【実施例】
【0027】
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げて、本発明の効果について具体的に説明する。
【0028】
(第1実施例)
先ず、本発明の第1実施例として、スルファミン酸による臭化アンモニウムと次亜塩素酸ナトリウムとの反応生成物の安定化効果について調べた。具体的には、pH4.5の0.01M酢酸緩衝液に、スルファミン酸を濃度5.5mg/Lとなるように添加した後、臭化アンモニウムと次亜塩素酸ナトリウムとの反応生成物を、有効塩素塩素濃度が約2mg/Lとなるように添加し、液温を約30℃に保持して静置した。そして、経時的に、有効塩素濃度と酸化還元電位(ORP)を測定した。
【0029】
また、比較例として、スルファミン酸添加なしの液を調整し、前述した実施例と同様の方法で、有効塩素濃度と酸化還元電位(ORP)を測定した。以上の結果を、下記表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
上記表1に示すように、スルファミン酸を添加していない比較例1の液では、経時的に有効塩素濃度が低下し、酸化還元電位(ORP)が上昇した。これは、臭化アンモニウムと次亜塩素酸ナトリウムとの反応生成物が、酸性化により酸化力が強い物質に変化し、分解速度が上昇したためと考えられる。
【0032】
一方、スルファミン酸を添加した実施例1の液では、酸化還元電位(ORP)はほぼ一定であり、比較例1の液に比べて有効塩素濃度の低下速度も緩やかであった。この結果から、スルファミン酸を添加することにより、臭化アンモニウムと次亜塩素酸ナトリウムとの反応生成物が安定化されることが確認された。
【0033】
(第2実施例)
次に、本発明の第2実施例(実施例2)として、臭化アンモニウムと次亜塩素酸ナトリウムとの反応生成物とスルファミン酸とを併用することによる殺菌作用の持続性向上効果について調べた。具体的には、滅菌したpH4.5の0.01M酢酸緩衝液に、スルファミン酸及び臭化アンモニウムと次亜塩素酸ナトリウムとの反応生成物を、所定濃度になるように添加し、液温を約30℃に保持して静置した。
【0034】
そして、経時的に、有効塩素濃度を測定すると共に、液を10mL採取し、ヘプトン−酵母エキス培地で1日間培養したP.putia(シュードモナス・プチダ)を添加し、30℃で10分間振とうした。その後、寒天平板希釈法により菌数測定を行い、殺菌効果を確認した。更に、この液を5mL採取し、滅菌したpH4.5の0.01M酢酸緩衝液を5mL添加して2倍に希釈した。この2倍希釈液にも、前述したP.putia(シュードモナス・プチダ)を添加し、30℃で10分間振とうし、同様の方法で殺菌効果を確認した。
【0035】
また、比較例2として、スルファミン酸添加なしの液を調整し、前述した実施例2と同様の方法で、殺菌効果を確認した。更に、比較例3として、特許文献6に記載の方法のように予め反応生成物とスルファミン酸を混合した溶液を用いた液についても、殺菌効果を確認した。
【0036】
比較例3では、2900mg/Lの臭化アンモニウム水溶液と、有効塩素濃度が2000mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液とをライン混合し、その混合物に、pH11に調整したスルファミン酸ナトリウム溶液を3000mg/L添加した後、1分間撹拌して得た水溶液を調整した。そして、この水溶液を、滅菌したpH4.5の0.01M酢酸緩衝液に所定濃度添加し、前述した実施例2と同様の方法で殺菌効果を確認した。以上の結果を、下記表2にまとめて示す。
【0037】
【表2】
【0038】
上記表2に示すように、スルファミン酸を添加していない比較例2の液は、2倍に希釈すると2.5時間後に、希釈しない場合でも3.5時間後に、殺菌効果が低下した。一方、スルファミン酸を添加した実施例2の液は、2倍に希釈しても3.5時間以上殺菌効果を維持していた。
【0039】
また、反応生成物とスルファミン酸を予め混合したものを添加した比較例3の液は、実施例2の液に比べて、残留濃度の低下がやや速く、安定性が低下していた。また、有効塩素濃度が同程度(1.3mg/L程度)で比較しても、実施例2の液は2倍希釈の菌数が100CFU/mL未満であるのに対して、比較例3の液は2倍希釈で菌が検出され、殺菌効果が低下していた。以上の結果から、スルファミン酸を併用し、かつスルファミン酸と反応生成物とを混合せず、個別に水系に添加することにより、殺菌効果の持続性が向上することが確認された。
【0040】
(第3実施例)
次に、本発明の第3実施例として、段ボール製造に使用する白水を用いて殺菌効果の持続性を調べた。具体的には、段ボール原紙製造装置から採取したpH6.5の白水に、下記表3に示す各薬品を添加し、35℃で4時間振とうした。その後、振とう後の液の20質量%にあたる量の白水を添加して、更に30分間振とうしたものについて、寒天平板希釈法により菌数測定を行った。その結果を下記表3に示す。なお、下記表3には、薬品を添加していない液の菌数測定結果も併せて示す。
【0041】
【表3】
【0042】
上記表3に示すように、本実施例では、4時間振とう後に白水を20質量%加えることにより、8.1×10
7×0.2=1.6×10
7CFU/mLの菌を添加しているが、スルファミン酸を併用した実施例3,4の液では、スルファミン酸を添加していない比較例4,5の液に比べて、より優れた殺菌効果が得られた。また、次亜塩素酸ナトリウムとスルファミン酸を添加した比較例6の液では、クロロスルファミン酸が生成していると考えられるが、殺菌効果は確認できなかった。
【0043】
(第4実施例)
次に、本発明の第4実施例として、抄紙装置におけるスライムコントロール効果を調べた。具体的には、本実施例では、バージンパルプ(LBKP)と脱墨パルプ(DIP)とを配合して、pH7〜8で、塗工原紙を450t/日抄造している製造装置の白水サイロに、臭化アンモニウムと次亜塩素酸ナトリウムとの反応生成物を、有効塩素で93g/分の速度で30分間添加し、これを12回/日行った。その結果、白水中に、反応生成物が有効塩素として0.5mg/L残留し、優れた殺菌効果及びスライムコントロール効果が得られた。
【0044】
次に、反応生成物に加えて、種箱に、スルファミン酸ナトリウムを20g/分の速度で10分間添加し、これを24回/日行った。その結果、反応生成物添加前の白水の有効塩素濃度が1.5mg/Lに上昇し、菌数と相関するATP値が98000RLUから8000RLUに低下した。そこで、反応生成物の添加回数を6回/日に半減したが、反応生成物添加前の白水の有効塩素濃度は0.5mg/L以上を維持し、ATP値も98000RLU未満であった。
【0045】
このように、本実施例では、白水に添加する薬品の合計量を、スルファミン酸ナトリウム併用前の64質量%まで低減しても、同等の殺菌効果及びスライムコントロール効果が得られた。この結果から、スルファミン酸ナトリウムを添加することにより、薬品添加量を低減しても、同等の効果が得られることが確認された。
【0046】
(第5実施例)
次に、本発明の第5実施例として、酸性抄紙装置におけるスライムコントロール効果を調べた。具体的には、バージンパルプ(LBKP)を原料として、pH4〜5で、特殊紙を300t/日抄造している製造装置を用いて行った。この系は、白水が酸性であるため、分解が速い臭化アンモニウムと次亜塩素酸ナトリウムとの反応生成物は適用できず、白水サイロに、ブロモニトロエタノールを50g/分の速度で30分間添加しており、これを4回/日行っていた。
【0047】
そこで、本実施例では、種箱にスルファミン酸ナトリウムを20g/分の速度で15分間添加すると共に、白水サイロに臭化アンモニウムと次亜塩素酸ナトリウムとの反応生成物を50g/分の速度で15分間添加した。これらを同時刻に、4回/日行った。その結果、スルファミン酸の添加により、反応生成物の分解が抑制され、ブロモニトロエタノールよりも短時間の添加でも、良好なスライムコントロール効果が得られた。
【0048】
この結果から、スルファミン酸ナトリウムを併用することにより、酸性の水系においても殺菌効果が高い反応生成物の使用が可能となり、薬品の添加時間を短縮し、薬品使用量を削減できることが確認された。