特許第5942849号(P5942849)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5942849
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】二次電池用非水電解液および二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0569 20100101AFI20160616BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20160616BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20160616BHJP
【FI】
   H01M10/0569
   H01M10/0568
   H01M10/052
【請求項の数】14
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2012-525416(P2012-525416)
(86)(22)【出願日】2011年7月20日
(86)【国際出願番号】JP2011066487
(87)【国際公開番号】WO2012011507
(87)【国際公開日】20120126
【審査請求日】2014年3月4日
(31)【優先権主張番号】特願2010-164067(P2010-164067)
(32)【優先日】2010年7月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(72)【発明者】
【氏名】小野崎 祐
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 真男
【審査官】 赤樫 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−093572(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/133899(WO,A1)
【文献】 特開2008−218387(JP,A)
【文献】 特開2004−172117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩(I)と溶媒(II)とを含む電解液であり、
前記溶媒(II)が、下式(1)で表される化合物および下式(2)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(II−1)と下式(3A)で表される化合物(II−2A)と炭素−炭素不飽和結合を有さない環状カーボネート化合物(II−3)を含み、
前記化合物(II−2A)の含有量が、前記溶媒(II)の総体積に対して5〜30体積%であり、
前記リチウム塩(I)がLiPFを、リチウム塩(I)の全量に対して40質量%以上含有し、
電解液中に含まれるリチウム塩(I)由来のリチウム原子のモル数(NLi)に対する電解液中に含まれる化合物(II−2A)由来のエーテル性酸素原子のモル数(N)との比(N/NLi)が1を越え6以下であることを特徴とする二次電池用非水電解液。
【化1】
【化2】
(ただし、式中、Rは炭素数1〜10のフッ素化アルキル基、または、炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜10のフッ素化アルキル基であり、は炭素数1〜10のフッ素化アルキル基である。
Xは炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数1〜5のフッ素化アルキレン基、炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜5のアルキレン基、または炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜5のフッ素化アルキレン基である。
およびRはそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基、またはRとRが連結して形成した炭素数1〜10のアルキレン基である。)
【請求項2】
前記N/NLiが1.2〜3.8である、請求項1に記載の二次電池用非水電解液。
【請求項3】
前記電解液中に含まれる、リチウム塩(I)由来のリチウム原子の総モル数(NLi)に対する化合物(II−3)のモル数(NII−3)の比(NII−3/NLi)が、0.1〜5である、請求項1または2に記載の二次電池用非水電解液。
【請求項4】
前記電解液中に含まれる、リチウム塩(I)由来のリチウム原子の総モル数(NLi)に対する、前記化合物(II−2A)由来のエーテル性酸素原子のモル数(N)と化合物(II−3)のモル数(NII−3)との和(N+NII−3)の比[(N+NII−3)/NLi]が2〜6である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の二次電池用非水電解液。
【請求項5】
前記電解液中に含まれる、リチウム塩(I)由来のリチウム原子の総モル数(NLi)に対する化合物(II−3)の総モル数(NII−3)の比(NII−3/NLi)が、0.1〜5である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の二次電池用非水電解液。
【請求項6】
前記溶媒(II)中の前記化合物(II−1)の量が、溶媒(II)の総体積に対して40〜85体積%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の二次電池用非水電解液。
【請求項7】
前記溶媒(II)中の前記化合物(II−2A)の量が、電解液の総体積に対して6〜25体積%である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の二次電池用非水電解液。
【請求項8】
前記溶媒(II)中の前記化合物(II−3)の量が、溶媒(II)の総体積に対して5〜30体積%である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の二次電池用非水電解液。
【請求項9】
前記電解液の総質量に対する前記リチウム塩(I)のモル量が0.1〜3.0mol/Lである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の二次電池用非水電解液。
【請求項10】
前記化合物(II−1)が、CFCHOCFCFH、CHFCFCHOCFCFH、CFCFCHOCFCHF、CFCHOCFCHFCF、またはCHFCFCHOCFCFHCFである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の二次電池用非水電解液。
【請求項11】
前記化合物(II−2A)におけるRおよびRが、それぞれ独立にメチル基またはエチル基である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の二次電池用非水電解液。
【請求項12】
前記化合物(II−3)が、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、または4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の二次電池用非水電解液。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の二次電池用非水電解液を電解液として用いたリチウムイオン二次電池。
【請求項14】
リチウムイオンを吸蔵および放出できる材料、金属リチウムまたはリチウム合金からなる負極と、リチウムイオンを吸蔵および放出できる材料からなる正極と、請求項1〜12のいずれか一項に記載の二次電池用非水電解液とを有する、リチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用非水電解液および二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池用の非水電解液の溶媒としては、一般的にリチウム塩を良好に溶解することで高いリチウムイオン伝導度を発現し、また広い電位窓を持つという点から、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート等のカーボネート系化合物が広く用いられてきた。
【0003】
非水電解液としての性能を落とさずに不燃性(難燃性)を高める方法としては、フッ素系溶媒を添加することが提案されている(特許文献1〜3)。しかし、フッ素系溶媒は、電解質塩の溶解能が低く、レート特性が悪くなる傾向にある。
【0004】
一方、CFSON(Li)SOCF、およびFSON(Li)SOF等のリチウム塩は、グライム系溶媒のエーテル性酸素原子と強く相互作用し、安定な1:1錯体を形成する。該錯体は、熱分析等の結果からはあたかも単一のイオン種としての挙動を示し、バーナーによる加熱によっても全く着火しないことが報告されている(非特許文献1、2)。また、リチウム塩とグライム系溶媒との錯体を電解液として用いる例として、LiBFと1−エトキシ−2−メトキシエタンからなる非水電解液(特許文献4)、(CFSONLiとテトラグライムからなる非水電解液(特許文献5)が示されている。
【0005】
しかし、非特許文献1および2に記載されたリチウム塩とグライム系溶媒との1:1錯体を含有する電解液は、本発明者等が評価したところ、粘度が高く、伝導度も低いことから実用に適していなかった。また、特許文献4および5に記載された非水電解液についても同様に、伝導度が低く実用に適していなかった。
そこで、該非水電解液の粘度を低下させ、伝導度を向上させるために、LiPFや環状パーフルオロスルフォンイミド塩等のリチウム塩とグライム系溶媒からなるグライム錯体を、ハイドロフルオロエーテルに溶解させた電解液が報告されている(特許文献6)。しかし、特許文献6の非水電解液を用いた二次電池は、高レート(電流量が多い)での充放電(たとえば、2.0Cでの充放電。ただし、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表す。)を行った場合に、エネルギー密度および電池容量が低下することがある。また、たとえば4.5Vといった高電圧下において、サイクル特性が低下することがある。
【0006】
また、フッ素系溶媒を使用した電解液に、LiPF等の電解質塩の溶解性を向上させる目的で、環状非フッ素カーボネートと鎖状非フッ素エーテル類を添加した電解液が報告されている(特許文献7)。しかし、特許文献7に記載されている電解液は、高レートでの充放電において、エネルギー密度および電池容量が低下することがある。また、たとえば4.5Vといった高電圧下において、サイクル特性が低下することがある。さらに難燃性が低下することもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平08−037024号公報
【特許文献2】特開2001−052737号公報
【特許文献3】特開平11−307123号公報
【特許文献4】特許第4405779号公報
【特許文献5】特開2009−245911号公報
【特許文献6】国際公開第2009/133899号
【特許文献7】特開2008−218387号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】2006年第47回電池討論会講演要旨集 1F06
【非特許文献2】2008年第75回電気化学会講演要旨集 3D09
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、長期の難燃性を有し、かつ特に高電圧条件下でのサイクル特性、および高レート充放電特性に優れた二次電池用非水電解液、および該二次電池用非水電解液を用いた二次電池の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。
[1]リチウム塩(I)と溶媒(II)とを含む電解液であり、
前記溶媒(II)が、下式(1)で表される化合物および下式(2)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(II−1)と下式(3A)で表される化合物(II−2A)と炭素−炭素不飽和結合を有さない環状カーボネート化合物(II−3)を含み、
前記化合物(II−2A)の含有量が、前記溶媒(II)の総体積に対して5〜30体積%であり、
前記リチウム塩(I)がLiPFを、リチウム塩(I)の全量に対して40質量%以上含有し、
電解液中に含まれるリチウム塩(I)由来のリチウム原子のモル数(NLi)に対する電解液中に含まれる化合物(II−2A)由来のエーテル性酸素原子のモル数(N)との比(N/NLi)が1を越え6以下であることを特徴とする二次電池用非水電解液。
【化1】
【化2】
(ただし、式中、Rは炭素数1〜10のフッ素化アルキル基、または、炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜10のフッ素化アルキル基であり、は炭素数1〜10のフッ素化アルキル基である。
Xは炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数1〜5のフッ素化アルキレン基、炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜5のアルキレン基、または炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜5のフッ素化アルキレン基である。
およびRはそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基、またはRとRが連結して形成した炭素数1〜10のアルキレン基である。)
【0011】
[2]前記N/NLiが1.2〜3.8である、[1]に記載の二次電池用非水電解液。
[3]前記電解液中に含まれる、リチウム塩(I)由来のリチウム原子の総モル数(NLi)に対する化合物(II−3)のモル数(NII−3)の比(NII−3/NLi)が、0.1〜5である、[1]または[2]に記載の二次電池用非水電解液。
[4]前記電解液中に含まれる、リチウム塩(I)由来のリチウム原子の総モル数(NLi)に対する、前記化合物(II−2A)由来のエーテル性酸素原子のモル数(N)と化合物(II−3)のモル数(NII−3)との和(N+NII−3)の比[(N+NII−3)/NLi]が2〜6である、[1]〜[3]のいずれかに記載の二次電池用非水電解液。
[5]前記電解液中に含まれる、リチウム塩(I)由来のリチウム原子の総モル数(NLi)に対する化合物(II−3)の総モル数(NII−3)の比(NII−3/NLi)が、0.1〜5である、[1]〜[4]のいずれかに記載の二次電池用非水電解液。
[6]前記溶媒(II)中の前記化合物(II−1)の量が、溶媒(II)の総体積に対して40〜85体積%である、[1]〜[5]のいずれかに記載の二次電池用非水電解液。
[7]前記溶媒(II)中の前記化合物(II−2A)の量が、電解液の総体積に対して6〜25体積%である、[1]〜[6]のいずれかに記載の二次電池用非水電解液。
[8]前記溶媒(II)中の前記化合物(II−3)の量が、溶媒(II)の総体積に対して5〜30体積%である、[1]〜[7]のいずれかに記載の二次電池用非水電解液。
【0012】
[9]前記電解液の総質量に対する前記リチウム塩(I)のモル量が0.1〜3.0mol/Lである、[1]〜[8]のいずれかに記載の二次電池用非水電解液。
[10]前記化合物(II−1)が、CFCHOCFCFH、CHFCFCHOCFCFH、CFCFCHOCFCHF、CFCHOCFCHFCF、またはCHFCFCHOCFCFHCFである、[1]〜[9]のいずれかに記載の二次電池用非水電解液。
[11]前記化合物(II−2A)におけるRおよびRが、それぞれ独立にメチル基またはエチル基である、[1]〜[10]のいずれかに記載の二次電池用非水電解液。
[12]前記化合物(II−3)が、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、または4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンである、[1]〜[11]のいずれかに記載の二次電池用非水電解液。
【0013】
[13]前記[1]〜[12]のいずれかに記載の二次電池用非水電解液を電解液として用いたリチウムイオン二次電池。
14]リチウムイオンを吸蔵および放出できる材料、金属リチウムまたはリチウム合金からなる負極と、リチウムイオンを吸蔵および放出できる材料からなる正極と、前記[1]〜[12]のいずれかに記載の二次電池用非水電解液とを有する、リチウムイオン二次電池。
【発明の効果】
【0014】
本発明の二次電池用非水電解液を使用すれば、長期の難燃性を有し、かつ特に高電圧条件下でのサイクル特性、および高レート充放電特性に優れた二次電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】例19および例20におけるエネルギー密度維持率の評価結果を示したグラフである。
図2】例19における各放電レートでの放電時の放電容量−電圧曲線を示したグラフである。
図3】例20における各放電レートでの放電時の放電容量−電圧曲線を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<二次電池用非水電解液>
本発明の二次電池用非水電解液(以下、単に「非水電解液」という。)は、後述するリチウム塩(I)と溶媒(II)とを含む電解液であり、前記溶媒(II)は化合物(II−1)、化合物(II−2)および化合物(II−3)を含有する。非水電解液とは、水を実質的に含まない溶媒を用いた電解液であり、仮に水を含んでいたとしてもその水分量が該非水電解液を用いた二次電池の性能劣化が見られない範囲の量である電解液である。かかる非水電解液中に含まれうる水分量は、電解液の総質量に対して500質量ppm以下であることが好ましく、100質量ppm以下であることがより好ましく、50質量ppm以下であることが特に好ましい。水分量の下限値は、0質量ppmである。
以下、本明細書中では、特に説明しない限り式(1)で表される化合物を化合物(1)と示し、他の式についても同様に示す。
【0017】
[リチウム塩(I)]
リチウム塩(I)は、非水電解液中で解離してリチウムイオンを供給する電解質である。リチウム塩(I)としては、電解液の電解質用途に用いることができるものであれば特に制限なく使用することができる。
具体的には、リチウム塩(I)としては、LiPF、下記化合物(5)、(FSONLi、(CFSONLi、(CFCFSONLi、LiClO、下記化合物(6)、下記化合物(7)、およびLiBFが好ましく、LiPF、LiBFおよび化合物(5)がより好ましい。
これらの中でも、リチウム塩(I)としては、LiPFを必須とするリチウム塩を使用することがより好ましい。リチウム塩(I)として、LiPFを必須とするリチウム塩を使用する場合には、リチウム塩(I)に含有されるLiPFは、リチウム塩(I)の全量において40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが最も好ましい。LiPFを単独で使用することも好ましい。また、LiPFを必須とする場合に、併用するリチウム塩としては、化合物(5)(特にkが2である化合物(5))、LiBF、化合物(6)が好ましい。
また、その他の好ましい態様としては、LiBFの単独での使用、化合物(5)の1種または2種以上での使用、LiBFと化合物(5)の併用が挙げられる。
【0018】
また、他のリチウム塩を併用する例としては、たとえば、LiPFと(FSONLiの併用、LiPFと(CFSONLiの併用、LiPFと(CFCFSONLiの併用、LiPFと化合物(7)の併用、LiPFとLiClOの併用、LiPFと化合物(5)と(FSONLiの併用、LiBFと(FSONLiの併用、LiBFと(CFSONLiの併用、LiBFと(CFCFSONLiの併用、LiBFと化合物(6)の併用、LiBFと化合物(7)の併用、LiBFとLiClOの併用、化合物(5)と(FSONLiの併用、化合物(5)と(CFSONLiの併用、化合物(5)と(CFCFSONLiの併用、化合物(5)と化合物(6)の併用、化合物(5)と化合物(7)の併用、化合物(5)とLiClOの併用、LiPFとLiBFと(FSONLiの併用、LiPFとLiBFと(CFSONLiの併用、LiPFとLiBFと(CFCFSONLiの併用、LiPFとLiBFと化合物(6)の併用、LiPFとLiBFと化合物(7)の併用、LiPFとLiBFとLiClOの併用、LiPFと化合物(5)と(FSONLiの併用、LiPFと化合物(5)と(CFSONLiの併用、LiPFと化合物(5)と(CFCFSONLiの併用、LiPFと化合物(5)とLiClOの併用、等が挙げられる。
【0019】
【化4】
【0020】
ただし、前記化合物(5)におけるkは1〜5の整数である。
化合物(5)としては、たとえば、下記化合物(5−1)〜(5−4)が挙げられる。本発明の非水電解液は、伝導度の高い非水電解液が得られやすい点から、化合物(5)を使用する場合には、kが2の化合物(5−2)を必須とすることが好ましい。
化合物(5)を使用する場合の、化合物(5)の全量における化合物(5−2)の含有量は、50質量%以上が好ましく、化合物(5)の全量を化合物(5−2)とすることがより好ましい。
【0021】
【化5】
【0022】
非水電解液中のリチウム塩(I)の含有量は、特に限定されないが、0.1〜3.0mol/Lが好ましく、0.5〜2.0mol/Lが特に好ましい。リチウム塩(I)の含有量が上記範囲の下限値以上であれば、伝導度の高い非水電解液が得られやすい。また、リチウム塩(I)の含有量が上記範囲の上限値以下であれば、リチウム塩(I)を、後述する化合物(II−1)〜(II−3)、および必要に応じて化合物(II−4)を含有する電解質塩溶解用溶媒(II)に溶解させやすい。
【0023】
また、LiPFと化合物(5)とを両方用いる場合、LiPFのモル量(Ma)と化合物(5)のモル量(Mb)とのモル比(Mb/Ma)は、特に限定されないが、0.01〜10が好ましく、0.05〜2.0がより好ましい。
前記モル比(Mb/Ma)が上記範囲の下限値以上であれば、難燃性の非水電解液の伝導度を高く保ちやすい。また、前記モル比(Mb/Ma)が上記範囲の上限値以下であれば、化学的に安定性の高い非水電解液が得られやすい。
【0024】
また、LiPFとLiBFとを両方用いる場合、LiPFのモル量(Ma)とLiBFのモル量(Mc)とのモル比(Mc/Ma)は、特に限定されないが、0.01〜10が好ましく、0.05〜2.0がより好ましい。
前記モル比(Mc/Ma)が上記範囲の下限値以上であれば、難燃性の非水電解液の伝導度を高く保ちやすい。また、前記モル比(Mb/Ma)の上記範囲の上限値以下であれば、化学的に安定性の高い非水電解液が得られやすい。
【0025】
また、LiPF、LiBFおよび化合物(5)からなる群から選ばれる1種類以上のリチウム塩(I−A)と、(FSONLi、(CFSONLi、(CFCFSONLi、LiClO、化合物(6)および化合物(7)からなる群から選ばれる1種類以上のリチウム塩(I−B)を組み合わせて用いる場合、リチウム塩(I−A)の合計のモル量(Md)とリチウム塩(I−B)の合計のモル量(Me)とのモル比(Me/Md)は、特に限定されないが、0.01〜10が好ましく、0.05〜2.0がより好ましい。
前記モル比(Me/Md)が上記範囲の下限値以上であれば、難燃性の非水電解液の伝導度を高く保ちやすい。また、前記モル比(Me/Md)が上記範囲の上限値以下であれば、化学的に安定性の高い非水電解液が得られやすい。
【0026】
[溶媒(II)]
溶媒(II)は、後述する化合物(II−1)〜(II−3)、および必要に応じて化合物(II−4)を含有する。
【0027】
(化合物(II−1))
化合物(II−1)は、非水電解液に難燃性を付与する溶媒である。化合物(II−1)は、下記化合物(1)および下記化合物(2)からなる群から選ばれる化合物である。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
【0028】
【化6】
【0029】
ただし、式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜10のフッ素化アルキル基、炭素数3〜10のフッ素化シクロアルキル基、炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜10のアルキル基、または、炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜10のフッ素化アルキル基であり、RおよびRの少なくとも一方がフッ素原子を含む基である。
また、式(2)中、Xは炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数1〜5のフッ素化アルキレン基、炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜5のアルキレン基、または炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜5のフッ素化アルキレン基である。
【0030】
本明細書において、フッ素化とは、炭素原子に結合した水素原子の一部または全部がフッ素原子に置換されることをいう。フッ素化アルキル基は、アルキル基の水素原子の一部または全部がフッ素原子に置換された基である。一部がフッ素化された基中には、水素原子が存在する。部分フッ素化とは、炭素原子に結合した水素原子の一部がフッ素原子に置換されることをいう。
また、前記アルキル基としては、直鎖構造、分岐構造、または部分的に環状構造を有する基(たとえば、シクロアルキルアルキル基)が挙げられる。炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子を有するアルキル基としては、アルコキシアルキル基が挙げられる。なお、炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子を有するアルキル基におけるエーテル性酸素原子は2個以上存在してもよい。
【0031】
化合物(1)におけるRおよびRは、その一方または両方がフッ素化アルキル基であることが好ましい。RおよびRの一方または両方がフッ素化アルキル基であることで、リチウム塩(I)の非水電解液への溶解性が向上する。化合物(1)におけるRとRは同じであってもよく、異なっていてもよい。
化合物(1)としては、RおよびRが、いずれも炭素数1〜10のフッ素化アルキル基である化合物(1−A)と、Rが炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜10のフッ素化アルキル基であり、Rが炭素数1〜10のフッ素化アルキル基である化合物(1−B)が好ましい。
【0032】
化合物(1)は、炭素数が少なすぎると沸点が低すぎ、多すぎると高粘度化することから、総炭素数が4〜10の化合物が好ましく、4〜8の化合物がより好ましい。化合物(1)の分子量は150〜800が好ましく、150〜500がより好ましく、200〜500が特に好ましい。化合物(1)中のエーテル性酸素原子数は可燃性に影響することから、エーテル性酸素原子を有する化合物(1)である場合のエーテル性酸素原子数は、1〜4が好ましく、1または2がより好ましい。また化合物(1)中のフッ素含有量が高くなると難燃性を向上させることから、化合物(1)の分子量に対するフッ素原子の質量の割合は50%以上が好ましく、60%以上がより好ましい。
化合物(1−A)、化合物(1−B)、化合物(1−A)および化合物(1−B)以外の化合物(1)の具体例としては、たとえば、国際公開第2009/133899号に記載の化合物(化合物(2−A)、化合物(2−B)等)等が挙げられる。
【0033】
化合物(1)としては、リチウム塩(I)を均一に溶解させやすく、難燃性に優れた伝導度の高い非水電解液が得られやすい点から、化合物(1−A)が好ましい。さらに化合物(1−A)としては、CFCHOCFCFH(商品名:AE−3000、旭硝子社製)、CHFCFCHOCFCFH、CFCFCHOCFCFH、CFCHOCFCHFCFおよびCHFCFCHOCFCFHCFが好ましい。特に、CFCHOCFCFHとCHFCFCHOCFCFHCFが好ましい。
【0034】
本発明の非水電解液において、化合物(II−1)として化合物(1)を使用する場合には、化合物(1−A)を必須とすることが好ましい。その際、使用する(1−A)としては前記CFCHOCFCFH(商品名:AE−3000、旭硝子社製)、CHFCFCHOCFCFH、CFCFCHOCFCFH、CFCHOCFCHFCFおよびCHFCFCHOCFCFHCFからなる群から選ばれる1種以上を必須とすることがより好ましく、CFCHOCFCFHおよびCHFCFCHOCFCFHCFの少なくとも一方を必須とすることが特に好ましい。
化合物(1)を使用する場合の、化合物(1)の全量における化合物(1−A)の含有量は、50質量%以上が好ましく、化合物(1)の全量を化合物(1−A)とすることがより好ましい。
【0035】
化合物(2)において、Xは直鎖構造であっても分岐構造であってもよい。Xとしては、炭素数1〜5のアルキレン基が好ましく、2〜4のアルキレン基がより好ましい。該アルキレン基は、直鎖構造または分岐構造が好ましい。Xにおけるアルキレン基が分岐構造を有する場合には、側鎖は炭素数1〜3のアルキル基またはエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。
【0036】
さらに、化合物(2)としては、リチウム塩(I)を均一に溶解させ、難燃性に優れた伝導度の高い非水電解液が得られやすい点から、XがCH、CHCH、CH(CH)CH、またはCHCHCHである化合物(2)が好ましい。
【0037】
化合物(2)の具体例としては、たとえば、下式で表される化合物等が挙げられる。リチウム塩(I)を均一に溶解させやすく、難燃性に優れた伝導度の高い非水電解液が得られやすい点から、XがCHCHである化合物、およびXがCH(CH)CHである化合物が好ましい。
本発明の非水電解液において、化合物(II−1)として化合物(2)を使用する場合には、上記XがCHCHである化合物(2,2−ビス(トリフルオロメチル)−1,3−ジオキソラン)、およびXがCH(CH)CHである化合物(4−メチル−2,2−ビス(トリフルオロメチル)−1,3−ジオキソラン)の少なくとも一方を必須とすることが好ましく、いずれか一方を単独で使用することがより好ましい。
【0038】
【化7】
【0039】
化合物(II−1)としては、化合物(1)のみの使用、化合物(2)のみの使用、または化合物(1)および化合物(2)の併用のいずれであってもよく、化合物(1)または化合物(2)のみの使用が好ましい。
また、化合物(II−1)として化合物(1)(容量:Va)と化合物(2)(容量:Vb)を併用する場合、それらの容量比(Vb/Va)は、0.01〜100が好ましく、0.1〜10がより好ましい。
【0040】
化合物(II−1)の含有量の下限値は、溶媒(II)の総体積量に対して、40体積%以上が好ましく、45体積%以上がより好ましく、50体積%以上がさらに好ましい。また、下限値は、55体積%であることも好ましく、60体積%であることもさらに好ましい。化合物(II−1)の含有量の上限値は、電解質塩溶解用溶媒(II)の総体積量に対して、90体積%以下が好ましく、85体積%以下がより好ましく、80体積%以下がさらに好ましい。
化合物(II−1)の含有量は、溶媒(II)の総体積量に対して、40〜90体積%が好ましく、50〜90体積%がより好ましく、55〜85体積%がさらに好ましく、60〜80体積%が特に好ましい。
また、非水電解液の総質量(100質量%)に対する化合物(II−1)の含有量の下限値は、40質量%が好ましく、45質量%がより好ましく、50質量%がさらに好ましい。非水電解液の総質量(100質量%)に対する化合物(II−1)の含有量の上限値は、90質量%が好ましく、85質量%がより好ましく、80質量%がさらに好ましい。
【0041】
(化合物(II−2A))
化合物(II−2A)は、リチウム塩(I)と効率良く溶媒和することにより、該リチウム塩(I)を前記化合物(II−1)に均一に溶解させる役割を果たす溶媒である。化合物(II−2)は、その一部または全部が電解液中でリチウム塩(I)と錯体を形成すると考えられる。
化合物(II−2A)は、下式(3A)で表される化合物である。
【0042】
【化8】
【0043】
ただし、前記式(3A)中、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基、またはRとRが連結して形成した炭素数1〜10のアルキレン基である。より好ましくは、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基であるか、またはRとRが連結して形成した炭素数1〜3のアルキレン基である。
【0044】
化合物(3A)としては、たとえば、1,2−ジメトキシエタン(別名:モノグライム)、1−メトキシ−2−エトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1−メトキシ−2−イソプロポキシエタン等が挙げられる。また、RとRが連結してアルキレン基を形成している化合物としては、たとえば、1,4−ジオキサン等が挙げられる。化合物(3A)としては、1,2−ジメトキシエタンと1,2−ジエトキシエタンが好ましく、1,2−ジメトキシエタンが特に好ましい。
【0045】
化合物(II−2A)は、化合物(3A)以外の下式(3)で表される化合物(以下、化合物化合物(II−2B)という)と併用することができる。化合物(II−2A)と化合物(II−2B)との合計に対する化合物(II−2A)の割合は50〜100質量%が好ましく、80〜100質量%であることがより好ましく、100質量%であること(すなわち、化合物(II−2B)を併用しないこと)が特に好ましい。
【0046】
【化9】
【0047】
ただし、前記式(3)中、Qは炭素数1〜4の直鎖アルキレン基、または、該直鎖アルキレン基の水素原子の1個以上が、炭素数1〜5のアルキル基に置換された基である。
また、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基、またはRとRが連結して形成した炭素数1〜10のアルキレン基である。RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、RとRが連結してアルキレン基を形成する場合は炭素数1〜3のアルキレン基であることが好ましい。
【0048】
は炭素数1〜4の直鎖アルキレン基が好ましい。
およびRはそれぞれメチル基またはエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。化合物(II−2B)としては、たとえば、ジグライム、トリグライムなどのポリエチレングリコールジアルキルエーテルや、1,3−ジメトキシプロパンが挙げられる。
なお、以下、化合物(II−2A)と化合物(II−2B)とを合わせて化合物(II−2)という。前記のように、化合物(II−2)としては化合物(II−2A)単独であることが特に好ましい。
【0049】
本発明の非水電解液中に含まれる、リチウム塩(I)由来のリチウム原子の総モル数(NLi)に対する化合物(II−2)由来のエーテル性酸素原子の総モル数(N)との比(N/NLi)は、1を越え6以下である。前記比(N/NLi)は、1.2以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、2以上であることがさらに好ましい。前記比(N/NLi)が下限値以上であれば、リチウム塩(I)を化合物(II−1)に溶解させることが容易になる。一方、前記比(N/NLi)は、5以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、3.8以下であることがさらに好ましい。前記比(N/NLi)が上記範囲の上限値以下であれば、高レートでの充放電における電池容量の低下を抑制しやすく、高電圧下におけるサイクル特性が向上する。
【0050】
上記効果が発現する理由は必ずしも明らかではないが、以下の理由によると考えられる。
モル比(N/NLi)が4以下の場合、化合物(II−2)の分子内にあるすべての酸素がリチウムイオンに配位しうることで耐酸化性が向上すると考えられる。また、モル(N/NLi)が5〜6の場合は、化合物(II−2)の分子内にあるすべての酸素のうち、リチウムイオンに配位しない過剰分の酸素が、リチウムイオンの2次溶媒和圏に存在して、耐酸化性の向上に寄与していると考えられる。しかし、モル比(N/NLi)が6を超える場合は、化合物(II−2)の分子内にある酸素のうち、リチウムイオンに配位せず、2次溶媒和圏にも存在していない過剰分の酸素の耐酸化性が低いため、高電圧でのサイクル試験において酸化反応が進行し、容量が劣化すると考えられる。
【0051】
化合物(II−2)の含有量は、該非水電解液中の前記リチウム塩(I)の総量に対して、0.5〜3.0倍モルが好ましく、0.5〜2.5倍モルがより好ましく、1.0〜2.5倍モルがさらに好ましく、1.0〜2.0倍モルが特に好ましい。リチウム塩(I)に対する化合物(II−2)のモル比が前記範囲の下限値以上であれば、リチウム塩(I)を化合物(II−1)に均一に溶解させやすい。また、リチウム塩(I)に対する化合物(II−2)のモル比が前記範囲の上限値以下であれば、難燃性に優れた非水電解液が得られやすい。
【0052】
溶媒(II)の総体積量に対する化合物(II−2)の含有量の下限値は、5体積%以上が好ましく、7体積%以上がより好ましく、10体積%以上がさらに好ましく、13体積%以上が特に好ましく、15体積%以上が最も好ましい。溶媒(II)の総体積量に対する化合物(II−3)の含有量の上限値は、30体積%以下が好ましく、25体積%以下がより好ましく、22体積%以下がさらに好ましい。
化合物(II−2)の含有量は、溶媒(II)の総体積量に対して、5〜30体積%が好ましく、10〜30体積%がより好ましく、10〜25体積%がさらに好ましく、10〜22体積%が特に好ましく、15〜22体積%が最も好ましい。
また、非水電解液の総質量(100質量%)に対する化合物(II−2)の含有量の下限値は、3質量%が好ましく、5質量%がより好ましく、7質量%がさらに好ましく、10質量%が特に好ましい。非水電解液の総質量(100質量%)に対する化合物(II−2)の含有量の上限値は、25質量%が好ましく、20質量%がより好ましく、17質量%がさらに好ましく、15質量%が特に好ましい。
【0053】
(化合物(II−3))
化合物(II−3)は、炭素−炭素不飽和結合を有さない環状カーボネート化合物である。環状カーボネート化合物は炭素原子と酸素原子からなる環を有する化合物であり、該環が−O−C(=O)−O−で表される結合を有する。化合物(II−3)は、環状カーボネート化合物のうち分子内に炭素−炭素不飽和結合を含まない化合物である。なお、本明細書において、カーボネート化合物とは、−O−C(=O)−O−で表される結合(以下、「カーボネート結合」ともいう。)を含む化合物をいう。環状カーボネート化合物とは、カーボネート結合を含む環を有する化合物である。炭素−炭素不飽和結合とは、炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合である。
化合物(II−3)は、極性が高く、高レートでの充放電における電池容量の低下を抑制する役割を果たす。また、リチウム塩(I)の解離度を向上させることで、該非水電解液の伝導度を向上させる。また、リチウム塩(I)と効率よく溶媒和することにより、該リチウム塩(I)を化合物(II−1)に均一に溶解させることを補助する。
【0054】
化合物(II−3)における環は、4〜10員環が好ましく、4〜7員環がより好ましく、入手容易な点から、5〜6員環がさらに好ましく、5員環が特に好ましい。
化合物(II−3)の環は、カーボネート結合を1つ有する環が好ましく、カーボネート結合が、直鎖アルキレン基と連結して形成された環がより好ましい。直鎖アルキレン基の炭素数は1〜7が好ましく、1〜4がより好ましく、2または3がさらに好ましく、2が特に好ましい。また、前記直鎖アルキレン基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、たとえば、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基等が挙げられる。ハロゲン原子、またはハロゲン化アルキル基におけるハロゲンとしては、塩素原子またはフッ素原子が好ましい。
化合物(II−3)としては、下記化合物(4)が好ましい。
【0055】
【化10】
【0056】
ただし、前記式中、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、またはハロゲン化アルキル基である。化合物(4)におけるR〜Rの少なくとも1個以上がハロゲン原子であれば、酸化され難くなるので、高電圧条件下での使用により適している。
【0057】
化合物(4)の具体例としては、プロピレンカーボネート(別名:4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン)、エチレンカーボネート(別名:1,3−ジオキソラン−2−オン)、ブチレンカーボネート(別名:4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン)、4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンおよび4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンが挙げられる。
化合物(II−3)としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネートから選ばれる環状カーボネート化合物、および、該環状カーボネート化合物の環を形成する炭素原子に結合する水素原子の1個以上が、ハロゲン原子、アルキル基、またはハロゲン化アルキル基に置換された化合物が好ましく、入手容易な点および電解液の性質の点から、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートまたは4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(以下、フルオロエチレンカーボネートともいう。)が好ましい。
化合物(II−3)は、1種の化合物を単独で使用してもよく、2種以上の化合物を併用してもよい。
【0058】
溶媒(II)の総体積量に対する化合物(II−3)の含有量の下限値は、5体積%以上が好ましく、7体積%以上がより好ましく、10体積%以上がさらに好ましく、13体積%以上が特に好ましい。化合物(II−3)の含有量が下限値以上であれば、高レートでの充放電における電池容量の低下を抑制しやすい。また、リチウム塩(I)の解離度が向上し、伝導度がより良好になる。
化合物(II−3)の含有量は、溶媒(II)の総体積量に対して、5〜60体積%が好ましく、5〜50体積%がより好ましく、10〜40体積%がさらに好ましい。
さらに、化合物(II−3)の含有量は上記範囲の上限値よりもさらに少ないことがより好ましい。すなわち、溶媒(II)の総体積量に対する化合物(II−3)の含有量の上限値は、40体積%以下が好ましく、35体積%以下がより好ましく、30体積%以下がさらに好ましく、27体積%以下が特に好ましい。非水電解液中の化合物(II−3)の含有量が上限値以下であれば、難燃性に優れた非水電解液を得やすい。
また、非水電解液の総質量(100質量%)に対する化合物(II−3)の含有量の下限値は、5質量%が好ましく、7質量%がより好ましく、10質量%がさらに好ましく、13質量%が特に好ましい。非水電解液の総質量(100質量%)に対する化合物(II−3)の含有量の上限値は、40質量%が好ましく、35質量%がより好ましく、30質量%がさらに好ましく、27質量%が特に好ましい。
【0059】
本発明の非水電解液中に含まれる、リチウム塩(I)由来のリチウム原子の総モル数(NLi)に対する化合物(II−3)の総モル数(NII−3)の比(NII−3/NLi)の下限値は、0.01であることが好ましい。この下限値は、さらに、0.1であることが好ましく、0.3であることがより好ましく、0.5であることがさらに好ましく、1.0であることが特に好ましい。この比(NII−3/NLi)がこの下限値以上であれば、高レートでの充放電における電池容量の低下を抑制しやすい。(NII−3/NLi)の上限値は、6であることが好ましい。この上限値は、さらに、5であることが好ましく、4.0であることがより好ましく、3.5であることがさらに好ましく、3.0であることが特に好ましい。(NII−3/NLi)がこの上限値以下であれば、電解液の難燃性を維持しやすい。
上記(NII−3/NLi)は、0.01〜6が好ましく、0.1〜5がより好ましく、1〜4が特に好ましい。
【0060】
本発明の非水電解液中に含まれる、リチウム塩(I)由来のリチウム原子の総モル数(NLi)に対する、化合物(II−2)由来のエーテル性酸素原子の総モル数(N)と化合物(II−3)の総モル数(NII−3)の和の比{(N+NII−3)/NLi}の下限値は、2.0であることが好ましく、2.5であることがより好ましく、3.0であることがさらに好ましい。{(N+NII−3)/NLi}が下限値以上であれば、リチウム塩の溶解性が高くなり、また高レートでの充放電における電池容量の低下を抑制しやすい。
また、{(N+NII−3)/NLi}の上限値は、6であることが好ましく、5.5であることがより好ましく、5.0であることがさらに好ましく、4.5であることが特に好ましい。{(N+NII−3)/NLi}が上限値以下であれば、電解液の難燃性を維持しやすく、また高電圧条件下におけるサイクル特性を向上させやすい。
前記{(N+NII)/NLi}の値は、2.0〜6であることが好ましく、2.5〜5.5であることがより好ましく、3.0〜5.0であることがさらに好ましく、3.0〜4.5であることが特に好ましい。
【0061】
化合物(II−3)によって高レートでの充放電における電池容量の低下が抑制される要因については必ずしも明らかではないが、以下のように考えられる。
二次電池の充放電ではリチウムイオンが脱配位して電極の電極活物質と反応する必要があるが、極性の高い化合物(II−3)を補助溶媒として電解液に用いると、溶媒全体の極性が向上することで脱配位エネルギーが低下し、化合物(II−2)が容易に脱配位してリチウムイオンが効率的に電極活物質と反応できるので、高レートでの充放電における電池容量の低下が抑制されると考えられる。
【0062】
(化合物(II−4))
本発明における溶媒(II)は、サイクル特性の点から、前述の化合物(II−1)〜(II−3)に加えて、分子内に炭素−炭素不飽和結合を含む環状カーボネート化合物や鎖状カーボネート化合物を含有していてもよい。以下、炭素−炭素不飽和結合を含む環状カーボネート化合物を化合物(II−4A)といい、鎖状カーボネート化合物を化合物(II−4B)という。また、化合物(II−4A)と化合物(II−4B)とを合わせて化合物(II−4)という。
なお、溶媒(II)は化合物(II−4)を必要とせず、溶媒(II)は化合物(II−4)を実質的に含まない(溶媒(II)の総体積量に対して、0.01体積%未満)ことが好ましい。また、溶媒(II)が化合物(II−4)を含む場合であっても、溶媒(II)における化合物(II−4)の量(体積%)は化合物(II−3)の量よりも少ないことが好ましい。
【0063】
化合物(II−4A)における環は、4〜10員環が好ましく、4〜7員環がより好ましく、入手容易な点から、5〜6員環がさらに好ましく、5員環が特に好ましい。
化合物(II−4A)の環は、カーボネート結合を1つ有する環が好ましい。
化合物(II−4A)の炭素−炭素不飽和結合は環内にあっても環の外にあってもよい。炭素−炭素不飽和結合は分子内に1〜5個あるのが好ましく、1〜3個がより好ましく、入手容易な点と非水電解液の耐久性の点から、1〜2個がさらに好ましく、1個が特に好ましい。
化合物(II−4A)としては、下記化合物(8−1)、化合物(8−2)が好ましい。
【0064】
【化11】
【0065】
ただし、前記式中、RおよびR10は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基、または炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基である。
11〜R14は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、ビニル基またはアリル基であり、R11〜R14の少なくとも1つはビニル基またはアリル基である。
【0066】
化合物(8−1)の具体例としてはビニレンカーボネート(別名:1,3−ジオキソール−2−オン)およびジメチルビニレンカーボネート(別名:4,5−ジメチル−1,3−ジオキソール−2−オン)が挙げられ、化合物(8−2)の具体例としては4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンが挙げられる。化合物(II−4)としては、ビニレンカーボネートが好ましい。
化合物(II−4A)としては、化合物(8−1)のみを使用してもよく、化合物(8−2)のみを使用してもよく、化合物(8−1)と化合物(8−2)を併用してもよい。
【0067】
化合物(II−4B)は鎖状のカーボネート化合物であり、下記式(9)で表わされる化合物(9)が好ましい。
【0068】
【化12】
【0069】
ただし、前記式中、R15、R16は、それぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基、または炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基である。
化合物(9)としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネートなどが挙げられる。化合物(II−4B)としては、ジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートが好ましい。
【0070】
化合物(II−4)を含む非水電解液を用いた二次電池で充電を行う場合、化合物(II−4)が負極(たとえば炭素電極)表面上で分解して安定な被膜を形成する。化合物(II−4)により形成された被膜は電極界面における抵抗を低減できるため、リチウムイオンの負極へのインターカレーションを促進する効果が得られる。すなわち、非水電解液中の化合物(II−4)により形成された被膜によって負極界面におけるインピーダンスが小さくなることで、リチウムイオンの負極へのインターカレーションが促進される。また、化合物(II−4)は、化合物(II−3)と同様に極性が高いため、化合物(II−3)による効果を妨げずに、リチウムイオンの負極へのインターカレーションを促進し、サイクル特性を向上させる。
【0071】
化合物(II−4)として化合物(II−4A)を使用する場合、化合物(II−4A)の含有量は、長期にわたる難燃性、非水電解液中での相分離および炭酸ガスの大量発生の抑制、低温特性の低下の抑制、ならびにリチウム塩(I)の溶解性の向上の効果を兼ね備えやすい点から、溶媒(II)の総体積量に対して、0.01〜10.0体積%が好ましく、0.05〜5.0体積%がより好ましく、0.1〜3.0体積%が特に好ましい。
【0072】
化合物(II−4)として化合物(II−4B)を使用する場合、溶媒(II)の総体積量に対する化合物(II−4B)の割合は上記化合物(II−4A)の場合よりも多くてよい。しかし、化合物(II−4B)は、化合物(II−3)や化合物(II−4A)よりも引火点が低いことより、溶媒(II)中の化合物(II−4B)の割合が高すぎると、高レートでの充放電特性を改善することなく、難燃性の低下を招くおそれがある。したがって、化合物(II−4B)を使用する場合、化合物(II−4B)の含有量は、溶媒(II)の総体積量に対して、20体積%未満が好ましく、15体積%未満がより好ましい。
さらに、化合物(II−4)を使用する場合、化合物(II−3)と化合物(II−4)の合計の含有量は、溶媒(II)の総体積量に対して、40体積%以下が好ましく、35体積%以下がより好ましい。特に、化合物(II−4B)を比較的高い割合で使用する場合は、その割合の上限は化合物(II−3)との合計として上記割合で規制されることが好ましい。
【0073】
また、本発明の非水電解液は、化合物(II−4)の含有量の上限値が30質量%であることが好ましく、25質量%であることがより好ましく、20質量%であることがさらに好ましく、15質量%であることが特にこのましい。化合物(II−4)の含有量の下限値は0%である。
【0074】
(リチウム塩(I)、溶媒(II)の好ましい組み合わせ)
本発明の非水電解液としては、前記リチウム塩(I)、溶媒(II)から、特に下記成分を用いた場合が、本発明の目的とする効果が大きいことから好ましい。
リチウム塩(I)として、LiPF、前記化合物(5)、(FSONLi、(CFSONLi、(CFCFSONLi、LiClO、前記化合物(6)、前記化合物(7)、およびLiBFからなる群から選ばれる1種以上、溶媒(II)として、化合物(II−1)である化合物(1)および化合物(2)からなる群から選ばれる1種以上、化合物(II−2A)、および、化合物(II−3)である化合物(4)。
または、
リチウム塩(I)として、LiPF、前記化合物(5)、(FSONLi、(CFSONLi、(CFCFSONLi、LiClO、前記化合物(6)、前記化合物(7)、およびLiBFからなる群から選ばれる1種以上、溶媒(II)として、化合物(II−1)である化合物(1)および化合物(2)からなる群から選ばれる1種以上、化合物(II−2A)、化合物(II−3)である化合物(4)、および、溶媒(II)の総体積に対して0.01〜20体積%の化合物(II−4)。ただし、化合物(II−4)の割合(体積%)は化合物(II−3)の割合よりも少なく、化合物(II−3)と化合物(II−4)の合計量は40体積%以下である。
【0075】
より好ましくは、
リチウム塩(I)として、LiPF、(CFSONLi、(CFCFSONLi、LiClO、LiBFからなる群から選ばれる1種以上、溶媒(II)として、化合物(II−1)であるCFCHOCFCFH、CHFCFCHOCFCFH、CFCFCHOCFCFH、CFCHOCFCHFCF、CHFCFCHOCFCFHCF、上式(2)で表されかつXがCHCHである化合物、および上式(2)で表されかつXがCH(CH)CHである化合物からなる群から選ばれる1種以上、化合物(II−2A)である1,2−ジメトキシエタン、化合物(II−3)であるエチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネート、および、溶媒(II)の総体積に対して0.01〜15体積%の化合物(II−4B)である化合物(9)。ただし、化合物(II−4B)の割合(体積%)は化合物(II−3)よりも少なく、化合物(II−3)と化合物(II−4B)の合計量は35体積%以下である。
【0076】
さらに好ましくは、
リチウム塩(I)として、LiPF
溶媒(II)として、
化合物(II−1)であるCHFCFCHOCFCFHCF(HFE5510)、CFCHOCFCFH(AE−3000)、CFCHOCFCHFCF(HFE449mec−f)または2,2−ビス(トリフルオロメチル)−1,3−ジオキソラン(SX−1)、
化合物(II−2A)である1,2−ジメトキシエタンまたは1,2−ジエトキシエタン、
化合物(II−3)であるエチレンカーボネート、プロピレンカーボネートまたはフルオロエチレンカーボネート、
および、
化合物(II−4)を実質的に含まないか、または化合物(II−4B)であるジエチルカーボネートまたはエチルメチルカーボネートを溶媒(II)の総体積に対して0.01〜15体積%含む。ただし、そのジアルキルカーボネートの割合(体積%)は化合物(II−3)の割合よりも少なく、化合物(II−3)との合計量は35体積%以下である。
【0077】
特に好ましくは、
リチウム塩(I)として、LiPF
溶媒(II)として、
化合物(II−1)であるCHFCFCHOCFCFHCF
化合物(II−2A)である1,2−ジメトキシエタン、
化合物(II−3)であるエチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネート、
および、
化合物(II−4)を実質的に含まない。
【0078】
(その他の溶媒)
本発明における溶媒(II)は、該非水電解液が相分離せず、本発明の効果を妨げない範囲内であれば、前記化合物(II−1)、化合物(II−2)、化合物(II−3)および化合物(II−4)以外の化合物からなる溶媒(以下、「他の溶媒」という。)を含んでもよい。
他の溶媒としては、含フッ素アルカン;プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステル等のカルボン酸エステル;γブチロラクトン等の環状エステル、プロパンサルトン等の環状スルホン酸エステル;スルホン酸アルキルエステル;リン酸アルキルエステル;アセトニトリル、イソブチロニトリル、ピバロニトリル等のカルボニトリル等が挙げられる。
含フッ素アルカン以外の他の溶媒を用いる場合の含有量は、溶媒(II)の総体積量に対して、0超〜20体積%であることが好ましく、0超〜10体積%であることがより好ましく、0超〜5体積%であることが特に好ましい。
【0079】
本発明の非水電解液が他の溶媒として含フッ素アルカンを含む場合には、非水電解液の蒸気圧を抑制し、非水電解液の難燃性をさらに向上させうる。含フッ素アルカンとは、アルカンの水素原子の1個以上がフッ素原子に置換され、水素原子が残っている化合物をいう。本発明においては、炭素数4〜12の含フッ素アルカンが好ましい。このうち、炭素数6以上の含フッ素アルカンを用いた場合は、非水電解液の蒸気圧を低下させる効果が期待でき、また炭素数が12以下であればリチウム塩(I)の溶解度を保ちやすい。また、含フッ素アルカン中のフッ素含有量(フッ素含有量とは、分子量に占めるフッ素原子の質量の割合をいう。)は、50〜80%が好ましい。含フッ素アルカン中のフッ素含有量が50%以上であれば、難燃性がさらに高くなる。含フッ素アルカン中のフッ素含有量が80%以下であれば、リチウム塩(I)の溶解性を保持しやすい。
【0080】
含フッ素アルカンとしては、直鎖構造の化合物が好ましく、たとえば、n−CCHCH、n−C13CHCH、n−C13H、n−C17H等が挙げられる。これら含フッ素アルカンは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の非水電解液に前記含フッ素アルカンを含ませる場合の含有量は、溶媒(II)の総体積量に対して、5〜20体積%が好ましい。前記含フッ素アルカンの含有量が5体積%以上であれば、蒸気圧を低下させやすく、難燃性を発現させやすい。前記含フッ素アルカンの含有量が20体積%以下であれば、リチウム塩(I)の溶解度を維持しやすい。
【0081】
(他の成分)
本発明の非水電解液には、非水電解液の機能を向上させるために、必要に応じて他の成分を含ませてもよい。他の成分としては、たとえば、従来公知の過充電防止剤、脱水剤、脱酸剤、高温保存後の容量維持特性およびサイクル特性を改善するための特性改善助剤が挙げられる。
【0082】
過充電防止剤としては、たとえば、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の前記芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソールおよび2,6−ジフルオロアニオール等の含フッ素アニソール化合物が挙げられる。過充電防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
非水電解液が過充電防止剤を含有する場合、非水電解液中の過充電防止剤の含有量は、0.01〜5質量%であることが好ましい。非水電解液に過充電防止剤を0.01質量%以上含有させることにより、過充電による二次電池の破裂および発火を抑制することがさらに容易になり、二次電池をより安定に使用できる。
【0083】
脱水剤としては、たとえば、モレキュラーシーブス、芒硝、硫酸マグネシウム、水素化カルシウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化リチウムアルミニウム等が挙げられる。本発明の非水電解液に用いる溶媒は、前記脱水剤で脱水を行った後に精留を行ったものを使用することが好ましい。また、精留を行わずに前記脱水剤による脱水のみを行った溶媒を使用してもよい。
【0084】
高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を改善するための特性改善助剤としては、たとえば、フェニルエチレンカーボネート、エリスリタンカーボネート、スピロ−ビス−ジメチレンカーボネート等のカーボネート化合物;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、フェニルコハク酸無水物等のカルボン酸無水物;ブスルファン、スルホラン、スルホレン、ジメチルスルホン、ジフェニルスルホン、メチルフェニルスルホン、ジブチルジスルフィド、ジシクロヘキシルジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、N,N−ジメチルメタンスルホンアミド、N,N−ジエチルメタンスルホンアミド等の含硫黄化合物;1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルスクシイミド等の含窒素化合物;ヘプタン、オクタン、シクロヘプタン等の炭化水素化合物が挙げられる。これら特性改善助剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
非水電解液が特性改善助剤を含有する場合、非水電解液中の特性改善助剤の含有量は、0.01〜5質量%であることが好ましい。
【0085】
本発明の非水電解液は、二次電池用に用いる。特にリチウムイオン二次電池の電解液として用いた場合には、リチウム塩(I)を良好に溶解させることができ、長期的な難燃性が得られ、かつ、高レートでの優れた充放電特性、および高電圧下での優れたサイクル特性が得られる。また、リチウムイオン二次電池以外の他の二次電池に使用してもよい。他の二次電池としては、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等が挙げられる。
【0086】
前述したように特許文献6、7に記載の従来の非水電解液を使用した二次電池は、高レート充放電特性、および高電圧下でのサイクル特性が低下することがある。これらの特性の低下について検討したところ、特許文献6の非水電解液を使用した二次電池では、グライム系溶媒としてモノグライム以外のグライム系溶媒を主成分として使用していることが前記高レート充放電特性およびサイクル特性の低下の要因であることを見い出した。また、特許文献7の非水電解液を使用した二次電池では、非フッ素エーテルの含有量が多いことが要因であることを見い出した。
前記従来の非水電解液に対して、本発明の非水電解液は、電解質塩溶解用溶媒(II)が化合物(II−2A)を含有し、かつ比(N/NLi)が1〜6であることで、特に高電圧下において優れたサイクル特性を有している。これは、理由は確かではないが、おそらく化合物(II−2A)の分子中の酸素原子の多くがリチウムイオンに配位しているために耐酸化性が向上するためであると考えられる。また、本発明の非水電解液は、高レートでの充放電におけるエネルギー密度および電池容量の低下を抑制できる。さらに、本発明の非水電解液は、リチウム塩(I)の溶解性が良好であり、長期的な難燃性に優れており、実用上充分な伝導度を備えている。
【0087】
<二次電池>
本発明の電解液はリチウムイオン二次電池用の電解液として用いるのが好ましい。該二次電池としては、負極および正極と、本発明の非水電解液とを有する二次電池である。
負極としては、リチウムイオンを吸蔵および放出できる負極活物質を含む電極が挙げられる。負極活物質としては、公知のリチウムイオン二次電池用負極活物質を用いることができ、リチウムイオンを吸蔵および放出できる人造または天然グラファイト(黒鉛)、非晶質炭素等の炭素質材料、金属リチウム、リチウム合金等の金属、金属化合物が挙げられる。これら負極活物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0088】
なかでも、負極活物質としては、炭素質材料が好ましい。また、炭素質材料としては、黒鉛、および黒鉛の表面を該黒鉛に比べて非晶質の炭素で被覆した炭素質材料が特に好ましい。
黒鉛は、日本学術振興会炭素材料第117委員会で制定された方法(以下、「学振法」という。)によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離、以下単に「d値」という。)が0.335〜0.338nmが好ましく、0.335〜0.337nmがより好ましい。また、学振法によるX線回折で求めた結晶子サイズ(Lc)は、30nm以上が好ましく、50nm以上がより好ましく、100nm以上が特に好ましい。黒鉛の灰分は、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が特に好ましい。
【0089】
また、黒鉛の表面を非晶質炭素で被覆した炭素質材料としては、d値が0.335〜0.338nmである黒鉛を核材とし、該黒鉛の表面に該黒鉛よりもd値が大きい非晶質炭素が被覆されており、かつ核材の黒鉛(質量W)と該黒鉛を被覆する非晶質炭素(質量W)の割合が質量比(W/W)で80/20〜99/1であることが好ましい。この炭素質材料を用いることにより、高い容量で、かつ非水電解液と反応しにくい負極を製造することが容易になる。
【0090】
炭素質材料の粒径は、レーザー回折・散乱法によるメジアン径で、1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましく、5μm以上がさらに好ましく、7μm以上が特に好ましい。また、炭素質材料の粒径の上限は、100μmが好ましく、50μmがより好ましく、40μmがさらに好ましく、30μmが特に好ましい。
【0091】
炭素質材料のBET法による比表面積は、0.3m/g以上が好ましく、0.5m/g以上がより好ましく、0.7m/g以上がさらに好ましく、0.8m/g以上が特に好ましい。炭素質材料の比表面積の上限は、25.0m/gが好ましく、20.0m/gがより好ましく、15.0m/gがさらに好ましく、10.0m/gが特に好ましい。
【0092】
炭素質材料は、アルゴンイオンレーザー光を用いたラマンスペクトルで分析したときに、1,570〜1,620cm−1の範囲にあるピークPのピーク強度Iと、1,300〜1,400cm−1の範囲にあるピークPのピーク強度Iとの比で表されるR値(=I/I)が、0.01〜0.7であることが好ましい。また、ピークPの半値幅が、26cm−1以下であることが好ましく、25cm−1以下であることが特に好ましい。
【0093】
金属リチウム以外に負極活物質として使用できる金属としては、Ag、Zn、Al、Ga、In、Si、Ti、Ge、Sn、Pb、P、Sb、Bi、Cu、Ni、Sr、Ba等が挙げられる。また、リチウム合金としては、リチウムと前記金属の合金が挙げられる。また、金属化合物としては、前記金属の酸化物等が挙げられる。
なかでも、Si、Sn、Ge、TiおよびAlからなる群から選ばれる1種以上の金属、該金属を含む金属化合物、金属酸化物、リチウム合金が好ましく、Si、SnおよびAlからなる群から選ばれる1種以上の金属、該金属を含む金属化合物、リチウム合金、チタン酸リチウムがより好ましい。
リチウムイオンを吸蔵・放出できる金属、該金属を含む金属化合物、およびリチウム合金は、一般に黒鉛に代表される炭素質材料と比較して、単位質量当たりの容量が大きいので、より高エネルギー密度が求められる二次電池に好適である。
【0094】
正極としては、リチウムイオンを吸蔵および放出できる正極活物質を含む電極が挙げられる。
正極活物質としては、公知のリチウムイオン二次電池用正極活物質を用いることができ、たとえば、リチウム含有遷移金属酸化物、1種類以上の遷移金属を用いたリチウム含有遷移金属複合酸化物、遷移金属酸化物、遷移金属硫化物、金属酸化物、オリビン型金属リチウム塩等が挙げられる。
【0095】
リチウム含有遷移金属酸化物としては、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物等が挙げられる。
リチウム含有遷移金属複合酸化物の遷移金属としてはV、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、たとえば、LiCoO等のリチウムコバルト複合酸化物、LiNiO等のリチウムニッケル複合酸化物、LiMnO、LiMn、LiMnO等のリチウムマンガン複合酸化物、これらのリチウム遷移金属複合酸化物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Yb等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。他の金属で置換されたものとしては、LiMn0.5Ni0.5、LiMn1.8Al0.2、LiNi0.85Co0.10Al0.05、LiMn1.5Ni0.5、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiMn1.8Al0.2が挙げられる。
遷移金属酸化物としては、たとえば、TiO、MnO、MoO、V、V13、遷移金属硫化物としてはTiS、FeS、MoS、金属酸化物としてはSnO、SiO等が挙げられる。
オリビン型金属リチウム塩は、Li(ただし、XはFe(II)、Co(II)、Mn(II)、Ni(II)、V(II)、またはCu(II)を示し、YはPまたはSiを示し、0≦L≦3、1≦x≦2、1≦y≦3、4≦z≦12、0≦g≦1である数をそれぞれ示す)で示される物質またはこれらの複合体である。たとえば、LiFePO、LiFe(PO、LiFeP、LiMnPO、LiNiPO、LiCoPO、LiFePOF、LiMnPOF、LiNiPOF、LiCoPOF、LiFeSiO、LiMnSiO、LiNiSiO、LiCoSiOが挙げられる。
これら正極活物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0096】
また、これら正極活物質の表面に、主体となる正極活物質を構成する物質とは異なる組成の物質が付着したものを用いることもできる。表面付着物質としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化物;硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩;炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩等が挙げられる。
表面付着物質の量としては、正極活物質に対する質量の下限は0.1ppmが好ましく、1ppmがより好ましく、10ppmが特に好ましい。上限は20%が好ましく、より10%がより好ましく、5%が特に好ましい。表面付着物質により、正極活物質表面での非水系電解液の酸化反応を抑制することができ、電池寿命を向上させることができる。
【0097】
正極活物質としては、放電電圧が高く、かつ電気化学的安定性が高い点から、LiCoO、LiNiO、LiMnO等のα−NaCrO構造を母体とするリチウム含有複合酸化物、LiMn等のスピネル型構造を母体とするリチウム含有複合酸化物が好ましい。
本発明の二次電池は、負極と正極のいずれか一方または両方が分極性電極である負極および正極と、本発明の非水電解液とを有する。分極性電極は、電気化学的に不活性な高比表面積の材料を主体とするものが好ましく、活性炭、カーボンブラック、金属微粒子、導電性酸化物微粒子からなるものが特に好ましい。なかでも、金属集電体の表面に活性炭等の高比表面積の炭素材料粉末からなる電極層が形成されたものが好ましい。
【0098】
電極の製造には、負極活物質または正極活物質を結着させる結着剤を用いる。
負極活物質および正極活物質を結着する結着剤としては、電極製造時に使用する溶媒、電解液に対して安定な材料であれば、任意の結着剤を使用することができる。結着剤は、たとえば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム等の不飽和結合を有する重合体や共重合体、アクリル酸共重合体、メタクリル酸共重合体等のアクリル酸系の重合体や共重合体等が挙げられる。これらの結着剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0099】
電極中には、機械的強度、電気伝導度を高めるために増粘剤、導電材、充填剤等を含有させてもよい。
増粘剤としては、たとえば、カルボキシルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、ガゼイン、ポリビニルピロリドンが挙げられる。これらの増粘剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0100】
導電材としては、たとえば、銅またはニッケル等の金属材料、グラファイトまたはカーボンブラック等の炭素質材料が挙げられる。これら導電材は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0101】
電極の製造法としては、負極活物質または正極活物質に、結着剤、増粘剤、導電材、溶媒等を加えてスラリー化し、これを集電体に塗布、乾燥して製造することができる。この場合、乾燥後にプレスすることによって電極を圧密化することが好ましい。
正極活物質層の密度が低すぎると二次電池の容量が不充分となるおそれがある。
【0102】
集電体としては、各種の集電体を用いることができるが、通常は金属または合金が用いられる。負極の集電体としては、銅、ニッケル、ステンレス等が挙げられ、銅が好ましい。また、正極の集電体としては、アルミニウム、チタン、タンタル等の金属またはその合金が挙げられ、アルミニウムまたはその合金が好ましく、アルミニウムがより好ましい。
【0103】
二次電池の形状は、用途に応じて選択すればよく、コイン型であってもよく、円筒型であっても、角型であってもラミネート型であってもよい。また、正極および負極の形状も、二次電池の形状に合わせて適宜選択することができる。
本発明の二次電池の充電電圧は、4.2V以上とするのが好ましく、4.25V以上がより好ましく、4.3V以上がさらに好ましく、4.35V以上が特に好ましい。二次電池の正極活物質が、リチウム含有遷移金属酸化物、リチウム含有遷移金属複合酸化物、遷移金属酸化物、遷移金属硫化物、金属酸化物の場合の充電電圧は4.25V以上が好ましく、4.3V以上がさらに好ましく、4.35V以上が特に好ましい。また、正極活物質がオリビン型金属リチウム塩の場合の充電電圧は3.2Vが好ましく、3.4V以上がより好ましい。
【0104】
二次電池の正極と負極の間には、短絡を防止するために通常はセパレータとして多孔膜を介在させる。この場合、非水電解液は該多孔膜に含浸させて用いる。多孔膜の材質および形状は、非水電解液に対して安定であり、かつ保液性に優れていれば特に制限はなく、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンとテトラフルオロエチレンのコポリマー等のフッ素樹脂、またはポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを原料とする多孔性シートまたは不織布が好ましく、材質はポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましい。また、これらの多孔膜に電解液を含浸させてゲル化させたものをゲル電解質として用いてもよい。
本発明の非水電解液に使用される電池外装体の材質も二次電池に通常用いられる材質であればよく、ニッケルメッキを施した鉄、ステンレス、アルミニウムまたはその合金、ニッケル、チタン、樹脂材料、フィルム材料等が挙げられる。
【0105】
以上説明した本発明の二次電池は、本発明の非水電解液を用いているため、長期の難燃性を有し、かつ高レートでの充放電特性、および高電圧下でのサイクル特性が優れている。
そのため、本発明の二次電池は、携帯電話、携帯ゲーム機、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、電動工具、ノートパソコン、携帯情報端末、携帯音楽プレーヤー、電気自動車、ハイブリット式自動車、電車、航空機、人工衛星、潜水艦、船舶、無停電電源装置、ロボット、電力貯蔵システム等の様々な用途に使用できる。また、本発明の二次電池は、電気自動車、ハイブリット式自動車、電車、航空機、人工衛星、潜水艦、船舶、無停電電源装置、ロボット、電力貯蔵システム等の大型二次電池に特に好ましい特性を有する。
【実施例】
【0106】
以下、実施例および比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。例1〜3、8〜10、12〜14、19は実施例であり、例4〜7、11、15〜18、20は比較例である。
<溶解性および伝導度の評価>
[例1]
リチウム塩(I)であるLiPF(1.52g)を、化合物(II−1)であるHFE5510(CHFCFCHOCFCFHCF、6.93mL)中に拡散した後、化合物(II−2)であるモノグライム(1.80g)および化合物(II−3)であるエチレンカーボネート(1.32g)を添加、混合して非水電解液とした。
【0107】
[例2〜11]
リチウム塩(I)および化合物(II−1)〜(II−3)の組成を表1に示す通りに変更した以外は、例1と同様にして非水電解液を得た。
なお、表1に記載の化合物は、以下のとおりである。
HFE5510:CHFCFCHOCFCFHCF
AE−3000:CFCHOCFCF
HFE449mec−f:CFCHOCFCHFCF
SX−1:2,2−ビス(トリフルオロメチル)−1,3−ジオキソラン
モノグライム:CHOCHCHOCH
ジグライム:CHO(CHCHO)CH
【0108】
[評価方法]
(溶解性試験)
各例において、非水電解液を調製してから1時間経過後の該非水電解液の溶解状態を目視により評価した。溶解性の評価は、電解液が均一であるものを「○(良)」、2相に分離したものを「×(不可)」とした。
【0109】
(引火性試験)
非水電解液10mLを20mLガラスバイアルに仕込んだ後、液面上方5mmの気相部をライターの炎で炙り続け、15秒未満で着火したものを「×(不可)」、15秒〜30秒未満で着火したものを「△(可)」、30秒後においても着火しなかったものを「○(良)」として難燃性を評価した。
溶解性および難燃性の評価結果を表1に示す。
【0110】
【表1-1】
【0111】
【表1-2】
【0112】
表1に示すように、例1〜3および例8〜10の本発明の非水電解液は、リチウム塩(I)の溶解性が良好であった。また、例1〜3および例8〜10の非水電解液は、モル比(N/NLi)が6よりも大きい例5〜8および例11の非水電解液に比べ、優れた難燃性を有していた。
また、リチウム塩(I)由来のリチウム原子の総モル数(NLi)に対する前記化合物(II−2)の総モル数(N)との比(N/NLi)が1である例25ではリチウム塩の溶解性が不十分であるのに対し、(N/NLi)が2である例8、および(N/NLi)が4である例26では高いリチウム塩の溶解性を示した。
【0113】
[例29]
<LiCoO正極−リチウム金属箔からなる単極セルのシート状非水電解液二次電池の評価>
LiCoO(AGCセイミケミカル社製、商品名「セリオンC」)の90質量部と、カーボンブラック(電気化学工業社製、商品名「デンカブラック」)の5質量部と、ポリフッ化ビニリデンの5質量部とを混合し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてスラリーとした。該スラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥後、正極活物質層の密度が3.0g/cmになるようにプレスしてLiCoO正極を製造した。
前記LiCoO正極、該LiCoO正極と同面積のリチウム金属箔、およびポリエチレン製のセパレータを、リチウム金属箔、セパレータ、LiCoO正極の順に2016型コインセル内に積層して電池要素を作製し、例1で調製した非水電解液を添加し、これを密封することによりコイン型非水電解液二次電池を製造した。
【0114】
[例30〜37]
表2に示す非水電解液を用いた以外は、例29と同様にしてコイン型二次電池を作製した。
【0115】
<サイクル特性の評価>
LiCoO正極−リチウム金属箔からなる単極セルのコイン型二次電池のサイクル特性の評価は、以下に示す方法により行った。
25℃において、0.5Cに相当する定電流で4.5V(電圧はリチウムに対する電圧を表す)まで充電し、さらに充電上限電圧において電流値が0.02Cになるまで充電を行い、しかる後に0.5Cに相当する定電流で3Vまで放電するサイクルを行った。1サイクル目放電時の放電容量に対する、20サイクル目および40サイクル目の放電容量の容量維持率を評価成績とした。
ただし、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、0.5Cとはその1/2の電流値を表す。評価結果を表2に示す。
【0116】
【表2-1】
【表2-2】
【0117】
表2に示すように、モル比(N/NLi)が4〜6である例29〜31は、モル比(N/NLi)が6を超える例32〜35に比べて容量維持率が高く、サイクル特性が優れていた。また、モル比(N/NLi)が4である例29が特にサイクル特性が優れていた。
また、リチウム塩(I)由来のリチウム原子の総モル数(NLi)に対する前記化合物(II−2)の総モル数(N)との比(N/NLi)が4である電解液を用いた例37に比べ、リチウム塩(I)由来のリチウム原子の総モル数(NLi)に対する前記化合物(II−2)の総モル数(N)との比(N/NLi)が2である電解液を用いた例36は容量維持率が高く、優れたサイクル特性を示した。
【0118】
[例38]
例29と同様にして、コイン型非水電解液二次電池を2個(セル1、セル2)製造した。得られたセル1およびセル2について、以下に示す方法によりエネルギー密度および高レートでの充放電特性の評価を行った。
【0119】
[例39]
例7で得た非水電解液を使用した以外は、例29と同様にしてコイン型非水電解液二次電池を2個(セル3、セル4)製造した。得られたセル3およびセル4について、以下に示す方法によりエネルギー密度および高レートでの充放電特性の評価を行った。
【0120】
<高レート充放電特性の評価>
LiCoO正極−リチウム金属箔からなる単極セルのコイン型二次電池の高レート放電特性の評価は、以下に示す方法により行った。
25℃において、0.5Cに相当する定電流で4.5V(電圧はリチウムに対する電圧を表す)まで充電し、さらに充電上限電圧において電流値が0.02Cになるまで充電を行い、しかる後に0.5Cに相当する定電流で3Vまで放電するサイクルを5サイクル行い、二次電池を安定させた。6サイクル目は、0.5Cの定電流で4.5Vまで充電し、さらに充電上限電圧において電流値が0.02Cになるまで充電を行い、しかる後に1.0Cの定電流で3Vまで放電させた。7サイクル目は、0.5Cの定電流で4.5Vまで充電し、さらに充電上限電圧において電流値が0.02Cになるまで充電を行い、しかる後に2.0Cの定電流で3Vまで放電させた。8サイクル目は、0.5Cの定電流で4.5Vまで充電し、さらに充電上限電圧において電流値が0.02Cになるまで充電を行い、しかる後に4.0Cの定電流で3Vまで放電させた。
0.5C放電時のエネルギー密度に対する、各レートのエネルギー密度維持率、および0.5C放電時の放電容量に対する、各レートの放電容量の容量維持率を評価成績とした。
エネルギー密度の評価結果を表3および図1に示す。また、各レートでの放電時における放電容量−電圧曲線を図2および図3に示す。
【0121】
【表3】
【0122】
表3および図1に示すように、モル比(N/NLi)が1〜6の範囲内の例1の非水電解液を使用した例38のセル1、2は、モル比(N/NLi)が6を超える例10の非水電解液を使用した例39のセル3、4に比べ、各放電レートにおけるエネルギー密度の維持率が高かった。また、図3に示すように、例39のセルが高レートほど放電容量が大きく低下するのに対し、図2に示すように、例38のセルは、高レートでも放電容量の低下が抑制されていた。
【0123】
<伝導度の評価>
[例40]
伝導度の測定は、例27で得られた非水電解液について、「溶融塩及び高温化学、2002、45、43」に記載の既知の方法を用いて25℃で行った。
[例41]
例27で得られた非水電解液を用いた以外は、例40と同様の方法により伝導度の測定を行った。
伝導度の評価結果を表4に示す。
【表4】
【0124】
表4に示すように、化合物(II−2A)であるモノグライムを用いた例40の方が、同様にリチウム塩を溶媒和させる効果を持つ化合物(II−2B)であるジグライムを用いた例41に比べて伝導度が高くなった。これは、ジグライムに比べて粘度の低いモノグライムを用いることで、電解液粘度が低くなったためであると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明の二次電池用非水電解液および二次電池は、長期の難燃性と、実用上充分な伝導度を有し、高レートでの充放電特性、および高電圧下におけるサイクル特性に優れている。そのため、携帯電話、ノートパソコン、電気自動車等の様々な用途の二次電池に好適に使用できる。また、本発明の二次電池用非水電解液は、リチウム塩を良好に溶解でき、充分な伝導度を有していることから、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等の他の帯電デバイスにも使用できる。

なお、2010年7月21日に出願された日本特許出願2010−164067号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
図1
図2
図3