特許第5940936号(P5940936)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5940936
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】レーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/064 20140101AFI20160616BHJP
   B23K 26/067 20060101ALI20160616BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20160616BHJP
【FI】
   B23K26/064 A
   B23K26/067
   B23K26/00 M
   B23K26/064 G
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-183485(P2012-183485)
(22)【出願日】2012年8月22日
(65)【公開番号】特開2014-39949(P2014-39949A)
(43)【公開日】2014年3月6日
【審査請求日】2015年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】沢辺 大樹
【審査官】 岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/084874(WO,A1)
【文献】 特開2007−000931(JP,A)
【文献】 特開2011−005537(JP,A)
【文献】 特開2007−152355(JP,A)
【文献】 特開2012−016722(JP,A)
【文献】 特開2010−052014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/064
B23K 26/00
B23K 26/067
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段とを相対的に加工送りする加工送り手段と、該チャックテーブルに保持された被加工物の上面の高さ位置を計測する高さ位置計測手段とを具備し、
該レーザー光線照射手段は、加工用のレーザー光線を発振する加工用レーザー光線発振器と、該加工用レーザー光線発振器が発振する加工用レーザー光線を常光と異常光に分離する複屈折レンズと、該複屈折レンズによって分離された常光と異常光をそれぞれ集光して常光の集光点と異常光の集光点とからなる2個の集光点を形成する対物集光レンズを具備している、レーザー加工装置において、
該高さ位置計測手段は、計測用のレーザー光線を発振する計測用レーザー光線発振器と、該計測用レーザー光線発振器から発振された計測用レーザー光線を該複屈折レンズおよび該対物集光レンズが配設された第1の経路に導くとともに該複屈折レンズおよび該対物集光レンズを通して照射され該チャックテーブルに保持された被加工物の上面で反射し該対物集光レンズおよび該複屈折レンズを介して導かれた反射光を第2の経路に導く第1のビームスプリッターと、該第2の経路に導かれた反射光を第3の経路と第4の経路に分光する第2のビームスプリッターと、該第3の経路に分光された反射光を受光する第1のホトデテクターと、該第4の経路に配設され該第4の経路に分光された反射光を遮光して中央部の反射光を通過させるマスクと、該マスクを通過した反射光を受光する第2のホトデテクターと、該第1のホトデテクターによって受光した光量と該第2のホトデテクターによって受光した光量との比率を求め、該比率に基づいてチャックテーブルに保持された被加工物の高さ位置を求める制御手段と、を具備しており、
該第1のビームスプリッターと該複屈折レンズとの間には、該複屈折レンズを介し該対物集光レンズによって形成される集光点を1個の集光点に調整する集光点調整手段が配設されている、
ことを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項2】
集光点調整手段は、該第1のビームスプリッターを通過した直線偏光の計測用レーザー光線を円偏光に変換する1/4波長板と、該1/4波長板と該複屈折レンズとの間に所定の間隔を持って配設された第3のビームスプリッターおよび第4のビームスプリッターと、該第3のビームスプリッターによって分岐され第5の経路に導かれた計測用レーザー光線を該第4のビームスプリッターに合流させる互いに所定の間隔を持って配設された第1の反射体および第2の反射体と、該第3のビームスプリッターと該第4のビームスプリッターとの間に配設された集光点調整レンズとを具備している、請求項1記載のレーザー加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等の被加工物に対して透過性を有するレーザー光線を照射し、被加工物の内部に改質層を形成するレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、シリコン基板、サファイア基板、炭化珪素基板、リチウムタンタレート基板、ガラス基板或いは石英基板の如き適宜の基板を含むウエーハの表面に格子状に形成されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、ウエーハをストリートに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々の半導体デバイスを製造している。ウエーハを分割するための方法としては、レーザー光線を利用する種々の様式が提案されている。
【0003】
半導体ウエーハ等の板状の被加工物を分割する方法として、その被加工物に対して透過性を有するパルスレーザー光線を用い、分割すべき領域の内部に集光点を合わせてパルスレーザー光線を照射するレーザー加工方法も試みられている。このレーザー加工方法を用いた分割方法は、被加工物の一方の面側から内部に集光点を合わせて被加工物に対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を照射し、被加工物の内部にストリートに沿って改質層を連続的に形成し、この改質層が形成されることによって強度が低下したストリートに沿って外力を加えることにより、被加工物を分割するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかるに、ウエーハに外力を加えてストリートに沿って精密に破断せしめるためには、改質層の厚さ、即ちウエーハの厚さ方向における改質層の寸法を大きくすることが必要である。上述したレーザー加工方法によって形成される改質層の厚さはパルスレーザー光線の集光点近傍において10〜50μmであるため、改質層の厚さを増大せしめるためにはパルスレーザー光線の集光点の位置をウエーハの厚さ方向に変位せしめて、パルスレーザー光線とウエーハとをストリートに沿って繰り返し相対的に移動せしめることが必要である。従って、特にウエーハの厚さが比較的厚い場合、ウエーハを精密に破断するのに必要な厚さの改質層の形成に長時間を要する。
【0005】
上記問題を解消するため、レーザー光線を複屈折レンズによって常光と異常光とに分離し、分離された常光と異常光をそれぞれ集光レンズによって集光せしめ、常光の集光点と異常光の集光点とを形成するレーザー加工装置が下記特許文献2に開示されている。
【0006】
また、チャックテーブルに保持された半導体ウエーハ等の被加工物の高さ位置を検出する高さ位置計測手段を装備したレーザー加工装置も実用化されている。この高さ位置計測手段としては、検出用レーザー光線を集光レンズを通してチャックテーブルに保持された被加工物の上面に照射し、その反射光の面積に基いてチャックテーブルに保持された被加工物の高さ位置を計測する方式が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3408805号公報
【特許文献2】特許第4791248号公報
【特許文献3】特許第4734101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
而して、複屈折レンズを用いたレーザー加工装置においては、複屈折レンズを通して高さ位置計測用の検出光をチャックテーブルに保持された被加工物の上面に照射すると、被加工物の上面で反射した反射光が2個存在するため、チャックテーブルに保持された被加工物の上面の高さ位置を正確に計測することができないという問題がある。
【0009】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、レーザー光線を複屈折レンズによって常光と異常光とに分離し、分離された常光と異常光をそれぞれ集光レンズによって集光せしめ、常光の集光点と異常光の集光点とを形成することができるとともに、複屈折レンズおよび集光レンズを通して高さ位置計測用の検出光をチャックテーブルに保持された被加工物の上面に照射することによりチャックテーブルに保持された被加工物の上面の高さ位置を正確に計測することができるレーザー加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記主たる技術的課題を解決するために、本発明によれば、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段とを相対的に加工送りする加工送り手段と、該チャックテーブルに保持された被加工物の上面の高さ位置を計測する高さ位置計測手段とを具備し、
該レーザー光線照射手段は、加工用のレーザー光線を発振する加工用レーザー光線発振器と、該加工用レーザー光線発振器が発振する加工用レーザー光線を常光と異常光に分離する複屈折レンズと、該複屈折レンズによって分離された常光と異常光をそれぞれ集光して常光の集光点と異常光の集光点とからなる2個の集光点を形成する対物集光レンズを具備している、レーザー加工装置において、
該高さ位置計測手段は、計測用のレーザー光線を発振する計測用レーザー光線発振器と、該計測用レーザー光線発振器から発振された計測用レーザー光線を該複屈折レンズおよび該対物集光レンズが配設された第1の経路に導くとともに該複屈折レンズおよび該対物集光レンズを通して照射され該チャックテーブルに保持された被加工物の上面で反射し該対物集光レンズおよび該複屈折レンズを介して導かれた反射光を第2の経路に導く第1のビームスプリッターと、該第2の経路に導かれた反射光を第3の経路と第4の経路に分光する第2のビームスプリッターと、該第3の経路に分光された反射光を受光する第1のホトデテクターと、該第4の経路に配設され該第4の経路に分光された反射光を遮光して中央部の反射光を通過させるマスクと、該マスクを通過した反射光を受光する第2のホトデテクターと、該第1のホトデテクターによって受光した光量と該第2のホトデテクターによって受光した光量との比率を求め、該比率に基づいてチャックテーブルに保持された被加工物の高さ位置を求める制御手段と、を具備しており、
該第1のビームスプリッターと該複屈折レンズとの間には、該複屈折レンズを介し該対物集光レンズによって形成される集光点を1個の集光点に調整する集光点調整手段が配設されている、
ことを特徴とするレーザー加工装置が提供される。
【0011】
上記集光点調整手段は、第1のビームスプリッターを通過した直線偏光の計測用レーザー光線を円偏光に変換する1/4波長板と、該1/4波長板と複屈折レンズとの間に所定の間隔を持って配設された第3のビームスプリッターおよび第4のビームスプリッターと、第3のビームスプリッターによって分岐された第5の経路に導かれた計測用レーザー光線を第4のビームスプリッターに合流させる互いに所定の間隔を持って配設された第1の反射体および第2の反射体と、第3のビームスプリッターと第4のビームスプリッターとの間に配設された集光点調整レンズとを具備している。
【発明の効果】
【0012】
本発明のレーザー加工装置においては、高さ位置計測手段は複屈折レンズを通り対物集光レンズによって集光される計測用レーザー光線の集光点を1個の集光点に調整する集光点調整手段を備えているので、複屈折レンズおよび対物集光レンズを介して照射される異常光に対応するP偏光のレーザー光線と常光に対応するS偏光のレーザー光線が同じ位置に集光されるため、被加工物の上面で反射する反射光は1個となる。従って、屈折レンズを用いたレーザー加工装置においても計測用レーザー光線の反射光が2個生成されることがないため、チャックテーブルに保持された被加工物の上面の高さ位置を正確に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図。
図2図1に示すレーザー加工装置に装備されるレーザー光線照射手段および高さ位置計測手段の構成を示すブロック図。
図3図2に示す高さ位置計測手段を構成する集光点調整手段の作動を示す説明図。
図4図2に示す高さ位置計測手段の計測用レーザー光線をチャックテーブルに保持された被加工物の上面に照射した状態を示す説明図。
図5図2に示す高さ位置計測手段の計測用レーザー光線の照射位置により照射面積が変化する状態を示す説明図。
図6図2に示す高さ位置計測手段の第1のホトデテクターから出力される電圧値(V1)と第2のホトデテクターから出力される電圧値(V2)との比と、チャックテーブルに保持された被加工物の高さとの関係を示す制御マップ。
図7図1に示すレーザー加工装置に装備される制御手段を示すブロック図。
図8】被加工物としての半導体ウエーハの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1には、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図が示されている。図1に示すレーザー加工装置は、静止基台2と、該静止基台2に矢印Xで示す加工送り方向に移動可能に配設され被加工物を保持するチャックテーブル機構3と、静止基台2に上記矢印Xで示す方向(X軸方向)と直角な矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット支持機構4と、該レーザー光線照射ユニット支持機構4に矢印Zで示す方向(Z軸方向)に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット5とを具備している。
【0016】
上記チャックテーブル機構3は、静止基台2上に矢印Xで示す加工送り方向に沿って平行に配設された一対の案内レール31、31と、該案内レール31、31上に矢印Xで示す加工送り方向に(X軸方向)移動可能に配設された第一の滑動ブロック32と、該第1の滑動ブロック32上に矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動可能に配設された第2の滑動ブロック33と、該第2の滑動ブロック33上に円筒部材34によって支持されたカバーテーブル35と、被加工物保持手段としてのチャックテーブル36を具備している。このチャックテーブル36は多孔性材料から形成された吸着チャック361を具備しており、吸着チャック361上に被加工物である例えば円盤状の半導体ウエーハを図示しない吸引手段によって保持するようになっている。このように構成されたチャックテーブル36は、円筒部材34内に配設された図示しないパルスモータによって回転せしめられる。なお、チャックテーブル36には、後述する環状のフレームを固定するためのクランプ362が配設されている。
【0017】
上記第1の滑動ブロック32は、その下面に上記一対の案内レール31、31と嵌合する一対の被案内溝321、321が設けられているとともに、その上面に矢印Yで示す割り出し送り方向に沿って平行に形成された一対の案内レール322、322が設けられている。このように構成された第1の滑動ブロック32は、被案内溝321、321が一対の案内レール31、31に嵌合することにより、一対の案内レール31、31に沿って矢印Xで示す加工送り方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第1の滑動ブロック32を一対の案内レール31、31に沿って矢印Xで示す加工送り方向に移動させるための加工送り手段37を具備している。加工送り手段37は、上記一対の案内レール31と31の間に平行に配設された雄ネジロッド371と、該雄ネジロッド371を回転駆動するためのパルスモータ372等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド371は、その一端が上記静止基台2に固定された軸受ブロック373に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ372の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド371は、第1の滑動ブロック32の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ372によって雄ネジロッド371を正転および逆転駆動することにより、第一の滑動ブロック32は案内レール31、31に沿って矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動せしめられる。
【0018】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記チャックテーブル36のX軸方向位置を検出するためのX軸方向位置検出手段374を備えている。X軸方向位置検出手段374は、案内レール31に沿って配設されたリニアスケール374aと、第1の滑動ブロック32に配設され第1の滑動ブロック32とともにリニアスケール374aに沿って移動する読み取りヘッド374bとからなっている。このX軸方向位置検出手段374の読み取りヘッド374bは、図示の実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36のX軸方向位置を検出する。
【0019】
上記第2の滑動ブロック33は、その下面に上記第1の滑動ブロック32の上面に設けられた一対の案内レール322、322と嵌合する一対の被案内溝331、331が設けられており、この被案内溝331、331を一対の案内レール322、322に嵌合することにより、矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第2の滑動ブロック33を第1の滑動ブロック32に設けられた一対の案内レール322、322に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動させるための第1の割り出し送り手段38を具備している。第1の割り出し送り手段38は、上記一対の案内レール322と322の間に平行に配設された雄ネジロッド381と、該雄ネジロッド381を回転駆動するためのパルスモータ382等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド381は、その一端が上記第1の滑動ブロック32の上面に固定された軸受ブロック383に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ382の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド381は、第2の滑動ブロック33の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ382によって雄ネジロッド381を正転および逆転駆動することにより、第2の滑動ブロック33は案内レール322、322に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動せしめられる。
【0020】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記第2の滑動ブロック33のY軸方向位置を検出するためのY軸方向位置検出手段384を備えている。Y軸方向位置検出手段384は、案内レール322に沿って配設されたリニアスケール384aと、第2の滑動ブロック33に配設され第2の滑動ブロック33とともにリニアスケール384aに沿って移動する読み取りヘッド384bとからなっている。このY軸方向位置検出手段384の読み取りヘッド384bは、図示の実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36のY軸方向位置を検出する。
【0021】
上記レーザー光線照射ユニット支持機構4は、静止基台2上に矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に沿って平行に配設された一対の案内レール41、41と、該案内レール41、41上に矢印Yで示す方向に移動可能に配設された可動支持基台42を具備している。この可動支持基台42は、案内レール41、41上に移動可能に配設された移動支持部421と、該移動支持部421に取り付けられた装着部422とからなっている。装着部422は、一側面に矢印Zで示す方向に延びる一対の案内レール423、423が平行に設けられている。図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット支持機構4は、可動支持基台42を一対の案内レール41、41に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動させるための第2の割り出し送り手段43を具備している。第2の割り出し送り手段43は、上記一対の案内レール41、41の間に平行に配設された雄ネジロッド431と、該雄ネジロッド431を回転駆動するためのパルスモータ432等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド431は、その一端が上記静止基台2に固定された図示しない軸受ブロックに回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ432の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド431は、可動支持基台42を構成する移動支持部421の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された雌ネジ穴に螺合されている。このため、パルスモータ432によって雄ネジロッド431を正転および逆転駆動することにより、可動支持基台42は案内レール41、41に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動せしめられる。
【0022】
図示の実施形態のおけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51と、該ユニットホルダ51に取り付けられたレーザー光線照射手段52を具備している。ユニットホルダ51は、上記装着部422に設けられた一対の案内レール423、423に摺動可能に嵌合する一対の被案内溝511、511が設けられており、この被案内溝511、511を上記案内レール423、423に嵌合することにより、矢印Zで示す焦点位置調整方向(Z軸方向)に移動可能に支持される。
【0023】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51を一対の案内レール423、423に沿って矢印Zで示す焦点位置調整方向(Z軸方向)に移動させるための集光点位置調整手段53を具備している。集光点位置調整手段53は、一対の案内レール423、423の間に配設された雄ネジロッド(図示せず)と、該雄ネジロッドを回転駆動するためのパルスモータ532等の駆動源を含んでおり、パルスモータ532によって図示しない雄ネジロッドを正転および逆転駆動することにより、ユニットホルダ51およびレーザー光線照射手段52を案内レール423、423に沿って矢印Zで示す集光点位置調整方向(Z軸方向)に移動せしめる。なお、図示の実施形態においてはパルスモータ532を正転駆動することによりレーザー光線照射手段52を上方に移動し、パルスモータ532を逆転駆動することによりレーザー光線照射手段52を下方に移動するようになっている。
【0024】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット5は、レーザー光線照射手段52のZ軸方向位置を検出するためのZ軸方向位置検出手段55を具備している。Z軸方向位置検出手段55は、上記案内レール423、423と平行に配設されたリニアスケール551と、上記ユニットホルダ51に取り付けられユニットホルダ51とともにリニアスケール551に沿って移動する読み取りヘッド552とからなっている。このZ軸方向位置検出手段55の読み取りヘッド552は、図示の実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。
【0025】
図示のレーザー光線照射手段52は、実質上水平に配置された円筒形状のケーシング521を含んでいる。このケーシング521内には図2に示すように加工用パルスレーザー光線発振器522と、この加工用パルスレーザー光線発振器522が発振する加工用パルスレーザー光線をチャックテーブル36に向けて方向変換するダイクロイックミラー523と、該ダイクロイックミラー523によって方向変換された加工用パルスレーザー光線を常光と異常光に分離する複屈折レンズ524と、該複屈折レンズ524によって分離された常光と異常光をそれぞれ集光して常光の集光点と異常光の集光点とからなる2個の集光点を形成する対物集光レンズ527を具備している。加工用パルスレーザー光線発振器522は、被加工物に対して透過性を有する直線偏光のパルスレーザー光線LB1を発振する。この加工用パルスレーザー光線発振器522は、被加工物がシリコン基板、炭化珪素基板、リチウムタンタレート基板、ガラス基板或いは石英基板を含むウエーハである場合、例えば波長が1064nmであるパルスレーザー光線LB1を発振するYVO4パルスレーザー発振器或いはYAGパルスレーザー発振器を用いることができる。
【0026】
上記複屈折レンズ524は、図示の実施形態においてはLASF35ガラス体525と、YVO4結晶体526とによって構成されている。LASF35ガラス体525は所定の曲率(例えば曲率半径が58mm)を有する凸面525aを備え、YVO4結晶体526はガラス体525の凸面525aと対応する曲率を有する凹面526aを備えており、ガラス体525の凸面525aと結晶体526の凹面526aが結合して構成されている。このように構成された複屈折レンズ524は、ダイクロイックミラー523によって方向変換されたパルスレーザー光線LB1がYVO4結晶体526の光学軸に対して所定の角度をもって入射されると、パルスレーザー光線LB1を図において実線で示す常光LB1aと破線で示す異常光LB1bに分離する。即ち、複屈折レンズ524は、常光LB1aについては屈折させずにそのまま通過させ、異常光LB1bについては凹面526aを備えた結晶体526によって外側に屈折させる。なお、パルスレーザー光線LB1をYVO4結晶体526の光学軸に対して所定の角度をもって入射させるようにするには、複屈折レンズ524を入射するパルスレーザー光線LB1の光軸を中心として回動して調整してもよく、また、加工用パルスレーザー光線発振器522を発振するパルスレーザー光線の光軸を中心として回動して調整してもよい。
【0027】
上記対物集光レンズ527は、複屈折レンズ524によって分離された常光LB1aと異常光LB1bをそれぞれ集光せしめる。即ち、対物集光レンズ527は、常光LB1aについては被加工物Wの内部における集光点Paに集光せしめ、異常光LB1bについては被加工物Wの内部における集光点Pbに集光せしめる。この集光点Pbは、異常光LB1bが上述したように複屈折レンズ524によって外側に屈折せしめられているので、常光LB1aの集光点Paより深い位置(図2において下方位置)、即ち対物集光レンズ527から光軸方向に離れた位置となる。
なお、図2に示す実施形態における複屈折レンズ524はガラス体525が凸面525aを備え結晶体526が凹面526aを備えた例を示したが、ガラス体に凹面を備え結晶体に凸面を備えた構成にしてもよい。このこのように構成した場合には、異常光の集光点が常光の集光点より浅い位置(図2において上方位置)、即ち光軸方向に対物集光レンズ527に近い位置となる。
【0028】
上述したようにパルスレーザー光線LB1の常光LB1aが集光点Paに集光せしめられると、これに起因して集光点Paの近傍、通常は集光点Paから上方に向かって厚さT1を有する領域で被加工物Wに改質層W1が形成される。また、パルスレーザー光線LB1の異常光LB1bが集光点Pbに集光せしめられると、集光点Pb近傍、通常は集光点Pbから上方に向かって厚さT2を有する領域で被加工物Wに改質層W2が生成される。
【0029】
図2を参照して説明を続けると、図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、チャックテーブル36に保持された被加工物Wの上面高さ位置を計測するための高さ位置計測手段6を具備している。高さ位置計測手段6は、所定の波長領域を有する光を発する発光源としての計測用レーザー光線を発振する計測用レーザー光線発振器61と、該計測用レーザー光線発振器61から発振された計測用のレーザー光線を上記複屈折レンズ524および対物集光レンズ527が配設された第1の経路60aに導くとともに複屈折レンズ524および対物集光レンズ527を通して照射されチャックテーブル36に保持された被加工物Wの上面で反射し対物集光レンズ527および複屈折レンズ524を介して導かれた反射光を第2の経路60bに導く第1のビームスプリッター62を具備している。
【0030】
計測用レーザー光線発振器61は、上記加工用パルスレーザー光線発振器522から発振される加工用パルスレーザー光線の波長と異なり被加工物Wに対して反射性を有する波長の例えば波長が632nmの計測用レーザー光線LB2を発振するHe-Neレーザー発振器を用いることができる。
【0031】
図示の実施形態における高さ位置計測手段6は、第2の経路60bに配設され第1のビームスプリッター62によって反射された反射光を第3の経路60cと第4の経路60dに分岐する第2のビームスプリッター63を具備している。第3の経路60cには、第2のビームスプリッター63によって分岐された反射光を100%集光する第1の集光レンズ64aと、該第1の集光レンズ64aによって集光された反射光を受光する第1のホトデテクター65aが配設されている。なお、上記第1のホトデテクター65aは、受光した光量に対応した電圧信号を後述する制御手段に送る。また、上記第4の経路60dには、第2のビームスプリッター63によって分岐された反射光を集光する第2の集光レンズ64bと、該第2の集光レンズ64bによって集光された反射光の両側を遮光して中央部の反射光を帯状に通過させるスリット661を備えたマスク66と、該スリット661を通過した反射光を受光する第2のホトデテクター65bが配設されている。なお、マスク66に設けられたスリット661は、紙面に垂直な方向に細長い形状に形成されている。また、上記第2のホトデテクター65bは、受光した光量に対応した電圧信号を後述する制御手段に送る。
【0032】
図2に示す実施形態における高さ位置計測手段6は、計測用レーザー光線発振器61から発振された計測用レーザー光線LB2の対物集光レンズ527によって形成される集光点を1個の集光点に調整する集光点調整手段7を具備している。集光点調整手段7は、計測用レーザー光線発振器61と第1のビームスプリッター62との間に配設された1/2波長板71と、第1のビームスプリッター62を通過した計測用レーザー光線の直線偏光を円偏光に変換する1/4波長板72と、該1/4波長板72と上記ダイクロイックミラー523との間に所定の間隔を持って配設された第3のビームスプリッター73および第4のビームスプリッター74と、第3のビームスプリッター73によって分岐され第5の経路60eに導かれた計測用レーザー光線を第4のビームスプリッター74に合流させる互いに所定の間隔を持って配設された第1の反射体75および第2の反射体76と、第3のビームスプリッター73と第4のビームスプリッター74との間に配設された集光点調整レンズ77とを具備している。なお、上記第3のビームスプリッター73と第1の反射体75および第4のビームスプリッター74と第2の反射体76は、プリズム体等によってそれぞれ一体に形成してもよい。また、上記集光点調整レンズ77は、図示の実施形態においては焦点距離(f)が130mmに設定されている。この集光点調整レンズ77は、第1の反射体75と第2の反射体76との間に配設してもよい。
【0033】
図2に示す実施形態における集光点調整手段7は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
(1)計測用レーザー光線発振器61から発振された計測用レーザー光線LB2は、第1のビームスプリッター62に対してP偏光のレーザー光線のみが入光するように1/2波長板71を回転して調整される。ただし、計測用レーザー光線発振器61を回転させたり、伝送用の光ファイバーを回転させて第1のビームスプリッター62に対してP偏光のレーザー光線のみが入光するように調整してもよい。
(2)第1のビームスプリッター62を通過したP偏光のレーザー光線は、1/4波長板72によって円偏光に変換され、図3に示すように第3のビームスプリッター73に導かれて異常光に対応するP偏光と常光に対応するS偏光に分岐される。
(3)第3のビームスプリッター73によって分岐された異常光に対応するP偏光のレーザー光線は、図3に示すように第3のビームスプリッター73と第4のビームスプリッター74との間に配設された集光点調整レンズ77によって、上記複屈折レンズ524により外側に屈折される角度と対応して相殺する角度だけ内側に屈折せしめられて第4のビームスプリッター74に導かれる。
(4)第3のビームスプリッター73によって分岐された常光に対応するS偏光のレーザー光線は、図3に示すように第1の反射体75および第2の反射体76を介して第4のビームスプリッター74に導かれる。
(5)第4のビームスプリッター74に導かれたP偏光のレーザー光線とS偏光のレーザー光線は、図3に示すように第4のビームスプリッター74によって合流されて複屈折レンズ524に導かれる。
(6)複屈折レンズ524に導かれたP偏光のレーザー光線とS偏光のレーザー光線とが合流されたレーザー光線のうち異常光に対応するP偏光は、上述したように集光点調整レンズ77によって複屈折レンズ524により外側に屈折される角度と対応して相殺する角度だけ内側に屈折せしめられているので、図3に示すように常光に対応するS偏光のレーザー光線と同様に平行光となって対物集光レンズ527に導かれる。
(7)対物集光レンズ527に導かれたP偏光のレーザー光線とS偏光のレーザー光線はともに平行光として入光するため、図3に示すようにP偏光のレーザー光線とS偏光のレーザー光線は同じ位置に集光され、集光点P0が一致する。
【0034】
以上のように集光点調整手段7を備えた高さ位置計測手段6においては、複屈折レンズ524および対物集光レンズ527を介して照射される異常光に対応するP偏光のレーザー光線と常光に対応するS偏光のレーザー光線が同じ位置に集光されるので、被加工物の上面で反射する反射光は1個となる。従って、屈折レンズ524を用いたレーザー加工装置においても計測用レーザー光線LB2の反射光が2個生成されることがないため、チャックテーブルに保持された被加工物の上面の高さ位置を正確に計測することができる。
【0035】
上述した集光点調整手段7を備えた図2に示す実施形態における高さ位置計測手段6は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
計測用レーザー光線発振器61から発振された計測用レーザー光線LB2は、上述したように集光点調整手段7および複屈折レンズ524を介して対物集光レンズ527により集光されてチャックテーブル36に保持された被加工物Wの上面に1個の集光点を持って照射される。チャックテーブル36に保持された被加工物Wの上面に照射された計測用レーザー光線LB2は、被加工物Wの表面(上面)に照射されるスポットの面積で反射する。例えば、図4に示すようにチャックテーブル36に保持された被加工物Wに計測用レーザー光線LB2を照射する場合、計測用レーザー光線LB2は被加工物Wの表面(上面)に照射されるスポットの面積Sで反射する。
【0036】
チャックテーブル36に保持された被加工物Wの上面で反射された計測用レーザー光線LB2の反射光は、対物集光レンズ527、複屈折レンズ524、ダイクロイックミラー523、第4のビームスプリッター74、第3のビームスプリッター73、第2の反射体76、第1の反射体75、1/4波長板72、第1のビームスプリッター62を逆行する。1/4波長板72に到達した反射光は回転方向が逆転した円偏光となっているため、1/4波長板72を通過することでS偏光のレーザー光線となり、第1のビームスプリッター62によって屈折し第2の経路60bに導かれ、第2のビームスプリッター63に達する。
【0037】
第2のビームスプリッター63に達した計測用レーザー光線LB2の反射光は、該第2のビームスプリッター63によって第3の経路60cと第4の経路60dに分岐される。第3の経路60cに分岐された計測用レーザー光線LB2の反射光は、第1の集光レンズ64aによって集光され第1のホトデテクター65aに100%受光される。そして、第1のホトデテクター65aは、受光した光量に対応した電圧値(V1)を後述する制御手段に送る。一方、第4の経路60dに分岐された計測用レーザー光線LB2の反射光は、第2の集光レンズ64bによって集光される。このように第2の集光レンズ64bによって集光された計測用レーザー光線LB2の反射光は、マスク66のスリット661を通過した一部が第2のホトデテクター65bに受光される。そして第2のホトデテクター65bは、受光した光量に対応した電圧値(V2)を後述する制御手段に送る。従って、第2のホトデテクター65bから出力される電圧値(V2)は、計測用レーザー光線LB2の集光点の被加工物に対する位置によって変化する。
【0038】
ここで、第1のホトデテクター65aと第2のホトデテクター65bによって受光される計測用レーザー光線LB2の反射光の受光量について説明する。
第1のホトデテクター65aに受光される反射光は、上述したように100%受光されるのでスポットの面積にかかわらず受光量は一定であり、第1のホトデテクター65aから出力される電圧値(V1)は一定(例えば10V)となる。一方、第2のホトデテクター65bによって受光される反射光は、第2の集光レンズ64bによって集光された後にマスク66によって一部が遮蔽されて第2のホトデテクター65bに受光されるので、図4に示すように計測用レーザー光線LB2が被加工物Wの上面に照射される際に、対物集光レンズ527から被加工物Wの上面までの距離、即ち被加工物Wの高さ位置(厚み)によってスポットの面積が変化することで第2のホトデテクター65bの受光量は変化する。従って、第2のホトデテクター65bから出力される電圧値(V2)は、計測用レーザー光線LB2が照射される被加工物Wの上面高さ位置によって変化する。
【0039】
例えば、図5の(a)に示すように被加工物Wの高さ位置が低く(被加工物Wの厚みが薄く)対物集光レンズ527から被加工物Wの上面までの距離(H)が大きい場合には、計測用レーザー光線LB2は被加工物Wの上面に照射されるスポットS1で反射する。この反射光は上述したように第2のビームスプリッター63によって第3の経路60cと第4の経路60dに分岐されるが、第3の経路60cに分岐されたスポットS1の反射光は第1の集光レンズ64aによって集光され、反射光の全ての光量が第1のホトデテクター65aに受光される。一方、第2のビームスプリッター63によって第4の経路60dに分岐されたスポットS1の反射光は、第2の集光レンズ64bによって集光された後、上述したようにマスク66によって一部が遮蔽されて第2のホトデテクター65bによって受光されることになる。従って、第2のホトデテクター65bに受光される反射光の光量は上述した第1のホトデテクター65aに受光される光量より少なくなる。
【0040】
次に、図5の(b)に示すように被加工物Wの高さ位置が高く(被加工物Wの厚みが厚く)対物集光レンズ527から被加工物Wの上面までの距離(H)が小さい場合には、計測用レーザー光線LB2は被加工物Wの上面に照射されるスポットS2で反射する。このスポットS2は上記スポットS1より大きい。このスポットS2の反射光は上述したように第2のビームスプリッター63によって第3の経路60cと第4の経路60dに分岐されるが、第3の経路60cに分岐されたスポットS2の反射光は第1の集光レンズ64aによって集光され、反射光の全ての光量が第1のホトデテクター65aに受光される。一方、第2のビームスプリッター63によって第4の経路60dに分岐されたスポットS2の反射光は、第2の集光レンズ64bによって集光された後、上述したようにマスク66によって一部が遮蔽されて第2のホトデテクター65bによって受光されることになる。反射光のスポットS2は上記スポットS1より大きいのでマスク66によって遮蔽される割合が多くなる。従って、第2のホトデテクター65bによって受光される光量は、上記図5の(a)に示す場合より少なくなる。このように第2のホトデテクター65bに受光される反射光の光量は、対物集光レンズ527から被加工物Wの上面までの距離(H)、即ち被加工物Wの高さ位置が低い(被加工物Wの厚みが薄い)程多く、対物集光レンズ527から被加工物Wの上面までの距離(H)、即ち被加工物Wの高さ位置が高い(被加工物Wの厚みが厚い)程少なくなる。
【0041】
ここで、上記第1のホトデテクター65aから出力される電圧値(V1)と第2のホトデテクター65bから出力される電圧値(V2)との比と、対物集光レンズ527から被加工物Wの上面までの距離(H)、即ち被加工物Wの高さ位置との関係について、図6に示す制御マップを参照して説明する。なお、図6において横軸はレンズ527から被加工物Wの上面までの距離に対する変位量を示し、縦軸は第1のホトデテクター65aから出力される電圧値(V1)と第2のホトデテクター65bから出力される電圧値(V2)との比(V2/V1)を示している。図6から判るように対物集光レンズ527から被加工物Wの上面までの上記距離に対する変位量が大きくなる程(被加工物Wの厚みが厚く、チャックテーブルに保持された被加工物Wの高さ位置が高くなり距離が短くなる程)、電圧値の比(V2/V1)が小さくなる。従って、上述したように第1のホトデテクター65aから出力される電圧値(V1)と第2のホトデテクター65bから出力される電圧値(V2)との比(V2/V1)を求め、この電圧値の比(V2/V1)を図6に示す制御マップに照合することにより、上記距離の変位量を求めることができ、この変位量を対物集光レンズ527の焦点距離(集光点位置までの距離)から減算することにより対物集光レンズ527から被加工物Wの上面までの距離(H)を求めることができる。例えば、対物集光レンズ527の焦点が被加工物Wの上面に位置付けられると上記電圧値の比(V2/V1)が1となり変位量は0となる。なお、図6に示す制御マップは、後述する制御手段のメモリに格納される。
【0042】
図1に戻って説明を続けると、上記レーザー光線照射手段52を構成するケーシング521の先端部には、レーザー光線照射手段52によってレーザー加工すべき加工領域を検出する撮像手段9が配設されている。この撮像手段9は、可視光線によって撮像する通常の撮像素子(CCD)の外に、被加工物に赤外線を照射する赤外線照明手段と、該赤外線照明手段によって照射された赤外線を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を後述する制御手段に送る。
【0043】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、図7に示す制御手段10を具備している。制御手段10はコンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)101と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)102と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)103と、入力インターフェース104および出力インターフェース105とを備えている。制御手段10の入力インターフェース104には、上記X軸方向位置検出手段374、Y軸方向位置検出手段384、Z軸方向位置検出手段55の読み取りヘッド552、第1のホトデテクター65a、第2のホトデテクター65bおよび撮像手段9等からの検出信号が入力される。そして、制御手段10の出力インターフェース105からは、上記パルスモータ372、パルスモータ382、パルスモータ432、パルスモータ532、加工用パルスレーザー光線発振器522、計測用レーザー光線発振器61等に制御信号を出力する。なお、上記ランダムアクセスメモリ(RAM)103は、上述した図6に示す制御マップを格納する第1の記憶領域103a、後述する被加工物の設計値のデータを記憶する第2の記憶領域103b、後述する半導体ウエーハ20の高さ位置を記憶する第3の記憶領域103cや他の記憶領域を備えている。
【0044】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
図8にはレーザー加工される被加工物として半導体ウエーハ20の斜視図が示されている。図8に示す半導体ウエーハ20は、シリコンウエーハからなっており、その表面20aに格子状に配列された複数のストリート201によって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイス202が形成されている。
【0045】
上述したレーザー加工装置を用い、上記半導体ウエーハ20の分割予定ライン201に沿ってレーザー光線を照射し、半導体ウエーハ20の内部にストリート201に沿って改質層を形成するレーザー加工の実施形態について説明する。なお、半導体ウエーハ20の内部に改質層を形成する際に、半導体ウエーハ20の厚さにバラツキがあると、上述したように屈折率の関係で所定の深さに均一に改質層を形成することができない。そこで、レーザー加工を施す前に、上述した高さ位置計測手段6によってチャックテーブル36に保持された半導体ウエーハ20の高さ位置を計測する。
即ち、先ず上述した図1に示すレーザー加工装置のチャックテーブル36上に半導体ウエーハ20の裏面20bを上にして載置し、該チャックテーブル36上に半導体ウエーハ20を吸引保持する。半導体ウエーハ20を吸引保持したチャックテーブル36は、加工送り手段37によって撮像手段9の直下に位置付けられる。
【0046】
チャックテーブル36が撮像手段9の直下に位置付けられると、撮像手段9および制御手段10によって半導体ウエーハ20のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段9および制御手段10は、半導体ウエーハ20の所定方向に形成されているストリート201と、該ストリート201に沿って半導体ウエーハ20の高さを計測する高さ位置計測手段6の対物集光レンズ527との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、アライメントを遂行する。また、半導体ウエーハ20に形成されている所定方向と直交する方向に形成されているストリート201に対しても、同様にアライメントが遂行される。このとき、半導体ウエーハ20のストリート201が形成されている表面20aは下側に位置しているが、撮像手段9が上述したように赤外線照明手段と赤外線を捕らえる光学系および赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成された撮像手段を備えているので、裏面20bから透かしてストリート201を撮像することができる。
【0047】
そして、チャックテーブル36上に保持されている半導体ウエーハ20に形成されているストリート201を検出し、高さ計測位置のアライメントが行われたならば、チャックテーブル36を移動して計測開始位置のストリート201の一端を対物集光レンズ527の直下に位置付ける。そして、高さ位置計測手段6を作動するとともに、チャックテーブル36を矢印Xで示す方向に移動し、送り終了位置まで移動する(高さ位置計測工程)。この結果、半導体ウエーハ20の計測開始位置のストリート201における高さ位置(対物集光レンズ527から被加工物Wの上面までの距離(H))を上述したように計測することができる。この計測された高さ位置(対物集光レンズ527から被加工物Wの上面までの距離(H))は、上記ランダムアクセスメモリ(RAM)103の第2に記憶領域103bに格納されているストリート201の座標値に対応して第3の記憶領域103cに格納される。このようにして、半導体ウエーハ20に形成された全てのストリート201に沿って高さ位置計測工程を実施し、各ストリート201における高さ位置を上記ランダムアクセスメモリ(RAM)103の第3の記憶領域103cに格納する。
【0048】
以上のようにして半導体ウエーハ20に形成された全てのストリート201に沿って高さ位置計測工程を実施したならば、半導体ウエーハ20の内部にストリート201に沿って改質層を形成する改質層形成工程を実施する。
この改質層形成工程を実施するに際しては、制御手段10はランダムアクセスメモリ(RAM)103の第3の記憶領域103cに格納されている半導体ウエーハ20のストリート201における高さ位置に基いて、集光点位置調整手段53のパルスモータ532を制御し、対物集光レンズ527を半導体ウエーハ20のストリート201における高さ位置に対応して上下方向に移動せしめる。この結果、半導体ウエーハ20の内部には、裏面20b(上面)から所定の深さ位置に裏面20b(上面)と平行に2層の改質層が形成される。
【0049】
以上のようにして、半導体ウエーハ20の全てのストリート201に沿って上記レーザー加工工程を実施したならば、半導体ウエーハ20を保持しているチャックテーブル36は、最初に半導体ウエーハ20を吸引保持した位置に戻され、ここで半導体ウエーハ20の吸引保持を解除する。そして、半導体ウエーハ20は、図示しない搬送手段によって分割工程に搬送される。
【符号の説明】
【0050】
2:静止基台
3:チャックテーブル機構
36:チャックテーブル
37:加工送り手段
374:X軸方向位置検出手段
38:第1の割り出し送り手段
384:Y軸方向位置検出手段
4:レーザー光線照射ユニット支持機構
42:可動支持基台
43:第2の割り出し送り手段
5:レーザー光線照射ユニット
52:レーザー光線照射手段
522:加工用パルスレーザー光線発振器
523:ダイクロイックミラー
524:複屈折レンズ
527:対物集光レンズ
6:高さ位置計測手段
61:計測用レーザー光線発振器
62:第1のビームスプリッター
63:第2のビームスプリッター
64a:第1の集光レンズ
64b:第2の集光レンズ
65a:第1のホトデテクター
65b:第2のホトデテクター
66:マスク
7:集光点調整手段
71:1/2波長板
72:1/4波長板
73:第3のビームスプリッター
74:第4のビームスプリッター
75:第1の反射体
76:第2の反射体
77:集光点調整レンズ
9:撮像手段
10:制御手段
20:半導体ウエーハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8