(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明を適用した撹拌反応装置の構成例の要部構成を透視して示した斜視図である。
【
図2】撹拌反応装置のエアレーション管の設置位置を示す要部縦断正面図である。
【
図3】撹拌反応装置の解析モデルを示す図であり、(A)は解析モデルの平面図、(B)は解析モデルを透視して示した正面図である。
【
図4】解析モデルにおける反応容器内のスラリーの流線を示す図(参考図としてカラー図面を提出する。)であり、(A)は空気流量3880kg/hの場合、(B)は空気流量2310kg/hの場合、(C)は空気流量1500kg/hの場合をそれぞれ示している。
【
図5】解析モデルにおけるエアレーション管の吹出口からの空気の流線を示す図で(参考図としてカラー図面を提出する。)であり、(A)は空気流量3880kg/hの場合、(B)は空気流量2310kg/hの場合、(C)は空気流量1500kg/hの場合をそれぞれ示している。
【
図6】解析モデルにおける0.5mmφ,1mmφ,2mmφ,4mmφ,8mmφの各気泡径の体積分率を示す図(参考図としてカラー図面を提出する。)であり、(A)は空気流量3880kg/hの場合、(B)は空気流量2310kg/hの場合、(C)は空気流量1500kg/hの場合をそれぞれ示している。
【
図7】解析モデルにおけるホールドアップ量を示す図(参考図としてカラー図面を提出する。)であり、(A)は空気流量3880kg/h、空気流量2310kg/h、空気流量1500kg/hでのホールドアップ量を従来のエアノズル3本と同じホールドアップ量と比較して示し、(B)は空気流量とホールドアップ量の関係を示している。
【
図8】本発明を適用した撹拌反応装置の他の構成例の要部構成を透視して示した斜視図である。
【
図9】撹拌反応装置の他の構成例の解析モデルにおける空気流入面からの空気の流線を示図(参考図としてカラー図面を提出する。)であり、(A)は反応容器を透視して空気流入面からの空気の流線を示した斜視図、(B)は反応容器を透視して空気の流線を示した上面図、(C)は反応容器を透視して空気の流線を示した側面図である。
【
図10】撹拌反応装置の他の構成例の解析モデルに対する比較例の要部構成を透視して示した図であり、(A)は撹拌反応装置の上面図、(B)は撹拌反応装置の斜視図である。
【
図11】撹拌反応装置の比較例の解析モデルにおける空気流入面からの空気の流線を示図(参考図としてカラー図面を提出する。)であり、(A)は反応容器を透視して空気流入面からの空気の流線を示した斜視図、(B)は反応容器を透視して空気の流線を示した上面図、(C)は反応容器を透視して空気の流線を示した側面図である。
【
図12】高圧酸浸出法によるニッケル酸化鉱石プラントの工程図である。
【
図13】ニッケル酸化鉱石プラントの無害化工程における最終中和処理設備の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
本発明は、例えば
図1に示すような構成の撹拌反応装置100に適用される。
【0019】
この撹拌反応装置100は、縦型円筒形状の反応容器110と、反応容器110内に設けられた
平板状の撹拌羽根120と、反応容器110内の底部に設けられ
、上記反応容器の周壁に向かう水平方向に気体を吐出するための多数の吹出口131を有する円環状のエアレーション管130とを備える。
【0020】
エアレーション管130は、
図2に示すように、多数の吹出口131の高さ位置hを撹拌羽根120の高さ位置Hと同じかまたはそれよりも低くし、
上記吹出口から吐出する気泡の吐出速度をv、浮力による気泡の上昇速度をvair、上記反応容器の半径をDとして、次の(1)式を満たす範囲の半径Rを有する円環状に形成されている。
【0022】
なお、縦型円筒形状の反応容器110内には、3枚のバッフル板151が配設されている。
【0023】
そして、この撹拌反応装置100は、反応容器110内で反応液を撹拌羽根120の回転により撹拌しながら、エアレーション管130の多数の吹出口130から反応容器110内に気体を導入してエアレーションするようになっている。
【0024】
このような構成の撹拌反応装置100において、反応容器110内で反応液の流れは、反応容器110の周壁に沿って上昇する流れの幅H’が、撹拌羽根120の高さHにほぼ等しい。
【0025】
撹拌羽根120の高さHより低い位置に設置された吹出口130から出た気泡は、撹拌羽根120からの反応液の水平な流れに沿って移動している間に浮力で上昇するが、反応液の上昇流の位置に達する間に高さHを超えてしまうと、上昇流に乗ることができなくなる。
【0026】
ここで、吐出速度をv、吹出口130の高さをh、撹拌羽根120の高さをH、浮力による気泡の上昇速度をvair、上記エアレーション管130の半径をR、反応容器110の半径をDとすると、壁からHだけ離れた位置まで到達する時間tの間に上昇する高さxは、次の(2)式にて示される。
【0028】
そして、吹出口130から出た気泡が上昇したときの高さxがHよりも低くなるためには、次の(3)式を満たす必要がある。
【0030】
そこで、吹出口131が設けられたエアレーション管130は、次の(4)式から、(1)式の関係を満たす半径Rの円環状に形成してある。
【0032】
ここで、気泡の運動方程式は、浮力と抵抗力を用いて、次の(5)式で表される。
【0034】
また、気泡の速度vの変化dv/dtは、次の(6)式で表される。
【0036】
気泡の速度vは、初期は加速度αで上昇し、時間が経過すると一定速度になる。
【0037】
そして、dv/dt=0から気泡の上昇速度vは、次の(7)式で表される。
【0039】
このような構成の撹拌反応装置100では、反応容器110内の底部に設けられた多数の吹出口131を有する円環状のエアレーション管130を備えるので、反応容器110内に流入させる気泡を小さく分裂させて気泡の総面積を大きくすることにより、その気泡に反応液を効率的に且つ効果的に接触させることができる。
【0040】
ここで、この構成の撹拌反応装置100において、反応容器110のサイズを直径8680mm、高さ10400mmとし、撹拌羽根120のサイズを直径3251mm、底面からの高さ2500mmとし、エアレーション管130の中心と反応容器110の底面との間隔を400mmとし、エアレーション管130の外表面とバッフル板151との間隔を100mmとし、エアレーション管130の中心径を6311mmとし、エアレーション管130の底面部の直径20mmの吹出口131を192個設けた
図3の(A),(B)に示す構成の解析モデルについて、次の解析条件にて、反応容器110内のスラリーの流れ、空気の流れ、及び各気泡径の体積分率を解析した。その結果、
図4〜
図6に示すような結果が得られた。
【0041】
すなわち、連続相は、スラリー密度:1350[kg/m
3]、粘度:4.899E−4[Pa・s]、分散相は、空気密度:1.185[kg/m
3]、粘度:1.831E−5[Pa・s]、気泡の合体・分裂を考慮し、気泡径グループを0,1,2,4,8mmφとした流体について、空気の流入速度:17.6m/s(流入量3880kg/h)、10.5m/s(流入量2310kg/h)、6.8m/s(流入量1500kg/h)、流入気泡径:8mmφ、攪拌翼回転数:37.4rpmの境界条件にて解析を行った。なお、空気以外の流入は考慮していない。
【0042】
図3の(A)は撹拌反応装置100の解析モデル平面図、
図3の(B)は解析モデルを透視して示した正面図である。
【0043】
また、
図4は、上述の解析モデルにおける反応容器110内での撹拌羽根120領域底面部からのスラリーの流線を示しており、(A)は空気流量3880kg/hの場合、(B)は空気流量2310kg/hの場合、(C)は空気流量1500kg/hの場合をそれぞれ示している。
【0044】
また、
図5は、上述の解析モデルにおける反応容器110内でのエアレーション管130の吹出口131からの空気の流線を示しており、(A)は空気流量3880kg/hの場合、(B)は空気流量2310kg/hの場合、(C)は空気流量1500kg/hの場合をそれぞれ示している。
【0045】
また、
図6は、0.5mmφ,1mmφ,2mmφ,4mmφ,8mmφの各気泡径の体積分率を示しており、(A)は空気流量3880kg/hの場合、(B)は空気流量2310kg/hの場合、(C)は空気流量1500kg/hの場合をそれぞれ示している。
【0046】
そして、
図7の(A)に、上述の解析モデルにおいて、空気流量を3880kg/h、2310kg/h、1500kg/hとしたときのホールドアップ量を従来のエアノズル3本と同じホールドアップ量と比較した結果を示す。また、
図7の(B)に、上述の解析モデルにおける空気流量とホールドアップ量の関係を示す。この
図7の(A)及び(B)に示すように、上述の解析モデルにおいて、エアレーション管130を用いて空気を均一に流入させた場合、空気流量を約2300kg/hにすると、従来のエアノズル3本と同じホールドアップ量となることが分かる。
【0047】
また、他の実施形態として、撹拌反応装置100では、多数の吹出口131を有する円環状のエアレーション管130を反応容器110内の底部に設けるようにしたが、
図8に示す撹拌反応装置200のように、それぞれ多数個の吹出口131を有するエアノズル132を円環状のエアレーション管130に底部に多数個配設するようにしてもよい。
【0048】
なお、この撹拌反応装置200における他の構成要素は、上記撹拌反応装置100と同じなので、同一構成要素には同一符号を
図8中に付し、詳細な説明を省略する。
【0049】
この撹拌反応装置200において、反応容器110のサイズを直径17410mm、高さ7200mmとし、撹拌羽根120のサイズを直径5420mm、底面からの高さ1200mmとし、それぞれ直径15mmの吹出口131を17個設けたエアノズル132をエアレーション管130に20本配設し、エアノズル132位置における半径を6430mmとし、エアノズル132反応容器110の底面との間隔を110mmとし、エアレーション管130の外表面とバッフル板151との間隔を100mmとし、エアレーション管130の中心半径を6311mmとした解析モデルについて、次の解析条件にて、反応容器110内の空気の流れを解析した。その結果、
図9に示すような結果が得られた。
【0050】
すなわち、連続相は、スラリー密度:1030[kg/m
3]、粘度:0.01[Pa・s]、分散相は、空気密度:1.185[kg/m
3]、粘度:1.831E−5[Pa・s]の流体について、空気の流入量:20本トータルで5314Nm
3/h、25℃、流入気泡径:4mmφ、攪拌翼回転数:25rpmの境界条件にて解析を行った。
【0051】
図9は、撹拌反応装置200の解析モデルにおける反応容器110内での撹拌羽根120領域底面部の空気流入面からの空気の流線を示しており、(A)は反応容器110を透視して空気の流線を示した斜視図、(B)は反応容器110を透視して空気の流線を示した上面図、(C)は反応容器110を透視して空気の流線を示した側面図である。
【0052】
上述した構成において、流体解析から求めた撹拌羽根120からの吐出した流れによるエアノズル132付近の流速は約1.5m/sとなった。このとき、上記(1)式の右辺の値は5072mmとなり、(1)式を満たしており、エアノズル132からの空気は、エアレーション管130よりも外側に流れた後、ほぼ垂直に上昇しており、反応容器110内で軸流を形成している。
【0053】
これに対し、
図10に示す撹拌反応装置300のように、反応容器110のサイズを直径17410mm、高さ7200mmとし、撹拌羽根120のサイズを直径5420mm、底面からの高さ1200mmとし、それぞれ直径15mmの吹出口131を17個設けたエアノズル132をエアレーション管130に20本配設し、エアノズル132位置における半径を3210mm(撹拌羽根120外端から500mm外側)とし、エアノズル132反応容器110の底面との間隔を110mmとし、エアレーション管130の外表面とバッフル板151との間隔を100mmとし、エアレーション管130の中心半径を6311mmとした解析モデルを比較例として、上記解析条件にて、反応容器110内の空気の流れを解析したところ、
図11に示すような結果であった。
【0054】
図11は、撹拌反応装置300の解析モデルにおける反応容器110内での撹拌羽根120領域底面部の空気流入面からの空気の流線を示しており、(A)は反応容器110を透視して空気の流線を示した斜視図、(B)は反応容器110を透視して空気の流線を示した上面図、(C)は反応容器110を透視して空気の流線を示した側面図である。
【0055】
この撹拌反応装置300の解析モデルの場合、
R=3210<5720
であって、エアノズル132からの空気は、周囲に向かって流れず、一部に集まってほぼ垂直に上昇するようになっており、槽内の空気の分布が均一になっていない。
【0056】
ここで、撹拌反応装置100,200は、例えば、金属製錬プロセスにおいて排出される、重金属を含む工程液に対する中和処理に用いることができる。具体的には、縦型円筒形の反応容器110内で、重金属元素として、2価の鉄イオン、2価のマンガンイオンのうち、少なくとも1種類のイオンを含む水溶液を撹拌羽根120の回転により撹拌しながら、エアレーション管130の多数の吹出口131から酸化用の気体を導入してエアレーションして、その水溶液を中和剤で中和させる中和処理を行い、重金属を水酸化物として固体化させて除去する重金属除去装置として用いることができる。
【0057】
例えば、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プラントにおいては、
図12に示すように、前処理工程(1)と、浸出工程(2)と、固液分離工程(3)と、中和工程(4)と、脱亜鉛工程(5)と、硫化工程(6)と、無害化工程(7)とを含む製錬プロセスが行われる。なお、ここでは、ニッケル酸化鉱石から高圧酸浸出法(HPAL法)によりニッケル・コバルト混合硫化物を回収する方法を例に挙げる。
【0058】
前処理工程(1)では、ニッケル酸化鉱石を解砕分級してスラリーとする。
【0059】
浸出工程(2)では、前処理工程(1)で得られたスラリーに硫酸を添加し、220〜280℃で撹拌して高温加圧酸浸出し、浸出スラリーを得る。
【0060】
固液分離工程(3)では、浸出工程(2)で得られた浸出スラリーを固液分離して、ニッケル及びコバルトを含む浸出液(以下、「粗硫酸ニッケル水溶液」という。)と浸出残渣とを得る。
【0061】
中和工程(4)では、固液分離工程(3)で得られた粗硫酸ニッケル水溶液を中和する。
【0062】
脱亜鉛工程(5)では、中和工程(4)で中和した粗硫酸ニッケル水溶液に硫化水素ガスを添加して亜鉛を硫化亜鉛として沈殿除去する。
【0063】
硫化工程(6)では、脱亜鉛工程(5)で得られた脱亜鉛終液に硫化水素ガスを添加してニッケル・コバルト複合硫化物とニッケル貧液を得る。無害化工程(7)では、固液分離工程(3)で発生した浸出残渣と、硫化工程(6)で発生したニッケル貧液とを無害化する。
【0064】
この製錬プロセスにより、ニッケル酸化鉱石からニッケル及びコバルトを回収した後の廃液(硫化工程後のニッケル貧液)は、ダムへ廃棄されるが、液のpHは低く、また重金属を含むものであるため、無害化工程(7)において中和処理(最終中和処理)が施される。この無害化工程(7)においては、例えば
図13に示すような撹拌槽を直列に4段接続した最終中和処理設備に貧液スラリーが収容され、石灰石と消石灰が中和剤として添加されて中和処理が施される。
【0065】
投入される貧液スラリーは、pH2程度であり、このスラリーに対して、pHが低い始めの段階ではCaCO
3を添加投入し、後半ではCa(OH)
2を投入添加して中和し、最終的にpH9程度にまで上げて、重金属イオンを水酸化物の沈殿とする。このとき、中和処理においては、貧液中の重金属イオンを酸化するために、中和処理槽内に気体を導入して重金属イオンを酸化するようにしている。すなわち、スラリー中のFe、Mn、Mgやその他微量金属(Ni,Co,Fe,Al,Cr)を効率的に沈澱させるために、気体排出(エアレーション)することによって重金属イオン価数を上げるようにしている。これにより、貧液中の金属含有量を0.0n〜0.ng/lから0.001g/l(Mg以外)程度にまで下げることができる。
【0066】
上述のように、ニッケルの製錬プロセスにおける無害化工程では、貧液流の重金属を水酸化物として固体化させて除去する最終中和処理を施すことにより、固液分離工程で発生した浸出残渣と、硫化工程で発生したニッケル貧液とを無害化して廃棄する。このとき、この最終中和処理において、反応処理装置100又は反応処理装置200を重金属除去装置として用いて処理し、重金属を水酸化物として固体化させて除去する。
【0067】
すなわち、硫化工程から排出された貧液が、反応処理装置100又は反応処理装置200の縦型円筒形の反応容器110に装入される。
【0068】
そして、反応容器110内で、重金属イオンを含む貧液を撹拌羽根120の回転により撹拌しながら、円環状のエアレーション管130の多数の吹出口131から酸化用の気体を吹き込むエアレーションを行って中和処理を施す。
【0069】
この反応処理装置100又は反応処理装置200を用いた重金属除去装置では、反応容器110内の底部に設けられた多数の吹出口131を有する円環状のエアレーション管130を介してエアレーションを行うことにより、反応容器110内に流入させる気泡を小さく分裂させて気泡の総面積を大きくすることができるので、重金属イオンを含む水溶液を多くの気泡に接触させることができ、高いエアレーション効果を得ることができる。すなわち、反応容器110内に供給された酸化用の気体は、供給された直後から中和槽底面に分散された状態となるため、重金属イオンを含む水溶液の全体に接触して、その重金属イオンを効率的に酸化させることができる。また、2価の重金属イオンよりも3価の重金属イオンの方が、溶液中の重金属濃度を1mg/l以下に要するpH値が低いため、このように効率的に重金属を酸化させることができることにより、低いpHでそれら重金属の水酸化物沈殿を形成させることができ、中和処理に用いる中和剤の使用量を効果的に低減させることができる。
【0070】
なお、供給する酸化用の気体としては、液中で気泡を維持し、すなわち液中に容易には溶け込まない期待であれば特に限定されるものではないが、空気を用いることがコスト面で好ましい。