特許第5939637号(P5939637)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5939637電力伝送システムの電力効率制御方法及び電力効率制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5939637
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】電力伝送システムの電力効率制御方法及び電力効率制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/10 20160101AFI20160609BHJP
【FI】
   H02J50/10
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-253638(P2012-253638)
(22)【出願日】2012年11月19日
(65)【公開番号】特開2014-103754(P2014-103754A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】桐生 昭吾
(72)【発明者】
【氏名】堂前 篤志
(72)【発明者】
【氏名】秋山 美郷
【審査官】 坂本 聡生
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−239690(JP,A)
【文献】 特開2000−148932(JP,A)
【文献】 特開2010−252446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00− 7/12
7/34− 7/36
H02J50/10
H01M10/42−10/48
H01F38/14
B60L 5/00− 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送すべき電力を送信する送電装置と、前記送電装置から送信された前記電力を受信する受電装置のそれぞれを、同じ共振周波数をもつ同じ共振回路を備える対称型の回路構成とし、かつ、前記送電装置及び前記受電装置を、それぞれの前記共振回路を構成するコイルで誘導結合した磁場共鳴方式の電力伝送システムの電力効率制御方法であって、
前記送電装置の前記受電装置との無結合時における第1の送電電流の最大値と前記共振回路の共振周波数を取得する取得ステップと、
前記送電装置と前記受電装置とを誘導結合した状態で、前記取得ステップで取得した前記共振周波数における前記送電装置の第2の送電電流を測定する電流測定ステップと、
前記第1の送電電流の最大値で前記第2の送電電流を除算して規格化送電電流を算出する規格化送電電流算出ステップと、
前記規格化送電電流が所定値以上であるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップによる判定結果に応じて、前記送電装置の電源周波数を可変制御する周波数制御ステップと
を含むことを特徴とする電力伝送システムの電力効率制御方法。
【請求項2】
前記判定ステップは、前記規格化送電電流が1/2以上であるか否かを判定するステップであり、
前記周波数制御ステップは、
前記判定ステップにより前記規格化送電電流が1/2以上である第1の判定結果が得られたときは前記電源周波数を前記共振周波数に設定し、前記規格化送電電流が1/2未満である第2の判定結果が得られたときは前記電源周波数を前記規格化送電電流が1/2になるように可変制御する
ことを特徴とする請求項1記載の電力伝送システムの電力効率制御方法。
【請求項3】
伝送すべき電力を送信する送電装置と、前記送電装置から送信された前記電力を受信する受電装置のそれぞれを、同じ共振周波数をもつ同じ共振回路を備える対称型の回路構成とし、かつ、前記送電装置及び前記受電装置を、それぞれの前記共振回路を構成するコイルで誘導結合した磁場共鳴方式の電力伝送システムの電力効率制御プログラムであって、
コンピュータに、
前記送電装置の前記受電装置との無結合時における第1の送電電流の最大値と前記共振回路の共振周波数を取得する取得機能と、
前記送電装置と前記受電装置とを誘導結合した状態で、前記取得機能で取得した前記共振周波数における前記送電装置の第2の送電電流を測定する電流測定機能と、
前記第1の送電電流の最大値で前記第2の送電電流を除算して規格化送電電流を算出する規格化送電電流算出機能と、
前記規格化送電電流が所定値以上であるか否かを判定する判定機能と、
前記判定機能による判定結果に応じて、前記送電装置の電源周波数を可変制御する周波数制御機能と
を実現させることを特徴とする電力伝送システムの電力効率制御プログラム。
【請求項4】
前記判定機能は、前記規格化送電電流が1/2以上であるか否かを判定する機能であり、
前記周波数制御機能は、
前記判定機能により前記規格化送電電流が1/2以上である第1の判定結果が得られたときは前記電源周波数を前記共振周波数に設定し、前記規格化送電電流が1/2未満である第2の判定結果が得られたときは前記電源周波数を前記規格化送電電流が1/2になるように可変制御する
ことを特徴とする請求項3記載の電力伝送システムの電力効率制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力伝送システムの電力効率制御方法及び電力効率制御プログラムに係り、特に磁場共鳴方式により送電装置から受電装置へ電力を伝送する無線電力伝送システムの電力効率制御方法及び電力効率制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の小型化により、ペースメーカ、人工内耳などの体内埋め込み型の医用機器やホルター心電計などの携帯医用機器の小型化、高性能化が進んでいる。これらの機器への外部からの非接触電力伝送はさらなる小型化や長期使用に有効である(例えば、非特許文献1参照)。上記の非接触電力伝送を実現する無線電力伝送システムには、その伝送方式として、現在、電磁誘導方式、磁場共鳴方式、電波放射方式の3つが代表的な方式として知られている(例えば、非特許文献2参照)。
【0003】
電磁誘導方式は、送電装置のコイルと受電装置のコイルとの間に生じる磁束の変化によって生じる起電力を利用する方式である。磁場共鳴方式は、送電装置と受電装置にそれぞれLC共振回路を設け、それらのLC共振回路の非接触で結合された各コイル間に生じる磁場の共鳴現象を利用する方式である。また、電波放射方式は、送電装置から送信された高周波信号を、受電装置において共振回路で共振させて受信し、その受信信号を整流して直流電力を得る方式である。このうち、家電製品等への応用が期待されているのは電磁誘導方式および磁場共鳴方式である。
【0004】
電磁誘導方式は、比較的古くから用いられている技術であるが、電力を伝送できる距離が数ミリ程度と短く、また送電側と受電側の正確な位置合わせが必要となる。一方、磁場共鳴方式は、近年実証された新しい方式で、電磁誘導方式と比較して一般的に効率が落ちるが、電力を伝送できる距離を数十cmまで伸ばせ、正確な位置合わせが必要でないなどの特長がある。これらの特長から、磁場共鳴方式は家庭電器製品や電気自動車など多くの応用が期待されており(例えば、非特許文献3参照)、また、伝送距離や効率の点で、上記のような小型医用機器への電力伝送の一方式として期待できる。
【0005】
ここで、磁場共鳴方式の電力伝送による非接触給電を小型医用機器に適用した場合、体の動きに応じて送電距離が変化し、その結果として伝送効率が大きく変化してしまうという問題がある。このため、体の動きに応じて、受電側電力ができるだけ大きくなるような制御が必要になる。無線電力伝送において受電側電力をできるだけ大きくする方法として、受電装置側に受信電力の監視機構を設け、その監視情報を送電装置側に伝えて受電側電力が大きくなるようにする回路構成及び制御方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。また、無線電力伝送システムの電磁界解析と等価回路とから電力伝送の効率を考察した研究もみられる(例えば、非特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】柴,“バイオエンジニアリング(電気と人工臓器)”,人工臓器,Vol.40,No.3,pp.207-210(2011)
【非特許文献2】庄木裕樹,”ワイヤレス電力伝送技術の実用化に向けた課題と取り組み、標準化動向”,信学技報,IEICE Technical Report,IT2011-82,ISEC2011-109,WBS2011-83(2012-3),pp.223-229
【非特許文献3】庄木裕樹,”ワイヤレス電力伝送の技術動向・課題と実用化に向けた取り組み”,信学技報,WPT2010-07,pp.19-24,(2010)
【非特許文献4】居村岳広,堀洋一,”等価回路から見た磁界共振結合におけるワイヤレス電力伝送距離と効率の限界値に関する研究”,電気学会D部門誌,Vol.130,No.10,pp.1169-1174(2010)
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−252497号公報
【特許文献2】特開2012−191721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1及び2各記載の制御方法では、電力監視及び情報送信のために特別な回路を受電装置側に追加しなければならず、受電装置の小型化を阻害し、この特別な回路による電力消費も無視できない。また、非特許文献4記載の研究では、伝送距離と電力効率の関係を導出するにとどまっている。
【0009】
本発明は以上の点に鑑みなされたもので、磁場共鳴方式の無線電力伝送システムにおいて、送電装置だけで受電装置の電力の推定を可能にし、受電装置へ送信する電力の効率を最大にし得る電力伝送システムの電力効率制御方法及び電力効率制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の電力伝送システムの電力効率制御方法は、伝送すべき電力を送信する送電装置と、前記送電装置から送信された前記電力を受信する受電装置のそれぞれを、同じ共振周波数をもつ同じ共振回路を備える対称型の回路構成とし、かつ、前記送電装置及び前記受電装置を、それぞれの前記共振回路を構成するコイルで誘導結合した磁場共鳴方式の電力伝送システムの電力効率制御方法であって、前記送電装置の前記受電装置との無結合時における第1の送電電流の最大値と前記共振回路の共振周波数を取得する取得ステップと、前記送電装置と前記受電装置とを誘導結合した状態で、前記取得ステップで取得した前記共振周波数における前記送電装置の第2の送電電流を測定する電流測定ステップと、前記第1の送電電流の最大値で前記第2の送電電流を除算して規格化送電電流を算出する規格化送電電流算出ステップと、前記規格化送電電流が所定値以上であるか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップによる判定結果に応じて、前記送電装置の電源周波数を可変制御する周波数制御ステップとを含むことを特徴とする。
【0011】
また、上記の目的を達成するため、本発明の電力伝送システムの電力効率制御プログラムは、伝送すべき電力を送信する送電装置と、前記送電装置から送信された前記電力を受信する受電装置のそれぞれを、同じ共振周波数をもつ同じ共振回路を備える対称型の回路構成とし、かつ、前記送電装置及び前記受電装置を、それぞれの前記共振回路を構成するコイルで誘導結合した磁場共鳴方式の電力伝送システムの電力効率制御プログラムであって、コンピュータに、前記送電装置の前記受電装置との無結合時における第1の送電電流の最大値と前記共振回路の共振周波数を取得する取得機能と、前記送電装置と前記受電装置とを誘導結合した状態で、前記取得機能で取得した前記共振周波数における前記送電装置の第2の送電電流を測定する電流測定機能と、前記第1の送電電流の最大値で前記第2の送電電流を除算して規格化送電電流を算出する規格化送電電流算出機能と、前記規格化送電電流が所定値以上であるか否かを判定する判定機能と、前記判定機能による判定結果に応じて、前記送電装置の電源周波数を可変制御する周波数制御機能とを実現させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、送電装置の電源周波数の制御のみで受電電力を大きくでき、電力効率を最大化することができる。また、受信装置の構成の簡略化、小型化及び低コスト化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る電力伝送システムの電力効率制御方法が適用される電力伝送システムの一実施の形態のブロック図である。
図2図1の一実施の形態の等価回路図である。
図3図2の等価回路において、kQを変化させたときの|i2|の計算結果を示す図である。
図4図2の等価回路において、kQ>1としたときの規格化電流|i1|及び|i2|の計算結果を示す図である。
図5】本発明に係る電力伝送システムの電力効率制御方法の一実施の形態を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係る電力伝送システムの電力効率制御方法が適用される電力伝送システムの一実施の形態のブロック図を示す。同図において、本実施の形態の電力伝送システム1は、送電装置10及び受電装置20からなる。送電装置10及び受電装置20は、送電装置10のLC共振回路のコイルL1と受電装置20のLC共振回路のコイルL2とを誘導結合し、その各コイル間に生じる磁場の共鳴現象を利用する磁場共鳴方式の電力伝送システムを構成している。
【0015】
送電装置10は、コイルL1を含む送電側回路11、送電側回路11に電流を供給するとともにその電流値を測定する電流測定回路12、電流測定回路12に任意の周波数の電源電力を供給する周波数可変電源13、及び電流測定回路12の測定電流値を基に受電装置20の受信電力が最大となる条件を判別し、その条件を満たすように周波数可変電源13の電源周波数を可変制御する制御装置14からなり、周波数可変電源13からの電力を無線で受電装置20へ伝送する。一方、受電装置20は、コイルL2を含む受電側回路21からなり、送電装置10から無線送信された電力を受信する。コイルL1とコイルL2とは結合係数kで誘導結合されている。
【0016】
図2は、図1の一実施の形態の等価回路図を示す。同図中、図1と同一構成部分には同一符号を付してある。図2において、送電装置10内の送電側回路11は、入出力インピーダンスZ01、コイルのインダクタンスL1、コイルのキャパシタンスC、コイルの損失Rc1が直列に接続された第1のLC共振回路を構成している。一方、受電装置20内の受電側回路21は、負荷インピーダンスZ02、コイルのインダクタンスL2、コイルのキャパシタンスC2、コイルの損失Rc2が直列に接続された第2のLC共振回路を構成している。また、第1のLC共振回路のコイルと第2のLC共振回路のコイルとは結合係数kで誘導結合されている。ここで、Z01=Z02=Z0、L1=L2=L、C1=C2=C、Rc1=Rc2=Rcであり、これらは各々一定である。一方、結合係数kは送電装置10と受電装置20との間の距離に応じて変化する。このように、伝送すべき電力を送信する送電装置10と、送電装置10から送信された電力を受信する受電装置20のそれぞれは、同じ共振周波数をもつ同じ共振回路を備える対称型の回路構成とされている。
【0017】
図2の等価回路において、送電装置10と受電装置20との結合がないとき(無負荷時)の送電側回路11を構成する第1のLC共振回路の共振のピークの鋭さを表す値をQとする。また、無負荷時の送電側回路11を構成する第1のLC共振回路の共振角周波数をωcとする。また、送電装置10の電源電圧はVとし、回路を流れる複素電流は送電装置10ではI1、受電装置20ではI2とする。
図1及び図2で構成される回路は以下の3つの特徴を有する。
【0018】
(1)第1の特徴
図2の等価回路から得られる回路方程式を解くことで、複素電流I1は式(1)のように求められる。なお、Z=Rc+Z0とおいた。
【0019】
【数1】
結合係数k、無負荷時の共振角周波数ωc、共振回路のQ値を用いて式(1)を変形し、規格化電流i1を下記の式(2)のように定義する。また、i1と同様の手順で規格化電流i2を下記の式(3)のように定義する。
【0020】
【数2】
ただし、式(2)、式(3)中のωc及びQはk=0、つまり無結合時における共振角周波数及び共振回路のQ値であり、それぞれ次のように与えられる。
【0021】
【数3】
【0022】
式(2)から規格化電流i1の大きさ|i1|、式(3)から規格化電流i2の大きさ|i2|を決めることができる。
また、式(2)から共振角周波数ωcにおける規格化電流i1の大きさ|i1|ωcは次式で表される。
【0023】
【数4】
【0024】
式(6)から、共振角周波数ωcにおける規格化電流i1の大きさ|i1|が分かれば、結合係数kと共振回路のQ値との積kQの大きさが1以下か、1より大きいかを判別することが可能となる。すなわち、共振角周波数ωcにおいて|i1|≧1/2であれば、kQ≦1、共振角周波数ωcにおいて|i1|<1/2であれば、kQ>1と判別できる。
【0025】
(2)第2の特徴
図2の等価回路において、kQを変化させたときの|i2|の計算結果を図3に示す。図3の縦軸は受電装置20の規格化電流|i2|、横軸は角周波数を共振角周波数ωcで規格化した値F(=ω/ωc)である。図3によれば、kQ≦1では、|i2|のピークは一つであり、そのピークはほぼ共振角周波数において現れる特徴を持つ。また、|i2|が最大であるとき、受電能力が最大となる。そのため、図3の結果から、kQ≦1の条件で受電能力を大きくするには、送電装置10の電源周波数を共振角周波数ωc(共振周波数f(=ωc/2π)でもよい)に近付けるように制御すればよいことが分かる。
【0026】
(3)第3の特徴
図2の等価回路において、kQ>1としたときの規格化電流|i1|及び|i1|の計算結果を図4に示す。図4はkQ=2の場合である。図4によれば、図2の等価回路は、kQ>1の条件の下では結合係数k及び共振回路のQ値の各値にかかわらず、|i1|は|i2|の最大値で交わり、その値は「0.5」である特徴を持つ。|i2|が最大であるとき、受電能力が最大となる。そのため、図4の結果から、kQ>1の条件で受電能力を大きくするには、|i1|=1/2となるように、送電装置10の電源周波数を制御すればよいことが分かる。
【0027】
次に、以上説明した3つの特徴を持つ図1及び図2の本実施の形態の電力伝送システム1において、上記3つの特徴に基づき、送電側電流の大きさから受電側電力を大きくする条件を判別し、受電側電力を大きくするための本発明の電力効率制御方法の動作について図5のフローチャートと図1及び図2を併せ参照して説明する。
【0028】
まず、周波数可変電源13及び電流測定回路12を使用して、無負荷時(つまり、無結合時)における送電側電流の最大値i1-max及び共振角周波数ωcの値を取得する(ステップS1)。次に、電流測定回路12を使用して、受電装置20が送電装置10と誘導結合した状態で、共振角周波数ωcにおける送電電流i1を測定する(ステップS2)。
【0029】
次に、制御回路14において、ステップS1で取得した無負荷時における送電側電流の最大値i1-maxで、ステップS2で取得した送電電流i1を除算して、送電装置10の共振角周波数ωcにおける規格化電流|i1|(=i1/i1-max)を求め、更にその値が1/2以上であるか否かを判定する(ステップS3)。
【0030】
そして、制御回路14は、|i1|≧1/2と判定したときは(ステップS3のYes)、前述の第1の特徴からkQ≦1であると判別し、前述の第2の特徴から周波数可変電源13を制御して電源周波数を共振角周波数ωcに設定する(ステップS4)。これにより、受電装置20の受電電力を大きくできる。一方、制御回路14は、|i1|<1/2と判定したときは(ステップS3のNo)、前述の第1の特徴からkQ>1と判別し、前述の第3の特徴から周波数可変電源13を制御して|i1|=1/2となるように電源周波数を調整する(ステップS5)。これにより、受電装置20の受電電力を大きくできる。
【0031】
続いて、制御回路14は、ステップS4又はS5により周波数可変電源13の電源周波数の制御をすると、続いて、無線電力伝送を終了するかどうかを判断する(ステップS6)。終了しないと判断したときは(ステップS6のNo)、ステップS2の処理に戻る。一方、終了すると判断したときは(ステップS6のyes)、処理を終了する。
【0032】
なお、本実施の形態によれば、送電装置10と受電装置20との間の距離が変化することにより、結合係数kの値が変化した場合でも、ステップS2からS6の繰り返し処理により、受電電力が常に最大になるように制御することができる。
【0033】
このように、本実施の形態によれば、送電装置10及び受電装置20をそれぞれ同じ共振周波数をもつ共振回路を備える対称型の回路で構成し、かつ、送電装置10及び受電装置20をそれぞれの共振回路を構成するコイルで誘導結合した磁場共鳴方式の電力伝送システムであって、送電装置10の送電電流の大きさから受電装置20の受電側電力を大きくする条件を判別し、その条件を満たすように送電装置10の電源周波数を制御するようにしたため、送電装置10の電源周波数の制御のみで受電電力を大きくでき、電力効率を最大化することができる。また、本実施の形態によれば、受電装置20に電力監視機構を設ける必要がないため、受信装置20の構成の簡略化、小型化及び低コスト化を実現できる。
【0034】
なお、本発明は図5のフローチャートに示した本発明の電力伝送システムの電力効率制御方法の一実施の形態の動作を、コンピュータにより実行させる電力効率制御プログラムも包含するものである。この場合の電力効率制御プログラムは、コンピュータにダウンロード可能な形態で記憶素子に記憶されて読み出されたり、ネットワークを通して配信される。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は体内埋め込み型の医用機器やホルスター心電計などの携帯医用機器に用いることができるが、この用途に限定されず、非接触ICカードへの電力伝送、携帯電話等の可搬型携帯無線通信端末の2次電池への非接触充電、電気自動車への非接触充電、自律分散型無線ネットークを構築する無線通信装置への無線電力伝送、その他情報機器や玩具など、無線により電力を伝送する無線電力伝送システム全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 電力伝送システム
10 送電装置
11 送電側回路
12 電流測定回路
13 周波数可変電源
14 制御装置
20 受電装置
21 受電側回路
1 送電側回路のコイルのインダクタンス
2 受電側回路のコイルのインダクタンス
k 結合係数
図1
図2
図3
図4
図5