特許第5942315号(P5942315)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5942315
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】粘着剤組成物及び粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 153/00 20060101AFI20160616BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20160616BHJP
   C09J 7/00 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   C09J153/00
   C09J133/06
   C09J7/00
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-263696(P2011-263696)
(22)【出願日】2011年12月1日
(65)【公開番号】特開2013-116935(P2013-116935A)
(43)【公開日】2013年6月13日
【審査請求日】2014年11月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506122327
【氏名又は名称】公立大学法人大阪市立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100146879
【弁理士】
【氏名又は名称】三國 修
(72)【発明者】
【氏名】松本 章一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 絵理子
(72)【発明者】
【氏名】森野 彰規
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−206463(JP,A)
【文献】 特開平09−134991(JP,A)
【文献】 特開2011−162586(JP,A)
【文献】 特開2004−067958(JP,A)
【文献】 特開2011−099078(JP,A)
【文献】 特表2001−512711(JP,A)
【文献】 特表2002−535475(JP,A)
【文献】 特開2001−115124(JP,A)
【文献】 特開平09−324165(JP,A)
【文献】 特開2009−227737(JP,A)
【文献】 特開2002−309210(JP,A)
【文献】 特開2011−175247(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0154137(US,A1)
【文献】 特開2011−006608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系共重合体を主剤とし、実質的に架橋剤を含有しない粘着剤組成物であって、
前記アクリル系共重合体が、(メタ)アクリレートモノマー(a)(但し、後述する極性基含有モノマー(b)に該当するものを除く。)及び極性基含有モノマー(b)をモノマー成分として含有するポリ(メタ)アクリレートブロック(A)と、単独重合体のガラス転移温度が20℃以上のモノマー(c)をモノマー成分として含有するポリマーブロック(B)とを含有するアクリル系ブロック共重合体であり、
前記極性基含有モノマー(b)の含有量が、アクリル系共重合体を構成するモノマー成分中の8質量%以上であり、粘着剤組成物からなる粘着剤層のゲル分率が10質量%未満となることを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリレートモノマー(a)が、単独重合体のガラス転移温度が0℃以下の(メタ)アクリレートモノマーである請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記極性基含有モノマー(b)が、水酸基含有モノマーである請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記単独重合体のガラス転移温度が20℃以上のモノマー(c)が、tert−ブチル(メタ)アクリレート、メチルメタクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、3,5−ジメチル−1−アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート及びスチレンから選ばれる少なくとも一種である請求項1〜3のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリレートモノマー(a)の含有量が、アクリル系共重合体を構成するモノマー成分中の25質量%以上であり、前記単独重合体のガラス転移温度が20℃以上のモノマー(c)の含有量が10質量%以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記アクリル系ブロック共重合体中のポリ(メタ)アクリレートブロック(A)とポリマーブロック(B)との比率が、(A)/(B)で表わされるモル比で25/75〜80/20である請求項1〜5のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着テープ。
【請求項8】
前記粘着剤層のゲル分率が10%未満である請求項7に記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋剤を使用しなくとも好適に被着体への貼付けや物品間の固定が可能な粘着テープを与える粘着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープは、作業性に優れる接着信頼性の高い接合手段として、OA機器、IT・家電製品、自動車等の各産業分野での部品固定用途や、部品の仮固定用途、製品情報を表示するラベル用途等に使用されている。接着信頼性確保に必要な代表的な特性として、耐熱性や耐剥がれ性が挙げられる。これらの確保には、粘着剤の凝集力の向上が必要であり、一般的には架橋型の粘着剤組成物が用いられる。
一方、粘着テープの生産工程に焦点を当てた場合、架橋剤を配合した粘着剤組成物を塗工・乾燥した後のエージング工程に関し、生産効率の観点からエージング工程を不要にすることが求められている。
【0003】
非架橋型の粘着剤組成物としては、例えば、スチレンのような高ガラス転移温度を有するポリマーブロックとアクリル系ポリマーブロックとからなるブロック共重合体を使用した粘着剤組成物が開示されている(特許文献1参照)。当該粘着剤組成物は、架橋処理を施さずとも粘着力と凝集力を満足し、室温において良好な粘着特性を実現できることが開示されている。しかし、当該粘着剤組成物は、耐熱性や耐剥がれ性に関する特性が十分ではなく、当該特性の更なる向上が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−096421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、架橋剤を使用しなくとも高温下における優れた接着力と、高い保持力とを有する粘着剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明においては、アクリル系共重合体を主剤とし、実質的に架橋剤を含有しない粘着剤組成物であって、
前記アクリル系共重合体が、(メタ)アクリレートモノマー(a)(但し、後述する極性基含有モノマー(b)に該当するものを除く。)及び極性基含有モノマー(b)をモノマー成分として含有するポリ(メタ)アクリレートブロック(A)と、単独重合体のガラス転移温度が20℃以上のモノマー(c)をモノマー成分として含有するポリマーブロック(B)とを含有するアクリル系ブロック共重合体であり、
前記極性基含有モノマー(b)の含有量が、アクリル系共重合体を構成するモノマー成分中の8質量%以上であり、粘着剤組成物からなる粘着剤層のゲル分率が10質量%未満となる粘着剤組成物により優れた高温接着力と、高い保持力とを実現できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の粘着剤組成物によれば、架橋剤を使用しなくとも室温下で好適な接着力を実現でき、また優れた凝集力により好適な保持力を有する。また、高温下においても優れた接着力及び保持力を実現できることから、各種ラベル用途や部品固定用途に好適に適用できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[アクリル系共重合体]
本発明の粘着剤組成物に使用するアクリル系共重合体は、モノマー成分として、(メタ)アクリレートモノマー(a)、極性基含有モノマー(b)及び単独重合体のガラス転移温度が20℃以上のモノマー(c)を含有し、極性基含有モノマー(b)の含有量が、アクリル系共重合体を構成するモノマー成分中の5質量%以上の粘着剤組成物である。
【0009】
(メタ)アクリレートモノマー(a)としては、一般的なアクリル系粘着剤組成物に使用される(メタ)アクリレートモノマーを適宜使用でき、例えば、炭素数1〜14のアクリロイル基を有する(メタ)アクリレートを使用できる。具体的には、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ウンデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート等を例示できる。なお、当該(メタ)アクリレートモノマー(a)としては、後述する極性基含有モノマー(b)及び単独重合体のガラス転移温度が20℃以上のモノマー(c)に該当しないモノマーを使用することが好ましい。
【0010】
なかでも、単独重合体のガラス転移温度が0℃以下の(メタ)アクリレートモノマーを使用することが好ましく、より好ましくは−20℃以下、さらに好ましくは−60〜−30℃である。ガラス転移温度が当該範囲の(メタ)アクリレートモノマーは、好適な接着性を確保しやすいため好ましい。なお、単独重合体のガラス転移温度は、POLYMER HANDBOOK(THIRD EDTION,J.BRANDRUP and E.H.IMMERGUT,A WILEY−INTERSCIENCE PUBLICATION,1989)に開示されたガラス転移温度を参考にできる。
【0011】
上記の(メタ)アクリレートモノマー(a)のなかでも、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート及びイソオクチルアクリレートは、特に好適な接着力を実現しやすいため好ましい。さらに、n−ブチル(メタ)アクリレートは特に優れた高温接着力を実現しやすく、また、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートは低温での接着力を確保しやすいため、各々特に好ましく使用できる。
【0012】
アクリル系共重合体中の(メタ)アクリレートモノマー(a)の含有量は、アクリル系共重合体を構成するモノマー成分中の25質量%以上とすることが好ましく、40〜85質量%とすることがより好ましく、50〜70質量%とすることが更に好ましい。(メタ)アクリレートモノマー(a)の含有量を当該範囲とすることで、好適な接着性を実現しやすくなる。
【0013】
本発明においては、アクリル系共重合体を構成するモノマー成分として極性基含有モノマー(b)を併用することで、優れた凝集力を確保でき、高温下での優れた接着力と、高い保持力とを実現できる。極性基含有モノマーとしては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基又はアミド基等の極性基を有するビニルモノマーを例示でき、これらモノマーは、分子間相互作用により、接着性や粘着剤層の凝集力の向上に寄与しやすいため好ましい。なかでも水素結合を形成できる極性基含有ビニルモノマーを好ましく使用でき、水酸基含有ビニルモノマーは、接着性の向上や、接着後の粘着剤層の経時安定性に優れ、また優れた凝集力を実現しやすいため特に好ましい。また、これら極性基含有モノマーは、適宜併用して使用してもよく、併用する際にも水酸基含有ビニルモノマーを使用し、当該水酸基含有モノマーと他の極性基含有ビニルモノマーとを併用することが特に好ましい。なお、当該極性基含有モノマー(b)としては、後述する単独重合体のガラス転移温度が20℃以上のモノマー(c)に該当しないモノマーを使用することが好ましい。
【0014】
水酸基含有ビニルモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等を使用することができる。なかでも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを特に好ましく使用できる。
【0015】
また、カルボキシル基含ビニルモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、アクリル酸ダイマー、エチレンオキサイド変性コハク酸アクリレートなどのカルボキシル基を有するモノマー等を使用することができる。
【0016】
また、アミド基含有ビニルモノマーとしては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等を使用でき、アミノ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等を使用することができる。
【0017】
また、イミノ基含有モノマーとしては、例えばシクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、イタコンイミド等を使用することができる。
【0018】
極性基含有ビニルモノマーの含有量としては、アクリル系ブロック重合体を構成するモノマー成分中の5質量%以上、好ましくは5〜30質量%、より好ましくは5〜25質量%、さらに好ましくは8〜20質量%とすることで、高温下での粘着剤層の凝集力が高くなり、優れた高温接着性を発揮できる。
【0019】
本発明においては、アクリル系共重合体を構成するモノマー成分として、単独重合体のガラス転移温度が20℃以上のモノマー(c)を使用することで、得られる粘着剤に好適な凝集力を付与できる。単独重合体のガラス転移温度が20℃以上のモノマーとしては、例えば、tert−ブチル(メタ)アクリレート、メチルメタクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、3,5−ジメチル−1−アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、スチレン等を好ましく使用でき、なかでもtert−ブチル(メタ)アクリレートを特に好ましく使用できる。
【0020】
アクリル系共重合体中の単独重合体のガラス転移温度が20℃以上のモノマー(c)の含有量は、アクリル系共重合体を構成するモノマー成分中の10質量%以上とすることが好ましく、20〜50質量%とすることがより好ましく、25〜40質量%とすることが更に好ましい。当該モノマー(c)の含有量を当該範囲とすることで、好適な接着性を実現しやすくなる。
【0021】
本発明に使用するアクリル系共重合体中には、本願発明の効果を奏する範囲であれば、上記の(メタ)アクリレート(a)、極性基含有モノマー(b)及び単独重合体のガラス転移温度が20℃以上のモノマー(c)以外の他のモノマーを含有していてもよいが、当該他のモノマーを使用する場合には、アクリル系共重合体を構成するモノマー成分中の30質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下とすることが特に好ましい。
【0022】
本発明に使用するアクリル系共重合体の質量平均分子量は、1万〜200万程度の範囲で使用態様に応じて適宜調整すればよく、良好な生産効率を維持する観点から1万〜10万程度とすることが好ましく、良好な粘着強度を維持する観点では15万以上とすることが好ましく、30万以上とすることがより好ましく、45万〜100万程度とすることが特に好ましい。また、特に粘着剤層の凝集力を確保したい場合には60万以上とすることも好ましい。本発明の粘着剤組成物は質量平均分子量が15万以上の高分子量により高い接着力や凝集力を実現できる。
【0023】
前記質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算である。測定条件の例として、HLC−8220GPC(東ソー社製)を用いてカラムはTSKgel GMHXL[東ソー製]を用い、カラム温度は40℃、溶離液はテトラヒドロフラン、流量は1.0mL/分とし、標準ポリスチレンはTSK標準ポリスチレンを用いることで測定できる。
【0024】
分子量を調整するために、重合には連鎖移動剤を用いても良い。連鎖移動剤としては、公知の連鎖移動剤、例えばラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメチルカプト−1−プロパノールなどが使用できる。
【0025】
本発明に使用するアクリル系共重合体は、上記モノマーを含有するものであればランダム重合体であってもブロック重合体であってもよいが、上記(メタ)アクリレートモノマー(a)を主たるモノマー成分とし、極性基含有モノマー(b)を含有するポリ(メタ)アクリレートブロック(A)と、上記単独重合体のガラス転移温度が20℃以上のモノマー(c)を主たるモノマー成分とするポリマーブロック(B)とを含有するアクリル系ブロック共重合体とすることで、特に優れた高温接着力と高い保持力とを実現できるため好ましい。
【0026】
ポリ(メタ)アクリレートブロック(A)は、上記(メタ)アクリレートモノマー(a)を主たるモノマー成分とすることで好適な接着性を実現しやすく、ポリ(メタ)アクリレートブロック(A)を構成するモノマー成分中の50質量%以上が上記(メタ)アクリレートモノマー(a)であることが好ましく、80質量%以上とすることがより好ましい。
【0027】
なお、ポリ(メタ)アクリレートブロック(A)中には、上記(メタ)アクリレートモノマー(a)及び極性基含有モノマー(b)以外のモノマー、例えば、上記単独重合体のガラス転移温度が20℃以上のモノマー(c)等の他のモノマーを含有していてもよい。ポリ(メタ)アクリレートブロック(A)中に、上記(メタ)アクリレートモノマー(a)及び極性基含有モノマー(b)以外のモノマーを含有する場合には、当該モノマーをポリ(メタ)アクリレートブロック(A)を形成するモノマー成分中の30質量%以下とすることが好ましく、20質量%以下とすることがより好ましく、10質量%以下とすることが特に好ましい。
【0028】
ポリマーブロック(B)においては、単独重合体のガラス転移温度が20℃以上のモノマー(c)の含有量が、ポリ(メタ)アクリレートブロック(B)を構成するモノマー成分中の50質量%以上とすることが好ましく、80質量%以上とすることがより好ましい。
【0029】
ポリマーブロック(B)中には、単独重合体のガラス転移温度が20℃以上のモノマー(c)以外のモノマー、例えば、上記(メタ)アクリレートモノマー(a)及び極性基含有モノマー(b)等の他のモノマーを含有していてもよいが、当該他のモノマーを含有する場合には、ポリマーブロック(B)を形成するモノマー成分中の30質量%以下とすることが好ましく、20質量%以下とすることがより好ましく、10質量%以下とすることが特に好ましい。
【0030】
本発明に使用するアクリル系ブロック共重合体において、ポリ(メタ)アクリレートブロック(A)の示唆走査熱量計(DSC)によって測定されるガラス転移温度は0℃以下であることが好ましく、−20℃以下であることがより好ましく、−60〜−30℃であることが特に好ましい。また、ポリマーブロック(B)のDSCによって測定されるガラス転移温度が20℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、35℃以上であることが特に好ましい。各ポリマーブロックのガラス転移温度が当該温度範囲であると、得られる粘着剤に優れた接着力、高温接着力と良好な保持力とを特に向上させやすくなる。
【0031】
アクリル系共重合体のガラス転移温度は、示差走査熱量計にて昇温速度20℃/minで測定されたDSC曲線におけるオンセット温度をガラス転移温度とする。
【0032】
本発明においては、上記ポリ(メタ)アクリレートブロック(A)と、ポリマーブロック(B)とを有するアクリル系ブロック共重合体、好ましくは上記ポリ(メタ)アクリレートブロック(A)とポリマーブロック(B)とからなるアクリル系ブロック共重合体を使用することで、被着体との接着性や粘着剤層の凝集力に優れ、常温下及び高温下において優れた接着性や保持力を実現できるが、当該ブロック共重合体は、一つのポリ(メタ)アクリレートブロック(A)と一つのポリマーブロック(B)とのブロック共重合体(AB型ブロック共重合体)であっても、複数のポリ(メタ)アクリレートブロック(A)や複数のポリマーブロック(B)がランダムにブロック重合されたブロック共重合体(ABA型、BAB型、ABAB型、ABABA型等)であっても良い。
【0033】
アクリル系ブロック重合体中のポリ(メタ)アクリレートブロック(A)とポリマーブロック(B)との含有比率は、(A)と(B)との合計に対し、(B)が75モル%以下であることが好ましく、当該共重合比率が、(B)/(A)で表わされるモル比で75/25〜20/80であることがより好ましく、65/35〜20/80であることが特に好ましい。ブロック共重合比を当該範囲とすることで、粘着性と凝集力とを好適に発現しやすくなる。
【0034】
本発明に使用するアクリル系共重合体は、前記のアクリル単量体またはアクリル単量体の混合物をラジカル重合反応することによって製造できる。アクリル系共重合体をアクリル系ブロック共重合体とする場合には、例えば、リビングラジカル重合法や、アゾ系開始剤または過酸化物を用いて行う従来知られたラジカル重合法により製造できる。なかでも、リビングラジカル重合法を採用することが、ラジカル重合過程における連鎖移動反応や停止反応等の副反応を引き起こさず、低分子量成分の生成を抑制でき、分子量分布の狭いアクリル系ブロック重合体を製造できるため好ましい。
【0035】
前記リビングラジカル重合法としては、例えば原子移動ラジカル重合法(ATRP法)、高周期15族または16族元素を含む有機ヘテロ化合物を触媒として用いるリビングラジカル重合法(有機ヘテロ化合物を媒介とするラジカル重合法)(TERP法等)、ニトロキシドを介したリビングラジカル重合法(NMP法)、可逆的付加開裂連鎖移動重合反応法(RAFT法)等が挙げられる。
【0036】
前記原子移動ラジカル重合法(ATRP法)は、例えば遷移金属錯体と、有機ハロゲン化物との存在下で、前記したアクリル単量体を重合する方法である。
【0037】
前記遷移金属錯体を構成する遷移金属としては、例えばCu、Ru、Fe、Rh、V、Niや、それらのハロゲン化物を使用することができる。また、前記遷移金属に配位する配位子としては、ビピリジル誘導体、メルカプタン誘導体、トリフルオレート誘導体、3級アルキルアミン誘導体等が挙げられる。
【0038】
前記有機ハロゲン化物は、重合開始剤であって、例えば2−ブロモ(またはクロロ)プロピオン酸メチル、2−ブロモ(またはクロロ)プロピオン酸エチル、2−ブロモ(またはクロロ)−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ブロモ(またはクロロ)−2−メチルプロピオン酸エチル、塩化(または臭化)1−フェニルエチル、2−ブロモ(またはクロロ)プロピオン酸2−ヒドロキシエチル、2−ブロモ(またはクロロ)プロピオン酸4−ヒドロキシブチル、2−ブロモ(またはクロロ)−2−メチルプロピオン酸2−ヒドロキシエチル、2−ブロモ(またはクロロ)−2−メチルプロピオン酸4−ヒドロキシブチル等を使用することができる。
【0039】
有機ヘテロ化合物を媒介とするラジカル重合法は、有機ヘテロ化合物とラジカル開始剤存在下で、前記したアクリル単量体を重合する方法である。当該有機ヘテロ化合物を媒介とするラジカル重合法によれば、アクリル共重合体の分子量を高分子量化しやすく、接着力を向上させやすいため好ましい。
【0040】
有機ヘテロ化合物を媒介とするラジカル重合法に使用する有機ヘテロ化合物としては、有機テルル化合物、有機ビスマス化合物、有機アンチモン化合物を好ましく使用できる。これら有機ヘテロ化合物の具体例としては、特開2004−323693号公報、WO2004/14818公報、特開2006−225524号公報、特開2006−299278号公報、特開2008−291216号公報、特開2009−149877号公報等に開示のある有機テルル化合物、特開2009−149877号公報、WO2006/62255公報等に開示のある有機ビスマス化合物、特開2009−149877号公報、WO2006/1496公報等に開示のある有機アンチモン化合物等の周知の化合物を適宜使用できる。具体的には、例えば、2−メチルテラニル−2−メチルプロピオン酸メチル、2−メチルテラニル−2−メチルプロピオン酸エチル、2−n−ブチル−2−フェニルテラニルプロピオン酸エチル、2−メチル−2−フェニルテラニルプロピオン酸エチル、2−メチルテラニルプロピオニトリル、2−メチル−2−メチルテラニルプロピオニトリル、(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−フェニルテラニル−エチル)ベンゼン、2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオン酸エチル、2−メチル−2−ジメチルビスムタニルプロピオン酸メチルエステル、2−メチル−2−ジフェニルビスムタニルプロピオニトリル、2−メチル−2−ジメチルフェニルビスムタニルプロピオニトリル、2−メチル−2−ジメチルスチバニルプロピオン酸メチル、2−メチル−2−ジメチルスチバニルプロピオニトリル、1−ジメチルスチバニル−1−フェニルエタン等の化合物を好ましく例示できる。
【0041】
また、前記アクリル系ブロック共重合体は、例えばポリ(メタ)アクリレートブロック(A)を前記したラジカル重合法により重合し、次いで、前記と同様の方法でポリマーブロック(B)を製造し、前記ポリ(メタ)アクリレートブロック(A)とポリマーブロック(B)とを、前記(A)及び(B)中にそれぞれ導入されたアセチレン基とアジド基との環化付加反応等のクリック反応により結合させることで製造することもできる。
【0042】
[粘着剤組成物]
本発明の粘着剤組成物は、上記アクリル系共重合体を主剤とすることで、架橋剤を使用しなくとも室温下及び高温下で優れた接着性と保持力とを実現できる。本発明の粘着剤組成物においては上記アクリル系共重合体以外の他のアクリル重合体を含有する粘着剤組成物で有ってもよいが、粘着剤組成物中のアクリル重合体の割合を好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上とすることが好ましく、実質的に上記アクリル系共重合体のみを主剤とすることが特に好ましい。また、必要に応じて粘着付与樹脂や架橋剤、その他の添加剤等を含有していてもよい。
【0043】
(粘着付与樹脂)
本発明の粘着剤組成物においては、得られる粘着剤層の強接着性を調整するために粘着付与樹脂を使用しても良い。本発明に使用する粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン系、重合ロジン系、重合ロジンエステル系、ロジンフェノール系、安定化ロジンエステル系、不均化ロジンエステル系、テルペン系、テルペンフェノール系、石油樹脂系等が例示できる。
【0044】
(架橋剤)
本発明の粘着剤組成物においては、架橋剤を実質的に含有しなくとも優れた粘着特性を実現できるが、接着特性の調整のために架橋剤を添加してもよい。架橋剤としては、公知のイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、多価金属塩系架橋剤、金属キレート系架橋剤、ケト・ヒドラジド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、シラン系架橋剤、グリシジル(アルコキシ)エポキシシラン系架橋剤等が使用できる。
【0045】
(添加剤)
本発明の粘着剤組成物においては、添加剤として、必要に応じて本発明の所望の効果を阻害しない範囲で、pHを調整するための塩基(アンモニア水など)や酸、発泡剤、可塑剤、軟化剤、酸化防止剤、ガラスやプラスチック製の繊維・バルーン・ビーズ・金属粉末等の充填剤、顔料・染料等の着色剤、pH調整剤、皮膜形成補助剤、レベリング剤、増粘剤、撥水剤、消泡剤等の公知のものを粘着剤組成物に任意で添加することができる。
前記発泡剤は、粘着剤の解体を進行するうえで使用することができ、例えば加熱することにより体積膨張する、無機発泡剤、有機発泡剤及び熱膨張性中空球体等を使用することができる。
【0046】
[粘着テープ]
本発明の粘着テープは、上記の粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着テープである。粘着剤層は単層の粘着剤の層であっても良く、両面粘着テープのような複数の粘着剤の層及びシートからなる多層であっても良い。二以上の部材固定用途においては、両面粘着テープが好適に使用できる。
【0047】
本発明の粘着テープに基材を使用する場合、基材としては例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリスチレン、ABS、ポリカーボネート、ポリイミドフィルム、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリビニルアルコール等からなるプラスチック系フィルム、パルプ、レーヨン、マニラ麻、アクリロニトリル、ナイロン、ポリエステル等からなる不織布、紙、布、又は金属箔等が挙げられる。両面粘着テープを形成する際には、再剥離性と接着性を両立しやすいことから、中芯としてポリエステル系フィルム、不織布を好適に用いることが出来る。また、基材、中芯と粘着剤層と密着性を向上させることを目的に、基材又は中芯の片面または両面に、コロナ処理、プラズマ処理、アンカーコート処理等を施しても良い。
【0048】
本発明の粘着テープが基材又は中芯を有する場合には、粘着剤溶液をロールコーターやダイコーター等を用い、直接基材又は中芯上に塗布した後、乾燥工程を経て、セパレーターを貼り合わせる直塗り法や、セパレーター上にいったん粘着剤溶液をコーティングし、乾燥工程を経た後、基材又は中芯に転写する転写法により製造できる。基材又は中芯を有さない場合には、セパレーター上に粘着剤溶液をコーティングし、他のセパレーターを貼り合わせる方法により製造できる。
【0049】
本発明の粘着テープは、上記粘着剤組成物からなる粘着剤層のゲル分率を10質量%未満とすることが好ましく、5質量%以下とすることが特に好ましい。本発明の粘着テープは、当該低いゲル分率であっても優れた接着性と保持力とを実現できる。また、当該低ゲル分率の粘着剤層を使用することで好適なリサイクル性を実現できる。
【0050】
粘着剤層のゲル分率は、粘着剤層のトルエン抽出前の重量aを測定した後、同一試験片をトルエン中に24時間浸漬後、ゲル物を取り出し、100℃で2時間乾燥した後、トルエン抽出後の重量bを測定し、下記式にて算出される。
ゲル分率(%)=(b/a)×100
粘着剤層の試験片は、トルエン浸漬前後で同一試験片を使用すればよいが、例えば、乾燥後の厚みが25μmになるように、ポリエステルフィルム(剥離処理したもの)の上に粘着剤組成物を塗布、乾燥して粘着剤層を形成した後、20mm×100mmの大きさに切断し、ポリエステルフィルムを剥がしたものを試験片として使用できる。
【0051】
本発明の粘着テープは、上記粘着剤をギャップ8milli−inchのアプリケータを使用して、厚さが50μmのPETフィルム上に塗布・乾燥して粘着テープを形成し、23℃50%RH環境下で、SUS板上に、重さ2kgのハンドローラーを1往復させて圧着して1時間静置後、引っ張り試験器を用いて30mm/分の速度で、180°方向に引き剥がした際の接着力が、1N/20mm以上であることが好ましく、2〜30N/20mmであることがより好ましく、3〜20N/20mmであることが特に好ましい。本発明の粘着テープは、部品間固定に際して好適な高い接着力であっても、好適な解体性を実現できる。
【0052】
本発明の粘着テープは、OA機器、IT・家電製品、自動車等の各産業分野での部品固定用途や、部品の仮固定用途、製品情報を表示するラベル用途等に使用することができる。非架橋型粘着剤を用いた本発明の粘着テープは、架橋反応に必要なエージング工程が不要であるため、生産効率を大幅に高めることができる。また、耐熱性、耐剥がれ性に優れる接着信頼性の高い粘着テープとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0053】
(製造例1)
ポリt−ブチルアクリレート(1)の合成:2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル(AMVN)0.86mg、t-ブチルアクリレート(tBA)1.46gおよび酢酸エチル1.46gの混合溶液を試験管に入れ、30分間のアルゴンガスバブリングにより脱気した。有機ヘテロ化合物を、マイクロシリンジを用いて試験管に添加し、50℃のオイルバスで2時間反応させて、ポリt−ブチルアクリレート(4)の反応溶液を得た。H−NMR(300MHz)分析より、重合率は79%であった。またGPC分析より、Mn=73,800、PD=1.28であった。
アクリル系ブロック共重合体(1)の合成:上記で得られたポリt−ブチルアクリレート(1)の反応溶液に、あらかじめ30分間のアルゴンガスバブリングを行った2−エチルヘキシルアクリレート(2EA)4.48g、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)0.82gおよび酢酸エチル5.30gの混合溶液を添加し、50℃で7時間反応させた。H−NMR(300MHz)分析より、t-ブチルアクリレートの重合率は82%、2−エチルヘキシルアクリレートの重合率は49%、2−ヒドロキシエチルアクリレートの重合率は58%であった。
反応終了後、重合溶液をメタノール:水(80:20体積分率)中に注ぎポリマーを沈澱させ、デカンテーションにより上澄み液を除去した。得られた沈澱をクロロホルム50mLに溶解し、メタノール:水(80:20体積分率)中に注ぎポリマーを再沈澱させた。デカンテーションにより上澄み液を除去した後、減圧下40℃で10時間真空乾燥し、アクリル系ブロック共重合体(1)を得た。GPC分析より、Mn=265,000、Mw=462,000、PD=1.74であった。共重合体中の構成成分の質量比は、tBA/2EHA/HEA=29.0/56.9/14.1、であった。
【0054】
(製造例2)
ポリt−ブチルアクリレート(2)の合成:2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル(AMVN)1.21mg、t-ブチルアクリレート1.33gおよび酢酸エチル2.66gの混合溶液を試験管に入れ、30分間のアルゴンガスバブリングにより脱気した。有機ヘテロ化合物を、マイクロシリンジを用いて試験管に添加し、50℃のオイルバスで2時間反応させて、ポリt−ブチルアクリレート(2)の反応溶液を得た。H−NMR(300MHz)分析より、重合率は79%であった。またGPC分析より、Mn=73,800、PD=1.26であった。
アクリル系ブロック共重合体(2)の合成:上記で得られたポリt−ブチルアクリレート(2)の反応溶液に、あらかじめ30分間のアルゴンガスバブリングを行ったn−ブチルアクリレート(nBA)5.90gおよび2-ヒドロキシエチルアクリレート1.16gの混合溶液を添加し、50℃で3時間反応させた。H−NMR(300MHz)分析より、t-ブチルアクリレートの重合率は90%、2−エチルヘキシルアクリレートの重合率は42%、n−ブチルアクリレートの重合率は49%であった。
反応終了後、重合溶液をメタノール:水(80:20体積分率)中に注ぎポリマーを沈澱させ、デカンテーションにより上澄み液を除去した。得られた沈澱をクロロホルム50mLに溶解し、メタノール:水(80:20体積分率)中に注ぎポリマーを再沈澱させた。デカンテーションにより上澄み液を除去した後、減圧下40℃で10時間真空乾燥し、アクリル系ブロック共重合体(2)を得た。GPC分析より、Mn=266,300、Mw=570,000、PD=2.14であった。共重合体中の構成成分の質量比は、tBA/nBA/HEA=33.2/53.1/13.7、であった。
【0055】
(製造例3)
アクリル系ランダム共重合体(1)の合成:2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル(AMVN)0.49mg、t-ブチルアクリレート(tBA)1.00g、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)1.63g、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)0.40gおよび酢酸エチル3.01gの混合溶液を試験管に入れ、30分間のアルゴンガスバブリングにより脱気した。有機ヘテロ化合物を、マイクロシリンジを用いて試験管に添加し、50℃のオイルバスで2時間反応させた。H−NMR(300MHz)分析より、t-ブチルアクリレートの重合率は77%、2−エチルヘキシルアクリレートの重合率は73%、2−ヒドロキシエチルアクリレートの重合率は81%であった。
【0056】
反応終了後、重合溶液をクロロホルム20mLで希釈し、メタノール:水(80:20体積分率)中に注ぎポリマーを沈澱させ、デカンテーションにより上澄み液を除去した。得られた沈澱をクロロホルム50mLに溶解し、メタノール:水(80:20体積分率)中に注ぎポリマーを再沈澱させた。デカンテーションにより上澄み液を除去した後、減圧下40℃で10時間真空乾燥し、アクリル系ランダム共重合体(1)を得た。GPC分析より、Mn=285,700、Mw=580,300、PD=2.03であった。共重合体中の構成成分の質量比は、tBA/2EHA/HEA=33.2/51.9/14.9、であった。
【0057】
(製造例4)
アクリル系ランダム共重合体(2)の合成:2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル(AMVN)0.96mg、t-ブチルアクリレート1.89g、n−ブチルアクリレート3.11g、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.65gおよび酢酸エチル5.65gの混合溶液を試験管に入れ、30分間のアルゴンガスバブリングにより脱気した。有機ヘテロ化合物を、マイクロシリンジを用いて試験管に添加し、50℃のオイルバスで4時間反応させた。H−NMR(300MHz)分析より、t−ブチルアクリレートの重合率は77%、n−ブチルアクリレートの重合率は76%、2−ヒドロキシエチルアクリレートの重合度は79%であった。反応終了後、重合溶液をメタノール:水(80:20体積分率)中に注ぎポリマーを沈澱させ、デカンテーションにより上澄み液を除去した。得られた沈澱をクロロホルム50mLに溶解し、メタノール:水(80:20体積分率)中に注ぎポリマーを再沈澱させた。デカンテーションにより上澄み液を除去した後、減圧下40℃で10時間真空乾燥し、アクリル系ランダム共重合体(2)を得た。GPC分析より、Mn=253,400、Mw=475,000、PD=1.87であった。共重合体中の構成成分の質量比は、tBA/nBA/HEA=33.5/53.7/12.8、であった。
【0058】
(製造例5)
ポリt−ブチルアクリレート(3)の合成:2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル(AMVN)0.93mg、t-ブチルアクリレート1.71gおよび酢酸エチル3.42gの混合溶液を試験管に入れ、30分間のアルゴンガスバブリングにより脱気した。有機ヘテロ化合物を、マイクロシリンジを用いて試験管に添加し、50℃のオイルバスで2時間反応させて、ポリt−ブチルアクリレート(3)の反応溶液を得た。H−NMR(300MHz)分析より、重合率は76%であった。またGPC分析より、Mn=93,200、PD=1.30であった。
アクリル系ブロック共重合体(3)の合成:上記で得られたポリt−ブチルアクリレート(3)の反応溶液に、あらかじめ30分間のアルゴンガスバブリングを行った2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)5.66g、2-ヒドロキシエチルアクリレート0.23gを添加し、50℃で4時間反応させた。H−NMR(300MHz)分析より、t-ブチルアクリレートの重合率は87%、2−エチルヘキシルアクリレートの重合率は46%、2−ヒドロキシエチルアクリレートの重合率は52%であった。
反応終了後、重合溶液をメタノール:水(80:20体積分率)中に注ぎポリマーを沈澱させ、デカンテーションにより上澄み液を除去した。得られた沈澱をクロロホルム50mLに溶解し、メタノール:水(80:20体積分率)中に注ぎポリマーを再沈澱させた。デカンテーションにより上澄み液を除去した後、減圧下40℃で10時間真空乾燥し、アクリル系ブロック共重合体(3)を得た。GPC分析より、Mn=257,800、Mw=383,000、PD=1.49であった。共重合体中の構成成分の質量比は、tBA/2EHA/HEA=35.3/61.5/3.2、であった。
【0059】
(製造例6)
ポリt−ブチルアクリレート(4)の合成:2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル(AMVN)1.15mg、t-ブチルアクリレート(tBA)1.48gおよび酢酸エチル2.95gの混合溶液を試験管に入れ、30分間のアルゴンガスバブリングにより脱気した。有機ヘテロ化合物を、マイクロシリンジを用いて試験管に添加し、50℃のオイルバスで2時間反応させて、ポリt−ブチルアクリレート(4)の反応溶液を得た。H−NMR(300MHz)分析より、重合率は74%であった。またGPC分析より、Mn=68,600、PD=1.32であった。
アクリル系ブロック共重合体(4)の合成:上記で得られたポリt−ブチルアクリレート(1)の反応溶液に、あらかじめ30分間のアルゴンガスバブリングを行ったn−ブチルアクリレート(nBA)5.76gおよび2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)0.23gの混合溶液を添加し、50℃で12時間反応させた。H−NMR(300MHz)分析より、t-ブチルアクリレートの重合率は90%、n−ブチルアクリレートの重合率は60%、2−ヒドロキシエチルアクリレートの重合率は62%であった。
反応終了後、重合溶液をメタノール:水(80:20体積分率)中に注ぎポリマーを沈澱させ、デカンテーションにより上澄み液を除去した。得られた沈澱をクロロホルム50mLに溶解し、メタノール:水(80:20体積分率)中に注ぎポリマーを再沈澱させた。デカンテーションにより上澄み液を除去した後、減圧下40℃で10時間真空乾燥し、ポリt−ブチルアクリレート鎖と、他の共重合成分からなるポリアクリレート鎖からなるアクリル系ブロック共重合体(4)を得た。GPC分析より、Mn=239,200、Mw=354,000、PD=1.48であった。共重合体中の構成成分の質量比は、tBA/nBA/HEA=29.2/67.2/3.6、であった。
【0060】
(製造例7)
アクリル系ランダム共重合体(3)の合成:2,2’−アゾビス(4−メトキシー2,4−ジメチルバレロニトリル(AMVN)0.50mg、t-ブチルアクリレート(tBA)1.28g、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)1.80g、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)0.095gおよび酢酸エチル3.07gの混合溶液を試験管に入れ、30分間のアルゴンガスバブリングにより脱気した。有機ヘテロ化合物を、マイクロシリンジを用いて試験管に添加し、50℃のオイルバスで2時間反応させた。H−NMR(300MHz)分析より、t-ブチルアクリレートの重合率は78%、2−エチルヘキシルアクリレートの重合率は75%、2−ヒドロキシエチルアクリレートの重合率は73%であった。
反応終了後、重合溶液をクロロホルム20mLで希釈し、メタノール:水(80:20体積分率)中に注ぎポリマーを沈澱させ、デカンテーションにより上澄み液を除去した。得られた沈澱をクロロホルム50mLに溶解し、メタノール:水(80:20体積分率)中に注ぎポリマーを再沈澱させた。デカンテーションにより上澄み液を除去した後、減圧下40℃で10時間真空乾燥し、アクリル系ランダム共重合体(3)を得た。GPC分析より、Mn=234,600、PD=1.37であった。共重合体中の構成成分の質量比は、tBA/2EHA/HEA=39.6/57.6/2.8、であった。
【0061】
(製造例8)
アクリル系ランダム共重合体(4)の合成:2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル(AMVN)1.23mg、t-ブチルアクリレート1.89g、n−ブチルアクリレート3.29g、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.16gおよび酢酸エチル2.05gの混合溶液を試験管に入れ、30分間のアルゴンガスバブリングにより脱気した。有機ヘテロ化合物を、マイクロシリンジを用いて試験管に添加し、50℃のオイルバスで5時間反応させた。H−NMR(300MHz)分析より、t−ブチルアクリレートの重合率は91%、n−ブチルアクリレートの重合率は90%、2−ヒドロキシエチルアクリレートの重合度は90%であった。反応終了後、重合溶液をメタノール:水(80:20体積分率)中に注ぎポリマーを沈澱させ、デカンテーションにより上澄み液を除去した。得られた沈澱をクロロホルム50mLに溶解し、メタノール:水(80:20体積分率)中に注ぎポリマーを再沈澱させた。デカンテーションにより上澄み液を除去した後、減圧下40℃で10時間真空乾燥し、アクリル系ランダム共重合体(4)を得た。GPC分析より、Mn=277,100、Mw=463,000、PD=1.67であった。共重合体中の構成成分の質量比は、tBA/nBA/HEA=33.6/61.1/3.4、であった。
【0062】
(実施例1)
上記製造例1にて得られたアクリル系ブロック共重合体(1)をアセトンで希釈して15重量%アセトン溶液からなる粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物をギャップ8milli−inchのアプリケータを使用して、厚さが50μmのPETフィルム上に塗布し、12時間減圧乾燥して粘着シートを作成した。
【0063】
(実施例2)
アクリル系ブロック共重合体(1)に代えて、上記製造例2にて得られたアクリル系ブロック共重合体(2)を用いた以外は、実施例1と同様にして粘着テープを得た。
【0064】
(実施例3(参考例)
アクリル系ブロック共重合体(1)に代えて、上記製造例3にて得られたアクリル系ランダム共重合体(1)を用いた以外は、実施例1と同様にして粘着テープを得た。
【0065】
(実施例4(参考例)
アクリル系ブロック共重合体(1)に代えて、上記製造例4にて得られたアクリル系ランダム共重合体(2)を用いた以外は、実施例1と同様にして粘着テープを得た。
【0066】
(比較例1)
アクリル系ブロック共重合体(1)に代えて、上記製造例5にて得られたアクリル系ブロック共重合体(3)を用いた以外は、実施例1と同様にして粘着テープを得た。
【0067】
(比較例2)
アクリル系ブロック共重合体(1)に代えて、上記製造例6にて得られたアクリル系ブロック共重合体(4)を用いた以外は、実施例1と同様にして粘着テープを得た。
【0068】
(比較例3)
アクリル系ブロック共重合体(1)に代えて、上記製造例7にて得られたアクリル系ランダム共重合体(3)を用いた以外は、実施例1と同様にして粘着テープを得た。
【0069】
(比較例4)
アクリル系ブロック共重合体(1)に代えて、上記製造例8にて得られたアクリル系ランダム共重合体(4)を用いた以外は、実施例1と同様にして粘着テープを得た。
【0070】
上記実施例及び比較例にて得られた粘着テープに関し、以下の評価を行った。得られた結果を下表に示した。
【0071】
<共重合体のガラス転移温度>
上記製造例にて得られたアクリル系共重合体5mgを、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製の示差走査熱量計EXTRA6200を用いて、30mL/minの窒素気流下でDSC曲線を測定した。ブロック共重合体については、室温から−120℃/minまで急冷後、20℃/minで80℃まで昇温し、その後10℃/minで−120℃まで冷却し、再び20℃/minで80℃まで昇温した。ランダム共重合体については、室温から−90℃/minまで急冷後、20℃/minで20℃まで昇温し、その後10℃/minで−90℃まで冷却し、再び20℃/minで20℃まで昇温した。いずれの場合も、二度目の昇温過程で観測されるガラス転移温度を測定した。
【0072】
<高温接着力>
粘着シートを幅20mm、長さ120mmの短冊状に切断して試験片を作成した後、幅50mm、長さ150mm、厚さ2mmのSUS板上に、23℃50%RH環境下で、重さ2kgのハンドローラーを1往復させて圧着した。
圧着した試験片は、23℃50%RH環境下で1時間静置し、引き続いて70℃環境下で10分間静置した後、70℃環境下、引っ張り試験器を用いて300mm/分の速度で引き剥がし、180°剥離強度を測定した。
【0073】
<定荷重保持力>
粘着シートを幅10mm、長さ80mmの短冊状に切断して試験片を作成した後、幅50mm、長さ150mm、厚さ2mmのPMMA板上に、23℃50%RH環境下で、貼付面積が幅10mm、長さ50mmとなるように、重さ2kgのハンドローラーを1往復させて圧着した。圧着した試験片は、23℃50%RH環境下で1時間静置した後、100gの荷重を掛け、23℃50%RH環境下で3時間静置した。
◎:PMMA板に貼付していた時間が3時間である。
○:PMMA板に貼付していた時間が20分以上3時間未満である。
△:PMMA板に貼付していた時間が10分以上20分未満である。
×:PMMA板に貼付していた時間が10分未満である。
【0074】
【表1】
【0075】
表中のアクリル系ブロック重合体中の各成分の数値はモル比を表す。また、表中の略記は、それぞれ以下のとおりである。
tBA:t−ブチルアクリレート(単独重合体のガラス転移温度:43℃)
co−tBA:ポリt−ブチルアクリレートブロックと共重合される他の共重合成分からなるポリ(メタ)アクリレートブロックに含まれるt−ブチルアクリレート
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート(単独重合体のガラス転移温度:−50℃)
nBA:n−ブチルアクリレート(単独重合体のガラス転移温度:−54℃)
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
【0076】
上記表から明らかなように、実施例1〜4の本発明の粘着剤組成物は、いずれも優れた高温接着力と定荷重保持力とを有するものであった。一方、比較例1〜4の粘着剤組成物は、高温接着力及び定荷重保持力がいずれも低いものであった。