(54)【発明の名称】分散液、液晶性ポリエステル成形体、変性液晶性ポリエステル成形体、変性液晶性ポリエステル膜、変性液晶性ポリエステルプリプレグ、変性液晶性ポリエステル多層構造体、変性液晶性ポリエステル多層構造体の製造方法。
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
芳香族ジアミン由来の構造単位およびフェノール性水酸基を有する芳香族モノアミン由来の構造単位からなる群より選ばれる1種以上の構造単位を10〜35モル%含む液晶性ポリエステル(ただし、該液晶性ポリエステルに含まれる全構造単位の合計の含有量を100モル%とする)と、水分散性無機層状化合物と、非プロトン性極性溶媒とを含有する分散液であって、
分散液中の水分散性無機層状化合物の平均粒径が100nm〜200nmであり、アスペクト比が80〜200である分散液。
分散液に含有される水分散性無機層状化合物と液晶性ポリエステルとの合計体積を100体積%とするときに、水分散性無機層状化合物の体積分率が1〜15体積%である請求項1記載の分散液。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の分散液は、芳香族ジアミン由来の構造単位およびフェノール性水酸基を有する芳香族モノアミン由来の構造単位からなる群より選ばれる1種以上の構造単位を10〜35モル%含む液晶性ポリエステル(ただし、該液晶性ポリエステルに含まれる全構造単位の合計の含有量を100モル%とする)と、水分散性無機層状化合物と、非プロトン性極性溶媒とを含有するものであって、分散液中の水分散性無機層状化合物の平均粒径が50nm〜500nmであり、アスペクト比が50〜300である。
【0011】
〔液晶性ポリエステル〕
本発明の液晶性ポリエステルは、芳香族ジアミン由来の構造単位およびフェノール性水酸基を有する芳香族モノアミン由来の構造単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造単位を10〜35モル%含むもの(ただし、該液晶性ポリエステルに含まれる全構造単位の合計の含有量を100モル%とする)である。本発明の液晶性ポリエステルは、450℃以下の温度で光学異方性を持つ異方性溶融体を形成するものである。液晶性ポリエステルは、芳香族ジアミン由来の構造単位およびフェノール性水酸基を有する芳香族モノアミン由来の構造単位以外に、芳香族ヒドロキシ酸由来の構造単位または芳香族ジカルボン酸由来の構造単位を含有することが好ましい。液晶性ポリエステルは、以下の式(1)、式(2)、および式(3)で表される構造単位を含有することが好ましい。式(1)で表される構造単位は、芳香族ヒドロキシ酸由来の構造単位であり、式(2)で表される構造単位は、芳香族ジカルボン酸由来の構造単位であり、式(3)で表される構造単位は、芳香族ジアミンまたはフェノール性水酸基を有する芳香族モノアミン由来の構造単位である。
(1) −O−Ar1−CO−
(2) −CO−Ar2−CO−
(3) −X−Ar3−Y−
ここで、Ar1は、フェニレン基、ナフチレン基またはビフェニリレン基を表す。Ar2およびAr3は、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基または後述する式(4)で表される基を表す。Ar1、Ar2またはAr3に含まれる水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。XおよびYは、それぞれ独立に、酸素原子またはイミノ基(−NH−)を表す。
(4)−Ar4−Z−Ar5−
Ar4およびAr5は、それぞれ独立に、フェニレン基またはナフチレン基を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基またはアルキリデン基を表す。
式(1)~(4)で表される各構造単位は、それらのエステル形成性誘導体またはアミド形成性誘導体由来の構造単位も含むものとする。
【0012】
アルキリデン基としては、例えばメチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、n−ブチリデン基および2−エチルヘキシリデン基が挙げられ、その炭素数は通常1〜10である。
【0013】
ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基およびn−デシル基が挙げられ、その炭素数は、通常1〜10である。アリール基としては、例えばフェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、1−ナフチル基および2−ナフチル基が挙げられ、その炭素数は、通常6〜20である。Ar1、Ar2またはAr3で表される基の水素原子がハロゲン原子、アルキル基またはアリール基で置換されている場合、その置換されている数は各基あたり好ましくは1〜2個であり、より好ましくは1個である。
【0014】
カルボン酸のエステル形成性誘導体としては、例えば、カルボキシル基がポリエステルを生成する反応を促進するような、酸塩化物、酸無水物等の反応活性が高い誘導体となっているもの、またカルボキシル基がエステル交換反応によりポリエステルを生成するように、カルボキシル基がアルコールやエチレングリコール等とエステルを形成しているもの等が挙げられる。フェノール性水酸基のエステル形成性誘導体としては、例えば、エステル交換反応によりポリエステルを生成するように、フェノール性水酸基がカルボン酸とエステルを形成しているもの等が挙げられる。アミノ基のアミド形成性誘導体としては、例えば、アミド交換反応によりポリアミドを生成するように、アミノ基がカルボン酸とアミドを形成しているもの等が挙げられる。
【0015】
式(3)で表される構造単位としては、例えば、フェノール性水酸基を有する芳香族モノアミン由来の構造単位として、3−アミノフェノール由来の構造単位、4−アミノフェノール由来の構造単位が挙げられ、芳香族ジアミン由来の構造単位として、1,4−フェニレンジアミン由来の構造単位、1,3−フェニレンジアミン由来の構造単位が挙げられ、フェノール性水酸基を有する芳香族モノアミンのエステル形成性誘導体として、4−アミノ安息香酸由来の構造単位が挙げられ、フェノール性水酸基を有する芳香族モノアミンのアミド形成性誘導体として4−ヒドロキシアセトアニリドが挙げられる。液晶性ポリエステルには、式(3)で表される2種以上の構造単位が含まれていてもよい。式(3)で表される構造単位としては、反応性の観点から4−アミノフェノールや4−ヒドロキシアセトアニリド由来の構造単位がより好ましい。液晶性ポリエステルに含まれる芳香族ジアミン由来の構造単位およびフェノール性水酸基を有する芳香族モノアミン由来の構造単位からなる群より選ばれる構造単位の含有量は、液晶性ポリエステルに含まれる全構造単位の合計の含有量を100モル%とするときに、10〜35モル%である。液晶性ポリエステルの溶融時の光学異方性、非プロトン性極性溶媒への溶解性の観点から、15〜35モル%であることが好ましく、17.5〜35モル%であることがより好ましい。液晶性ポリエステルに含まれる芳香族ジアミン由来の構造単位およびフェノール性水酸基を有する芳香族モノアミン由来の構造単位からなる群より選ばれる構造単位、すなわち、式(3)で表される構造単位の含有量は、式(2)で表される構造単位の含有量と等量であることが好ましいが、式(3)で表される構造単位の含有量を調整することにより、液晶性ポリエステルの重合度を制御することもできる。
ここで、液晶性ポリエステルに含まれる各構造単位の含有量は、各構造単位の質量を当該構造単位の式量で割ることにより、各構造単位の物質量相当量(モル)を求め、液晶性ポリエステルに含まれる全ての構造単位の物質量相当量(モル)の合計量で除した値を百分率で表すものとする。
液晶性ポリエステルが、前記式(1)、式(2)、および式(3)で表される構造単位を含有するものであるときは、式(3)で表される構造単位の含有量は、
式(3)で表される構造単位の物質量相当量(モル)を、
式(1)で表される構造単位の物質量相当量(モル)と式(2)で表される構造単位の物質量相当量(モル)と式(3)で表される構造単位の物質量相当量(モル)との合計量で除した値を百分率で表すものとする。
【0016】
式(1)で表される構造単位としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、4−ヒドロキシ−4'−ビフェニルカルボン酸由来の構造単位等が挙げられ、液晶性ポリエステルには、式(1)で表される2種以上の構造単位が含まれていてもよい。式(1)で表される構造単位としては、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸由来の構造単位が好ましい。液晶性ポリエステルの溶融時の光学異方性、非プロトン性極性溶媒への溶解性の観点から、式(1)で表される構造単位の含有量は、液晶性ポリエステルに含まれる全構造単位の合計の含有量を100モル%とするときに、30〜80モル%であることが好ましく、30〜70モル%であることがより好ましく、30〜65モル%であることが更に好ましい。
【0017】
式(2)で表される構造単位としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸由来の構造単位等が挙げられ、液晶性ポリエステルには、式(2)で表される2種以上の構造単位が含まれていてもよい。式(2)で表される構造単位としては、非プロトン性極性溶媒への溶解性の観点から、イソフタル酸由来の構造単位が好ましい。液晶性ポリエステルの溶融時の光学異方性、非プロトン性極性溶媒への溶解性の観点から、式(2)で表される構造単位の含有量は、液晶性ポリエステルに含まれる全構造単位の合計の含有量を100モル%とするときに、10〜35モル%であることが好ましく、15〜35モル%であることがより好ましく、17.5〜35モル%であることが更に好ましい。
【0018】
本発明の液晶性ポリエステルの製造方法は、例えば、式(1)で表される構造単位に対応する芳香族ヒドロキシ酸、式(3)で表される構造単位に対応するフェノール性水酸基を有する芳香族モノアミンのフェノール性水酸基やアミノ基、芳香族ジアミンのアミノ基を過剰量の脂肪酸無水物によりアシル化して、アシル化物を得た後、該アシル化物と式(2)で表される構造単位に対応する芳香族ジカルボン酸とをエステルおよび/またはアミド交換して溶融重合する方法等が挙げられる。(特開2002−220444号公報、特開2002−146003号公報参照)。
【0019】
アシル化反応において、脂肪酸無水物の添加量は、得られる液晶性ポリエステルの着色防止の観点から、該フェノール性水酸基および該アミノ基の合計量に対して、1.00〜1.20倍当量であることが好ましく、1.05〜1.10倍当量であることがより好ましい。
【0020】
アシル化反応は、130〜180℃で5分間〜10時間反応させることが好ましく、140〜160℃で10分間〜3時間反応させることがより好ましい。
【0021】
アシル化反応に使用される脂肪酸無水物として、ハロゲン置換脂肪酸無水物や非ハロゲン置換脂肪酸無水物等が挙げられる。ハロゲン置換脂肪酸無水物として、無水モノクロル酢酸、無水ジクロル酢酸、無水トリクロル酢酸、無水モノブロモ酢酸、無水ジブロモ酢酸、無水トリブロモ酢酸、無水モノフルオロ酢酸、無水ジフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水β−ブロモプロピオン酸等が挙げられる。非ハロゲン置換脂肪酸無水物として、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水ピバル酸、無水2エチルヘキサン酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸等が挙げられる。ハロゲン置換脂肪酸無水物や非ハロゲン置換脂肪酸無水物は2種類以上を混合して用いてもよい。コストと取り扱い性の観点から、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、または無水イソ酪酸が好ましく、無水酢酸がより好ましい。
【0022】
エステル交換および/またはアミド交換においては、アシル化物のアシル基がカルボキシル基の0.80〜1.20倍当量であることが好ましい。
【0023】
エステル交換および/またはアミド交換は、400℃まで0.1〜50℃/分の割合で昇温しながら行なうことが好ましく、350℃まで0.3〜5℃/分の割合で昇温しながら行なうことがより好ましい。
【0024】
アシル化物とカルボン酸とをエステル交換および/またはアミド交換させる際、平衡を移動させるため、副生する脂肪酸と未反応の脂肪酸無水物は、蒸発させる等して系外へ留去することが好ましい。
【0025】
アシル化反応、エステル交換および/またはアミド交換は、触媒の存在下で行なってもよい。触媒としては、金属塩触媒、有機化合物触媒等が挙げられる。金属塩触媒として、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモン等が挙げられる。有機化合物触媒として、N,N−ジメチルアミノピリジン、N−メチルイミダゾール等が挙げられる。触媒として、特にN,N−ジメチルアミノピリジン、N−メチルイミダゾール等の窒素原子を2個以上含む複素環状化合物が好ましい(特開2002−146003号公報参照)。触媒は、モノマーの投入時に併せて投入され、アシル化後も除去することは必ずしも必要ではなく、触媒を除去せずにエステル交換および/またはアミド交換を行なうこともできる。
【0026】
エステル交換および/またはアミド交換は、溶融重合により行ってもよく、溶融重合と固相重合との併用により行なってもよい。固相重合は、溶融重合工程からプレポリマーを抜き出し、その後、粉砕して粉末状もしくはフレーク状にした後、重合を行うことが好ましい。固相重合の方法として、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下、20〜350℃で、1〜30時間固相状態で加熱する方法等が挙げられる。固相重合は、攪拌しながら行なってもよく、攪拌することなく静置した状態で行ってもよい。なお適当な攪拌機構を備えることにより溶融重合槽と固相重合槽とを同一の反応槽とすることもできる。液晶性ポリエステルの製造は、例えば、回分装置、連続装置等を用いて行うことができる。
【0027】
〔水分散性無機層状化合物〕
本発明の水分散性無機層状化合物とは、溶媒に分散させない固体状態、すなわち原料の状態で、単位結晶層が互いに積み重なって層状構造を形成している化合物である。層状構造とは、原子が共有結合等によって強く結合して密に配列した面が、ファン・デル・ワールス等の弱い結合力によってほぼ平行に積み重なった構造をいう。本発明の水分散性無機層状化合物としては、コストの観点から粘土鉱物が好ましい。
【0028】
粘土鉱物は、一般に(i)シリカの四面体層の上部に、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属とした八面体層を有する2層構造を有するタイプと、(ii)シリカの四面体層が、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属とした八面体層を両側から挟んでなる3層構造を有するタイプに分類される。(i)の2層構造タイプの粘土鉱物としては、カオリナイト−蛇紋石族の粘土鉱物が挙げられる。(ii)の3層構造タイプの粘土鉱物としては、タルク−パイロフィライト族、スメクタイト族、バーミキュライト族、マイカ族、脆雲母族および緑泥石族等の粘土鉱物が挙げられる。
【0029】
カオリナイト−蛇紋石族としては、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、リザーダイト、アメサイト、バーチェリン、クロンステダイト、ネポーアイト、ケリアイト、フレイポナイト、ブリンドリアイト等が挙げられる。タルク−パイロフィライト族としては、タルク、ウィレムサイト、ケロライト、ピメライト、パイロフィライト、フェリパイロフィライト等が挙げられる。スメクタイト族としては、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、スチブンサイト、ヘクトライト、ボルコンスコアイト、スインホルダイト等が挙げられる。バーミキュライト族としては、3八面体型バーミキュライト、2八面体型バーミキュライト等が挙げられる。マイカ族としては、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、白雲母、金雲母、黒雲母、鉄雲母、イーストナイト、シデロフィライトテトラフェリ鉄雲母、鱗雲母、ポリリシオナイト、セラドン石、鉄セラドン石、鉄アルミノセラドン石、アルミノセラドン石、砥部雲母、パラゴナイト、レピドライト等が挙げられる。脆雲母族としては、ザンソフィライト、クリントナイト、ビテ雲母、アナンダ石、真珠雲母、マーガイラト等が挙げられる。緑泥石族としては、クリノクロア、シャモサイト、ペナンタイト、ニマイト、ベイリクロア、ドンバサイト、クッケアイト、スドーアイト等が挙げられる。
【0030】
粘土鉱物の中でも、(ii)の3層構造タイプの粘土鉱物であるスメクタイト族、バーミキュライト族およびマイカ族の粘土鉱物が好ましく、スメクタイト族がより好ましい。スメクタイト族としては、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、スチブンサイト、ヘクトライトが好ましい。
【0031】
分散液に含まれる水分散性無機層状化合物は、単独でもよく、2種類以上を併せて用いてもよい。2種類以上を併せて用いる場合、同種の水分散性無機層状化合物を用いてもよく、異種の水分散性無機層状化合物を用いてもよい。
【0032】
分散液中の水分散性無機層状化合物のアスペクト比の範囲は、変性液晶性ポリエステル成形体の線膨張係数を小さくするため、50〜300であり、好ましくは80以上、より好ましくは90以上である。また、該アスペクト比は好ましくは200以下、より好ましくは160以下である。
【0033】
分散液中の水分散性無機層状化合物の平均粒径は、変性液晶性ポリエステルル成形体の線膨張係数を低減するため、50nm〜500nmであり、好ましくは100nm以上、より好ましくは125nm以上である。また、該平均粒径は、好ましくは200nm以下、より好ましくは135nm以下である。
【0034】
分散液中の水分散性無機層状化合物のアスペクト比(Z)とは、Z=L/aで定義される値である。ここで、Lは分散液中の水分散性無機層状化合物の平均粒径であり、後述の方法で求められる。aは水分散性無機層状化合物の単位厚さ、即ち、水分散性無機層状化合物の単位結晶層の厚みを示し、粉末X線回析法(「機器分析の手引き(a)」(1985年、(株)化学同人発行、塩川二朗監修)69頁参照)により求められる。
【0035】
本発明の分散液中の水分散性無機層状化合物の平均粒径とは、分散液中の水分散性無機層状化合物について、回折/散乱法により求めた粒径(体積基準のメジアン径)である。分散液に光を通過させたときに得られる回折/散乱パターンから、ミー散乱理論等により、回折/散乱パターンに最も矛盾のない粒度分布を計算することにより、分散液中の水分散性無機層状化合物の平均粒径を求めることができる。粒度分布の計算方法としては、例えば、粒度分布の測定範囲0.0399〜2000μmを対数スケールで等間隔に区切った区間について各区間毎に代表粒径を決定し、本来連続的な量である粒度分布を離散的な量に変換させて計算する方法が挙げられる。
【0036】
本発明の水分散性無機層状化合物とは、後述する膨潤性試験による膨潤値が5以上の無機層状化合物を指す。水分散性無機層状化合物としては、線膨張係数をより小さくするという観点から、膨潤値10以上のものが好ましく、膨潤値20以上のものがより好ましい。
【0037】
〔膨潤性試験〕
100mlメスシリンダーに水100mlを入れ、これに水分散性無機層状化合物2gを徐々に加える。23℃にて24時間静置後、メスシリンダー内における水分散性無機層状化合物分散層と上澄みとの界面の目盛から水分散性無機層状化合物分散層の体積(ml)を読む。この数値(膨潤値)が大きい程、膨潤性が高いことを示す。
【0038】
該膨潤値が5未満である無機層状化合物として、有機修飾無機層状化合物が挙げられる。有機修飾無機層状化合物は、水分散性無機層状化合物をジメチルジステアリルアンモニウム塩やトリメチルステアリルアンモニウム塩やフォスフォニウム塩、イミダゾリウム塩等の有機修飾成分にて修飾処理したものであり、無機成分と有機修飾成分とからなる。すなわち正味の無機成分の量が同じである水分散性無機層状化合物と有機修飾無機層状化合物とでは、有機修飾無機層状化合物では、より嵩高いものとなる。このため後述の変性液晶性ポリエステル成形体においては、無機成分の量が同じである場合、水分散性無機層状化合物を用いたものは、有機修飾無機層状化合物を用いたものに比べ、液晶性ポリエステル成分が多いため、耐熱性が高くなる。
【0039】
〔非プロトン性極性溶媒〕
本発明の非プロトン性極性溶媒としては、液晶性ポリエステルの溶解性の観点から、双極子モーメントが3〜5のものが好ましく、腐食性や環境負荷等の観点から、ハロゲン原子を含まないものが好ましい。非プロトン性極性溶媒としては、アミド系溶媒やラクトン系溶媒、スルホキシド系溶媒、有機リン系溶媒、セロソルブ系溶媒等が挙げられる。アミド系溶媒として、N、N−ジメチルアセトアミド、N-メチル−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、N、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジエチルホルムアミド、N、N−ジエチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、ジメチルイミダゾリジノン等が挙げられる。ラクトン系溶媒として、γ−ブチルラクトン、β−ブチルラクトン等が挙げられる。スルホキシド系溶媒として、ジメチルスルホキシド、メチルフェニルスルホキシド等挙げられる。有機リン系溶媒として、テトラメチルホスホリックアミド、ヘキサメチルホスホリックアミド等が挙げられる。セロソルブ系溶媒として、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート等が挙げられる。
【0040】
〔分散液〕
本発明の分散液は、液晶性ポリエステルと水分散性無機層状化合物と非プロトン性極性溶媒とを混合することにより得られる。該混合方法は、(1)非プロトン性極性溶媒中に水分散性無機層状化合物が分散した水分散性無機層状化合物分散液に液晶性ポリエステルを溶解させる方法、(2)非プロトン性極性溶媒中に液晶性ポリエステルが溶解した液晶性ポリエステル溶液に、水分散性無機層状化合物を分散させる方法、(3)水分散性無機層状化合物と液晶性ポリエステルとを単軸混練機、多軸混練機、バンバリーミキサー等を用いて混合し、得られた混合物を非プロトン性極性溶媒に溶解または分散させる方法、(4)水分散性無機層状化合物存在下で液晶性ポリエステルを製造する以前のモノマーやプレポリマー等の重合を行い得られた液晶性ポリエステルと水分散性無機層状化合物を、非プロトン性極性溶媒に溶解または分散させる方法、(5)非プロトン性極性溶媒中に液晶性ポリエステルが溶解した液晶性ポリエステル溶液と、非プロトン性極性溶媒中に水分散性無機層状化合物が分散した水分散性無機層状化合物分散液とを混合する方法等が挙げられる。分散液中における水分散性無機層状化合物の分散性の観点から、(2)の方法が好ましい。(2)の方法を用いて本発明の分散液を得る場合、水分散性無機層状化合物の分散性向上の観点から、液晶性ポリエステル溶液を、水分散性無機層状化合物と混合する前に、温度50〜100℃で2〜10時間で状態調整を行なうことが好ましい。また(2)の方法を用いて本発明の分散液を得る場合、液晶性ポリエステル溶液をフィルター等でろ過して不溶物を除去した後、水分散性無機層状化合物を分散させることが好ましい。
【0041】
本発明の分散液は、液晶性ポリエステルと水分散性無機層状化合物と非プロトン性極性溶媒とを含む分散液や、該水分散性無機層状化合物分散液等の水分散性無機層状化合物を含む分散液は、高圧分散装置を用いて高圧分散処理することにより得ることができる。高圧分散装置としては、例えば、超高圧ホモジナイザー(商品名:マイクロフルイダイザー;Microfluidics Corporation(株)製)、ナノマイザー(吉田機械興業(株)製)、マントンゴーリン型高圧分散装置、ホモゲナイザー((株)イズミフードマシナリ製)等が挙げられる。高圧分散処理とは、該水分散性無機層状化合物を含む分散液を複数本の細管中に高速通過させた後に合流させて、該水分散性無機層状化合物を含む分散液同士あるいは該水分散性無機層状化合物を含む分散液と細管内壁とを衝突させることにより、該水分散性無機層状化合物を含む分散液に高剪断および/または高圧を付加する処理方法である。高圧分散処理では、該水分散性無機層状化合物を含む分散液を管径1μm〜1000μm程度の細管中に通過させ、このとき100kgf/cm
2以上の最大圧力が印加されるように処理することが好ましい。最大圧力は500kgf/cm
2以上であることがより好ましく、1000kgf/cm
2以上であることが更に好ましい。また該水分散性無機層状化合物を含む分散液が細管内を通過する際、該水分散性無機層状化合物を含む分散液の最高到達速度は100m/秒以上であることが好ましく、圧力損失による伝熱速度は100kcal/時間以上であることが好ましい。
【0042】
分散液に含有される液晶性ポリエステルと水分散性無機層状化合物との合計の体積分率は、分散液の塗布性の観点から、液晶性ポリエステルと水分散性無機層状化合物と非プロトン性極性溶媒との合計体積を100体積%として、好ましくは3体積%以上であり、好ましくは30体積%以下である。
【0043】
分散液に含有される水分散性無機層状化合物の体積分率は、後述する変性液晶性ポリエステル成形体の柔軟性や線膨張係数を低減する観点から、分散液に含有される液晶性ポリエステルと水分散性無機層状化合物との合計体積を100体積%として、好ましくは1体積%以上、より好ましくは3体積%以上、更に好ましくは4体積%以上であり、好ましくは15体積%以下、より好ましくは12体積%以下、更に好ましくは11体積%以下である。
【0044】
本発明の分散液は、後述する変性液晶性ポリエステル成形体の線膨張係数をより低減する観点から、水分散性無機層状化合物の他に、水分散性無機層状化合物とは異なる無機物を含んでもよい。該無機物として、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、シリカ等が挙げられる。
【0045】
〔液晶性ポリエステル成形体〕
本発明の液晶性ポリエステル成形体は、分散液から非プロトン性極性溶媒を除去して得られる。
具体的には、液晶性ポリエステル成形体は、以下の方法で得ることができる。
(1)分散液を成形型内へ注入した後、該分散液から非プロトン性極性溶媒を除去する方法。
(2)分散液を支持体に塗布し、塗布膜を形成した後、該塗布膜から非プロトン性極性溶媒を除去する方法。
(3)クロスに分散液を含浸した後、該分散液から非プロトン性極性溶媒を除去する方法。
該液晶性ポリエステル成形体としては、具体的には、液晶性ポリエステル多層構造体、液晶性ポリエステル膜、液晶性ポリエステルプリプレグ等が挙げられる。液晶性ポリエステル多層構造体は、該分散液から非プロトン性極性溶媒を除去して得られる層と、該層に隣接する隣接層とを有するものであり、例えば、該(2)の方法で得ることができる。該(2)の方法で得られる液晶性ポリエステル多層構造体の隣接層は、該(2)の方法で用いた支持体である。該(2)の方法で得られる液晶性ポリエステル多層構造体は、後述の変性液晶性ポリエステル膜と隣接層とを有する変性液晶性ポリエステル多層構造体の製造方法における予備構造体とすることができる。
液晶性ポリエステル膜は、該分散液から非プロトン性極性溶媒を除去して得られる層のみからなる膜であり、例えば該(2)の方法で得られる液晶性ポリエステル多層構造体から、支持体を剥離することにより得ることができる。
液晶性ポリエステルプリプレグは、液晶性ポリエステル成形体がクロスと一体化されたものであり、例えば該(3)の方法で得ることができる。
分散液から非プロトン性極性溶媒を除去する方法としては加熱法、減圧法、通風法等が挙げられ、これらを併用して用いてもよい。加熱法としてはオーブン中で加熱し該溶媒を除去する方法等があり、具体的には熱源にステンレスシーズヒーターやステンレスパイプヒーターを用い、50〜200℃のオーブン中で該溶媒を除去する方法が挙げられる。減圧法としてはポンプを用いてオーブン内を1Pa〜9×10
4Paに減圧し、該溶媒の気化を促進させる方法が挙げられる。また通風法としてはファンやブロアー等を用いてオーブン内に気体の流れを作ることにより、該溶媒の気化を促進する方法が挙げられる。生産効率の観点から加熱法と通風法が好ましく、加熱法と通風法とを併用する方法がより好ましい。具体的には、ブロアーを用いて雰囲気中に気体の流れを作り、かつ雰囲気の温度を50〜200℃とし、1〜60分で該溶媒を除去することが好ましい。
【0046】
〔変性液晶性ポリエステル成形体〕
本発明の変性液晶性ポリエステル成形体は、該液晶性ポリエステル成形体を加熱して得られる。加熱は、210〜450℃の範囲で、0.5〜30時間行なうことが好ましく、液晶性ポリエステル成形体の熱分解を防止する観点から、不活性ガス雰囲気または真空下で行うことがより好ましい。コストの観点から、不活性ガスとしては窒素ガスを用いることが好ましい。加熱の熱源としては、分散液から非プロトン性極性溶媒を除去する際に用いたものを用いることができる。加熱温度は、該液晶性ポリエステル成形体を製造するときに分散液から非プロトン性極性溶媒を除去する際の温度より高い温度であることが好ましい。液晶性ポリエステル成形体を加熱することにより、非プロトン性極性溶媒に不溶な変性液晶性ポリエステル成形体が得られる。該変性液晶性ポリエステル成形体としては、具体的には、変性液晶性ポリエステル膜、変性液晶性ポリエステル多層構造体、変性液晶性ポリエステルプリプレグ等が挙げられる。
【0047】
〔変性液晶性ポリエステル膜〕
本発明の変性液晶性ポリエステル膜を得る方法としては、液晶性ポリエステル膜を加熱する方法、後述する変性液晶性ポリエステルと隣接層とを有する変性液晶性ポリエステル多層構造体から隣接層を除去する方法等が挙げられる。変性液晶性ポリエステル膜を得る方法として、変性液晶性ポリエステル膜と隣接層とを有する変性液晶性ポリエステル多層構造体から隣接層を除去する方法が好ましい。
【0048】
変性液晶性ポリエステル膜と隣接層とを有する変性液晶性ポリエステル多層構造体から隣接層を除去する方法で変性液晶性ポリエステル膜を製造する場合、除去可能な隣接層を構成する材料としては、銅、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ガラス等が挙げられる。隣接層を除去する方法としては、隣接層と変性液晶性ポリエステル膜とを剥離する方法、支持体を溶解する方法等が挙げられる。隣接層を溶解する方法としては、例えば隣接層が銅である場合、銅である隣接層と変性液晶性ポリエステル膜とを有する変性液晶性ポリエステル多層構造体を塩化第二鉄水溶液等に浸漬して、銅を溶解させることにより除去する方法が挙げられる。
【0049】
〔変性液晶性ポリエステル多層構造体〕
本発明の変性液晶性ポリエステル多層構造体は、変性液晶性ポリエステル膜と、該変性液晶性ポリエステル膜に隣接する隣接層とを有するものである。隣接層とは、変性液晶性ポリエステル膜に隣接する層である。本発明の変性液晶性ポリエステル多層構造体は、変性液晶性ポリエステル膜の一方の表面に隣接層を有する多層構造体であってもよいし、変性液晶性ポリエステル膜の両方の表面にそれぞれ隣接層を有する多層構造体であってもよい。変性液晶性ポリエステル多層構造体における隣接層は、変性液晶性ポリエステル膜の全面に設けられていてもよく、一部に設けられていてもよい。また変性液晶性ポリエステル膜についても同様に、隣接層の全面に設けられていてもよく、一部に設けられていてもよい。変性液晶性ポリエステル膜の両方の表面にそれぞれ隣接層を有する変性液晶性ポリエステル多層構造体である場合は、二つの隣接層は同じ材料で構成されていてもよいし、異なる材料で構成されていてもよい。
【0050】
該隣接層を構成する材料としては、金属、樹脂、セラミックス、ガラス、木材等が挙げられる。また隣接層の形態としては、フィルム等が挙げられる。
【0051】
金属としては、銅、金、銀、錫、ニッケル、パラジウム、白金、鉄、コバルト、アルミニウム等が挙げられ、またこれらの合金を用いてもよい。隣接層が金属である場合は、他の層に金属が蒸着された層であってもよい。隣接層が、他の層に金属が蒸着された層である場合、蒸着される金属としては、アルミニウム、アルミナが好ましい。
【0052】
樹脂として、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂として、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、アミド系樹脂、エステル系樹脂、芳香族ポリエステル、芳香族ポリエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、熱可塑性エラストマー、エンジニアリングプラスチック等が挙げられる。
【0053】
オレフィン系樹脂として、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン等のオレフィンの単独重合体または2種類以上のオレフィンの共重合体、1種類以上のオレフィンと該オレフィンと重合可能な1種類以上の重合性モノマーとの共重合体等が挙げられる。アクリル系樹脂として、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、エチレン−エチルアクリレート共重合体等が挙げられる。スチレン系樹脂として、ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体等が挙げられる。アミド系樹脂として、6−ナイロン、6,6−ナイロン、12−ナイロン等が挙げられる。エステル系樹脂として、ポリエチレンテレフタレート、ポリプリブチレンテレフタレート、芳香族ポリエステル等が挙げられる。芳香族ポリエステルとして、テレフタル酸とヒドロキシ安息香酸の重縮合体、フェノールおよびフタル酸とヒドロキシ安息香酸の重縮合体、2,6−ヒドロキシナフトエ酸とヒドロキシ安息香酸の重縮合体等が挙げられる。芳香族ポリエーテルケトンとして、ポリエーテルエーテルケトンが挙げられる。イミド系樹脂として、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミド等が挙げられる。塩化ビニル系樹脂として、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。シリコーン系樹脂として、ポリシロキサン、メチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン等が挙げられる。フッ素系樹脂として、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロビニルエーテル共重合体(PFA))、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。熱可塑性エラストマーとして、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。エンジニアリングプラスチックとして、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド等が挙げられる。
【0054】
熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂、熱硬化性ポリイミド、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0055】
熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂は、単独で用いてもよく、2種類以上の熱可塑性樹脂同士または2種類以上の熱硬化性樹脂同士を併せて用いてもよい。
【0056】
セラミックスとしてシリカ、炭化ケイ素、グラファイト、ダイヤモンド等が挙げられる。隣接層がセラミックスである場合は、他の層にセラミックスが蒸着された層であってもよい。隣接層が、他の層にセラミックスが蒸着された層である場合、蒸着されるセラミックスとしては、シリカが好ましい。
【0057】
本発明の変性液晶性ポリエステル多層構造体に含まれる隣接層を構成する材料が樹脂である場合、隣接層に含まれる樹脂は本発明の液晶性ポリエステルを加熱して得られる樹脂であっても良い。
【0058】
隣接層は無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムのいずれであってもよい。
【0059】
本発明の変性液晶性ポリエステル多層構造体を電子回路基板として使用する場合、隣接層は銅からなる層であることが好ましい。銅を用いることで、銅を一部除去し多層構造体に銅配線を設けることができる。
【0060】
本発明の変性液晶性ポリエステル多層構造体の製造方法は、以下の工程(1)〜(3)をすべて含む方法、変性液晶性ポリエステル膜の表面に隣接層を形成する方法等が挙げられる。
工程(1)前記分散液を隣接層に塗布し、塗布膜を形成する工程。
工程(2)該塗布膜から非プロトン性極性溶媒を除去して、液晶性ポリエステル膜を形成し、予備構造体を得る工程。
工程(3)該予備構造体を加熱して、液晶性ポリエステル膜を変性液晶性ポリエステル膜とし、変性液晶性ポリエステル多層構造体を得る工程。
本発明の変性液晶性ポリエステル多層構造体の製造方法としては、該工程(1)〜(3)をすべて含む製造方法が好ましい。
【0061】
工程(1)において、該分散液を隣接層に塗布する方法としては、バーコート法、ダイコート法、グラビア法、リバースグラビア法、ローラーコート法、スプレイコート法、ディップコート法、スピナーコート法、カーテンコート法、スロットコート法、スクリーン印刷法等が挙げられる。該隣接層がフィルムである場合には、均一な厚みの層を設けることができることからグラビア法、スピンコート法あるいはダイコート法を採用することが好ましい。なお、塗布膜は、隣接層表面の一部に形成してもよく、全面に形成してもよい。
【0062】
該分散液を隣接層に塗布するときに、分散液の流動性向上の観点から、予め分散液を温度50〜100℃で2〜10時間状態調整を行なうことが好ましい。
【0063】
工程(2)で該塗布膜から非プロトン性極性溶媒を除去する方法としては、分散液から非プロトン性極性溶媒を除去する際に用いた方法と同様の方法が挙げられる。
【0064】
工程(3)で、予備構造体を加熱して、液晶性ポリエステル膜を変性液晶性ポリエステル膜とする条件は、液晶性ポリエステル成形体から、変性液晶性ポリエステル成形体を製造する際に用いた方法と同様の条件で行なうことが好ましい。
【0065】
本発明の変性液晶性ポリエステル多層構造体は、変性液晶性ポリエステル膜に隣接しない追加層を有していてもよい。追加層は複数あってもよい。また、追加層は、隣接層と同じ材料で構成されていてもよいし、変性液晶性ポリエステル膜とも隣接層とも異なる材料で構成されていてもよい。本発明の変性液晶性ポリエステル多層構造体が追加層を有する場合の構成としては、例えば
隣接層/変性液晶性ポリエステル膜/隣接層/追加層A(構成1)、
隣接層/変性液晶性ポリエステル膜/隣接層/追加層B/追加層C(構成2)、
追加層D/隣接層/変性液晶性ポリエステル膜(構成3)、
追加層E/隣接層/変性液晶性ポリエステル膜/隣接層/追加層F(構成4)が挙げられる。
該液晶性ポリエステル成形体、該変性液晶性ポリエステル膜、該変性液晶性ポリエステル多層構造体を製造する方法において、隣接層に該分散液を塗布するときに、隣接層が該追加層を有していてもよい。この場合、隣接層と追加層とを有する多層構造体のことを、多層支持体と称する。例えば、樹脂層と金属またはセラミック層とを有する多層支持体や、各層が互いに異なる樹脂で構成される多層支持体が挙げられる。樹脂層と金属またはセラミック層とを有する多層支持体としては、樹脂層の表面にアルミニウム、アルミナ、シリカが蒸着された支持体が挙げられる。各層が互いに異なる樹脂で構成される多層支持体としては、具体的には、Ny−6層/MXD6−Ny層/Ny−6層やポリプロピレン層/エチレン−ビニルアルコール共重合体層/ポリプロピレン層のような多層フィルムが挙げられる。
【0066】
また本発明の変性液晶性ポリエステル多層構造体は複数の変性液晶性ポリエステル膜を有していてもよい。本発明の多層構造体が複数の変性液晶性ポリエステル膜を有する場合の構成としては、例えば
隣接層/変性液晶性ポリエステル組成物膜/隣接層/変性液晶性ポリエステル組成物膜(構成5)、
隣接層/変性液晶性ポリエステル膜/隣接層/変性液晶性ポリエステル膜/隣接層(構成6)
が挙げられる。
【0067】
隣接層、変性液晶性ポリエステル膜および追加層には、これを他の層と積層するにあたり、コロナ放電処理、プラズマ処理、フレイム処理、防錆処理等の表面処理を施してもよい。また隣接層や追加層が金属である場合には防錆処理を行なうことが好ましい。
【0068】
本発明の変性液晶性ポリエステル膜、あるいは変性液晶性ポリエステル多層構造体を構成する変性液晶性ポリエステル膜および隣接層の厚みは、本発明の変性液晶性ポリエステル多層構造体を電子回路基板として用いる場合、通常1〜100μmである。該膜や該多層構造体を特にフレキシブル基板用途に用いる場合、柔軟性の観点から、該膜および隣接層の厚みは1〜20μmであることが好ましい。追加層の厚みも通常1〜100μmである。
【0069】
本発明の変性液晶性ポリエステル多層構造体を構成する各層は、必要に応じて紫外線吸収剤、着色剤、酸化防止剤等の各種添加剤を含有していてもよい。
【0070】
〔変性液晶性ポリエステルプリプレグ〕
本発明の変性液晶性ポリエステルプリプレグは、変性液晶性ポリエステル成形体がクロスと一体化されたものである。
【0071】
クロスとは、繊維を薄い板状に加工したものである。クロスは、織布であってもよく、不織布であってもよい。クロスとして、無機繊維からなるクロス、有機繊維からなるクロスが挙げられる。無機繊維として、炭素繊維、セラミック繊維、アルミナ系繊維等が挙げられ、セラミック繊維としてはガラス繊維、ケイ素含有セラミック繊維等が挙げられる。ガラス繊維としては、含アルカリガラス繊維、無アルカリガラス繊維、低誘電ガラス繊維等が挙げられる。コストや繊維の切断しにくさの観点から、ガラス繊維からなるクロスが好ましい。
【0072】
クロスを構成する無機繊維は、1種類であってもよく、2種類以上の無機繊維を併用して用いてもよい。コストや繊維の切断しにくさの観点から、少なくとも1種のガラス繊維を含むことが好ましい。クロスを構成する繊維は、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等のカップリング剤で処理されていてもよい。
【0073】
クロスを製造する方法としては、例えば、無機繊維を水中に分散し、必要に応じてアクリル樹脂等の糊剤を添加して、抄紙機にて抄造した後、乾燥させることで無機繊維からなるクロスを得る方法や、織成機を用いてクロスを製造する方法等が挙げられる。織成機を用いてクロスを製造する場合の織り方として、平織り、朱子織り、綾織り、ななこ織り等が挙げられる。
【0074】
クロスの織り密度は、10〜100本/25mmが好ましく、クロスの単位面積あたりの質量は10〜300g/m
2が好ましい。またクロス厚みは10〜200μmが好ましく、10〜180μmがより好ましい。
【0075】
クロスは、例えば市販品を用いてもよい。ガラス繊維からなるクロスとしては、電子部品の絶縁含浸基材として種々のものが市販されており、例えば、旭シュエーベル(株)製、日東紡績(株)製、有沢製作所(株)製のものが入手可能である。該クロス厚みを有することから、ガラス繊維からなるクロスとしては、IPC呼称で1035、1078、2116、7628のものが好ましい。
【0076】
変性液晶性ポリエステルプリプレグはクロスを分散液に含浸し、非プロトン性極性溶媒を除去し、液晶性ポリエステル成形体がクロスと一体化された液晶性ポリエステルプリプレグを得た後、該液晶性ポリエステルプリプレグを加熱することにより得ることができる。非プロトン性極性溶媒の除去や加熱は、液晶性ポリエステル成形体や変性液晶性ポリエステル成形体を製造する際の条件と同様であることが望ましい。クロスを分散液に含浸する方法として、分散液を浸漬槽に入れ、クロスをその中へ浸漬する方法が挙げられる。クロスを分散液中に含浸させた後の分散液のクロスへの付着量は、浸漬槽からのクロスの引き取り速度、分散液中における液晶性ポリエステルと水分散性無機層状化合物との合計量の濃度、クロスを浸漬槽に浸す時間により調整することができる。
【0077】
変性液晶性ポリエステルプリプレグ中における変性液晶性ポリエステル成形体の体積分率の範囲は、変性液晶性ポリエステル成形体とクロスとの合計体積を100体積%としては、好ましくは45〜85体積%、より好ましくは55〜80体積%である。
【0078】
変性液晶性ポリエステル膜は線膨張係数が低く、耐熱性が高く、柔軟性が高いことから電子回路基板用途や食品包装用途等に、また本発明の変性液晶性ポリエステル多層構造体は反りが小さいことから電子回路基板用途に用いることができる。電子回路基板用途としては、リジッド基板用途、フレキシブル基板(FPC)用途等が挙げられる。リジッド基板フィルムとしては、例えばマザーボード用基板フィルム、半導体パッケージ用基板フィルム等が挙げられ、フレキシブル基板用途としては、例えばテープオートメーテッドボンデング(TAB)、フレキシブル基板用絶縁フィルム、カバーレイ用フィルム等が挙げられる。食品包装用途としては、レトルト食品包装用や乾物包装用のフィルムやシートや容器等が挙げられる。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を実施例に基づき説明する。実施例および比較例の物性は、次の方法に従って評価した。
【0080】
〔平均粒径〕
レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置LS13320(ベックマンコールター(株)製)を用いて測定した。後述の分散液(1)〜(7)の水分散性無機層状化合物のメジアン径を、水分散性無機層状化合物の平均粒径Lとみなした。該分散液中に含まれるN,N'−ジメチルアセトアミドの屈折率を1.475、同じく含まれる水分散性無機層状化合物および溶融シリカの屈折率を1.55として測定を行った。測定は該分散液(1)〜(7)をフローセルに入れ、流動場中にて行なった。
【0081】
〔アスペクト比〕
水分散性無機層状化合物の単位厚さaは、X線回折装置XD−5A((株)島津製作所製)を用い、水分散性無機層状化合物そのものについて粉末X線回析法による測定を行った。このX線回折測定で求めた単位厚さaを用いて、水分散性無機層状化合物のアスペクト比Zを、Z=L/aの式により算出した。なお溶融シリカのアスペクト比は、粉末の溶融シリカの走査型電子顕微鏡観察画像から決定した。
【0082】
〔平均線膨張係数〕
後述する方法により作製した変性液晶性ポリエステル膜(1)〜(7)について、以下の試料条件、測定条件で線膨張係数を測定し、平均線膨張係数を得た。ここで、「平均線膨張係数」とは、各試料の線膨張係数の実測値から、下記式(1)を用いて、25μm厚みに換算した値のことをいう。
(試料条件)
1) 試料長さ:10mm
2) 試料厚み:接触式厚み計を用いて測定した。
3) 試料の状態調整:線膨張係数測定前に、窒素ガス雰囲気において試料を30℃から250℃に昇温速度5℃/分で昇温した後、降温速度30℃/分で30℃まで降温した。
(線膨張係数の測定条件)
1) 装置:熱・応力・歪測定装置TMA/SS6100(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製)
2) 温度条件:50℃から100℃に昇温速度5℃/分で昇温した。
3) 雰囲気:窒素ガス雰囲気
4) 引張荷重:29.4mN
5) 測定方向:MD方向
6) 平均線膨張係数の計算方法:
7) 平均線膨張係数を後述する式(1)を用いて算出した。
平均線膨張係数=線膨張係数(実測値)×(25/試料厚み) 式(1)
【0083】
〔膜柔軟性〕
後述する方法により作製した変性液晶性ポリエステル膜(1)〜(7)(それぞれ10cm角)を、180℃曲げた際に膜割れが発生しない試料を○、膜割れが発生する試料を×とした。
〔加熱処理〕
後述する予備構造体(1)〜(7)について、イナートオーブンIPHH−200(エスペック(株)製)を用いて、後述する条件で加熱処理を行った。
温度条件:1)20〜180℃(昇温速度2℃/分)
2)180〜290℃(昇温速度0.366℃/分)
3)290℃保持(3時間)
4)290〜20℃(自然冷却)
雰囲気:窒素ガス雰囲気
【0084】
〔液晶性ポリエステル溶液〕
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却器を備えた反応器に、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸1976g(10.5モル)、4−ヒドロキシアセトアニリド1474g(9.75モル)、イソフタル酸1620g(9.75モル)および無水酢酸2374g(23.25モル)を仕込んだ。反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で15分かけて150℃まで昇温し、温度を保持して3時間還流させた。その後、留出する副生酢酸および未反応の無水酢酸を留去しながら170分かけて300℃まで昇温させた後、内容物を取り出した。取り出した内容物を室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕後、液晶性ポリエステル中間反応物を得た。液晶性ポリエステル中間反応物を島津製作所フローテスターCFT−500により評価したところ、液晶性ポリエステル中間反応物の流動開始温度は235℃であった。液晶性ポリエステル中間反応物を窒素ガス雰囲気において223℃3時間で加熱し、液晶性ポリエステル粉末を得た。液晶性ポリエステル粉末を島津製作所フローテスターCFT−500により評価したところ、流動開始温度は270℃であった。該液晶ポリエステル粉末2200gをN,N'−ジメチルアセトアミド7800gに加え、100℃で2時間加熱して液晶性ポリエステル溶液を得た。
【0085】
〔体積分率〕
後述する分散液(1)〜(7)に含まれる無機層状化合物または溶融シリカの体積分率
は液晶性ポリエステルの比重を1、無機層状化合物や溶融シリカの比重を2として算出した。
【0086】
〔実施例1〕
80℃で4時間状態調整した液晶性ポリエステル溶液314gにN,N'−ジメチルアセトアミド400g、無機層状化合物(1)(商品名:スメクトンSA;クニミネ工業(株)製)を14.7gを徐々に加えて混合液(1)を得た。該混合液を分散機NM2-L200AR-D(商品名:ナノマイザー;吉田機械興業(株)製)にて圧力2000kgf/cm
2で10回処理することにより、分散液(1)を得た。無機層状化合物(1)と液晶性ポリエステルとの合計体積を100体積%としたときに、無機層状化合物(1)の体積分率は10体積%であった。無機層状化合物(1)の単位厚さとして、無機層状化合物(1)の平均層間距離1.2nmを用いた(WO2007/088815号公報参照)。該分散液(1)中の無機層状化合物(1)の平均粒径は148nmであり、アスペクト比は123であった。銅箔3EC−VLP(厚み18μm、三井金属鉱業(株)製)の防錆処理面に分散液(1)をテストコーター((株)康井精機製)とバーコーター(72番)を用いて塗布速度3m/分で塗布し、200℃で非プロトン性極性溶媒を除去し、銅箔上に液晶性ポリエステル膜を形成した。その後、液晶性ポリエステル膜上に分散液(1)を該方法にて塗布して、乾燥した。さらに1回同様の操作を繰り返し、合計3回の塗布と乾燥とを行ない、予備構造体(1)を得た。該予備構造体(1)について、該方法により加熱処理を施し、変性液晶性ポリエステル多層構造体(1)を得た。該多層構造体(1)を、塩化第二鉄溶液(木田(株)製 40ボーメ)に浸漬して銅箔を除去し、水洗し、80℃で4時間乾燥することで、変性液晶性ポリエステル膜(1)を得た。変性液晶性ポリエステル膜(1)の厚みは29μmであった。変性液晶性ポリエステル膜(1)の平均線膨張係数と膜柔軟性の測定を行った。評価結果を表1に示した。
【0087】
[実施例2]
無機層状化合物(1)を10.7g用いること以外は実施例1と同様にし、分散液(2)を得た。無機層状化合物(1)と液晶性ポリエステルとの合計体積を100体積%としたときに、無機層状化合物(1)の体積分率は7.5体積%であった。無機層状化合物(1)の単位厚さとして、無機層状化合物(1)の平均層間距離1.2nmを用いた(WO2007/088815号公報参照)。分散液(2)中の無機層状化合物(1)の平均粒径は130nmであり、アスペクト比は108であった。実施例1と同様にし、分散液(2)を用いて、変性液晶性ポリエステル膜と銅箔とを有する変性液晶性ポリエステル多層構造体(2)を得た。該多層構造体(2)から銅箔を除去し、変性液晶性ポリエステル膜(2)を得た。変性液晶性ポリエステル膜(2)の厚みは17μmであった。変性液晶性ポリエステル膜(2)の平均線膨張係数と膜柔軟性の測定を行った。評価結果を表1に示した。
【0088】
[実施例3]
無機層状化合物(1)を7.0g用いること以外は実施例1と同様にし、分散液(3)を得た。無機層状化合物(1)と液晶性ポリエステルとの合計体積を100体積%としたときに、無機層状化合物(1)の体積分率は5.0体積%であった。無機層状化合物(1)の単位厚さとして、無機層状化合物(1)の平均層間距離1.2nmを用いた(WO2007/088815号公報参照)。分散液(3)中の無機層状化合物(1)の平均粒径は120nmであり、アスペクト比は100であった。実施例1と同様にし、分散液(3)を用いて、変性液晶性ポリエステル膜と銅箔とを有する変性液晶性ポリエステル多層構造体(3)を得た。該多層構造体(3)から銅箔を除去し、変性液晶性ポリエステル膜(3)を得た。変性液晶性ポリエステル膜(3)の厚みは19μmであった。変性液晶性ポリエステル膜(3)の平均線膨張係数と膜柔軟性の測定を行った。評価結果を表1に示した。
【0089】
[比較例1]
無機層状化合物(1)の代わりに溶融シリカ(商品名:SFP−20M;電気化学工業(株)製)を33.0g用いること以外は実施例1と同様にし、分散液(4)を得た。溶融シリカと液晶性ポリエステルとの合計体積を100体積%としたときに、溶融シリカの体積分率は20.0体積%であった。走査型電子顕微鏡観察画像から得られた粉末の溶融シリカのアスペクト比は1であった。実施例1と同様にし、分散液(4)中の溶融シリカの平均粒径は342nmであった。分散液(4)を用いて、変性液晶性ポリエステル組成物膜と銅箔とかを有する変性液晶性ポリエステル多層構造体(4)を得た。該多層構造体(4)から銅箔を除去し、変性液晶性ポリエステル膜(4)を得た。変性液晶性ポリエステル膜(4)の厚みは25μmであった。変性液晶性ポリエステル膜(4)の平均線膨張係数と膜柔軟性の測定を行った。評価結果を表1に示した。
【0090】
[比較例2]
無機層状化合物(1)の代わりに無機層状化合物(2)(商品名:クニピアRG;クニミネ工業(株)製)を33.0g用いること以外は実施例1と同様にし、分散液(5)を得た。無機層状化合物(2)と液晶性ポリエステルとの合計体積を100体積%としたときに、無機層状化合物(2)の体積分率は20.0体積%であった。粉末X線回析法による測定によって得られた無機層状化合物(2)の単位厚さは1.2156nmであった。分散液(5)中の無機層状化合物(2)の平均粒径は598nmであり、アスペクト比は492であった。実施例1と同様にし、分散液(5)を用いて、変性液晶性ポリエステル膜と銅箔とを有する変性液晶性ポリエステル多層構造体(5)を得た。該多層構造体(5)から銅箔を除去し、変性液晶性ポリエステル膜(5)を得た。変性液晶性ポリエステル膜(5)の厚みは50μmであった。変性液晶性ポリエステル膜(5)の平均線膨張係数と膜柔軟性の測定を行った。評価結果を表1に示した。
【0091】
[比較例3]
無機層状化合物(1)の代わりに無機層状化合物(2)(商品名:クニピアRG;クニミネ工業(株)製)を14.7g用いること以外は実施例1と同様にし、分散液(6)を得た。無機層状化合物(2)と液晶性ポリエステルとの合計体積を100体積%としたときに、無機層状化合物(2)の体積分率は10.0体積%であった。粉末X線回析法による測定によって得られた無機層状化合物(2)の単位厚さは1.2156nmであった。実施例1と同様にし、分散液(6)中の無機層状化合物(2)の平均粒径は598nmであり、アスペクト比は492であった。分散液(6)を用いて、変性液晶性ポリエステル膜と銅箔とを有する変性液晶性ポリエステル多層構造体(6)を得た。該多層構造体(6)から銅箔を除去し、変性液晶性ポリエステル膜(6)を得た。変性液晶性ポリエステル膜(6)の厚みは36μmであった。変性液晶性ポリエステル膜(6)の平均線膨張係数と膜柔軟性の測定を行った。評価結果を表1に示した。
【0092】
[比較例4]
無機層状化合物(1)を用いないこと以外は実施例1と同様にし、分散液(7)を得た。実施例1と同様にし、分散液(7)を用いて、変性液晶性ポリエステル膜と銅箔とを有する変性液晶性ポリエステル多層構造体(7)を得た。該多層構造体(7)から銅箔を除去し、変性液晶性ポリエステル膜(7)を得た。変性液晶性ポリエステル膜(7)の厚みは22μmであった。変性液晶性ポリエステル膜(7)の平均線膨張係数と膜柔軟性の測定を行った。評価結果を表1に示した。
【0093】
【表1】