特許第5942718号(P5942718)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5942718
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】希土類磁石からの希土類金属回収方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 59/00 20060101AFI20160616BHJP
   C22B 9/02 20060101ALI20160616BHJP
   C22B 9/04 20060101ALI20160616BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20160616BHJP
   F27D 3/00 20060101ALI20160616BHJP
   F27D 3/12 20060101ALI20160616BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20160616BHJP
【FI】
   C22B59/00ZAB
   C22B9/02
   C22B9/04
   C22B7/00 F
   F27D3/00 B
   F27D3/12 Z
   B09B3/00 304Z
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-198449(P2012-198449)
(22)【出願日】2012年9月10日
(65)【公開番号】特開2014-51724(P2014-51724A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2014年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】宮本 雄
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 智則
【審査官】 向井 佑
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05437709(US,A)
【文献】 竹田修 他2名,溶融金属を用いたNd‐Fe‐B磁石合金からのネオジムの分離・回収,資源・素材学会春季大会講演集,日本,2002年 3月28日,No.2,Page.162-163
【文献】 XU Y 他2名,Liquid metal extraction of Nd from NdFeB magnet scrap,J Mater Res,米国,2000年11月,Vol.15 No.11,Page.2296-2304
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 59/00
C22B 7/00
JSTplus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類磁石から希土類金属を回収する希土類金属回収方法において、
希土類金属を有する磁石から、溶融した液体のマグネシウムに前記希土類金属を抽出させる抽出工程と、
前記希土類金属が抽出された磁石と、前記希土類金属を溶解させた液体のマグネシウムとを分離する分離工程と、
前記分離された希土類金属を含む液体のマグネシウムから、前記マグネシウムを気化させることによって、前記希土類金属を回収する希土類金属回収工程と、
前記気化させたマグネシウムを凝縮または固化させて回収するマグネシウム回収工程と、を含み、
前記抽出工程では、投入するマグネシウム重量を、投入する希土類磁石重量の5〜15倍とすることを特徴とする希土類金属回収方法。
【請求項2】
請求項1に記載の希土類金属回収方法において、
前記抽出工程では、前記抽出はタンタルもしくはモリブデン製の反応容器中、アルゴン雰囲気中で行うことを特徴とする希土類金属回収方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の希土類金属回収方法において、
前記抽出工程では、希土類金属抽出反応を650℃以上、および1000℃以下の温度で行う
ことを特徴とする希土類金属回収方法。
【請求項4】
請求項に記載の希土類金属回収方法において、
前記抽出工程では、磁石を鉄鋼製のカゴに入れ、前記カゴを磁石全体が前記反応容器中の溶融マグネシウムに浸るように配置して、抽出処理を行い、
前記分離工程では、前記カゴを前記希土類金属を溶解させた溶融マグネシウムに全く触れない位置まで上昇させることにより、前記希土類金属が抽出された磁石と、前記希土類金属を溶解させた液体のマグネシウムとを分離することを特徴とする希土類金属回収方法。
【請求項5】
請求項に記載の希土類金属回収方法において、
前記した全ての工程を、配管で互いに連結され、配管内部に開閉弁を備えた2つの鉄鋼製の密閉型反応容器内で行い、
前記抽出工程、前記分離工程では、第1の密閉型反応容器内に前記反応容器、および前記カゴが収容されて処理が行なわれ、
前記希土類金属回収工程、前記マグネシウム回収工程では、第2の密閉型反応容器側から真空引きすることにより、前記分離された希土類金属を含む液体のマグネシウムから、
前記マグネシウムを気化させ、前記第2の密閉型反応容器に移動、凝縮または固化させてマグネシウムを回収し、反応容器中に希土類金属のみを残存させ、回収することを特徴とする希土類金属回収方法。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか1つに記載の希土類金属回収方法において、
前記希土類金属回収工程と前記マグネシウム回収工程では、マグネシウムの気化を、0℃以上、および750℃以下の温度で行うことを特徴とする希土類金属回収方法。
【請求項7】
配管で互いに連結された第1および第2の鉄鋼製の密閉型反応容器と、該第1の密閉型反応容器内に備えたタンタル若しくはモリブデン製の反応容器と、該反応容器内に備えた鉄鋼製のカゴとを有する希土類金属回収装置を使用して、希土類磁石から希土類金属を回収する希土類金属回収方法であって、
成分組成が既知または一部既知の希土類磁石と、前記希土類磁石重量の5〜15倍のマグネシウムを原料として反応容器内のカゴに投入する投入工程と、
前記反応容器内の前記希土類磁石、マグネシウムを加熱して、マグネシウムを溶融し、アルゴン雰囲気において、溶融マグネシウムに浸漬された前記希土類磁石より希土類金属を前記溶融マグネシウムへ抽出する抽出工程と、
前記希土類金属が抽出された残りの磁石を収容した前記カゴを上昇させて、前記反応容器に収容された前記希土類金属を溶解させた溶融マグネシウムから前記磁石を分離する分離工程と、
前記第1の密閉型反応容器へのアルゴン供給を止めて、前記第2の密閉型反応容器を真空引きして、前記希土類金属を溶解させた溶融マグネシウムから前記マグネシウムを気化させることによって、前記希土類金属を回収する希土類金属回収工程と、
前記気化させたマグネシウムを前記第2の密閉型反応容器へ導き、マグネシウムを凝縮または固化させて回収するマグネシウム回収工程と、
を有することを特徴とする希土類金属回収方法。
【請求項8】
請求項に記載の希土類金属回収方法において、
前記抽出工程では、希土類金属抽出反応を650℃以上、および1000℃以下の温度で行うことを特徴とする希土類金属回収方法。
【請求項9】
請求項に記載の希土類金属回収方法において、
前記希土類金属回収工程および前記マグネシウム回収工程では、マグネシウムの気化を、650℃以上、および750℃以下の温度で行うことを特徴とする希土類金属回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類磁石からの希土類金属回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
希土類元素は、蓄電池や発光ダイオード、磁石などのエレクトロニクス製品の性能向上に必要不可欠な材料である。希土類元素の代表的用途である希土類磁石(例えば、RE-Fe-B系磁石。ここでRE(rare earth element)はNd,Prを主成分とし、Dy,Ce等で一部置換された希土類。Fe以外にCo等の遷移元素、Al等の添加元素で一部置換された場合もある)は、希土類元素の持つ強力な磁気異方性を生かした残留磁束密度と保磁力がとても強い強力な磁石であり、通常のOA機器、MRI装置、自動車部品をはじめ、化学プラントにおけるガスの磁場処理装置等、極めて広範囲な用途に応用されている。
【0003】
現在、使用済み製品に搭載されている希土類磁石は通常鉄屑として廃棄されている。しかし、廃棄される希土類磁石には、近年安定調達が懸念されている希土類元素が高濃度含有されているため、希土類磁石からの希土類元素リサイクル技術の確立が求められている。
【0004】
希土類元素の再生方法の背景技術として、溶融金属抽出法がある。マグネシウム(Mg)や銀(Ag)の溶融物は、希土類磁石の主に希土類金属を溶解させ、Fe-B合金を溶解させない性質を有する。この性質を用いてMgやAgを融点以上の温度に加熱することにより、マグネシウムやAgを液体(溶融金属)とし、希土類磁石にこの溶融金属を接触させることにより、磁石から主に希土類金属を溶融金属側へ抽出する方法が溶融金属抽出法である。磁石製造工程で発生する磁石研削屑のリサイクルで適用されている溶媒抽出+溶融塩電解のような湿式プロセスとは異なり、溶融金属抽出法は、酸、または有機溶媒といったものを使用しない乾式プロセスであるので、低環境負荷、低コストの希土類金属回収プロセスとして期待される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Materials Transactions,2003,Vol.44,No.4,p.798−801
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
希土類元素のディスプロシウム(Dy)は、近年はネオジム磁石(Nd-Fe-B系金属間化合物を主成分とする永久磁石)の保磁力を高めるための添加物としての利用が急増しているが、地球上に極めて偏在しており、安定供給の確保に懸念が生じているため、使用量を削減するための技術開発とともに、上記希土類元素リサイクル技術開発が急務となっている。
【0007】
非特許文献1には、溶融金属抽出法を用いた希土類磁石からの希土類金属抽出と、抽出された希土類金属を含むマグネシウムと希土類金属抽出後の希土類磁石の残成分Fe−B合金の分離を同時に実現可能な装置の仕組みが記載されている。しかし、非特許文献1の希土類磁石からの希土類金属分離装置は、希土類磁石からの希土類金属抽出と、抽出された希土類金属を含むマグネシウムと希土類金属抽出後の希土類磁石の残成分Fe−B合金の分離しか行うことができず、抽出された希土類金属を含むマグネシウムから希土類金属を分離する装置を別途設けなければならない。さらに、非特許文献1では、抽出工程での、ネオジム(Nd)の抽出率に関する記載はあるものの、ディスプロシウム(Dy)やプラセオジム(Pr)といった希土類元素に関する記載がない。
【0008】
そこで、本発明は、溶融金属抽出法により希土類磁石から高効率に希土類金属を回収することを可能とする希土類磁石からの希土類金属回収方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明では、希土類磁石から希土類金属を回収する希土類金属回収方法において、希土類金属を有する磁石から、溶融マグネシウムに前記希土類金属を抽出させる抽出工程と、前記希土類金属が抽出された磁石と、前記希土類金属を溶解させた液体のマグネシウムとを分離する分離工程と、前記分離された希土類金属を含む液体のマグネシウムから、前記マグネシウムを気化させることによって、前記希土類金属を回収する希土類金属回収工程と、前記気化させたマグネシウムを凝縮または固化させて回収するマグネシウム回収工程とを含み、前記抽出工程では、投入するマグネシウム重量を、投入する希土類磁石重量の5〜15倍とすることを特徴とするものである。
【0010】
また、上記課題を解決するために本発明の希土類金属回収方法において、前記抽出工程では、タンタルもしくはモリブデン製の反応容器中で行い、またアルゴン雰囲気中で行うことにした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、希土類磁石を出発原料とする希土類金属回収方法を提供することができる。また、希土類磁石からの希土類金属抽出と、抽出された希土類金属を含むマグネシウムと希土類金属抽出後の希土類磁石の残成分Fe-B合金の分離に加えて、抽出された希土類金属を含むマグネシウムからの希土類金属の分離も同時に実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例1〜7に係る希土類金属回収装置の構成図である。
図2A】本発明の実施例1〜7に係る希土類金属回収方法の第一の模式図である。
図2B】本発明の実施例1〜7に係る希土類金属回収方法の第二の模式図である。
図2C】本発明の実施例1〜7に係る希土類金属回収方法の第三の模式図である。
図2D】本発明の実施例1〜7に係る希土類金属回収方法の第四の模式図である。
図2E】本発明の実施例1〜7に係る希土類金属回収方法の第五の模式図である。
図3】実施例1〜7に記載の抽出工程でのNd,Dy,Pr抽出率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る希土類金属回収方法の実施態様を詳細に説明する。なお、実施するための形態を説明するための図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【実施例】
【0014】
本実施例では、希土類磁石から希土類金属を回収する希土類金属回収装置および方法の例を説明する。
【0015】
図1は、本実施例にて使用する希土類金属回収装置の構成図である。
希土類金属回収装置100は、鉄鋼製の密閉型容器101a,101b、タンタルもしくはモリブデン製の反応容器102、密閉型容器101aの上部、下部を加熱する加熱用ヒーター103、鉄鋼製のカゴ104、カゴの上下移動機構105、(真空引き、ガス導入、閉)切替えバルブ106a,106b、フィルター107a,107b、真空ポンプ108a,108b、両密閉型容器を繋ぐ配管部112を保温するシースヒーター109、容器間開閉バルブ110を有する。ここで、密閉型容器101a,101bを鉄鋼製にするのは、マグネシウム(固体)20、およびマグネシウム(液体)21と極めて反応性が低いためである。カゴ104を鉄鋼製とするのも同様の理由である。
【0016】
リサイクルプロセスの最初、タンタルもしくはモリブデン製の反応容器102内には、希土類磁石10およびマグネシウム(固体)20が設置されている。希土類磁石10が鉄鋼製のカゴ104をすり抜けて下方に落下しないように、目開きが希土類磁石10の投入形状よりも小さい鉄鋼製のカゴ104を使用する。
【0017】
図2Aは、本実施例の希土類金属回収方法の一部を示す第一の模式図である。
鉄鋼製のカゴ104の中に希土類磁石10を適当な形状にスライス(表面積を大きくするため、また希土類金属の磁石中の拡散距離を短くするためには薄くスライスする)した原材料、およびマグネシウム(固体)20を投入・設置した。
希土類磁石10は、成分比率がNd 21.2%,Dy 4.16%,Pr 6.00%,Co 0.88%,Cu 0.11%,Al 0.22%,C 0.066%,O 0.52%,B 0.93%,残部Feよりなる希土類磁石を投入原料とした。
マグネシウム(固体)の投入量は、希土類磁石の投入重量に対し、0.5〜40倍の範囲の比率で、図3(a)に示す7通りに変えて投入して、希土類金属回収プロセスを実施して、各希土類金属の抽出率の確認を行なった。マグネシウム(固体)と希土類磁石の各投入重量比ごとに実施例1〜実施例7と呼び、その他の抽出条件は同じにして実施している。
【0018】
希土類磁石とマグネシウム(固体)を投入後、鉄鋼製の両密閉型反応容器101a、101b中を真空ポンプ108aで真空引きした後、切替えバルブ106aを切替えてアルゴンガスを導入し、十分アルゴンガスで置換した。容器間開閉バルブを閉め、密閉型容器101aにはアルゴンガスを供給し続け、アルゴンガス気流中で、加熱用ヒーター103の下側のみを加熱した。
アルゴンガスの排気は、密閉型容器101aに図示していない排気口を設けて排気される。
【0019】
図2Bは、本実施例の希土類金属回収方法の一部を示す第二の模式図である。
マグネシウム(固体)20部分が、1000℃の温度になるように加熱して、マグネシウム(固体)20を溶融させ、マグネシウム(液体)21とし、希土類磁石10をマグネシウム(液体)21に浸した。
【0020】
本実施例の希土類金属回収方法の抽出工程では、希土類金属抽出反応を650℃以上、および1000℃以下の温度で行うのがよい。650℃以上とするのは、マグネシウムの融点が650℃であるからであり、1000℃以下とするのは、抽出工程での希土類磁石からのFeの溶出を極力抑制するためである。
【0021】
図2Cは、本実施例の希土類金属回収方法の一部を示す第三の模式図である。
1000℃の温度で、希土類磁石10をマグネシウム(液体)21に接触させることにより、希土類磁石10中の希土類金属成分がマグネシウム(液体)21側に移動する(抽出される)。その結果、希土類磁石10は、鉄およびホウ素を主成分とする合金11になり、マグネシウム(液体)21は、マグネシウム−希土類金属合金23になる。希土類金属抽出時間は6時間とした。
【0022】
抽出処理後に得られたマグネシウム−希土類金属合金23の一部をサンプリングし、成分分析を実施した。各実施例において、成分分析結果をもとに計算した、Nd,Dy,Prの抽出率(投入された希土類磁石に含まれていた希土類金属のうち、マグネシウム(液体)へ抽出された割合を表わす)を図3(a),(b)に示す。NdとPrは全ての処理条件において、高い抽出率が得られているのに対し、Dyの抽出率はNd,Prの抽出率に比べて低いことが分かる。Dyの抽出率は、投入した磁石重量に対してMg重量が10倍となるまでは、マグネシウム重量を増やすに伴い、上昇したが、それ以上にマグネシウム重量を増やすと低下する傾向を示した。
【0023】
Dyは、Nd,Prと比べて、前記した通り希少価値が極めて高い元素であり、Dyのリサイクル率を最大に高めた希土類金属回収方法が望まれる。
【0024】
従って、本実施例ではサンプル数は7であるが、例えば投入するマグネシウム重量を、希土類磁石重量の10倍近傍を目標とすることが望ましい。多少の誤差が見込まれるので、今回の最大のDy抽出率に対して80%以上のDy抽出率と予測される範囲にあるマグネシウム投入重量である、希土類磁石重量の5〜15倍とすることが望ましい。そのためには、例えば、投入するマグネシウムの量、希土類磁石の量(重量、容積など)の一方または両方を量り、上記の割合になるように投入するマグネシウムの量、希土類磁石の量の一方または両方を調整すればよい。マグネシウム、希土類磁石を自動で投入する場合には、マグネシウム、希土類磁石の計量を自動で調整する機構を装置に設けるとよい。
【0025】
図2Dは、本実施例の希土類金属回収方法の一部を示す第四の模式図である。
前記抽出処理により希土類金属がマグネシウム(液体)に十分に抽出された後、(真空引き、ガス導入、閉)切替えバルブ106aを閉めてアルゴンガスの供給を止めて、カゴの上下移動機構105を作動させ、鉄鋼製のカゴ104および鉄およびホウ素を主成分とする合金11がマグネシウム−希土類金属合金23に触れない位置まで上昇させた。
【0026】
図2Eは、本実施例の希土類金属回収方法の一部を示す第五の模式図である。
容器間開閉バルブ110を開放し、鉄鋼製の両密閉型反応容器101a、101b中を真空ポンプ108bにより真空引きし、次に、左側の密閉型容器101a内のタンタルもしくはモリブデン製の反応容器102中のマグネシウム−希土類金属合金23を660℃の温度になるように加熱した。またマグネシウム−希土類金属合金23から気化したマグネシウム(気体)22が右側の密閉型容器101bへ移動する前に、左側の密閉型容器101a内上部や密閉型容器101a上部の配管内部112に再付着しないように、配管部112をシースヒーター109により加熱した。これにより、タンタルもしくはモリブデン製の反応容器102中のマグネシウム−希土類金属合金23中のマグネシウムのみが気化し、マグネシウム(気体)22となって、右側の鉄鋼製の密閉型反応容器101b側へ移動する。移動したマグネシウム(気体)22は、冷却されることにより、マグネシウム(液体)21もしくはマグネシウム(固体)20となり、密閉型反応容器101bの内壁面、および底部に回収される。
【0027】
ここで、マグネシウム−希土類金属合金23の加熱温度を660℃としたのはマグネシウムの融点温度である650℃以上であり、また、残留する希土類金属とタンタルもしくはモリブデン製の反応容器102との固着力を低減し、回収を容易にするため、融点直上の温度とするのが好ましいためである。この加熱温度は、上記した理由を満たす範囲で、650℃以上、および750℃以下の温度で行うのがよい。
マグネシウム−希土類金属合金23中のマグネシウム量が減少し続けると、マグネシウム−希土類金属合金23は固化するが、マグネシウムは昇華により気化される。右側の(真空引き、ガス導入、閉)切替えバルブ106bと真空ポンプ108bの間にフィルター107bを設置することにより、マグネシウムが真空ポンプ側に行くことを防ぐことができる。
【0028】
最終的に、タンタルもしくはモリブデン製の反応容器102中から希土類金属12、鉄鋼製のカゴ104内から鉄およびホウ素を主成分とする合金11、右側の鉄鋼製の密閉型反応容器101b中からマグネシウム(固体)20をそれぞれ回収した。右側の鉄鋼製の密閉型反応容器101b中のマグネシウム(固体)20は希土類磁石をリサイクル処理する際に再利用することができる。
【0029】
本実施例1〜7の結果、いずれの条件においても、タンタルもしくはモリブデン製の反応容器102内に希土類金属12として、Nd,Pr,Dyからなるスポンジ状の希土類金属が得られた。具体的には、純度95.0%以上の希土類金属を得た。回収された希土類金属は各実施例において、図3(a)に記載した各希土類金属の抽出率×投入量に相当する収量が得られた。各希土類元素を分離して得るにはかなりコストを要するが、回収した希土類金属合金はNd-Fe-B磁石製造用の希土類金属原料として使用されるため、分離する必要は無い。
なお、回収した希土類金属合金中に微量のFe不純物が残留していたが、上記の用途に使用することから、特に問題となることはない。
【0030】
以上、説明した本発明の希土類金属回収方法において、前記磁石は、希土類磁石製造工程で発生するスクラップでも、使用済製品から取り出した廃磁石でもよい。使用済製品としては、ハードディスクドライブ装置、家電製品・産業製品のモーター、コンプレッサー、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車のモーター、自動車の電動パワーステアリング用モーターなどでよい。
【0031】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0032】
10 希土類磁石
11 鉄およびホウ素を主成分とする合金
12 希土類金属
20 マグネシウム(固体)
21 マグネシウム(液体)
22 マグネシウム(気体)
23 マグネシウム−希土類金属合金
100 希土類金属回収装置
101a,101b 鉄鋼製の密閉型容器
102 タンタルもしくはモリブデン製の反応容器
103 加熱用ヒーター
104 鉄鋼製のカゴ
105 カゴの上下移動機構
106a,106b (真空引き、ガス導入、閉)切替えバルブ
107a,107b フィルター
108a,108b 真空ポンプ
109 シースヒーター
110 容器間開閉バルブ
112 配管部
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3