特許第5940896号(P5940896)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940896
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】レーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/067 20060101AFI20160616BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20160616BHJP
   B23K 26/38 20140101ALI20160616BHJP
   B23K 26/40 20140101ALI20160616BHJP
【FI】
   B23K26/067
   B23K26/064 A
   B23K26/38 Z
   B23K26/40
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-127865(P2012-127865)
(22)【出願日】2012年6月5日
(65)【公開番号】特開2013-252526(P2013-252526A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2015年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】能丸 圭司
【審査官】 岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−507365(JP,A)
【文献】 特開2005−138143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/067
B23K 26/064
B23K 26/38
B23K 26/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、を具備するレーザー加工装置において、
該レーザー光線照射手段は、レーザー光線発振手段と、該レーザー光線発振手段が発振したレーザー光線を第1の光路と第2の光路に分岐する分岐手段と、該第1の光路に配設された第1の光路手段と、該第2の光路に配設された第2の光路手段と、該第1の光路手段を通過した第1のレーザー光線と該第2の光路手段を通過した第2のレーザー光線とを合流させて第3の光路に導く合流手段と、該第3の光路に配設された収差補正レンズと、該収差補正レンズを通過した該第1のレーザー光線と該第2のレーザー光線とを集光して第1の集光スポットと第2の集光スポットとを生成する集光レンズと、該合流手段を介して該収差補正レンズに対して該第1の光路手段を接近および離反させる第1の移動手段と、該合流手段を介して該収差補正レンズに対して該第2の光路手段を接近および離反させる第2の移動手段と、を具備し、
該第1の移動手段および該第2の移動手段により該第1の光路手段および該第2の光路手段を該収差補正レンズに対して接近および離反させることにより、該第1の集光スポットおよび該第2の集光スポットを該第3の光路に沿って移動せしめる、
ことを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項2】
該第1の光路手段および該第2の光路手段は、光ファイバーで構成されている、請求項1記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
該集光レンズを該第3の光路に沿って移動せしめ集光スポット移動手段を備えている、請求項1又は2記載のレーザー加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等の被加工物に対して透過性を有するレーザー光線を照射し、被加工物の内部に変質層を形成するレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、シリコン基板、サファイア基板、炭化珪素基板、リチウムタンタレート基板、ガラス基板或いは石英基板の如き適宜の基板を含むウエーハの表面に格子状に形成されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、ウエーハをストリートに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々の半導体デバイスを製造している。ウエーハを分割するための方法としては、レーザー光線を利用する種々の様式が提案されている。
【0003】
半導体ウエーハ等の板状の被加工物を分割する方法として、その被加工物に対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を用い、分割すべき領域の内部に集光点を合わせてパルスレーザー光線を照射するレーザー加工方法も試みられている。このレーザー加工方法を用いた分割方法は、被加工物の一方の面側から内部に集光点を合わせて被加工物に対して透過性を有する例えば波長が1064nmのパルスレーザー光線を照射し、被加工物の内部にストリートに沿って変質層を連続的に形成し、この変質層が形成されることによって強度が低下した分割予定ラインに沿って外力を加えることにより、被加工物を分割するものである。(例えば、特許文献1参照。)
【0004】
しかるに、ウエーハに外力を加えてストリートに沿って精密に破断せしめるためには、ウエーハの内部にストリートに沿って形成される変質層の厚み、即ちウエーハの厚み方向における変質層の割合を大きくすることが必要である。上述したレーザー加工方法によって形成される変質層の厚みは30μm程度であるため、変質層の厚みを増大せしめるためにはウエーハの内部に変質層を積層して形成する必要がある。ウエーハの内部に変質層を積層して形成するには、パルスレーザー光線の集光点の位置をウエーハの厚み方向に変位せしめて、パルスレーザー光線とウエーハとをストリートに沿って繰り返し相対的に移動させることが必要であり、ウエーハを精密に破断するのに必要な厚みの変質層を形成するために長時間を要する。
【0005】
上記問題解消するため、レーザー光線発振手段が発振するレーザー光線の集光点を上下に形成して2層の変質層を同時に形成することができるレーザー加工装置が提案されている。(例えば、特許文献2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3408805号公報
【特許文献2】特開2006−95529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献2に開示されたレーザー加工装置においては、被加工物の内部に2層の変質層を同時に形成することができるが、光学系が複雑になるとともに、制御が難しいという問題がある。
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、被加工物の内部に2層の改質層を同時に形成できるとともに、制御が容易なレーザー加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術的課題を解決するために、本発明によれば、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、を具備するレーザー加工装置において、
該レーザー光線照射手段は、レーザー光線発振手段と、該レーザー光線発振手段が発振したレーザー光線を第1の光路と第2の光路に分岐する分岐手段と、該第1の光路に配設された第1の光路手段と、該第2の光路に配設された第2の光路手段と、該第1の光路手段を通過した第1のレーザー光線と該第2の光路手段を通過した第2のレーザー光線とを合流させて第3の光路に導く合流手段と、該第3の光路に配設された収差補正レンズと、該収差補正レンズを通過した該第1のレーザー光線と該第2のレーザー光線とを集光して第1の集光スポットと第2の集光スポットとを生成する集光レンズと、該合流手段を介して該収差補正レンズに対して該第1の光路手段を接近および離反させる第1の移動手段と、該合流手段を介して該収差補正レンズに対して該第2の光路手段を接近および離反させる第2の移動手段と、を具備し、
該第1の移動手段および該第2の移動手段により該第1の光路手段および該第2の光路手段を該収差補正レンズに対して接近および離反させることにより、該第1の集光スポットおよび該第2の集光スポットを該第3の光路に沿って移動せしめる、
ことを特徴とするレーザー加工装置が提供される。
【0010】
上記第1の光路手段および第2の光路手段は、光ファイバーで構成されている。
また、上記集光レンズを第3の光路に沿って移動せしめ集光スポット移動手段を備えていることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるレーザー加工装置おいては、チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段は、レーザー光線発振手段と、レーザー光線発振手段が発振したレーザー光線を第1の光路と第2の光路に分岐する分岐手段と、第1の光路に配設された第1の光路手段と、第2の光路に配設された第2の光路手段と、第1の光路手段を通過した第1のレーザー光線と第2の光路手段を通過した第2のレーザー光線とを合流させて第3の光路に導く合流手段と、第3の光路に配設された収差補正レンズと、収差補正レンズを通過した第1のレーザー光線と第2のレーザー光線とを集光して第1の集光スポットと第2の集光スポットとを生成する集光レンズと、合流手段を介して収差補正レンズに対して第1の光路手段を接近および離反させる第1の移動手段と、合流手段を介して収差補正レンズに対して第2の光路手段を接近および離反させる第2の移動手段とを具備し、第1の移動手段および第2の移動手段により第1の光路手段および第2の光路手段を収差補正レンズに対して接近および離反させることにより、第1の集光スポットおよび第2の集光スポットを第3の光路に沿って移動せしめるので、2つの集光スポットを形成するための制御が容易であるとともに光学系を簡単な構成にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図。
図2図1に示すレーザー加工装置に装備されるレーザー光線照射手段の構成ブロック図。
図3図2に示すレーザー光線照射手段によって形成されるレーザー光線の集光スポットの説明図。
図4図1に示すレーザー加工装置に装備される制御手段の構成ブロック図。
図5】被加工物としての半導体ウエーハの斜視図。
図6図5に示す半導体ウエーハを環状のフレームに装着された保護テープの表面に貼着した状態を示す斜視図。
図7図1に示すレーザー加工装置によって図5に示す半導体ウエーハに実施する改質層形成工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0014】
図1には、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図が示されている。図1に示すレーザー加工装置は、静止基台2と、該静止基台2に矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動可能に配設され被加工物を保持するチャックテーブル機構3と、静止基台2上に配設されたレーザー光線照射手段としてレーザー光線照射ユニット4とを具備している。
【0015】
上記チャックテーブル機構3は、静止基台2上にX軸方向に沿って平行に配設された一対の案内レール31、31と、該案内レール31、31上にX軸方向に移動可能に配設された第1の滑動ブロック32と、該第1の滑動ブロック32上にY軸方向に移動可能に配設された第2の滑動ブロック33と、該第2の滑動ブロック33上に円筒部材34によって支持されたカバーテーブル35と、被加工物保持手段としてのチャックテーブル36を具備している。このチャックテーブル36は多孔性材料から形成された吸着チャック361を具備しており、吸着チャック361の上面である保持面上に被加工物である例えば円形形状の半導体ウエーハを図示しない吸引手段によって保持するようになっている。このように構成されたチャックテーブル36は、円筒部材34内に配設された図示しないパルスモータによって回転せしめられる。なお、チャックテーブル36には、半導体ウエーハ等の被加工物を保護テープを介して支持する環状のフレームを固定するためのクランプ362が配設されている。
【0016】
上記第1の滑動ブロック32は、その下面に上記一対の案内レール31、31と嵌合する一対の被案内溝321、321が設けられているとともに、その上面にY軸方向に沿って平行に形成された一対の案内レール322、322が設けられている。このように構成された第1の滑動ブロック32は、被案内溝321、321が一対の案内レール31、31に嵌合することにより、一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第1の滑動ブロック32を一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動させるための加工送り手段37を具備している。加工送り手段37は、上記一対の案内レール31と31の間に平行に配設された雄ネジロッド371と、該雄ネジロッド371を回転駆動するためのパルスモータ372等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド371は、その一端が上記静止基台2に固定された軸受ブロック373に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ372の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド371は、第1の滑動ブロック32の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ372によって雄ネジロッド371を正転および逆転駆動することにより、第1の滑動ブロック32は案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動せしめられる。
【0017】
上記第2の滑動ブロック33は、その下面に上記第1の滑動ブロック32の上面に設けられた一対の案内レール322、322と嵌合する一対の被案内溝331、331が設けられており、この被案内溝331、331を一対の案内レール322、322に嵌合することにより、Y軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第2の滑動ブロック33を第1の滑動ブロック32に設けられた一対の案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動させるための割り出し送り手段38を具備している。割り出し送り手段38は、上記一対の案内レール322と322の間に平行に配設された雄ネジロッド381と、該雄ネジロッド381を回転駆動するためのパルスモータ382等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド381は、その一端が上記第1の滑動ブロック32の上面に固定された軸受ブロック383に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ382の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド381は、第2の滑動ブロック33の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ382によって雄ネジロッド381を正転および逆転駆動することにより、第2の滑動ブロック33は案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0018】
上記レーザー光線照射ユニット4は、上記静止基台2上に配設された支持部材41と、該支持部材41によって支持され実質上水平に延出するケーシング42と、該ケーシング42に配設されたレーザー光線照射手段5と、レーザー加工すべき加工領域を検出する撮像手段7を具備している。レーザー光線照射手段5は、図2に示すようにパルスレーザー光線発振手段51と、該パルスレーザー光線発振手段51が発振したパルスレーザー光線を第1の光路50aと第2の光路50bに分岐する分岐手段52と、該第1の光路50aに配設された第1の光路手段53と、第2の光路50bに配設された第2の光路手段54と、第1の光路手段53を通過した第1のパルスレーザー光線と第2の光路手段54を通過した第2のパルスレーザー光線とを合流させて第3の光路50cに導く合流手段55と、第3の光路50cに配設され収差を補正する収差補正レンズ56と、該収差補正レンズ56を通過した第1のパルスレーザー光線と第2のパルスレーザー光線とを集光して第1の集光スポットと第2の集光スポットとを生成する集光レンズ57を備えた集光器570と、合流手段55を介して収差補正レンズ56に対して第1の光路手段53を接近および離反させる第1の移動手段58と、合流手段55を介して収差補正レンズ56に対して第2の光路手段54を接近および離反させる第2の移動手段59を具備している。
【0019】
パルスレーザー光線発振手段51は、YAGレーザー発振器或いはYVO4レーザー発振器からなるパルスレーザー光線発振器511と、これに付設された繰り返し周波数設定手段512とから構成され、図示の実施形態においては波長が1064nmのパルスレーザー光線LBを発振する。上記分岐手段52は、パルスレーザー光線発振手段51から発振されたパルスレーザー光線LBを第1の光路50aと第2の光路50bに分岐する。第1の光路50aに配設された第1の光路手段53は光ファイバーから構成されており、分岐手段52によって分岐された第1のパルスレーザー光線LB1を合流手段55に導く。また、第2の光路50bに配設された第2の光路手段54も光ファイバーから構成されており、分岐手段52によって分岐された第2のパルスレーザー光線LB2を合流手段55に導く。合流手段55は、第1の光路手段53によって導かれた第1のパルスレーザー光線LB1と第2の光路手段54によって導かれた第2のパルスレーザー光線LB2とを合流させて第3の光路50cに導く。このようにして第3の光路50cに導かれた第1のパルスレーザー光線LB1と第2のパルスレーザー光線LB2は、収差補正レンズ56によって収差補正され集光レンズ57によって集光される。
【0020】
上記第1の移動手段58は、上下方向に長い基台581と、該基台581に上下方向に沿って設けられた案内レール582と、該案内レール582に沿って移動し上記第1の光路手段53を構成する光ファイバーの発光端部を支持するファイバー支持部材583と、該ファイバー支持部材583に連結され基台581に設けられた図示しない案内溝を通して配設された移動ブロック584と、基台581における案内レール582と反対側に上下方向に配設され移動ブロック584に設けられた雌ネジ穴584aと螺合する雄ネジロッド585と、該雄ネジロッド585の一端に連結されたパルスモータ586と、雄ネジロッド585の他端を回転可能に支持する軸受けブロック587とからなっている。このように構成された第1の移動手段58は、パルスモータ586を一方向に回動することにより、ファイバー支持部材583を図2において下方に移動し、パルスモータ586を他方向に回動することにより、ファイバー支持部材583を図2において上方に移動する。従って、パルスモータ586を一方向または他方向に回動することにより、ファイバー支持部材583に支持された第1の光路手段53を構成する光ファイバーの発光端531は、合流手段55を介して収差補正レンズ56に対して接近または離反せしめられる。
【0021】
上記第2の移動手段59は、上記第1の移動手段58と同様に構成されており、左右方向に長い基台591と、該基台591に左右方向に沿って設けられた案内レール592と、該案内レール592に沿って移動し上記第2の光路手段54を構成する光ファイバーの発光端部を支持するファイバー支持部材593と、該ファイバー支持部材593に連結され基台591に設けられた図示しない案内溝を通して配設された移動ブロック594と、基台591における案内レール592と反対側に左右方向に配設され移動ブロック594に設けられた雌ネジ穴と螺合する雄ネジロッド595と、該雄ネジロッド595の一端に連結されたパルスモータ596と、雄ネジロッド595の他端を回転可能に支持する軸受けブロック597とからなっている。このように構成された第2の移動手段59は、パルスモータ596を一方向に回動することにより、ファイバー支持部材593を図2において右方に移動し、パルスモータ596を他方向に回動することにより、ファイバー支持部材593を図2において左方に移動する。従って、パルスモータ596を一方向または他方向に回動することにより、ファイバー支持部材593に支持された第2の光路手段54を構成する光ファイバーの発光端541は、合流手段55を介して収差補正レンズ56に対して接近または離反せしめられる。
【0022】
ここで、第1の光路手段53を構成する光ファイバーの発光端531および第2の光路手段54を構成する光ファイバーの発光端541と収差補正レンズ56との位置関係と集光スポットとの関係について、図3を参照して説明する。
図3に示すように収差補正レンズ56の焦点位置を(f)とすると、第1の光路手段53を構成する光ファイバーの発光端531および第2の光路手段54を構成する光ファイバーの発光端541は、焦点位置(f)の上流側、下流側、例えば上流側の実線で示す位置または2点鎖線で示す位置のように上記第1の移動手段58および第2の移動手段59によって移動せしめられるようになっている。第1の光路手段53を構成する光ファイバーの発光端531および第2の光路手段54を構成する光ファイバーの発光端541が実線で示すように収差補正レンズ56に接近した位置に位置付けられた状態においては、第1の光路手段53を構成する光ファイバーの発光端531および第2の光路手段54を構成する光ファイバーの発光端541から発光されたレーザー光線は実線で示すように収差補正レンズ56を通過しても平行光より拡がった状態となる。一方、第1の光路手段53を構成する光ファイバーの発光端531および第2の光路手段54を構成する光ファイバーの発光端541が2点鎖線で示すように収差補正レンズ56に離反した位置に位置付けられた状態においては、第1の光路手段53を構成する光ファイバーの発光端531および第2の光路手段54を構成する光ファイバーの発光端541から発光されたレーザー光線は2点鎖線で示すように収差補正レンズ56を通過することにより、平行光に近い状態となる。この結果、集光レンズ57によって集光されると、実線で示すレーザー光線の集光スポットP1は2点鎖線で示すレーザー光線の集光スポットP2より図3において下側に位置付けられる。このように、第1の移動手段58および第2の移動手段59によって第1の光路手段53および第2の光路手段54を合流手段55を介して収差補正レンズ56に対して接近または離反せしることにより、レーザー光線の2つの集光スポットを上下に形成することができるので、その制御が容易である。
【0023】
図2に戻って説明を続けると、図示の実施形態におけるレーザー光線照射手段5は、上記集光レンズ57を備えた集光器570をチャックテーブル36の保持面(上面)に対して垂直な方向(図2において上下方向)に移動することにより第3の光路50cに沿って集光スポットを移動する集光スポット移動手段としてのアクチュエータ60を具備している。アクチュエータ60は、図示の実施形態においては印加する電圧値に対応して集光器570を図2において上下方向に移動するボイスコイルモータからなっている。
【0024】
図1に戻って説明を続けると、上記撮像手段7は、ケーシング42に集光器570からX軸方向の同一線上に所定距離おいて配設されている。この撮像手段7は、可視光線によって撮像する通常の撮像素子(CCD)の外に、被加工物に赤外線を照射する赤外線照明手段と、該赤外線照明手段によって照射された赤外線を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を後述する制御手段に送る。
【0025】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、図4に示す制御手段10を具備している。制御手段10はコンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)101と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)102と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)103と、入力インターフェース104および出力インターフェース105とを備えている。制御手段10の入力インターフェース104には、上記撮像手段7等からの検出信号が入力される。そして、制御手段10の出力インターフェース105からは、上記パルスモータ372、パルスモータ382、パルスレーザー光線発振手段51、パルスモータ586、パルスモータ596、ボイスコイルモータからなるアクチュエータ60等に制御信号を出力する。
【0026】
なお、上記チャックテーブル36に保持された被加工物の高さ位置を検出するための高さ位置検出手段を装備し、該高さ位置検出手段によって検出された被加工物に高さ位置に基づいて上記ボイスコイルモータからなるアクチュエータ60を制御するように構成することが望ましい。高さ位置検出手段としては、特開2009−262219号公報や特開2009−269074号公報に記載された技術を用いることができる。
【0027】
図示のレーザー加工装置は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
図5には、被加工物であるウエーハとしての半導体ウエーハ20の斜視図が示されている。図5に示す半導体ウエーハ20は、例えば厚さが100μmのシリコンウエーハからなっており、表面20aに格子状に形成された複数のストリート21によって区画された複数の領域にIC、LSI等のデバイス22が形成されている。このように形成された半導体ウエーハ20は、図6に示すように環状のフレームFに装着されたポリオレフィン等の合成樹脂シートからなる保護テープTに表面20a側を貼着する。従って、半導体ウエーハ20は、裏面20bが上側となる。
【0028】
図6に示すように、環状のフレームFに保護テープTを介して支持された半導体ウエーハ20は、図1に示すレーザー加工装置のチャックテーブル36上に保護テープT側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより半導体ウエーハ20は、保護テープTを介してチャックテーブル36上に吸引保持される。また、環状のフレームFは、クランプ362によって固定される。
【0029】
上述したように半導体ウエーハ20を吸引保持したチャックテーブル36は、加工送り手段37によって撮像手段7の直下に位置付けられる。チャックテーブル36が撮像手段7の直下に位置付けられると、撮像手段7および制御手段10によって半導体ウエーハ20のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段7および制御手段10は、半導体ウエーハ20の所定方向に形成されているストリート21と、ストリート21に沿ってレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段5の集光器570との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、レーザー光線照射位置のアライメントを遂行する。また、半導体ウエーハ20に形成されている所定方向と直交する方向に形成されているストリート21に対しても、同様にレーザー光線照射位置のアライメントが遂行される。このとき、半導体ウエーハ20のストリート21が形成されている表面20aは下側に位置しているが、撮像手段7が上述したように赤外線照明手段と赤外線を捕らえる光学系および赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成された撮像手段を備えているので、裏面20bから透かして分割予定ライン21を撮像することができる。
【0030】
上述したようにチャックテーブル36上に保持されている半導体ウエーハ20に形成されているストリート21を検出し、レーザー光線照射位置のアライメントが行われたならば、チャックテーブル36を移動して図7の(a)に示すように所定のストリート21の一端(図7の(a)において左端)をレーザー光線照射手段5の集光器570の直下に位置付ける。次に、制御手段10は、パルスレーザー光線発振手段51から発振され分岐手段52によって第1の光路50aに分岐された第1のパルスレーザー光線LB1の集光スポットが図7の(a)においてPaの位置になるように第1の移動手段58のパルスモータ586を制御する。また、制御手段10は、パルスレーザー光線発振手段51から発振され分岐手段52によって第2の光路50bに分岐された第2のパルスレーザー光線LB2の集光スポットが図7の(a)においてPbの位置になるように第2の移動手段59のパルスモータ596を制御する。
【0031】
次に、制御手段10は、レーザー光線照射手段5を制御して集光器570から加工用パルスレーザー光線の第1のパルスレーザー光線LB1および第2のパルスレーザー光線LB2を照射しつつチャックテーブル36を矢印X1で示す方向に所定の加工送り速度で移動せしめる(改質層形成工程)。そして、図7の(b)で示すように集光器570の照射位置がストリート21の他端(図7の(b)において右端)に達したら、パルスレーザー光線の第1のパルスレーザー光線LB1および第2のパルスレーザー光線LB2の照射を停止するとともに、チャックテーブル36の移動を停止する。この加工工程においては、上述したように高さ位置検出手段を装備している場合には、半導体ウエーハ20の裏面20b(上面)の高さ位置が検出されており、高さ位置検出手段によって検出された半導体ウエーハ20の裏面20b(上面)の高さ位置に基づいて上記ボイスコイルモータからなるアクチュエータ60を制御する。この結果、半導体ウエーハ20の内部には、図7の(b)で示すように裏面20b(上面)と平行に2層の改質層210が同時に形成される。
【0032】
なお、上記改質層形成工程における加工条件は、例えば次のように設定されている。
加工用レーザー :YVO4 パルスレーザー
波長 :1064nm
繰り返し周波数 :100kHz
平均出力 :1W
集光スポット径 :φ1μm
加工送り速度 :100mm/秒
【0033】
なお、上記改質層形成工程においては第1のパルスレーザー光線LB1および第2のパルスレーザー光線LB2によってそれぞれ改質層210を30μm程度の厚さで形成することができる。従って、図示の実施形態においては、半導体ウエーハ20の内部に裏面20b(上面)より25μm下の位置から厚さが60μmの改質層が形成される。
【0034】
以上のようにして、半導体ウエーハ20の所定方向に延在する全ての分割予定ライン21に沿って上記改質層形成工程を実行したならば、チャックテーブル36を90度回動せしめて、上記所定方向に対して直角に延びる各分割予定ラインに沿って上記改質層形成工程を実行する。このようにして、半導体ウエーハ20に形成された全てのストリート21に沿って上記改質層形成工程を実行したならば、半導体ウエーハ20を保持しているチャックテーブル36は、最初に半導体ウエーハ20を吸引保持した位置に戻され、ここで半導体ウエーハ20の吸引保持を解除する。そして、半導体ウエーハ20は、図示しない搬送手段によって分割工程に搬送される。
【符号の説明】
【0035】
2:静止基台
3:チャックテーブル機構
36:チャックテーブル
37:加工送り手段
38:割り出し送り手段
4:レーザー光線照射ユニット
5:レーザー光線照射手段
51:パルスレーザー光線発振手段
52:分岐手段
53:第1の光路手段
54:第2の光路手段
55:合流手段
56:収差補正レンズ
57:集光レンズ
570:集光器
58:第1の移動手段
59:第2の移動手段
60:アクチュエータ
7:撮像手段
10:制御手段
20:半導体ウエーハ
F:環状のフレーム
T:保護テープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7