特許第5941700号(P5941700)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5941700
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20160616BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   H01L27/04 P
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-35137(P2012-35137)
(22)【出願日】2012年2月21日
(65)【公開番号】特開2013-172000(P2013-172000A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2014年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】郡司 智博
【審査官】 宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−216607(JP,A)
【文献】 特開2001−308202(JP,A)
【文献】 特開2002−124629(JP,A)
【文献】 特開2007−081530(JP,A)
【文献】 特開2002−313940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/822
H01L 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板と、
該シリコン基板上に形成された酸化膜と、
該酸化膜上に形成されたP型ポリシリコン抵抗及びN型ポリシリコン抵抗と
を備え、
前記P型ポリシリコン抵抗と前記N型ポリシリコン抵抗とが直列に接続されており、かつ前記P型ポリシリコン抵抗と前記N型ポリシリコン抵抗とが以下の関係式
【数1】

(ここで、R(P)、R(N)は周辺との電位差が0Vの時のP型,N型ポリシリコン抵抗の抵抗値、l(P)、l(N)はP型,N型のポリシリコン抵抗の長さを示す)
を満たすことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記P型ポリシリコン抵抗と前記N型ポリシリコン抵抗とが、シリサイド層を介して接続されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記P型ポリシリコン抵抗と前記N型ポリシリコン抵抗とが配線層を介して接続され、かつ前記配線層が前記酸化膜に接していないことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシリコン抵抗を有する半導体装置に関し、より詳細には、周辺の電位による抵抗値変化の低減をするためにポリシリコン抵抗の抵抗値を安定させるようにした半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体集積回路では、抵抗素子、コンデンサ、トランジスタ等の素子を組み合わせて所望の電子回路を構成している。このため、各素子は、特性がなるべく変わらないことが望ましい。抵抗素子を例にすると、抵抗素子の抵抗値が変化してしまうことは、電子回路を構成する上で極めて好ましいことではない。しかしながら、多くの抵抗素子が、ポリシリコンや拡散層を素材としており、その周辺(上面や下面)の半導体基板や配線層と、抵抗素子との電位差で空乏層の広がり状態が変わり、導電領域の幅が変わる。このため、抵抗素子の抵抗値が変化する。
【0003】
一方で、この周辺との電位差と抵抗値変動の関係は、P型ポリシリコンとN型ポリシリコンで逆方向(符号が逆)であるため、両者を直列に繋ぐことでその影響を相殺する効果があると考えられる。
例えば、特許文献1に記載のものは、印加電圧と半導体基板との電位差によって生じたポリシリコン抵抗の電圧依存性による抵抗値の変動を抑制するようにした半導体装置に関するもので、ポリシリコン抵抗の表面に半導体基板との電位差により生じた電荷を除去するために、高電位側だけを半導体基板と同電位に維持することで実現している。つまり、ポリシリコン抵抗と第1導電型の半導体基板上に形成された第2導電型のエピタキシャル層が電極と配線により同電位になるように接続することで、ポリシリコン抵抗とエピタキシャル層が常に同電位になるようにし、電位差の発生を抑制している。
【0004】
また、例えば、特許文献2に記載のものは、サリサイド構造のCMOSトランジスタを含む半導体装置に適した抵抗素子とその製造方法に関するもので、ポリシリコン膜パターンの一端から所要の長さの部分をN型領域、他端を含んだ残部がP型領域からなる構造とすることで、所要占有面積で所望の抵抗値を得られたり、所望の温度係数を得られるようにしたものである。つまり、P型ポリシリコンとN型ポリシリコンを直列に繋いだ構造をとっているため、両者の抵抗値変動を相殺する効果が期待できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−282725号公報
【特許文献2】特開2001−308202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1では、ポリシリコン抵抗と第1導電型の半導体基板上に形成された第2導電型のエピタキシャル層が電極と配線により同電位になるように接続しているため、第1導電型の半導体基板と第2導電型のエピタキシャル層のPN接合が順方向となる電位条件では、電流が抵抗素子ではなく、半導体基板へと流れてしまうという問題がある。したがって、回路上の抵抗素子に印加することができる電位の極性条件に制限が生じていた。また、エピタキシャル層を電気的に分離するために、抵抗素子の外周に素子分離層が必要となり、レイアウト面積を増大させるという問題がある。
【0007】
また、上述した特許文献2では、周辺との電位差による抵抗値変動の抑制を目的として最適化された構造ではないため、形成条件(抵抗値、長さ等)によってはP型ポリシリコン抵抗とN型ポリシリコン抵抗の抵抗値変動量に差が出る場合も考えられ、その場合には直列抵抗の変動を抑制しきれないという問題がある。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、抵抗素子の使用可能な電位の極性条件の制限が無く、レイアウト面積を増大させずに、周辺との電位差の影響を受けずに抵抗値が安定した、P型ポリシリコン抵抗とN型ポリシリコン抵抗の直列抵抗素子を有する半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、シリコン基板と、該シリコン基板上に形成された酸化膜と、該酸化膜上に形成されたP型ポリシリコン抵抗及びN型ポリシリコン抵抗とを備え、前記P型ポリシリコン抵抗と前記N型ポリシリコン抵抗とが直列に接続されており、かつ前記P型ポリシリコン抵抗と前記N型ポリシリコン抵抗とが以下の関係式
【0009】
【数1】
【0010】
(ここで、R(P)、R(N)は周辺との電位差が0Vの時のP型,N型ポリシリコン抵抗の抵抗値、l(P)、l(N)はP型,N型のポリシリコン抵抗の長さを示す)
を満たすことを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記P型ポリシリコン抵抗と前記N型ポリシリコン抵抗とが、シリサイド層を介して接続されていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記P型ポリシリコン抵抗と前記N型ポリシリコン抵抗とが配線層を介して接続され、かつ前記配線層が前記酸化膜に接していないことを特徴とする
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ソース,ドレインの形成イオン注入工程を利用し、工程の追加なく、周辺との電位差に依存しないポリシリコン抵抗を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る半導体装置の実施例1を説明するための断面構成図である。
図2】本発明に係る半導体装置の実施例2を説明するための断面構成図である。
図3】本発明に係る半導体装置の実施例3を説明するための断面構成図である。
図4】P型,N型のポリシリコン抵抗において、基板電位を変化させたときの基板電位に対する抵抗値の変動率を調査した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の各実施例について説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明に係る半導体装置の実施例1を説明するための断面構成図で、図中符号1はP型ポリシリコン抵抗、2はN型ポリシリコン抵抗、3はコンタクト、4はLOCOS(Local Oxidation of Silicon)酸化膜、5はシリコン基板、6はシリサンド層(TiSix)、7はAL配線(配線層)を示している。
本発明に係る半導体装置は、シリコン基板5と、このシリコン基板5上に形成されたLOCOS酸化膜4と、このLOCOS酸化膜4上に形成されたP型ポリシリコン抵抗1及びN型ポリシリコン抵抗2とを備えている。
【0016】
また、本発明に係る半導体装置は、周辺との電位差による抵抗値の変動が、P型ポリシリコン1とN型ポリシリコン抵抗2で逆方向であることを利用し、P型ポリシリコン抵抗1とN型ポリシリコン抵抗2を直列に繋ぐことで周辺との電位差による抵抗値変化を相殺するものである。その際、N型ポリシリコン抵抗2とP型ポリシリコン抵抗1の抵抗値、長さの条件を規定することで、効率的に抵抗値変動を相殺し、周辺との電位差による抵抗値変動が極力小さくなるポリシリコン抵抗を提供するものである。
【0017】
周辺との電位差による抵抗値の変化率は、ポリシリコン抵抗のシート抵抗値に依存しており、その傾向は、P型,N型で逆方向(符号が逆)となる。したがって、ポリシリコンの厚み、幅が一定とした場合、周辺との電位差無しの時のP型,N型ポリシリコン抵抗の抵抗値及び長さの比が次の関係式を満たすように形成し、それらを直列に接続することで、抵抗値の周辺との電位差による影響を相殺することが出来る。
つまり、P型ポリシリコン抵抗1とN型ポリシリコン抵抗2とは直列に接続されており、かつP型ポリシリコン抵抗1とN型ポリシリコン抵抗2が以下の関係式を満たしている。
【0018】
【数2】
【0019】
但し、P型,N型のPoly抵抗のシート抵抗値はどちらも400Ω/□以下である。
本発明に係る半導体装置は、直列に繋がれたP型,N型のポリシリコンの抵抗値及び長さが、上述した関係式を満たすことを特徴としている。
また、このP型,N型ポリシリコン抵抗は、同一基板上に形成されるMOSのソース,ドレインを形成するイオン注入工程を利用して形成することを特徴としている。
P型,N型ポリシリコン抵抗の境界部については、PN接合となり逆方向電流が流れにくくなるため、シリサイド層を形成するか、配線層に引き上げて接続することが望ましい。
【0020】
上述した図1は、同一のポリシリコンにレジストマスクを用いてイオン注入を行うことによりP型ポリシリコン抵抗1の領域と、N型ポリシリコン抵抗2の領域を作り分け、PN接合部にシリサイド層6を形成した構造を示している。これにより、PN接合の逆方向電圧が掛かった場合でも、PN接合部では、シリサイド層6を介して電流が流れるため、抵抗値への影響を排除することが出来る。
【実施例2】
【0021】
図2は、本発明に係る半導体装置の実施例2を説明するための断面構成図で、図中符号11はP型ポリシリコン抵抗、12はN型ポリシリコン抵抗、13はコンタクト、14はLOCOS酸化膜、15はシリコン基板、16はシリサンド層(TiSix)、17はAL配線(配線層)を示している。
P型ポリシリコン抵抗11とN型ポリシリコン抵抗12とが配線層17を介して接続され、かつこの配線層17がLOCOS酸化膜17に接していない構造となっている。
【0022】
P型ポリシリコン抵抗11とN型ポリシリコン抵抗12を別々に形成し、上層の配線層7を介して直列に接続させた構造を示している。このような構造にすることで、PN接合を作ることなくP型ポリシリコン11とN型ポリシリコン12を直列に繋ぐことが出来るので、電圧の方向に関係なく電流を流すことができる。
【実施例3】
【0023】
図3は、本発明に係る半導体装置の実施例3を説明するための断面構成図で、図中符号21はP型ポリシリコン抵抗、22はN型ポリシリコン抵抗、23はコンタクト、24はLOCOS酸化膜、25はシリコン基板、26はシリサンド層(TiSix)、27はAL配線(配線層)を示している。
LOCOS酸化膜24上にP型ポリシリコン抵抗21とN型ポリシリコン抵抗22とが直列に形成されており、P型ポリシリコン抵抗21とN型ポリシリコン抵抗22との境界部にはシリサイド層(TiSix)26を形成している。
ポリシリコンの厚み、幅が一定の場合、この直列抵抗の抵抗値Rは以下のように表される。
【0024】
【数3】
【0025】
(P)、l(N)はP型,N型のポリシリコン抵抗の長さ、ρS(P)、ρS(N)は基板との電位差なしの時のシート抵抗値、αB(P)、αB(N)は周辺との電位差に対する抵抗値の変動率を示す係数、Vは周辺との電位差を示している。
ここで、Vに依らずRが一定になるためには、VによるN型、P型ポリシリコン抵抗の抵抗値変動が常に相殺しなければならないため、以下の関係が成り立つ必要がある。
【0026】
【数4】
上式を整理すると以下のようになる。
【0027】
【数5】
【0028】
(P)、R(N)は、周辺との電位差が0Vの時のP型,N型ポリシリコン抵抗の抵抗値である。
【0029】
図4は、P型,N型のポリシリコン抵抗において、基板電位を変化させたときの基板電位に対する抵抗値の変動率を調査した結果を示す図である。基板電位の変化に伴い、ポリシリコン界面で空乏化が起こり抵抗値が変化するが、その変化の方向は、P型とN型のポリシリコン抵抗で逆符合になっている。ここで、本発明者らは、シート抵抗値400Ω/□以下の領域では、抵抗値の変動率αB(P)、αB(N)は、シート抵抗値を用いて次のように表すことが出来ることを見出した。
【0030】
【数6】
したがって、(3)式の関係は以下のように表すことが出来る。
【0031】
【数7】
【0032】
さらに、本発明者らは、上述した関係式が以下の条件を満たす場合に、接続抵抗の抵抗値変動量が、P型,N型ポリシリコン単体での変動量の10%以下に抑えることができることを見出したものである。
【0033】
【数8】
【0034】
P型,N型ポリシリコン抵抗21,22は、MOSのソース,ドレイン領域を形成するイオン注入工程を利用して形成しており、N型ポリシリコン抵抗22では、ヒ素(As)を加速エネルギー60[keV]で注入量1.3E+16[/cm2]、P型ポリシリコン抵抗21では、二フッ化ボロン(BF2)を加速エネルギー60[keV]で注入量3.7E+15[個/cm2]で注入した後、950[℃]程度の熱処理で拡散させることで、シート抵抗がそれぞれ98[Ω/□]、250[Ω/□]程度となるようなポリシリコン抵抗が形成される。
【0035】
周辺との電位差による抵抗値変動率は、ポリ抵抗のシート抵抗値に依存するため、注入量によっては抵抗値変動の大きいポリ抵抗が出来てしまうことがあるのに対して、本発明では、出来上がったポリシリコン抵抗のシート抵抗値に応じて関係式を満たすようなP型,N型ポリシリコンの長さの比を選択すればよいため、工程追加なしで容易に抵抗値変動のないポリシリコン抵抗を形成することができる。
【0036】
これらの抵抗を直列に接続して基板電位による抵抗値変動を抑制する条件は、(8)式によって計算でき、l(N)/l(P)が3.4〜5となるように形成すればよいことがわかる。
また、P型,N型ポリシリコン抵抗の接合部上面には、シリサイド層6を形成しているため、PN接合の逆バイアスとなった場合でも、抵抗値に影響しない。
【0037】
以上のような構造にすることで、効率的に抵抗値変動を相殺し、周辺との電位差による抵抗値変動が極力小さくなるポリシリコン抵抗を有する半導体装置を実現することができる。
【符号の説明】
【0038】
1,11,21 P型ポリシリコン抵抗
2,12,22 N型ポリシリコン抵抗
3,13,23 コンタクト
7,17,27 AL配線(配線層)
4,14,24 LOCOS(Local Oxidation of Silicon)酸化膜
5,15,25 シリコン基板
6,16,26 シリサンド層(TiSix)
図1
図2
図3
図4