(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置の一つに半導体チップ(ダイ)をリードフレームなどの基板にボンディングするダイボンダがある。ダイボンダでは、ボンディングヘッドでダイを真空吸着し、高速で上昇し、水平移動し、下降して基板に実装する。その場合、上昇、下降させるのが昇降(Z)駆動軸である。
【0003】
昨今、ダイボンダの高精度、高速化の要求が高く、特にボンディングの心臓部であるボンディングヘッドの高速化の要求が高い。
一般的に装置を高速化すると、高速移動物体による振動が大きくなり、この振動によって装置が目的とする精度を得るのが困難になる。
【0004】
この要求に答える技術として、特許文献1に記載のものがある。特許文献1は、ダイボンダなどの半導体製造装置の駆動軸としてリニアモータを用い、永久磁石とコイル側を反対方向に移動させ、振動を低減すると共に、ダンパーで永久磁石側を元の位置に戻す技術を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1は、平面における駆動軸にリニアモータを用いる技術を開示しているが、昇降軸にもリニアモータを用いる2軸駆動機構において、高速化及び振動の低減できる技術の開示はない。単に、リニアモータ駆動を採用すると、
図7に示すように、Z軸駆動のZ軸リニアモータの固定子及び可動子が共に水平、例えば、後述するY方向のY駆動軸の負荷なってしまう。Y駆動軸のトルクを大きくすると消費電力や振動が大きくなり、Z軸駆動のリニアモータの固定子及び可動子の重量を小さくすると、Z軸のトルクが小さくなってしまい、所定の高速化を実現できない。また、永久磁石側を元の位置に戻すダンパーを用いているので構造が複雑なる課題がある。
【0007】
従って、本発明の第1の目的は、簡単な構成でY(水平)軸による振動を低減できるZ(昇降)軸を含む2軸駆動機構及びそれを用いたダイボンダを提供することにある。
【0008】
また、本発明の第2の目的は、昇降軸の高速化を実現でき、しかもY(水平)軸による振動を低減でき、Z(昇降)軸を含む2軸駆動機構及びそれを用いたダイボンダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の目的を達成するために、少なくとも以下の特徴を有する。
本発明は、処理部と、前記処理部を第1のリニアガイドに沿って昇降する第1の可動部と第1の固定部とを備える第1のリニアモータと、前記処理部を前記昇降する方向とは垂直な水平方向に移動させる第2の可動部と第2の固定部とを備える第2のリニアモータと
、
前記第1の可動部と前記第2の可動部とを、前記第1のリニアガイドを介して直接的又は間接的に連結する連結部と、前記第1の固定部を固定する支持体と、前記支持体と前記第2の固定部
との間に設けられ、前記第2の固定部を自由に移動させる第2のリニアガイドと
、前記第1の可動部、前記第2の可動部及び前記連結部を一体となって前記水平方向に移動させる第3のリニアガイドと、前記支持体に対する前記第1の可動部の前記水平方向の位置を検出するリニアセンサと、前記リニアセンサの出力に基づいて、前記第1の可動部の前記水平方向の位置を制御する制御部と、を有することを第1の特徴とする。
【0010】
また、本発明は
、前記第1の可動部は、前記第2可動部
に対して垂直に設けられ、前記第2のリニアガイドと前記第3のリニアガイドとは互いに平行に設けられたことを第
2の特徴とする。
【0011】
また、本発明は
、前記第1の可動部は前記第2可動部
に対して平行に設けられ、前記第1の固定部も前記第2固定部に対し平行に設けられたことを第
3の特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記第2のリニアガイドを固定する前記支持体と前記連結部との間に第4のリニアガイドを設けたことを第
4の特徴とする。
さらに、本発明は、前記第1の
固定部に前記昇降する方向にN極、S極交互に複数組設けられた電磁石は、前記水平方向の所定
の領域に設けられていることを第
5の特徴とする。
【0013】
また、本発明は、第1乃至第
5の特徴に記載の2軸駆動機構の前記処理部によって基板に処理することを第
6の特徴とする。
さらに、本発明は、前記処理部はダイをウェハからピックアップし基板にボンディングするボンディングヘッド又は前記基板にダイ接着剤を塗布するニードルであることを第
7の特徴とする。
【0014】
また、本発明は、第
5の特徴に記載の前記所定
の領域は、前記ピックアップする領域及び前記ボンディングする領域であることを第
8の特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡単な構成でY(水平)軸振動を低減できるZ(昇降)軸を含む2軸駆動機構及びそれを用いたダイボンダを提供できる。
【0016】
また、本発明によれば、昇降軸の高速化を実現でき、しかもY(水平)軸振動を低減でき、Z(昇降)軸を含む2軸駆動機構及びそれを用いたダイボンダを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態であるダイボンダ10を上から見た概念図である。ダイボンダは大別してウェハ供給部1と、ワーク供給・搬送部2と、ダイボンディング部3と、これらの状態を監視し、制御する制御部7とを有する。
【0019】
ウェハ供給部1は、ウェハカセットリフタ11とピックアップ装置12とを有する。ウェハカセットリフタ11はウェハリングが充填されたウェハカセット(図示せず)を有し,順次ウェハリングをピックアップ装置12に供給する。ピックアップ装置12は、所望するダイをウェハリングからピックアップできるように、ウェハリングを移動する。
【0020】
ワーク供給・搬送部2はスタックローダ21と、フレームフィーダ22と、アンローダ23とを有し、ワーク(リードフレーム等の基板)を矢印方向に搬送する。スタックローダ21は、ダイを接着するワークをフレームフィーダ22に供給する。フレームフィーダ22は、ワークをフレームフィーダ22上の2箇所の処理位置を介してアンローダ23に搬送する。アンローダ23は、搬送されたワークを保管する。
ダイボンディング部3はプリフォーム部(ダイペースト塗布装置)31とボンディングヘッド部32とを有する。プリフォーム部31はフレームフィーダ22により搬送されてきたワーク、例えばリードフレームにニードルでダイ接着剤を塗布する。ボンディングヘッド部32は、ピックアップ装置12からダイをピックアップして上昇し、ダイをフレームフィーダ22上のボンディングポイントまで移動させる。そして、ボンディングヘッド部32はボンディングポイントでダイを下降させ、ダイ接着剤が塗布されたワーク上にダイをボンディングする。
【0021】
ボンディングヘッド部32は、ボンディングヘッド35(
図2参照)をZ(高さ)方向に昇降させ、Y方向に移動させるZY駆動軸60と、X方向に移動させX駆動軸70とを有する。ZY駆動軸60は、Y方向、即ちボンディングヘッドをウェハリングホルダ12内のピックアップ位置とボンディングポイントとの間を往復するY駆動軸40と、ダイをウェハからピックアップする又は基板にボンディングするために昇降させるZ駆動軸50とを有する。X駆動軸70は、ZY駆動軸60全体を、ワークを搬送する方向であるX方向に移動させる。X駆動軸70は、ボールネジをサーボモータで駆動する構成でもよいし、ZY駆動軸60の構成で説明するリニアモータで駆動する構成でもよい。
【0022】
以下、図を用いて本発明の特徴であるZY駆動軸60の実施形態を説明する。
図2乃至
図4は、第1の実施形態であるZY駆動軸60Aの基本構成を示す図である。
図2は、ZY駆動軸60Aのボンディングヘッド35が存在する
図1に示す位置おけるA−A断面図である。
図3は、
図2に示すZY駆動軸60Aを矢印Cの方向から見た矢視図である。
図4は、
図2におけるB−B断面図であり、本実施形態におけるY駆動軸による振動の発生を低減する考え方示す図である。
【0023】
第1の実施形態であるZY駆動軸60Aは、Y駆動軸40と、Z駆動軸50と、Y駆動軸40のY軸可動部41とZ駆動軸50とのZ軸可動部51を連結する連結部61と、処理部であるボンディングヘッド35と、ボンディングヘッド35をZ軸中心に回転させる回転駆動部80と、これら全体を支える横L字状の支持体62とを有する。なお、以下の説明を分かり易くするために、
図2、
図3において、Y軸可動部41、Z軸可動部51及び連結部61と一体になって移動する部分を白抜きで、その他の支持体62に固定されている部分は斜線で示している。また、支持体62は上部支持体62aと、側部支持体62bと、下部支持体62cと、Y駆動軸支持体62dとを有する。
【0024】
Y駆動軸40は、
図5に示すように、N極とS極の永久磁石が交互にY方向に多数配列された上下の固定磁石部47(47u、47d)を有する逆コの字状のY軸固定部42と、Y軸固定部とY駆動軸支持体62dとの間に設けられ、Y軸固定部42をY方向に移動可能するY軸固定部リニアガイド48とを有する。
また、Y駆動軸40は、前記配列方向に少なくとも1組のN極とS極の電磁石を有し、逆コの字状の凹部に挿入され凹部内を移動するY軸可動部41と、Y軸可動部41を支持する連結部61に固定され、連結部と下部の支持体62cとの間に設けられたY軸リニアガイド43を備えるY軸ガイド部44と、Y軸ガイド部、即ち後述するボンディングヘッド35のY方向の位置を検出するリニアスセンサ71と、を有する。
【0025】
Y軸固定部42は、Y軸可動部41が所定の範囲移動できるように
図1の破線で示すY駆動軸40略全域に亘って設けられている。また、Y軸固定部リニアガイド48、Y軸リニアガイド43は、それぞれ、Y方向に伸びる2つのリニアレール48a、43aとリニアレール上を移動するリニアスライダ48b、43bを有する。リニアセンサ71は、
図4に示すように、Y駆動軸40略全域に亘って設けられたスケール71sと、Y軸ガイド部44に固定され、Y方向に移動する光学検出部71hとを有する。
【0026】
本実施形態では、Y軸固定部リニアガイド48をY軸リニアガイド43とは別に設けた。しかし、それぞれのリニアスライダ48b、43bが互いに干渉しないように設けることで、Y軸リニアガイド43でY軸固定部リニアガイド48を兼用させてもよい。
【0027】
Z駆動軸50は、Y駆動軸40と同様に、N極とS極の電磁石が交互にZ方向に多数配列された左右の固定磁石部57h、57m(
図4参照、以後、全体又は位置を指定しないときは単に57とする)を有する逆Uの字状のZ軸固定部52と、Z軸固定部52の配列方向に少なくとも1組のN極とS極の電磁石を上部に有し、逆Uの字状の凹部に挿入され凹部内を移動するZ軸可動部51と、Z軸可動部51と連結部61との間にY軸リニアガイド43と同様な構造を有するZ軸リニアガイド53とを有する。Z軸リニアガイド53は、連結部61に固定されZ方向に伸びる2つのリニアレール53aとZ軸可動部51に固定されリニアレール上を移動するリニアスライダ53bを有する。
【0028】
Z軸可動部51は連結部61を介してY軸可動部41と繋がっており、Y軸可動部41がY方向に移動するとZ軸可動部51も共にY方向に移動する。そして移動先の所定の位置でZ軸可動部51(ボンディングヘッド35)が昇降できるようにする必要がある。
【0029】
ボンディングヘッド35は、Z軸可動部51の先端に回転駆動部80によって歯車35bを介して回転可能に設けられ、自身先端にダイ吸着用のコレット35aを有している。また、回転駆動部80は、Z軸可動部51に固定されたモータ81で歯車82、35bを介してボンディングヘッド35の回転姿勢を制御する。
【0030】
次に、
図4を用いて、ボンディングヘッド35をY方向の移動させるY駆動軸40の駆動によって発生する振動の低減方法を説明する。
Y駆動軸40の負荷は、Y軸可動部41と一体となって移動する可動一体部である。可動一体部は、
図2において、Y軸可動部41と、連結部61と、Y軸ガイド部44と、Z軸可動部51と、Z軸リニアガイド53、ボンディングヘッド35及び回転駆動部80(
図3参照)である。
【0031】
Y駆動軸40によって、
図4に示す矢印F方向に、可動一体部を駆動力Fで駆動すると、固定磁石部47が反力Fk(=F)を受ける。例えば、Y軸固定部42を支持体62に固定すると、反力Fkによって、Y軸固定部側に振動が発生する。その振動によって可動一体部側も振動し、ボンディングヘッド35の位置決め精度が低下する。
【0032】
そこで、本実施形態では、支持体62との間にY軸固定部リニアガイド48を設け、Y軸固定部42と一体になって動く固定一体部をカウンタウエイトとしてY方向に移動できるようにし、振動を相殺し制振する。なお、固定一体部は、本実施形態では、Y軸固定部42、固定磁石部47及びリニアスライダ48bを有する。
【0033】
可動一体部、固定一体部の質量をそれぞれMm、Mfとすると、それぞれの加速度αm、αfは式(1)となり、加速度αm、αf、加速度よって得られる速度Vm、Vf及び移動距離Lm、Lfは、それぞれの質量に対して反比例の値を有する。
αf×Mf=αm×Mm (1)
図1に示すように、Y軸固定部42、即ち固定一体部をY駆動軸40略全域に亘って設けているので、固定一体部の質量Mfは、可動一体部の質量Mmに比べて大きな値になる。それ故、可動一体部と固定一体部は互いに反対方向に移動するが、可動一体部の移動量が大きくなり、ボンディングヘッド35は、所定方向に移動できる。例えば、Mf/Mm=10ならば、
図4では、ボンディングヘッド35が右方向に10進み、固定一体部側が1反対方向に進む。従って、ボンディングヘッド35は、支持体62に対して9右方向に移動できる。目的位置への移動制御は、リニアセンサ71の出力に基づいて、位置制御又は速度制御などで行なうことができる。この制御は、本実施形態では制御部7で行う。
【0034】
以上説明したように、本実施形態では、ダンパーを設けず、ただ単にY軸固定部リニアガイド48を設けることによって、固定一体部側に制約を与えることなく固定一体部を自由に移動できるようにする。その結果、可動一体部と固定一体部とは互いに同期して動くので、制振するための制御をする必要もなく、Y駆動軸40の駆動による発生する振動を低減できる。
【0035】
図5に、所定の位置でボンディングヘッド35を昇降できる左右の固定磁石部57(57h、57m)の構成例を模式的に示す図である。本実施例では、少なくとも、ボンディング領域及びピックアップ領域にY方向に細長いN極、S極を交互に設けている。細長いN極、S極は短く分割して設けてもよい。勿論、Y方向の全域に亘って、Y方向に細長いN極、S極を交互に設けてもよい。
【0036】
以上説明した第1の実施形態のZY駆動軸60Aによれば、Z軸固定部52は略全域に設けられているが、
図7に示す構成と比べ、重量体であるZ軸固定部52自体は移動しないので、Y方向の移動に対する負荷が大幅に低減され、水平駆動軸のトルクを大きくせず、昇降軸の高速化を実現できる。
【0037】
また、以上説明した第1の実施形態のZY駆動軸60Aによれば、Y軸固定部42を主体とする固定一体部をY方向に自由に移動できるように、Y軸固定部リニアガイド48を設けることで、可動一体部、固定一体部の振動を相殺し制振することができる。その結果、ボンディングヘッド35の位置制度を向上させることができる。
【0038】
図6は第2の実施形態であるZY駆動軸60Bの基本構成を示す図である。
図6において基本的には第1の実施形態と同じ構成又は機能を有するものは同一符号を付している。
【0039】
ZY駆動軸60Bの第1の実施形態であるZY駆動軸60Aと異なる点は、第1に、Y軸固定部42をZ方向に長いI字状にし、Y軸可動部41をY軸固定部42平行に設けた点である。第2に、Y軸の固定磁石部を片側の47のみとした点である。第3に、Y軸可動部41を固定するために連結部61との間にY軸可動部固定部45を設けた点である。第4に、側部支持体62bを短くし、その片側に、Y軸固定部42を移動可能にするY軸固定部リニアガイド48を設けた点である。
【0040】
第5に、Y軸可動部41のY方向の移動を可能とするY軸リニアガイド43を支持するY軸ガイド部44が、下部支持体62cから上部支持体62aに移動している点である。第6に、Z軸固定部52がU字状からI字状にし、固定磁石部57h、57mが片側の固定磁石部57のみとなっている点である。第7に、Y方向の移動時の可動一体部の左右の揺れを防止するために、側部支持体62bと連結部61との間にリニアガイド46を設けた点である。
【0041】
なお、このような移動を安定させるリニアガイド46を第1の実施形態において、Y軸固定部42又はZ軸固定部52と連結部61との間に設けてもよい。また、上記のように、第2の実施形態は、第1の実施形態と様々な点で異なっているが、連動する異なる点もあるが、全てを異なわせる必要はない。
その他の点は第1の実施形態60Aと同じである。
【0042】
以上説明した第2実施形態のZY駆動軸60Bにおいても、第1の実施形態同様に、
図7に示す構成と比べ、重量体であるZ軸固定部52自体は移動しないので、Y方向の移動に対する負荷が大幅に低減され、水平駆動軸のトルクを大きくせず、昇降軸の高速化を実現できる。
【0043】
また、以上説明した第2の本実施形態のZY駆動軸60Bにおいても、Y軸固定部42を主体とする固定一体部をY方向に自由に移動できるように、Y軸固定部リニアガイド48を設けることで、可動一体部、固定一体部の振動を相殺し制振することができる。その結果、ボンディングヘッド35の位置制度を向上させることができる。
【0044】
以上の説明では、何かを処理する処理部としてボンディングヘッドの例で説明した。基本的には、昇降軸を有する必要とする2軸駆動機構と必要とする処理部に適用可能である。例えば、ダイボンダでは、プリフォーム部31において基板にダイ接着剤を塗布するニードルに適用可能である。
【0045】
以上のように本発明の実施形態について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。