特許第5939935号(P5939935)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ディスコの特許一覧

<>
  • 特許5939935-研削装置 図000002
  • 特許5939935-研削装置 図000003
  • 特許5939935-研削装置 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5939935
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】研削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 47/22 20060101AFI20160609BHJP
   B24B 49/04 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   B24B47/22
   B24B49/04 Z
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-179761(P2012-179761)
(22)【出願日】2012年8月14日
(65)【公開番号】特開2014-37022(P2014-37022A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2015年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087099
【弁理士】
【氏名又は名称】川村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100063174
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 功
(74)【代理人】
【識別番号】100124338
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 健
(72)【発明者】
【氏名】高田 暢行
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−006536(JP,A)
【文献】 特開2007−222986(JP,A)
【文献】 特開2005−021998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 47/22
B24B 49/04
B24B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状ワークを保持する保持テーブルと、該保持テーブルに保持された板状ワークを研削加工する研削手段と、該研削手段に装着され研削砥石を備えた研削ホイールと、該研削手段を該保持テーブルに接近または離反させる研削送り方向に進退させ板状ワークに研削荷重を加える研削送り手段と、該保持テーブルの上面高さを接触式にて測定するゲージと、該ゲージの値によって該研削送り手段による研削送りを制御する制御手段と、から少なくとも構成される研削装置において、
該制御手段は、該保持テーブルが研削荷重を受けていないときの該ゲージの値を記憶する第1の記憶部と、
該研削送り手段によって該保持テーブルが研削荷重を受けているときの該ゲージの値を記憶する第2の記憶部と、
研削荷重を受けていないときと研削荷重を受けているときとの間での該保持テーブルの高さの変化量の許容値を指定する指定部と、を含み、
該第1の記憶部の値から該第2の記憶部の値までの変化量が、該指定部で指定された変化量の許容値になるよう該研削送り手段を制御する研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状ワークに研削荷重をかけながら板状ワークを所定の厚みに研削する研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
板状ワークを研削する研削装置は、板状ワークを回転可能に保持する保持テーブルと、板状ワークを研削する研削砥石を備える研削手段と、該研削手段を保持テーブルに接近及び保持テーブルから離反する方向に移動させる研削送り手段と、を少なくとも備えている。そして、研削送り手段によって研削手段を研削送りしつつ、研削砥石が保持テーブルに保持された板状ワークを押圧しながら所定の厚みに研削する。
【0003】
さらに、研削装置には、保持テーブルに保持された板状ワークの上面の高さを測定する第1のゲージと保持テーブルの上面の高さを測定する第2のゲージとを備え、第1のゲージの測定値から第2のゲージの測定値を引いた差を算出し、この差を板状ワークの厚みとして研削装置に認識させているものがある(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−006018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、板状ワークに研削荷重を加えながら研削しているため、保持テーブルは、研削荷重を受けて沈み込む。この沈み込みによって、第1のゲージ及び第2のゲージは、同じ方向に同じだけ変化するため、研削される板状ワークの厚みの認識結果に影響を及ぼすことはないものの、この2つのケージの測定結果のみでは、研削荷重がどの程度加えられているかまでは認識することができない。
【0006】
また、荷重検出手段を別に配設し、保持テーブルにかかる研削荷重を認識したとしても、研削荷重による保持テーブルの沈み込み量までは認識することができない。そのため、保持テーブルが保持する板状ワークのサイズが変更された時などは、かかる変更の前後で、研削装置が認識する研削荷重が同じでも、保持テーブルの沈み込み量は必ずしも同じとはならないため、板状ワークの加工精度に影響を及ぼしている。
【0007】
本発明は、上記の事情にかんがみてなされたものであり、研削荷重による保持テーブルの沈み込み量を認識し、板状ワークの加工精度を向上させることに発明の解決すべき課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、板状ワークを保持する保持テーブルと、該保持テーブルに保持された板状ワークを研削加工する研削手段と、該研削手段に装着され研削砥石を備えた研削ホイールと、該研削手段を該保持テーブルに接近または離反させる研削送り方向に進退させ板状ワークに研削荷重を加える研削送り手段と、該保持テーブルの上面高さを接触式にて測定するゲージと、該ゲージの値によって該研削送り手段の研削送りを制御する制御手段と、から少なくとも構成される研削装置において、該制御手段は、該保持テーブルが研削荷重を受けていないときの該ゲージの値を記憶する第1の記憶部と、該研削送り手段によって該保持テーブルが研削荷重を受けているときの該ゲージの値を記憶する第2の記憶部と、研削荷重を受けていないときと研削荷重を受けているときとの間での該保持テーブルの高さの変化量の許容値を指定する指定部と、を含み、該第1の記憶部の値から該第2の記憶部の値までの変化量が、該指定部で指定された変化量の許容値になるよう該研削送り手段を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、研削装置において、保持テーブルの上面高さを接触式にて測定するゲージと、該ゲージの値によって研削送り手段の研削送りを制御する制御手段と、を備えており、制御手段には、該保持テーブルが該研削荷重を受けていないときの該ゲージの値を記憶する第1の記憶部と、研削送り手段によって該保持テーブルが研削荷重を受けているときの該ゲージの値を記憶する第2の記憶部と、研削荷重を受けていないときと研削荷重を受けているときとの間での保持テーブルの変化量の許容値を指定する指定部と、を含んでいるため、板状ワークの研削中に研削手段による研削荷重によって保持テーブルが沈み込んでも、研削荷重をうける保持テーブルの高さの変化を該ゲージで測定することが可能となっており、制御手段は、指定部に予め指定された変化量の許容値と一致するように研削送り手段を制御することにより、研削手段によって板状ワークの厚みを高精度に所定の厚みに研削することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】研削装置の構成を示す斜視図である。
図2】保持テーブルの沈み込み量を測定するゲージ及び制御部の構成を示す断面図である。
図3】保持テーブルの沈み込み量を測定する状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示す研削装置1は、Y軸方向にのびる装置ベース100を有し、その上面101に被加工物を収容、仮置き、搬送、研削及び洗浄する各種の装置がそれぞれ配設されている。
【0012】
図1に示すように、研削装置1は、被加工物を保持し回転可能な保持手段10と、被加工物に研削を施す研削手段20と、研削手段20を保持テーブル10に接近または離反させる研削送り方向(Z軸方向)に進退させ板状ワークに研削荷重を加える研削送り手段30と、被加工物の上面高さを接触式にて測定する第1のゲージ40と、保持テーブル10の上面高さを接触式にて測定する第2のゲージ41と、該第2のゲージ41が測定した値によって研削送り手段30による研削送りを制御する制御手段42と、を備えている。
【0013】
装置ベース100の上面101には、Y軸方向に移動可能な移動基台9が配設されており、移動基台9は、被加工物を保持して回転可能な保持テーブル10を支持している。移動基台9が蛇腹102の伸縮をともなってY軸方向に移動することにより、保持テーブル10に対する被加工物の着脱が行われる領域である着脱領域P1と被加工物の研削が行われる領域である研削領域P2との間で保持テーブル10を移動させることができる。
【0014】
図2に示すように、保持テーブル10は、多孔質部材により形成される保持部11を有し、保持部11の表面側が被加工物を載置する保持面12となっている。保持部11は、吸引源15に接続され、被加工物を下方から吸引保持することが可能となっている。また、保持テーブル10は、保持テーブル10の傾きを調整する調整軸13と保持テーブル10を固定して支持するための固定軸14とにより支持されており、調整軸13の調整によって保持テーブル10の傾きを調整することができる。
【0015】
図1に示すように、装置ベース100の上面101の後部側は、コラム103が立設されている。コラム103の側部においては、被加工物に研削を施す研削手段20が研削送り手段30によって昇降可能に支持されている。研削手段20は、Z軸方向の軸心を有するスピンドル21と、スピンドル21の外周を囲繞し支持するスピンドルハウジング22と、スピンドル21の上端に取り付けられたモータ23と、スピンドル21の下端にマウント24を介して装着された研削ホイール25と、研削ホイール25の下部において環状に固着された研削砥石26とを備えている。そして、研削手段20は、モータ23の駆動によって研削ホイール25を所定の回転速度で回転させることができる。
【0016】
研削送り手段30は、Z軸方向にのびるボールネジ31と、ボールネジ31の一端に接続されたモータ32と、ボールネジ31と平行にのびる一対のガイドレール33と、内部に備えたナットがボールネジ31に螺合するとともに側部がガイドレール33に摺接する昇降板34と、を備えている。研削送り手段30は、モータ32によって駆動されてボールネジ31が回動すると、一対のガイドレール33に沿って昇降板34をZ軸方向に移動させることにより、昇降板34に連結された研削手段20を昇降させ、保持テーブル10に保持された被加工物に対し研削荷重をかけることができる。
【0017】
図1に示すように、研削領域P2には、被加工物の上面の高さを接触式にて測定する第1のゲージ40と、保持テーブル10の保持面12の高さを接触式にて測定する第2のゲージ41とが配設されている。研削送り手段30による研削加重が保持テーブル10にかかると保持テーブル10が沈み込むため、第2のゲージ41では、この沈下した状態の保持テーブル10の保持面12に接触して、保持テーブル10の高さを測定することができる。
【0018】
図2に示すように、研削送り手段30を制御する制御手段42が、研削送り手段30、第1のゲージ40及び第2のゲージ41に接続されている。制御手段42は、保持テーブル10が研削荷重を受けていないときの第2のゲージ41が測定した値を記憶する第1の記憶部421と、研削送り手段30による研削荷重を保持テーブル10が受けているときの第2のゲージ41の値を記憶する第2の記憶部422と、保持テーブル10が研削荷重を受けていないときと研削荷重を受けているときとの間における保持テーブル10が沈み込む変化量の許容値をあらかじめ指定する指定部423と、を有している。
【0019】
図1に示すように、装置ベース100の端部には、ステージ104a及びステージ104bが形成されている。ステージ104aには、加工前の被加工物を収容するカセット2が載置され、ステージ104bには、加工後の被加工物を収容するカセット3が載置されている。カセット2及びカセット3の近傍には、加工前の被加工物をカセット3から搬出するとともに加工後の被加工物をカセット3へ搬入する搬送手段4が配設されている。
【0020】
搬送手段4の可動領域には、被加工物が仮置きされる仮置き手段5と、加工後の被加工物を洗浄する洗浄手段8とが配設されている。仮置き手段5の近傍には、仮置き手段5に仮置きされた被加工物を保持テーブル10に搬送する第1の搬送アーム6が配設されている。また、洗浄手段8の近傍には、加工後の被加工物が保持された保持テーブル10から洗浄手段8に搬送する第2の搬送アーム7が配設されている。
【0021】
以下では、第2のゲージ41を用いて研削荷重による保持テーブル10の高さの変化を測定しつつ、研削手段20によって板状ワークWを研削する動作について説明する。なお、図2に示す板状ワークWは、研削対象となる被加工物である。
【0022】
図2に示すように、保持テーブル10の保持面12と研削砥石26の研削面とが平行になるように、調整軸13を調整しておく。また、図2に示す指定部423には、研削荷重によって保持テーブル10が沈んだときの変化量の許容値(しきい値)t1をあらかじめ指定しておく。ここで、変化量とは、研削手段20による研削荷重が保持テーブル10にかかる前の保持面12の高さと、研削手段20による研削荷重が保持テーブル10にかかった後の保持面12の高さとの差を意味する。
【0023】
まず、図1に示す搬送手段4は、カセット2から加工前の板状ワークWを取り出して、仮置き手段5に搬送する。板状ワークWの位置合わせがなされた後、第1の搬送アーム6は、板状ワークWを着脱領域P1で待機する保持テーブル10に搬送する。次いで、移動基台9をY軸方向に移動させるとともに、保持テーブル10を研削手段20の下方に移動させる。
【0024】
保持テーブル10が研削領域P1に移動したら、研削ホイール25を所定の回転速度で、例えば、図2に示す矢印A方向に回転させる。これとともに、モータ32がボールネジ31を回動させ研削手段20をZ軸方向に下降させる。そして、図2に示すように、保持テーブル10に保持された板状ワークWに研削砥石26が接触するまで接近させる。なお、板状ワークWの研削中は、板状ワークWの厚みを監視するために、第1のゲージ40で板状ワークWの上面高さを測定し、第2のゲージ41で保持テーブル10の保持面12の高さを測定する。そして、第1のゲージ40の測定値と第2のゲージ41の測定値との差を求めて板状ワークWの厚みを検出する。
【0025】
ここで、研削手段20による研削荷重が保持テーブル10にかかる前に、図3(a)に示すように、保持テーブル10の高さを測定しておく。具体的には、第2のゲージ41は、保持テーブル10の保持面12に接触して保持テーブル10の高さを測定する。そして、第2のゲージ41によって測定された保持面12の高さ位置は、第1の値H1として第1の記憶部421に記憶される。
【0026】
次に、図2に示した研削送り手段30が研削手段20を所定の送り速度で下降させ、研削砥石26で板状ワークWを押圧しながら研削する。板状ワークWの研削中は、第2のゲージ41で保持テーブル10の保持面12の高さを測定する。具体的には、図3(b)に示すように、保持テーブル10は、研削手段20による研削荷重を受けると沈下して、保持テーブル10の半径方向において傾きが発生する。そのため、第2のゲージ41を用いて保持テーブル10の高さ位置を測定する。
【0027】
図3(b)に示すように、第2のゲージ41は、一方側が下方に傾いている保持テーブル10の保持面12に接触して、保持テーブル10の保持面12の高さを測定する。この測定した高さは、第2の値H2として第2の記憶部422に逐一記憶される。
【0028】
制御手段42は、第1の記憶部421に記憶された第1の値H1と、第2の記憶部422に記憶された第2の値H2との差を保持テーブル10の高さの変化量として算出する。この算出した変化量が、指定部423に指定された変化量のしきい値t1を超えるかどうかを判断する。そして、変化量がしきい値t1よりも大きくなっているときは、保持テーブル10にかける研削荷重を少なくする必要があるため、制御手段42は、図2に示す研削送り手段30の研削送り速度を減速するように制御する。
【0029】
一方で、変化量がしきい値t1よりも小さくなっているときは、保持テーブル10にかける研削荷重を増やすために研削送り手段30の研削送り速度を加速するように制御する。このようにして、制御部42は、第1の記憶部421に記憶された第1の値H1と、第2の記憶部422に記憶された第2の値H2との差が指定部423に指定された変化量のしきい値t1と一致するように研削送り手段30の研削送りを制御する。
【0030】
板状ワークWが所定の厚みに研削されたら、研削送り手段30によって研削手段20を上昇させ研削を終了する。そして、保持テーブル10が、図1に示した着脱領域P1に移動し、第2の搬送アーム7が研削後の板状ワークを洗浄手段8に搬送する。そして、洗浄手段8によって洗浄された板状ワークは、搬送手段4によってカセット104bに収容される。
【0031】
以上のように、研削装置1においては、板状ワークWの研削中に、研削手段20による研削荷重によって保持テーブル10が沈み込んでも、第2のゲージ41が保持テーブル10の保持面12の高さを測定し、その変化量が予め指定部423に指定された所定のしきい値t1となるように、制御部42によって研削送り手段30の研削送りを制御することができる。したがって、板状ワークWを高精度に所定の厚みに研削することができる。
【0032】
なお、上記実施形態では、被加工物の研削前に保持テーブル10の保持面12と研削砥石26の研削面とを平行にしておき、その時の保持テーブル10の高さ位置を基準として、研削により傾きが生じた保持テーブル10の高さ位置の変化量を算出することとしたが、研削荷重によって保持テーブル10が沈み込むことを想定し、研削前に沈み込む方向と反対の方向に保持テーブル10を傾けておいてから研削を行うようにしてもよい。この場合も、第2のゲージ41を用いて研削前と研削後との間における保持テーブル10の高さの変化量を求め、その変化量が所定のしきい値と一致するように研削送りの制御を行う。
【符号の説明】
【0033】
1:研削装置 100:装置ベース 101:上面 102:蛇腹
103:コラム 104a,104b:ステージ
2、3:カセット
4:搬送手段
5:仮置き手段
6:第1の搬送アーム
7:第2の搬送アーム
8:洗浄手段
9:移動基台
10:保持テーブル 11:保持部 12:保持面 13:調整軸 14:固定軸
15:吸引源
20:研削手段
21:スピンドル 22:スピンドルハウジング 23:モータ 24:マウント
25:研削ホイール 26:研削砥石
30:研削送り手段 31:ボールネジ 32:モータ 33:ガイドレール
34:昇降板
40:第1のゲージ
41:第2のゲージ
42:制御手段 421:第1の記憶部 422:第2の記憶部 423:指定部
W:板状ワーク Wa:上面 Wb:下面
図1
図2
図3