が、樹脂板12Aと銅層12Bとの接合面に生じる。つまり、接合面に生じるせん断力のせん断方向が逆方向になる。
【0060】
このように、せん断方向を交互に変えることで、樹脂板12Aと銅層12Bとが分離して銅層12Bが金属として回収される。
【0061】
なお、
図3には、実際に金属回収装置10を用いて、樹脂板12Aと銅層12Bとを分離させた写真が記載されている。このように、樹脂板12Aと銅層12Bとは、接合面を境にシート状に分離される。
【0062】
(作用・効果)
以上説明したように、溶媒を用いることなく、樹脂基板12から銅層12Bを金属として回収することができる。また、溶媒を用いることがないため、安価な装置及び方法である。
【0063】
また、高周波誘導加熱により銅層12Bのみを加熱(選択的に加熱)して、樹脂板12Aと銅層12Bとの接合強度を弱める構成となっているため、銅層12B(質源)を金属として回収する際に生じる環境負荷を大幅に低減することができる。
【0064】
また、せん断力付与工程では、樹脂板12Aと銅層12Bとの接合面に生じるせん断力のせん断方向が交互に変えられているため、せん断方向が一定の場合と比して、樹脂板12Aと銅層12Bとを効率良く分離することができる。
【0065】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態に係る金属回収装置、及び金属回収方法の一例について
図4、
図5を用いて説明する。なお、第一実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0066】
(金属回収装置)
先ず、金属回収装置30について説明する。
【0067】
図4に示されるように、本第二実施形態に係る金属回収装置30は、樹脂基板12を高周波誘導加熱する高周波加熱装置16(
図1参照)と、高周波加熱装置16で加熱された樹脂基板12の接合面における樹脂板12Aと銅層12Bとの接合力を、樹脂基板12を変形させることで弱める接合力低減手段の一例としての接合力低減装置32と、樹脂板12Aと銅層12Bとの接合面にせん断力を付与して樹脂板12Aと銅層12Bとを分離して銅層12Bを金属として回収するせん断力付与装置20と、を備えている。
【0068】
<接合力低減装置>
図4に示されるように、接合力低減装置32は、樹脂基板12を挟持搬送することで樹脂基板12を変形させ、これにより、樹脂板12Aと銅層12Bとの接合面における樹脂板12Aと銅層12Bとの接合力を弱める歯車対34を備えている。
【0069】
歯車対34は、平歯車である第一歯車36と、第一歯車36に対向して配置される平歯車である第二歯車38と、を備えている。
【0070】
第一歯車36及び第二歯車38としては、例えば、
図5に示されるように、歯車本体36A、38A(
図5(B)参照)の軸孔に、ロッド36B、38B(
図5(A)参照)を嵌め込んだものを用いることができる。
【0071】
また、第一歯車36のピッチ及び第二歯車38のピッチとしては、樹脂基板12の板厚に依存するが、概ね2〜4〔mm〕程度が好ましい。
【0072】
また、第一歯車36と第二歯車38との隙間(
図4で示す寸法D)は、樹脂基板12の板厚に依存するが、樹脂基板12の板厚の2〜4倍程度が好ましい。
【0073】
また、第一歯車36及び第二歯車38の直径は、ピッチを考慮すると数十〜数百〔mm〕程度が好ましいが、特に回転トルクが必要となる場合(樹脂基板が比較的硬い場合等)においては、より直径が大きい方が好ましい。
【0074】
(金属回収方法)
次に、前述した金属回収装置30を用いて、樹脂基板12から銅層12Bを回収する金属回収方法について説明する。
【0075】
この金属回収方法は、樹脂基板12の銅層12Bを高周波誘導加熱する高周波加熱工程と、樹脂基板12の樹脂板12Aと銅層12Bとの接合面にせん断力を付与して樹脂板12Aと銅層12Bとを分離して銅層12Bを銅として回収するせん断力付与工程と、を備えている。
【0076】
さらに、この金属回収方法は、高周波加熱工程とせん断力付与工程との間に、接合面における樹脂板12Aと銅層12Bとの接合力を弱める接合力低減工程を備えている。
【0077】
<接合力低減工程>
図4に示されるように、接合力低減工程では、第一歯車36及び第二歯車38の少なくとも一方に図示せぬモータから回転力が付与され、歯車対34が、高周波加熱工程で樹脂板12Aと銅層12Bとの接合強度が弱められた樹脂基板12を挟持搬送する。
【0078】
樹脂基板12が歯車対34によって挟持搬送されることで、樹脂基板12が部分的に変形する。弾性特性の異なる樹脂板12Aと銅層12Bとを変形(折り曲げる)させると、弾性性能に優れた材料は元に弾性復帰して元に戻ろうとするが、展延性に優れた材料は変形した状態を保持しようとする。
【0079】
つまり、樹脂板12Aは変形して元に戻ろうとするが、銅層12Bは変形した状態を保持しようとするため、接合面に空隙が生じる又は生じ易くなる。これにより、樹脂板12Aと銅層12Bとの接合力が弱まる。
【0080】
以上説明したように、樹脂板12Aと銅層12Bとの接合力が弱まるため、溶媒を用いることなく、樹脂基板12から銅層12Bを金属として効率良く回収することができる。
【0081】
他の作用及び効果については、第一実施形態と同様である。
【0082】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、一枚の樹脂板12Aと銅層12Bとから構成される樹脂基板12を例にとって説明したが、特に、樹脂基板についてこの構成に限定されることなく、例えば、樹脂板と樹脂板との間に金属層が配置される等の複数の層から構成(樹脂板と金属層とが交互に複数積層した構成を含む)される樹脂基板に前述した金属回収装置及び金属回収方法を用いてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、熱可塑性樹脂であるポリイミド系樹脂により成形された樹脂板12Aを例にとって説明したため、樹脂板12Aの接合面側が軟化・溶融することで、樹脂板12A(板部材)と銅層12B(金属層)との接合強度を弱める力が作用することを説明したが、例えば、熱硬化性樹脂や無機材料であれば熱膨張率の相違により、板部材と金属層との接合強度を弱める力が接合面に作用する。
【0084】
また、上記実施形態では、板部材としてポリイミド系樹脂により成形された樹脂板12Aを例に、金属層として銅層12Bを例にとって説明したが、とくにこの構成に限定されることなく、他の材質であってもよい。例えば、板部材としてセラミック板を使用し、金属層として銀層を用いてもよい。この場合には、前述したように、熱膨張率の相違を利用して接合面の接合強度を弱めることとなる。
【0085】
また、上記実施形態では、特に説明しなかったが、樹脂基板12に電子部品等のチップ類が搭載されている場合には、先にリフロー炉を通してチップ類を取り外す工程が必要となる場合がある。
【0086】
また、上記実施形態では、メッキ処理により銅層12Bが樹脂板12Aに形成されたが、特にメッキ処理に限定される接着等により金属層(銅層12B)が板部材(樹脂板12A)に形成されてもよい。