特許第5940906号(P5940906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940906
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】レーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/067 20060101AFI20160616BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20160616BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20160616BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   B23K26/067
   B23K26/064 Z
   B23K26/00 G
   H01L21/78 B
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-138049(P2012-138049)
(22)【出願日】2012年6月19日
(65)【公開番号】特開2014-588(P2014-588A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2015年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】能丸 圭司
【審査官】 岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−125777(JP,A)
【文献】 特開2012−024816(JP,A)
【文献】 特開2012−106252(JP,A)
【文献】 特開2013−154378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/067
B23K 26/00
B23K 26/064
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段を加工送り方向に相対移動する加工送り手段と、を具備するレーザー加工装置において、
該レーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振するレーザー光線発振手段と、該レーザー光線発振手段から発振されたレーザー光線を集光して該チャックテーブルに保持された被加工物に照射する集光器と、該レーザー光線発振手段と該集光器との間に配設され該レーザー光線発振手段から発振されたレーザー光線を複数のレーザー光線に分岐するレーザー光線分岐機構と、を具備し、
該レーザー光線分岐機構は、該レーザー光線発振手段から発振されたレーザー光線の偏向面を45度傾ける1/2波長板と、該1/2波長板を通過したレーザー光線をP偏光とS偏光に分離する第1のビームスプリッターと、該第1のビームスプリッターで分離されたP偏光を反射する第1のミラーと、該第1のビームスプリッターで分離されたS偏光を反射する第2のミラーと、該第1のミラーと該第2のミラーで反射されたP偏光とS偏光を同一方向の光路に導く第2のビームスプリッターと、該第1のミラーと該第2のミラーで反射されるP偏光とS偏光の少なくとも一方の該第2のビームスプリッターに入光せしめる角度を調整する角度調整手段とを備えた分岐ユニットを具備し、該角度調整手段によって該第1のミラーと該第2のミラーで反射されたP偏光とS偏光の該第2のビームスプリッターに入光せしめる角度を調整することにより該集光器によって集光されるP偏光とS偏光とからなる複数のレーザー光線の集光点の間隔が調整される、
ことを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項2】
該レーザー光線分岐機構は、該分岐ユニットを複数備え、上流側の該分岐ユニットを通過したP偏光とS偏光は次の該分岐ユニットの該1/2波長板によって偏光面が45度傾けられP偏光はさらにP偏光とS偏光に、S偏光は更にP偏光とS偏光に分岐されて該集光器に導かれる、請求項1記載のレーザー加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等の被加工物の表面に形成されたストリートに沿ってレーザー光線を照射してレーザー加工溝を形成するのに適するレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、シリコン等の半導体基板の表面に絶縁膜と機能膜が積層された積層体によって複数のIC、LSI等のデバイスをマトリックス状に形成した半導体ウエーハが形成される。このように形成された半導体ウエーハは上記デバイスがストリートと呼ばれる分割予定ラインによって区画されており、このストリートに沿って分割することにより個々のデバイスを製造している。
【0003】
このような半導体ウエーハのストリートに沿った分割は、通常、ダイサーと呼ばれている切削装置によって行われている。この切削装置は、被加工物である半導体ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された半導体ウエーハを切削するための切削手段と、チャックテーブルと切削手段とを相対的に移動せしめる移動手段とを具備している。切削手段は、高速回転せしめられる回転スピンドルと該スピンドルに装着された切削ブレードを含んでいる。切削ブレードは円盤状の基台と該基台の側面外周部に装着された環状の切れ刃からなっており、切れ刃は例えば粒径3μm程度のダイヤモンド砥粒を電鋳によって固定して形成され、厚みが例えば20〜30μmに形成されている。
【0004】
近時においては、IC、LSI等のデバイスの処理能力を向上するために、シリコン等の半導体基板の表面にSiOF、BSG(SiOB)等の無機物系の膜やポリイミド系、パリレン系等のポリマー膜である有機物系の膜からなる低誘電率絶縁体被膜(Low−k膜)と回路を形成する機能膜が積層された積層体によって半導体チップを形成せしめた形態の半導体ウエーハが実用化されている。
【0005】
また、半導体ウエーハのストリートにテスト エレメント グループ(TEG)と云われる金属パターンを部分的に配設し、半導体ウエーハを分割する前に金属パターンを通して回路の機能をテストするように構成した半導体ウエーハも実用化されている。
【0006】
上述したLow−k膜やテスト エレメント グループ(TEG)はウエーハの素材と異なるため、切削ブレードによって同時に切削することが困難である。即ち、Low−k膜は雲母のように非常に脆いことから、切削ブレードによりストリートに沿って切削すると、Low−k膜が剥離し、この剥離がデバイスにまで達しデバイスに致命的な損傷を与えるという問題がある。また、テスト エレメント グループ(TEG)は金属によって形成されているため、切削ブレードによって切削するとバリが発生する。
【0007】
上記問題を解消するために、半導体ウエーハのストリートに沿ってパルスレーザー光線を照射することによりストリートを形成するLow−k膜やストリートに配設されたテスト エレメント グループ(TEG)を除去し、その除去した領域に切削ブレードを位置付けて切削する加工方法が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
【0008】
しかるに、上記特許文献1に開示された加工方法のようにウエーハのストリートに沿ってパルスレーザー光線を照射することによりLow−k膜やテスト エレメント グループ(TEG)を除去する場合は、切削ブレードの厚みより広い幅のレーザー加工溝を形成する必要がある。このため、レーザー光線の集光スポット径が10μm程度の場合、ストリートに沿ってレーザー光線を照射するレーザー光線照射工程を幅方向に複数回実施しなければならず生産性が悪いという問題がある。
【0009】
このような問題を解消するために、レーザー光線を複数分岐して複数の集光スポット(集光点)を形成し、広い幅のレーザー加工溝を同時に形成することによりLow−k膜やテスト エレメント グループ(TEG)を効率よく除去することができるレーザー加工装置が下記特許文献2に記載されている。(例えば、特許文献2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−142398号公報
【特許文献2】特開2011−156551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
而して、特許文献2に記載された技術は、複数に分岐されたレーザー光線の複数の集光スポット(集光点)の間隔を調整することが困難であり、ストリートに対応した幅に複数の集光スポット(集光点)を位置付けることができないという問題がある。
【0012】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、複数に分岐されたレーザー光線の複数の集光スポット(集光点)の間隔を容易に調整することができるレーザー加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段を加工送り方向に相対移動する加工送り手段と、を具備するレーザー加工装置において、
該レーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振するレーザー光線発振手段と、該レーザー光線発振手段から発振されたレーザー光線を集光して該チャックテーブルに保持された被加工物に照射する集光器と、該レーザー光線発振手段と該集光器との間に配設され該レーザー光線発振手段から発振されたレーザー光線を複数のレーザー光線に分岐するレーザー光線分岐機構と、を具備し、
該レーザー光線分岐機構は、該レーザー光線発振手段から発振されたレーザー光線の偏光面を45度傾ける1/2波長板と、該1/2波長板を通過したレーザー光線をP偏光とS偏光に分離する第1のビームスプリッターと、該第1のビームスプリッターで分離されたP偏光を反射する第1のミラーと、該第1のビームスプリッターで分離されたS偏光を反射する第2のミラーと、該第1のミラーと該第2のミラーで反射されたP偏光とS偏光を同一方向の光路に導く第2のビームスプリッターと、該第1のミラーと該第2のミラーで反射されるP偏光とS偏光の少なくとも一方の該第2のビームスプリッターに入光せしめる角度を調整する角度調整手段とを備えた分岐ユニットを具備し、該角度調整手段によって該第1のミラーと該第2のミラーで反射されたP偏光とS偏光の該第2のビームスプリッターに入光せしめる角度を調整することにより該集光器によって集光されるP偏光とS偏光とからなる複数のレーザー光線の集光点の間隔が調整される、
ことを特徴とするレーザー加工装置が提供される。
【0014】
上記レーザー光線分岐機構は、分岐ユニットを複数備え、上流側の分岐ユニットを通過したP偏光とS偏光は次の分岐ユニットの1/2波長板によって偏光面が45度傾けられP偏光はさらにP偏光とS偏光に、S偏光は更にP偏光とS偏光に分岐されて集光器に導かれる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によるレーザー加工装置においては、レーザー光線発振手段と集光器との間に配設されレーザー光線発振手段から発振されたレーザー光線を複数のレーザー光線に分岐するレーザー光線分岐機構は、レーザー光線発振手段から発振されたレーザー光線の偏光面を45度傾ける1/2波長板と、1/2波長板を通過したレーザー光線をP偏光とS偏光に分離する第1のビームスプリッターと、該第1のビームスプリッターで分離されたP偏光を反射する第1のミラーと、第1のビームスプリッターで分離されたS偏光を反射する第2のミラーと、第1のミラーと第2のミラーで反射されたP偏光とS偏光を同一方向の光路に導く第2のビームスプリッターと、該第1のミラーと該第2のミラーで反射されるP偏光とS偏光の少なくとも一方の該第2のビームスプリッターに入光せしめる角度を調整する角度調整手段とを備えた分岐ユニットを具備し、角度調整手段によって第1のミラーと第2のミラーで反射されたP偏光とS偏光の第2のビームスプリッターに入光せしめる角度を調整することにより集光器によって集光されるP偏光とS偏光とからなる複数のレーザー光線の集光点の間隔が調整されるので、複数に分岐されたレーザー光線の複数の集光スポット(集光点)の間隔を容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図。
図2図1に示すレーザー加工装置に装備されるレーザー光線照射手段を示すブロック図構成図。
図3図2に示すレーザー光線照射手段を構成する分岐ユニットを示す説明図。
図4図2に示すレーザー光線照射手段によって照射される複数のレーザー光線の説明図。
図5図1に示すレーザー加工装置に装備される制御手段のブロック構成図。
図6】被加工物としての半導体ウエーハの斜視図および一部断面拡大図。
図7図6に示す半導体ウエーハを環状のフレームに保護テープの表面に貼着する状態を示す説明図。
図8図1に示すレーザー加工装置によって図6に示す半導体ウエーハのストリートに沿ってレーザー加工溝を形成するレーザー光線照射工程の説明図。
図9図8に示すレーザー光線照射工程を実施すことによって半導体ウエーハに形成されたレーザー加工溝の拡大断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1には、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図が示されている。図1に示すレーザー加工装置は、静止基台2と、該静止基台2に矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動可能に配設され被加工物を保持するチャックテーブル機構3と、静止基台2にX軸方向と直交する矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット支持機構4と、該レーザー光線照射ユニット支持機構4に矢印Zで示す焦点位置調整方向(Z軸方向)に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット5とを具備している。
【0019】
上記チャックテーブル機構3は、静止基台2上にX軸方向に沿って平行に配設された一対の案内レール31、31と、該案内レール31、31上にX軸方向に移動可能に配設された第1の滑動ブロック32と、該第1の滑動ブロック32上にY軸方向に移動可能に配設された第2の滑動ブロック33と、該第2の滑動ブロック33上に円筒部材34によって支持された支持テーブル35と、被加工物保持手段としてのチャックテーブル36を具備している。このチャックテーブル36は多孔性材料から形成され被加工物保持面361を備えており、チャックテーブル36上に被加工物である例えば円盤状の半導体ウエーハを図示しない吸引手段によって保持するようになっている。また、チャックテーブル36は、円筒部材34内に配設された図示しないパルスモータによって回転せしめられる。また、チャックテーブル36には、後述する半導体ウエーハを支持する環状のフレームを固定するためのクランプ362が装着されている。
【0020】
上記第1の滑動ブロック32は、その下面に上記一対の案内レール31、31と嵌合する一対の被案内溝321、321が設けられているとともに、その上面にY軸方向に沿って平行に形成された一対の案内レール322、322が設けられている。このように構成された第1の滑動ブロック32は、被案内溝321、321が一対の案内レール31、31に嵌合することにより、一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第1の滑動ブロック32を一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動させるための加工送り手段37を具備している。加工送り手段37は、上記一対の案内レール31と31の間に平行に配設された雄ネジロッド371と、該雄ネジロッド371を回転駆動するためのパルスモータ372等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド371は、その一端が上記静止基台2に固定された軸受ブロック373に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ372の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド371は、第1の滑動ブロック32の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ372によって雄ネジロッド371を正転および逆転駆動することにより、第1の滑動ブロック32は案内レール31、31に沿ってX軸方向である加工送り方向に移動せしめられる。
【0021】
上記第2の滑動ブロック33は、その下面に上記第1の滑動ブロック32の上面に設けられた一対の案内レール322、322と嵌合する一対の被案内溝331、331が設けられており、この被案内溝331、331を一対の案内レール322、322に嵌合することにより、Y軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第2の滑動ブロック33を第1の滑動ブロック32に設けられた一対の案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動させるための第1の割り出し送り手段38を具備している。第1の割り出し送り手段38は、上記一対の案内レール322と322の間に平行に配設された雄ネジロッド381と、該雄ネジロッド381を回転駆動するためのパルスモータ382等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド381は、その一端が上記第1の滑動ブロック32の上面に固定された軸受ブロック383に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ382の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド381は、第2の滑動ブロック33の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ382によって雄ネジロッド381を正転および逆転駆動することにより、第2の滑動ブロック33は案内レール322、322に沿ってY軸方向である割り出し送り方向に移動せしめられる。
【0022】
上記レーザー光線照射ユニット支持機構4は、静止基台2上にY軸方向に沿って平行に配設された一対の案内レール41、41と、該案内レール41、41上にY軸方向に移動可能に配設された可動支持基台42を具備している。この可動支持基台42は、案内レール41、41上に移動可能に配設された移動支持部421と、該移動支持部421に取り付けられた装着部422とからなっている。装着部422は、一側面にZ軸方向に延びる一対の案内レール423、423が平行に設けられている。図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット支持機構4は、可動支持基台42を一対の案内レール41、41に沿ってY軸方向に移動させるための第2の割り出し送り手段43を具備している。第2の割り出し送り手段43は、上記一対の案内レール41、41の間に平行に配設された雄ネジロッド431と、該雄ネジロッド431を回転駆動するためのパルスモータ432等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド431は、その一端が上記静止基台2に固定された図示しない軸受ブロックに回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ432の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド431は、可動支持基台42を構成する移動支持部421の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された雌ネジ穴に螺合されている。このため、パルスモータ432によって雄ネジロッド431を正転および逆転駆動することにより、可動支持基台42は案内レール41、41に沿ってY軸方向である割り出し送り方向に移動せしめられる。
【0023】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51と、該ユニットホルダ51に取り付けられたレーザー光線照射手段52を具備している。ユニットホルダ51は、上記装着部422に設けられた一対の案内レール423、423に摺動可能に嵌合する一対の被案内溝511、511が設けられており、この被案内溝511、511を上記案内レール423、423に嵌合することにより、Z軸方向に移動可能に支持される。
【0024】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51を一対の案内レール423、423に沿ってZ軸方向に移動させるための集光点位置調整手段54を具備している。集光点位置調整手段54は、一対の案内レール423、423の間に配設された雄ネジロッド(図示せず)と、該雄ネジロッドを回転駆動するためのパルスモータ542等の駆動源を含んでおり、パルスモータ542によって図示しない雄ネジロッドを正転または逆転駆動することにより、ユニットホルダ51およびレーザー光線照射手段52を一対の案内レール423、423に沿って焦点位置調整方向(Z軸方向)に移動せしめる。なお、図示の実施形態においては、パルスモータ542を正転駆動することによりレーザー光線照射手段52を上方に移動し、パルスモータ542を逆転駆動することによりレーザー光線照射手段52を下方に移動するようになっている。
【0025】
上記レーザー光線照射手段52は、実質上水平に配置された円筒形状のケーシング521と、図2に示すようにケーシング521内に配設されたパルスレーザー光線発振手段6と、該パルスレーザー光線発振手段6から発振されたレーザー光線を集光して上記チャックテーブル36に保持された被加工物Wに照射する集光器7と、該パルスレーザー光線発振手段6と該集光器7との間に配設されパルスレーザー光線発振手段6から発振されたレーザー光線を複数のレーザー光線に分岐するレーザー光線分岐機構8を具備している。
【0026】
上記パルスレーザー光線発振手段6は、YAGレーザー発振器或いはYVO4レーザー発振器からなるパルスレーザー光線発振器61と、これに付設された繰り返し周波数設定手段62とから構成されている。パルスレーザー光線発振器61は、繰り返し周波数設定手段62によって設定された所定周波数のパルスレーザー光線(LB)を発振する。繰り返し周波数設定手段62は、パルスレーザー光線発振器61が発振するパルスレーザー光線の繰り返し周波数を設定する。これらパルスレーザー光線発振手段6のパルスレーザー光線発振器61および繰り返し周波数設定手段62は、後述する制御手段によって制御される。
【0027】
上記集光器7は集光対物レンズ71を備えており、図示の実施形態においては図1に示すようにケーシング521の先端に配設されている。
【0028】
図2を参照して説明を続けると、図示の実施形態におけるレーザー光線分岐機構8は、3個の分岐ユニット80a、80b、80cを備えている。80a、80b、80cは、それぞれ1/2波長板81と、第1のビームスプリッター82と、第1のミラー83と、第2のミラー84と、第2のビームスプリッター85とからなっている。このように構成される分岐ユニット80a、80b、80cの作用について、図3を参照して説明する。1/2波長板81に入光するレーザー光線は、1/2波長板81によって偏光面が45度傾けられる。偏光面が45度傾けられレーザー光線は、第1のビームスプリッター82によってP偏光とS偏光に分離される。第1のビームスプリッター82で分光されたP偏光は、第1のミラー83によって反射して第2のビームスプリッター85に導かれる。また、第1のビームスプリッター82で分岐されたS偏光も、第2のミラー84によって反射して第2のビームスプリッター85に導かれる。このようにして第2のビームスプリッター85に導かれたP偏光とS偏光は、第2のビームスプリッター85によって同一方向の光路に導かれる。
【0029】
分岐ユニット80a、80b、80cは以上のように構成されており、パルスレーザー光線発振手段6によって発振されたレーザー光線は、分岐ユニット80aによってP偏光とS偏光に分岐され、分岐ユニット80bによってP偏光が更にP偏光とS偏光に分岐されるとともにS偏光が更にP偏光とS偏光に分岐される。そして、更に分岐ユニット80cによって分岐された各P偏光が更にP偏光とS偏光に分岐されるとともに各S偏光が更にP偏光とS偏光に分岐される。このように、パルスレーザー光線発振手段6によって発振されたレーザー光線は、分岐ユニット80aによってP偏光とS偏光に分岐され、分岐ユニット80bによって2本のP偏光と2本のS偏光に分岐され、分岐ユニット80cによって4本のP偏光と4本のS偏光に分岐される。このようにして、8本に分岐されたレーザー光線は、集光器7に達し、集光対物レンズ71によって集光される。なお、レーザー光線分岐機構8は、上記第1のミラー83と第2のミラー84で反射されるP偏光とS偏光の第2のビームスプリッター85に入光せしめる角度を調整する角度調整手段830、840を具備している。この角度調整手段830、840は、図示の実施形態においてはパルスモータによって構成され後述する制御手段によって制御される。なお、図示の実施形態においては角度調整手段830と840によって第1のミラー83と第2のミラー84の双方の反射角度を調整する例を示したが、少なくとも一方のミラーの反射角度を調整するようにすればよい。このようにパルスモータからなる角度調整手段830、840によって第1のミラー83と第2のミラー84で反射されるP偏光とS偏光の第2のビームスプリッター85に入光せしめる角度を調整することにより、8本に分岐されたレーザー光線は図4に示すように集光対物レンズ71によって集光点P1〜P8に集光される。図示の実施形態においては、集光対物レンズ71によって集光されるレーザー光線の集光点P1〜P8はY軸方向に沿って位置付けられるように構成されている。なお、集光対物レンズ71によって集光されるレーザー光線の集光点P1〜P8の間隔は、上記角度調整手段830、840によって第1のミラー83と第2のミラー84で反射されたP偏光とS偏光の第2のビームスプリッター85に入光せしめる角度を変更することにより調整することができる。
【0030】
図2に戻って説明を続けると、図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、集光対物レンズ71によって集光されるレーザー光線の集光点P1〜P8の間隔を確認するための集光スポット間隔モニターユニット9を具備している。集光スポット間隔モニターユニット9は、分岐ユニット80cと集光器7との間の光路に配設されるハーフミラー91と、該ハーフミラー91に反射されたレーザー光線の波長に対応する波長の光を通過させるバンドパスフィルター92と、該バンドパスフィルター92を通過したレーザー光線を結像する結像レンズ93と、該結像レンズ93によって結像されたレーザー光線の集光点(集光スポット)を撮像するCCDカメラ94とからなっている。このように構成された集光スポット間隔モニターユニット9は、分岐ユニット80cによって4本のP偏光と4本のS偏光からなる8本に分岐されたレーザー光線をハーフミラー91、バンドパスフィルター92を介して結像レンズ93に導く。結像レンズ93に導かれた8本に分岐されたレーザー光線は、上記集光対物レンズ71と同様に結像レンズ93によって集光点P1〜P8が結像され、この結像された集光点P1〜P8がCCDカメラ94によって撮像される。このようにしてCCDカメラ94によって撮像された集光点P1〜P8は、後述する制御手段に送られ後述する表示手段に表示される。なお、上記ハーフミラー91は、光路に位置付けられる作用位置と、光路から外れた退避位置とに位置付けられるように構成することが望ましい。
【0031】
図1に戻って説明を続けると、上記レーザー光線照射手段52を構成するケーシング521の前端部には、上記レーザー光線照射手段52によってレーザー加工すべき加工領域を検出する撮像手段12が配設されている。この撮像手段12は、被加工物を照明する照明手段と、該照明手段によって照明された領域を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた像を撮像する撮像素子(CCD)等を備え、撮像した画像信号を図示しない制御手段に送る。
【0032】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、図5に示す制御手段10を具備している。制御手段10は、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)101と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)102と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)103と、入力インターフェース104および出力インターフェース105とを備えている。このように構成された制御手段10の入力インターフェース104には、上記集光スポット間隔モニターユニット9のCCDカメラ94、撮像手段12等からの検出信号が入力される。また、出力インターフェース105からは、上記加工送り手段37のパルスモータ372、第1の割り出し送り手段38のパルスモータ382、第2の割り出し送り手段43のパルスモータ432、集光点位置調整手段54のパルスモータ542、レーザー光線照射手段52のパルスレーザー光線発振手段6、レーザー光線分岐機構8の角度調整手段830、840、表示手段15等に制御信号を出力する。
【0033】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
図6の(a)および(b)には、被加工物としての半導体ウエーハの斜視図および要部拡大断面図が示されている。図6の(a)および(b)に示す半導体ウエーハ20は、シリコン等の半導体基板21の表面に絶縁膜と回路を形成する機能膜が積層された機能層22によって複数のIC、LSI等のデバイス23がマトリックス状に形成されている。そして、各デバイス23は、格子状に形成されたストリート24によって区画されている。なお、図示の実施形態においては、機能層22を形成する絶縁膜は、SiO2膜または、SiOF、BSG(SiOB)等の無機物系の膜やポリイミド系、パリレン系等のポリマー膜である有機物系の膜からなる低誘電率絶縁体被膜(Low−k膜)からなっている。このように構成された半導体ウエーハ20のストリート24に沿って機能層22にレーザー加工溝を形成する方法について説明する。
【0034】
上述した半導体ウエーハ20をストリート24に沿って分割するには、半導体ウエーハ20を図7の(a)および(b)に示すように環状のフレームFに装着された保護テープTの表面に貼着する。このとき、半導体ウエーハ20は、表面20aを上にして裏面側を保護テープTに貼着する。
【0035】
次に、半導体ウエーハ20のストリート24に沿ってレーザー光線を照射し、ストリート上の積層体22を除去するレーザー光線照射工程を実施する。
このレーザー光線照射工程は、先ず上述した図1に示すレーザー加工装置のチャックテーブル36上に保護テープTを介して環状のフレームFに支持された半導体ウエーハ20を載置し、該チャックテーブル36上に保護テープTを介して半導体ウエーハ20を吸着保持する。従って、半導体ウエーハ20は、表面20aを上側にして保持される。なお、半導体ウエーハ20を保護テープTを介して支持している環状のフレームFは、クランプ362によって固定される。
【0036】
上述したように半導体ウエーハ20を吸引保持したチャックテーブル36は、加工送り手段37によって撮像手段12の直下に位置付けられる。チャックテーブル36が撮像手段12の直下に位置付けられると、撮像手段12および図示しない制御手段によって半導体ウエーハ20のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段12および図示しない制御手段は、半導体ウエーハ20の所定方向に形成されているストリート24と、ストリート24に沿ってレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段52の集光器7との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、レーザー光線照射位置のアライメントを遂行する。また、半導体ウエーハ20に形成されている上記所定方向に対して直交する方向に延びるストリート24に対しても、同様にレーザー光線照射位置のアライメントが遂行される。
【0037】
以上のようにしてチャックテーブル36上に保持された半導体ウエーハ20に形成されているストリート24を検出し、レーザー光線照射位置のアライメントが行われたならば、図8(a)で示すようにチャックテーブル36をレーザー光線を照射する集光器7が位置するレーザー光線照射領域に移動し、所定のストリート24を集光器7の直下に位置付ける。このとき、図8の(a)で示すように半導体ウエーハ20は、ストリート24の一端(図8の(a)において左端)が集光器7の直下に位置するように位置付けられる。この状態においては、図8の(b)で示すように集光器7から照射される上記8本のレーザー光線の集光点P1〜P8における各集光スポットS1〜S8がストリート24の幅方向に位置付けられる。そして、8本のレーザー光線の各集光スポットS1〜S8がストリート24の表面に位置するように、集光点位置調整手段54を作動してレーザー光線照射手段52の高さ位置を調整する。
【0038】
次に、レーザー光線照射手段52を作動して集光器7からウエーハに対して吸収性を有する波長の上記8本のレーザー光線を照射しつつチャックテーブル36を図8の(a)において矢印X1で示す方向に所定の加工送り速度で移動せしめる(レーザー光線照射工程)。そして、図8の(c)で示すようにストリート14の他端(図8の(c)において右端)が集光器7の直下位置に達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともにチャックテーブル36の移動を停止する。
【0039】
なお、上記レーザー光線照射工程における加工条件は、例えば次のように設定されている。
レーザー光線の光源 :YVO4レーザーまたはYAGレーザー
波長 :355nm
出力 :10W
繰り返し周波数 :100kHz
パルス幅 :1ns
集光スポット径 :5μm
加工送り速度 :100mm/秒
【0040】
上述した加工条件において集光スポット径が5μmの集光スポットS1〜S8を図9の(b)で示すように互いに接触した状態に設定することにより、半導体ウエーハ20のストリート24には、図9に示すように上記8本のレーザー光線によって幅(E)が例えば40μmで積層体22より深いレーザー加工溝210が同時に形成される。なお、集光スポットS1〜S8の間隔は、上記角度調整手段830、840によって第1のミラー83と第2のミラー84で反射されたP偏光とS偏光の第2のビームスプリッター85に入光せしめる角度を変更することにより容易に調整することができる。
このようにして、上述したレーザー光線照射工程を半導体ウエーハ20に形成された全てのストリート24に実施する。このようにして、ストリート24に沿ってレーザー加工溝210が形成された半導体ウエーハ20は、分割工程が実施される切削装置に搬送される。
【0041】
以上、本発明によるレーザー加工装置を用いて被加工物に対して吸収性を有する波長のレーザー光線を照射してアブレーション加工を施しレーザー加工溝を形成する例を示したが、本発明によるレーザー加工装置は被加工物に対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を被加工物の内部に位置付けて照射し、被加工物の内部に改質層を形成する加工にも適用することができる。
また、上述した実施形態においてはレーザー光線の集光点P1〜P8を加工送り方向(X軸方向)と直交するY軸方向に沿って位置付ける例を示したが、加工条件によってはレーザー光線の集光点P1〜P8を加工送り方向(X軸方向)に沿って位置付けて加工することもできる。
なお、レーザー光線の複数の集光点の始点と終点の最大幅が150μm程度であれば集光器の集光対物レンズは一般的な凸レンズで構成してもよいが、最大幅が1mm以上の場合にはfθレンズや像側テレセントリックレンズで構成することが望ましい。
【符号の説明】
【0042】
2:静止基台
3:チャックテーブル機構
36:チャックテーブル
37:加工送り手段
38:第1の割り出し送り手段
4:レーザー光線照射ユニット支持機構
43:第2の割り出し送り手段
5:レーザー光線照射ユニット
52:レーザー光線照射手段
54:集光点位置調整手段
6:パルスレーザー光線発振手段
7:集光器
71:集光対物レンズ
8:レーザー光線分岐機構
80a、80b、80c:分岐ユニット
81:1/2波長板
82:第1のビームスプリッター
83:第1のミラー
84:第2のミラー
85:第2のビームスプリッター
830、840:角度調整手段
9:集光スポット間隔モニターユニット
10:制御手段
12:撮像手段
20:半導体ウエーハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9