(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
該板状物は、サファイア基板の表面に光デバイス層が積層され格子状に形成された複数の分割予定ラインによって区画された複数の領域に光デバイスが形成された光デバイスウエーハである、請求項1記載の板状物の加工方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、サファイア基板のように内部に結晶面(R面)を有した板状物に内部に改質層を形成して外力を付与すると、改質層の端部から表面に伸びるクラックが結晶面に倣って斜めに形成され、分割予定ラインから逸脱して光デバイス等の品質を低下させたり破損させるという問題がある。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、板状物の内部に形成される改質層の端部から表面に伸びるクラックが分割予定ラインの中央部に到達するようにした板状物の加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、表面に分割予定ラインが形成された板状物を分割予定ラインに沿って分割する板状物の加工方法であって、
板状物の表面側をレーザー加工装置の被加工物保持手段に保持する板状物保持工程と、
被加工物保持手段に保持された板状物の裏面側から内部に集光点を位置付けて分割ラインに沿ってレーザー光線を照射し、板状物の内部に分割ラインに沿って改質層
の表面側端部と表面までの距離が(H)となるように改質層を形成する改質層形成工程と、
該改質層形成工程が実施された板状物の分割ラインに沿って外力を付与し、板状物を変質層が形成された分割予定ラインに沿って破断する破断工程と、を含み、
該改質層形成工程を実施する前に、
被加工物保持手段に保持された板状物における分割予定ラインと平行な任意の検出位置に裏面側から裏面に近い内部に集光点を位置付けてレーザー光線を照射し、板状物の内部に検出用改質層を形成するとともに該検出用改質層から裏面に伸びる検出用クラックを形成する検出用クラック形成工程と、
該検出用クラックにおける板状物の裏面に対する垂線との成す角度(α)を検出するクラック角度検出工程と、を実施し、
該改質層形成工程を実施する際に
は、H×tanαによって
改質層と改質層から表面に
達するクラックとの
割り出し送り方向におけるズレ量(Δy)を求め、該ズレ量(Δy)分だけ
該分割予定ラインの中心から割り出し送り方向にずらせて改質層を形成する、
ことを特徴とする板状物の加工方法が提供される。
【0008】
上記板状物は、サファイア基板の表面に光デバイス層が積層され格子状に形成された複数の分割予定ラインによって区画された複数の領域に光デバイスが形成された光デバイスウエーハである。
【発明の効果】
【0009】
本発明による板状物の加工方法においては、板状物の裏面側から内部に集光点を位置付けて分割ラインに沿ってレーザー光線を照射し、板状物の内部に分割ラインに沿って改質層
の表面側端部と表面までの距離が(H)となるように改質層を形成する改質層形成工程を実施する前に、被加工物保持手段に保持された板状物における分割予定ラインと平行な任意の検出位置に裏面側から裏面に近い内部に集光点を位置付けてレーザー光線を照射し、板状物の内部に検出用改質層を形成するとともに該検出用改質層から裏面に伸びる検出用クラックを形成する検出用クラック形成工程と、該検出用クラックにおける板状物の裏面に対する垂線との成す角度(α)を検出するクラック角度検出工程とを実施し、該改質層形成工程を実施する際に
は、H×tanαによって
改質層と改質層から表面に
達するクラックとの
割り出し送り方向におけるズレ量(Δy)を求め、該ズレ量(Δy)分だけ
該分割予定ラインの中心から割り出し送り方向にずらせて改質層を形成するので、破断工程において改質層が破断起点となって板状物の表面に向けて発生するクラックの先端は分割予定ラインの中心部に達する。従って、板状物が光デバイスウエーハの場合、クラックが分割予定ラインから逸脱して光デバイスに達することがないので、光デバイスの品質低下ないし破損を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明による板状物の加工方法の好適な実施形態について、添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0012】
図1には、本発明による板状物の加工方法を実施するためのレーザー加工装置の斜視図が示されている。
図1に示すレーザー加工装置1は、静止基台2と、該静止基台2に矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動可能に配設され被加工物を保持するチャックテーブル機構3と、静止基台2にX軸方向と直交する矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット支持機構4と、該レーザー光線照射ユニット支持機構4に矢印Zで示す集光点位置調整方向(Z軸方向)に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット5とを具備している。
【0013】
上記チャックテーブル機構3は、静止基台2上にX軸方向に沿って平行に配設された一対の案内レール31、31と、該案内レール31、31上にX軸方向に移動可能に配設された第一の滑動ブロック32と、該第1の滑動ブロック32上にY軸方向に移動可能に配設された第2の滑動ブロック33と、該第2の滑動ブロック33上に円筒部材34によって支持されたカバーテーブル35と、被加工物保持手段としてのチャックテーブル36を具備している。このチャックテーブル36は多孔性材料から形成された吸着チャック361を具備しており、吸着チャック361上に被加工物である例えば円盤状の半導体ウエーハを図示しない吸引手段によって保持するようになっている。このように構成されたチャックテーブル36は、円筒部材34内に配設された図示しないパルスモータによって回転せしめられる。なお、チャックテーブル36には、後述する環状のフレームを固定するためのクランプ362が配設されている。
【0014】
上記第1の滑動ブロック32は、その下面に上記一対の案内レール31、31と嵌合する一対の被案内溝321、321が設けられているとともに、その上面にY軸方向に沿って平行に形成された一対の案内レール322、322が設けられている。このように構成された第1の滑動ブロック32は、被案内溝321、321が一対の案内レール31、31に嵌合することにより、一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第1の滑動ブロック32を一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動させるための加工送り手段37を具備している。この加工送り手段37は、上記一対の案内レール31と31の間に平行に配設された雄ネジロッド371と、該雄ネジロッド371を回転駆動するためのパルスモータ372等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド371は、その一端が上記静止基台2に固定された軸受ブロック373に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ372の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド371は、第1の滑動ブロック32の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ372によって雄ネジロッド371を正転および逆転駆動することにより、第一の滑動ブロック32は案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動せしめられる。
【0015】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置1は、上記チャックテーブル36の加工送り量即ちX軸方向位置を検出するためのX軸方向位置検出手段374を備えている。X軸方向位置検出手段374は、案内レール31に沿って配設されたリニアスケール374aと、第1の滑動ブロック32に配設され第1の滑動ブロック32とともにリニアスケール374aに沿って移動する読み取りヘッド374bとからなっている。このX軸方向位置検出手段374の読み取りヘッド374bは、図示の実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の加工送り量即ちX軸方向の位置を検出する。なお、上記加工送り手段37の駆動源としてパルスモータ372を用いた場合には、パルスモータ372に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル36の加工送り量即ちX軸方向の位置を検出することもできる。また、上記加工送り手段37の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の加工送り量即ちX軸方向の位置を検出することもできる。
【0016】
上記第2の滑動ブロック33は、その下面に上記第1の滑動ブロック32の上面に設けられた一対の案内レール322、322と嵌合する一対の被案内溝331、331が設けられており、この被案内溝331、331を一対の案内レール322、322に嵌合することにより、Y軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第2の滑動ブロック33を第1の滑動ブロック32に設けられた一対の案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動させるための第1の割り出し送り手段38を具備している。この第1の割り出し送り手段38は、上記一対の案内レール322と322の間に平行に配設された雄ネジロッド381と、該雄ネジロッド381を回転駆動するためのパルスモータ382等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド381は、その一端が上記第1の滑動ブロック32の上面に固定された軸受ブロック383に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ382の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド381は、第2の滑動ブロック33の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ382によって雄ネジロッド381を正転および逆転駆動することにより、第2の滑動ブロック33は案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0017】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記第2の滑動ブロック33の割り出し加工送り量即ちY軸方向位置を検出するためのY軸方向位置検出手段384を備えている。このY軸方向位置検出手段384は、案内レール322に沿って配設されたリニアスケール384aと、第2の滑動ブロック33に配設され第2の滑動ブロック33とともにリニアスケール384aに沿って移動する読み取りヘッド384bとからなっている。このY軸方向位置検出手段384の読み取りヘッド384bは、図示の実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の割り出し送り量即ちY軸方向の位置を検出する。なお、上記第1の割り出し送り手段38の駆動源としてパルスモータ382を用いた場合には、パルスモータ382に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル36の割り出し送り量即ちY軸方向の位置を検出することもできる。また、上記第1の割り出し送り手段38の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の割り出し送り量即ちY軸方向の位置を検出することもできる。
【0018】
上記レーザー光線照射ユニット支持機構4は、静止基台2上にY軸方向に沿って平行に配設された一対の案内レール41、41と、該案内レール41、41上に矢印Yで示す方向に移動可能に配設された可動支持基台42を具備している。この可動支持基台42は、案内レール41、41上に移動可能に配設された移動支持部421と、該移動支持部421に取り付けられた装着部422とからなっている。装着部422は、一側面にZ軸方向に延びる一対の案内レール423、423が平行に設けられている。図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット支持機構4は、可動支持基台42を一対の案内レール41、41に沿ってY軸方向に移動させるための第2の割り出し送り手段43を具備している。この第2の割り出し送り手段43は、上記一対の案内レール41、41の間に平行に配設された雄ネジロッド431と、該雄ネジロッド431を回転駆動するためのパルスモータ432等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド431は、その一端が上記静止基台2に固定された図示しない軸受ブロックに回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ432の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド431は、可動支持基台42を構成する移動支持部421の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された雌ネジ穴に螺合されている。このため、パルスモータ432によって雄ネジロッド431を正転および逆転駆動することにより、可動支持基台42は案内レール41、41に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0019】
図示の実施形態のおけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51と、該ユニットホルダ51に取り付けられたレーザー光線照射手段52を具備している。ユニットホルダ51は、上記装着部422に設けられた一対の案内レール423、423に摺動可能に嵌合する一対の被案内溝511、511が設けられており、この被案内溝511、511を上記案内レール423、423に嵌合することにより、Z軸方向に移動可能に支持される。
【0020】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51を一対の案内レール423、423に沿ってZ軸方向に移動させるための集光点位置調整手段53を具備している。集光点位置調整手段53は、一対の案内レール423、423の間に配設された雄ネジロッド(図示せず)と、該雄ネジロッドを回転駆動するためのパルスモータ532等の駆動源を含んでおり、パルスモータ532によって図示しない雄ネジロッドを正転および逆転駆動することにより、ユニットホルダ51およびレーザー光線照射手段52を案内レール423、423に沿ってZ軸方向に移動せしめる。なお、図示の実施形態においてはパルスモータ532を正転駆動することによりレーザー光線照射手段52を上方に移動し、パルスモータ532を逆転駆動することによりレーザー光線照射手段52を下方に移動するようになっている。
【0021】
上記レーザー光線照射手段52は、実質上水平に配置された円筒形状のケーシング52
1を含んでいる。ケーシング521内には図示しないYAGレーザー発振器或いはYVO4レーザー発振器からなるパルスレーザー光線発振器や繰り返し周波数設定手段を備えたパルスレーザー光線発振手段が配設されている。上記ケーシング521の先端部には、パルスレーザー光線発振手段から発振されたパルスレーザー光線を集光してチャックテーブル36に保持された被加工物に照射するための集光器522が装着されている。
【0022】
上記レーザー光線照射手段52を構成するケーシング521の先端部には、レーザー光線照射手段52によってレーザー加工すべき加工領域を検出する撮像手段6が配設されている。この撮像手段6は、可視光線によって撮像する通常の撮像素子(CCD)の外に、被加工物に赤外線を照射する赤外線照明手段と、該赤外線照明手段によって照射された赤外線を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を後述する制御手段に送る。
【0023】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置1は、
図2に示す制御手段8を具備している。制御手段8はコンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)81と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)82と、後述する制御マップや被加工物の設計値のデータや演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)83と、カウンター84と、入力インターフェース85および出力インターフェース86とを備えている。制御手段8の入力インターフェース85には、上記X軸方向位置検出手段374、Y軸方向位置検出手段384および撮像手段6等からの検出信号が入力される。そして、制御手段8の出力インターフェース86からは、上記パルスモータ372、パルスモータ382、パルスモータ432、パルスモータ532、レーザー光線照射手段52等に制御信号を出力する。
【0024】
次に、上述したレーザー加工装置1を用いて実施する板状物の加工方法について説明する。
図3の(a)および(b)には、本発明によるサファイア基板の加工方法によって加工される光デバイスウエーハの斜視図および要部を拡大して示す断面図が示されている。
図3の(a)および(b)に示す光デバイスウエーハ10は、例えば直径が150mm、厚みが100μmのサファイア基板11の表面11aにn型窒化物半導体層121およびp型窒化物半導体層122とからなる光デバイス層(エピ層)12が例えば5μmの厚みで積層されている。そして、光デバイス層(エピ層)12が格子状に形成された複数の分割予定ライン13によって区画された複数の領域に発光ダイオード、レーザーダイオード等の光デバイス14が形成されている。
【0025】
以下、レーザー加工装置1を用いて光デバイスウエーハ10の内部に分割予定ライン13に沿って破断の起点となる改質層を形成する加工方法について説明する。
先ず、
図4に示すように環状のフレームFに装着されたダイシングテープTの表面に光デバイスウエーハ10の表面10aを貼着する(ウエーハ貼着工程)。従って、ダイシングテープTの表面に貼着された光デバイスウエーハ10は、サファイア基板11の裏面11bが上側となる。
【0026】
上述したウエーハ貼着工程を実施したならば、
図1に示すレーザー加工装置1のチャックテーブル36上に光デバイスウエーハ10のダイシングテープT側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、ダイシングテープTを介して光デバイスウエーハ10をチャックテーブル36上に吸引保持する(ウエーハ保持工程)。従って、チャックテーブル36に保持された光デバイスウエーハ10は、サファイア基板11の裏面11bが上側となる。
【0027】
上述したように光デバイスウエーハ10を吸引保持したチャックテーブル36は、加工送り手段37によって撮像手段6の直下に位置付けられる。チャックテーブル36が撮像手段6の直下に位置付けられると、撮像手段6および制御手段8によって光デバイスウエーハ10のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段6および制御手段8は、光デバイスウエーハ10の所定方向に形成されている分割予定ライン13と、分割予定ライン13に沿ってレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段52の集光器522との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、レーザー光線照射位置のアライメントを遂行する(アライメント工程)。また、光デバイスウエーハ10に形成されている上記所定方向に対して直交する方向に延びる分割予定ライン13に対しても、同様にアライメント工程を実施する。
【0028】
上述したアライメント工程を実施したならば、加工送り手段37および第1の割り出し送り手段38を作動してチャックテーブル36を移動し、チャックテーブル36に保持された板状物としての光デバイスウエーハ10における分割予定ライン13と平行な任意の検出位置(
図4においてAで示す位置)を
図5の(a)に示すように集光器522の直下に位置付ける。そして、集光点位置調整手段53を作動し、集光器522から照射されるレーザー光線の集光点Pを光デバイスウエーハ10を構成するサファイア基板11の裏面11b(上面)から所定量だけ下方位置に位置付ける。この集光点Pの位置は、レーザー光線を照射することによって形成される改質層の裏面側端(上端)が裏面(上面)から例えば10μm下方位置になるように設定する。即ち、レーザー光線を照射することによって形成される改質層の厚みが例えば40μmである場合には、集光点Pの上下にそれぞれ20μmの改質層が形成されるので、集光点Pがサファイア基板11の裏面11b(上面)から30μm下方位置になるように集光器522を位置付ければよい。次に、レーザー光線照射手段52を作動して集光器522からパルスレーザー光線を照射するとともに、チャックテーブル36を
図5の(a)において矢印X1で示す方向に例えば10mm程度移動する。この結果、
図5の(b)に示すように光デバイスウエーハ10を構成するサファイア基板11の内部には裏面11b(上面)から例えば10μm下方位置より下側に厚みが例えば40μmの検出用改質層111が形成される。このように、光デバイスウエーハ10を構成するサファイア基板11の内部には裏面11b(上面)から例えば10μm程度残して検出用改質層111を形成すると、
図5の(b)に示すように検出用改質層111の裏面側端(上端)から裏面11b(上面)に伸びるクラック112(検出用クラック)が形成される(検出用クラック形成工程)。このクラック112(検出用クラック)は、サファイア基板11の結晶面(R面)に倣って斜めに形成される。
【0029】
上述した検出用クラック形成工程を実施したならば、加工送り手段37を作動してチャックテーブル36を移動し、光デバイスウエーハ10を構成するサファイア基板11におけるレーザー光線を照射した検出位置(A)を撮像手段6の直下に位置付ける。そして、撮像手段6によって検出位置(A)を撮像し、撮像信号を制御手段8に送る。制御手段8は、撮像手段6からの撮像信号に基づいてクラック112(検出用クラック)の基点(改質層111の裏面側端(上端))から先端位置までのY軸方向変位(y1)を求める。そして、制御手段8は、Y軸方向変位(y1)と改質層111の裏面側端(上端)からサファイア基板11の裏面11b(上面)までの高さから(h1)からクラック112(検出用クラック)におけるサファイア基板11の裏面11b(上面)に対する垂線との成す角度(α)を求める(tanα=y1/h1)(クラック角度検出工程)。
【0030】
以上のようにしてクラック角度検出工程を実施したならば、チャックテーブル36に保持された光デバイスウエーハ10を構成するサファイア基板11の内部に分割予定ライン13に沿って改質層を形成する改質層形成工程を実施する。
この改質層形成工程において改質層を分割予定ライン13の中心に沿って形成すると、改質層を破断起点として光デバイスウエーハ10を破断した際に、改質層の端部から表面に伸びるクラックが結晶面に倣って斜めに形成され、分割予定ライン13から逸脱して光デバイス等の品質を低下させたり破損させるという問題がある。そこで、本発明においては、改質層を破断起点として光デバイスウエーハ10を破断した際に、改質層の端部から表面に伸びるクラックが分割予定ライン13の中心に達するように、改質層を分割予定ライン13の中心に沿った位置から所定量変位した位置に形成する。即ち、制御手段8は、光デバイスウエーハ10を構成するサファイア基板11の内部に分割予定ライン13に沿って形成する改質層の表面11a側(下面)端部と表面11aまでの距離を(H)とした場合、上記クラック角度検出工程によって求めたクラック112(検出用クラック)におけるサファイア基板11の裏面11b(上面)に対する垂線との成す角度(α)とによって改質層から表面11aに伸びるクラックとのズレ量(Δy)を求める(Δy=H×tanα)。
【0031】
上述したようにH×tanαによって改質層から表面に伸びるクラックとのズレ量(Δy)を求めたならば、
図6の(a)で示すようにチャックテーブル36を集光器522が位置するレーザー光線照射領域に移動し、光デバイスウエーハ10に形成された所定の分割予定ライン13の一端(
図6の(a)において左端)を集光器522の直下に位置付けるとともに、チャックテーブル36を上記ズレ量(Δy)だけ
図6の(a)において紙面に垂直な方向に移動する。そして、
図6の(b)で示すように集光器522を通して照射されるパルスレーザー光線によって形成される改質層の表面11a側(下面)端部が表面11aから(H)の位置となるように集光点Pを位置付ける。例えばパルスレーザー光線によって形成される改質層の厚みが40μmである場合には、集光点Pが光デバイスウエーハ10を構成するサファイア基板11の表面11aから例えば(H+20μm)になるように集光点位置調整手段53を作動して集光器522を位置付ける。
【0032】
次に、制御手段8は、レーザー光線照射手段52を作動して集光器522からパルスレーザー光線を照射するとともに、加工送り手段37を作動してチャックテーブル36を
図6の(a)において矢印X1で示す方向に所定の加工送り速度で移動せしめる(改質層形成工程)。そして、
図6の(c)で示すように集光器522から照射されるパルスレーザー光線の照射位置が分割予定ライン13の他端(
図6の(c)において右端)に達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともに、チャックテーブル36の移動を停止する。この結果、光デバイスウエーハ10を構成するサファイア基板11には、
図6の(c)に示すように所定の分割予定ライン13に沿って改質層113が形成される。この改質層113は、
図6の(d)に示すように分割予定ライン13の中心からY軸方向にズレ量(Δy)だけズレた位置においてサファイア基板11の表面11aから(H)の位置より裏面11b側(上側)に40μmの厚みで形成される。
【0033】
なお、上記改質層形成工程における加工条件は、例えば次のように設定されている。
波長 :532nm
平均出力 :0.15
繰り返し周波数 :45kHz
集光スポット径 :φ1μm
加工送り速度 :360mm/秒
【0034】
上述したように、光デバイスウエーハ10の所定方向に形成された全ての分割予定ライン13に沿って上記改質層形成工程を実施したならば、光デバイスウエーハ10を保持したチャックテーブル36を90度回動した位置に位置付ける。そして、光デバイスウエーハ10の上記所定方向と直交する方向に形成された全ての分割予定ライン13に沿って上記検出用クラック形成工程とクラック角度検出工程および改質層形成工程を実施する。
【0035】
上述した改質層形成工程を全ての分割予定ライン13に沿って実施したならば、光デバイスウエーハ10に外力を付与し、改質層113が形成された分割予定ライン13に沿って破断する破断工程を実施する。この破断工程は、
図7に示すテープ拡張装置9を用いて実施する。
図7に示すテープ拡張装置9は、上記環状のフレームFを保持するフレーム保持手段91と、該フレーム保持手段91に保持された環状のフレームFに装着されたダイシングテープTを拡張するテープ拡張手段92と、ピックアップコレット93を具備している。フレーム保持手段91は、環状のフレーム保持部材911と、該フレーム保持部材911の外周に配設された固定手段としての複数のクランプ912とからなっている。フレーム保持部材911の上面は環状のフレームFを載置する載置面911aを形成しており、この載置面911a上に環状のフレームFが載置される。そして、載置面911a上に載置された環状のフレームFは、クランプ912によってフレーム保持部材911に固定される。このように構成されたフレーム保持手段91は、テープ拡張手段92によって上下方向に進退可能に支持されている。
【0036】
テープ拡張手段92は、上記環状のフレーム保持部材911の内側に配設される拡張ドラム921を具備している。この拡張ドラム921は、環状のフレームFの内径より小さく該環状のフレームFに装着されたダイシングテープTに貼着されるウエーハ10の外径より大きい内径および外径を有している。また、拡張ドラム921は、下端に支持フランジ922を備えている。図示の実施形態におけるテープ拡張手段92は、上記環状のフレーム保持部材911を上下方向に進退可能な支持手段923を具備している。この支持手段923は、上記支持フランジ922上に配設された複数のエアシリンダ923aからなっており、そのピストンロッド923bが上記環状のフレーム保持部材911の下面に連結される。このように複数のエアシリンダ923aからなる支持手段923は、
図8の(a)に示すように環状のフレーム保持部材911を載置面911aが拡張ドラム921の上端と略同一高さとなる基準位置と、
図8の(b)に示すように拡張ドラム921の上端より所定量下方の拡張位置の間を上下方向に移動せしめる。
【0037】
以上のように構成されたテープ拡張装置9を用いて実施するウエーハ破断工程について
図8を参照して説明する。即ち、ウエーハ10が貼着されているダイシングテープTが装着された環状のフレームFを、
図8の(a)に示すようにフレーム保持手段91を構成するフレーム保持部材911の載置面911a上に載置し、クランプ912によってフレーム保持部材911に固定する(フレーム保持工程)。このとき、フレーム保持部材911は
図8の(a)に示す基準位置に位置付けられている。
【0038】
上述したフレーム保持工程を実施したならば、
図8の(b)に示すようにテープ拡張手段92を構成する支持手段923としての複数のエアシリンダ923aを作動して、環状のフレーム保持部材911を拡張位置に下降せしめる。従って、フレーム保持部材911の載置面911a上に固定されている環状のフレームFも下降するため、
図8の(b)に示すように環状のフレームFに装着されたダイシングテープTは拡張ドラム921の上端縁に接して拡張せしめられる(テープ拡張工程)。この結果、ダイシングテープTに貼着されている光デバイスウエーハ10には放射状に引張力が作用する。このように光デバイスウエーハ10に放射状に引張力が作用すると、分割予定ライン13に沿って形成された改質層113は強度が低下せしめられているので、光デバイスウエーハ10は強度が低下せしめられている改質層113が破断起点となって分割予定ライン13に沿って破断され個々の光デバイス14に分割される(破断工程)。この破断工程においては、
図9に示すように光デバイスウエーハ10は強度が低下せしめられている改質層113が破断起点となってサファイア基板11の表面11a(下面)および裏面11b(上面)に向けてクラック114および115が発生するが、改質層113が分割予定ライン13の中心からY軸方向にズレ量(Δy)だけズレた位置においてサファイア基板11の表面11aから(H)の位置より裏面11b側に形成されるので、クラック114の先端は分割予定ライン13の中心部に達する。従って、クラック114が分割予定ライン13から逸脱して光デバイス14に達することがないので、光デバイス14の品質低下ないし破損を防止することができる。なお、クラック115もサファイア基板11の裏面11b(上面)に向けて斜めに伸びるが、サファイア基板11の裏面11b(上面)には光デバイスが形成されていないので品質に影響することはない。
【0039】
上述した破断工程を実施することにより、光デバイスウエーハ10を変質層113が形成された分割予定ライン13に沿って破断し個々の光デバイス14に分割したならば、
図10に示すようにピックアップコレット93を作動して光デバイス14を吸着し、ダイシングテープTから剥離してピックアップする(ピックアップ工程)。なお、ピックアップ工程においては、個々のデバイス102間の隙間Sが広げられているので、隣接するデバイス102と接触することなく容易にピックアップすることができる。