【文献】
前田 英作、石井 健一郎,“物体有無判定における正規化主成分特徴量の評価”,電子情報通信学会論文誌,日本,社団法人電子情報通信学会,1992年 3月25日,Vol.J75-D-II, No.3,pp.520-529
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マッチング対象の特徴量と前記識別境界面とをGUI表示させるとともに、前記マッチング対象の特徴量に応じて、マージンを最大化するようにマッチング処理の正否を判定可能にする前記識別境界面を求める処理を行うことを特徴とする請求項5に記載のマッチング処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中で説明番号が同じものは、特に断わりがない限り同一部材を示していることとする。
【0024】
図1は、本発明の一実施の形態による検査装置の適用例として、半導体ウェーハ上に形成された半導体デバイスのパターン寸法計測に主に用いられている走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)で、マスク処理を用いたテンプレートマッチングを行うときの装置の一構成例を示す図である。走査型電子顕微鏡(SEM)Aでは、電子銃1から電子線を発生させる。ステージ2上に設置された試料である例えば半導体ウェーハ3上の任意の位置において電子線が焦点を結んで照射されるように、偏向器4および対物レンズ5を制御する。電子線を照射された半導体ウェーハ3からは、2次電子が放出され、2次電子検出器6により検出される。検出された2次電子は、A/D変換機7でデジタル信号に変換され、処理・制御部14内の画像メモリ15内に格納され、CPU16で目的に応じた画像処理が行われる。本実施の形態によるテンプレートマッチング処理は、処理・制御部14、より詳細には、マッチング処理部16aで処理を行う。
図13で後述する処理の設定、および、処理結果の表示は、表示装置20で行う。また、電子顕微鏡よりも低倍の光学式カメラを用いたアライメントにおいては、光学式カメラ11を用いる。半導体ウェーハ3を、本カメラ11で撮像することで得られる信号も、A/D変換器12でデジタル信号に変換され(光学式カメラからの信号がデジタル信号の場合は、A/D変換器12は不要である)、処理・制御部14内の画像メモリ15に格納され、CPU16で、目的に応じた画像処理が行われる。
【0025】
また、反射電子検出器8が備わっている場合には、半導体ウェーハ3から放出される反射電子を、反射電子検出器8により検出し、検出された反射電子はA/D変換器9あるいは10でデジタル信号に変換され、処理・制御部14内の画像メモリ15に格納され、CPU16において、目的に応じた画像処理が行われる。本実施の形態では、検査装置の例として走査型電子顕微鏡を示したが、適用する装置としては、これに限定するものではなく、画像を取得し、テンプレートマッチング処理を行う検査装置等に適用できる。
【0026】
図2は、本実施の形態による検査装置でのマッチング処理部の一構成例を示す機能ブロック図であり、
図5に対応する処理を行う処理部の機能ブロック図である。
図3は、本実施の形態による検査装置でのテンプレートマッチング処理の一流れを含む全体構成例を示す機能ブロック図であり、学習処理を行う構成を合わせて示す図である。尚、学習処理とマッチング処理とは、別の処理としても良いし、一部共通のハードウェア構成又はソフトウェア構成、それらの組み合わせであっても良い。
【0027】
図2に示すように、
図1に示すマッチング処理部16aは、例えば2つの入力の特徴量を抽出する特徴量抽出部16a−1と、第1及び第2の特徴量を含む複数の特徴量に基づいて、それらの特徴量の関係を示す相互的特徴量を算出する相互的特徴量算出部16a−2と、相互的特徴量、及びマッチング成否判定境界面に基づいてテンプレートマッチングの判定を行い、特徴量空間で相互特徴量とマッチング成否判定境界面との距離(スコア)を求めるテンプレートマッチング判定部16a−3と、照合対象が残っているか否かを判定する照合対象判定部16a−4と、例えば、距離(スコア)が最大となるウェハ上の位置を選出するスコア位置選出部16a−5と、正解のクラスであるか不正解のクラスであるかの判定を行う所属クラス判定部16a−6と、マッチングされたウェハ上の位置(x、y)などと、マッチングスコアなどとを対応付けて記憶する記憶部16a−7と、これらの記憶された値に基づく表示等の出力を行う出力部16a−8と、を有している。さらに、後述する学習処理に関連して、学習用に取得したテンプレート画像から特徴量を抽出する特徴領域抽出処理部16a−1aと、後述する学習処理部16a−2aと、を有している。尚、マッチング処理部16aは、
図2に示す全ての要素(機能部)を備えていても良く、或いは、一部のみを備えていても良い。
【0028】
図3は、本実施の形態による検査装置でのマッチング処理部16aによる処理の流れを示すフローチャート図である。
【0029】
図3に示すように、本実施の形態による処理は、相互的特徴に基づく判定指標値算出処理Xと、学習処理に基づくマッチング正否判定境界面(識別境界面)の指定処理Yと、処理X、処理Yとに基づくテンプレートマッチング処理による判定結果の導出処理とからなる。
【0030】
相互的特徴に基づく判定指標値算出処理Xは、予め登録したテンプレート101と、検査装置で取得した被サーチ画像から切り出した画像102(マッチング候補位置における切り出し画像)とから、テンプレートマッチングに用いる判定指標値109を求める処理である。
【0031】
尚、被サーチ画像内にサーチ対象のパターンが有るか否かの判定処理、及び、マッチング位置を求める手段の詳細については、
図6を参照しながら後に説明する。本実施の形態では、例えば、テンプレート101と被サーチ画像102のマッチング正解位置とで、画像の見た目の乖離が大きくなった場合でもパターンマッチングを成功させるようにすることが1つの目的であり、詳細には、
図3の説明の後半に述べるが、テンプレート101及び被サーチ画像102の両画像を用いて求めた相互的特徴量108を用いて、特徴量ベースのマッチングを行う判定指標値109を求める。これにより、例えば、テンプレート101のみ、或いは、被サーチ画像102のみ、から求めていた個別特徴量を用いた特徴量ベースのマッチングでは取り扱うことが難しかったテンプレート101と被サーチ画像102とでの見た目の違いに起因する悪影響を受けにくい特徴量によるマッチング(或いは、悪影響を受けにくいように特徴量を用いるマッチング)が行えるようになり、テンプレートマッチングのロバスト性を向上させることができる。
【0032】
相互的特徴量108は、テンプレート101から特徴量抽出部16a−1による特徴量A抽出処理103により抽出した特徴量A105と、被サーチ画像からの切り出し画像(マッチング候補位置)102から特徴量抽出部16a−1による特徴量B抽出処理104により抽出した特徴量B106とを用いて、相互的特徴量算出部16a−2で相互的特徴量算出処理107により求める。相互的特徴量の算出方法は後述するが、単純な算出方法としては、例えば、特徴量A105、特徴量B106として、テンプレート101、被サーチ画像からの切り出し画像102をそのまま用い、両画像の正規化相関値を相互的特徴量の一つとして用いるようにすることができる。
【0033】
例えば、2組の対応するデータx,y間での平均からの偏差の積の平均値である共分散ρ
XYを、相互的特徴量として求めても良い。
【0034】
ρ
XY=Cov(x,y)/(V(x))
1/2・(V(y))
1/2
【0035】
求めた相互的特徴量108は、テンプレートマッチング判定部16a−3(マッチングスコア算出部)で用いる判定指標値109の一部、或いは、全てとして用いる。尚、この相互的特徴量108は、1つとは限らず、種類の異なる複数の特徴量を算出し、用いることもできる。なお、被サーチ画像からの切り出し画像102から抽出した特徴量B106を、そのまま個別特徴量として、判定指標値109の一部に用いることもできる。この特徴量も、1つとは限らず、種類の異なる特徴量を複数算出し、個別特徴量として用いることもできる。マッチングスコア判定処理部は、距離が0をスコアの中央値として設定する中央値設定処理部を有し、マッチングススコアの中央値以下ならばマッチング不正解とし、スコアの中央値以上ならばマッチング正解とするようにしても良い。
【0036】
一方、学習処理部16a−2aでは、テンプレート101aと、被サーチ画像からの切り出し画像(マッチング正否情報)102aとして、画像102a−1とマッチング正否情報102a−2と、を用いることができる。以下の、判定指標値109aを求めるまでの処理Yは、処理Xと同様であり、同じアルゴリズムで実行することもできるし、同じハードウェアにより処理することもできる。別の構成により行うようにしても良い。
【0037】
処理Yでは、判定指標値109aから、マッチング正否判定境界面の指定処理110を行う。
【0038】
マッチング正否判定境界面の指定処理110においては、詳細は後述するが、判定指標値空間でマッチングの正否を分ける境界面を指定する。複数の判定指標値を用い、かつ、その判定指標値には、テンプレートと被サーチ画像の相互的な関係をもとに求めた判定指標値109aが含まれることから、例えば、画像ベースのマッチング手法において相関値のみを用いた場合ではマッチング成否を分けられないケースでも、本実施の形態による手法では、マッチングの成否を分けられるマッチング成否判定境界面を求めることができる可能性が高まる。学習処理部16a−2aにおけるマッチング正否判定境界面の指定処理110において指定されたマッチング正否判定境界面111と、相互的特徴量算出処理により求めた判定指標値109とを用いて、テンプレートマッチング判定部16a−3におけるテンプレートマッチング判定処理112により、判定指標値空間での判定指標値109のマッチング判定境界面からの距離をマッチングの判定指標として算出し、その距離を判定結果(マッチングスコア等)113とする。この距離の算出方法の例については後述する。
【0039】
以上により、マッチングスコアを算出する対象(被サーチ画像からの切り出し画像102)のマッチングスコア等のマッチングの判定指標を算出することができる。これにより、テンプレート101と被サーチ画像102との相互的な関係をも特徴量とした特徴量ベースのテンプレートマッチングにおいて、複数の前記相互的な特徴量を用いてマッチングの成否を分ける識別境界面を算出する学習結果を用いることが可能となり、被サーチ画像の見た目の変動に対して、変動の影響を受けにくいマッチング処理が可能となる。
【0040】
図5は、
図3を参照して説明したテンプレートマッチング処理を利用して、サーチ処理を行う処理の流れを示すフローチャート図である。破線で囲んだ部位300が、
図3で説明した処理に相当し、テンプレート101、被サーチ画像から切り出した画像102、及び、学習処理にマッチング正否判定境界面111を用いて、テンプレートマッチング判定処理112によりマッチング判定結果(マッチングスコア)113を算出する。
【0041】
被サーチ画像301からテンプレートと照合する領域の画像の切り出し処理302により切り出した画像102を切り出し、テンプレート101と照合し、テンプレートマッチング判定処理112を経て判定結果113を出力する。照合対象の判定処理303では、判定結果113を、被サーチ画像の全ての照合対象位置で得たか否かを判定する。
【0042】
照合対象が未だ残っている場合は、切り出し位置変更処理304で切り出し位置を求め、テンプレートと照合する画像の切り出し処理302で画像を切り出す。照合対象の判定処理303で全ての照合対象で判定を完了した場合は、あるスコア、例えば、最大スコア位置の選出処理305を行い、マッチングスコアが最大となる位置を求める。マッチングスコアが最大となった照合位置でのマッチングスコアを用いて、所属クラス判定処理306で、マッチングスコアが最大となった照合位置が、マッチング正解とみなせる位置であるか、マッチング不正解とみなす位置であるかを判定する。
【0043】
この処理は、詳細は後述するが、判定指標値空間で、マッチングスコアが最大となった照合位置の判定指標値109が、マッチング正否判定境界面を基準にして、マッチング不正解側(不正解クラス)に属する場合(スコアアクセプタンス以下となった場合)は、被サーチ画像の視野内にサーチ対象のパターンが無かったと判断する。この場合は、撮像位置周辺でアライメント用のパターンを探す、或いは計測を中断してアライメントに失敗したことをアラームでユーザに伝える等の処理を行うことになる(不正解クラス)。
【0044】
一方で、マッチングスコアが最大となった照合位置の判定指標値109が、マッチング正否判定境界面を基準にして、マッチング正解側(正解クラス)に属する場合(スコアアクセプタンス以上となった場合)は、その照合位置をマッチング位置307として出力する。またマッチング正否と併せてマッチングスコアも出力することもできる。以上により、
図3で説明した相互的特徴量を用いて算出したテンプレートマッチング結果、例えばマッチングスコアを用いて、テンプレートマッチングを行うことができる。
【0045】
図6は、
図3で説明したマッチングスコア算出処理112について、原理を説明する図である。
【0046】
本実施の形態では、
図6(a)に判定指標値A及び判定指標値Bの2つの判定指標値を用いた場合の例を示している。マッチングスコアは、判定指標値で張られる判定指標値空間(本例では2次元で示す。)で、スコアを算出する対象の座標(判定指標値空間上の座標は、各判定指標値109から決まる)と、マッチング正否判定境界面111との距離を用いる。マッチング正否判定境界面111は、
図3で説明したように、マッチング正否判定境界面指定処理110の結果として与えられる。
【0047】
例えば、スコアを算出する対象が、図中の△印405であったとき、マッチング正否判定境界面111までの距離が破線部410となる。距離としては、例えばユークリッド距離を用いることができる。なお、用いる距離は、ユークリッド距離に限定されるものではなく、マッチング正否判定境界面111からの距離が算出できる手段であれば良い。
【0048】
図6(b)は、マッチング正否判定境界面111からの距離410とマッチングスコア411との関係を示した図である。マッチングスコア411の取り方としては、例えば、マッチング正否判定境界面111からの距離が0の時にマッチングスコア411を0にし、正解位置のクラスのとなる場合はスコアを正の値、不正解位置のクラスとなる場合は、負の値とする方法がある。そのときの距離とスコアの関係は、
図6(b)に直線412で示したように線形にすることができる。
【0049】
尚、ここでは線形を例にして説明するが、関係は、線形に限定されるものではなく、非線形に距離とスコアとを対応づけることも可能である。本実施の形態で対象としている検査装置においては、先に述べたようにマッチングの正否をスコアアクセプタンスで判断することがある。このスコアアクセプタンスについては、ユーザ或いは装置設計者が決めることを要求されることが多く、その設定次第でマッチング性能が異なることもある。先に述べたように距離が0の場合を、スコアを0の固定値とすれば、アクセプタンスの設定が不要になる。また従来のマッチング方式で例えば正規化相関を用いたマッチングで関値を用いたマッチングでは、判定指標に相当するものは相関値の1つだけとなり、その値そのものがスコアとなる。その場合に、
図6(a)のように1つの値を用いた場合に、マッチングの正解と不正解とが分けられない場合には、適切なアクセプタンススコアを設定することができなくなる。本実施の形態によれば、そのようなケースも回避することが可能となる。
【0050】
尚、正解と不正解とを分けるアクセプタンススコアを0と限定する必要はなく、オフセット値を設けることも可能である。また本実施の形態では、判定指標値A及び判定指標値Bの2つの判定指標値を用いて、2次元でマッチング正否判定を行う例を示したが、判定指標値は2つに限定するものでなく、2つよりも多くの判定指標値を用いて正否判定することができる。
【0051】
図7は、
図3で述べたマッチング正否判定境界面111の指定処理110について説明する図である。マッチング成否判定境界面111は、判定指標値空間において、マッチング正解となる事例(
図7(a)では○で記載)と、マッチング不正解となる事例(
図7(a)では×で記載)を分けることを目的として設定する。そうすることにより、
図6で説明した所属クラス判定処理306において、マッチング成否判定境界面111を基準に、どちら側にマッチング結果があるかを判定することができ、マッチング結果が、マッチング正解位置であるか、或いは、マッチング不正解位置であるかが判る。マッチング成否判定境界面111は、例えばSVM(
Support
Vector
Machine)で用いられている手法によって求めることができる。
【0052】
以下に、詳細に説明する。SVMは、教師有り学習を用いる識別手法の一つである。マッチング成否判定境界面111は、SVMでの分離超平面(識別面などとも呼ばれる)に相当する。
図7(a)では、マッチング成否判定境界面111が分離超平面となり、マッチング成否判定境界面111の内側の破線部501、及びマッチング成否判定境界面111の外側の破線部502が、SVMでのマージンと呼ばれるものとなる。またマージン上の点を、サポートベクターと呼んでいる(マッチング正解となる事例、及びマッチング不正解となる事例のそれぞれで少なくとも1つはある)。
【0053】
SVMでは、学習データ中で最も他の事例と近い位置にあるもの(それがサポートベクターである)を基準として、そのユークリッド距離が最も大きくなるような位置に分離超平面を設定する。つまり、事例の最端から他の事例までのマージンを最大にする(マージン最大化)。
【0054】
本実施の形態でのマッチング成否判定境界面111を、SVMの分離超平面とすることで、複数の判定指標値がある場合でも特徴量空間でマッチング正解の事例とマッチング不正解の事例とを分離することが可能となる。つまり、本手法で求めたマッチング成否判定境界面111を基準に用いて、マッチング成否の判定ができるようになる。
【0055】
図7(b)は、マッチング成否判定境界面111を求める処理の構成を説明する図である。まず
図5で説明した複数の判定指標値109aと、マッチング成否102−2の組み合わせを1つの事例とし、その事例を複数含んだデータ(学習データ)102aを準備する。この学習データ102aには、マッチング正解の事例とマッチング不正解の事例とが含まれるようにする。次に、学習データに基づき、先に述べたようにSVMを用いてSVMの分離超平面を求め(111)、求めた分離超平面をマッチング成否判定境界面111とする。
【0056】
以上の処理により、SVMを用いて、複数の判定指標値からマッチング成否判定境界面111を求めることができる。なお、識別面(分離超平面)を求めるのにSVMに限定する必要はなく、マッチング正解の事例と、マッチング不正解の事例を分離するマッチング成否判定境界面が求められる手法であれば良い。
【0057】
図8は、
図3、及び
図5で述べた判定指標値算出手段について説明する図である。
図3で説明した通り、テンプレート101及マッチング候補位置での切り出し画像102から判定指標値109aを算出する。
【0058】
次に、相互的特徴量の算出方法についてまず説明する。特徴量抽出部A103でテンプレート101から抽出した特徴量(ここでは特徴量A105とする)と、特徴量抽出部B104でマッチング候補位置の切り出し画像102から抽出した特徴量(ここでは特徴量B106とする)とを用いて、相互的特徴量算出処理107で特徴量D108を求める。相互的特徴量の算出方法は、
図9で説明する。また
図3で説明した個別特徴量は、マッチング候補位置での切り出し画像102、或いはテンプレート101を用いて、特徴量抽出処理C605で特徴量C608を算出する。個別特徴量の算出方法は、
図9で説明する。求めた特徴量D108、或いは特徴量C608を判定指標値109aとする。なお、特徴量A105、特徴量B106、特徴量C608、特徴量D108は、それぞれ複数種類を用いても良い。判定指標値109aも複数種類を用いることなる。本構成により、テンプレート101、及びマッチング候補位置での切り出し画像102から、相互的特徴量、及び個別特徴量を複数種類求め、その特徴量を判定指標値109aにすることができる。
【0059】
図9は、
図8で述べた特徴量について説明する図である。特徴量を、その性質によって分類し、第1類特徴量、第2類特徴量、第3類特徴量と呼ぶことにする。第1類特徴量は、特徴量を算出する画像において、画像内の位置(座標)に依らずに対象画像、或いは対象画像の一部の領域から定まる特徴である。例えば、画像全体の画素値平均値、画素値分散値などは、第1類特徴量となる。本特徴量は個別特徴量に相当する。第2類特徴量は、画像内の位置(座標)により定まる特徴量である。例えば、
図9(a)に示すように、画像上の座標(i,j)1402(ここでは画像の左上を画像座標系の原点としている)において、算出される特徴量V
i,jとなる。ここでは、特徴量V
i,jは、多次元のベクトルとして表すことができる。
図9(a)に示すように、特徴量のベクトルV
i,jは、f1からfnを、ベクトル要素とする(nは、ベクトルの要素数)。例えばSIFT特徴量(非特許文献2)は、画像上のある座標毎(特徴点毎)に定まるベクトルで特徴を表現する。SIFT特徴量では、特徴点周辺領域を複数の小領域に分割し(16領域)、各小領域での画素値の勾配方向(8方向)をビンとするヒストグラムを生成し、その各ヒストグラムの各ビンをベクトル要素(要素数は128個(16×8))の一つとするベクトルを特徴量として用いる。本特徴量も個別特徴量に相当する。第3類特徴量は、テンプレート画像から算出した第2類特徴量及び被サーチ画像から算出した同第2類特徴量と、両画像間の相対位置(例えば両画像の照合位置)によって定まる特徴量である。相互的特徴量は、第3類特徴量となる。第2類特徴を用いて第3類特徴を求める方法(相互的特徴量算出方法)は、
図11、
図13で詳細を説明するが、例えば、
図9(b)に示すようにテンプレート画像と被サーチ画像から切り出した領域(破線部)との相対位置1416によって定まる特徴量である。
【0060】
図10は、
図9で述べた第2類特徴量において、画像内の位置によって定まる特徴量の算出時の特徴量算出領域について説明する図である。
図10(a)は、画像内のある座標から特徴量を求める例である。この座標における、画素値、画素値勾配情報等を特徴量とする。従って特徴量は画像内での座標によって定まることになる。
図10(b)は、画像内の或る矩形領域から特徴量を求める例である。この矩形領域における、画素値平均、画素値分散、画素値ヒストグラムの各ビンの値、或いは、矩形領域を小領域に分けて算出した画素値勾配方向ヒストグラムの各ビンの値などを特徴量とする。これによって、特徴量を算出する着目座標周辺の特徴も利用することができ、本特徴を用いることでマッチングをよりロバストにできるようになる。
図10(c)は、画像内の円形領域から特徴量を求める例である。
図10(b)の矩形領域と同様に、この円形領域における、画素値平均、画素値分散、画素値ヒストグラムの各ビンの値、或いは、円形領域を小領域に分けて算出した画素値勾配方向ヒストグラムの各ビンの値などを特徴量とする。これによって、特徴量を算出する着目座標周辺の特徴も利用することができ、本特徴を用いることでマッチングをよりロバストにできるようになる。
図10(d)は、画像内の或る任意形状の領域における特徴量を求める例である。この
図10(b)(c)の矩形領域、円形領域と同様に、この任意形状の領域から特徴量を算出しても良い。これによって、特徴量を算出する着目座標周辺の特徴も利用することができ、本特徴を用いることでマッチングをよりロバストにできるようになる。
【0061】
図11は、
図9で述べた第3類特徴量において、第2類特徴量から第3類特徴量を求める方法を説明する図である。先に述べたように第3類特徴量は、テンプレート画像の第2類特徴量と、被サーチ画像の同第2類特徴量との相対位置に基づき求める。
【0062】
図11(a)は、被サーチ画像1605からテンプレート画像1601と同じサイズの領域(破線部)1610を切り出し(切り出し位置(X, Y))1607、切り出した領域から第2類特徴量を算出する。同第2類特徴量をテンプレート画像1601からも算出する。この被サーチ画像1605から算出した第2類特徴量と、テンプレート画像1601から算出した第2類特徴量との、相互の関係を求めたものが、相互的特徴量となる。例えば、両者の第2類特徴量を表すベクトルの距離の値を相互的特徴量とする。距離としては、ユークリッド距離、マンハッタン距離、バッタチャリア距離など、両特徴量間の関係を定量化できるものであれば限定しない。以上により、この相互的特徴量は、テンプレート画像と被サーチ画像との相対位置によって定まる特徴量となる(本例では、被サーチ画像における画像切り出し位置(X, Y)1607が相対位置に相当する)。
【0063】
図11(b)は、
図11(a)の方法とは異なる方法で、テンプレート画像と被サーチ画像の相対位置を定める方法を説明する図である。本方法は、被サーチ画像上でテンプレート画像がどの位置に類似しているかを推定するための手法の一つとして投票ベース手法を用いた場合の投票値を第3類特徴量とする方法である。テンプレート画像、及び被サーチ画像のそれぞれにおいて、第2類特徴量を算出する(ここでの被サーチ画像での第2類特徴量の算出は、画像領域全体を対象とする)。テンプレート画像において第2類特徴量を求める際の位置の基準となる点1631を基準点と呼ぶことにする(例えば
図11(a)において画像座標系で左上を原点Oとし、原点を基準に第2類特徴量を定めている場合は、原点Oが基準点となる)。両画像の第2類特徴量のうち類似度の最も高い特徴量を選出し、それをペアとして記憶する。テンプレート画像での第2類特徴量の算出位置(座標)から基準点への距離、及びベクトル方向をもとに、テンプレート画像での第2類特徴量とペアになった被サーチ画像側の第2類特徴量の算出位置(座標)に対し、テンプレート画像で求めた距離、及びベクトル方向に相当する座標(被サーチ画像でのテンプレート画像の基準点の位置と推定される座標)を求める。そして、求めた座標に対してマッチング位置候補座標として投票を行う(ペアの一つに対し、投票を1回)。この投票処理を全てのペア(或いはある一定上の類似度がある全てのペア)の組に対して行う。被サーチ画像からテンプレート画像に相当する領域を切り出して、マッチング候補とするときに、その切り出し領域の基準点(例えば切り出し領域の左上の座標)1641での投票数を第3類特徴量とする。なお、各特徴点で類似度が最も高いものを選択する例を示したが、各特徴点で類似度が高い上位の数組を用いても良い(例えば上位3組を用いる)。
【0064】
以上により第2類特徴量から第3類特徴量を算出することができる。相互的特徴量である第3類特徴量を用いることで、よりロバストなマッチングを行うことが可能となる。
【0065】
図12は、
図8で述べた特徴量の具体的例を説明する図である。
図8で説明した特徴量A105、特徴量B106、及び特徴量C608(個別特徴量)は、同種類のものを用いることができる。
図12に示すように特徴量A105、特徴量B106、及び特徴量C608の特徴量には、例えば画像内の或る指定した座標を基準とした領域内のテクスチャに関する特徴量702、或いは画像に写っているパターンの構造の情報をあらわすエッジ特徴量703などを用いることができる。テクスチャに関する特徴量の例としては、後で説明するが、ヒストグラム特徴量707、コントラスト特徴量708、同時生起行列709を用いたもの等がある。本特徴量は、
図9で説明した第2類特徴量に相当する特徴量となる。
【0066】
なお、テクスチャの情報を抽出できる手法、及び特徴量であれば良く、これらに限定するものではない。ヒストグラム特徴707は、テンプレートと被サーチ画像の夫々で画像内の或る指定した座標を基準として領域内の階調値ヒストグラムを解析して得た平均、分散、歪度、尖度等を特徴量とする。コントラスト特徴量708は、テンプレートと被サーチ画像の夫々で指定された領域の平均階調値を特徴量とする。前記の指定された領域とは、例えば画像中でパターン(例えばラインパターン)が存在する領域、或いはパターンが存在しない領域(下地領域)を用いる。あるいは、テンプレートと被サーチ画像の夫々の視野内での指定した複数の領域間のコントラスト差を求めて(画像内のコントラスト特徴)、その値を特徴量として用いても良い。またSIFT(非特許文献2)などの手法を用いて求めた特徴点情報704等もある。エッジ特徴量703としては、HOG(
Histgrams of
Oriented
Gradients)などの特徴量がある。
【0067】
一方特徴量D(相互的特徴量720)については、特徴量A105、及び特徴量B106で求めた特徴量から相互的に算出する。
図13で説明するが、例えば、ヒストグラム特徴であれば、テンプレートと被サーチ画像の夫々から求めたヒストグラムを解析して得た平均、分散、歪度、尖度等の一致度(例えば値の差分)を特徴量とする。或いは、テンプレートと被サーチ画像の夫々から求めたヒストグラムの分布の形状の相関値を特徴量としても良い。またコントラスト情報であれば、テンプレートと被サーチ画像の夫々から求めたコントラスト特徴の一致度(例えば値の差分)を特徴量とする。またテンプレートと被サーチ画像のそのものの相関値を特徴量としても良い。その際に用いる画像は、入力画像そのものでも良いし、或いはノイズ除去処理、エッジ強調処理などの前処理を事前に行った画像を用いても良い。またコーナ時点情報から相互的特徴量を求める場合は、テンプレートと被サーチ画像の夫々で求めたコーナ点の一致した数を用いることができる。或いは、SIFTで求めた特徴点を基いる場合は、非特許文献2に示してあるように対応点マッチングでのVoting数を特徴量としても良い。本特徴量は、
図9で説明した第3類特徴量に相当する。
【0068】
以上のような複数の個別特徴量701、及び相互的特徴量の一部、或いは全てを
図3、
図5で説明したテンプレートマッチングでは用いることができる。
【0069】
図13は、
図12で述べた特徴量の算出手段の一例を説明する図である。
図8、及び
図12で述べた特徴量A105、特徴量B106、及び特徴量C608に、次に述べるいずれの特徴量も用いることができる。
【0070】
図13Aは、ヒストグラム特徴を説明する図である。ヒストグラム特徴は指定した領域内の階調値ヒストグラムの分布形状、或いは分布を解析して得られる値を特徴として用いる手段である。テンプレート801と、被サーチ画像802から切り出した画像803の夫々からヒストグラム804、805を求める。特徴量としては、ヒストグラムの分布形状そのまま用いることができる。例えばヒストグラムの各ビン(データ範囲の分割区間)の頻度を要素とするベクトルを特徴とする。或いは、分布の形状を分析して算出した平均、分散、歪度、尖度の一部、或いは全てを特徴量としても良い。また階調値ヒストグラムに累積ヒストグラムを用いても良い。
【0071】
図13Bは、コントラスト特徴を説明する図である。テンプレート811、及び被サーチ画像812から切り出した画像813において、指定した領域内814、815での階調値の平均値を特徴量として用いる。なお、平均値に限定するものではなく、領域内の階調値の情報を表せる情報であれば良く、例えば分散値、最大値、最小値などでも良い。
【0072】
図13Cは、コントラスト特徴に関して
図13Bと異なる特徴量について説明する図である。テンプレート821において、指定した複数の領域822及び823の夫々で階調値の平均値の比(画像内でのコントラスト)を求め、その値を特徴量とする。同様に、被サーチ画像824から切り出した画像825についても指定した複数の領域826、及び827で階調値の平均値の比(画像内でのコントラスト)特徴量とする。ここでは、平均値を用いたが、それに限定するものではなく、領域内の階調値の情報を表せる情報であれば良く、例えば分散値、最大値、最小値などでも良い。
【0073】
上記の
図13Aから
図13Cまでに例示される方法で取得した特徴量は、先の述べた特徴量A105、特徴量B106、及び特徴量C608に用いることができる個別特徴量である。また、その他に、
図12でも述べたように、同時生起行列709、エッジ特徴量703、SIFT特徴量704、Harr-like特徴量705、HLAC特徴量706などがある。但し、これらの特徴量に限定するものではなく、テンプレート及び被サーチ画像から切り出した画像の特徴を表す値、或いはベクトルを求められるものであれば良い。
【0074】
図8、
図12で説明した特徴量D720である相互的特徴量は、テンプレート画像、及び被サーチ画像から切り出した画像から求めた個別特徴量を比較することで求めることができる。
【0075】
例えば、
図13Aで求めたヒストグラム特徴量では、テンプレート画像、及び被サーチ画像から切り出した画像から求めたヒストグラムの分布形状の相関値を相互的特徴量とする。或いは、ヒストグラムを解析して得た値である平均(或るいは、分散、歪度、尖度など)の差、或いは比などを相互的特徴量とすることもできる。
図13B及び
図13Cで求めたコントラストの特徴量についても、テンプレート画像、及び被サーチ画像から求めた値の差、或いは比を相互的特徴量とすることができる。また相互的特徴量として以下のようなものを用いることができる。
【0076】
図13Dは、ラインプロファイル特徴を説明する図である。テンプレート831、及び被サーチ画像832から切り出した画像833の夫々において、画像の一定の方向に画素を加算平均(投影)して異次元の波形を求める。これをラインプロファイルと呼んでいる。
図13Dでは、各画像ともにY方向に投影を行った例であり、夫々の画像のラインプロファイル834、835の相関値を求め、その相関値を相互的特徴量とすることができる。尚、ラインプロファイルで相関をとる範囲は、ラインプロファイル全体を用いることに限定せず、ラインプロファイルの一部の切り出した区間のみの相関値を用いて良い。
【0077】
図13Eは、画像そのものの相関値を相互的特徴量とする例を示す図である。テンプレート841、及び被サーチ画像842から切り出した画像843において画像間の相関値を算出し、その相関値を特徴量とする。
【0078】
図13Fは、SIFTの対応点マッチング結果を相互的特徴量とする例である。テンプレート851と被サーチ画像852の夫々で抽出した特徴点(特徴記述子)で対応点マッチング(例えば、矢印でつないだものが対応点853である)を行うと、被サーチ画像852で対応する特徴点の座標とスケールと回転量が求まる(非特許文献2)。テンプレート851において、基準点座標(例えば、テンプレート851での白丸の位置)を定めておき、先の座標とスケールと回転量の情報から一般化ハフ変換のように被サーチ画像852での基準点の位置に投票(Voting処理)を行う(非特許文献2)。特徴量は、被サーチ画像上から切り出す画像の位置(或いはその周辺)にテンプレートが射影される投票回数とすることができる。また投票回数ではなく、その周辺の領域も考慮して、投票の密集度(投票回数/周辺領域の面積)としても良い。また対応点マッチング得た対応点のテンプレートのSIFT特徴量と被サーチ画像でのSIFT特徴量の相関値を特徴量としても良い。
【0079】
図13Gは、
図13FのSIFTに代えてCornerの対応点マッチング結果を相互的特徴量とする例である。テンプレート861と被サーチ画像862から切り出した画像863の夫々で抽出したであるCornerを特徴点として対応点マッチング(例えば、矢印でつないだものが対応点である)を行うと、被サーチ画像862で対応する特徴点の座標とスケールと回転量が求まる。
【0080】
以上のような方法で相互的特徴量を求めることができる。尚、相互的特徴量の算出方法はここで説明した方法に限定するものではなく、テンプレートと被サーチ画像との相互的な関係を表現する特徴量(スカラー値、或いはベクトル等)であれば良い。
【0081】
尚、テンプレート及び被サーチ画像に前処理を行い、ノイズ低減、或いは特徴を強調した画像を生成し、生成した画像に対して、上記の特徴量(個別特徴量、及び相互的特徴量)を求めることもできる。前処理としては、例えば、平滑化フィルタリング、エッジ強調フィルタリング、2値化処理等の処理がある。ここに挙げた処理に限定するものでなく、前処理として使えるフィルタ処理であればどのようなものでも良い。また複数の前処理を組み合わせた処理を、テンプレート、或いは被サーチ画像に対して行い、その処理で得た画像に対して、上記の特徴量(個別特徴量、及び相互的特徴量)を求めることもできる。
【0082】
以上の相互的特徴量、及び個別特徴量の複数を判別指標値に用いることで、従来のように個別特徴量のみではマッチングの成否の判別に失敗するケースに対しても、マッチングの成否の判定に成功することが可能になる。それは、テンプレートと被サーチ画像の相互的な関係の情報をも判別指標値に用いて、テンプレートと被サーチ画像の相互的な関係の変化をも吸収できるように、判別指標値空間でマッチング成否判別境界面を求めることができることに起因する利点である。
【0083】
図14は、
図7で説明したマッチング成否判定境界面111を算出する際の学習データについて詳細に説明した図である。
図14(a)は、単純な学習データの例であり、1つのテンプレート1001と、被サーチ画像でのマッチング正解位置を切り出した画像1002、及びマッチング不正解位置を切り出した画像1003を学習データに用いる。ここで、被サーチ画像から切り出した画像(正解位置、及び不正解位置)は、1枚の画像から複数枚とれる場合は複数枚を用いても良いし、複数の画像を学習に用いる場合は(テンプレートは共通)、複数ある学習に用いる画像の夫々から1枚、或いは複数、画像を切り出してもよい。切り出す画像の枚数を増やし、テンプレートと被サーチ画像の見た目が異なるサンプルを多くすることで、
図7で説明した判別指標値空間でのマッチング成否判定境界面111のマッチング正解位置と不正解位置を判別する汎化性能を向上する可能性が高くなる。
【0084】
図14(b)は、学習データに用いるテンプレート1011を複数種類用いる場合の例を示す図である。このように複数枚のテンプレート1004を用いることで、特定のテンプレートのパターンや見た目に依存する程度が低い、つまり、より汎用性の高いマッチング成否判定境界面を求めることが可能となる。
【0085】
図15は、
図3において、マッチング成否境界面を学習するだけでなく、特徴量抽出部での特徴量抽出方法も、学習によって決定する方法を説明する図である。本例では、特徴量抽出方法を遺伝的アルゴリズム(以下、GAと呼ぶ)、或いは遺伝的プログラミング(以下,GPと呼ぶ)によって学習する例を示している。特徴量抽出は複数の画像処理の組合せで構成される。また各画像処理は、複数の設定パラメータを持つ場合がある。この画像処理の組合せ、及び各処理の設定パラメータをGA、或いはGPを用いて学習する。判定指標値を算出するための画像処理の組合せ(パラメータ設定も含む)を染色体(解の候補)とする。
図15(a)は、学習にGA、或いはGPを用いた場合の処理の流れを示したものである。まず、複数の処理特徴量抽出処理(初期染色体群)の生成1701を行う。次に個体群に対し、後述する学習終了判定のための評価1702を行う。評価の結果、学習が終了1703すれば、特徴量抽出方法及び、マッチング成否判定境界面が決定する。学習終了判定の終了と判断されない場合は、染色体の選択1704、交差1705、突然変異1706を行う。その結果得られた染色体群に対し、再び学習終了判定のための評価1702を行う。学習終了するまで、本処理を繰り返し行う(世代更新)。
図15(b)は、
図15(a)の評価部を詳細に示す図である。先の述べたように染色体1721は、判定指標値1728を算出する処理の組合せである(一つの染色体から複数の判定指標値を算出する)。染色体(解の候補)1721は複数個生成する(例えば100個体生成)。各染色体(特徴量抽出処理)で求めた判定指標値を基に、マッチング成否判定境界面の算出処理1723を行う。ここでは、先に述べたSVMによって、マッチング成否判定境界面を算出する。このとき、評価値1724として、例えばSVMでのマッチング境界面からサポートベクターまでの距離(スコア)を評価値として用いることができる。この評価値が、指定された値を満たすか否かで学習の終了判定1725を行う(例えば距離が指定された値よりも大きいか否か)。学習が終了した時の染色体が、特徴量抽出方法(画像処理の組合せ、及び各画像処理のパラメータ設定)となり、また併せてマッチング成否判定境界面も定まる。学習が終了しない場合は、学習を継続し、
図15(a)で示した選択1704、交差1705、突然変異1706の処理を再び行う(世代交代)。なお、ここで評価値として、距離を用いたが、マッチング成否判定境界面の良否を判断できる評価値であれば、距離に限定するものではない。
【0086】
以上のように、GA(或るいGP)と、SVMを組み合わせて用いることで、マッチング成否判定境界面だけでなく、特徴量抽出処理方法も学習することが可能となる。なお、学習に用いる手法は、GA(或いはGP)、SVMに限らず、このような学習ができる方法であれば良い。
【0087】
図16は、マッチング成否判定境界面111のマニュアル設定を実現するためのGUIの一例を示す図である。マッチング成否判定境界面111は、先に説明したように、例えばSVM等の手法を用いて求めることができるが、
図16に示す例では、マッチング成否判定境界面111をユーザがマニュアルで指定する手段について説明する。
図16(a)は、GUIによるユーザ設定の例を示す図である。
図16(a)に示すGUIでは、判定指標値空間を例えばLCD画面などの表示装置20に表示する。
図16(a)では、判定指標値A1103、判定指標値B1104の2つの判定指標値を縦軸と横軸にとったグラフを例としているが、3つ以上の複数の判定指標値を用いている場合は、軸に表示する指標値を切り替えることで表示することも可能である。本GUIで、境界面描画ボタン1102をマウス等で選択し、マッチング判定境界面1101のユーザ入力の受け入れを開始する。次にGUI上の判定指標値空間にマウス入力等によりユーザがマニュアルで判定境界面1101を描画する。ユーザが描画したマッチング判定境界面を
図3で述べたマッチング成否判定境界面111としてユーザ指定により用いることができる。
【0088】
なおGUIは、
図16に示すようなフォーマットに限定するものではなく、マッチング成否判定境界面111をユーザがマニュアルで指定できるものであれば周知の技術を用いることができる。
【0089】
図16(b)、(c)は、GUIに表示する判定指標値空間の一例を示す図である。
図16(b)は、マッチング正否判定境界面111を直線で引いた例であり、
図16(c)は、マッチング正否判定境界面111を曲線で引いた例を示す図である。尚、グラフ上に、記号○、或いは、記号×で表示しているプロットが、学習データにおける判定指標値であり、1つの記号が、一組のテンプレートと被サーチ画像から切り出した画像とから求めた判定指標値となる。ここでは、○がマッチング正解の場合の値、×がマッチング不正解の場合の値となっている。この記号○、記号×の分布は、ユーザがマッチング成否判定指標値1103、1104をマニュアル操作で指定する際の参考データとして表示することが可能である。尚、ここでは、記号に○×を用いたが、それに限定するものはなく、マッチング正解、不正解を区別できるものであれば良い。以上により、複数のマッチング成否判定指標値がある場合にでもマニュアルでマッチング成否判定指標値1103、1104を入力する手段を提供することが可能である。
【0090】
図17は、マッチング結果の安定性を判定指標値で張られる判定指標値空間で確認するためのGUIの例を説明する図である。
図17(a)は、2次元の判定指標値空間の例である。判定指標値A1203と判定指標値B1204とで張られる判定指標値空間で、マッチング成否判定境界面1201及び、マッチングで照合位置(マッチング結果)を得たときのテンプレートと被サーチ画像から切り出した画像とから求めた判定指標値をもとにマッチング結果の判定指標値空間での位置1202を、GUIでは表示する。この図に示すGUIにより、マッチング結果が、マッチング成否判定境界面1201からどの程度離れているかのイメージをグラフィカルに確認することが可能となる。マッチング結果がマッチング成否判定境界面1201に近ければ、判定指標値が少し異なるとマッチング正解/不正解が異なってしまい、マッチングが不安定になる恐れがあることを確認できる。
【0091】
一方で、マッチング結果がマッチング成否判定境界面1201から離れていれば、マッチングが安定している可能性が高いことを確認できる。
【0092】
図17(b)は、
図17(a)と同様に、マッチング結果の安定性を確認するGUIの例を示す図であるが、3つの判定指標値で張られる判定指標値空間を3次元グラフでグラフィカルに確認することができる。マッチング成否判定境界面1205、マッチング結果の位置1202を
図17(a)と同様に表示することができる。
【0093】
尚、マッチング成否判定境界面1205は、透過表示により境界面内にあるデータも確認できる。また視点の移動ボタン1206、1207などにより、表側、裏側などの任意の視点から、判定指標値空間内の学習データ、マッチング成否判定境界面、及びマッチング結果の位置を確認することができる。
【0094】
図17(c)は、
図17(a)、(b)と同様に、マッチング結果の安定性を確認するGUIであり、複数の判定指標値で張られる判定指標値空間を、任意の2つの判定指標値で張られる判定指標値空間にマッチング判定境界面を投影したもの1214の全て、或いは一部を対応させて並べた表示1211が行われている。
図17(c)は、判定指標値がA,B,C,D(1212、1213)の4つある場合の例であり、例えば、AとBとから得られる判定指標値空間にマッチング判定境界面を投影したもの1214を、任意の対応関係について見ることができる。以上により、マッチング結果の安定性を確認するGUIを提供することが可能である。なお、このGUIでの表示部材の配置、サイズ、項目は、図に示したものに限られず、判定指標値空間における学習データ、マッチング成否判定境界面、マッチング結果の位置の関係が確認できる表示方法であれば良い。
【0095】
上記の実施の形態において、添付図面に図示されている構成等については、これらに限定されるものではなく、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0096】
また、本発明の各構成要素は、任意に取捨選択することができ、取捨選択した構成を具備する発明も本発明に含まれるものである。