【実施例】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0032】
以下、具体的なジオシンセティックス補強盛土工法による河川・海岸用耐震・耐津波防潮堤防の構築方法について説明する。
【0033】
図1は本発明の第1実施例を示すジオシンセティック補強盛土工法による河川・海岸用耐震・耐津波防潮堤防の構築における立体ハニカム構造体であるジオセルに孔を開け、隣接するジオセルを連結するための鉄筋類を通したときの斜視図である。
図2はそのジオセルに鉄筋類を通して隣接する複数個のジオセルを連結し、格子状にした状態を示す斜視図、
図3はそのジオシンセティックス(ジオセル)を用いた防潮堤防の下流側の裏のり面被覆工が緩勾配の場合の模式図である。
【0034】
図1において、1は立体ハニカム構造体であるジオシンセティックスのジオセル、2はそのセル1の水平方向に開けられた孔であり、この孔2は上下、左右に任意の位置で任意の数とする。3は孔2に通された鉄筋類である。なお、ジオセル1の材質としては、例えば、プラスチックが挙げられる。
【0035】
図2に示すように、ジオセル1の孔2に鉄筋類3を通して隣接する複数個のジオセルを連結し、格子状に形成する。
図2では図示されていないが、鉄筋類3は水平・鉛直両方向に通されているものとする。
【0036】
図3に示すように、基礎地盤10の上流側には壁面工である急勾配の表のり面被覆工(コンクリート工)11が構築され、下流側には上記したジオシンセティックス(ジオセル)からなる壁面工である緩勾配の防潮堤防の裏のり面被覆工12が構築される。なお、この防潮堤では、表のり面被覆工(コンクリート工)11は剛な壁面工で面状補強材(ジオグリッド等)16と一体化されており、堤体盛土14の盛土材が流出しない構造である。また、上流側表のり面被覆工(コンクリート工)11と天端被覆工(コンクリート工)15とは剛に結合されている。堤体盛土14は面状補強材(ジオグリッド等)16により壁面工と一体化している。また、面状補強材(ジオグリッド等)16と裏のり面被覆工12も一体化する。さらに、水叩き部17の部分にもジオセルを敷設する。
【0037】
以下、下流側の壁面工に用いられる
図2に示したジオシンセティックスの他の実施例について説明する。
【0038】
図4は本発明の第2実施例を示すハニカム構造体による盛土補強土壁の壁面の構築における立体ハニカム構造のジオシンセティックス(ジオセル)を複数段重ねて、盛土内に敷設される面状補強材と連結させるために、ジオテキスタイルのハトメ、もしくは格子内にU字筋を通したときの斜視図である。
【0039】
この実施例では、厚さ15cm〜20cm(基本的には15cm)のジオセル21,21′を複数段に重ねて、その上下のジオセルの間にジオテキスタイル23を敷設する(基本的にはRRR−B工法の基本層厚とする)。なお、ジオテキスタイル23のハトメ(図示なし)もしくは格子内にU字筋(図示なし)を通して、ジオテキスタイルとジオセルを一体化する。
【0040】
図5は本発明の第3実施例を示すハニカム構造体による盛土補強土壁の壁面の構築における立体ハニカム構造のジオシンセティックス(ジオセル)に、あらかじめ開けておいた孔に縦および横方向の両方向に鉄筋類を挿入し、
図4記載のU字筋と連結させたときの斜視図である。
【0041】
この実施例では、第2実施例のジオシンセティックス(ジオセル)に対し、さらに上下鉄筋31,31′をU字筋32のような形状の鉄筋で固定する。すなわち、上下2段のセル列の中には上下鉄筋31,31′を通して、その2本の上下鉄筋31,31′をU字筋32で固定する。さらに一体化効果を高めるには後部セル列35側に縦筋(D16mm〜19mm程度)34を挿入する。一体化を高めるには後ろ2列の後部セル列35,36共に同様の方法を採用する。
【0042】
また、後ろの2列の後部セル列35,36にはコンクリー
トを充填する。
【0043】
図6は本発明の第4実施例を示すハニカム構造体による盛土補強土壁の壁面の構築における立体ハニカム構造のジオシンセティックス(ジオセル)の中詰め材として植生土のうを用いた場合に越流波によって剥ぎとられないように
図5記載の鉄筋類に巻き込むときの斜視図、
図7は本発明の第4実施例を示す裏のり面被覆工の所定ののり勾配を形成するために上部ジオセルをセットバックさせた状態を示す斜視図である。
【0044】
この実施例では、
図5における前面のセル列38,38′に植生土のう40、もしくは種子混入ポーラスコンクリートを充填する。植生土のうの場合は、
図6に示すように、植生土のう40が剥ぎ取られないように鉄筋39に巻き込む形で充填する。
【0045】
そこで、
図7に示すように、堤体盛土(図示なし)、
裏のり面被覆工41、560〜750mm程度のコンクリート壁42、緑化体43(植生土のう又は種子混入ポーラスコンクリート)が一体化される。裏のり面被覆工勾配は、
図7に示すように、上部の前面のジオセルをセットバック(後退)して形成する。
【0046】
また、
図3に示される下流側の裏のり面被覆工の水叩き部17にもジオセルを延長して敷設し、洗掘を防止するように構成する。
【0047】
さらに、
図3に示される水叩き部17のジオセルの固定方法は、
図8に示すように、頭部処理をした1つのセル51、もしくは周辺のセル52,53を一体化して、アンカー(図示なし)で基礎地盤10(
図3参照)に固定する。なお、頭部処理としては、複数枚の押圧板をナットで締結するようにする。
【0048】
図9は本発明の第5実施例として裏のり面の勾配が緩い場合にのり面に沿ってジオセルを敷設する場合の面状補強材との連結方法の斜視図である。複数枚の押圧プレートとナットで構成される頭部処理工とジオテキスタイル側からのT字バー等をU字バー等をU字クリップ等で固定する場合の斜視図である。
【0049】
裏のり面に添ってジオセル61を敷設する場合のジオテキスタイル62との一体化法は、一本の鉄筋の場合はT字型バー、2本の鉄筋の場合は鉄板に鉄筋を溶着した形式の物をジオセル61側から挿入し、ジオテキスタイル62側からそれとジオセル61内でU字クリップ63等で固定する。なお、ジオテキスタイル62の端部64は裏のり面被覆工側に延長しておく。
【0050】
本発明によれば、上記したように、
(1)補強材と三面張りの壁面工を一体化させることによって堤体盛土の盛土材が流出しない構造とする。また、堤体盛土を多層の面状補強材によって補強することにより、耐震性を高めると同時に、長期に亘る堤体盛土の盛土材の吸い出しと越流による浸食に対して抵抗できるようにする。
(2)同様に、越流した津波が下流側(陸側)の裏のり面被覆工を急速に流下する際に生じる強烈な揚力により、堤体盛土に固定されていない天端被覆工(コンクリート工)と下流側裏のり面被覆工(コンクリート工)が剥ぎ取られないように堤体盛土と一体化する。
【0051】
具体的に、三面張りのコンクリートと堤体盛土とを一体化する方法は、下記の通りとする。
【0052】
壁面工が急勾配の場合には、現在、RRR−B工法で採用している仮抑え材に「土のう」や溶接金網をL型に加工した「L型溶接金網」を用いて裏型枠を使用しないでコンクリートを打設して躯体とジオグリッドを一体化する方法とする。
【0053】
裏のり面被覆工勾配が緩い場合には、以下のような具体的施工例が考えられる(基本的な連続したジオセル内で盛土補強材と防潮堤防の張りコンクリートを一体化すると共に、その前面に緑化機能を付随させる構造体とする)。
【0054】
(ア)ジオセルの水平方向に補強鉄筋類等を通すための孔を開ける、もしくはジオセル上部に溝を構築し、その孔、もしくは溝に防錆加工を施した補強鉄筋類等を通すことによって連続したジオセル構造体を構成する。
【0055】
(イ)防錆加工を施した補強鉄筋類等は水平、もしくは格子状に設置することで、連続体として機能することを特徴とする。
【0056】
(ウ)ジオグリッドの外周部(耳部分)に設置されている補強穴(ハトメ)にU字型鉄筋を通し、U字型鉄筋類と先にジオセル内に設置した水平、もしくは格子状の鉄筋類とを結束線等で結合する。
【0057】
(エ)緩勾配の堤体盛土裏のり面被覆工に連続したジオセルを敷設する場合には、水平に敷設されたジオテキスタイルを裏のり面に長さ30cmほど延長し、ジオセル内に水平、もしくは格子状に設置されている鉄筋類に両サイドからT字バーを挿入してジオテキスタイルとジオセルを一体化する。2つのT字バーはUクリップ等で固定する。
【0058】
なお、従来のRRR−B工法と同様に、土のう、もしくは溶接金網を巻き込む形式とする場合には、裏のり面被覆工勾配に合わせて雛壇式にセットバックしながら、また、溶接金網の場合は前面勾配を裏のり面勾配に合わせた形状とし標準層厚30cmを基本とする。
【0059】
(オ)堤体の天端被覆加工もジオセルを敷設してコンクリートを充填する方法と同様の形式を採用するとともに、下流側の堤体裏のり面被覆工の尻部に敷設する水叩き部も同様の方法とする。
【0060】
ただし、水叩き部のジオセルの固定法はアンカータイプとする。
【0061】
(カ)ジオセルは、防潮堤防の裏のり面被覆工勾配に合わせて上部のジオセルを設置していくが、設置したジオセルの堤体盛土背面側のセル内、および先に設置したU字型鉄筋を用いて結合したグリッド敷設部にはコンクリート、もしくはポーラスコンクリートを打設する。
【0062】
(キ)防潮堤の裏のり面被覆工勾配に合わせて、上部ジオセル前面を所定の寸法でセットバックさせ、コンクリートを打設したセル以外(前面部)には、裏のり面緑化を目的に植物の生育が可能なように、植生土のうの充填、もしくは土砂混合体を注入充填する。
【0063】
(ク)植生土のうで充填する場合には、越流波によって土のうが剥ぎ取られないように、水平、もしくは格子状に設置した補強鉄筋類等に土のうを巻きつける。
【0064】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。