特許第5940049号(P5940049)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5940049波面収差に対する応答を調整したパターン設計の方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940049
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】波面収差に対する応答を調整したパターン設計の方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/44 20120101AFI20160616BHJP
   G03F 1/70 20120101ALI20160616BHJP
   G03F 1/36 20120101ALI20160616BHJP
   G06F 17/50 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   G03F1/44
   G03F1/70
   G03F1/36
   G06F17/50 658M
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2013-269412(P2013-269412)
(22)【出願日】2013年12月26日
(62)【分割の表示】特願2012-148374(P2012-148374)の分割
【原出願日】2012年7月2日
(65)【公開番号】特開2014-112236(P2014-112236A)
(43)【公開日】2014年6月19日
【審査請求日】2014年10月20日
(31)【優先権主張番号】61/505,904
(32)【優先日】2011年7月8日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(72)【発明者】
【氏名】フェン,ハンイェン
(72)【発明者】
【氏名】カオ,ユー
(72)【発明者】
【氏名】イエ,ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ツァン,ユーピン
【審査官】 中村 直行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−181124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00 − 1/92
G06F 17/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影リソグラフィシステムにより結像されるパターンのセットを設計する方法であって、前記パターンのセットは、少なくとも2つのパターンを含み、当該方法は、
予め定義されたパラメータに対して非線形形式で応答する少なくとも2つのパターンを使用することにより、前記予め定義されたパラメータに対する前記少なくとも2つのパターンの少なくとも2つの応答パラメータの複合応答が線形になるようにするステップを含み、
前記予め定義されたパラメータは、スキャナパラメータである、方法。
【請求項2】
前記非線形形式は、2次形式である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複合応答は、前記2つの応答パラメータの差である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記スキャナパラメータは、ゼルニケ項である、請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ゼルニケ項はコマ項を表し、前記パターンのセットは鏡面対称構造を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ゼルニケ項は非点収差項を表し、前記パターンのセットは90°回転した構造を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記スキャナパラメータは、瞳適合パラメータである、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記応答パラメータは、CD、パターンシフト、焦点シフト及び2つのフィーチャ間の間隔、のうち1つ以上を含む、請求項1からの何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
実際のターゲットチップからのパターンのセットを使用するステップを含む、請求項1からの何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
パターンごとに異なる重み付けを使用して線形の前記複合応答を生成するステップを含む、請求項1からの何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記2つのパターンは、対称である、請求項1から10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
第一のパターンは、第二のパターンの反射である、請求項1から11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第二のパターンは、前記第一のパターンの回転である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13の何れか一項に記載の方法をプロセッサに実行させるためのコンピュータプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明の技術分野は、概して、リソグラフィプロセスに関連するゲージパターンを設計する方法、システム及びプログラム製品に関し、特に、リソグラフィパラメータの変動に対して応答するゲージパターンの計算処理上効率的な設計に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 例えば、集積回路(IC)の製造などにリソグラフィ装置を使用することができる。その場合、マスクは、ICの個々のレイヤに対応する回路パターンを含むことができ、このパターンを放射感応性材料(レジスト)のレイヤでコーティングされた基板(シリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば、1つ以上のダイを含む)上に結像することができる。一般に、1つのウェーハは、投影システムを介して一度に1つずつ連続的に照射される隣接するターゲット部分のネットワーク全体を含む。あるタイプのリソグラフィ投影装置では、マスクパターン全体をターゲット部分上に一度に露光することで各ターゲット部分が照射される。上記装置は、一般にウェーハステッパと呼ばれる。ステップアンドスキャン装置と一般に呼ばれる別の装置では、投影ビームが当たったマスクパターンを所与の基準方向(「スキャン」方向)に漸進的にスキャンしながら、これに同期してこの方向に平行又は逆平行に基板テーブルをスキャンすることで各ターゲット部分が照射される。一般に、投影システムは、倍率係数M(一般に、M<1)を有するので、基板テーブルがスキャンされる速度Vは、係数Mにマスクテーブルのスキャン回数を乗じた値になる。
【0003】
[0003] リソグラフィ投影装置を用いた製造プロセスでは、放射感応性材料(レジスト)のレイヤで少なくとも部分的に覆われた基板上にマスクパターンが結像される。この結像ステップに先立って、プライミング、レジストコーティング、及びソフトベークなどの種々の手順を基板に対して行うことができる。露光後に、基板に対して、結像されたフィーチャの露光後ベーク(PEB)、現像、ハードベーク及び測定/検査などの他の手順を実行することができる。この一連の手順は、デバイス、例えば、ICの個々のレイヤにパターン形成する基礎として使用される。そのようなパターン形成されたレイヤについて、次に、個々のレイヤを完成させるためのエッチング、イオン注入(ドーピング)、金属化、酸化、化学的機械的研磨などの種々のプロセスを行うことができる。幾つかのレイヤが必要な場合、手順全体、又はその変形手順を新しいレイヤごとに繰り返す必要がある。最終的に、デバイスのアレイが基板(ウェーハ)上に形成される。これらのデバイスは、次に、ダイシング又はのこ引きなどの技術によって互いに分離され、それによって個々のデバイスをピンなどに接続されたキャリア上に実装することができる。
【0004】
[0004] 話を分かりやすくするため、以下、投影システムを「レンズ」と呼ぶことがある。しかし、この用語は、例えば、屈折光学系、反射光学系、及び反射屈折光学系を含む各種投影システムを含むものと広義に解釈すべきである。放射システムも、放射投影ビームを誘導し、整形し、又は制御する任意のこれらの設計タイプに従って動作するコンポーネントを含むことができ、そのようなコンポーネントも、以下に集合的又は単独で「レンズ」と呼ぶことがある。さらに、リソグラフィ装置は、2つ以上の基板テーブル(及び/又は2つ以上のマスクテーブル)を有するタイプであってもよい。そのような「マルチステージ」デバイスでは、追加のテーブルを平行して使用するか、又は1つ以上の他のテーブル上で準備ステップを実行しながら1つ以上の他のテーブルを露光に使用することができる。
【0005】
[0005] 上記フォトリソグラフィマスクは、シリコンウェーハ上に集積する回路コンポーネントに対応する幾何学パターンを含む。そのようなマスクを作成するためのパターンは、このプロセスが多くの場合EDA(電子設計オートメーション)と呼ばれるCAD(コンピュータ支援設計)プログラムを用いて生成される。大半のCADプログラムは、機能マスクを作成するために一組の所定のデザインルールに従う。これらのルールは、処理及び設計の制限によって設定される。例えば、デザインルールは、回路デバイス(ゲート、コンデンサなど)又は相互接続線間の空間許容範囲を定義して、回路デバイス又は線が好ましくない形で相互動作しないようにする。デザインルールの限界は、「クリティカルディメンション」(CD:Critical Dimension)とも呼ばれる。回路のクリティカルディメンションは、線若しくは穴の最小幅又は2本の線若しくは2つの穴の間の最小空間として定義することができる。それ故、CDは、設計された回路の全体のサイズと密度とを決定する。集積回路の製作の目標の1つが元の回路設計をウェーハ上に(マスクを介して)忠実に再現することであるのは当然である。
【0006】
[0006] 上述のように、マイクロリソグラフィは半導体集積回路の製造における中心ステップであり、半導体ウェーハ基板上に形成されるパターンは、マイクロプロセッサ、メモリチップなどの半導体デバイスの機能要素を定義する。同様のリソグラフィ技術が、フラットパネルディスプレイ、微小電気機械システム(MEMS)、及び他のデバイスの形成にも使用される。
【0007】
[0007] 半導体製造プロセスが進化し続ける一方で、回路素子の寸法は絶えず低減し、その間、デバイス当たりのトランジスタなどの機能素子の数は、一般に「ムーアの法則」と呼ばれる傾向に従って数十年間にわたって着実に増大しつつある。現行の技術状態では、先端デバイスのクリティカルレイヤが、深紫外線レーザ光源の照明を用いて基板上にマスク画像を投影して100nmをはるかに下回る、すなわち、投影光の波長の半分に満たない寸法を有する個別の回路フィーチャを作成するスキャナとして知られている光リソグラフィ投影システムを用いて製造される。
【0008】
[0008] 光投影システムの伝統的な解像限界よりも小さい寸法を有するフィーチャが印刷されるこのプロセスは、一般に解像度の式、CD=k×λ/NAによる低kリソグラフィとして公知である。この式で、λは使用する放射の波長(現在、大半の例では248nm又は193nm)、NAは投影光学系の開口数、CDは「クリティカルディメンション」、すなわち、一般に印刷される最小のフィーチャサイズ、及びkは経験的解像度係数である。一般に、kが小さいほど、特定の電気的機能と性能を達成するために回路設計者が計画する形状と寸法に似たパターンをウェーハ上に再現することは困難になる。これらの困難を克服するために、投影システムだけでなくマスク設計にも高度の微調整ステップが適用される。これらは、例えば、NA及び光コヒーレンス設定の最適化、カスタム化された照明方法、移相マスクの使用、マスクレイアウト内の光近接効果補正、又は、一般に「高解像度化技術」(RET)と呼ばれるその他の方法を含むが、これらに限定されない。
【0009】
[0009] RETの重要な一例として、光近接効果補正(OPC)は、ウェーハ上に印刷されるフィーチャの最終寸法及び配置が、単にマスク上の対応するフィーチャの寸法及び配置に応じるものでないという事実に対処する。「マスク」及び「レチクル」という用語は、本明細書では互換的に使用されることに留意されたい。典型的な回路設計上でフィーチャ寸法が小さくフィーチャ密度が高い場合、所与のフィーチャの特定のエッジの位置は、ある程度、他の隣接するフィーチャの有無による影響を受ける。このような近接効果は、フィーチャ間で結合される微量の光から生じるものである。同様に、近接効果は、露光後ベーク(PEB)、レジスト現像、及び一般にリソグラフィ露光後のエッチング時の拡散及び他の化学的影響から生じる場合がある。
【0010】
[0010] フィーチャが所与のターゲット回路設計の要件に従って半導体基板上に確実に生成されるようにするために、高度な数値モデルを使用して近接効果を予測する必要があり、補正又はプリディストーションをマスクの設計に適用する必要があり、その後、高性能なデバイスの良好な製造が可能になる。典型的な高性能設計では、ターゲット設計に十分近づいたプリントパターンを達成するために、ほぼすべてのフィーチャエッジが何らかの修正を必要とする。これらの修正は、エッジ位置又はライン幅のシフト又はバイアス、及びそれら自体を印刷することを意図しないが、関連付けられた主フィーチャの特性に影響を与えることのない「アシスト」フィーチャの適用を含んでもよい。
【0011】
[0011] モデルに基づくOPCをターゲット設計に適用するには、1つのチップ設計に通常は数百万のフィーチャがあるので良好なプロセスモデル及び多大な計算処理のリソースが必要である。しかし、OPCの適用は通常は「厳正科学」ではなく、レイアウト上で可能なすべての弱点を常に解像するとは限らない経験的で反復的なプロセスである。したがって、OPC後の設計、すなわち、OPC及び任意の他のRETによるすべてのパターン修正を適用した後のマスクレイアウトは、設計の欠陥がマスクセットの製造に組み込まれる可能性を最小化するために、設計検査によって、すなわち、較正した数値プロセスモデルを使用した徹底的な完全チップシミュレーションによって検証する必要がある。これは、数百万ドルの範囲で作動する最高級マスクセットを作成する膨大な費用によって、さらに製造した後は実際のマスクを再加工又は修理することによってターンアラウンドタイムに及ぼす影響によって動かされる。
【0012】
[0012] OPCと完全チップRET検証は両方とも、数値モデリングシステム及び方法に基づくものであってよく、リソグラフィプロセスを厳密に示す頑健なモデルを必要とすることがある。したがって、このようなリソグラフィモデルのために、プロセスウィンドウにわたって有効、頑健かつ正確であるモデルを提供する較正手順が必要である。現在、較正はウェーハの測定とともに特定数の1次元及び/又は2次元ゲージパターンを使用して実行される。より詳細には、これらの1次元ゲージパターンはピッチ及びCDが変動するラインスペースパターンであり、2次元ゲージパターンは通常、ラインエンド、接点、及びランダムに選択されたSRAM(スタティックランダムアクセスメモリ)パターンを含む。次に、これらのパターンをウェーハに結像し、その結果のウェーハのCD又は接触エネルギーを測定する。次に、元のゲージパターン及びそのウェーハ測定値を一緒に使用して、モデルの予測値とウェーハの測定値との差を最小化するモデルパラメータを決定する。
【0013】
[0013] 残念ながら、ゲージパターンの設計及び有効性に関する体系的な研究は多くない。従来のゲージパターン選択方法はかなり任意的である。すなわち、単に経験から選択するか、又は実際の回路パターンからランダムに選択することがある。このようなパターンは往々にして較正には不完全であるか、又は超完全であるか、或いはその両方である。特に、一部のプロセスパラメータでは全パターンが非常に感受性が低いことがあり、したがって測定の不正確さによりパラメータ値の決定が困難になることがある。他方で、多くのパターンがパラメータの変動に対して非常に類似した応答を有することがあり、したがってその一部は冗長であり、これらの冗長パターンに関するウェーハの測定は多大なリソースを浪費する。「Methods and Systems for Parameter-Sensitive and Orthogonal Gauge Design for Lithography Calibration」と題した共有で同時係属の米国特許出願第13
/128,630号(WIPO公開第WO2010/054350号と同等)、及び「Pattern Selection for Lithographic Model Calibration」と題した米国特許公開第2010/0122225号が、これらの問題の一部に対応している。しかし、以上の2つの出願で開示された方法は、通常はリソグラフィモデルの結像に強い非線形効果を示す波面収差項目に特に応答するように調整されていない。収差モニタリングの方法が、「Accurate Measurement of Spherical and Astigmatic Aberrations by a Phase Shift Grating Reticle」と題したH. Nomuraによる論文(Japan. J. Appl. Phys. Vol. 40 (2001) pp. 6316-6322)に提示されている。その方法では、対称形で回転した反復位相シフト格子(PSG)を通して収差がモニタされる。その方法は位相シフトマスク(PSM)を必要とし、ピッチ及び調整可能なマスクパラメータに追加の制約を与える。さらに、照明源に特定の制約が必要になり、これは常に適用可能及び/又は実際的であるとは限らない。したがって、必要とされているのは、リソグラフィシステム/プロセスの要件に従って収差項に対する感度を調整することができ、融通性があって計算処理上効率的なゲージ設計方法である。
【発明の概要】
【0014】
[0014] 本発明は、リソグラフィシミュレーション方法の領域で、リソグラフィシステム(物理的システム又は物理的システムの仮想モデル)で較正/モニタリングに使用するゲージパターンを設計するために計算処理上効率的な技術を可能にし、先行技術の上記欠陥を克服する幾つかの革新を提供する。
【0015】
[0015] より詳細には、本発明は、パラメータの変動に対して極めて感度が高く、したがって複数のフィーチャを有するターゲット設計を結像するために使用されるリソグラフィプロセスの較正のランダムで反復的な誤差に対して頑健であるゲージパターンの設計方法に関する。この方法は、最も感度が高い線幅/ピッチと、最適のアシストフィーチャ配置と、の組合せを識別することを含むことができ、これは波面収差パラメータの変動などのリソグラフィプロセスパラメータの変動に対して最も感度が高いCD(又は他のリソグラフィ応答パラメータ)の変化につながる。この方法は、波面関連の、又は他のリソグラフィプロセスのパラメータに対して特定の応答を生成するためにゲージの組合せ応答を調整できるように、複数のテストパターンを有するゲージを設計することも含むことができる。パラメータの変動に対するこの感度は、ランダム測定誤差及び/又は他のいかなる測定誤差に対しても頑健な性能につながる。
【0016】
[0016] 本発明の一態様では、投影リソグラフィシステムにより結像されるテストパターンのセットを設計する方法が開示され、テストパターンのセットは、投影リソグラフィシステムの予め定義された波面収差項に関連するリソグラフィ応答パラメータを含み、予め定義された波面収差項は波面収差の特徴を数学的に表す。上記方法は、a)予め定義された波面収差項の関数として、リソグラフィ応答パラメータの近似として数学級数展開を生成するステップと、b)数学級数展開から選択された展開項のセットを選択するステップと、c)選択された展開項を含む費用関数を生成するステップと、d)未選択の展開項の少なくとも一部を実質的にゼロに抑制しながら、テストパターンのセットのパラメータを定義する費用関数を解くステップと、を含む。テストパターンのセットは、単一のパターン又は複数のパターンを含んでもよいことに留意されたい。単一パターンの個々の応答は非線形になり得る一方、ゲージ内の複数のパターンを組み合わせた応答は線形であるか、又は他の方法で調整することができる。
【0017】
[0017] 本発明の別の態様では、投影リソグラフィシステムにより結像されるテストパターンのセットが開示され、テストパターンのセットは実質的に2進テストパターンであり、投影リソグラフィシステムの予め定義された波面収差項に関連するリソグラフィ応答パラメータを含み、予め定義された波面収差項は波面収差の特徴を数学的に表し、テストパターンのセットは、予め定義された波面収差項の変動に関して実質的に線形の応答を生成する。
【0018】
[0018] 本発明の範囲は、ゼルニケなどの任意次数の波面収差項に対して調整された(線形又は非線形)応答を生成することを含む。線形性/特定の非線形性は必ずしも、特定の波面収差設定の周囲の「ウィンドウ」に限定されず、リソグラフィ応答データを使用して投影リソグラフィ装置をその所望の基線設定にすることが可能である。この方法は、投影リソグラフィ装置の性能ドリフトをモニタ/安定化するツールとして波面収差を再構築する必要があり得る場合に適切である。所望の応答からの偏差を測定し、ウェーハのバッチを合格にするか又は廃棄するかを決定するウェーハ検査技術として定量化することができる。テストパターンは、CD測定に基づいた、又はスキャトロメータ測定に基づいた従来のウェーハ検査ツールと適合するように設計される。
【0019】
[0019] 本発明の上記及びその他の態様は、上記方法に対応するシステム及びコンピュータプログラム製品を含めて、添付の図面及び詳細な説明に鑑みて当業者には明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
[0020] 本発明の特定の例示的実施形態に関する下記の説明は、添付図面との関連で考察される。
図1】[0021]本発明の例示的実施形態によるリソグラフィシステムの様々なサブシステムのブロック図である。
図2】[0022]図1のサブシステムに対応するシミュレーションモデルのブロック図である。
図3】[0023]本発明の実施形態によるテストパターン設計方法の幾つかの重要なフィーチャを示すフローチャートである。
図4】[0024]本発明の実施形態により複合有効線形応答を有する1対のテストパターンを備えたゲージの例を概略的に示す。
図5】[0025]本発明の実施形態によるテストパターン設計最適化方法の例を示す。
図6】[0025]本発明の実施形態によるテストパターン設計最適化方法の例を示す。
図7】[0025]本発明の実施形態によるテストパターン設計最適化方法の例を示す。
図8】[0026]本発明の実施形態を実施することができる例示的コンピュータシステムのブロック図である。
図9】[0027]本発明の実施形態を適用可能であるリソグラフィ投影装置の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[0028] 当業者が本発明を実施することができるように、本発明の例示的な例として提供される図面を参照して以下に本発明を詳述する。特に、以下の図及び例は本発明の範囲を1つの実施形態に限定するものではなく、下記又は図示の要素の一部又は全部を入れ替えることで別の実施形態も可能である。さらに、既知のコンポーネントを用いて本発明の特定の要素を部分的に又は完全に実施することができる場合、本発明を分かりにくくしないように、本発明の理解に必要な既知のコンポーネントのそれらの部分のみを記述し、それら既知のコンポーネントのその他の部分の詳細な記述は省略する。ソフトウェアで実施される実施形態はそれに限定されてはならず、特に断りのない限り、当業者には明らかなように、ハードウェア、又はソフトウェアとハードウェアとの組合せで実施される実施形態を含むことができ、またその逆の場合も同様である。本明細書では、単一のコンポーネントを示す実施形態は限定的と考えてはならず、特に本明細書で断りのない限り、複数の同じコンポーネントを含む別の実施形態を包含し、またその逆の場合も同様である。さらに、特に断りのない限り、出願人らは明細書又は特許請求の範囲のいかなる用語にも一般的でない又は特殊な意味を与えることはない。さらに、本発明は、本明細書の図で参照する既知のコンポーネントの現在及び将来の既知の同等物を含む。
【0022】
[0029] 光学計測結果の解釈を補助する投影リソグラフィシステムなどの光学結像システムでは、測定した波面データを多項式の形態で表すと都合がよい。この目的にはゼルニケ多項式が使用されることが多い。何故なら、光学システムで頻繁に観察される波面収差のタイプと同じ形態である項で構成されているからである。ゼルニケ係数は、収差を述べるために完全な直交基底を提供する。ゼルニケ多項式の詳細は、James C. Wyant及びKatherine Creathによる、「Basic Wavefront Aberration Theory for Optical Metrology」と
題した著書(Applied Optics and Optical Engineering第XI巻、Academic Press. (1992) ISBN 0-12-408611-X)の第I章の28〜39ページに記載されている。本出願では、
ゼルニケという用語を、この方法を実証する非限定的な例として、ゲージを各ゼルニケ係数の線形応答で設計できることを示すために使用する。しかし、設計方法は間違いなく同様の特徴を有する他の収差基底にも拡張できることに留意されたい。
【0023】
[0030] 本出願は、収差を意図的にシステムに導入するリソグラフィシステムの光学サブシステム(例えば調整可能なノブを有する投影光学システム)の効果を説明するために使用され、(収差ゼルニケなどの)波面収差項に対する応答を最適化したゲージを設計する方法について説明する。リソグラフィのシミュレーションでは、導入された収差を正確に制御するために、収差をモニタすることが益々重要になっている。収差項の変動に対する望ましい応答は線形になることがあるが、当業者には本出願が線形応答の生成のみに限定されないことが理解される。本明細書で開示する方法は、線形であれ非線形であれ、任意の種類の調整された応答を生成するのに十分なほど普遍的である。
【0024】
[0031] シミュレーションソフトウェアには、非線形ゲージ応答を生成するために非線形最適化プロセスを採用するものもある。しかし特定の状況では、リソグラフィプロセスパラメータに対する線形応答が特に魅力的になる。すなわち、非線形最適化の方法は通常、反復的な方法であり、これは時間がかかる。対照的に、所望の応答が線形である場合は、簡単なマトリクス演算を採用することができる。線形方法の方が、局所最適条件の問題の影響も受けにくい。応答が複素非線形応答である場合は、最適化方法で真に大域的な解決法が見いだせることを保証することができない。さらに、最適化プロセスにとって適正なステップサイズを選択することも問題になる。最適化に使用するステップサイズが良好でない場合は、最適化が振動を有するか、又は収束が非常に遅くなることがある。このような問題は、応答が線形である場合は関係がない。非線形最適化は、ゲージの選択プロセスを比較的困難にすることがある。較正精度及び収束速度を改良するために、較正又は波面再構築プロセスにおいて感度が高い良好なゲージを選択することが望ましいが、応答が非線形である場合は、最終的に以下のシナリオになることがある。最初に、名目状態付近に高い感度を有する良好なゲージが選択される。残念ながら現実のスキャナ動作では、状態が名目状態と異なる場合、選択された「良好な」ゲージが示す感度は非常に低い。線形応答では、ゲージからの応答が均一になる。これらの理由から、スキャナの一時的ドリフトが基準基線性能に戻される用途などの幾つかの用途、又はリアルタイムの波面再構築が有用になり得る調節可能な投影光学系の用途では、線形応答ゲージが好ましい。さらに、デルタ測定値(すなわち応答パラメータの絶対値ではなく応答パラメータ間の差)が較正の測定基準であるので、線形応答を選択することで、測定における幾つかの共通の誤差源を軽減することができ、これは較正精度をさらに改良することができる。
【0025】
[0032] 収差ゼルニケ(又は他の多項式係数)は、何らかの非線形性を混合して、応答に導入できることに留意されたい。しかし、現実的なシナリオの大半では、ゼルニケ混合は重大ではない。さらに、ゼルニケ項が相互に混合している場合でも、簡単な1次式のセットを解いて、全ゼルニケを再構築することができる。
【0026】
[0033] また、別個のゲージ/テストパターンをチップ設計のレイアウトに加えるのではなく、リソグラフィ装置使用者は、テストパターンとして使用するように指定されている実際のターゲットチップ(レイアウトは顧客からの提供でよい)からテストパターンのセットを使用できることに留意されたい。この方法で、設計レイアウトにおいて多少のスペースを節約することができる。しかし、所望の線形(又は他の方法で調整された)応答を実現するために、ゲージを対にして設計し、各対が相互に対称である2つのテストパターンを備える必要があることがある。顧客のパターンは任意であるので、これは不可能なことがある。さらに、本発明の範囲は特別に設計されたテストパターンに限定されないことが、当業者には理解される。
【0027】
A.本発明の例示的実施形態を実施するリソグラフィシステムの一般的な環境
[0034] 本発明を説明する前に、設計全体及び結像プロセスについて簡潔に説明する。図1は、例示的リソグラフィ投影装置10を示す。主要なコンポーネントは、例えば深紫外線エキシマレーザ放射源、又はEUV波長を含む他の波長の放射源などの光源12と、部分的なコヒーレンスを定義し、また特定の光源整形光学系14、16a及び16bを含んでもよい照明光学系と、マスク又はレチクル18と、ウェーハ面22上にレチクルパターンの画像を生成する投影光学系16cである。瞳面の調整式フィルタ又はアパーチャ20はウェーハ面22に当たるビーム角度の範囲を制限することができ、可能な最大角度は投影光学系の開口数NA=sin(Θmax)を定義する。
【0028】
[0035] リソグラフィシミュレーションシステムでは、これらの主要システムコンポーネントを例えば図2に示すように別々の機能モジュールによって記述することができる。図2を参照すると、機能モジュールは、ターゲット設計レイアウトを定義する設計レイアウトモジュール26と、結像プロセスで使用するマスクを定義するマスクレイアウトモジュール28と、シミュレーションプロセス中に使用するマスクレイアウトのモデルを定義するマスクモデルモジュール30と、リソグラフィシステムの光学コンポーネントの性能を定義する光学モデルモジュール32と、所与のプロセスで使用されているレジストの性能を定義するレジストモデルモジュール34とを含む。公知のように、シミュレーションプロセスの結果は、例えば、結果モジュール36内に予測輪郭及びCDを生成する。
【0029】
[0036] より詳細には、照明及び投影光学系の特性が、NA−シグマ(σ)設定と、任意の特定の照明源の形状(σ(又はシグマ)はイルミネータの外側半径範囲である)とを含む光学モデル32内で捕捉されるが、これらに限定されないことに留意されたい。基板上にコーティングされたフォトレジスト層の光学特性、すなわち、屈折率、膜厚、伝搬及び偏光効果も光学モデル32の一部として捕捉できる。マスクモデル30は、レチクルの設計フィーチャを捕捉し、マスクの詳細な物理特性の表現を含むこともできる。最後に、レジストモデル34は、例えば、基板ウェーハ上に形成されるレジストフィーチャの輪郭を予測するために、露光、PEB及び現像中に生起する化学プロセスの影響を説明する。シミュレーションの目的は、例えばエッジの配置及びCDを正確に予測することであり、その後これをターゲット設計と比較することができる。ターゲット設計は、一般にプレOPCマスクレイアウトとして定義され、GDSII又はOASISなどの標準化されたデジタルファイル形式で提供される。当業者であれば、入力ファイル形式が不適切であることが理解されよう。入力ファイル形式が無関係であることは当業者には明らかであろう。
【0030】
B.本発明の例示的方法
[0037] 「Methods and Systems for Parameter-Sensitive and Orthogonal Gauge Design for Lithography Calibration」と題した共有の同時係属米国特許出願第13/128
,630号では、測定の不正確さなどのランダムな誤差に対する頑健性を改良するために、各リソグラフィパラメータの感度を最大化するゲージを設計する方法が開示されている。本出願では、同様の方法を使用して、ゼルニケに対する感度を最大化する。しかし、典型的な非線形性が高いゼルニケの効果により、正確なゼルニケの値を求めることは困難である。この方法で追加された特徴は、2つのパターンからの2つの測定CD(クリティカルディメンション)値の差の感度が、リソグラフィプロセスパラメータの変動に対して最大になるように、1対のテストパターンを備えるゲージを設計することである。このようなCD(又は他の応答パラメータ)の差は、測定バイアスなどの共通の誤差源を消去する。さらに、2つのパターンは、その結果となるCDの差が、ゼルニケの変動に対する特定次数(偶数次数など)の応答もすべて消去するという特別な方法で設計される。したがって、ゲージは各ゼルニケ係数に対してほぼ線形の応答を有し、これは効率的なゼルニケのモニタリングにつながる。
【0031】
[0038] H. Nomuraによる「Accurate Measurement of Spherical and Astigmatic Aberrations by a Phase Shift Grating Reticle」という論文(Japan. J. Appl. Phys. vol. 40 (2001)pp.6316-6322)で提案された収差モニタリングの方法では、対称形で回転した反復位相シフト格子を通して収差をモニタする。この方法は位相シフトマスクが必要であり、ピッチ及び調整可能なマスクパラメータに対する制約が追加される。さらに、曲線因子が制限された照明源が必要であり、これは常に実際的であるとは限らない。本発明の方法は位相シフトマスクを必要とせず、ピッチ、調整可能なマスクパラメータ、及び照明源に対する制約がはるかに少ない。
【0032】
[0039] CDは通常、2次形式でゼルニケに応答することが分かっている。同じ2次係数でゼルニケに応答する対構造を使用することにより、CDの差がゼルニケにおいて確実に線形になるようにすることができる。
【0033】
[0040] 様々な収差ゼルニケ項に対する調整された応答のために、様々なテストパターンの構造を設計することができる。例えば、コマ項を表すゼルニケに、鏡面対称構造を使用することができ、非点収差項を表すゼルニケに、90°回転した構造を使用することができるなどである。実際に、このような設計は、球面項を除く全ゼルニケ項で作用する。基本的概念は、2次応答が異なることがあっても、2つ以上の(場合によっては傾斜角度が異なる)テストパターンを設計することである。設計者は、パターンごとに異なる重み付けを使用することができ、CDの1次結合は2次応答を相殺し、線形応答につながる。
【0034】
[0041] 図3は、本出願で説明する方法の幾つかの重要なステップを示すフローチャートを示す。ステップS302では、波面収差項の関数として、リソグラフィ応答パラメータの近似値として数学級数展開を生成する。波面収差項はゼルニケ係数でよい。ステップS304では、数学級数展開から展開項のセットを選択する。ステップS306では、選択された展開項を含む費用関数を生成する。ステップS308では、未選択の展開項の少なくとも一部を実質的にゼロに抑制しながら、テストパターンのセットのパラメータを定義するために、費用関数を解く。
【0035】
[0042] 一例として、2つのパターンP及びPがあり、そのCDをゼルニケ項の2次多項式として良好に近似できると仮定する(ステップS302及びS304)。
【数1】
ここで、CD及びCDはそれぞれ、パターンP及びPのCDであり、CD01及びCD02をフィッティングした名目状態CDと呼び、a及びaを1次感度と呼び、b及びbを2次感度と呼ぶ。測定基準を使用してゼルニケの変動をモニタするように、2つのパターンの重みw及びwを使用するものとする。
【数2】
【0036】
[0043] 次にこの問題は、w+w=0(ステップS308)という制約下で例示的な費用関数(CF)を最大化するために、2つの定数w及びw、及び2つのパターンP及びPを識別することになる(ステップS306)。
【数3】
【0037】
[0044] 図4は、2つのパターンP1及びP2(それぞれが一連のライン及びバーを備える)、及び2つのCD(CD1 402及びCD2 404)を示す。CD1及びCD2項はゼルニケ項zに対してプロットされ、それぞれ2次である。しかし、複合応答410、すなわち、式Cの項CDは実質的に1次である。様々なゼルニケ項では(すなわち、zのnが変動する場合)、応答410の傾斜は変動することがあるが、応答は多少線形のままである。
【0038】
[0045] この最適化の問題を解くために、ガウス・ニュートン法、レーベンバーグ・マルカルトアルゴリズム、勾配降下アルゴリズム、シミュレーションした焼き鈍し、遺伝的アルゴリズムなどの一般的な非線形方法を適用することができ、任意ゼルニケ項及び任意照明源形状の一般的な解につながる。
【0039】
[0046] 以下の例示的方法で、解を簡略化することもできる。a)b≧0という制約で、最大可能1次感度aのパターンPを識別する。b)b≧0という制約で、最小可能1次感度(負の値でよい)aのパターンPを識別する。c)b<0という制約で、最大可能1次感度aのパターンPを識別する。d)b<0という制約で、最小可能1次感度(負の値でよい)aのパターンPを識別する。e)パターンP及びPについて、b=0である場合は、パターンPのみが線形応答のパターンであって、この1つのパターンを、ゼルニケ変動をモニタする測定基準として、CDを有する最終的設計の候補として使用することができ、同様にb=0である場合は、Pを、ゼルニケ変動をモニタする測定基準として、CDを有する最終的設計の候補として使用することができ、それ以外にb及びbの両方がゼロでない場合は、一般原則を失わずに|b|≧|b|であると仮定し、ゼルニケ変動をモニタする1次測定基準として、
【数4】
の状態の候補として(P,P)で構成されたパターン対を使用する。f)パターンP、P、P及びPの間で残った対がある場合は、そのすべてでステップe)を繰り返し、1次感度が最大のパターン又はパターン対をゲージとして使用する。
【0040】
[0047] 以前のセクションで述べたように、照明源形状が特定の対称性を有する場合は、P及びPはたまたま対称になることがあり、2次感度は同じであるが、1次感度は反対になる。したがって、この方法は以前の方法よりも一般的であると見なすことができる。
【0041】
[0048] ゼルニケ項として表される収差の背景として、ここではホプキンス理論及び相互透過係数(TCC)について簡単に説明する。空間像AIは下式のように表すことができる。
【数5】
ここで、
【数6】
である。
AI(x,y)は空間ドメインの空間像である。A(k,k)は源瞳面の点kからの源振幅である。L(k,k)は投影光学系の振幅及びレンズ瞳面上の点(k,k)の位相関数であり、本開示では「レンズ瞳像」とも呼ぶ。空間ドメインの投影光学系関数は、位置の関数として投影光学系を通過する光に対して投影光学系が引き起こす歪み(例えば振幅、位相又は両方の歪み)を表す。M(k,k)は、空間周波数ドメインのマスク関数(すなわち設計レイアウト関数)であり、フーリエ変換によって空間ドメインのマスク関数から得ることができる。空間ドメインのマスク関数は、位置の関数としてマスクを通過する光に対してマスクが引き起こす歪み(例えば振幅、位相又は両方の歪み)を表す。さらなる詳細は、参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする米国特許第7,587,704号に記載されている。空間ドメインの関数は、フーリエ変換によって空間周波数ドメインの対応する関数に変換することができ、その逆も可能である。ここで、x及びkは両方ともベクトルである。所与の例では、上式がスカラー結像モデルから導出されるが、この方程式はベクトル結像モデルにも拡張することができ、ここで、TE及びTM又は他の偏光成分は別個に合計されることがさらに注目される。
【数7】
は行列と見なすことができ、これはマスクを除くリソグラフィ投影装置の光学特性を含む。TCC行列がエルミート行列である、すなわち、
【数8】
であることにも留意されたい。上式を使用した空間像の計算は、
【数9】
の主要な固有値のみを使用すると簡略化することができる。特に、
【数10】
が対角化され、最大R上で固有値が保持された場合、
【数11】
は下式のように近似することができる。
【数12】
ここで、λ(r=1,...,R)はRの最大固有値であり、φは固有値λに対応する固有ベクトルである。
実際のリソグラフィ投影装置では、ゼルニケ項zについて、
【数13】
は下式のように良好に近似することができる。
【数14】
【数15】
はzから独立している。したがって、
【数16】
を計算すると、zの関数としての
【数17】
が分かる。
【数18】
は名目状態z=zn0から直接計算することができる。係数
【数19】
は、zの既知の値のセットからフィッティングするか、又は偏導関数として導出することができ、その詳細は共通に譲渡された米国特許出願第12/315,849号に記載されている。その開示は参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする。
【数20】
が計算されると、空間像AIの計算は、zに関する展開を使用してさらに簡略化することができる。
【数21】
AI(zn0)、al,n及びbl,nは疑似空間像と呼ばれ、これはマスク像及びそれぞれ
【数22】
から計算することができる。さらに、これらの疑似空間像はすべてzから独立していることに留意されたい。
【0042】
[0049] レンズ瞳像L(k,k)及び源瞳像A(k,k)を有する光学系の場合、その結果のTCCは下式になる。
【数23】
【0043】
[0050] ゼルニケ係数zで、レンズ瞳像を下式のように表すことができる。
【数24】
ここで、L(k,k)はz=zn0の名目レンズ瞳像であり、P(k,k)はzに対応するカーネル像(又はゼルニケ多項式)である。表記を簡略化するために、一般原則を失わずに、zn0=0、すなわち、L(k,k)=L(k,k)exp(jz(k,k))であると仮定する。以降の説明はゼロ以外のzn0に有効であることが、当業者には理解される。すべてのzn0がzn0=0であり、したがってL(k,k)はデフォーカスを有してよいこと以外は収差がないように、名目状態が設定されることも仮定する。その結果、L(k,k)は回転対称である、すなわち、いかなる2つの周波数対、
【数25】
についても、
【数26】
である場合は常に
【数27】
である。
【0044】
[0051] TCCフィッティングプロセスは、下式の場合にテイラー展開と見なすことができる。
【数28】
【0045】
[0052] このことは、下式であることを意味する。
【数29】
【数30】
【0046】
[0053] すべての可能な共通誤差源を消去するために、対称パターン対からの2つのCDの差を使用することが、さらに望ましい。すなわち、上述した式Bのw1=1、及びw2=−1である。
【0047】
[0054] このような要件がある場合、この問題を数学的に特徴付けるには、非対称になる可能性がある2つのパターンを識別して、b−b=0という制約で|a−a|を最大化する。この問題は、上記一般的な非線形最適化法を使用しても解決することができる。
【0048】
[0055] 特定の用途では、可能なパターンの数が限定される。総当たり法を適用して、可能な回転を有するすべての可能なパターンを検索し(又は可能な回転角を有するパターンをサンプリングして、プロセスを加速し)最良のパターン対を求めることもできる。特に、すべての可能な回転角を有するすべてのパターンをループし、上述したように、パターン及び回転角ごとにそのCDのフィッティング係数(1次項a及び2次項b)を求めることができる。
【数31】
【0049】
[0056] 次に、(回転)パターンごとに、等しい2次項を有する(回転)パターンをすべて見つけ出す。ここで、等しいとは数値的な意味であり、すなわち、その差の絶対値が特定の閾値を超えない場合、2つの量は等しいと見なされる。
【0050】
[0057] 最後に、等しい2次項を有するいかなる(回転)パターン対についても、最大の1次項の差を有するものを識別しなければならない。その結果は、選択される最適な(回転)パターン対になる。
【0051】
[0058] 場合によっては、全く回転しない垂直又は水平のパターン対が好ましいことがあることに留意されたい。そのような場合は、回転角を変更する必要がない。
【0052】
[0059] 以前の方法では、任意の照明源形状のゼルニケ線形ゲージになる。しかし、1つのゲージ内で徹底的に異なる2つのパターンになることがある。時には、共通の誤差源及び共通の非ゼルニケ信号を相殺するために、(何らかのミラー及び/又は回転動作を有する)2つの対称パターンがあることが望ましい。次に、任意照明源形状について対称パターン対を設計する方法を説明する。最初に、CDの何らかの1次結合を許容すると仮定する。すなわち、パターンP1及びP2については測定基準として(w1CD1+w2CD2)を使用し、ここでCD1及びCD2は、それぞれ2つのパターンのCDであり、w1及びw2は重量である。
【0053】
[0060] 2つの対称パターンがある状態では、常に1つのパターンを別のパターンの回転(反射を含む)と見なすことができる。したがって、最適化したいパラメータは、w+w=0という制約で
【数32】
を最大化する2つの定数w及びw、1つのパターン及び2つの回転角である。これで、一般的な非線形最適化方法を使用してこの問題を解くことができる。
【0054】
[0061] この場合も、以下のように解を簡単化することができる。a)最大可能1次感度aを有するパターンPを識別する。このパターン自体を傾けることができる。すなわち、既に特定の角度だけ回転していることがある。B)Pの2次感度b=0である場合は、停止して、パターンPを出力する。CDが既に、ゼルニケ変動に対して線形に挙動しているからである。c)bが0でない場合は、Pをθだけ回転すると、Pで可能なすべての回転のうち可能な1次感度a(負でもよい)が最小になるように、最良の角度θを識別する。パターンの反射も回転の見なせることに留意されたい。次に、Pのθの回転をパターンPで表し、その2次感度をbで表す。P及びPの両方を出力する。d)収差をモニタリングするために、b=0である場合は、ゼルニケ変動に対して線形であるPのCDを測定し、それ以外の場合は、CD及びCDで表される両パターンのCDを測定し、|b|が|b|以上である場合は、ゼルニケ変動をモニタする測定基準として
【数33】
を使用し、|b|<|b|である場合は、ゼルニケ変動をモニタする測定基準として
【数34】
を使用する。
【0055】
[0062] この場合も、すべての可能な共通誤差源を消去するために、対称パターン対からの2つのCDの差を使用することがさらに望ましい。すなわち、w1=1、及びw2=−1である。
【0056】
[0063] このような要件がある場合、この問題を数学的に特徴付けるには、1つのパターン及び2つの回転角を識別して、b−b=0という制約で|a−a|を最大化する。この問題は、上述した一般的な非線形最適化法を使用しても解決することができる。
【0057】
[0064] 特定の用途では、可能なパターンの数が限定される。総当たり法を適用して、すべての可能なパターン及びすべての可能な回転角を検索し(又はパターン及び角度をサンプリングして、プロセスを加速し)最良の回転角を求めることもできる。特に、すべての可能な回転角を有するすべてのパターンをループし、上述したように、パターン及び回転角ごとにそのCDのフィッティング係数(1次項a及び2次項b)を求めることができる。
【数35】
【0058】
[0065] 次に、パターンごとに、等しい2次項を有する角度対をすべて見つけ出す必要がある。ここで等しいとは数値的な意味であり、すなわち、その差の絶対値が特定の閾値を超えない場合、2つの量は等しいと見なされる。
【0059】
[0066] 最後に、等しい2次項を有するいかなる角度対についても、最大の1次項の差を有するものを識別する。これは、このパターンの最適角度対である。また、2つの最適回転角からの最大の1次差を有するパターンが、求められる最良のパターンである。
【0060】
[0067] 大部分の光学リソグラフィ用途では、照明源形状は特定の対称性を有する。このような対称性の知識があれば、ゲージ設計をさらに簡略化することができる。
【0061】
[0068] この実施形態では、2つのパターンが
【数36】
に対して全く同じ応答を有する、すなわち、その対応するb1,nが全く同じである一方、対応するa1,nが異なるように、これらの2つのパターンを照明源の対称性に従った特定の方法で設計する。その結果、結果となる2つの空間像の差は、zの変動に対して線形になる。さらに、結果となる空間像/レジスト像の差、したがって結果となるCDの差も、zの変動と直線関係を有する。
【0062】
[0069] ゼルニケ項間の固有対称性を活用して、設計方法を簡略化することができる。最初に、奇数の鏡面対称ゼルニケについて考察する。
【0063】
[0070] 2つのタイプの奇数鏡面対称性、すなわち、k奇数対称性及びk奇数対称性について考察する。ゼルニケ多項式P(k,k)がいかなる(k,k)についてもP(k,k)=−P(−k,k)という特性を有する場合、ゼルニケ項をk奇数対称性と呼ぶ。k奇数対称性も同様の方法で定義される。k奇数対称ゼルニケ項は、奇数のm(例えばZ2、Z7など)を有する偶数のゼルニケ
【数37】
及び偶数のm(例えばZ6、Z13など)を有する奇数のゼルニケ
【数38】
である。k奇数対称ゼルニケ項は、すべての奇数ゼルニケ
【数39】
(例えばZ3、Z8など)である。ゼルニケ項には、同時にk奇数対称とk奇数対称の両方になり得るものもある、すなわち、偶数のmを有する奇数ゼルニケ
【数40】
になり得ることに留意されたい。
【0064】
[0071] 最初にk奇数対称項のゲージ設計について考察する。ゲージの2つのパターンのマスク像が、空間ドメインでm(x,y)及びm(x,y)であるとする。これら2つのパターンがy軸に対して対称である、すなわち、m(x,y)=m(−x,y)である場合、そのフーリエ変換、すなわち、周波数ドメインのマスク像は以下の関係、すなわち、M(k,k)=M(−k,k)を有する。したがって、いかなるTCCについても、その空間像(AI)間の差は(第2のパターンが第1のパターンの反射であるので、第2のAI上の各点が第1のAI上の対応する点と一致するように、第2のAIの反射を調べると)下式になる。
【数41】
これで、TCCの差、すなわち、
【数42】
を調べるだけでよくなる。
TCC行列
【数43】
の差を調べると、下式になる。
【数44】
第2の合計の変数をkから−kに変更することによって、最後に等しくなる。
【0065】
[0072] 次に1次以上のゼルニケについて考察する。
【0066】
[0073] ここでは、m≧1を有する偶数ゼルニケ
【数45】
及び奇数ゼルニケ
【数46】
について考察する。これらのゼルニケ全部について、
[0074]いかなる(k,k)についても
【数47】
であることに留意されたい。
【0067】
[0075] ゲージの2つのパターンのマスク像が、空間ドメインでm(x,y)及びm(x,y)であるとする。第2のパターンがπ/mの角度だけ反時計回りに最初に回転する、すなわち、
【数48】
である場合、そのフーリエ変換、すなわち、周波数ドメインのマスク像は以下の関係を有する。
[0076]
【数49】
【0068】
[0077] したがって、いかなるTCCについても、その空間像(AI)間の差は(この場合も、第2のパターンが特定の変換における第1のパターンの回転であるので、第2のAI上の各点が対応する点と一致するように、回転して戻る第2のAIを調べる。
【0069】
[0078] 以前のセクションでは、CD間の差がゼルニケ変動に対して線形になるように2つのパターンを配置構成する方法について説明した。しかし、ランダム測定誤差などの誤差に対する頑健性を改良するために、線形応答を最大化することが重要である。上記説明から、第1のパターンの変換から第2のテストパターンを導出することができ、したがって疑似TCCに対するCD応答を最大化するために、第1のパターンを設計するだけでよい。線形応答を最大化するために、1D(1Dアシストフィーチャを有する線/空間パターン)又は2Dパターン(複合2Dパターン)を使用することができる。線形応答を費用関数と見なすことができ、MRC(マスクルールチェック)の制約、ILS(逆ログ勾配)、レジスト像のコントラスト、DOF(焦点深さ)などの特定の制約下で費用関数を最大化するために、特定のゲージを設計してきた。疑似TCC費用関数にはCDの差を使用していることに留意されたい。費用関数の非制限的な例として、最良焦点シフト、パターンシフトなど、他に可能な費用関数が存在する。
【0070】
[0079] 多くのタイプの誤差に対して頑健で、簡単に使用されることにより、1Dゲージは特に興味深い。したがって、プロセスを例示する一例として1Dゲージ設計を使用する。各1Dゲージは、ピッチ(P)、主要パターンCD(CD)(主要パターンは線パターン、又は2つの線パターン間の空間とすることができる)などの特定のパラメータによって求めることができ、したがって主要パターンCDは、いずれの線形応答、アシストフィーチャの配置(AF)、傾斜角(q)などが大きいかに応じて、線幅、又は2つの線パターン間の間隔の両方とすることができる。最良の1Dゲージは垂直でも水平でもなく、傾斜していてよいことが注目される。
【0071】
[0080] 最良ゲージを見つけるという問題は、費用関数を最適化する数学的問題と見なすことができる。MRC(マスク規則チェック)の制約、ILS(逆ログ勾配)、レジスト像のコントラスト、DOF(焦点深さ)などの特定の制約下でこの問題は、上述した方法を使用して解決することができる。パラメータを例示するために1Dゲージを使用しているが、この費用関数式は、2Dゲージの設計を含めるために2Dゲージパラメータの費用関数を含めるのに十分なほど一般的であることが、当業者には認識される。
【0072】
[0081] これらのパラメータは一緒に、又は代替的に最適化できることに留意されたい。
これは、総当たり検索を使用して最適化するか、特定の混合の方法で最適化することもできる。すなわち、一部は総当たり検索を使用して最適化され、一部は一緒に最適化され、一部は代替的に最適化される。図5図7は、3つの例示的フローチャートを示す。
【0073】
[0082] 図5のフローチャートは合同最適化法を示す。フローチャートはステップS502で開始し、ここでゲージパラメータを定義する。パラメータは1つのパラメータ又は1セット(P1,P2,...)でよい。ステップS504では、パラメータ(P1,P2,...)を含む多変量費用関数を定義する。ステップS506では、一般的な非線形アルゴリズムを適用して、パラメータを合同最適化する。ステップS508では、合同最適化の結果として最適パラメータセットを選択し、選択されたパラメータに対応するテストパターンを有する設計レイアウトを出力する。
【0074】
[0083] 図6のフローチャートは代替最適化法を示す。フローチャートはステップS602で開始し、ここでゲージパラメータを定義する。パラメータは1つのパラメータ又は1セット(P1,P2,...)でよい。ステップS604では、パラメータ(P1,P2,...)を含む多変量費用関数を定義する。ステップS606からS610では、代替最適化アルゴリズムを適用する。例えばステップS606では、他の全パラメータを固定したまま、第1のパラメータP1を最適化する。ステップS608では、他の全パラメータを固定したまま、第2のパラメータP2を最適化する。この方法で、ステップS610で予め定義された終了条件を満足するまで、全パラメータが連続的に最適化される。予め定義された終了条件の例は、最大反復数が達成される、予め定義した制限時間が終了した、費用関数が収束した、許容可能な線形応答が達成されたなどである。ステップS612では、合同最適化の結果として最適パラメータセットを選択し、選択されたパラメータに対応するテストパターンを有する設計レイアウトを出力する。
【0075】
[0084] 図7のフローチャートは総当たり最適化法を示す。フローチャートはステップS702で開始し、ここでゲージパラメータを定義する。パラメータは1つのパラメータ又は1セット(P1,P2,...)でよい。ステップS704では、パラメータ(P1,P2,...)を含む多変量費用関数を定義する。ステップS706からS710では、総当たり最適化アルゴリズムを適用する。例えばステップS706では、第1のパラメータP1のすべての可能な値をループして応答値を計算する。ステップS708では、第2のパラメータP2のすべての可能な値をループして応答値を計算する。この方法で、全パラメータが連続的にスキャンされ、全反復から全パラメータセットからの最良のパラメータセットが記憶されている。ステップS712では、すべてのパラメータが含まれているか否かをチェックする。ステップS714では、合同最適化の結果として最適パラメータセットを選択し、選択されたパラメータに対応するテストパターンを有する設計レイアウトを出力する。
【0076】
[0085] 幾つかのパラメータの最適化は、解析解又は高速解を有することができ、このことはパラメータを代替的に最適化する場合に特に有用になることに留意されたい。また、環状源などの特定の照明源形状では、各ゼルニケ項の傾斜角について解析解を得ることができる。
【0077】
[0086] 2つの対称パターンを使用することによって非球面ゼルニケ項の線形ゲージを設計する方法について説明してきた。しかし、球面ゼルニケ項の場合は、これが回転対称であるので、いかにゼルニケ多項式を回転又は反射しても、奇数の対称性はない。したがって、これらの項では、様々な費用関数又は測定基準を使用して線形性を実現することができる。次に、焦点シフトとゼルニケ項との線形関係について説明する。
【0078】
[0087] マスク像m(x,y)について、費用関数として焦点シフトを使用するために、空間像が下式のように表される。
【数50】
【0079】
[0088] 次に、焦点f及びゼルニケ項zの両方について考察すると、レンズ瞳像は
【数51】
になり、ここでfはz=zn0である場合の最良の焦点であり、L(k,k)はf=f及びz=zの名目レンズ瞳像であり、P(k,k)は焦点のカーネル像であり、P(k,k)はzに対応するカーネル像(又はゼルニケ多項式)である。
【0080】
[0089] 再び2次テイラー展開を使用して、空間像を良好に近似することができ、これはゼルニケ項z及び焦点の2次多項式になる。
【数52】
ここで、係数は焦点f及びゼルニケ項zから独立した定数であり、下式のように定義される。
【数53】
【0081】
[0090] 次に、最良の焦点とゼルニケ項との関係について究明する。最良の焦点は、焦点に対するAIの偏導関数を0に設定することによって決定することができ、これで最良の焦点は下式になる。
[0091]
【数54】
[0092] これはzの変動に対して線形である。
【0082】
[0093] fは、z=zn0である場合に最良の焦点になり、このことは
【数55】
であることを意味することに留意されたい。
【0083】
[0094] しかし、それがゼロであるか、ゼロでないかは線形関係に影響しない。以前のデルタCDの方法は球面ゼルニケ項には役に立たないので、球面ゼルニケ項の変動を測定するには焦点シフトが非常に有用な線形測定基準になることがある。
【0084】
[0095] この場合も、ゼルニケ項の変動に対する焦点シフトの勾配を最大化するために、以上で開示した方法を使用することができる。実際には、Bossungの傾斜、すなわち、
【数56】
にも注意を払わねばならない。
【0085】
[0096] Bossungの傾斜に制約がない場合には、ゼルニケに対する焦点シフトの勾配を直
接的に最大化するとBossungの傾斜が非常に小さくなることがあり、これは望ましくない
ので、Bossungの傾斜が小さすぎる場合は、最良の焦点を正確にピンポイント特定するこ
とが非常に困難になる。
【0086】
[0097] AI強度の焦点シフトを特定の点にて解析するが、レジスト像(RI)の強度及びCDの解析は同様であり、両方ともゼルニケの変動に対して線形応答することに留意されたい。したがって、RIはCDの測定にも使用することができる。
【0087】
[0098] さらに、(線形ゲージの設計又は収差モニタリングに限定されない)一般的な方法として、パターン選択のアルゴリズムを適用して、冗長性を減少させることができる。
この2段階の方法、すなわち、直交ゲージ設計とパターン選択との組合せは、最小のゲージ数でパターンの収束を最大にすることを促進することができる。実際、実行時間が許容可能である場合は、最適なパターンの収束を確実に行うために、パターン選択アルゴリズムの候補として、すべての可能なパターンを使用するか、又は十分なサンプリングレートでこれらのパターンをすべてサンプリングすることもできる。
【0088】
[0099] 上述したように、CDは費用関数に使用される測定基準の主要な例として働くが、ゲージを設計するために、焦点シフト、間隔、オーバレイ誤差(又はパターンシフトとも呼ばれるエッジ配置誤差、すなわち、EPE)などの他の測定基準も使用できることは確実である。例えば、2つのパターン間の間隔を測定して、ゼルニケの変動を求めることができる。パターンシフト(又はオーバレイ)は、別の重要で一般的に使用される測定基準であり、したがって特定の対称性でパターン又はパターン対を設計することもできる。
次に、上述した方法を適用して、ゼルニケの変動又は任意の全般的な光学パラメータの変動に対してパターンシフトを最大化する。
【0089】
[00100] 様々な費用関数を使用することもでき、例えば単一のゲージを設計して、1次
CD感度と2次CD感度との比率を最大化し、線形性を改良することができる。また、対称パターン対の設計からの一部又は全部の奇数次数の応答(1次、3次以上)を維持しながら、一部又は全部の(2次ばかりではない)偶数次数の応答を相殺することができ、したがって例えば1次CD感度と3次以上の次数のCD感度との比率を最大化して、残留非線形項があればすべてさらに抑制し、したがってCDの差の線形性をさらに改良するようにパターン対を設計することもできることに留意されたい。
【0090】
[00101] 本出願では、方法を実証する主な例としてゼルニケ項を使用しているが、この
方法は収差の他の表示に、又は例えば非線形CD応答に寄与することが知られている瞳適合パラメータなどの他のスキャナパラメータでも一般化できることが確実である。この方法を使用して、このようなスキャナパラメータの線形性を改良することができる。デフォーカスなどのパラメータの記号をロックダウンするために、強力な1次及び3次応答でパターン又はパターン対を設計することもできる。
【0091】
[00102] 上述したように、ゲージ設計方法は、パラメータの変動に対する線形応答を有
することに限定されない。2次効果は強力であるが、線形効果は非常に小さい、又はゼロになる場合さえある幾つかのパラメータの場合、純粋な2次効果を残すように、代わりに残留線形効果を相殺する方法を使用することができる。このような設計でもなお、線形応答と2次応答が混合したゲージよりも改良されている。
【0092】
[00103] 信号対雑音比(SNR)を最大化する方法も開示される。測定値はパターンP
1からのCD1及びパターンP2からのCD2であり、これは両方とも特定の雑音レベルs1及びs2を有していなければならない。パターンは対称でも、対称でなくてもよいことに留意されたい。次に、モニタリングの測定基準をCD=w1*CD1+w2*CD2と定義し、ここでw1及びw2は2つの事前設定した定数である。2つのパターンの測定雑音が独立していると仮定すると、モニタリング測定基準の雑音は下式になる。
【数57】
【0093】
[00104] 2次項が相殺し合い、したがってw1*b1+w2*b2=0が制約になるよ
うにw1及びw2も取り上げる必要がある。ここでb1及びb2はそれぞれP1及びP2の2次感度である。次に、w1*b1+w2*b2=0という制約で項
【数58】
を最大化するために、最良のパターン及び最良のw1及びw2を識別する必要がある。ここで、a1及びa2はそれぞれP1及びP2の1次感度である。
【0094】
[00105] リソグラフィ装置使用者は、パターンの適用範囲をさらに改良するために、様
々な費用関数に合わせて設計されたゲージを選択することができる。例えば、線形CD応答に合わせて設計できるゲージもあれば、2次CD応答に合わせて設計されるゲージ、最大焦点シフトに合わせて設計されるゲージ、オーバレイに合わせて設計されるゲージなどもある。パターンを選択するか、選択しない状態で、様々なパラメータに合わせて設計された様々なゲージを一緒に組み合わせることが可能である。このようにゲージを組み合わせると、ランダムな誤差及び縮重に対する頑健性がさらに向上する。
【0095】
C.本発明の実施形態を実施するコンピュータシステムの詳細
[00106] 図8は、本明細書に開示するパターン選択方法の具体化/実施を支援すること
ができるコンピュータシステム100を示す例示的ブロック図である。コンピュータシステム100は、情報を送受信するバス102又はその他の通信機構と、情報を処理するバス102に結合された1つ以上のプロセッサ104(及び105)とを含む。コンピュータシステム100は、また、情報及びプロセッサ104によって実行される命令を記憶するためのバス102に結合されたランダムアクセスメモリ(RAM)又はその他のダイナミックストレージデバイスなどのメインメモリ106を含む。メインメモリ106は、またプロセッサ104によって実行される命令の実行中に、一時的変数又はその他の中間情報を記憶するために使用することができる。コンピュータシステム100は、さらにプロセッサ104のために静的情報及び命令を記憶するバス102に結合された読取専用メモリ(ROM)108又はその他のスタティックストレージデバイスを含む。磁気ディスク又は光ディスクなどのストレージデバイス110が提供され、バス102に結合され、情報及び命令を記憶する。
【0096】
[00107] コンピュータシステム100は、バス102を介して、コンピュータユーザに
対して情報を表示する陰極管(CRT)又はフラットパネル又はタッチパネルディスプレイなどのディスプレイ112に結合することができる。英数字キー及びその他のキーを含む入力デバイス114がバス102に結合され、プロセッサ104へ情報と選択したコマンドを送信する。別のタイプのユーザ入力デバイスがプロセッサ104へ方向情報と選択したコマンドを送信し、ディスプレイ112上でのカーソルの動きを制御するマウス、トラックボール、又はカーソル方向キーなどのカーソル制御装置116である。この入力デバイスは、通常、第1軸(例えば、x)と第2軸(例えば、y)の2軸で自由度2を有し、これによってデバイスは平面内の位置を指定することができる。入力デバイスとしてタッチパネル(画面)ディスプレイも使用することができる。
【0097】
[00108] 本発明の一実施形態によれば、プロセッサ104によるメインメモリ106に
含まれる1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスの実行に応答してコンピュータシステム100によってシミュレーションプロセスの一部を実行することができる。このような命令は、ストレージデバイス110などの別のコンピュータ可読媒体からメインメモリ106に読み込むことができる。メインメモリ106内に含まれる命令シーケンスを実行すると、プロセッサ104は本明細書に記載する各プロセスステップを実行する。マルチ処理装置内の1つ以上のプロセッサを使用してメインメモリ106内に含まれる命令シーケンスを実行することができる。代替実施形態では、ソフトウェア命令の代わりに、又はそれと組み合わせてハードワイヤード回路を使用することができる。したがって、本発明の実施形態は、ハードウェア回路とソフトウェアとの特定の組合せに限定されない。
【0098】
[00109] 本明細書で使用する「コンピュータ可読媒体」という用語は、実行のためにプ
ロセッサ104に命令を提供するステップに加わる任意の媒体を指す。このような媒体は、不揮発性媒体、揮発性媒体、及び伝送媒体を含む多くの形態をとることができるが、これらに限定されない。不揮発性媒体は、例えば、ストレージデバイス110などの光又は磁気ディスクを含む。揮発性媒体は、メインメモリ106などのダイナミックメモリを含む。伝送媒体は、バス102を構成するワイヤを含む同軸ケーブル、銅線及び光ファイバを含む。また伝送媒体は、無線周波数(RF)及び赤外線(IR)データ通信中に生成される音波又は光波の形態をとることができる。コンピュータ可読媒体の一般形態は、例えば、フロッピーディスク(フロッピーは登録商標)、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、その他の任意の磁気媒体、CD−ROM、DVD、その他の任意の光媒体、パンチカード、紙テープ、穴のパターンを有するその他の任意の物理媒体、RAM、PROM,及びEPROM、フラッシュEPROM,その他の任意のメモリチップ又はカートリッジ、以下に記載する搬送波、又はコンピュータが読み取り可能なその他の任意の媒体を含む。
【0099】
[00110] 様々な形態のコンピュータ可読媒体がプロセッサ104へ1つ以上の命令の1
つ以上のシーケンスを搬送して実行するステップに含まれる。例えば、命令は、最初リモートコンピュータの磁気ディスク上に記憶されていてもよい。リモートコンピュータは、命令をダイナミックメモリにロードし、モデムを用いて電話回線上で命令を送信することができる。コンピュータシステム100側のモデムは電話回線上でデータを受信し、赤外線送信機を用いてデータを赤外線信号に変換する。バス102に結合された赤外線検出器が赤外線信号で搬送されたデータを受信し、データをバス102上に配置することができる。バス102はデータをメインメモリ106へ搬送し、そこからプロセッサ104が命令を取り出して実行する。オプションとして、メインメモリ106によって受信された命令は、プロセッサ104による実行前又は後にストレージデバイス110に記憶することができる。
【0100】
[00111] また、コンピュータシステム100は、バス102に結合された通信インター
フェイス118を含むことが好ましい。通信インターフェイス118は、ローカルネットワーク122に接続されたネットワークリンク120への双方向データ通信接続を提供する。例えば、通信インターフェイス118は、対応するタイプの電話回線にデータ通信接続を提供する総合デジタル通信サービス網(ISDN)カード又はモデムであってもよい。別の例として、通信インターフェイス118は、互換LANにデータ通信接続を提供するローカルエリアネットワーク(LAN)であってもよい。無線リンクも実施することができる。そのような任意の実施態様で、通信インターフェイス118は、様々なタイプの情報を表すデジタルデータストリームを搬送する電気信号、電磁信号又は光信号を送受信する。
【0101】
[00112] ネットワークリンク120は、通常、1つ以上のネットワークを通してデータ
通信を他のデータデバイスに提供する。例えば、ネットワークリンク120は、ローカルネットワーク122を通してインターネットサービスプロバイダ(ISP)126が運用するホストコンピュータ124又はデータ装置に接続を提供することができる。次いでISP126は、ワールドワイドパケットデータ通信ネットワーク、現在の通称は「インターネット」128を通してデータ通信サービスを提供する。ローカルネットワーク122とインターネット128は共に、デジタルデータストリームを搬送する電気信号、電磁信号又は光信号を使用する。デジタルデータをコンピュータシステム100との間で送受信する様々なネットワークを介した信号及びネットワークリンク120上の信号及び通信インターフェイス118を介した信号は情報を伝送する搬送波の例示的形態である。
【0102】
[00113] コンピュータシステム100は、ネットワーク、ネットワークリンク120、
及び通信インターフェイス118を通してメッセージを送信し、プログラムコードを含むデータを受信することができる。インターネットの例では、インターネット128、ISP126、ローカルネットワーク122及び通信インターフェイス118を通してサーバ130がアプリケーションプログラムのために要求されたコードを送信することができる。本発明によれば、そのような1つのダウンロードされたアプリケーションは、例えばこの実施形態の選択したテストパターンに備える。受信されたコードは、それが受信されるとプロセッサ104によって実行することができ、及び/又はストレージデバイス110又はその他の不揮発性記憶装置に記憶して後で実行することができる。このようにして、コンピュータシステム100は搬送波の形式でアプリケーションコードを入手することができる。
【0103】
D.リソグラフィツールの例
[00114] 図9は、本発明のテストパターン選択プロセスを用いて較正されたコンピュー
タリソグラフィモデルを用いて性能をシミュレート及び/又は最適化できる例示的リソグラフィ投影装置を概略的に示す。この装置は、以下のコンポーネントを含む。
[00115] −放射投影ビームBを供給する放射システムEx、IL。この特定の場合では
、放射システムは放射源SOをさらに含む。
[00116] −マスクMA(例えば、レチクル)を保持するマスクホルダを備え、投影シス
テムPSに対してマスクを正確に位置決めする第1の位置決め手段PMに接続された第1のオブジェクトテーブル(マスクテーブル)MT。
[00117] −基板W(例えば、レジストコートシリコンウェーハ)を保持する基板ホルダ
を備え、投影システムPSに対して基板を正確に位置決めする第2の位置決め手段PWに接続された第2のオブジェクトテーブル(基板テーブル)WT。
[00118] −基板Wのターゲット部分C(例えば、1つ以上のダイを含む)上にマスクM
Aの照射部分を結像する投影システム(「レンズ」)PS(例えば、屈折、反射光学、又は反射屈折光学システム)。
【0104】
[00119] 本明細書に記載するように、装置は透過型である(すなわち、透過マスクを有
する)。しかし、一般に、装置は例えば反射型(反射マスクを備えた)であってもよい。
あるいは、装置は、マスクの使用に代えて別の種類のパターニング手段を使用してもよい。その例として、プログラマブルミラーアレイ又はLCDマトリクスがある。
【0105】
[00120] 放射源SO(例えば、水銀ランプ又はエキシマレーザ)は、放射ビームを生成
する。このビームは、直接、又はビームエキスパンダ又はビームデリバリシステムBDなどの調節手段を通った後で、照明システム(イルミネータ)ILに供給される。イルミネータILは、ビーム内の強度分散の外側及び/又は内側半径範囲(それぞれ一般にσ−outer、σ−innerと呼ばれる)を設定する調整手段ADを備えてもよい。さらに、イルミネータILは、一般に、インテグレータIN及び集光器COなどの様々な他のコンポーネントを備える。このようにして、マスクMAに当たるビームBは、断面に所望の均一性と強度とを有する。
【0106】
[00121] 図9に関して、放射源SOはリソグラフィ投影装置のハウジング内にあっても
よい(例えば、多くの場合、放射源SOが水銀ランプの場合にあてはまる)が、リソグラフィ投影装置から離れていてもよく、生成する放射ビームを装置内に誘導する(例えば、適切な誘導ミラーにより)構成であってもよいことに留意されたい。この後者のシナリオは、多くの場合、放射源SOがエキシマレーザ(例えば、KrF、ArF又はFレージングに基づく)の時にあてはまる。本発明は、少なくともこれらの両方のシナリオを包含する。
【0107】
[00122] その後、ビームBは、マスクテーブルMT上に保持されたマスクMAに達する
。マスクMAを横断したビームBは、レンズPSを通過し、レンズPSは基板Wのターゲット部分C上にビームBを合焦させる。第2の位置決め手段(及び干渉測定手段IF)により、基板テーブルWTを正確に移動させて様々なターゲット部分CをビームBの経路内に位置決めすることができる。同様に、第1の位置決め手段を用いて、例えば、マスクライブラリからマスクMAを機械的に取り出した後で、又はスキャン中に、ビームBの経路に対してマスクMAを正確に位置決めすることができる。一般に、オブジェクトテーブルMT、WTの移動は、図9には明示していないロングストロークモジュール(粗動位置決め)とショートストロークモジュール(微動位置決め)により実現する。しかし、ウェーハステッパ(ステップアンドスキャンツールとは対照的に)の場合、マスクテーブルMTをショートストロークアクチュエータに接続するだけでよく、又は固定してもよい。
【0108】
[00123] パターニングデバイスMA及び基板Wは、必要に応じて、パターニングデバイ
ス内のアライメントマークM1、M2と、ウェーハ上のアライメントマークP1、P2とを用いて整列させることができる。
【0109】
[00124] 図のツールは、下記の2つの異なるモードで使用することができる。
[00125] −ステップモードでは、マスクテーブルMTは、基本的に固定状態に維持され
、全マスク画像は、1回で(すなわち、1回の「フラッシュ」で)ターゲット部分C上に投影される。次に、異なるターゲット部分CをビームBで照射することができるように、基板テーブルWTがx及び/又はy方向にシフトされる。
[00126] −スキャンモードでは、所与のターゲット部分Cが1回の「フラッシュ」で露
光されない点を除けば、基本的には同じシナリオが適用される。代わりに、マスクテーブルMTを、速度vで所与の方向(例えば、y方向のような、いわゆる「スキャン方向」)に移動することができ、その結果、投影ビームPBはマスク画像上をスキャンする。同時に、基板テーブルWTは、速度V=Mvで同じ方向又は反対方向に同時に移動する。ここで、Mは、レンズPLの倍率(通常、M=1/4又は1/5である)である。このようにして、解像度を犠牲にしないで比較的広いターゲット部分Cを露光することができる。
【0110】
[00127] 本明細書に開示する概念は、サブ波長フィーチャを結像する任意の汎用の結像
システムをシミュレートするか又は数学的にモデル化することができ、特にますます微細化するサイズの波長を生成することができる台頭しつつある結像技術で有用である。すでに普及している新興技術は、ArFレーザを用いて193nmの波長を生成することができ、さらにフッ素レーザを用いて157nmの波長を生成することができるDUV(深紫外線)リソグラフィを含む。さらに、EUVリソグラフィは、シンクロトロンを用いて、又は高エネルギーの電子を材料(固体又はプラズマ)に衝突させて20〜5nmの範囲に光子を生成してこの範囲内の波長を生成することができる。この範囲内では大半の材料が光を吸収するため、モリブデンとシリコンのマルチスタックを備えた反射ミラーによって照明を生成することができる。マルチスタックミラーは、各層の厚さが波長の4分の1であるモリブデンとシリコンの40個のペアの層を有する。X線リソグラフィでさらに小さい波長を生成することができる。通常、シンクロトロンを用いてX線波長が生成される。
X線波長では大半の材料が光を吸収するため、光吸収性材料の薄片によってどこにフィーチャを印刷し(正レジスト)、どこに印刷しないか(負レジスト)を定義することができる。
【0111】
[00128] 本明細書に開示する概念はシリコンウェーハなどの基板上の結像に使用するこ
とができるが、開示された概念は、例えば、シリコンウェーハ以外の基板上の結像に使用される任意のタイプのリソグラフィ結像システムと共に使用することができることを理解されたい。
【0112】
[00129] 本発明について、下記の条項を用いてさらに説明する。
1.投影リソグラフィシステムにより結像されるテストパターンのセットを設計する方法であって、前記テストパターンのセットは投影リソグラフィシステムの予め定義された波面収差項に関連するリソグラフィ応答パラメータを含み、前記予め定義された波面収差項は波面収差の特徴を数学的に表し、
a)前記予め定義された波面収差項の関数として、前記リソグラフィ応答パラメータの近似として数学級数展開を生成するステップと、
b)前記数学級数展開から選択された展開項のセットを選択するステップと、
c)前記選択された展開項を含む費用関数を生成するステップと、
d)特定の波面収差項の変動に対して予め定義された応答を有するテストパターンのセットを生成するために、前記未選択の展開項の少なくとも一部を実質的にゼロに抑制しながら、前記テストパターンのセットのパラメータを定義する費用関数を解くステップと、を含む、方法。
2.前記波面収差が前記投影リソグラフィシステムの波面収差設定に対応する予め定義された範囲の許容可能な波面収差値の外側に一時的にドリフトしているか否かをモニタする測定基準として使用されるように、予め定義された応答からの偏差が構成される、条項1に記載の方法。
3.前記予め定義された応答からの偏差は、前記波面収差の実際の値を再構築するための較正測定基準として使用されるように構成される、条項1に記載の方法。この実施形態は、予め定義された応答が特定の波面収差項の変動に対して実質的に線形の応答である場合に有利なことがある。
4.前記テストパターンのセットは、前記波面収差項の変動に対して予め定義された組合せリソグラフィ応答を有する少なくとも2つのテストパターンを含む、条項1に記載の方法。
5.前記少なくとも2つのテストパターンは、相互に対称である、条項4に記載の方法。
6.前記少なくとも2つのパターンは、相互に非対称である、条項4に記載の方法。
7.前記テストパターンのセットを含むレチクルを使用して前記ウェーハを露光した後、ウェーハ検査ツールによって実行されるウェーハ測定ステップ中に、所望の予め定義された応答からの偏差を定量化するためにデータが収集される、条項2及び3のいずれかに記載の方法。
8.前記所望の予め定義された応答からの前記定量化された偏差を使用して、前記波面収差が所望の波面収差設定に実質的に近い値に維持されるように、前記投影リソグラフィシステムの制御ノブを調整する、条項7に記載の方法。この実施形態も、予め定義された応答が、特定の波面収差項の変動に対して実質的に線形の応答である場合に有利なことがある。
9.前記レチクルは、前記設計されたテストパターンのセットからの前記テストパターンの少なくとも幾つかを含むレイアウトを有するモニタレチクルである、条項7に記載の方法。
10.前記リソグラフィ応答パラメータは、クリティカルディメンション(CD)、オーバレイ、側壁角度(SWA)、及び焦点シフトのうち1つ以上から選択される、条項1に記載の方法。
11.組み合わせたリソグラフィ応答パラメータが、クリティカルディメンション(CD)の差、オーバレイの差、側壁角度(SWA)の差、焦点シフトの差のうち1つ以上から選択される、条項4に記載の方法。
12.制御された量の空間的に変動する波面収差が、前記ウェーハ全体の結像品質を改良するために、前記投影リソグラフィシステムの投影光学系コンポーネント内に設計によって意図的に導入される、条項1に記載の方法。
13.前記波面収差項は、ゼルニケ多項式の係数を含む、条項1に記載の方法。
14.前記ゼルニケ多項式は、回転対称性を有する球面ゼルニケ係数を含む、条項13に記載の方法。
15.既知の照明源及び波面収差の単一項の場合、テストパターンは、垂直対称性、水平対称性、及び1つのテストパターンが別のテストパターンを特定の角度回転させることによって得られる角度対称性のうち1つで設計される、条項5に記載の方法。
16.テストパターンの設計は、
前記テストパターンを特徴付ける少なくとも2つの設計パラメータを選択することを含み、前記少なくとも2つの設計パラメータは、波面収差変動感度パラメータ空間において相互に実質的に直交する、条項1に記載の方法。
17.前記波面収差変動感度空間は、疑似相互透過係数(TCC)に対する応答を特徴とする、条項16に記載の方法。
18.前記テストパターンのセットを設計する前記ステップは、
既知のテストパターンのプール内でテストパターンを特徴付ける設計パラメータの初期セットを定義することと、
設計パラメータの前記初期セットを含む多変量費用関数を定義することと、
波面収差の変動に対して比較的感度が高い設計パラメータのサブセットを選択するために前記多変量費用関数を最適化することと、
既知のテストパターンのポールから選択され、設計パラメータの選択されたサブセットによって特徴付けられるテストパターンのセットを含む設計レイアウトを出力することと、
を含む、条項1に記載の方法。
19.前記多変量費用関数を最適化することは、設計パラメータの合同最適化、設計パラメータの代替最適化、及び設計パラメータの総当たり最適化のうち1つを含む、条項18に記載の方法。
20.設計パラメータの前記サブセットは、波面収差変動感度パラメータ空間において相互に実質的に直交する少なくとも2つのパラメータを含む、条項18に記載の方法。
21.前記最適化ステップは、前記リソグラフィプロセスに伴い物理的な制約下で実行される、条項18に記載の方法。
22.前記制約は、マスクルールチェック(MRC)の制約、逆ログ勾配(ILS)、レジスト像のコントラスト、焦点深さ(DOF)のうち1つ以上を含む、条項21に記載の方法。
23.前記テストパターンは、1次元又は2次元パターンを含む、条項1及び4のいずれかに記載の方法。
24.前記テストパターンの設計は、ウェーハ上の前記テストパターンの結像品質を向上させるアシストフィーチャを設計し、配置決定することを含む、条項1に記載の方法。
25.前記テストパターンのセットは、実質的に2進法の構造、及び位相シフト構造のうち一方又は両方を備える、条項1に記載の方法。
【0113】
[00130] 本発明についてその好適な実施形態を参照しながら具体的に説明してきたが、
本発明の範囲を逸脱することなく、形態及び詳細を変更及び修正できることは当業者には明らかであろう。添付の特許請求の範囲はこのような変更及び修正を包含することが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9