(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱硬化性有機樹脂を含浸させた無機繊維布を含む有機樹脂層と、硬化性シリコーン樹脂を含浸させた無機繊維布を含むシリコーン樹脂層とをそれぞれ1層以上積層した積層板と、該積層板の最上面と最下面とに積層された金属箔とを有するものであり、前記有機樹脂層の硬化後のTMA法による縦方向の線膨張係数が70ppm/℃以下のものであることを特徴とするシリコーン・有機樹脂複合積層板。
前記積層板が、前記有機樹脂層を中間層とし、該有機樹脂層の上面と下面に前記シリコーン樹脂層を積層した三層構造を有し、前記有機樹脂層のガラス転移温度が前記シリコーン樹脂層よりも高いものであることを特徴とする請求項1に記載のシリコーン・有機樹脂複合積層板。
【背景技術】
【0002】
LED(Light Emitting Diode)の実装基板としては、エポキシ樹脂をガラス繊維織布に含浸させたものが広く使われている。しかし、鉛フリーはんだや部品の発熱、光の影響によりエポキシ樹脂が劣化するという問題がある。また、耐熱性が要求されるLEDの実装基板には、アルミナ、窒化アルミニウム等のセラミックスが使われてきたが、コストが高く大型の基板を作製するのが困難である。
【0003】
そこで、耐光性、耐熱性等の特性に優れており、種々の用途に使用されているシリコーン樹脂による積層基板をLEDの実装基板として使用することが検討されている。しかし、従来のシリコーン積層基板は、縮合ワニスや付加ワニスを用いて製造されているため、製造方法が複雑であり、かつ、銅箔等の金属箔の表面に貼り付けるためには接着力が弱いという問題がある。さらに、シリコーン基板は従来の有機基板に比べ膨張係数が大きいため、シリコーン基板にLEDなどの素子を搭載した後に温度サイクルなどの過酷な条件下におくことで金線が破断するなどの問題が発生した。
【0004】
上記の問題を抱えたシリコーン積層基板やコストの高いセラミックス基板は、今後の一般照明用途や、ディスプレー用途の基板としての対応が困難になる可能性があり、高温熱負荷環境下で変色しないもので、かつ反射率の低下がなく大面積化に対応可能であり、熱時寸法安定性を有し、コストを低減したLEDの実装基板(白色プリント配線板)の開発が求められていた。
【0005】
このような中で、特許文献1では、複合銅張積層板として、銅箔の片面にセラミック溶射層を形成し、これをガラス繊維織布プリプレグとともに熱圧成形して一体化し、熱膨張係数が低くて寸法安定性が、従来の銅張積層板に比べて優れ、しかもセラミック複合銅張積層板の欠点であるドリル加工性を大幅に改善したセラミック複合銅張積層板が提案されている。しかしながら、銅箔は18μm〜70μmと薄いため、銅の融点の1083℃に対する高温度での溶射処理する場合に広範囲に均一な溶射膜を得る事は非常に難しい。
【0006】
また、特許文献2では、耐熱性の高い熱可塑性樹脂とポリオルガノシロキサンと金属層からなる、耐熱性が高く、可視光領域での反射率が高く、高温熱負荷環境下における反射率の低下が少ないLED実装用プリント配線板材料が提案されている。しかしながら、熱可塑性樹脂では熱時寸法安定性が悪く、また、ポリオルガノシロキサンとの接着に課題を残している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、低線膨張で熱時寸法安定性が良好であり、機械特性に優れ、かつ、優れた耐熱性及び耐光性を有し、LEDの高輝度化に対応するLED実装基板用として好適なシリコーン・有機樹脂複合積層板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、
熱硬化性有機樹脂を含浸させた無機繊維布を含む有機樹脂層と、硬化性シリコーン樹脂を含浸させた無機繊維布を含むシリコーン樹脂層とをそれぞれ1層以上積層した積層板と、該積層板の最上面と最下面とに積層された金属箔とを有するシリコーン・有機樹脂複合積層板を提供する。
【0010】
このような複合積層板であれば、低線膨張で熱時寸法安定性が良好であり、機械特性に優れる有機樹脂層と、優れた耐熱性及び耐光性を有するシリコーン樹脂層とを有するシリコーン・有機樹脂複合積層板となり、LEDの高輝度化に対応するLED実装基板用として好適に用いることができる。
【0011】
このうち、前記積層板が、前記有機樹脂層を中間層とし、該有機樹脂層の上面と下面に前記シリコーン樹脂層を積層した三層構造を有し、前記有機樹脂層のガラス転移温度が前記シリコーン樹脂層よりも高いものであることが好ましい。
【0012】
このような積層構造を持たせることで、表層部に耐熱性、耐光性に優れるシリコーン樹脂層を配し、中央部にはガラス転移温度が高く、低線膨張、機械強度に優れるエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂層を配置することとなり、LED実装基板用としてより好適に用いることができる。
【0013】
また、前記有機樹脂層の硬化後のTMA法による縦方向の線膨張係数が70ppm/℃以下のものであることが好ましい。
【0014】
このような有機樹脂層であれば、優れた熱時寸法安定性となり、有機樹脂層とシリコーン樹脂層との界面での剥離を抑制することができる。
【0015】
さらに、前記有機樹脂層の硬化後の吸水率が0.13質量%以下のものであることが好ましい。
【0016】
このような有機樹脂積層板を使用すると、積層板が吸湿した状態でのリフロー時に、水分による急激な膨張を防ぐことができ、有機樹脂層とシリコーン樹脂層との界面での剥離をより抑制することができる。
【0017】
また、本発明は、熱硬化性有機樹脂を含浸させた無機繊維布を含む有機樹脂層と、硬化性シリコーン樹脂を含浸させた無機繊維布を含むシリコーン樹脂プリプレグとをそれぞれ1層以上積層し、加圧成型下で加熱硬化させる工程を含むシリコーン・有機樹脂複合積層板の製造方法を提供する。
【0018】
さらに、本発明は、熱硬化性有機樹脂を含浸させた無機繊維布を含む有機樹脂層と、硬化性シリコーン樹脂を含浸させた無機繊維布を含むシリコーン樹脂層とを接着剤を用いて接着することでそれぞれ1層以上積層し、加圧成型下で加熱硬化させる工程を含むシリコーン・有機樹脂複合積層板の製造方法を提供する。
【0019】
本発明のシリコーン・有機樹脂複合積層板はこのような方法で製造をすることができる。
【0020】
また、本発明は、上記のシリコーン・有機樹脂複合積層板を使用して作製される発光半導体装置を提供する。
【0021】
本発明のシリコーン・有機樹脂複合積層板は耐熱性、耐光性に優れ、かつ膨張係数も小さく熱時安定性も良好なことから、LEDなどの発光半導体装置の実装基板、高耐圧、大電流などの高温動作可能な半導体装置やパワーモジュールなどの実装基板などに好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のシリコーン・有機樹脂複合積層板は、低線膨張で熱時寸法安定性が良好であり、機械特性に優れ、かつ、優れた耐熱性及び耐光性を有するものであり、このような複合積層板であれば、LEDの高輝度化に対応するLED実装基板用として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明のシリコーン・有機樹脂複合積層板は、熱硬化性有機樹脂を含浸させた無機繊維布を含む有機樹脂層と、硬化性シリコーン樹脂を含浸させた無機繊維布を含むシリコーン樹脂層とをそれぞれ1層以上積層した積層板と、該積層板の最上面と最下面とに積層された金属箔とを有するものである。
【0024】
(有機樹脂層)
本発明で用いる有機樹脂層に含まれる熱硬化性有機樹脂としては、熱硬化性有機樹脂の硬化後の線膨張係数がシリコーン樹脂の硬化後のそれよりも小さなものであることが好ましく、具体的には、エポキシ樹脂、BT樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ変性シリコーン樹脂、シリコーン変性フェノール樹脂、などの樹脂を挙げることができ、熱時寸法安定性、機械特性等の性能面からエポキシ樹脂やBT樹脂が好ましい。
【0025】
また、有機樹脂層に含まれる無機繊維布としては、下記の繊維からなる織布が使用される。
例としては、炭素繊維、ガラス繊維、石英ガラス繊維、金属繊維などの無機繊維、炭化ケイ素繊維、炭化チタン繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維など、製品特性に応じていかなるものも使用することができ、さらに、上記の繊維と合わせて、芳香族ポリアミド繊維、ポリイミド繊維、ポリアミドイミド繊維などの有機繊維を用いることもできる。上記の繊維の中で好ましい繊維としては、ガラス繊維、石英繊維、炭素繊維などであり、中でも絶縁性の高いガラス繊維や石英ガラス繊維がより好ましいものとして挙げることができる。
【0026】
このような無機繊維布の形態としては長繊維フィラメントを一定方向に引きそろえたロービング、クロス、不織布などのシート状のもの、更にはチョップストランドマットなど、積層体を形成することができるものであれば特に制限はされない。また、無機繊維布の質量は好ましくは20〜450g/m
2であり、より好ましくは
25〜210g/m
2である。
【0027】
また、後述の膨張係数を下げるため熱硬化性有機樹脂に無機質充填剤を添加してもよい。添加される無機質充填剤としては、公知の無機質充填剤であればいずれのものであってもよく、例えば、シリカ(沈降シリカ、ヒュームドシリカ等)、アルミナ、窒化アルミニウム等の補強性無機質充填剤;炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化第二鉄、カーボンブラック等の非補強性無機質充填剤が挙げられる。これら無機質充填剤としては、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。このような無機充填剤を添加することで、本発明のシリコーン・有機樹脂複合積層板の線膨張率を下げ且つ該積層板の強度を向上させることができる。
【0028】
これら無機質充填剤の中でも溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナなどが好適に用いられる。これら充填剤の形状は球状のものが高充填できることから好ましく、かつ平均粒径も10ミクロン以下が好ましく、より好ましくは3ミクロン以下、さらに好ましくは1ミクロン以下である。特にLED用積層基板として使用する場合、基板の厚みに対し1/2以下の粒径のシリカなどを使用すれば、LEDの光が基板の中に透過し輝度が低下するような不具合が発生しないため好ましい。
【0029】
上記の無機質充填剤の添加量としては、得られるシリコーン・有機複合積層基板の線膨張係数及び強度の観点から、熱硬化性有機樹脂100質量部当り1000質量部以下(0〜1000質量部)の範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜900質量部、特には50〜800質量部の範囲であることが好ましい。
【0030】
また、積層板の光反射率を向上するため熱硬化性有機樹脂に白色顔料を配合することができる。白色顔料としては、従来から一般的に使用されている公知の白色顔料であれば制限なく使用できるが、好適には二酸化チタン、酸化亜鉛又はその組み合わせが用いられる。これらの白色顔料としては、通常、平均粒子径が好ましくは0.05〜1μm、より好ましくは0.1〜0.5μm、さらに好ましくは0.1〜0.3μm程度のものを使用することができる。尚、この平均粒子径は、例えば、電子顕微鏡法による単一粒子径等として求めることができる。白色顔料は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0031】
白色顔料の配合量は、得られるシリコーン・有機複合積層基板の光反射率の観点から、有機樹脂100質量部当り0.1〜300質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜300質量部、特に好ましくは10〜300質量部、とりわけ30〜300質量部の範囲であることが好ましい。
【0032】
本発明のシリコーン・有機樹脂複合積層板の有機樹脂層は、熱硬化性有機樹脂を無機繊維布に含浸させたものを含む。具体的には、無機繊維布に熱硬化性有機樹脂を含浸させた半硬化状のプリプレグや、該プリプレグを加圧加熱して硬化状態としたものを例示できる。
【0033】
無機繊維布に熱硬化性有機樹脂を含浸させたプリプレグは、上記熱硬化性有機樹脂組成物を溶剤に溶解・分散した状態で無機繊維布に含浸させ、次に、該無機繊維布から前記溶剤を蒸発させて除去することで得ることができる。
【0034】
上記のプリプレグの作製のために使用する溶剤は、上述した熱硬化性有機樹脂組成物を溶解・分散させることができ、かつ、該熱硬化性有機樹脂が未硬化又は半硬化の状態に保持される温度で蒸発させることができるものであれば特に限定されず、例えば、沸点が50〜200℃、好ましくは60〜150℃の溶剤を挙げることができる。このような溶剤の具体例としては、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系非極性溶剤やエステル類、エーテル類等を挙げることができる。溶剤の使用量は、上述した熱硬化性有機樹脂が溶解・分散し、得られた溶液又は分散液を無機繊維布に含浸させることができる量であれば、特に制限されず、上記樹脂100質量部に対して、好ましくは、10〜200質量部、より好ましくは20〜100質量部である。
【0035】
上記熱硬化性有機樹脂の溶液又は分散液は、例えば、ガラスクロスなどの無機繊維布を該溶液又は分散液に含浸させ、乾燥炉中で好ましくは50〜150℃、より好ましくは60〜120℃で溶剤を除去することにより、プリプレグを得る。
【0036】
このように作製された有機樹脂層は、硬化後の線膨張係数が70ppm/℃以下であることが好ましく、より好ましくは20〜60ppm/℃である。線膨張係数が70ppm/℃以下であれば、優れた熱時寸法安定性となり、有機樹脂層とシリコーン樹脂層との界面で剥離が起こることを抑制することができる。さらに、このような有機樹脂層を用いたシリコーン・有機樹脂複合積層板は、熱による変形が少ないため、高温動作可能な半導体装置やパワーモジュールなどの実装基板などに好適に用いることができる。
【0037】
また、上記の有機樹脂層は、硬化後の吸水率が0.13%以下であることが好ましく、より好ましくは0.08%以下である。尚、本発明において、「吸水率」とはJIS C 6481の5.14によって測定した値を指す。このような特性を持った有機樹脂層を、例えば、三層構造の中間層として使用することで、吸湿した状態でIRリフローなどのはんだ付けを行っても、水分による急激な膨張等の不具合により、有機樹脂積層板とシリコーン樹脂積層板の界面で剥離し断線や配線間でリークが発生し絶縁基板としての性能を発揮しなくなることがないため好ましい。
【0038】
また、上記の有機樹脂層は、特に三層構造の中間層として使用する際に、後述のシリコーン樹脂層よりもガラス転移温度が高いことが好ましい。ガラス転移温度が高ければ、熱による変形が起こりにくくなるため、シリコーン樹脂層との界面での剥離を防止することができ、高温動作可能な半導体装置やパワーモジュールなどの実装基板などに好適に用いることができる。
【0039】
(シリコーン樹脂層)
本発明で使用されるシリコーン樹脂層に含まれる硬化性シリコーン樹脂において、その硬化機構は特に限定するものではない。例としては、縮合反応による硬化、ヒドロシリル化による付加反応を利用した硬化、過酸化物などを用いたラジカル反応による硬化、電子線照射によるラジカル重合反応やカチオン重合反応を利用した硬化などが挙げられ、それらの硬化機構を単独あるいは2つ以上組み合わせたものであってもよい。中でも、ヒドロシリル化による付加反応を利用した熱硬化性シリコーン樹脂を用いることが、取扱いの容易さや、硬化した樹脂の熱安定性などの観点から好ましい。
【0040】
また、シリコーン樹脂層に含まれる無機繊維布としては、有機樹脂層に含まれるものと同様のものを例示できる。
【0041】
さらに、本発明では、硬化性シリコーン樹脂に無機充填剤を添加してもよい。添加される無機充填剤は、熱硬化性有機樹脂と同様のものを例示できる。このように、無機充填剤を加えることでシリコーン樹脂層の線膨張係数を下げることができる。
【0042】
また、硬化性シリコーン樹脂に白色顔料を配合することができる。白色顔料は、熱硬化性有機樹脂と同様のものを例示できる。このように、白色顔料を硬化性シリコーン樹脂にも配合することで、積層板の光反射率をさらに向上させることができる。
【0043】
本発明のシリコーン・有機樹脂複合積層板のシリコーン樹脂層は、硬化性シリコーン樹脂を無機繊維布に含浸させたものを含む。具体的には、無機繊維布に硬化性シリコーン樹脂を含浸した未硬化あるいは半硬化状のプリプレグや、該プリプレグを加圧加熱して硬化状態としたシリコーン樹脂層を例示できる。
【0044】
無機繊維布に硬化性シリコーン樹脂を含浸させたプリプレグは、上記硬化性シリコーン樹脂組成物を溶剤に溶解・分散した状態で無機繊維布に含浸させ、次に、該無機繊維布から前記溶剤を蒸発させて除去することで得ることができる。このとき、使用する溶剤としては、熱硬化性有機樹脂を含浸させた無機繊維布からなるプリプレグを得る際に使用するものと同様のものを挙げることができる。
【0045】
このようにシリコーン樹脂層を作製し、例えば、有機樹脂層を中間層として、その上面及び下面にシリコーン樹脂を積層した三層構造とすることで、有機樹脂層の優れた熱時寸法安定性及び機械特性を有しつつ、耐熱性や、耐変色性及び耐トラッキング性といった耐光性に優れた積層板を得ることができる。
【0046】
(シリコーン・有機樹脂複合積層板の製造方法)
上記の有機樹脂層及びシリコーン樹脂層を、積層板の厚みに応じた枚数を重ね、加圧成形下で加熱硬化して積層板とすることができる。さらに、該積層板に金属箔を重ねて、例えば、5〜50MPaの圧力、70〜180℃の温度の範囲で真空プレス機等を用いて加圧加熱により金属張積層板を製造することができる。ここで用いる金属箔としては特に限定されないが、電気的、経済的に銅箔が好ましく用いられる。
【0047】
本発明のシリコーン・有機樹脂複合積層板のように、異なる樹脂を含む積層板を複合している複合積層板は、一般的に反ってしまうといった問題がある。そのため、本発明では積層板の最上面と最下面とに金属箔を積層する。また、積層板においても、上下が対称となるように設計し製造することが望ましい。
【0048】
例えば、積層板が二層構造の複合積層板を製造する場合は、有機樹脂プリプレグやそれを硬化した積層板と、シリコーン樹脂プリプレグとを積層し、更に銅箔を最上面と最下面に積層し加圧成形下で加熱硬化することで、二層構造の銅張り複合基板を製造することができる。
【0049】
また、積層板が三層構造の複合積層板の場合は、有機樹脂プリプレグやそれを硬化した積層板の上下面にシリコーン樹脂プリプレグを積層し、更に銅箔を最上面と最下面に積層し加圧成形下で加熱硬化することで三層の銅張複合積層板を製造することができる。
【0050】
二層構造、三層構造のいずれにおいても、シリコーン樹脂プリプレグが硬化したものを用いる場合はシリコーン樹脂やエポキシ樹脂などからなる接着剤を用いて積層してもよい。
【0051】
また、本発明は、複合積層板が二層構造や三層構造に限ったものではなく、本発明によれば、有機樹脂プリプレグやそれを硬化したものと、シリコーン樹脂プリプレグやそれを硬化したものを合計で三層以上複合させてもよい。
【0052】
このようにして得られるシリコーン・有機樹脂複合積層板は、低線膨張で熱時寸法安定性が良好で、機械特性に優れ、かつ、優れた耐熱性及び耐光性を有するものである。
【0053】
また、金属箔を剥離除去して、シリコーン樹脂層を露出させたときの波長400〜800nmの平均反射率が85%以上であって、かつ260℃で30分熱処理後の波長470nmにおける反射率の低下率が5%以下であることが好ましい。
【0054】
さらに、このシリコーン・有機樹脂複合積層板をサブトラクト法や穴あけ加工などの通常用いられる方法により加工することで印刷配線板を得ることができ、発光半導体装置の実装基板とすることができる。
【0055】
本発明のシリコーン・有機樹脂複合積層板は耐熱性、耐光性に優れ、かつ膨張係数も小さいことから、LEDなどの発光半導体装置の実装基板、高耐圧、大電流などの高温動作可能な半導体装置やパワーモジュールなどの実装基板などに好適に用いることができる。
【実施例】
【0056】
以下、テスト及び実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。尚、ここで「部」とは「質量部」の事を指す。
【0057】
(有機樹脂層の製造)
[テスト1]
平均粒径0.25μmの球状溶融シリカ(商品名:アドマファインSO−E1,アドマテックス製)600部、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂(商品名:エピクロンN−665、大日本インキ化学製)62.5部、硬化剤としてノボラックフェノール樹脂(商品名:HP−850、日立化成工業製)37.5部、硬化促進剤として2E4MZ(2−エチル−4−メチルイミダゾール)0.50部によるエポキシ樹脂ワニスを作製、ガラスクロス(商品名:WEA116E、日東紡製、単重104g/m
2)に含浸し、120℃の加熱炉で10分乾燥して付着量が60重量%のエポキシ樹脂プリプレグ1を得た。このエポキシ樹脂プリプレグ1を積層板の厚さが0.4mm及び1.2mmになるような枚数を重ねて、両面に銅箔(厚さ35μm)を配置して、圧力4MPa、温度180℃にて120分の加熱加圧成形を行い、厚さ0.4mm及び1.2mm、積層板1を得た。
得られた積層板1の吸水率及び線膨張係数を下記に示す方法で測定した。結果を表1に示す。
【0058】
・吸水率
厚さ0.4mmの両面銅張積層板をエッチングして、50mm角の試験片を50℃の恒温槽で24時間の前処理後、23℃蒸留水中に24時間浸漬した後、乾燥した清浄布でふき取り質量を測定する。吸水前後の質量から下式により吸水率を求めた。
吸水率(%)=(吸水後の質量−吸水前の質量)/吸水前の質量
【0059】
・線膨張係数
厚さ1.2mmの両面銅張積層板を全面エッチングし、2mm×2mmの試験片を切り出し、TMA法によるZ方向の線膨張係数を昇温速度5℃/分で測定した。結果を表1に記載した。
【0060】
[テスト2〜4]
テスト1と同じ方法で表1の配合及び条件に従いエポキシ樹脂プリプレグ2〜4及び積層板2〜4を作製し、吸水率及び線膨張係数を測定した。結果を表1に記載した。
【0061】
【表1】
【0062】
(シリコーン樹脂層の製造)
[テスト5]
ビニル基含有オルガノポリシロキサン樹脂とヒドロシリル基含有オルガノポリシロキサン樹脂に反応抑制剤と硬化触媒からなる付加硬化型シリコーン樹脂ベース組成物100部に球状シリカ(商品名:アドマファインSO−E1、アドマテックス製、平均粒径:約0.25μm)100部とルチル型酸化チタン(商品名:PF−691、石原産業製、平均粒子径:約0.21μm)10部を加えてシリコーン樹脂ワニスを調製した。該シリコーン樹脂ワニスをガラスクロス(商品名:WEA05E、日東紡製、単量:47g/m
2)に含浸し、100℃の乾燥機で8分間加熱処理して付着量が60質量%のシリコーン樹脂プリプレグを得た。
【0063】
(シリコーン・有機樹脂複合積層板の製造)
[実施例1]
オルソクレゾールノボラック樹脂(商品名:エピクロンN−665、大日本インキ化学製)62.5重量部、フェノールノボラック樹脂(商品名:HP−850、日立化成工業製)37.5重量部、及び2E4MZ(2−メチル−4−メチルイミダゾール)0.50重量部と球状シリカ(商品名:アドマファインSO−E1、アドマテックス製、平均粒径:約0.25μm)600質量部を撹拌混合したワニスをガラスクロス(商品名:WEA116E、日東紡製、質量:104g/m
2)に含浸し、120℃の乾燥機で10分間処理してエポキシ樹脂プリプレグ5を得た。このエポキシ樹脂プリプレグ5を最終的に得られる積層板の厚さが0.4mm及び1.2mmになるような枚数だけ重ね、該積層板の両表面にテスト5で作製したシリコーン樹脂プリプレグを1枚ずつ重ねて、更にシリコーン樹脂プリプレグの表面に銅箔(厚さ35μm)を配置して、圧力4MPa、180℃にて120分加熱加圧成形によりシリコーン・エポキシ樹脂複合三層両面銅張積層板を得た。
得られた両面銅張積層板を以下の評価方法で評価した。結果を表2に記載した。
【0064】
・線膨張係数
厚さ1.2mmの両面銅張積層板を全面エッチングし、2mm×2mmの試験片を切り出し、TMA法によるZ方向の線膨張係数を昇温速度5℃/分で測定した。・
【0065】
・吸水率
厚さ0.4mmの両面銅張積層板をエッチングして、50mm角の試験片を50℃の恒温槽で24時間の前処理後、23℃蒸留水中に24時間浸漬した後、乾燥した清浄布でふき取り質量を測定する。吸水前後の質量から下式により吸水率を求めた。
吸水率(%)=(吸水後の質量−吸水前の質量)/吸水前の質量
【0066】
・耐熱性
JIS C 6481に従い、恒温槽で280℃×60分暴露後、膨れ又ははがれの有無を目視により調べた。
【0067】
・耐熱変色性
厚さ0.4mmの両面銅張積層板をエッチングして、50mm角の試験片を200℃5時間処理後の、処理前からの変色を目視にて調べた。
【0068】
・熱衝撃試験
上記両面銅張積層板を用いてLED搭載用COB基板を作製し、その基板にLEDチップを搭載して金ワイヤーでボンディング後、シリコーン樹脂にて封止しLED発光装置を作製した。該LED発光装置を熱衝撃試験装置(エスペック(株)製、型番TSE−11−A)より−60℃〜140℃の温度条件で1000サイクル実施後、LEDの点灯試験を実施し、点灯、不灯で評価した。
【0069】
[実施例2]
エポキシ樹脂プリプレグ5の代わりに、テスト2で得られたエポキシ樹脂プリプレグ2を用いた他は、実施例1と同様の方法によりシリコーン・エポキシ樹脂複合三層両面銅張積層板を得た。得られた積層板を実施例1と同様の評価方法で評価した。結果を表2に記載した。
【0070】
[実施例3]
エポキシ樹脂プリプレグ5の代わりに、テスト3で得られたエポキシ樹脂プリプレグ3を用いた他は、実施例1と同様の方法によりシリコーン・エポキシ樹脂複合三層両面銅張積層板を得た。得られた積層板を実施例1と同様の評価方法で評価した。結果を表2に記載した。
【0071】
[実施例4]
エポキシ樹脂プリプレグ5の代わりに、銅箔をエッチングにより除去した市販のエポキシ樹脂銅張積層板(日立化成製MCL−E−679FG)を用いた他は、実施例1と同様の方法によりシリコーン・エポキシ樹脂複合三層両面銅張積層板を得た。得られた積層板を実施例1と同様の評価方法で評価した。結果を表2に記載した。
【0072】
[実施例5]
エポキシ樹脂プリプレグ5の代わりに、テスト4によって作製したエポキシ樹脂プリプレグ4を用いた他は、実施例1と同様の方法によりシリコーン・エポキシ樹脂複合三層両面銅張積層板を得た。得られた積層板を実施例1と同様の評価方法で評価した。結果を表2に記載した。
【0073】
[実施例6]
エポキシ樹脂プリプレグ5の代わりに、市販のBTレジン銅張積層板(三菱ガス化学製CCL−HL832NS)の銅箔をエッチングにより除去した積層板を用いた他は、実施例1と同様の方法によりシリコーン・BT樹脂複合三層両面銅張積層板を得た。得られた積層板を実施例1と同様の評価方法で評価した。結果を表2に記載した。
【0074】
[実施例7]
実施例1〜6の銅張積層板を用い、IPC TM650 2.4.24.1に記載の方法に従い、288℃×60分の暴露試験を実施した結果、実施例1〜6では有機・シリコーン樹脂層での剥離、膨れの発生はなかった。
また、該積層板を180℃の10時間暴露試験を実施した所、熱変色の発生はなかった。
【0075】
[比較例1]
テスト5に記載のシリコーンプリプレグを最終的に得られる積層板の厚さが0.4mm及び1.2mmになるように重ねて、両面に銅箔(厚さ35μm)を配置して、圧力4MPa、温度180℃にて120分の加熱成型を行い、厚さ0.4mm及び1.2mmの積層板を得た。これらの積層板を用い実施例1に記載された方法で積層板の吸水率及び線膨張係数を測定し、耐熱性、耐熱変色性、及び熱衝撃試験の評価を行った。結果を表2に記載した。
【0076】
[比較例2]
実施例4に用いた熱硬化性エポキシ樹脂積層板の代わりにポリエーテルケトン樹脂40質量%とポリエーテルイミド樹脂60質量%からなる熱可塑性樹脂フィルムを用い、実施例1と同様の方法でシリコーン・熱可塑性樹脂複合三層積層板を作成した。この積層板を用い実施例1と同様の評価方法で積層板の吸水率及び線膨張係数を測定し、耐熱性、耐熱変色性、及び熱衝撃試験の評価を行った。結果を表2に記載した。
【0077】
[比較例3]
実施例1に記載のシリコーン・エポキシ樹脂複合三層銅張積層板の作成において、銅箔の配置を片側の表面だけにして積層板を作成しようとしたところ、加熱加圧成形した後に積層板にそりが発生した。この状態では以後の評価は困難であると判断し、実施例1と同様の評価を行わなかった。
【0078】
【表2】
【0079】
実施例1〜6は、有機・シリコーン樹脂層での剥離、膨れや熱変色の発生もなく、それらを用いて作製したLEDも全て点灯した。また、比較例1は線膨張係数が大きいため、それを用いて作製したLEDは10サンプル中3サンプルが点灯しなかった。比較例2は耐熱性試験で膨れが発生し、それを用いて作製したLEDは点灯しなかった。比較例3では銅箔を上面あるいは下面にしか貼らなかったので、積層板作製時に反りが発生し、試験に供することができなかった。
【0080】
以上のことから、本発明のシリコーン・有機樹脂複合積層板であれば、低線膨張で熱時寸法安定性が良好であり、機械特性に優れ、かつ、優れた耐熱性及び耐光性を有し、LEDの高輝度化に対応するLED実装基板用として好適に用いることができることが明らかになった。
【0081】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。