(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、EUVマスクの反射層にイオンビームを照射すると多層構造にダメージを与え、反射率を大幅に低下させてしまうという問題があった。
【0006】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、EUVマスクの反射層の反射率を大幅に低下させることなく欠陥修正を行うEUVマスク修正装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のEUVマスク修正装置を提供するためには、EUVマスクへの照射ダメージの小さいイオンビームを用いなければならない。また、欠陥修正中にイオンビームの電流量が大きく変化すると加工の過不足が発生するので、安定した電流量のイオンビームをEUVマスクに照射しなければならない。さらに、EUVマスクは微細なパターンを有するので、高精度に欠陥修正しなければならない。そこで、この発明は以下の手段を提供している。
【0008】
本発明に係るEUVマスク修正装置は、水素イオンビームを発生する電界電離型イオン源と、水素イオンビームをEUVマスク上に集束させるイオン光学系と、EUVマスクを載置する試料台と、EUVマスクから発生する二次荷電粒子を検出する検出器と、検出器の出力信号に基づいてEUVマスクの観察像を形成する像形成部と、を有する。この発明に係るEUVマスク修正装置によれば、水素イオンビームをEUVマスクに照射して観察像を得るため、EUVマスクの反射層を形成する極薄膜の多層構造へのダメージを軽減することができる。
【0009】
また、本発明に係るEUVマスク修正装置は、電界電離型イオン源に水素ガスを供給する水素ガス供給源と、水素ガスを純化する純化器とを有する。この発明に係るEUVマスク修正装置によれば、電界電離型イオン源に高純度の水素ガスを供給することができる。これによりビーム電流量が安定した水素イオンビームを照射することができる。
【0010】
さらに、本発明に係るEUVマスク修正装置は、イオンを発生させるイオン発生室と、イオン発生室と真空試料室との間に中間室とを有する。これによれば、真空試料室からイオン発生室への不純物ガスの流入を軽減することができる。
【0011】
また、本発明に係るEUVマスク修正装置は、電界電離型イオン源と集束レンズ電極との間に水素イオンビームの電流量を測定するための電流測定電極を有する。これにより、電界電離型イオン源から照射された水素イオンビームの電流量を測定することができるので、測定した電流量に基づき、電界電離型イオン源が安定した電流量を照射するようにイオンビーム照射条件を制御することができる。
【0012】
さらに、本発明に係るEUVマスク修正装置の電界電離型イオン源とイオン光学系は、EUVマスク上にビーム径5nm以下の水素イオンビームを照射する。これにより微細なEUVマスクのパターンを精度良く修正することができる。
【0013】
また、本発明に係るEUVマスク修正装置は、EUVマスクへの水素イオンビームの照射量の上限値を4×10
16個/cm
2とする。この発明に係るEUVマスク修正装置によれば、EUVマスクの反射層を形成する極薄膜の多層構造へのダメージをさらに軽減することができる。
【0014】
本発明に係るEUVマスク修正装置は、EUVマスクにデポジションガスを供給するデポジションガス供給系を有する。この発明に係るEUVマスク修正装置によれば、EUVマスクにデポジションガスを供給し、水素イオンビームを照射することで局所的にデポジション膜を成膜することができるので、EUVマスクの吸収層の欠陥部分をデポジション膜で修正することができる。
【0015】
本発明に係るEUVマスク修正装置は、EUVマスクにエッチングガスを供給するエッチングガス供給系を有する。この発明に係るEUVマスク修正装置によれば、EUVマスクにエッチングガスを供給し、水素イオンビームを照射することで局所的に高速にエッチング加工することができるので、EUVマスクの吸収層の欠陥部分を効率よくエッチング加工して修正することができる。
【0016】
本発明に係るEUVマスク修正方法は、EUVマスクに水素イオンビームを走査照射し観察像を取得する観察工程と、観察像から欠陥修正位置を設定する修正位置設定工程と、欠陥修正位置に水素イオンビームを照射し欠陥を修正する欠陥修正工程と、を有する。この発明に係るEUVマスク修正方法によれば、EUVマスクに水素イオンビームを走査照射し観察像を取得するので、EUVマスクの反射層を形成する極薄膜の多層構造へのダメージを軽減することができる。
【0017】
さらに本発明に係るEUVマスク修正方法は、観察工程において、水素イオンビームの照射量の上限値を4×10
16個/cm
2とする。この発明に係るEUVマスク修正方法によれば、EUVマスクの反射層を形成する極薄膜の多層構造へのダメージをさらに軽減することができる。
【0018】
本発明に係るEUVマスク修正方法は、欠陥修正工程において、欠陥にデポジションガスを供給する。この発明に係るEUVマスク修正方法によれば、EUVマスクにデポジションガスを供給し、水素イオンビームを照射することで局所的にデポジション膜を成膜することができるので、EUVマスクの吸収層の欠陥部分をデポジション膜で修正することができる。
【0019】
本発明に係るEUVマスク修正方法は、欠陥修正工程において、欠陥にエッチングガスを供給する。この発明に係るEUVマスク修正方法によれば、EUVマスクにエッチングガスを供給し、水素イオンビームを照射することで局所的に高速にエッチング加工することができるので、EUVマスクの吸収層の欠陥部分を効率よくエッチング加工して修正することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るEUVマスク修正装置によれば、EUVマスクの反射層の反射率を大幅に低下させることなくEUVマスクの欠陥修正を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るEUVマスク修正装置の実施形態について説明する。
【0023】
(1)EUVマスク修正装置
本実施形態のEUVマスク修正装置100は、
図1に示すように、イオン源12で発生したイオンを真空試料室11内に載置された試料3上に集束させる集束レンズ電極16と対物レンズ電極17とを備えるイオン光学系を備えたイオンビーム鏡筒1と、イオンビーム鏡筒1からのイオンビーム2を試料3に照射することにより発生した二次電子4を検出する二次電子検出器5(二次荷電粒子検出器)と、試料3表面にガスを供給するガス供給系6と、試料3を固定する試料ホルダ7と、試料3を移動させる試料ステージ8とを備えている。ここで試料3から発生した二次イオンを検出する場合は二次荷電粒子検出器として二次イオン検出器を用いる。また試料3から発生した反射イオンを検出する場合は二次荷電粒子検出器として反射イオン検出器を用いる。さらに、イオンビーム2の走査信号と二次電子検出器5の検出信号から観察像を形成する像形成部9と、観察像を表示する表示部10とを備えている。
【0024】
(2)イオン源
イオン源12は電界電離型イオン源であり、
図2に示すように、イオン発生室21と、エミッタ22と、引出電極23と、冷却装置24とを備えている。
【0025】
イオン発生室21の壁部に冷却装置24が配設されており、冷却装置24のイオン発生室21に臨む面に針状のエミッタ22が装着されている。冷却装置24は、内部に収容された液体窒素、液体ヘリウム等の冷媒によってエミッタ22を冷却するものである。また冷却装置24としてGM型、パルスチューブ型等のクローズドサイクル式冷凍機、ガスフロー型の冷凍機を使用しても良い。そして、イオン発生室21の開口端近傍に、エミッタ22の先端22aと対向する位置に開口部を有する引出電極23が配設されている。
【0026】
イオン発生室21は、図示略の排気装置を用いて内部が所望の高真空状態に保持されるようになっている。イオン発生室21には、ガス導入管43、44、45を介して水素ガス供給源40が接続されており、イオン発生室21内に微量の水素ガスを供給するようになっている。
【0027】
エミッタ22は、タングステンやモリブデンからなる針状の基材に、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、金等の貴金属を被覆したものからなる部材であり、その先端22aは原子レベルで尖鋭化されたピラミッド状になっている。別にエミッタ22は、タングステンやモリブデンからなる針状の基材を図示しない窒素ガスや酸素ガスを導入することにより、その先端22aを原子レベルで尖鋭化したものを使用しても良い。またエミッタ22は、イオン源の動作時には冷却装置24によって100K程度以下の低温に保持される。エミッタ22と引出電極23との間には、電源27によって電圧が印加されるようになっている。
【0028】
エミッタ22と引出電極23との間に電圧が印加されると、鋭く尖った先端22aにおいて非常に大きな電界が形成されるとともに、分極してエミッタ22に引き寄せられた水素分子25が、先端22aのうちでも電界の高い位置で電子をトンネリングにより失って水素イオンとなる。そして、この水素イオンが正電位に保持されているエミッタ22と反発して引出電極23側へ飛び出し、引出電極23の開口部からイオン光学系1bへ射出された水素イオン28がイオンビーム2を構成する。電界電離型イオン源の場合、水素分子イオンと水素原子イオンが含まれ、電圧によりその割合が変化する。通常の使用条件では水素イオンの大部分は水素分子イオンとなる。
【0029】
エミッタ22の先端22aは極めて尖鋭な形状であり、水素イオンはこの先端22aから飛び出すため、イオン源1から放出されるイオンビーム2のエネルギー分布幅は極めて狭く、例えば、プラズマ型ガスイオン源や液体金属イオン源と比較して、ビーム径が小さくかつ高輝度のイオンビームを得ることができる。
【0030】
なお、エミッタ22への印加電圧が大きすぎると、水素イオンとともにエミッタ22の構成元素(タングステンや白金)が引出電極23側へ飛散するため、動作時(イオンビーム放射時)にエミッタ22に印加する電圧は、エミッタ22自身の構成元素が飛び出さない程度の電圧に維持される。
【0031】
一方、このようにエミッタ22の構成元素を操作できることを利用して、先端22aの形状を調整することができる。例えば、先端22aの最先端に位置する元素を故意に取り除いてガスをイオン化する領域を広げ、イオンビーム径を大きくすることができる。
【0032】
またエミッタ22は、加熱することで表面の貴金属元素を飛び出させることなく再配置させることができるため、使用により鈍った先端22aの尖鋭形状を回復することもできる。
【0033】
ところで、イオン発生室21に供給する水素ガスに水分子が含まれていると、エミッタ22に水が吸着し突起となり、水素イオンがイオンビームの光軸とは別方向に放出される。水分子の吸着はランダムに起こるため、これにより、光軸方向に放出されるイオンビーム2の電流量が大きく変化してしまうことがある。それを避けるために、イオン発生室21に供給する水素ガスを純化する。
【0034】
ガス導入管43、44、45として金属配管を用いる。特に電界研磨により表面粗さを小さくしたSUS−EP管を用いることが好ましい。そして、事前にこのガス導入管43、44、45を数100℃まで加熱することで管の内面への水の吸着を軽減する。
【0035】
また、水素ガス供給源40から供給する水素ガスを純化する純化器を設置する。第一の純化器41は、複数の活性金属で構成されるゲッター材に不純物ガスを吸着させる、もしくは加熱したパラジウム薄膜を透過させることで水素ガスを純化する。第二の純化器は、液体窒素を用いたコールドトラップにより不純物を取り除く。
【0036】
これにより9N(99.9999999%)以上の高純度水素ガスを供給することができる。ここで、純化器は第一の純化器もしくは第二の純化器のみを用いても良い。また、純化器は水素ガス供給源40に組み込むことも可能である。
【0037】
さらに、真空試料室11からイオン発生室21への不純物ガスの流入を軽減するためにイオンビーム鏡筒1内に真空状態の中間室13を設置する。中間室13内はイオン発生室12を排気するための排気装置とは異なる排気ポンプ14により排気される。そして、イオン発生室21で発生したイオンビーム2は、真空室間の小さい径の穴からを通過し、真空試料室11に照射される。イオン発生室12と中間室13との間に穴111を、中間室13と真空試料室11との間に穴112を備えている。ここで、中間室13は対物レンズ電極17を収容し、穴112の位置が対物レンズ電極17よりも真空試料室11側にあってもよい。特に欠陥修正でデポジション膜の原料ガスやエッチングガスを真空試料室11で用いた場合、原料ガスやエッチングガスの不純物ガスのイオン発生室21への流入を軽減することができる。
【0038】
(3)イオン光学系
イオン光学系は、イオン源12側から真空試料室11側に向けて順に、イオンビーム2を集束させる集束レンズ電極16と、イオンビーム2を試料3上に集束させる対物レンズ電極17とを備えて構成される。
【0039】
このような構成のイオンビーム鏡筒1では、ソースサイズ1nm以下、イオンビームのエネルギー広がりも1eV以下にできるため、ビーム径を5nm以下に絞ることができる。図示していないがイオンの原子番号を選別するためのExB等のマスフィルターを備えていても良い。
【0040】
(4)電流量測定
イオンビーム鏡筒1は、イオン源12と集束レンズ電極16との間にイオンビーム2の電流量を測定するための電流測定用電極18を備えている。電流測定用電極18に接続された電流計19で電流測定用電極18に照射されたイオンビームの電流量を測定する。そして、電流計19で測定される電流量が一定になるように、イオン源12の引出電極23を制御する。これにより、安定した電流量のイオンビーム2を試料3に照射することができる。
【0041】
(5)ガス供給系
ガス供給系6は、試料3表面にデポジション膜の原料ガス(例えば、フェナントレン、ナフタレンなどのカーボン系ガス、プラチナやタングステンなどの金属を含有する金属化合物ガスなど)を原料容器からガスノズルを通して供給する構成になっている。
【0042】
また、エッチング加工を行う場合は、エッチングガス(例えば、フッ化キセノン、塩素、ヨウ素、三フッ化塩素、一酸化フッ素、水など)を原料容器からガスノズルを通して供給することができる。
【0043】
(6)EUVマスク
試料3として用いるEUVマスクは、
図3に示すように、ガラス基板34上にMo/Siの多層構造の反射層33、バッファー層32、吸収体31(パターン形状)から構成されている。EUVリソグラフィでは、EUVマスクにEUV光を照射し、反射した光を用いてマスクパターンを転写する。EUVマスクの吸収体31のパターン形状に欠陥が存在すると欠陥ごと転写してしまうため、欠陥修正が必要である。
【0044】
EUVマスクのパターン寸法は、例えば22nmノードに対応するプロセスの場合、ライン&スペースのハーフピッチが88nmであり、要求される欠陥修正精度は、3シグマでおよそ2nm以下である。
【0045】
(7)EUVマスクのイオンビーム照射ダメージ
本願発明者らはEUVマスクのイオンビーム照射ダメージについて、シミュレーションと実験を行った。実験では、反射層であるMo/Siの多層構造にイオンビームを照射したときのEUVマスクのダメージ状態を調べた。
【0046】
加速電圧30kV、ビーム照射量4×10
15個/cm
2、4×10
16個/cm
2、4×1
0
17個/cm
2のヘリウムイオンビームを照射し、照射後のMo/Siの多層構造の断面TEM(透過型電子顕微鏡)像を取得した。その結果、ビーム照射量4×10
16個/cm
2、4×10
17個/cm
2のヘリウムイオンを照射したEUVマスクでは、試料表面からの深さ280nmまでMo/Siの多層構造にミキシングが起こっていることがわかった。また、モンテカルロ法によるイオン注入過程のシミュレーションを実施したところイオンの注入深さは実験結果と一致した。また、イオンビーム照射後のEUVマスクのEUV光に対する反射率を測定したところ、ビーム照射量4×10
16個/cm
2、4×10
17個/cm
2のイオンビーム照射により大幅に反射率が低下していることがわかった。
【0047】
これより、反射層にイオンビームを照射することで多層構造にミキシングが起こり、EUVマスクのEUV光に対する反射率が低下することがいえる。そして、ビーム照射量が大きいほどダメージが大きいことがいえる。ヘリウムイオンビームでは、ビーム照射量4×10
15個/cm
2の場合、反射率の低下は小さいことがわかったが、ビーム照射量が小さいため欠陥修正箇所の修正を行うには不十分な照射量である。
【0048】
ここで本願発明者らは、ヘリウムイオンよりも原子番号の小さい水素イオンに着目した。モンテカルロ法によるイオン注入過程のシミュレーションを実施し、入射イオンを注入した際の試料内部の反挑原子の数を比較すると、入射イオンが水素イオンの場合、ヘリウムイオンよりも約1/10であるという結果が得られた。この知見からEUVマスクの修正に用いるビームとして水素イオンビームが有効であるという着想に至った。
【0049】
そこで本願発明者らは、水素イオンビームの照射量とEUVマスクの反射層のダメージ状態の関係を調べる実験を行った。加速電圧30kV、ビーム照射量4×10
16個/cm
2、4×10
17個/cm
2の水素イオンビームを照射し、照射後のMo/Siの多層構造の断面TEM(透過型電子顕微鏡)像を取得した。その結果、ビーム照射量4×10
16個/cm
2の場合の断面TEM像では、ダメージの状態が、ヘリウムイオンビームのビーム照射量4×10
15個/cm
2の場合とほぼ同等であることがわかった。すなわち、ビーム照射量4×10
16個/cm
2の水素イオンビームを照射しても、反射層の反射率の低下は小さく、かつ、欠陥修正箇所の修正を行うのに十分な照射量であるので実用的であるといえる。また、ミキシングが起こっている領域は試料表面からの深さ140nmであることがわかった。この結果はモンテカルロ法によるイオン注入過程のシミュレーションの結果とも一致した。これより水素イオンビームを用いれば、EUVマスクへのダメージを軽減しながら欠陥修正することができるといえる。
【0050】
<実施例1>
本願の実施例について、
図4のフローチャートに沿って説明する。試料ホルダ7上に載置された試料3であるEUVマスクの欠陥位置を、試料ステージ8を移動させ、イオンビーム2の照射領域に移動させる。イオンビーム鏡筒1から水素イオンビームをEUVマスクに走査照射して、EUVマスクから発生する二次電子4を二次電子検出器5で検出する。水素イオンビームの走査信号と二次電子検出器5の検出信号から像形成部9においてEUVマスクの観察像を取得する(観察像取得工程S1)。
【0051】
次に、取得した観察像を表示部10に表示し、欠陥部分にイオンビーム照射領域を設定する修正位置設定を行う(修正位置設定工程S2)。これによりイオンビーム照射位置を決定する。
【0052】
次に、欠陥が吸収体パターンの余剰欠陥である場合、ガス供給系6からエッチングガスとして、フッ化キセノンを試料3の表面に供給し、イオンビーム照射領域に水素イオンビームを照射して欠陥修正加工を実施する(欠陥修正工程S3)。余剰欠陥部分がエッチング加工されたら加工を終了する。また、欠陥が吸収体パターンの欠落欠陥の場合、ガス供給系6からデポジションガスとして、フェナントレンガスを試料3の表面に供給し、イオンビーム照射領域に水素イオンビームを照射して欠陥修正加工を実施する。これにより欠陥部分にデポジション膜を堆積させて欠陥を修正する。
【0053】
修正結果を確認し(S4)、修正が完了していれば終了する。修正が完了していない場合は、観察像取得工程S1に戻り再度修正を行う。
【0054】
イオンビームのイオン種として水素イオンを用いることで、欠陥修正箇所の修正の際にイオンビームを照射することで生じる反射層へのイオンビーム照射ダメージを、ヘリウムイオンを用いた場合に比べて大きく軽減することができる。よって反射層のEUV光に対する反射率低下を軽減することができる。
【0055】
<実施例2>
EUVマスクへの水素イオンビーム照射量の上限値を4×10
16個/cm
2とする実施例について説明する。
図5はEUVマスクの一部の表面図であり、反射層33上に吸収体31のパターンが設置されている。EUVマスクの欠陥51を含む観察領域52にイオンビーム2を走査照射し、発生する二次電子4を二次電子検出器5で検出して観察領域52の観察像を取得する。そして、取得した観察像上で修正位置を設定し、欠陥を修正する。修正が完了していない場合は再び観察領域52にイオンビーム2を走査照射し、観察像を取得し、観察像上で追加加工のための修正位置を設定する。
【0056】
水素イオンビーム照射量の上限値とは、ある照射領域に照射するイオンの量の上限値である。上記の修正プロセスでは、欠陥51に照射する総イオン量が上限値に達しないようにする。
【0057】
欠陥51は数nmから1ミクロンメートル以下の寸法であり、欠陥の大きさに合わせて加工領域を設定する。イオンビーム電流は5pA以下を使用し、あらかじめ測定しておく。加工領域、電流から単位面積あたりに照射されるドーズ量を計算し、照射可能な最大時間を表示する。これによりオペレータは照射量の上限値に注意しながら修正作業を行うことができる。また、上限値に達した場合は、同一観察領域にはイオンビーム2を照射できないように制御することができる。これにより上限値を超えてEUVマスクへイオンビームを照射することを防止することができる。