特許第5939881号(P5939881)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5939881
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】研削方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20160609BHJP
【FI】
   H01L21/304 631
   H01L21/304 622J
   H01L21/304 622N
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-105403(P2012-105403)
(22)【出願日】2012年5月2日
(65)【公開番号】特開2013-235875(P2013-235875A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】久保田 一弘
【審査官】 ▲高▼須 甲斐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−049274(JP,A)
【文献】 特開2008−258303(JP,A)
【文献】 特開2011−023659(JP,A)
【文献】 特表2005−533374(JP,A)
【文献】 特開2010−165802(JP,A)
【文献】 特開2005−109155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周縁に形成された面取り部と、該面取り部で囲繞される平坦部とを有した板状物を研削して所定の厚みに薄化する研削方法であって、
表面の外周部に環状溝を有するサポートプレートを準備するサポートプレート準備ステップと、
該サポートプレート準備ステップで準備された該サポートプレートの表面に接着剤を介して板状物の表面側を押圧して貼着する板状物貼着ステップと、
前記板状物貼着ステップを実施した後、前記サポートプレートの表面に貼着された板状物の裏面側から切削ブレードで該サポートプレートの前記環状溝に対応する板状物の領域を切削して、該面取り部を含む板状物の外周領域を該平坦部から切り離す切断ステップと、
前記切断ステップを実施した後、該サポートプレートの表面に貼着された板状物の裏面を研削して板状物を所定の厚みに薄化する薄化ステップと、を備え、
該板状物貼着ステップでは、押圧されて外周に追いやられた接着剤が該環状溝で捕獲されることを特徴とする研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等の板状物を研削して所定の厚みに薄化する研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面にLSI等のデバイスが形成された半導体ウエーハ等の板状物の裏面研削に際して、板状物の表面を保護するために例えば特開平5−198542号公報に開示されるような表面保護テープが板状物の表面に貼着される。
【0003】
ところが、板状物を研削して例えば板状物を100μm以下へと薄化すると板状物に反りが発生し、研削中に板状物が破損してしまう恐れがある。又は、研削後の板状物のハンドリングが困難となり、板状物を破損させてしまう恐れがある。更に、板状物を研削した後、板状物に高温加熱を伴う加工を施す場合には、表面保護テープが溶融してしまうという問題がある。
【0004】
この問題を回避するために、例えば特開2004−207606号公報に開示されるような剛体からなるサポートプレートを板状物に貼着した後、サポートプレート側を研削装置のチャックテーブルで保持し、板状物を研削する方法が広く採用されている。
【0005】
板状物は一般的にワックスや樹脂からなる接着剤でサポートプレート上に固定される。板状物をサポートプレート上に平坦に貼着するために、例えば高圧プレス装置が利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−198542号公報
【特許文献2】特開2004−207606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、サポートプレート上に接着剤を介して配設された板状物を高圧プレス装置でプレスする際、接着剤がサポートプレートからはみ出す恐れがある。接着剤がサポートプレートからはみ出すと、高圧プレス装置を含む貼着作業領域を汚染するため、問題となる。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、接着剤がサポートプレートからはみ出す恐れを低減し、貼着作業領域を汚染する恐れを低減可能な研削方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、外周縁に形成された面取り部と、該面取り部で囲繞される平坦部とを有した板状物を研削して所定の厚みに薄化する研削方法であって、表面の外周部に環状溝を有するサポートプレートを準備するサポートプレート準備ステップと、該サポートプレート準備ステップで準備された該サポートプレートの表面に接着剤を介して板状物の表面側を押圧して貼着する板状物貼着ステップと、前記板状物貼着ステップを実施した後、前記サポートプレートの表面に貼着された板状物の裏面側から切削ブレードで該サポートプレートの前記環状溝に対応する板状物の領域を切削して、該面取り部を含む板状物の外周領域を該平坦部から切り離す切断ステップと、前記切断ステップを実施した後、該サポートプレートの表面に貼着された板状物の裏面を研削して板状物を所定の厚みに薄化する薄化ステップと、を備え、該板状物貼着ステップでは、押圧されて外周に追いやられた接着剤が該環状溝で捕獲されることを特徴とする研削方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の研削方法によると、表面の外周部に環状溝が形成されたサポートプレートの表面に接着剤を介して板状物の表面側を押圧して貼着するので、押圧されて外周に追いやられた接着剤が環状溝で捕獲される。よって、接着剤がサポートプレートからはみ出す恐れが低減され、貼着作業領域を汚染する恐れを低減できる。
【0012】
また、板状物の面取り部を平坦部から切り離す切断ステップを備えているので、研削して薄化された板状物の外周に所謂シャープエッジが形成されることがなく、サポートプレートから取り外した後の板状物の破損を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】半導体ウエーハの表面側斜視図である。
図2】サポートウエーハ準備ステップを説明する一部断面側面図である。
図3】板状物貼着ステップを示す一部断面側面図である。
図4】切断ステップを示す一部断面側面図である。
図5】研削ステップを実施するのに適した研削装置の斜視図である。
図6】研削ステップを示す一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、本発明の研削方法の加工対象となる板状被加工物の一種である半導体ウエーハ11の表面側斜視図が示されている。
【0015】
半導体ウエーハ(以下ウエーハと略称する)11は、例えば厚さが700μmのシリコンウエーハからなっており、表面11aに複数の分割予定ライン13が格子状に形成されているとともに、複数の分割予定ラインによって区画された各領域にIC,LSI等のデバイス15が形成されている。
【0016】
このように構成されたウエーハ11は、デバイス15が形成されているデバイス領域17と、デバイス領域17を囲繞する外周余剰領域19をその表面に備えている。また、ウエーハ11の外周にはシリコンウエーハの結晶方位を示すマークとしてのノッチ21が形成されている。
【0017】
更に、図3に示されるように、ウエーハ11の外周には表面11aから裏面11bに渡る円弧状の面取り部11cが形成されている。面取り部11cの内側の平坦部にデバイス領域17が存在する。
【0018】
本発明の研削方法では、まず、表面の外周部に環状溝が形成されたサポートプレートを準備するサポートプレート準備ステップを実施する。このサポートプレート準備ステップでは、図2に示すように、サポートプレート4を切削装置のチャックテーブル2で吸引保持する。サポートプレート4は、例えば一様な厚みを有するシリコンウエーハ、又はガラス等から形成されている。
【0019】
そして、切削ユニット5の切削ブレード6を矢印b方向に高速回転させながらサポートプレート4の表面4aの外周部に所定深さ切り込み、チャックテーブル2を矢印a方向に低速で回転させてサポートプレート4の表面4aの外周部に図3に示すように所定深さ及び所定幅の環状溝8を形成する。これにより、表面4aの外周部に環状溝8が形成されたサポートプレート4の準備が完了する。
【0020】
環状溝8の幅及び深さはウエーハ貼着ステップで接着剤10を介してウエーハ11がサポートプレート4に貼着された際に、接着剤10がサポートプレート4からはみ出さない深さ及び幅に適宜設定される。
【0021】
環状溝8を形成する他の実施形態として、ウエーハ11に対して吸収性を有する波長のレーザービームを使用してアブレーション加工により環状溝8を形成するようにしてもよい。或いは、エッチングにより環状溝8を形成するようにしてもよい。
【0022】
次いで、図3に示すように、サポートプレート4の表面4aに接着剤10を塗布し、接着剤10を介してウエーハ11の表面11a側をサポートプレート4に押圧して、ウエーハ11をサポートプレート4に装着するウエーハ貼着ステップ(板状物貼着ステップ)を実施する。
【0023】
接着剤10は例えば熱硬化樹脂から形成される。熱硬化樹脂からなる接着剤10をサポートプレート4の表面4aに塗布後、ウエーハ11の表面11a側をサポートプレート4上に載置して、高圧プレス機や真空プレス機でプレスする。
【0024】
その後、所定温度まで接着剤10を加熱して硬化させる。接着剤10は紫外線硬化樹脂やワックスでもよい。ウエーハ貼着ステップを実施すると、図4に示すように、押圧により接着剤10が外周に追いやられるが、この追いやられた接着剤10が環状溝8で捕獲される。
【0025】
ウエーハ貼着ステップを実施した後、図4に示すように、サポートプレート4の表面に貼着されたウエーハ11の裏面11b側から、矢印b方向に高速回転する切削ブレード6でサポートプレート4の環状溝8に対応するウエーハ11の領域に切り込み、チャックテーブル2を矢印a方向に低速で回転させながらウエーハ11を完全切断し、面取り部11cを含むウエーハ11の外周領域をデバイス領域17を含む平坦部から切り離す切断ステップを実施する。この切断ステップを実施すると、ウエーハ11の外周は表面11a及び裏面11bに垂直な円形平坦面となる。
【0026】
切断ステップ実施後、図5に示すような研削装置12を使用してウエーハ11の裏面11bを研削する研削ステップを実施する。図5において、14は研削装置12のベースであり、ベース14の後方にはコラム16が立設されている。コラム16には、上下方向に伸びる一対のガイドレール18が固定されている。
【0027】
この一対のガイドレール18に沿って研削ユニット(研削手段)20が上下方向に移動可能に装着されている。研削ユニット20は、スピンドルハウジング22と、スピンドルハウジング22を保持する支持部24を有しており、支持部24が一対のガイドレール18に沿って上下方向に移動する移動基台26に取り付けられている。
【0028】
研削ユニット20は、スピンドルハウジング22中に回転可能に収容されたスピンドル28と、スピンドル28を回転駆動するモータ30と、スピンドル28の先端に固定されたホイールマウント32と、ホイールマウント32に着脱可能に装着された研削ホイール34とを含んでいる。
【0029】
研削装置12は、研削ユニット20を一対の案内レール18に沿って上下方向に移動するボールねじ40とパルスモータ42とから構成される研削ユニット送り機構44を備えている。パルスモータ42を駆動すると、ボールねじ40が回転し、移動基台26が上下方向に移動される。
【0030】
ベース14の上面には凹部14aが形成されており、この凹部14aにチャックテーブル機構46が配設されている。チャックテーブル機構46はチャックテーブル48を有し、図示しない移動機構によりウエーハ着脱位置Aと、研削ユニット20に対向する研削位置Bとの間でY軸方向に移動される。50,52は蛇腹である。ベース14の前方側には、研削装置12のオペレータが研削条件等を入力する操作パネル54が配設されている。
【0031】
本発明の加工方法では、切断ステップを実施した後、ウエーハ11の裏面11bを研削してウエーハ11を所定の厚みに薄化する研削ステップを実施する。この研削ステップでは、サポートプレート4を介して吸引保持したウエーハ11を図1でY軸方向に移動して、研削ユニット20に対向する矢印Bで示す研削領域に位置付ける。この研削領域ではウエーハ11が研削ユニット20に対して図6に示すような関係に位置付けられる。
【0032】
図6において、研削ユニット20のスピンドル28の先端に固定されたホイールマウント32には、図示しない複数のねじにより研削ホイール34が着脱可能に装着されている。研削ホイール34は、ホイール基台36の自由端部(下端部)に複数の研削砥石38を環状に配設して構成されている。
【0033】
研削ステップでは、チャックテーブル48を矢印aで示す方向に例えば300rpmで回転しつつ、研削ホイール34を矢印bで示す方向に例えば6000rpmで回転させるとともに、研削ユニット送り機構44を駆動して研削ホイール34の研削砥石38をウエーハ11の裏面11bに接触させる。
【0034】
そして、研削ホイール34を所定の研削送り速度で下方に所定量研削送りする。接触式又は非接触式の厚み測定ゲージでウエーハ11の厚みを測定しながら、ウエーハ11を所望の厚み、例えば100μmに研削する。
【0035】
上述した本発明の加工方法では、表面保護テープに変わり、ウエーハ11の表面11aに剛体からなるサポートプレート4が貼着されているため、研削中にウエーハ11に反りが発生することを防止でき、研削中にウエーハ11を破損してしまうことを防止できる。
【0036】
更に、サポートプレート4の表面側外周部に環状溝8が形成されているため、接着剤02がサポートプレート4からはみ出す恐れを低減でき、貼着作業領域を汚染する恐れを低減することができる。
【0037】
更に、切断ステップを実施して面取り部11cをウエーハ11の平坦部から切り離した後に研削ステップを実施するため、研削して薄化されたウエーハ11の外周部に所謂シャープエッジが形成されることがなく、サポートプレート4から取り外した後のウエーハ11の破損を防止することができる。
【0038】
上述した実施形態では、本発明の研削方法を半導体ウエーハ11に適用した例について説明したが、被加工物は半導体ウエーハに限定されるものではなく、光デバイスウエーハ等の他の板状物にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
4 サポートプレート
6 切削ブレード
8 環状溝
10 接着剤
11 半導体ウエーハ
12 研削装置
20 研削ユニット
34 研削ホイール
38 研削砥石
48 チャックテーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6