(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る半導体装置を実施するための形態を、いくつかの具体例を示した図面と共に詳細に説明する。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については、原則として同一もしくは同質の部材を示しており、詳細な説明を適宜省略する。
【0024】
(第1実施形態)
[半導体装置の構成の概要]
図1〜
図3を参照して、本発明の第1実施形態に係る半導体装置1の構成の概要について説明する。
図1(a)は、半導体装置1の上面側の斜視図、
図2(a)は半導体装置1の背面側の斜視図である。また、
図3(a)は、半導体装置1の背面を示す模式的な平面図であり、
図3(b)は、
図3(a)のA−A線矢視における背面側の部分断面図である。なお、
図1(b)および
図2(b)に示す半導体装置1Aについては第2実施形態として説明する。
【0025】
半導体装置1は、
図1(a)に示すように、半導体素子2と、半導体素子2を搭載するための配線基板3と、を備える。
半導体素子2は、例えば、LEDチップのような半導体発光素子等から構成される。
配線基板3は、半導体素子2に電気的に接続する導電配線や、外部の電極に接続するための電極端子が絶縁性基板4に配置され、半導体素子2を配置する搭載部を有する部材である。配線基板3は、絶縁性基板4と、上面導電配線5と、背面導電配線6(
図2(a)、
図3(a)にてドットで示す領域)と、内部導電配線9(
図3(b)参照)と、を有する。
本実施形態では、絶縁性基板4は、背面から側面にかけて、キャスタレーション用の切欠部7(
図2(a)参照)が形成されている。つまり、本実施形態では、配線基板3の上面導電配線5と背面導電配線6との電気的導通をとる手法の一例として、キャスタレーションを用いることとした。
【0026】
上面導電配線5は、絶縁性基板4の上面に形成され、半導体素子2を搭載する。上面導電配線5は、内部導電配線9に電気的に接続されている(
図4(a)参照)。上面導電配線5は、導電配線の材料として少なくとも銅を含む。上面導電配線5の上には、少なくとも半導体素子2を被覆するように封止部材8が設けられている(
図1(a)参照)。
【0027】
背面導電配線6は、主として絶縁性基板4の背面に形成され、上面導電配線5と電気的に接続されている。背面導電配線6は、絶縁性基板4の背面から内部導電配線9を介して上面導電配線5に電気的に接続されている(
図4(a)参照)。背面導電配線6は、
図3(b)に示すように、第1金属膜10と、第2金属膜20と、第3金属膜30と、第4金属膜40と、を備える。
【0028】
第1金属膜10は、タングステン(W)またはモリブデン(Mo)を含み、絶縁性基板4の背面(
図3(b)において上面)の一部領域を被覆して内部導電配線9(
図3(b)参照)に接続されている。本実施形態では、第1金属膜10は、絶縁性基板4の背面(
図3(b)において上面)から切欠部7の切欠内周面7a(
図2(a)参照)の一部領域を被覆するように延設されて、切欠部7の側において、内部導電配線9(
図3(b)参照)に接続されている。
図2(a)に示すように、切欠内周面7aには、絶縁性基板4の表面が露出した部分に挟まれた中央の部分に背面導電配線6が形成されている。この背面導電配線6の第1金属膜10が切欠内周面7aにおいて被覆する領域の上には、第4金属膜40が形成されている(
図3(b)参照)。
第1金属膜10は、内部導電配線9として絶縁性基板4に形成されたビアや内層配線を介して上面導電配線5(
図1(a)参照)と電気的に接続されている。
第1金属膜10は、タングステンまたはモリブデンが絶縁性基板4の材料と共に同時焼成されて形成されている。なお、第1金属膜10の形成方法は、後記する配線基板3の製造工程にて説明する。
【0029】
第2金属膜20は、チタン(Ti)を含み、
図3(b)に示すように、絶縁性基板4の背面において第1金属膜10の少なくとも一部に重ねて設けられると共に背面の一部を直接被覆するように延設されている。第2金属膜20は、厚膜の第3金属膜30を配設する領域に形成される。第2金属膜20は、
図3(b)に示すように、絶縁性基板4の背面において第1金属膜10が被覆している領域のうち、切欠部7の周縁では第1金属膜10に重ねられていない。このように配置した理由は、第2金属膜20の上に形成される第3金属膜30が製造過程で切断されることによるバリの発生を抑制できるからである。第2金属膜20は、基板の焼成後に、スパッタリングなどの蒸着法により形成される。なお、第2金属膜20の形成方法は、後記する配線基板3の製造工程にて説明する。
【0030】
第2金属膜20は、2層以上の膜構造で形成されることが好ましい。
第2金属膜20が2層の場合、例えばチタンまたはチタン化合物を含む金属層と、銅を含む金属層とが積層される。第2金属膜20が3層の場合、チタンを含む2つの層と、銅を含む層を備えてもよいし、チタンを含む層と銅を含む層の他に、チタンおよび銅を含まない層を備えるようにしてもよい。
チタンおよび銅を含まない層を設ける場合には、チタンと銅の間に介在させる。そのような層の材料としては例えばパラジウム(Pd)を挙げることができる。
チタン化合物は例えばTiWやTiPdを挙げることができる。
第2金属膜20の材料の組み合わせの例としては、第1金属膜10の側から、Ti/Cu、Ti/TiW/Cu、TiW/Cu、Ti/Pd/Cu、Ti/TiPd/Cu等を挙げることができる。以下では、第2金属膜20は、一例として、2層構造であって、第1金属膜10側から、Ti膜21とCu膜22とをこの順序で積層されてなるものとして説明する。
【0031】
第3金属膜30は、第2金属膜20を被覆するものである。本実施形態では、第3金属膜30は、放熱性の良い材料として銅(Cu)を含むこととした。第3金属膜30は、第2金属膜20で被覆されている部分にめっき法により形成されている。なお、第3金属膜30の形成方法は、後記する配線基板3の製造工程にて説明する。
【0032】
第4金属膜40は、ニッケル(Ni)および金(Au)を含み、
図3(b)に示すように、絶縁性基板4の背面において、第3金属膜30を被覆すると共に第1金属膜10を被覆する。第4金属膜40は、ニッケルめっき層と、このニッケルめっき層の上に形成された金めっき層とを備える。なお、第4金属膜40の形成方法は、後記する配線基板3の製造工程にて説明する。
【0033】
図2(a)に示すように、配線基板3の背面において、背面導電配線6は、高さの異なる3つの領域を備えている。これらの3つの領域を、
図3(b)の断面図にて形式的に3つの領域61,62,63に区分する。
領域61では、絶縁性基板4の上に、第2金属膜20と、第3金属膜30と、第4金属膜40とが積層されている。
領域62では、絶縁性基板4の上に、第1金属膜10と、第2金属膜20と、第3金属膜30と、第4金属膜40とが積層されている。
領域63では、絶縁性基板4の上に、第1金属膜10と、第4金属膜40とが積層されている。つまり、高い順番に並べると、領域62、領域61、領域63の順番となる。
【0034】
ここで、第2金属膜20に着目すると、
図3(b)に示すように、領域62では、第2金属膜20が第1金属膜10の一部を被覆しているので、導電配線のこの部分の密着性が向上する。
【0035】
また、第4金属膜40に着目すると、
図3(b)に示すように、第4金属膜40は、領域63の側において、第1金属膜10、第2金属膜20および第3金属膜30のそれぞれの側面を被覆している。一方、第4金属膜40は、領域61の側において、第2金属膜20および第3金属膜30のそれぞれの側面を被覆している。なお、第4金属膜40は、領域63の側において、同時焼成で形成された第1金属膜10との接触面積が大きいので、領域61の側よりも密着性が高くなっている。
【0036】
また、
図3(b)に示すように、第1金属膜10および第2金属膜20が重なった領域の直下の絶縁性基板4の内部には、内部導電配線9が設けられている。この半導体装置1が外部基板に実装される場合には、第4金属膜40の上面は、例えば半田を介して、図示しない外部基板に接合される。このとき、外部基板側からの電力が、
図4(a)にて矢印51〜54で示すように、背面導電配線6、内部導電配線9および上面導電配線5を介して、半導体素子2に供給される。
【0037】
外部基板に実装された半導体装置1が例えば高温高湿環境下において長時間使用されると、第2金属膜20が剥離することがある。本実施形態のように第2金属膜20が、Ti膜21とCu膜22との積層構造である場合、Ti膜21とCu膜22との層間剥離が生じる。これは、第2金属膜20のCu膜22と、Cuめっきの第3金属膜30との親和性も一因と考えられる。背面導電配線6において、このような層間剥離が生じたとしても、
図4(b)に示すように、第2金属膜20のTi膜21は、切欠部7の周辺でオーバーラップする第1金属膜10に密着し続けることができる。また、
図4(b)に示すように、第4金属膜40が、領域63の側において、第1金属膜10、第2金属膜20および第3金属膜30のそれぞれの側面を被覆しているので、導電配線の電気的接続の信頼性を確保することができる。
【0038】
[半導体装置の構成部材の詳細]
以下、半導体装置1における各構成部材について詳述する。
【0039】
<半導体素子>
半導体素子2は、半導体発光素子である場合、
図1(a)に例示したフェースダウン(FD)型の半導体発光素子の他、対向電極構造(両面電極構造)の半導体発光素子であってもよい。対向電極構造(両面電極構造)の半導体発光素子の場合、素子基板の裏面に形成されたn電極およびp電極の一方が上面導電配線5に接続され、n電極およびp電極の他方はワイヤにより他の上面導電配線5に接続される。
半導体素子2は、半導体発光素子とともに搭載する、受光素子や保護素子であってもよい。半導体素子2が保護素子の場合、例えば、半導体発光素子を過電圧から保護するための、抵抗、トランジスタまたはコンデンサ等から構成される。
半導体素子2の個数は、1つでもよいし、複数でもよい。複数の半導体素子2を設ける場合、各半導体素子2の一対の電極に対応して一対の上面導電配線5を共有することができる。
【0040】
半導体装置1が蛍光体を備える場合、半導体発光素子は、その蛍光体を励起可能な波長を発光できる活性層を有する。このような半導体発光素子を構成する材料として、例えば、窒化ガリウムの半導体を挙げることができる。特に、蛍光体を効率良く励起できる短波長が発光可能な窒化物半導体(In
XAl
YGa
1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)が好適に挙げられる。この半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。
【0041】
図1(a)に例示した半導体素子2は、LEDチップであって、同一面側に正負一対の電極が形成されている。このLEDチップの各電極は、正負一対の上面導電配線5に向かい合うようにして配置され、金や半田などの導電性材料により、上面導電配線5の上に電気的および機械的に接合されている。この場合、予め、半導体素子2の電極側に、金や半田のバンプをめっき法または蒸着法により形成しておくことができきる。また、半導体素子2の電極側の代わりに、配線基板3の上面導電配線5の側にバンプを形成しておくこともできる。なお、図示を省略するが、半導体素子2の電極と、配線基板3の正負一対の導電配線とは、例えば導電性ワイヤにて接続することもできる。
【0042】
<配線基板>
半導体素子2が例えば半導体発光素子の場合、配線基板3の上面導電配線5は、半導体素子2が搭載された領域(搭載部)よりも大きな外形を有する領域である。これにより、上面導電配線5において、搭載部を除いた部位、すなわち、搭載部に配置させた半導体発光素子の外側に配置された導電配線の領域に、二酸化チタンのような白色系のフィラーを電気泳動沈着法により配置させることができる。なお、半導体発光素子の表面に蛍光体を配置する場合、フィラーは蛍光体の配置領域を除く位置に配置させる。また、上面導電配線5を半導体発光素子の外形面積よりも広い領域に配置させると、半導体発光素子からの熱を広範囲に拡散できるので、背面導電配線6への熱の伝達を良好に行うことができる。そのため、半導体発光素子からの放熱を向上させることができる。
【0043】
なお、配線基板3に設けられる切欠部7は、
図3(a)に示されるように、その略直方体形状を形作る内面のうちの少なくとも一部、特に角部において曲面を有することが好ましい。これは、導体ペーストを印刷し易くするとともに、金属膜をめっきし易くするためである。また、配線基板3に設けられた導電配線および電極端子の形状および位置は、基板に配置される半導体素子2の大きさ、形状、バンプの配置のし易さ、および導電性ワイヤの張り易さ等を考慮して適宜調整される。
【0044】
絶縁性基板4の材料として、例えば、エポキシ樹脂にガラス成分が含有されてなるガラスエポキシ樹脂や、セラミックスを挙げることができる。特に、半導体装置1の高耐熱性、高耐光性が望まれる場合、絶縁性基板4の材料をセラミックスとすることが好ましい。
セラミックスは、主材料を、アルミナ(Al
2O
3)、窒化アルミニウム(AlN)、ムライト(Mullite)などから選択することが好ましい。これらの主材料に焼結助剤などを加え、焼結することで、絶縁性基板4としてセラミックスの基板が得られる。
【0045】
絶縁性基板4として、例えば、原料粉末の90〜96重量%がアルミナであり、焼結助剤として、粘土、タルク(talc)、マグネシア(MgO)、カルシア(CaO)及びシリカ(silica)等が4〜10重量%添加され、1500〜1700度の温度範囲で焼結させたセラミックスを用いることができる。
【0046】
また、絶縁性基板4として、例えば、原料粉末の40〜60重量%がアルミナであり、焼結助剤として、60〜40重量%の硼珪酸ガラス(borosilicate glass)、コージュライト(cordierite)、フォルステライト(forsterite)、ムライト(Mullite)などが添加され、800〜1200度の温度範囲で焼結させたセラミックス等を用いることができる。
【0047】
このようなセラミックス基板は、焼成前のグリーンシート段階で種々の形状をとることができる。また、焼成前のグリーンシートの段階で種々のパターン形状の導電配線(または、その下地層)を施すことができる。
【0048】
セラミックスの材料を焼成した後、導電配線の下地層に、金、銀、銅あるいはアルミニウムを材料として、めっき法やスパッタリングにより金属材料が配置される。なお、導電配線の最表面は、半導体発光素子からの光に対して高い反射率を有する金属材料にて被覆されていることが好ましい。このような金属材料として、例えば、銀やアルミニウムを挙げることができる。
【0049】
背面導電配線6において、第3金属膜30は、
図3(b)に示されるように、第1金属膜10の上からその第1金属膜10が配置されていない絶縁性基板4の背面上にかけて略均一な膜厚Tで配置されている。これにより、
図3(b)において第1金属膜10が配置された領域62からの放熱と、第1金属膜10が配置されていない領域61からの放熱とが、略同様になるので、配線基板3は、効率の良い放熱をすることができる。
【0050】
第3金属膜30の膜厚は特に限定されないが、例えば第1金属膜10の膜厚が10μm以上25μm以下であり、かつ、第3金属膜30を構成する銅の膜厚が20μm以上80μm以下であると、半導体装置1の放熱性を向上させることができるので、このように構成することが好ましい。
【0051】
なお、背面導電配線6において、第2金属膜20および第3金属膜30の両方に銅を含むこととしたが、放熱性を良好にするためには、第2金属膜20または第3金属膜30の少なくとも一方に、銅を含めればよい。
【0052】
第3金属膜30は、切欠部7内には実質的に配置されることなく、切欠部7の外側に配置されていることが好ましい。その理由は、大判の配線基板を切断した後の切欠部7における金属バリの形成を抑制できるからである。
【0053】
<封止部材>
封止部材8は、少なくとも半導体素子2を被覆するように配線基板3に設けられ、例えば、半導体発光素子からの光を透過させることができる透光性の部材である。配線基板3への封止部材8の形成方法として、圧縮成型、射出成型またはトランスファーモールドなど種々の公知の成型技術を利用することができる。
【0054】
封止部材8の材料は、特に限定されず、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、フッ素樹脂、および、それらの樹脂が少なくとも一種以上含有されたハイブリッド樹脂等、耐候性に優れた透光性樹脂を用いることができる。
【0055】
封止部材8を所望の形状にすることによって種々のレンズ機能を持たせることができる。具体的には、凸レンズ形状、凹レンズ形状、さらには、発光観測面から見て楕円形状やそれらを複数組み合わせた形状にすることができる。なお、
図1(a)には、LEDからなる半導体素子2と、上面導電配線5上に配置されたフィラーとを被覆するように凸レンズ形状に成型された封止部材8を仮想線で示した。
【0056】
<蛍光体>
半導体装置1には、半導体発光素子の表面または上面導電配線5の表面に蛍光体を配置させることができる。これらの蛍光体は、樹脂のような他の材料に蛍光体を混合して配線基板3の表面(上面)に印刷する方法の他、電気泳動沈着により配線基板3の上面導電配線5の表面や半導体発光素子の表面に形成させることもできる。
【0057】
[半導体装置の製造方法]
本発明の第1実施形態に係る半導体装置1の配線基板3を製造する方法について
図5ないし
図9を参照(適宜
図1(a)参照)して説明する。
図5および
図6は、半導体装置1の配線基板3を製造する工程を示す模式的な断面図である。なお、
図5および
図6の断面図は、
図3(b)に示すような断面位置に関し、最終的に大判基板を予定線に沿って切断して個片化したときに
図3(a)に示す半導体装置1の
図3(a)において右側の側面となる位置を含んでいる。また、配線基板の背面側を
図5および
図6において上側として示し、配線基板の上面側を
図5および
図6において下側として示す。さらに、
図7ないし
図9は、半導体装置1の配線基板3を製造する工程を示す模式的な平面図である。
【0058】
配線基板3を製造するためには、焼成された基板を用意しておく。この焼成された基板は、従来公知の方法で概略、例えば次のようにして形成される。まず、複数の焼成前のセラミックスグリーンシートを準備する。このうち、配線基板3の背面を形成するグリーンシート(背面用グリーンシート)については、大判基板の切断によってキャスタレーション用の切欠部7の形状とされるように、所定位置にスルーホールを穿設する。この背面用グリーンシートについて、キャスタレーション用のスルーホールに、タングステン等の高融点金属ペーストを真空引き等により印刷(塗布)する。また、切欠部7となる部位の周辺の背面側の一部領域にも、高融点金属ペーストを印刷する。なお、これら高融点金属ペーストは、焼成後に、例えば10〜25μmの膜厚の第1金属膜10となる。
図5(a)の上側に、背面用グリーンシート4
1(4)の一例を示す。
【0059】
準備したその他の焼成前のセラミックスグリーンシートには、適宜必要なビアと共にスルーホールを穿設し、その主面にタングステンやモリブデン等の高融点金属ペーストを印刷し、スルーホール内面に真空引き等により印刷(塗布)する。背面用グリーンシート以外の焼成前のセラミックスグリーンシートを積層した状態の一例を
図5(a)の下側に示す。下側は、一例として2枚のグリーンシート4
2(4),4
3(4)を積層した。
【0060】
そして、各グリーンシートを積層、熱圧着して同時焼成する。こうして、
図5(b)に示すように、配線基板の背面の一部に導電配線の下地層があり、キャスタレーション用スルーホールには導電配線の下地層を備えた配線基板を用意しておく。この配線基板の製造途中で仮想的に切断した場合の配線基板3の背面を模式的に示す部分平面図を
図7に示す。
図7において、第1金属膜10は細かなドットの領域で表されている。なお、
図7の仮想線は、第3金属膜30が形成される領域を示す。
【0061】
焼成後、
図5(c)に示すように、配線基板の上面(
図5において下側の面)および背面(
図5において上側の面)に、スパッタリング、真空蒸着、イオンプレーティングなどの物理蒸着法により、例えば膜厚0.1μmのTi膜21を被着、形成する。次に、
図5(d)に示すように、配線基板の上面および背面に、スパッタリング、真空蒸着、イオンプレーティングなどの物理蒸着法により、例えば膜厚0.1μmのCu膜22を被着、形成する。このようにして第2金属膜20が形成される。
【0062】
次に、配線基板の上面および背面に形成されたこれら下地層(第2金属膜20)に、銅めっきを行う準備として、めっきを形成しない領域を保護するためのレジストを従来公知の手法で概略、例えば次のようにして形成する。まず、配線基板の上面および背面に、シート状で感光層を有するDFR(Dry Film photo Resist)を貼り付ける。そして、DFRの上に、回路パターンが描かれたフォトマスクを載せて露光させ、露光済みの感光層をアルカリ溶液で現像して、露光していない部分の感光層を除去する。感光層において露光により硬化した部分が、
図5(e)に示すレジスト70として機能する。このレジスト70は、切欠部7となる箇所や一対の電極となる部分を分離する箇所等をマスクする。
【0063】
次に、このような配線基板の下地層に、従来公知の方法で銅めっきを行う。めっき法を用いる場合、電解めっき、無電解めっきのいずれの方法でも用いることができる。例えばCuめっきを電解めっき法で形成することで、
図6(a)に示すように、レジスト70が形成されていない部分に例えば20〜80μmの膜厚の第3金属膜30が形成される。
【0064】
この配線基板の製造途中で仮想的に切断した場合の配線基板3の背面を模式的に示す部分平面図を
図8に示す。
図8において、第3金属膜30は粗いドットの領域で表されている。
図8と
図7とを対比すると、第3金属膜30は、第1金属膜10が配置された領域よりも広く、第3金属膜30の一部が第1金属膜10の上に第2金属膜20を介して配置されていることが分かる。このとき用いたレジスト70によって、切欠部7内には銅がめっきされない。そのため、大判の配線基板を切欠部7の予定線に沿って切断することにより複数の配線基板3としたとき、厚膜の銅めっきが切断されることによるバリの発生を抑えることができる。
【0065】
続いて、レジスト70を従来公知の剥離方法で
図6(b)に示すように剥離する。例えば、ウェットプロセスの場合、レジスト70は、水酸化ナトリウム等の強アルカリ溶液によって洗浄して除去することができる。また、ドライプロセスの場合、専用のレジスト剥離装置(アッシング装置)で除去することができる。
【0066】
続いて、レジスト70を剥離することで露出した第2金属膜20を従来公知の方法でエッチングして、
図6(c)に示すように除去する。例えば、第3金属膜30にレジストマスクを形成し、RIE(Reactive Ion Etching反応性イオンエッチング)により、露出した第2金属膜20をレジストマスクでドライエッチングする。その後、レジストマスクを除去する。
【0067】
続いて、第3金属膜30の上に、
図6(d)に示すように、ニッケルと金の第4金属膜40をめっきする。例えば膜厚1.0μmのニッケルめっき層と、例えば膜厚1.0μmの金めっき層とを積層して第4金属膜40とすることができる。これにより、切欠部7内では、例えばタングステンを含む第1金属膜10の上に、ニッケルと金の第4金属膜40が配置される。また、切欠部7の外であって、絶縁性基板4の背面上に配置された第1金属膜10の上では、切欠部7の側から第4金属膜40が配置され、その第4金属膜40に連続して、第2金属膜20および第3金属膜30の上の第4金属膜40が配置される。なお、配線基板の上面にも、背面と同様に、タングステンを含む下地層の上に、銅めっきと、ニッケルめっきおよび金めっきを形成する。
【0068】
この配線基板の製造途中で仮想的に切断した場合の配線基板3の背面を模式的に示す部分平面図を
図9に示す。
図9において、第4金属膜40はドットの領域で表されている。
図9と、
図7および
図8とを対比すると、第4金属膜40は、第1金属膜10が配置された領域と、第3金属膜30が配置された領域とを被覆するように配置されていることが分かる。
【0069】
次に、
図6(d)に示す仮想線の位置で、キャスタレーション用のスルーホールに沿って大判の配線基板を切断する(切断工程)。これにより、個々の配線基板3とする。
次に、素子接合工程にて、半導体素子2を配線基板3に接合する。次に、封止工程にて、半導体素子2を封止部材8にて封止する。これにより、半導体装置1を完成させる。
なお、導電性ワイヤを用いる場合には、素子接合工程にて続いてワイヤボンディングする工程も行う。なおまた、前記切断工程の実行順序を、素子接合工程や封止工程の後に変更してもよい。
【0070】
上記製造方法により、以下の条件で半導体装置1の配線基板3の背面導電配線6を作製した。すなわち、アルミナを主成分とするセラミックスを絶縁性基板(厚さ0.4mm)の材料とし、セラミックスグリーンシートの段階で印刷されるタングステンの第1金属膜10の膜厚を10μmとした。また、焼成後、スパッタリングにより、膜厚0.1μmのTi膜21と、膜厚0.1μmのCu膜22を順次積層した。次いで、銅めっきにより膜厚を30μmの第3金属膜30を形成した。さらに、膜厚1.0μmのニッケルめっき層および膜厚1.0μmの金めっき層を積層して第4金属膜40とした。この場合、パターニング精度の良い導電配線を形成することができた。
【0071】
第1実施形態の半導体装置1によれば、背面導電配線6が、同時焼成により形成された第1金属膜10と、焼成後に蒸着法により形成された第2金属膜20とをキャスタレーション周りでオーバーラッパさせた導電配線の下地層を備えるので、導電配線の密着信頼性を確保することができる。したがって、導電配線の電気的接続の信頼性を確保することができる。また、基板焼成後に第2金属膜20を蒸着法により形成して第1金属膜10にオーバーラップさせれば、製造過程での配線基板の反りや変形を抑制し、パターニング精度の良い導電配線を形成することができる。また、基板焼成後に第2金属膜20を蒸着法により形成することで、背面導電配線6の平滑性を向上させることができる。これにより、半導体装置1の実装性を高めることができる。
【0072】
(第2実施形態)
図1(b)および
図2(b)を参照して、本発明の第2実施形態に係る半導体装置1Aについて説明する。なお、第1実施形態の半導体装置1と同じ構成には同じ符号を付し、説明を適宜省略する。
図1(b)は、半導体装置1Aの上面側の斜視図、
図2(b)は半導体装置1Aの背面側の斜視図である。
【0073】
半導体装置1Aの配線基板3Aは、絶縁性基板4Aと、上面導電配線5と、背面導電配線6A(
図2(b)にてドットで示す領域)と、内部導電配線9A(
図11(d)参照)と、を有する。絶縁性基板4Aは、矩形の形状であり、切欠部が存在しない。つまり、本実施形態では、配線基板3Aの上面導電配線5と背面導電配線6Aとの電気的導通をとる手法の一例として、セラミックス内部の配線(内部導電配線9A)を用いることとした。
【0074】
内部導電配線9Aは、絶縁性基板4Aの一方の面(上面)から他方の面(背面)まで導通できるように連続的に形成されている。なお、ビアやスルーホールが異なる位置に穿設された複数のグリーンシートを張り合わせて絶縁性基板4Aが作製されている場合、内部導電配線9Aは、必ずしも一直線状に貫通する必要はない。
半導体装置1Aのその他の構成は、半導体装置1と同様なので説明を省略する。
【0075】
[半導体装置の製造方法]
本発明の第2実施形態に係る半導体装置1Aの配線基板3を製造する方法について
図10および
図11を参照して説明する。
図10および
図11は、半導体装置1Aの配線基板3Aを製造する工程を示す模式的な断面図であって、
図5および
図6の断面図の位置に対応している。
【0076】
配線基板3Aを製造するために、焼成された基板(大判の基板)を用意しておく。この焼成された基板は、従来公知の方法で概略、例えば次のようにして形成される。まず、絶縁性基板4Aとして、焼成前のセラミックスグリーンシートを準備する。
図10(a)に、グリーンシート(絶縁性基板4A)の一例を示す。なお、ここでは、1枚のグリーンシートを例示したが、複数のグリーンシートを貼り合わせたものを用いてもよい。
【0077】
準備した焼成前のセラミックスグリーンシートには、内部導電配線9Aとなる位置に、適宜必要なビアと共にスルーホールを穿設し、その主面にタングステン(W)やモリブデン(Mo)等の高融点金属ペーストを印刷し、スルーホール内面に真空引き等により印刷(塗布)する。また、内部導電配線9Aと接続する部位の周辺の背面側および上面側の一部領域にも、高融点金属ペーストを印刷する。なお、この高融点金属ペーストは、焼成後には第1金属膜10となる。続いて、グリーンシートを焼成する。こうして、
図10(b)に示すように、内部導電配線9Aおよび第1金属膜10を備えた配線基板を用意しておく。
【0078】
以下、概略次のように、第1実施形態と同様にして配線基板を製造する。まず、焼成後には、
図10(c)に示すように、配線基板の上面および背面にTi膜21を被着、形成し、
図10(d)に示すように、Cu膜22を被着、形成する。このようにして第2金属膜20が形成される。次に、
図10(e)に示すように、切断の予定線となる箇所や一対の電極となる部分を分離する箇所等に、レジスト70を形成する。次に、
図11(a)に示すように、レジスト70が形成されていない部分に、第3金属膜30としてCuめっきを形成する。続いて、
図11(b)に示すようにレジスト70を剥離する。そして、剥離後に露出した部分の第2金属膜20を、
図11(c)に示すようにエッチングにより除去する。続いて、第3金属膜30の上に、
図11(d)に示すように、ニッケルと金の第4金属膜40をめっきする。これにより、切断の予定線となる箇所に、例えばタングステンを含む第1金属膜10の上面および側面に、ニッケルと金の第4金属膜40が配置される。続いて、
図11(d)に示す仮想線の位置で切断の予定線に沿って大判の配線基板を切断する切断工程を行い、さらに素子接合工程および封止工程を順次行うことで、配線基板3Aとする。
【0079】
第2実施形態の半導体装置1Aによれば、絶縁性基板4Aの背面の一部領域において内部導電配線9Aと接続する位置に同時焼成により形成された第1金属膜10と、焼成後に蒸着法により形成された第2金属膜20とをオーバーラッパさせた導電配線の下地層を備えるので、導電配線の密着信頼性を確保することができる。
【0080】
(第3実施形態)
図12および
図13を参照して、本発明の第3実施形態に係る半導体装置1Bについて説明する。なお、第1実施形態の半導体装置1と同じ構成には同じ符号を付し、説明を適宜省略する。
図12は、半導体装置1Bの背面側の斜視図である。
図13(a)は、半導体装置1Bの背面を示す模式的な平面図であり、
図13(b)は、
図13(a)のB−B線矢視における背面側の部分断面図である。
【0081】
図12に示すように、半導体装置1Bの配線基板3Bの背面において、背面導電配線6Bは、高さの異なる2つの領域を備えている点が
図2(a)に示した背面導電配線6とは異なっている。これらの2つの領域のうち高い側は、
図13(b)の断面図にて形式的に区分した領域61および領域62に対応している。一方、低い側は、
図13(b)の断面図にて形式的に区分した領域63に対応している。
【0082】
図13(a)に示すように、半導体装置1Bの背面導電配線6B(ドットで示す領域)は、平面視では、
図3(a)に示す半導体装置1の背面導電配線6と同様である。ただし、
図13(b)に断面で示すように、背面導電配線6Bは、領域61と領域62とにおいて、最表面が面一となっている。すなわち、第2金属膜20が、第1金属膜10の少なくとも一部に重ねて設けられている部分と、絶縁性基板4の背面の一部を直接被覆している部分とにおいて第4金属膜40の表面が面一である。
【0083】
また、
図3(b)に示す背面導電配線6は、領域61における第3金属膜30の厚みTと、領域62における第3金属膜30の厚みTとが等しくなるように配置されている。一方、
図13(b)に示す背面導電配線6Bは、領域61における第3金属膜30の厚みTと、領域62における第3金属膜30の厚みT
0とが異なっている。
【0084】
半導体装置1Bの背面導電配線6Bの製造方法は、半導体装置1の背面導電配線6と同様であるが、第3金属膜30を成膜後に、第3金属膜30を研磨することで厚みを調整する調整工程を行ってから次の工程を行う。調整工程では、第3金属膜30の最表面を面一とする。調整工程は、従来公知の研磨方法を用いることができる。例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学機械研磨)を用いることができる。研磨剤としては、例えば、粒径が数μm程度のダイヤモンド等を選択することができる。
【0085】
第3金属膜30を構成する材料は、第4金属膜40を構成する材料よりも安価なので、第4金属膜40を研削または研磨する場合に比べて材料のコストを低減することができる。また、この調整工程によれば、第3金属膜30を成膜する前に、第2金属膜20が第1金属膜10の一部を被覆している領域62の第2金属膜20の厚みと、第2金属膜20が絶縁性基板4を被覆している領域61の第2金属膜20の厚みとを変えるような複雑な処理を行う必要がないので、製造し易くなる。
【0086】
ところで、従来、半導体装置の製造過程において、セラミックスを用いた配線基板と半導体発光素子との接続方法として、バンプボンディングやワイヤボンディングが用いられている。この際に、接合性を高めるために、セラミックス基板をヒータープレートなどで加熱することで熱エネルギーを付加することが一般的に行われている。また、バンプボンディングやワイヤボンディング時の接合エネルギーとして超音波を用いて接合性を高めることも行われている。
【0087】
上記事情に鑑みると、半導体装置1Bの背面導電配線6Bは、最表面が面一であるので、外部基板へ実装する際の接触面積が大きく、安定に接合することができる。すなわち、半導体装置1Bは、製造時においてヒータープレートからの熱の伝達効率が良好となり、背面導電配線6Bの最表面に段差がある場合に比べて接合性が向上する。また、半導体装置1Bは、製造時においてヒータープレートに対して良好に接触できるので、超音波の伝達の効率も良好となり、接合性が向上する。したがって、半導体装置1Bは、導電配線の電気的接続の信頼性を確保してパターニング精度の良い導電配線を形成することができると共に、半導体装置製造過程での実装性を高めることができる。
【0088】
以上説明した前記各実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための半導体装置を例示したものであって、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、各実施形態の部材に特定するものでは決してない。各実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0089】
例えば、配線基板3の上面導電配線5と背面導電配線6との電気的導通をとる手法の一例として、第1実施形態ではキャスタレーションを用い、第2実施形態では、内部導電配線9Aを用いることとしたが、第1実施形態の変形例として、キャスタレーションと内部導電配線9Aとを併用することとしてもよい。同様に、第3実施形態の変形例として、キャスタレーションと内部導電配線9Aとを併用することとしてもよい。