特許第5940087号(P5940087)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940087
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】耐グローワイヤ性ポリアミド
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20160616BHJP
   C08K 5/3477 20060101ALI20160616BHJP
   C08K 5/51 20060101ALI20160616BHJP
   C08K 7/04 20060101ALI20160616BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20160616BHJP
   D01F 6/60 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   C08L77/00
   C08K5/3477
   C08K5/51
   C08K7/04
   C08J5/18CFG
   D01F6/60
【請求項の数】7
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2013-543786(P2013-543786)
(86)(22)【出願日】2011年12月15日
(65)【公表番号】特表2013-545862(P2013-545862A)
(43)【公表日】2013年12月26日
(86)【国際出願番号】EP2011072923
(87)【国際公開番号】WO2012080403
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2014年12月12日
(31)【優先権主張番号】10195324.8
(32)【優先日】2010年12月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ロート
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ウスケ
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−297495(JP,A)
【文献】 特開2006−028231(JP,A)
【文献】 特開2002−105333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L77、C08G69、C09J177、C09D177
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分
A)熱可塑性ポリアミド29〜97.5質量%と、
B)メラミンシアヌレート1〜20質量%と、
C)基礎骨格として9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレンオキシド(DOPO)をベースとした有機リン化合物0.5〜10質量%と、
D)アスペクト比(L/D)4〜25および算術平均繊維長40〜250μmを有する繊維状充填材1〜50質量%と、
E)その他の添加物0〜50質量%とを含み、
前記成分C)として、
下記の式
【化1】
のオリゴマーまたはそれらの混合物
を含み、前記成分A)〜E)の質量%の合計は100%である熱可塑性成形材料。
【請求項2】
ガラス繊維、炭素繊維またはそれらの混合物を前記成分D)として含む、請求項1に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項3】
前記成分B)は1.5〜7μmの平均粒度(d50値)を有する、請求項1または2に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項4】
前記成分D)は6〜20のL/D比を有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項5】
前記成分D)は50〜150μmの算術平均繊維長を有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項6】
繊維、シートおよび成形品を製造するための、請求項1から5までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料の使用。
【請求項7】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料から得られる繊維、シートおよび成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
A)熱可塑性ポリアミド29〜97.5質量%と、
B)メラミンシアヌレート1〜20質量%と、
C)基礎骨格として9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレンオキシド(DOPO)をベースとした有機リン化合物0.5〜10質量%と、
D)アスペクト比(L/D)4〜25および算術平均繊維長40〜250μmを有する繊維状充填材1〜50質量%と、
E)その他の添加物0〜50質量%とを含み、
前記成分A)〜E)の質量%の合計は100%である熱可塑性成形材料に関する。
【0002】
さらに本発明は、あらゆる種類の繊維、シートおよび成形品製造への本発明による成形材料の使用、ならびにその際に得られる成形品に関する。
【0003】
耐火性を備えたポリアミドは近年ますますその重要性を増している。その際、エレクトロニクスセクター向けの明るい色調の製品が特に注目されている。ただし、公知の防火システムのうち、相乗剤と組み合わされた赤燐およびハロゲン化合物はこの適用分野には不適である。ハロゲン化合物は電気的特性たとえば耐クリープ性および絶縁破壊強度を低下させる。赤燐はその固有色からして、明るい色調向けには考えられない。明るい色調で、無強化の、耐燃化されたポリアミドの製造には、ドイツ出願公開DE−A第1694254号により、メラミンの添加が推奨されている。ただし、ガラス繊維強化されたポリアミドにあっては、メラミンおよびメラミン塩たとえばメラミンシアヌレートはあまり効果がなく、この製品の耐グローワイヤ性は−特に薄肉の壁にあっては−非常に低い。
【0004】
他方、一般に高い耐グローワイヤ性を有する無強化の成形材料は、機械的特性たとえば剛性および強度が十分ではないと言う短所を有している。メラミンシアヌレートとのポリアミド混合物にガラス繊維を添加すれば機械的特性は改善されるが、ただし、ガラス繊維がいわゆるウィッキング効果によって難燃化を大幅に低下させてしまうために、難燃性に不利な影響がもたらされる。同様に、欧州出願公開EP−A第241702号から、ガラス繊維およびメラミンシアヌレートとのPA混合物の難燃特性を、コーティングなしのガラス短繊維を混合物中に使用することによって、改善し得ることが知られている。
【0005】
メラミンシアヌレートおよび一定の長さ分布を有したガラス短繊維は欧州出願公開EP−A第848729号から公知である。
【0006】
国際公開パンフレット第2008/119693号および同第2008/132111号から、DOPO誘導体も難燃剤として知られている。
【0007】
難燃添加剤混合物の効果は、基本的に、UL94−Vに準拠した燃焼試験によって記述される。ただし、建物設備ならびに低電圧開閉器への難燃性ポリマーの所定の使用については、特に、IEC60695−2−12に準拠したグローワイヤ試験が重要であり、その際さらに、高度の耐燃性が望ましい。
【0008】
上記文献では、ガラス繊維は、それが使用される場合、従来のエンドレス繊維(ロービング)またはステープルファイバー(長さ4〜6mmの繊維束)として使用することが可能である。この場合、押出し機中でのせん断により、(ガラス繊維含有量が25%の製品を基準として)、通例の加工時に約250〜300μmの製品中繊維長さ分布が結果する。その際、組み入れゾーンでの繊維相互作用の高まりと共に繊維断裂が増加するために(F.Raumsteiner, R. Theysohn, Comp. Sci. Techn. 23 (1985) 231)、平均繊維長さは、一般に、繊維の割合が増加するにつれて低下することが顧慮されなければならない。
【0009】
難燃剤としてのメラミンシアヌレートの添加は、通例、ガラス繊維含有量が20質量%以上の場合、壁の厚さが僅少時のグローワイヤ試験に合格するにはもはや十分ではない。
【0010】
したがって、本発明の課題は、優れた機械的特性と共に優れた耐燃性を有する難燃化された熱可塑性成形材料を提供することであった。特に、一定のアスペクト比を有するガラス短繊維の添加によって、グローワイヤ試験時の消炎時間ができるだけ短時間となる難燃化を可能にすることが意図された。
【0011】
こうして、冒頭に画定した成形材料が見出された。好ましい実施形態は従属請求項に記載したとおりである。
【0012】
驚くべきことに、一定のアスペクト比のガラス短繊維とのポリアミド混合物は、ガラス繊維含有量が20質量%以上の場合にも、メラミンシアヌレートおよび9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−オキシド(DOPO)誘導体からなる相乗混合物と一体となって、壁の厚さが僅少時のグローワイヤ試験要件を満たすことが見出された。
【0013】
本発明による成形材料は、成分A)として、20〜97.5質量%、好ましくは40〜93質量%、特に40〜84質量%の少なくとも1つのポリアミドを含んでいる。
【0014】
本発明による成形材料のポリアミドは、一般に、ISO307に準拠し、25℃にて、96質量%硫酸中の0.5質量%溶液中で測定して、90〜350ml/g、好ましくは110〜240ml/gの粘度数を有している。
【0015】
たとえば、米国特許第2071250号、同第2071251号、同第2130523号、同第2130948号、同第2241322号、同第2312966号、同第2512606号および同第3393210号に開示されている類の少なくとも分子量5.000(重量平均分子量)を有する半結晶質または非晶質の樹脂が好ましい。
【0016】
それらの例は、7〜13員環のラクタムから誘導されるポリアミドたとえばポリカプロラクタム、ポリカプリルラクタムおよびポリラウリンラクタムならびに、ジカルボン酸とジアミンとの反応によって得られるポリアミドである。
【0017】
ジカルボン酸としては、炭素原子数6〜12個、特に6〜10個のアルカンジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸が使用可能である。ここで、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸およびテレフタル酸および/またはイソフタル酸を酸としてあげておくこととする。
【0018】
ジアミンとしては、特に、炭素原子数6〜12個なかんずく6〜8個のアルカンジアミンならびにm−キシリレンジアミン(たとえばBASF SE社のUltramid(登録商標)X17、MXDAとアジピン酸とのモル比1:1)、ジ−(4−アミノフェニル)メタン、ジ−(4−アミノ−シクロへキシル)−メタン、2,2−ジ−(4−アミノフェニル)−プロパン、2,2−ジ−(4−アミノシクロヘキシル)−プロパンまたは1,5−ジアミノ−2−メチル−ペンタンが適している。
【0019】
好ましいポリアミドは、ポリヘキサメチレンアジピン酸アミド、ポリヘキサメチレンセバシン酸アミドおよびポリカプロラクタムならびに、特にカプロラクタム単位の割合が5〜95質量%のコポリアミド6/66(たとえばBASF SE社のUltramid(登録商標)C31)である。
【0020】
さらに、適切なポリアミドは、ドイツ出願公開DE−A第10313681号、欧州出願公開EP−A第1198491号および欧州特許EP第922065号に開示されているように、ω−アミノアルキルニトリルたとえばアミノカプロニトリル(PA6)およびアジポニトリルから、水の存在におけるいわゆる直接重合によって、ヘキサメチレンジアミン(PA66)と共に得られる。
【0021】
さらに、たとえば高温下での1,4−ジアミノブタンとアジピン酸との縮合によって得られるポリアミドにも触れておくこととする(ポリアミド4,6)。この構造のポリアミドの製造方法は、たとえば、欧州出願公開EP−A第38094号、欧州出願公開EP−A第38582号および欧州出願公開EP−A第39524号に開示されている。
【0022】
さらに、2つまたはそれ以上の数の上記モノマーの共重合によって得られるポリアミドまたは、複数のポリアミドの混合物も適しており、その際、混合比は任意である。特に好ましいのは、ポリアミド66とその他のポリアミド、特にコポリアミド6/66との混合物である。
【0023】
さらに、トリアミン含有量が0.5質量%以下、好ましくは0.3質量%以下の半芳香族コポリアミドたとえばPA6/6TおよびPA66/6Tは特に有利であることが判明した(欧州出願公開EP−A第299444号、参照)。その他の高耐熱性ポリアミドは欧州出願公開EP−A第1994075号から知られている(PA6T/6I/MXD6)。
【0024】
トリアミン含有量の低い好ましい半芳香族コポリアミドの製造は、欧州出願公開EP−A第129195号および同第129196号に開示された方法によって行なうことが可能である。
【0025】
以下の一覧は、上述したならびに本発明の趣旨によるその他のポリアミドA)およびそれらに含まれているモノマーを含んでいるが、これに限らない。
AB型ポリマー:
PA4 ピロリドン
PA6 ε−カプロラクタム
PA7 エタノラクタム
PA8 カプリルラクタム
PA9 9−アミノペラルゴン酸
PA11 11−アミノウンデカン酸
PA12 ラウリンラクタム
AA/BB型ポリマー
PA46 テトラメチレンジアミン、アジピン酸
PA66 ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸
PA69 ヘキサメチレンジアミン、アゼライン酸
PA610 ヘキサメチレンジアミン、セバシン酸
PA612 ヘキサメチレンジアミン、デカンジカルボン酸
PA613 ヘキサメチレンジアミン、ウンデカンジカルボン酸
PA1212 1,12−ドデカンジアミン、デカンジカルボン酸
PA1313 1,13−ジアミノトリデカン、ウンデカンジカルボン酸
PA6T ヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸
PA9T 1,9−ノナンジアミン、テレフタル酸
PA MXD6 m−キシリレンジアミン、アジピン酸
AA/BB型ポリマー
PA6I ヘキサメチレンジアミン、イソフタル酸
PA6−3−T トリメチルヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸
PA6/6T (PA6およびPA6T、参照)
PA6/66 (PA6およびPA66、参照)
PA6/12 (PA6およびPA12、参照)
PA66/6/610 (PA66,PA6およびPA610、参照)
PA6I/6T (PA6IおよびPA6T、参照)
PA PACM12 ジアミノジシクロヘキシルメタン、ラウリンラクタム
PA6I/6T/PACM PA6I/6T+ジアミノジシクロヘキシルメタンに同じ
PA12/MACMI ラウリンラクタム、ジメチル−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソフタル酸
PA12/MACMT ラウリンラクタム、ジメチル−ジアミノジシクロヘキシルメタン、テレフタル酸
PA PDA−T フェニレンジアミン、テレフタル酸
モノマーとしては、環状ジアミンたとえば下記一般式
【化1】
[式中、
1は、水素またはC1−C4−アルキル基を意味し、
2は、C1−C4−アルキル基または水素を意味し、
3は、C1−C4−アルキル基または水素を意味する]のそれも考えられる。
【0026】
特に好ましいジアミンは、ビス(4−アミノシクロヘキシル)−メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)−2,2−プロパンまたはビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)−2,2−プロパンである。
【0027】
その他のジアミンとして、1,3−または1,4−シクロヘキサンジアミンまたはイソホロンジアミンを挙げておくこととする。
【0028】
上記のポリアミドの混合物も使用可能である。
【0029】
本発明による熱可塑性成形材料は、成分B)として、1〜20質量%、好ましくは1〜15質量%、なかんずく5〜10質量%のメラミンシアヌレートを含んでいる。
【0030】
本発明により(成分Bとして)適切なメラミンシアヌレートは、好ましくは等モル量のメラミン(式I)およびシアヌル酸ないしイソシアヌル酸(式IaおよびIb)から得られる反応生成物である。
【0031】
【化2】
【0032】
これはたとえば、90〜100℃にて、上記原料化合物の水溶液の反応によって得られる。市販の製品は、1.5〜7μmの平均粒度d50を有する白色粉末である。
【0033】
本発明による成形材料は、成分C)として、基礎骨格として9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレンオキシド(DOPO)をベースとした1〜30質量%、好ましくは1〜20質量パーセント、なかんずく5〜20質量%の有機リン化合物を含んでいる:
【化3】
[式中、
Rは、HまたはハロゲンまたはC原子数1〜18個の脂肪族または芳香族基を意味する]。
【0034】
R=Hを有する化合物(IIa)は国際公開WO第97/878号パンフレットの開示に基づいて得られ、Ukanol(登録商標)DOPとして市販されている。
【0035】
"基礎骨格として"なる表現は、モノマー化合物中に式IIaの少なくとも1単位が含まれていると共に、オリゴマーならびにポリマー誘導体中にも、式IIaの少なくとも1化合物が反復単位中に含まれていることを意味している。
【0036】
適切なDOPO化合物C)は以下のものである:
【化4】
【0037】
さらに、以下が好ましい:
【化5】
【0038】
上記双方の化合物は以下の反応によって得られる:
【化6】
【0039】
さらに、以下が適している:
【化7】
【0040】
【化8】
【0041】
【化9】
【0042】
【化10】
【0043】
マンニッヒ型反応は以下の誘導体を導く:
【化11】
【0044】
基RまたはR’としては、Me,Et,CH2OH,CH2CH2OH,CH2CO2H,CH2CO2Et,CH2CO2Meが好ましい。
【0045】
その他の好ましいDOPO誘導体は以下のものである:
【化12】
【0046】
【化13】
【0047】
【化14】
【0048】
【化15】
および、続いてのポリオールとのエステル交換反応、ならびに
【化16】
および、続いての(メタ)クリレートとのエステル交換反応
【化17】
【0049】
好ましい成分C)は下記の式
【化18】
または下記の式
【化19】
のヒドロキシエチルイソシアヌル酸との付加化合物、
または下記の式
【化20】
のアクリル酸エステルとDOPOからなるオリゴマー、
またはそれらの混合物である。
【0050】
成分C)の製造方法は当業者によく知られているために、これ以上詳細に述べることはしない。
【0051】
本発明による成形材料は、成分D)として、アスペクト比4〜25および算術平均繊維長(d50値)50〜250μm、好ましくは50〜150とりわけ60〜120μmを有する繊維状充填材を1〜50質量%、好ましくは5〜40質量%、なかんずく10〜35質量%含んでいる。
【0052】
平均繊維直径は、一般に、5〜25μm、好ましくは6〜20μm、なかんずく9〜18μmである。好ましいアスペクト比は、相応して、4〜20、5〜15、特に6〜13である。
【0053】
所望の繊維長は、たとえば、ボールミルまたは切断ミルでの粉砕によって調整可能であり、その際、繊維長分布が生ずる。 繊維長の低下は、平均繊維長が200μm以下であれば、粉末のようにポリマー中に混入可能な流動性あるバラ材料を生ずる。繊維長がごく僅かであるために、組み入れに際し、繊維長のさらなる短縮化は僅かに生ずるにすぎない。繊維含有量は、通例、ポリマーの灰化後に決定される。繊維長分布の決定には、一般に、灰残渣がシリコン油中に採取されて、顕微鏡で写真撮影される。撮像から、少なくとも500本の繊維で、長さが正確に測定され、算術平均値および/またはd50値(メジアン)を算定することが可能である。d50値の決定と同時に、ガラス繊維長分布のd10値およびd90値も決定することができる。
【0054】
相応して、上述した測定法から、アスペクト比を求めることができる。
【0055】
50値ないしメジアン値は平均繊維長の尺度であり、つまり、試料の50容量%はd50よりも短く、他の50%はd50よりも長い。d10およびd90は、同様に、ランダムサンプルのより短い繊維の割合ないしより長い繊維の割合を表している。
【0056】
好ましい繊維状充填材として、炭素繊維、アラミド繊維またはチタン酸カリウム繊維を挙げておくが、この場合、Eガラス繊維としてのガラス繊維が特に好ましい。これらはロービングまたは短繊維ガラスとして一般市販の形で使用可能である。
【0057】
繊維状充填材は、熱可塑性プラスチックとの適合性を向上させるため、シラン化合物で予備表面処理されていてよい。
【0058】
好適なシラン化合物は、下記一般式
(X−(CH2nk−Si−(O−Cm2m+14-k
[式中、
置換基は以下の意味を有する:
【化21】
n 2〜10まで、好ましくは3〜4までの1整数
m 1〜5まで、好ましくは1〜2までの1整数
k 1〜3までの1整数、好ましくは1]のシラン化合物である。
【0059】
好ましいシラン化合物は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノブチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシランならびに、置換基Xとしてグリシル基を含む当該シランである。
【0060】
シラン化合物は、(D)を基準として)、一般に0.01〜2質量%、好ましくは0.025〜1.0質量%、とりわけ0.05〜0.5質量%の量にて、表面コーティングに使用される。
【0061】
針状の無機充填材も適している。
【0062】
本発明の趣旨において、針状無機充填材として理解されるのは、非常に顕著な針状特性を有する無機充填材である。一例として、針状ウォラストナイトを挙げておくこととする。好ましくは、この鉱物は、L/D(長さ/直径)比8:1〜35:1、好ましくは8:1〜11:1を有する。この無機充填材は、場合により、上述したシラン化合物で予備処理されていてよい。ただし、この予備処理は絶対不可欠というわけではない。
【0063】
本発明による成形材料は、成分E)として、0〜50質量%、好ましくは30質量%までのその他の添加物を含んでいてよい。
【0064】
Dとは異なる、粒子状の充填材は、1〜50質量%、好ましくは5〜40質量%の量にて含まれていてよい。
【0065】
適切な充填材として、カオリン、焼成カオリン、ウォラストナイト、タルクおよび白墨ならびに、さらに、好ましくは0.1〜10%の量のフレーク状または針状ナノ充填材を挙げておくこととする。好ましくは、このために、ベーマイト、ベントナイト、モンモリロナイト、バーミキュライト、ヘクトライトおよびラポナイトが使用される。有機結合剤とフレーク状ナノ充填材との良好な適合性を達成するために、フレーク状ナノ充填材は従来の技術によって有機修飾される。
【0066】
本発明による成形材料は、成分E)として、0.05〜3質量%、好ましくは0.1〜1.5質量%、なかんずく0.1〜1質量%の滑剤を含んでいてよい。
【0067】
好ましいのは、アルミニウム塩、アルカリ塩、アルカリ土類塩または、10〜44個のC原子、好ましくは12〜44個のC原子を有する脂肪酸のエステルまたはアミドである。
【0068】
金属イオンは、好ましくは、アルカリ土類およびアルミニウムであり、その際、CaまたはMgが特に好ましい。
【0069】
好ましい金属塩は、ステアリン酸カルシウム、モンタン酸カルシウムならびにステアリン酸アルミニウムである。
【0070】
さまざまな塩の混合物も使用可能であり、その際、混合比は任意である。
【0071】
カルボン酸は1価または2価であってよい。例として、ペラルゴン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、マルガリン酸、ドデカン二酸、ベヘン酸および、特に好ましくは、ステアリン酸、カプリン酸ならびにモンタン酸(30〜40個のC原子を有する脂肪酸の混合物)を挙げておくこととする。
【0072】
脂肪族アルコールは1〜4価であってよい。これらのアルコールの例は、n−ブタノール、n−オクタノール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリトリットであり、その際、グリセリンおよびペンタエリトリットが好ましい。
【0073】
脂肪族アミンは1〜3価であってよい。これらの例は、ステアリルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジ(6−アミノヘキシル)アミンであり、その際、エチレンジアミンおよびヘキサメチレンジアミンが特に好ましい。好ましいエステルまたはアミドは、相応して、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、エチレンジアミンジステアレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリントリラウレート、グリセリンモノべヘネートおよびペンタエリトリットテトラステアレートである。
【0074】
さまざまなエステルまたはアミドの混合物またはアミドとのエステルも、組み合わせて使用可能であり、その際、混合比は任意である。
【0075】
本発明による成形材料は、成分E)として、銅安定剤、好ましくは、特に、ハロゲン化アルカリ好ましくはKIとなかんずく1:4の比で混合されたハロゲン化銅(I)または、場合によりハロゲン化アルカリ(たとえばKI)と混合された形のハロゲン化銅(I)−ビス−(トリフェニルホスフィン)錯体または、立体障害構造のフェノールまたはそれらの混合物を0.05〜3質量%、好ましくは0.1〜1.5質量%、とりわけ0.1〜1質量%にて含んでいてよい。
【0076】
1価の銅の塩類としては、好ましくは、酢酸銅(I)、塩化銅(I)、臭化銅(I)およびヨウ化銅(I)が考えられる。これらは、ポリアミドを基準として、銅5〜500ppm、好ましくは銅10〜250ppmの量で含まれている。銅錯体の使用は、特に、電気的特性にとって有利なことがある。
【0077】
有利な特性は、特に、銅分子がポリアミド中に分布して存在している場合に得られる。これは、定まった均一な溶液の形で、ポリアミド、1価の銅の塩およびハロゲン化アルカリを含んだ濃縮液が成形材料に添加される場合に達成される。代表的な濃縮液は、たとえば、ポリアミド79〜95質量%と、ヨウ化銅または臭化銅およびヨウ化カリウムの混合物21〜5質量%とからなっている。定まった均一な溶液中の銅の濃度は、溶液の総質量を基準として、好ましくは0.3〜3質量%、なかんずく0.5〜2質量%であり、ヨウ化銅(I)とヨウ化カリウムとのモル比は1〜11.5、好ましくは1〜5である。
【0078】
濃縮液用の適切なポリアミドは、ホモポリアミドおよびコポリアミド、特に、ポリアミド6およびポリアミド6.6である。
【0079】
立体障害構造のフェノールE)としては、基本的に、フェノール環に立体障害の原因となる少なくとも1個の原子団を持つフェノール構造を有するあらゆる化合物が適している。
【0080】
好ましくは、たとえば、下記の式
【化22】
[式中、
1およびR2は、アルキル基、置換されたアルキル基または置換されたトリアゾール基(ここで、基R1およびR2は同一または異なっていてよい)を意味し、R3は、アルキル基、置換されたアルキル基、アルコキシ基または置換されたアミノ基を意味する]の化合物が考えられる。
【0081】
挙示された類の酸化防止剤は、たとえば、ドイツ出願公開DE−A第2702661号(米国特許US−A第4360617号)に開示されている。
【0082】
さらに別の好ましい立体障害構造のフェノールのグループは、置換されたベンゼンカルボン酸、特に、置換されたベンゼンプロピオン酸から誘導される。
【0083】
このクラスの特に好ましい化合物は、下記の式
【化23】
[式中、
4、R5、R7およびR8は、互いに独立に、それ自体置換されていてよいC1−C8−アルキル基(そのうち少なくとも1個は立体障害の原因となる原子団である)を意味し、R6は、主鎖中にC−O結合を有していてもよい1〜10個のC原子を有する2価の脂肪族基を意味する]の化合物である。
【0084】
これらの式に合致する好ましい化合物は、
【化24】
(BASF SE社のIrganox(登録商標)245)
【化25】
(BASF SE社のIrganox(登録商標)259)
である。
【0085】
立体障害構造のフェノールとして、総じて、以下を例示しておくこととする:
2,2´−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピネート]、ペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェノール)−プロピオネート]、ジステアリル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、2,6,7−トリオキサ−1−ホスファビシクロ−[2.2.2]オクト−4−イル−メチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロ−シンナメート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル−3,5−ジステアリル−チオトリアジルアミン、2−(2´−ヒドロキシ−3´−ヒドロキシ−3´,5´−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−ベンゼン、4,4´−メチレン−ビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル−ジメチルアミン。
【0086】
特に効果的であると判明したために、好ましくは、2,2´−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)、1,6−ヘキサンジオール−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート(Irganox(登録商標)259)、ペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]ならびにN,N´−ヘキサメチレン−ビス−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド(Irganox(登録商標)1098)および上述したCiba Geigy社の特に好適なIrganox(登録商標)245)が使用される。
【0087】
個々にまたは混合物として使用可能な酸化防止剤E)は、成形材料A)〜E)の総質量を基準として、0.05〜3質量%、好ましくは0.1〜1.5質量%、なかんずく0.1〜1質量%の量にて含まれている。
【0088】
かなりの場合に、フェノール性ヒドロキシ基に対してオルト位に1個を越える立体障害基を持たない立体障害構造のフェノールは、特に比較的長期にわたる拡散光中での貯蔵保管時の色安定性の判定に際して、特に有利であると判明した。
【0089】
本発明による成形材料は、成分E)として、0.05〜5質量%、好ましくは0.1〜2質量%、とりわけ0.25〜1.5質量%のニグロシンを含んでいてよい。
【0090】
ニグロシンとは、一般に、ウールの染色およびプリント、絹の黒化染色、皮革、靴墨、ワニス、プラスチック、エナメル、インキ等の着色ならびに鏡検染料として使用されるさまざまなタイプ(水溶性、脂溶性、酒精可溶性)の、インジュリンに類似したブラックまたはグレーのフェナジン染料(アジン染料)のグループとして理解される。
【0091】
ニグロシンは、技術的に、ニトロベンゼン、アニリンおよび塩酸アニリンを金属鉄およびFeCl3と共に加熱することによって得られる(名称はラテン語のniger = blackに由来)。
【0092】
成分E)は、遊離塩基としてかまたは塩としても(たとえば塩酸塩)使用可能である。
【0093】
ニグロシンに関するさらなる詳細事項は、たとえば、電子百科辞典Roempp Online, Version 2.8, Thieme−Verlag Stuttgart, 2006,見出し語"Nigrosin"から知ることができる。
【0094】
その他の通例の添加物E)は、たとえば、25質量%まで、好ましくは20質量%までの量のゴム弾性ポリマーである(耐衝撃性改質剤、エラストマーまたはゴムとも称されることが多い)。
【0095】
これは、ごく一般的に、好ましくは、以下のモノマー−エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブテン、イソプレン、クロロプレン、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルおよび、アルコール成分中に1〜18個のC原子を有するアクリル酸エステルないしメタクリル酸エステル−のうちの少なくとも2つから構成されるコポリマーである。
【0096】
この種のポリマーは、たとえば、Houben−Weyl, Methoden der organischen Chemie, Bd.14/1(Georg−Thieme−Verlag, Stuttgart, 1961), p.392〜406およびC.B. Bucknallのモノグラフ、"Toughened Plastics"(Applied Science Publishers, London, 1977)に述べられている。
【0097】
以下、若干の好ましい類のこの種のエラストマーを紹介する。
【0098】
好ましい類のこの種のエラストマーは、いわゆるエチレン−プロピレン(EPM)ないしエチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)ゴムである。
【0099】
EPMゴムは、一般に、実際にもはや二重結合を有していないが、他方、EPDMゴムは100個のC原子当たり1〜20個の二重結合を有し得る。
【0100】
EPDMゴムのジエン・モノマーとして、たとえば、共役ジエンたとえばイソプレンおよびブタジエン、5〜25個のC原子を有する非共役ジエンたとえばペンタ−1,4−ジエン、ヘキサ−1,4−ジエン、ヘキサ−1,5−ジエン、2,5−ジメチルヘキサ−1,5−ジエンおよびオクタ−1,4−ジエン、環状ジエンたとえばシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエンおよびジシクロペンタジエンならびにアルケニルノルボルネンたとえば5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、2−メタリル−5−ノルボルネン、2−イソプロペニル−5−ノルボルネンおよびトリシクロジエンたとえば3−メチル−トリシクロ(5.2.1.0.2.6)−3,8−デカジエンまたはそれらの混合物を挙げておくこととする。ヘキサ−1,5−ジエン、5−エチリデンノルボルネンおよびジシクロペンタジエンが好ましい。EPDMゴムのジエン含有量は、ゴムの総質量を基準として、好ましくは0.5〜50質量%、とりわけ1〜8質量%である。
【0101】
EPMないしEPDMゴムは、好ましくは、反応性カルボン酸またはそれらの誘導体とグラフトされていてもよい。ここで、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体たとえばグリシジル(メタ)クリレート、ならびに無水マレイン酸を挙げておくこととする。
【0102】
好ましいゴムのさらに別のグループは、エチレンとアクリル酸および/またはメタクリル酸および/またはこれらの酸のエステルとのコポリマーである。さらに、これらのゴムはなお、ジカルボン酸たとえばマレイン酸およびフマル酸またはこれらの酸の誘導体たとえばエステルおよび無水物、および/またはエポキシ基含有モノマーを含んでいてよい。これらのジカルボン酸誘導体ないしエポキシ基含有モノマーは、好ましくは、ジカルボン酸基ないしエポキシ基を含んだ下記の一般式IまたはIIまたはIIIまたはIV
【化26】
[式中、
1〜R9は水素または1〜6個のC原子を有するアルキル基を表し、mは0〜20までの1整数であり、gは0〜10までの1整数であり、pは0〜5までの1整数である]のモノマーの添加によってモノマー混合物とされてゴムに組み込まれる。
【0103】
好ましくは、R1〜R9は水素を意味し、その際、mは0または1を表し、gは1を表している。該当する化合物は、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、アリルグリシジルエーテルおよびビニルグリシジルエーテルである。
【0104】
式I、IIおよびIVの好ましい化合物は、マレイン酸、無水マレイン酸および、アクリル酸および/またはメタクリル酸のエポキシ基含有エステルたとえばグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートおよび、第三アルコールとのエステルたとえばt−ブチルアクリレートである。後者は遊離カルボキシル基を有していないとはいえ、その挙動は遊離酸に近く、そのため、潜カルボキシル基を有するモノマーと称される。
【0105】
コポリマーは、50〜98質量%のエチレン、0.1〜20質量%のエポキシ基含有モノマーおよび/またはメタクリル酸および/または酸無水物基含有モノマーならびに残余量の(メタ)クリル酸エステルから構成されているのが有利である。
【0106】
特に好ましいのは、
50〜98質量%、特に55〜95質量%のエチレン、
0.1〜40質量%、特に0.3〜20質量%のグリシジルアクリレートおよび/または
グリシジルメタクリレート、(メタ)クリル酸および/または無水マレイン酸、および
1〜45質量%、特に5〜40質量%のn−ブチルアクリレートおよび/または2−エチルヘキシルアクリレート
からなるコポリマーである。
【0107】
アクリル酸および/またはメタクリル酸のその他の好ましいエステルは、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステルおよびi−ないしt−ブチルエステルである。
【0108】
その他に、ビニルエステルおよびビニルエーテルもコポリマーとして使用可能である。
【0109】
上述したエチレンコポリマーは、それ自体として公知の方法で製造可能であり、好ましくは、高圧および高温下でのランダム共重合により製造可能である。該当する方法は一般に公知である。
【0110】
たとえば、Blackleyのモノグラフ"Emulsion Polymerization"にその製造が述べられているエマルションポリマーも好ましいエラストマーである。使用可能な乳化剤および触媒はそれ自体として公知である。
【0111】
基本的に、均質構造のエラストマーが使用可能であるが、シェル構造のエラストマーも使用可能である。シェル状構造は個々のモノマーの添加順序によって決定される;ポリマーの形態もこの添加順序によって影響される。
【0112】
ここで、エラストマーゴムの製造用モノマーとして、アクリレートたとえばn−ブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレート、当該メタクリレート、ブタジエンおよびイソプレンならびにそれらの混合物を、もっぱら代表的なものとして挙げておくこととする。これらのモノマーは、その他のモノマーたとえばスチレン、アクリロニトリル、ビニルエーテルおよびその他のアクリレートまたはメタクリレートたとえばメチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレートおよびプロピルアクリレートと共重合可能である。
【0113】
エラストマーの軟相またはゴム相(0℃以下のガラス転移温度を有する)は、コア、外皮または中間シェル(2層以上のシェル構造を有する場合)を表すことができる;多層シェル型エラストマーの場合、複数のシェルがゴム相で構成されていてもよい。
【0114】
ゴム相の他に、さらに1または複数のハード成分(20℃以上のガラス転移温度を有する)がエラストマーの構造に関与している場合には、これらは、一般に、主モノマーとしてのスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルたとえばメチルアクリレート、エチルアクリレートおよびメチルメタクリレートの重合によって製造される。その他に、この場合にも、僅かな割合のその他のコモノマーが使用可能である。
【0115】
若干のケースにおいて、表面に反応基を有するエマルションポリマーを使用するのが有利であることが判明した。この種の基は、たとえば、エポキシ基、カルボキシル基、潜カルボキシル基、アミノ基またはアミド基ならびに、下記の一般式
【化27】
[式中、
置換基は以下の意味を有していてよい:
10 水素またはC1〜C4−アルキル基、
11 水素、C1〜C8−アルキル基またはアリール基とくにフェニル基、
12 水素、C1−C10−アルキル基、C6−C12−アルキル基または−OR13
13 場合によりO含有基またはN含有基で置換されていてよいC1−C8−アルキルまたはC6−C12−アリール基、
X 1化学結合、C1〜C10−アルキレン基またはC6−C12−アリーレン基
または
【化28】
Y O−ZまたはNH−Zおよび
Z C1−C10−アルキレン基またはC6−C12−アリーレン基]のモノマーの共同使用によって導入可能な官能基である。
【0116】
欧州出願公開EP−A第208187号に開示されたグラフトモノマーも表面の反応基の導入用に適している。
【0117】
その他の例として、さらに、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびアクリル酸またはメタクリル酸の置換されたエステルたとえば(N−t−ブチルアミノ)−エチルメタクリレート、(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリレート、(N,N−ジメチルアミノ)−メチルアクリレートおよび(N,N−ジエチルアミノ)エチルアクリレートを挙げておくこととする。
【0118】
さらに、ゴム相の粒子は架橋されていてもよい。架橋剤として機能するモノマーは、たとえば、ブタ−1,3−ジエン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレートおよびジヒドロジシクロペンタジエニルアクリレートならびに欧州出願公開EP−A第50265号開示の化合物である。
【0119】
さらに、いわゆるグラフト架橋用モノマー(graft−linking monomers)、つまり、重合時に異なった速度で反応する2個またはそれ以上の重合性二重結合を有するモノマーも使用可能である。好ましくは、少なくとも一方の反応基はその他のモノマーとほぼ同じ速度で重合するが、他方、他方の反応基(または複数の反応基)はたとえばさらにずっと緩慢に重合するような類の化合物が使用される。重合速度の相違はゴム中に一定の割合の不飽和二重結合をもたらす。続いて、こうしたゴムにさらに別の相がグラフトされると、ゴム中に存在する二重結合は少なくとも部分的にグラフトモノマーと反応して化学結合を形成する。つまり、グラフトされた相は、少なくとも部分的に、化学結合を経てグラフト基材と結合されている。
【0120】
この種のグラフト架橋用モノマーの例はアリル基含有モノマーであり、特に、エチレン性不飽和カルボン酸のアリルエステルたとえばアリルアクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルイタコネートまたはこれらのカルボン酸の当該モノアリル化合物である。これら以外にも、多数のその他の適切なグラフト架橋用モノマーが存在する;それらの詳細については、たとえば、米国特許US−PS第4148846号を参照されたい。
【0121】
一般に、耐衝撃性改質されたポリマー中のこれらの架橋用モノマーの割合は、耐衝撃性改質されたポリマーを基準として、5質量%まで、好ましくは3質量%以下である。
【0122】
以下に、若干の好ましいエマルションポリマーを挙げておくこととする。この場合、先ず、以下の構造を有する、コアと少なくとも1外側シェルとを有するグラフトポリマーを挙げることができる:
【表1】
【0123】
多層シェル構造を有するグラフトポリマーに代えて、ブタ−1,3−ジエン、イソプレンおよびn−ブチルアクリレートまたはそれらの混合物からなる均質な、つまり、単層シェル型エラストマーも使用可能である。これらの製品も、架橋用モノマーまたは反応基を有するモノマーの共同使用によって製造可能である。
【0124】
好ましいエマルションポリマーの例は、n−ブチルアクリレート/(メタ)クリル酸−コポリマー、n−ブチルアクリレート/グリシジルアクリレート−コポリマーまたはn−ブチルアクリレート/グリシジルメタクリレート−コポリマー、n−ブチルアクリレートからなるかまたはブタジエン・ベースのインナーコアと上記コポリマーからなる外皮とを有するグラフトポリマーおよび、反応基を供するコモノマーとエチレンとのコポリマーである。
【0125】
上述したエラストマーは、その他の通例の方法たとえば懸濁重合によっても製造可能である。
【0126】
ドイツ出願公開DE−A第3725576号、欧州出願公開EP−A第235690号、ドイツ出願公開DE−A第3800603号および欧州出願公開EP−A第319290号に開示されたシリコンゴムも同じく好ましい。
【0127】
言うまでもなく、上記のタイプのゴムの混合物も使用可能である。
【0128】
本発明による熱可塑性成形材料は、成分E)として、通例の加工助剤たとえば安定剤、酸化遅延剤、熱分解防止剤および紫外線分解防止剤、滑剤および離型剤、着色剤たとえば染料および顔料、成核剤、軟化剤等を含んでいてよい。
【0129】
酸化遅延剤および熱安定剤の例として、熱可塑性成形材料の質量を基準として1質量%までの濃度にて使用される、立体障害構造のフェノールおよび/またはホスフィットおよびアミン(たとえばTAD)、ヒドロキノン、芳香族第二アミンたとえばジフェニルアミン、これらのグループのさまざまな置換された代表物およびそれらの混合物を挙げておく。
【0130】
一般に、成形材料を基準として、2質量%までの量にて使用されるUV安定剤として、さまざまな置換されたレゾルシン、サリチレート、ベンゾトリアゾールおよびベンゾフェノンを挙げておくこととする。
【0131】
無機顔料たとえば二酸化チタン、ウルトラマリンブルー、酸化鉄およびスス、さらに有機顔料たとえばフタロシアニン、キナクリドン、ペリレンならびに染料たとえばアントラキノンを着色剤として添加することが可能である。
【0132】
成核剤としては、フェニルホスフィン酸ナトリウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素ならびに好ましくはタルクが使用可能である。
【0133】
本発明による熱可塑性成形材料は、それ自体として公知の方法で、原料成分を通例の混合装置たとえばスクリュー押出し機、ブラベンダーミルまたはバンベリーミルで混合し、続いて、押し出すことによって製造可能である。押出し後、押出し物は冷やされて、粉砕される。また、個々の成分を前以て混合し、次いで、残りの原材料を個々におよび/または同じく混合して加えることも可能である。混合温度は、一般に、230〜320℃である。
【0134】
さらに別の好ましい作業方法によれば、成分B),C)およびD)ならびに場合によりE)は、プレポリマーと混合され、調整されて、造粒される。得られた粒質物は固相にて、引き続き、不活性ガス下で連続式または不連続式に成分A)の融点以下の温度で、所望の粘度になるまで縮合される。
【0135】
本発明による熱可塑性成形材料は、優れた耐燃性および卓越した耐グローワイヤ性によって際立っている。
【0136】
この成形材料は、あらゆる種類の繊維、シートおよび成形品の製造に適している。以下に若干の例を挙げておく:差込み継手、プラグ、差込み部品、ワイヤハーネス部品、立体回路部品、立体回路部品素子、三次元射出成形回路部品、電気接続素子およびメカトロニクス部品。
【0137】
本発明により上記の熱可塑性成形材料から製造される成形品または半製品は、たとえば、自動車工業、電気工業、電子工業、電気通信工業、情報技術工業、娯楽用機器工業、コンピュータ工業、車両およびその他の移動手段、船舶、宇宙船、家庭、オフィス設備、スポーツ、医療ならびに、一般に、高い防火性能が求められる対象物および建物部分に使用することが可能である。
【0138】
調理および家庭用分野では、調理器具たとえば電気フライ器用部材、電気アイロン、ボタンの製造に、流動性の向上したポリアミドの使用が可能であり、ガーデニングおよびレジャー分野でのその使用も可能である。
【0139】
実施例
以下の成分が使用された:
成分A/1:ISO307に準拠し、25℃にて、96質量%硫酸中の0.5質量%溶液として測定して、125ml/gの粘度数VZを有するポリアミド6(BASF SE社のUltramid(登録商標)B24が使用された)。
【0140】
成分A/2:ISO307に準拠し、25℃にて、96質量%硫酸中の0.5質量%溶液として測定して、150ml/gの粘度数VZを有するポリアミド6(BASF SE社のUltramid(登録商標)B27が使用された)。
【0141】
成分A/3:ISO307に準拠し、25℃にて、96質量%硫酸中の0.5質量%溶液として測定して、145ml/gの粘度数VZを有する、9:1のPA66とPA6とからなるコポリアミド66/6。
【0142】
成分B:〜2.6μmの平均粒度d50を有するメラミンシアヌレート(Melapur(登録商標)MC 25 ex、BASF SE社)。
【0143】
成分C:以下からなるオリゴ縮合物
【化29】
UKANOL(登録商標)−FR50/1(Schill & Seilacher市販品)。
名称:ポリ[オキシ−1,2−エタンジイルオキシ[[(6−オキシド−6H−ジベンゾ[c,e][1,2]オキサホスホリン−6−イル)メチル]−1,4−ジオキソ−1,4−ブタンジイル]]、CAS−No. 68816−19−3。製造は、たとえば、国際公開WO第2009/109347号、ドイツ出願公開DE−A第2646218号および日本特許JP第2000/336132号に開示されている。
【0144】
成分D/1:ポリアミド用標準ガラス短繊維、L=4.0mm,D=10μm L/D:400
成分D/2:ガラス短繊維、平均長さ(d50)〜210μm、D=10μm L/D:21.0
成分D/3:ガラス短繊維、平均長さ(d50)〜150μm、直径=14μm L/D:10.7
成分E/1:
Irganox(登録商標)1098、BASF SE社、すべての配合物中で0.3%。3.3´−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−N,N´−ヘキサメチレンジプロピオンアミド(CAS−No. 23128−74−7)。
【0145】
成分E/2:
それぞれ0.25質量%ステアリン酸カルシウム(CAS 1592−23−0)。
【0146】
成分E/3:
それぞれ0.12質量%N,N´−エチレンビスステアリルアミド。
【0147】
成分E/4:
それぞれ2.53質量%二酸化チタン。
成形材料の製造
上記の個々の成分が、二軸押出し機ZSK 26により、装入量20kg/h、約250〜270℃のフラットな温度勾配にて混合され、ストランドとされ、造粒可能となるまで冷やされて、造粒された。
【0148】
第1表に挙げた検査用の被験体が、Arburg 420C型射出機で、約250〜290℃の溶融温度、約80℃の金型温度にて射出された。
【0149】
成形材料の耐燃性は、一方で、UL94法(Underwriters Laboratories Inc. Standard of Safety,"Tests for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances", p.14〜p.18 Northbrook 1998)に準拠して求められた。
【0150】
耐グローワイヤ性は、グローワイヤ燃焼性試験GWFI(Glow−Wire−Flammability−Index)(60695−2−12に準拠)によって決定された。GWFI試験に際し、3個の被験体(たとえば、寸法60×60×1.0mmの板またはディスク)につき、グローワイヤを用い550〜960℃の温度にて、連続した3回の試験においてグローワイヤが押し付けられている間も着火に至らない最高温度が判定される。被験体は、30秒間にわたって、1ニュートンの力で、赤熱したグローワイヤに押し付けられる。グローワイヤの貫入度は7mmに制限されている。試験は、被験体がグローワイヤを引き離した後30秒以内に消炎し、被験体の下に置かれた薄葉紙が着火しない場合に、合格したと見なされる。
【0151】
引張り試験はISO527に準拠して実施され、耐衝撃性試験はISO179/1eUに準拠して実施された。MVRは、275℃、荷重5kgにて、ISO1133に準拠して求められた。
【0152】
成形材料の組成および測定結果は以下の表に記載したとおりである。
【0153】
【表2】