特許第5939712号(P5939712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5939712表面改質剤及び該表面改質剤を含む熱硬化性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5939712
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】表面改質剤及び該表面改質剤を含む熱硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/18 20060101AFI20160609BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20160609BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20160609BHJP
   C09D 201/08 20060101ALI20160609BHJP
   C09D 201/10 20060101ALI20160609BHJP
   C09D 201/02 20060101ALI20160609BHJP
   C09D 201/06 20060101ALI20160609BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20160609BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20160609BHJP
   C09D 183/10 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   C09K3/18 104
   C09D163/00
   C09D201/00
   C09D201/08
   C09D201/10
   C09D201/02
   C09D201/06
   C09D175/04
   C09D183/04
   C09D183/10
【請求項の数】12
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2012-230323(P2012-230323)
(22)【出願日】2012年10月17日
(65)【公開番号】特開2014-80534(P2014-80534A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2014年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(72)【発明者】
【氏名】坂野 安則
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−241190(JP,A)
【文献】 特開2011−168768(JP,A)
【文献】 特開平06−118203(JP,A)
【文献】 特開2012−001652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/18
C09D 1/00−201/10
C08K 3/00−101/14
C08C 19/00−301/00
C08G 65/00− 67/04
C03C 15/00− 23/00
C07F 7/02− 7/21
C08F230/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物からなる表面改質剤
【化1】
(式(1)中、Rfは、フルオロポリエーテル構造を有する、数平均分子量400〜40,000の、一価又は二価の基である。Rfが一価のときにはa’は1であり、及びaは1〜6の整数である。Rfが二価のときにはa’は2であり、及びaは1である。bは1〜20の整数である。一価であるRfは、下記のものから選ばれ、
【化2】
(式中、kは0〜200の整数である)
【化3】
(式中、jは1〜3の整数であり、kは1〜200の整数である)
【化4】
(式中、kは0〜200の整数である)
【化5】
(式中、kは0〜200の整数である)
二価であるRfは、下記のものから選ばれる。
【化6】
(式中、rは2〜6の整数であり、k、tはそれぞれ0〜200の整数であり、但し、k+tは2〜200である。sは0〜6の整数である。)
【化7】
(式中、jは1〜3の整数であり、k、tはそれぞれ0〜200の整数であり、但し、k+tは2〜300である。)
【化8】
(式中、rは2〜6の整数であり、k、tはそれぞれ0〜200の整数であり、但し、k+tは2〜200である。sは0〜6の整数である。)
【化9】
(式中、rは2〜6の整数であり、k、tはそれぞれ0〜200の整数であり、但し、k+tは2〜200である。sは0〜6の整数である。)
は、互いに独立に、少なくとも(a+b)個のSi原子を有する(a+b)価の基であり、下記式で示される。
【化10】
(式中、a及びbは前記の通りであり、破線は結合手を示し、a個の繰り返しを有する括弧内に示される単位の各ケイ素原子は前記式(1)中のRfと結合し、b個の繰り返しを有する括弧内に示される単位の各ケイ素原子は前記式(1)中のQと結合し、括弧内に示される単位の並びはランダムであってよい。)
は、炭素数1〜20の二価炭化水素基であり、エーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよく、環状構造を有していてもよい。Xは、互いに独立に、下記式(I)又は(II)で示される基である。
【化11】
式(I)中、Rは互いに独立に、水素原子、又は炭素数1〜20の、非置換または置換の一価炭化水素基であり、エーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよく、環状構造を有していてもよい。
【化12】
式(II)中、Rは互いに独立に、水素原子、又は炭素数1〜20の、非置換または置換の一価炭化水素基である)。
【請求項2】
前記式(1)において、−Q−Xで表される構造が下記式(a)〜(d)で示される基から選ばれる、請求項1記載の表面改質剤
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
(上記式中、fは1〜10の整数であり、eは0〜5の整数であり、mは0〜10の整数であり、但し、f+2m+eは1〜20の範囲にあり、nは1〜20の整数である。Rは互いに独立に、水素原子、又は炭素数1〜20の、非置換または置換の一価炭化水素基である)。
【請求項3】
前記式(1)において、Qが、互いに独立に、下記式で示される基より選ばれる、請求項1または2記載の表面改質剤。
−CHCHCH−、
−CHCHCHCH−、
−CHCHCHCHCH−、
−CHCHCHCHCHCH−、
−CHCHCHCHCHCHCH−、
−CHCHCHCHCHCHCHCH−、
−CHCHCHOCH−、
−CHCHCHOCHCHOCH−、又は
−CHCHCHOCHCHOCHCHOCHCH
【請求項4】
前記式(1)において、−Q−Xで表される構造が
【化17】
または
【化18】
である、請求項2〜のいずれか1項記載の表面改質剤。
【請求項5】
(A)請求項1〜のいずれか1項記載の表面改質剤 (A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.005〜20質量部と、
(B)少なくとも1種の熱硬化性化合物
を含有する、熱硬化性組成物。
【請求項6】
(B)成分が、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、加水分解性シリル基、シラノール基、またはカルボン酸無水物基を有する化合物の中から選ばれる少なくとも一種である、請求項記載の組成物。
【請求項7】
(B)成分が1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物である、請求項記載の組成物。
【請求項8】
(B)成分が、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物及び1分子中にヒドロキシル基を2個以上有する化合物である、請求項記載の組成物。
【請求項9】
(B)成分が非フッ素化エポキシ化合物である、請求項記載の組成物。
【請求項10】
(B)成分が加水分解性シラン化合物である、請求項記載の組成物。
【請求項11】
請求項5〜10のいずれか1項記載の熱硬化性組成物からなるハードコート剤。
【請求項12】
請求項1〜のいずれか1項記載の表面改質剤を熱硬化性樹脂に添加して使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面改質剤及び該表面改質剤を含む熱硬化性組成物に関する。詳細には、熱硬化性樹脂、特には熱硬化型ハードコート剤に添加することにより、得られる硬化物表面に優れた撥水撥油性、防汚性、及び耐指紋性を付与することができる表面改質剤、及び該表面改質剤を含む熱硬化性組成物、特には熱硬化型ハードコート剤及び塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードコート剤(あるいはハードコートとしての役割を有する塗料)は、プラスチック樹脂に代表される各種物品表面に塗工され硬化される事で、物品の表面を保護し、物品の表面に新たな機能を付与することができる素材として非常に幅広い用途で用いられている。
【0003】
これらハードコート剤には、その用途の広がりに応じて、従来求められてきた硬度、耐摩耗性、耐薬品性、及び耐久性等に加え、撥水撥油性、防汚性、耐指紋性、耐候性、すべり性、帯電防止性、防曇性、難焦性、及び反射防止性等の更なる高機能が求められている。特に、汚れ防止性、及び汚れ拭き取り性の向上が要求されている。
【0004】
ハードコート剤には、紫外線・電子線硬化型ハードコート剤と熱硬化型ハードコート剤がある。紫外線・電子線硬化型ハードコート剤として、例えば、アクリル基含有ハードコート剤が挙げられる。近年、紫外線硬化型ハードコート剤にごく少量添加することで、添加前のハードコート剤が有していた特性に加え、得られる硬化表面に撥水撥油性及び防汚性、耐指紋性などを付与することが出来る、含フッ素化合物が検討されている。
【0005】
本発明者らは、特許文献1〜4にて、紫外線または電子線硬化型ハードコート剤用の添加剤として好適に使用でき、得られる硬化物に良好な撥水撥油性及び防汚性、耐指紋性を付与し得る含フッ素化合物を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−053114号公報
【特許文献2】特開2010−138112号公報
【特許文献3】特開2010−285501号公報
【特許文献4】特開2011−241190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、熱硬化型ハードコート剤用の表面改質剤であって、上記紫外線硬化型ハードコート剤と同等以上に、得られる硬化物表面に撥水撥油性及び防汚性、耐指紋性を付与できる表面改質剤はまだない。従って本発明は、熱硬化型ハードコート剤から得られる硬化物表面に優れた撥水撥油性、防汚性、及び耐指紋性を付与することができる表面改質剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記一般式(1)で表される含フッ素化合物を熱硬化性樹脂に添加することにより、得られる硬化物は、表面に優れた撥水撥油性、防汚性、及び耐指紋性を有することができることを見出し、本発明に至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記一般式(1)で表される化合物からなる表面改質剤を提供する。
下記一般式(1)で表される化合物からなる表面改質剤
【化1】
(式(1)中、Rfは、フルオロポリエーテル構造を有する、数平均分子量400〜40,000の、一価又は二価の基である。Rfが一価のときにはa’は1であり、及びaは1〜6の整数である。Rfが二価のときにはa’は2であり、及びaは1である。bは1〜20の整数である。一価であるRfは、下記のものから選ばれ、
【化2】
(式中、kは0〜200の整数、好ましくは0〜100の整数である)
【化3】
(式中、jは1〜3の整数であり、kは1〜200の整数、好ましくは1〜60の整数である)
【化4】
(式中、kは0〜200の整数、好ましくは0〜100の整数である)
【化5】
(式中、kは0〜200の整数、好ましくは0〜100の整数である)
【0010】
二価であるRfは、下記のものから選ばれる。
【化6】

(式中、rは2〜6の整数であり、k、tはそれぞれ0〜200の整数、好ましくは0〜100の整数であり、但し、k+tは2〜200、好ましくは3〜150である。sは0〜6の整数である。)
【化7】
(式中、jは1〜3の整数であり、k、tはそれぞれ0〜200の整数、好ましくは2〜100の整数であり、但し、k+tは2〜300、好ましくは4〜200である。)
【化8】
(式中、rは2〜6の整数であり、k、tはそれぞれ0〜200の整数、好ましくは0〜100の整数であり、但し、k+tは2〜200、好ましくは3〜150である。sは0〜6の整数である。)
【化9】
(式中、rは2〜6の整数であり、k、tはそれぞれ0〜200の整数、好ましくは0〜100の整数であり、但し、k+tは2〜200、好ましくは3〜150である。sは0〜6の整数である。)
は、互いに独立に、少なくとも(a+b)個のSi原子を有する(a+b)価の基であり、下記式で表される。
【化10】
(式中、a及びbは前記の通りであり、破線は結合手を示し、a個の繰り返しを有する括弧内に示される単位の各ケイ素原子は前記式(1)中のRfと結合し、b個の繰り返しを有する括弧内に示される単位の各ケイ素原子は前記式(1)中のQと結合し、括弧内に示される単位の並びはランダムであってよい。)
は、炭素数1〜20の二価炭化水素基であり、エーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよく、環状構造を有していてもよい。Xは、互いに独立に、下記式(I)又は(II)で示される基である。
【化11】
式(I)中、Rは互いに独立に、水素原子、又は炭素数1〜20の、非置換または置換の一価炭化水素基であり、エーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよく、環状構造を有していてもよい。
【化12】
式(II)中、Rは互いに独立に、水素原子、又は炭素数1〜20の、非置換または置換の一価炭化水素基である)。
【0011】
さらに、本発明は、
(A)上記表面改質剤 (A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.005〜20質量部と、
(B)少なくとも1種の熱硬化性化合物
を含有する熱硬化性組成物、及び該熱硬化性組成物からなるハードコート剤を提供する。尚、本発明においてハードコート剤は、ハードコートとしての役割を有する塗料を包含する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の表面改質剤は熱硬化性組成物から得られる硬化物の表面に、優れた撥水撥油性、防汚性、及び耐指紋性を付与することができる。従って該表面改質剤は、熱硬化性樹脂用の防汚性付与剤または撥水撥油性付与剤として有用である。本発明の表面改質剤は、特に、熱硬化型ハードコート剤の添加剤として好適に使用できる。また、本発明の熱硬化性組成物は防汚コーティング剤の形成材料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明は、下記一般式(1)で表される化合物からなる表面改質剤である。
【化13】
上記式(1)中、Xは互いに独立に、下記式(I)又は(II)で示される基である。
【0015】
【化14】
式(I)中、Rは互いに独立に、水素原子、又は炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜8の、非置換または置換の一価炭化水素基であり、エーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよく、環状構造を有していてもよい。上記一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基などが挙げられる。また、これらの炭化水素基の水素原子の一部又は全部を塩素、フッ素、臭素等のハロゲン原子で置換したフロロメチル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換一価炭化水素基であってもよい。好ましくは、Rは水素原子である。
【0016】
【化15】
式(II)中、Rは互いに独立に、水素原子、又は炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜8の、非置換または置換の一価炭化水素基である。上記一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基などが挙げられる。また、これらの炭化水素基の水素原子の一部又は全部を塩素、フッ素、臭素等のハロゲン原子で置換したフロロメチル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換一価炭化水素基であってもよい。好ましくは、Rは水素原子またはメチル基である。
【0017】
上記式(I)または式(II)で表される構造は、例えば下記のものが挙げられる。
【化16】
【0018】
上記式(1)中、Qは、炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜15の二価炭化水素基であり、環状構造をなしていてもよく、途中エーテル結合(−O−)又はエステル結合(−COO−)を含んでいてもよい。
【0019】
該Qとしては、例えば下記構造のものが挙げられる。
−CHCHCH
−CHCHCHCH
−CHCHCHCHCH
−CHCHCHCHCHCH
−CHCHCHCHCHCHCH
−CHCHCHCHCHCHCHCH
−CHCHCHOCH
−CHCHCHOCHCHOCH
−CHCHCHOCHCHOCHCHOCHCH
【0020】
上記−Q−Xで表される構造としては、例えば下記式(a)〜(d)で表される構造が挙げられる。
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
上記式中、fは1〜10の整数であり、eは0〜5の整数であり、mは0〜10の整数であり、但し、f+2m+eは1〜20の範囲にある。好ましくは、fは1〜6の整数であり、eは1または2であり、mは0〜4の整数である。nは1〜20の整数、好ましくは2〜15の整数である。Rは上記の通りであり、好ましくは水素原子またはメチル基である。
【0021】
特に好ましくは、−Q−Xで表される構造が
【化21】
または
【化22】
である。
【0022】
上記式(1)中、Qは、互いに独立に、少なくとも(a+b)個のSi原子を有する(a+b)価の基であ。上記式(1)においてRfが一価のときにはa’は1であり、及びaは1〜6の整数、好ましくは1〜4の整数であり、より好ましくは1である。Rfが二価のときにはa’は2であり、及びaは1である。bは1〜20の整数であり、好ましくは1〜6の整数であり、より好ましくは2〜4の整数である。さらには、a+b=3〜6を満たす整数であるのがよい。
【0023】
該Qは、以下の構造を有する。
【化23】
式中、破線は結合手を示し、a個の繰り返しを有する括弧内に示される単位の各ケイ素原子は前記式(1)中のRfと結合し、b個の繰り返しを有する括弧内に示される単位の各ケイ素原子は前記式(1)中のQと結合する。括弧内に示される各単位の並びはランダムであってよい。
【0024】
特にはa+b=3〜6、より好ましくは、3〜5である。
【0025】
上記式(1)中、Rfは、フルオロポリエーテル構造を有する、数平均分子量400〜40,000の、一価又は二価の基である。Rfの数平均分子量は好ましくは500〜20,000の範囲である。本発明において数平均分子量は、H−NMR及び19F−NMRに基づく末端構造と主鎖構造との比率から算出される値である。
【0026】
一価であるRfとしては、例えば下記のものが挙げられる。
【化24】
(式中、kは0〜200の整数、好ましくは0〜100の整数である)
【化25】

(式中、jは1〜3の整数であり、kは1〜200の整数、好ましくは1〜60の整数である)
【化26】
(式中、kは0〜200の整数、好ましくは0〜100の整数である)
【化27】
(式中、kは0〜200の整数、好ましくは0〜100の整数である)
【0027】
二価であるRfとしては、例えば下記のものが挙げられる。
【化28】
(式中、rは2〜6の整数であり、k、tはそれぞれ0〜200の整数、好ましくは0〜100の整数であり、但し、k+tは2〜200、好ましくは3〜150である。sは0〜6の整数である。)
【化29】
(式中、jは1〜3の整数であり、k、tはそれぞれ0〜200の整数、好ましくは2〜100の整数であり、但し、k+tは2〜300、好ましくは4〜200である。)
【化30】
(式中、rは2〜6の整数であり、k、tはそれぞれ0〜200の整数、好ましくは0〜100の整数であり、但し、k+tは2〜200、好ましくは3〜150である。sは0〜6の整数である。)
【化31】
(式中、rは2〜6の整数であり、k、tはそれぞれ0〜200の整数、好ましくは0〜100の整数であり、但し、k+tは2〜200、好ましくは3〜150である。sは0〜6の整数である。)
【0028】
上記一般式(1)で示される化合物は、例えば、次のような方法で製造することができる。まず初めに、末端にオレフィン基を有する含フッ素化合物Aに対して、分子中に2個以上、好ましくは3個以上のSiH基を有する有機ケイ素化合物Bシロキサン、又はその2種以上の組合せ)を、SiH基が過剰となる条件下で付加反応させる。該反応により、複数のSiH基を有する含フッ素化合物Cを合成する。
【0029】
化合物Aは、特には下記式(6)で表すことができる。
上記式(6)において、xはRfが一価のとき1、二価のとき2である。Rfは下記式(7)で表される一価の基又は下記式(8)で表される二価の基である。
上記式(7)及び(8)中、Rf’、Rf’’は上述の通りである。Qは互いに独立に、酸素原子、窒素原子、フッ素原子又はケイ素原子を含んでいてもよい、炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜8の二価の有機基であり、環状構造又は不飽和結合を有する基であってもよい。または、Qは単結合であってもよい。
【0030】
該Qとしては下記のものが挙げられる。下記式においてPhはフェニル基を示す。
【化32】
【化33】
【0031】
一価である化合物Aとしては、例えば下記のものが挙げられる。
【化34】

(式中、kは0〜200の整数、好ましくは0〜100の整数である)
【化35】
(式中、jは1〜3の整数であり、kは1〜200の整数、好ましくは1〜60の整数である)
【化36】
(式中、kは0〜200の整数、好ましくは0〜100の整数である)
【化37】
(式中、kは0〜200の整数、好ましくは0〜100の整数である)
【0032】
二価である化合物Aとしては、例えば下記のものが挙げられる。
【化38】
(式中、rは2〜6の整数であり、k、tはそれぞれ0〜200の整数、好ましくは0〜100の整数であり、但し、k+tは2〜200、好ましくは3〜150である。sは0〜6の整数である。)
【化39】
(式中、jは1〜3の整数であり、k、tはそれぞれ0〜200の整数、好ましくは2〜100の整数であり、但し、k+tは2〜300、好ましくは4〜200である。)
【化40】
(式中、rは2〜6の整数であり、k、tはそれぞれ0〜200の整数、好ましくは0〜100の整数であり、但し、k+tは2〜200、好ましくは3〜150である。sは0〜6の整数である。)
【化41】

(式中、rは2〜6の整数であり、k、tはそれぞれ0〜200の整数、好ましくは0〜100の整数であり、但し、k+tは2〜200、好ましくは3〜150である。sは0〜6の整数である。)
【0033】
化合物Bは、特には下記式(9)で表すことができる。
式(9)中、Q、a、及びbは上述の通りである。かっこ内に示されたHはQ構造中のSi原子に直接結合した水素原子である。
【0034】
該化合物Bとしては、例えば、下記のものが挙げられる。
【化42】
上記式中、a、bは上述の通りである。
【0035】
特には、以下のものが好ましい。
【化43】
【0036】
化合物Aが一価の化合物である場合、化合物Bが1分子中に有するSiH基の個数(a+b)個に対して、化合物Aが有するオレフィン基の個数が(a+b)個未満、好ましくはa個となる量で反応させるのがよい。得られる化合物Cの構造は下記式(10)で表すことができる。
上記式中、Rf、a及びbは上述の通りである。
【0037】
化合物Aが二価の化合物である場合、化合物A:化合物B=(v+1):(v+2)のモル比で反応させることが望ましく(vは前述の通りである。)、得られる化合物Cの構造は、例えば下記式(11)で表すことができる。v=0のときは化合物Aの両末端に1分子ずつの化合物Bが導入された構造となる。
上記式中、Q1、Rf、a、b及びvは上述した通りである。かっこ内に示されたHは、Q1構造中のSi原子に直接結合する水素原子である。また、T
【化44】
であり、Qは上述した通りである。かっこ内に示されたHは、Q構造中のSi原子に直接結合する水素原子である。
【0038】
上記付加反応は、無溶剤下で行うことができるが、必要に応じて溶剤存在下で行っても良い。該溶剤は、トルエン、キシレン、イソオクタンなど広く一般に用いられている有機溶剤を使用すればよい。但し、沸点が目的とする反応温度以上であり、かつ反応を阻害せず、反応後に生成する含フッ素化合物Cが反応温度において可溶であることが好ましい。例えば、m−キシレンヘキサフロライド、ベンゾトリフロライド等のフッ素変性芳香族炭化水素系溶剤、メチルパーフルオロブチルエーテル等のフッ素変性エーテル系溶剤等の部分フッ素変性された溶剤が望ましく、特に、m−キシレンヘキサフロライドが好ましい。
【0039】
付加反応触媒は、従来公知のものを使用すればよい。例えば、白金、ロジウム又はパラジウムを含む化合物を使用することができる。中でも白金を含む化合物が好ましく、ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物、白金カルボニルビニルメチル錯体、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金−シクロビニルメチルシロキサン錯体、白金−オクチルアルデヒド/オクタノール錯体、あるいは活性炭に担持された白金を用いることができる。触媒の配合量は有効量であればよい。特には、化合物Aに対し、含まれる金属量が0.1〜5,000質量ppm、より好ましくは1〜1,000質量ppmとなる量であるのがよい。
【0040】
付加反応において、各成分の仕込み順序は特に制限されるものでない。例えば、化合物A、化合物B及び触媒の混合物を室温から徐々に付加反応温度まで加熱する方法、化合物A、化合物B及び希釈溶媒の混合物を目的とする反応温度にまで加熱した後に触媒を添加する方法、目的とする反応温度まで加熱した化合物Bと触媒の混合物に化合物Aを滴下する方法、目的とする反応温度まで加熱した化合物Bに化合物Aと触媒の混合物を滴下する方法が挙げられる。中でも、化合物A、化合物B及び希釈溶媒の混合物を目的とする反応温度にまで加熱した後に触媒を添加する方法、あるいは、目的とする反応温度まで加熱した化合物Bに化合物Aと触媒の混合物を滴下する方法が特に好ましい。上記付加反応条件は、従来公知の方法に従えばよい。特には、乾燥雰囲気下で、空気あるいは不活性ガス(N、Ar等)中、反応温度50〜150℃、好ましくは70〜120℃で、0.5〜96時間、好ましくは1〜48時間行うことが望ましい。
【0041】
化合物Aの配合量は、(a+b)個のSiH基を有する化合物B1分子に対して、化合物Aが有するオレフィン基の個数が(a+b)個未満、好ましくはa個となる量であるのがよい。特には、化合物Aが二価の化合物である場合は、化合物A:化合物B=(v+1):(v+2)のモル比で反応させることが望ましく、上記式(11)中のvの値が0〜5となる条件であるのがよい。特には、三次元架橋を防ぐため、化合物Aの末端オレフィン基に対し、化合物Bを過剰量用いて付加反応を行った後に、未反応の化合物Bを減圧留去等により除去することが望ましい。特には、化合物Aの末端オレフィン基1モル当量に対し、化合物Bを1〜10モル当量、特に2〜6モル当量の存在下で反応させるのが好ましい。また必要に応じて、vが小さい中間体を合成してから、段階的に付加反応を行っても良い。例えばv=0の化合物(11)を合成した後に、2モルの化合物(11)に対して、1モルの化合物Aを再度反応させることでv=3の化合物Cを得ることができる。あるいは、vの異なる混合物中から任意の分離手段により目的とするvの値を持つ成分を分離することもできる。例えば、v=0〜3の混合物から、分取クロマトグラフ等の手段によりv=1の成分のみを取り出しても良い。
【0042】
次いで、上記で得られる含フッ素化合物CのSiH基と、一分子中に末端オレフィン基とエポキシ基を有する化合物Dとの付加反応を行うことで、上記式(1)で示される含フッ素エポキシ化合物を得ることができる。
【0043】
化合物Dとしては、例えば以下のものが挙げられる。該化合物は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【化45】
【0044】
化合物Cと化合物Dの付加反応は、従来公知の方法に従えばよく、例えば、上述した方法で行えばよい。好ましくは、上述した付加反応触媒存在下、乾燥雰囲気下で、空気あるいは不活性ガス(N、Ar等)中、反応温度50〜150℃、好ましくは50〜100℃で0.5〜96時間、好ましくは1〜48時間で行えばよい。該反応は、必要に応じて溶媒を使用してもよい。
【0045】
化合物Cに対する、化合物Dの配合量は、任意の値を用いることができるが、化合物Cが有するSiH基の個数に対して、化合物Dが有する末端オレフィン基の個数が等しい、もしくは末端オレフィン基の個数が過剰となる量を用いて行い、付加反応を行った後に、未反応の化合物Dを減圧留去等により除去することが望ましい。特には、化合物Cが有するSiH基1個に対する、化合物Dが有する末端オレフィン基の個数の比が1.0〜5.0、好ましくは1.0〜2.0となる量で反応を行うことが望ましい。
【0046】
また、本発明においては、上記式(1)で表される含フッ素エポキシ化合物は、下記式

(H)−Q−Rf

(Q、b及びRfは上述した通りである。)
で示される含フッ素有機ケイ素化合物Eと、上記化合物Dとを付加反応させることで得ることもできる。付加反応条件は特に制限されるものでなく、上述した、化合物Cと化合物Dとの付加反応条件と同様であってよい。
【0047】
上記一般式(1)で示される化合物として特に好ましくは、下記に示す化合物を挙げることができる。
【化46】
(式中、kは0〜200の整数、好ましくは0〜100の整数である)
【化47】
(式中、kは0〜200の整数、好ましくは0〜100の整数である)
【化48】
(式中、kは0〜200の整数、好ましくは0〜100の整数である)
【化49】
(式中、kは0〜200の整数、好ましくは0〜100の整数である)
【化50】
(式中、jは1〜3の整数であり、k、tはそれぞれ0〜200の整数、好ましくは2〜100の整数であり、但し、k+tは2〜300、好ましくは4〜200である。)
【化51】
(式中、jは1〜3の整数であり、k、tはそれぞれ0〜200の整数、好ましくは2〜100の整数であり、但し、k+tは2〜300、好ましくは4〜200である。)
【化52】
(式中、jは1〜3の整数であり、k、tはそれぞれ0〜200の整数、好ましくは2〜100の整数であり、但し、k+tは2〜300、好ましくは4〜200である。)
【0048】
上記式(1)で表される化合物からなる表面改質剤を硬化性組成物に添加することにより、得られる硬化物の表面に優れた防汚性、耐指紋性、撥水性、及び撥油性を付与することができる。本発明の表面改質剤は、該表面改質剤と混合、硬化可能であれば、いずれの硬化性組成物にも添加することができる。特に、本発明の表面改質剤は非フッ素系有機化合物との相溶性に優れるため、非フッ素系の硬化性組成物に配合して、上記優れた表面特性を有する硬化物を提供することができる。特には、熱硬化性組成物に添加して使用するのが好ましく、熱硬化性樹脂用の表面改質剤として特に好適である。中でも、本発明の表面改質剤は、熱硬化型ハードコート剤用の添加剤として有用である。
【0049】
熱硬化性組成物
本発明はさらに、(A)上述した表面改質剤と、(B)少なくとも1種の熱硬化性化合物とを含有する熱硬化性組成物を提供する。熱硬化性組成物中、(A)表面改質剤の含有量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.005〜20質量部、好ましくは0.01〜10質量部である。表面改質剤の量が上記上限値超では、得られる硬化物層において含フッ素エポキシ化合物の成分層が厚くなり、硬化物としての性能を損なう場合がある。表面改質剤の量が上記下限値未満ではフッ素成分の量が少なく、硬化物層の表面でフッ素成分由来の効果を十分に発揮することができない場合がある。
【0050】
上記(B)成分は、(A)表面改質剤と混合、硬化可能であればよく、従来公知の熱硬化性化合物を使用することができる。熱硬化性化合物は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。尚、本発明において熱硬化性化合物は熱硬化性樹脂を含む。
【0051】
該熱硬化性化合物としては、好ましくは、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、加水分解性シリル基、シラノール基、またはカルボン酸無水物基を有する化合物の中から選ばれる少なくとも一種であるのがよい。
【0052】
水酸基を有する化合物は、1分子中に水酸基を2個以上有する化合物が好ましい。該化合物としてはエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン/オキシプロピレン共重合グリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の長鎖ポリエーテルポリオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、スクロース、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのポリエーテルポリオール、グリセリンにプロピレン付加重合させたポリオキシプロピレントリオール、多価カルボン酸と多価アルコールの縮合などにより合成できるポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ビスフェノールA、エチレンジアミン等のアミン化合物等へのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物;ポリテトラメチレンエーテルグリコールが挙げられる。中でもポリエーテルポリオール、ポリオキシプロピレントリオール、ポリエステルポリオールが好ましい。
【0053】
カルボキシル基を有する化合物は、1分子中にカルボキシル基を2個以上有する化合物が好ましい。該化合物としてはシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2−メチルコハク酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−メチルペンタン二酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸、水添ダイマー酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸類;トリメリト酸、トリメシン酸、ひまし油脂肪酸の三量体等のトリカルボン酸類;ピロメリット酸等の4価以上のカルボン酸等が挙げられる。中でも脂肪族のジカルボン酸類が好ましい。
【0054】
アミノ基を有する化合物は、1分子中にアミノ基を2個以上有する化合物が好ましい。該化合物としてはエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、フェニレンジアミン、ペンタメチレンヘキサミン、ヘキサメチレンヘプタミン、ヒドラジン、フェニルヒドラジン、ポリエチレンイミン等が挙げられる。
【0055】
エポキシ基を有するモノマーは、1分子中にエポキシ基を2個以上有する化合物が好ましい。特には、非フッ素化エポキシ化合物であるのが好ましい。該化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル、水添・非水添の芳香族グリシジルエーテル型のエポキシ樹脂(例えばビスフェノールA型、ノボラック型)等が挙げられる。
【0056】
メルカプト基を有する化合物は、1分子中にメルカプト基を2個以上有する化合物が好ましい。該化合物としては、1,4−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,10−デカンジチオール、1,4−ブタンジオールビス(チオグリコラート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオナート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコラート)、ペンタエリトリトールテトラキス(メルカプトアセタート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトブチレート)が挙げられる。中でもメルカプト基を3個以上有するものが好ましい。
【0057】
イソシアネート基を有する化合物は、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物が好ましい。該化合物としては、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート等を挙げることができる。これらの内では脂肪族又は脂環式のイソシアネート類に分類されるものが特に好ましい。
【0058】
中でも、上記1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物と、1分子中に水酸基を2個以上有する化合物を併用することが好ましい。
【0059】
加水分解性シリル基を有する化合物は、ケイ素原子に結合した加水分解性基を1分子中に2個以上有する化合物、特にはシラン化合物が好ましい。加水分解性基としては、アルコキシ基、ケトキシム基、イソプロペノキシ基が挙げられる。このようなシラン化合物としては、テトラクロロシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジメチルジイソプロペノキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルイソプロペノキシシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリクロロシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリクロロシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、プロピルメチルジクロロシラン、プロピルメチルジメトキシシラン、ヘキシルメチルジクロロシラン、ヘキシルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジクロロシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジメチルフェニルクロロシラン、及びこれらの部分加水分解物などが挙げられる。また、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、5−ヘキセニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、4−ビニルフェニルトリメトキシシラン、3−(4−ビニルフェニル)プロピルトリメトキシシラン、4−ビニルフェニルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなどの反応性官能基を有するシランを使用してもよい。中でも、操作性、副生物の溜去のし易さから、トリメトキシシランあるいはトリエトキシシランを使用するのがより好ましい。使用可能なシラン化合物はこれに限定されるものではない。また、これらシラン化合物の1種を単独で、又は2種以上の混合物を使用してもよい。
【0060】
シラノール基を有する化合物は、1分子中にシラノール基を2個以上有する化合物が好ましい。該化合物としては、前記した加水分解性シリル基を有する化合物の一部または全ての加水分解性基を加水分解したものが挙げられる。中でもトリメトキシシランあるいはトリエトキシシランの部分加水分解物が好ましい。
【0061】
カルボン酸無水物基を有する化合物としては、無水コハク酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテート、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物が挙げられる。
【0062】
上記(B)成分は、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、及びシリコーン樹脂から選ばれる少なくとも1種であってもよい。本発明の表面改質剤は、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、またはこれらの混合物を含む塗料、または熱硬化型ハードコート剤に添加して使用することができる。該塗料及び熱硬化型ハードコート剤は市販品を使用することができる。
【0063】
本発明の熱硬化性組成物は、必要に応じて硬化促進剤を含有することができる。該硬化促進剤としては、例えば、ピペリジン、N,N−ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどの2級及び3級アミン、BF、ZnCl、SuCl、FeCl、AlClなどのルイス酸、及びこれらルイス酸のアミン錯体、ジシアンジアミド等が挙げられる。
【0064】
特に熱硬化性組成物がイソシアネート基を有する化合物を含む場合、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、n−ヘキシルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジシアンジアミド等の塩基性化合物類;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、チタンアセチルアセトナート、アルミニウムトリイソブトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート、モノアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラ(アセチルアセトナート)、ジルコニウムテトラブチレート、コバルトオクチレート、コバルトアセチルアセトナート、鉄アセチルアセトナート、スズアセチルアセトナート、ジブチルスズオクチレート、ジブチルスズラウレート、オクチル酸亜鉛、安息香酸亜鉛、p−tert−ブチル安息香酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛等の含金属化合物類、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン等の有機チタンキレート化合物等が挙げられる。
【0065】
また熱硬化性組成物が加水分解性シリル基を有する化合物を含む場合、テトラブトキシチタン、テトラ−i−プロポキシチタン、ジブトキシ−(ビス−2,4−ペンタンジオネート)チタン、ジ−i−プロポキシ(ビス−2,4−ペンタンジオネート)チタンなどの有機チタンエステル、テトラブトキシジルコニウム、テトラ−i−プロポキシジルコニウム、ジブトキシ−(ビス−2,4−ペンタンジオネート)ジルコニウム、ジ−i−プロポキシ(ビス−2,4−ペンタンジオネート)ジルコニウムなどの有機ジルコニウムエステル、アルミニウムトリイソプロポキシド等のアルコキシアルミニウム化合物、アルミニウムアセチルアセトナート錯体等のアルミニウムキレート化合物、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Fe、Ru、Co、Rh、Ni、Zn、Ga、In、Ge、Sn等の加水分解性誘導体等を使用することができる。中でも、アルミニウムアセチルアセトナート錯体が安定性、硬化性を両立させる点で好ましい。組成物中のこれら硬化促進剤の配合量は、熱硬化性組成物を硬化させるための有効量であればよく、特に限定されない。
【0066】
また本発明の熱硬化性組成物には、必要に応じて、従来公知の添加剤をさらに配合することができる。このような添加剤としては、例えば、フィラー、染顔料、レベリング剤、反応性希釈剤、非反応性高分子樹脂、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、分散剤、帯電防止剤、チキソトロピー付与剤が挙げられる。
【0067】
さらに本発明の熱硬化性組成物は、必要に応じて溶剤を含有してもよい。好ましい溶剤としては、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、及び酢酸エチル、乳酸エチル等のエステル類等が挙げられる。溶剤の配合量は特に制限されないが、好ましくは上記(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して20〜900質量部、特には50〜400質量部であるのがよい。
【0068】
本発明の熱硬化性組成物の調製方法は特に制限されるものでない。本発明の熱硬化性組成物は、従来公知の方法に従い、上記(A)成分と(B)成分、必要に応じて任意の添加剤及び溶剤を混合することにより得ることができる。本発明の熱硬化性組成物の硬化条件は、使用する熱硬化性化合物の種類に応じて、従来公知の方法に従い適宜選択すればよい。特には、室温〜200℃の範囲の温度で、10分〜24時間程度加熱するのがよい。
【0069】
本発明の熱硬化性組成物は、基材表面に塗布して硬化、あるいは単体で硬化させることにより、表面に優れた防汚性、撥水性、撥油性、及び耐指紋性を有する硬化物を提供する。これによって、指紋、皮脂、汗等の人脂、化粧品等により汚れ難くなり、汚れが付着した場合であっても拭き取り性に優れた硬化物表面を与える。このため、本発明の熱硬化性組成物は、人体が触れて人脂、化粧品等により汚される可能性のある物品の表面に施与される塗装膜もしくは保護膜を形成するために使用されるハードコート剤として特に有用である。
【0070】
上記ハードコート剤で表面処理される物品としては、例えば、光磁気ディスク、CD・LD・DVD・ブルーレイディスク等の光ディスク、ホログラム記録等に代表される光記録媒体;メガネレンズ、プリズム、レンズシート、ペリクル膜、偏光板、光学フィルター、レンチキュラーレンズ、フレネルレンズ、反射防止膜、光ファイバーや光カプラー等の光学部品・光デバイス;CRT、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、背面投写型ディスプレイ、蛍光表示管(VFD)、フィーsルドエミッションプロジェクションディスプレイ、トナー系ディスプレイ等の各種画面表示機器;特にPC、携帯電話、携帯情報端末、ゲーム機、電子ブックリーダー、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、自動現金引出し預け入れ装置、現金自動支払機、自動販売機、自動車用等のナビゲーション装置、セキュリティーシステム端末等の画像表示装置、及びその操作も行うタッチパネル(タッチセンサー、タッチスクリーン)式画像表示入力装置;携帯電話、携帯情報端末、電子ブックリーダー、携帯音楽プレイヤー、携帯ゲーム機、リモートコントローラ、コントローラ、キーボード等、車載装置用パネルスイッチなどの入力装置;携帯電話、携帯情報端末、カメラ、携帯音楽プレイヤー、携帯ゲーム機等の筐体表面;自動車の外装、ピアノ、高級家具、大理石等の塗装及び表面;美術品展示用保護ガラス、ショーウインドー、ショーケース、広告用カバー、フォトスタンド用のカバー、腕時計、自動車用フロントガラス、列車、航空機等の窓ガラス、自動車ヘッドライト、テールランプ等の透明なガラス製又は透明なプラスチック製(アクリル、ポリカーボネート等)部材;各種ミラー部材等が挙げられる。さらに、本発明の熱硬化性組成物は、インモールド成形等で広く用いられている転写型ハードコートにも使用することができる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0072】
[合成例1]
表面改質剤Iの製造
乾燥窒素雰囲気下で、還流装置と攪拌装置を備えた100ml三口フラスコに下記式
【化53】
(式中Rf'’は下記の基である。繰返し単位の数は分布を有し、5.2は平均値である)
【化54】

で表される含フッ素環状シロキサン30.0gと、m−キシレンヘキサフロライド30.0gを仕込み、攪拌しながら90℃まで加熱した。ここにアリルグリシジルエーテル7.7gと白金/1,3−ジビニル−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液0.010g(白金換算で2.49×10−8mol)の混合溶液を30分かけて滴下し、90℃で8時間攪拌した。H−NMRで原料のSi−Hが消失したのを確認した後、活性炭処理を行った。その後溶剤や過剰のアリルグリシジルエーテルを減圧溜去し、下記式で表される表面改質剤I 34.2gを得た。該表面改質剤Iを実施例1で使用した。
【化55】
【0073】
[合成例2]
表面改質剤IIの製造
乾燥窒素雰囲気下で、還流装置と攪拌装置を備えた2000ml三口フラスコに、下記式

CH=CH−CH−O−CH−Rf’−CH−O−CH−CH=CH

Rf’:−CF(OCFCF(OCFOCF
(p/q=0.9、p+q≒45)

で表される両末端にα―不飽和結合を有するパーフルオロポリエーテル500gと、m−キシレンヘキサフロライド700g、及びテトラメチルシクロテトラシロキサン361gを投入し、攪拌しながら90℃まで加熱した。ここに白金/1,3−ジビニル−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液0.442g(Pt単体として1.1×10−6モルを含有)を投入し、内温を90℃以上に維持したまま4時間攪拌を継続した。H−NMRで原料のアリル基が消失したのを確認した後、溶剤や過剰のテトラメチルシクロテトラシロキサンを減圧溜去した。その後活性炭処理を行い、下記式で表す無色透明の液状化合物498gを得た(化合物I)。
【化56】
【0074】
上記化合物I 60.0gと、アリルグリシジルエーテル10.0g、m−キシレンヘキサフロライド60.0gを混合し、攪拌しながら窒素雰囲気下で80℃に加熱した。ここに白金/1,3−ジビニル−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液0.0221g(Pt単体として5.6×10−8モルを含有)を投入し、内温を90〜120℃に維持したまま6時間攪拌を継続した。H−NMRで原料のSi−Hが消失したのを確認した後、活性炭処理を行った。その後、溶剤や過剰のアリルグリシジルエーテルを減圧溜去し、半透明グリース状である下記式で表される表面改質剤II 66.2gを得た。該表面改質剤IIを実施例2で使用した。
【化57】
【0075】
[合成例3]
表面改質剤IIIの製造
上記化合物I 60.0gと、3−ビニルシクロヘキセンオキシド10.9g、m−キシレンヘキサフロライド60.0gを混合し、攪拌しながら窒素雰囲気下で80℃に加熱した。ここに白金/1,3−ジビニル−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液0.0221g(Pt単体として5.6×10−8モルを含有)を投入し、内温を90〜120℃に維持したまま6時間攪拌を継続した。H−NMRで原料のSi−Hが消失したのを確認した後、活性炭処理を行った。その後、溶剤や過剰のアリルグリシジルエーテルを減圧溜去し、半透明グリース状である下記式で示される表面改質剤III 66.1gを得た。該表面改質剤IIIを実施例3で使用した。
【化58】

Rf’:−CF(OCFCF(OCFOCF
(p/q=0.9、p+q≒45)
【0076】
比較例1では表面改質剤IVとして下記化合物を使用した。
HOCHRf’CHOH

Rf’:−CF(OCFCF(OCFOCF
(p/q=0.9、p+q≒45)
【0077】
熱硬化性組成物の調製
[実施例1〜3及び比較例1、2]
下記表1に記載の組成にて各成分を混合し、熱硬化性組成物を調製した。比較例2は、表面改質剤を配合しなかった他は実施例と同じ組成にて、熱硬化性組成物を調製した。
【0078】
【表1】

1)メタクリル酸メチル(MMA)と2−ヒドロキシ−エチルメタクリレート(HEMA)のランダム共重合体(MMA/HEMA(モル比)=88/12、数平均分子量8400、OH基含有量0.0011mol/g)
2)比較例2は未配合
【0079】
各熱硬化性組成物を、ガラス板上に、ギャップ24ミクロンのワイヤーバーで塗工し、120℃で2時間加熱して硬化した。加熱終了後室温に戻し、得られた硬化物の表面特性を以下に示す方法に従い評価した。
【0080】
[撥水撥油性の評価]
接触角計DropMaster(協和界面科学社製)を用いて、硬化物表面の水に対する接触角及びオレイン酸に対する25℃における接触角を測定した。
【0081】
[マジックインクはじき性]
硬化物表面に油性マジック(ゼブラ株式会社製 ハイマッキー太字)を塗り、マジックインクのはじき性を、下記指標を用い、目視により評価した。
A:すばやくはじく。
B:はじく。
C:全くはじかない。
【0082】
[指紋拭取り性]
10人のパネラーにより、額の皮脂を指で硬化物表面に転写し、ベンコット(旭化成社製)で拭取りした際の拭取り性を、下記評価基準により評価した。
A:指紋を容易に拭き取れる。
B:指紋を拭き取れる。
C:指紋を拭き取れない。
【0083】
【表2】
3)比較例1は各成分が相溶せず、平滑な硬化物表面が得られなかった。
【0084】
表2に示される通り、従来公知の表面改質剤(比較例1)は非フッ素系の有機化合物との相溶性が悪く、撥水撥油性や防汚性に優れた表面特性を有する硬化物を得ることができない。これに対し、本発明の表面改質剤は非フッ素系の有機化合物との相溶性に優れ、該表面改質剤を熱硬化性組成物に添加することにより、得られる硬化物の表面に優れた撥水撥油性、防汚性、及び耐指紋性を付与することができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の表面改質剤は、熱硬化性樹脂用の防汚性付与剤または撥水撥油性付与剤として有用である。特に、本発明の表面改質剤は、熱硬化型ハードコート剤の添加剤として好適に使用できる。また、本発明の熱硬化性組成物は防汚コーティング剤の形成材料として有用である。