(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態の説明を行う。なお、形態を説明するための図面において、方向について特に記載のない場合には図面上での方向をいうものとし、各図面の基準の方向は、記号、数字の方向に対応する。また、平行、直角などの方向は、本発明の効果を損なわない程度のズレを許容するものである。また、各平面図は、ガラスの面を対向して見たときの図である。各平面図は、本発明に係る窓ガラスが車両に取り付けられた状態での車内視の図であるが、車外視の図として参照してもよい。各平面図上での上下方向が車両の上下方向に相当し、各図の下側が路面側に相当する。また、窓ガラスが車両の後部に取り付けられるリヤガラスである場合、図面上での左右方向が車両の車幅方向に相当する。
【0015】
図1は、本発明の第1の実施形態である車両用ガラスアンテナ100の平面図である。車両用ガラスアンテナ100は、複数の並走するヒータ線を有するデフォッガ30が設けられた窓ガラス12に、共用アンテナ導体及び給電部が平面的に設けられたアンテナである。共用アンテナ導体及び給電部は、デフォッガ30の上側に配置されている。
【0016】
デフォッガ30は、複数の並走するヒータ線(
図1では、上側のヒータ線30a,30b等を例示し、下方のヒータ線は省略)と該ヒータ線に給電する複数の帯状のバスバ(
図1では、2つのバスバ31A,31Bを例示)とを有する通電加熱式のパターンである。複数のヒータ線は、例えば、窓ガラス12を車両に取り付けた状態で水平面(地平面)に対して平行な方向に並走するように窓ガラス12に配置される。互いに並走するヒータ線は、2本以上あればよい。並走する複数のヒータ線は上下に延伸する短絡線(
図1では不図示)により短絡されていてもよい。なお、短絡線はガラスアンテナのアンテナ利得の調整として利用されてもよく、その長さは適宜調整されてもよく、1本又は2本以上あってもよい。バスバ31A,31Bは、
図1の場合、窓ガラス12の左側領域及び右側領域にそれぞれ少なくとも1本ずつ設けられており、窓ガラス12の縦方向又は略縦方向に伸長されている。
【0017】
ガラスアンテナ100は、第1の周波数帯と該第1の周波数帯よりも帯域が高い第2の周波数帯の電波の受信に対応可能な共用アンテナ導体と、該共用アンテナ導体に接続された給電部16を備える、1極タイプのアンテナである。すなわち、第1の周波数帯と第2の周波数帯との給電を一つの給電部16で共用するアンテナである。例えば、第1の周波数帯として、AM放送帯が挙げられ、第2の周波数帯として、FM放送帯が挙げられる。
【0018】
給電部16は、共用アンテナ導体の給電点である。給電部16は、窓ガラス12が車体開口部に取り付けられたときに、その車体開口部の車幅方向の側縁に対向して位置するように窓ガラス12に配置される。
【0019】
ガラスアンテナ100は、共用アンテナ導体のパターンとして、少なくとも、給電部16を起点に延伸される第1のエレメント1と、第1のエレメント1を起点に(すなわち接続点Eから)延伸される第2のエレメント2とを有している。第1のエレメント1の少なくとも一部と第2のエレメント2とがループ形状の一部に切り欠き部13を有する半ループ形状を形成するように、第1のエレメント1の延伸の終端Cと第2のエレメント2の延伸の終端Bとが近接して設けられる。そして、第2の周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ
02とし、ガラス波長短縮率をk
2(ただしk
2=0.64)とし、λ
g2=λ
02・k
2としたとき、第1のエレメント1の導体長が0.65λ
g2以上1.0λ
g2以下となるように切り欠き部13が形成されている。すなわち、第1のエレメント1は、給電部16を起点に延伸し、接続点Eから分岐した二つのエレメントのうち接続点Eからの導体長が長い方のエレメントであり、端点Aからの導体長が0.65λ
g2以上1.0λ
g2以下であり、終端Cを開放端としている。
【0020】
図1には、第1のエレメント1の一部と第2のエレメント2とで形成される半ループ形状が、デフォッガ30に対向する下辺部と、下辺部に対向する上辺部と、給電部16に対向する左辺部と、左辺部に対向する右辺部からなる方形状である例が示されている。
【0021】
第1のエレメント1は、給電部16と第2のエレメント2との接続点Eとを接続する接続エレメント1aと、接続点Eを起点に右方に直線的に延伸し、半ループ形状の上辺部を構成する部分エレメント1bと、部分エレメント1bの右方への延伸の終端部を起点に下方に直線的に延伸し、半ループ形状の右辺部を構成する部分エレメント1cと、部分エレメント1cの下方への延伸の終端部を起点に左方に直線的に延伸し、半ループ形状の下辺部の一部を構成する部分エレメント1dとを備える。部分エレメント1dは、第1のエレメントの延伸の終端Cまで延伸する。
【0022】
また、第2のエレメント2は、第1のエレメントとの接続点Eを起点に下方に直線的に延伸し、半ループ形状の左辺部を構成する部分エレメント2aと、部分エレメント2aの下方への延伸の終端部を起点に右方に直線的に延伸し、半ループ形状の下辺部の一部を構成する部分エレメント2bとを備える。部分エレメント2bは、第2のエレメント2の延伸の終端Bまで延伸する。
【0023】
第1のエレメントの延伸の終端Cと第2のエレメントの延伸の終端Bとが接続させずに近接させることにより、半ループ形状の切り欠き部13を形成している。
図1には、半ループ形状の下辺部に切り欠き部13が形成されている例が示されている。
【0024】
また、第2の周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ
02とし、ガラス波長短縮率をk
2(ただしk
2=0.64)とし、λ
g2=λ
02・k
2として、第1のエレメントの導体長L1(
図1の場合、エレメント1a〜1dの導体長の合計)が、0.65λ
g2以上1.0λ
g2以下、より好ましくは0.70λ
g2以上0.95λ
g2以下であれば、第2の放送周波数帯のアンテナ利得向上の点で好ましい結果が得られる。
【0025】
例えば、第2の放送周波数帯として日本のFM放送帯(76〜90MHz)を設定した場合、その中心周波数は83MHzである。一方、米国のFM放送帯(88〜108MHz)の中心周波数は98MHzである。
【0026】
したがって、例えば、米国のFM放送帯のアンテナ利得を向上させたい場合、電波の速さを3.0×10
8m/sとすると、その中心周波数98MHzにおけるλ
g2は1.959mなので、第1のエレメントの導体長L1を、1280mm以上1950mm以下、より好ましくは1380mm以上1860mm以下に調整するとよい。
【0027】
また、共用アンテナ導体は、デフォッガ30との最短距離H2が15mm以上(好ましくは、25mm以上)確保されるようにデフォッガ30の上側に配置されることによって、第1の放送周波数帯のアンテナ利得向上の点で好ましい結果が得られる。
【0028】
図1の場合、最短距離H2は、デフォッガ30の最上部に相当するヒータ線30aと半ループ形状の下辺部を構成する部分エレメント2b(又は、部分エレメント1d)との距離である。
【0029】
このように、
図1に例示したような形態のガラスアンテナであれば、給電部16を外部の信号処理装置(例えば、車載アンプ)の信号経路に所定の導電性部材を介して電気的に接続することによって、低周波数帯と高周波数帯の2つの周波数帯に対応可能な受信特性を低周波数帯用のチョークコイルが無くても得ることができるとともに、高周波数帯の指向性を丸形に一層近づけることができる。
【0030】
上記の導電性部材として、例えば、AV線や同軸ケーブルなどの給電線が用いられる。AV線を用いる場合には給電部16に電気的に接続する。同軸ケーブルを用いる場合には、同軸ケーブルの内部導体を給電部16に電気的に接続し、同軸ケーブルの外部導体を車体にアース接続すればよい。また、信号処理装置に接続されている導線等の導電性部材を給電部16に電気的に接続するためのコネクタを、給電部16に実装する構成を採用してもよい。このようなコネクタによって、AV線や同軸ケーブルの内部導体を給電部16に取り付けることが容易になる。また、給電部16に突起状の導電性部材を設置し、窓ガラス12が取り付けられる車体のフランジにその突起状の導電性部材が接触、嵌合するような構成としてもよい。
【0031】
「終端部」は、エレメントの延伸の終点であってもよいし、その終点手前の導体部分である終点近傍であってもよい。また、エレメント同士の接続部は、曲率を有して接続されていてもよい。
【0032】
共用アンテナ導体及び給電部16は、銀ペースト等の、導電性金属を含有するペーストを、例えば窓ガラスの車内側表面にプリントし、焼付けて形成される。しかし、この形成方法に限定されず、銅等の導電性物質からなる、線状体又は箔状体を、窓ガラスの車内側表面又は車外側表面に形成してもよく、窓ガラスに接着剤等により貼付してもよく、窓ガラス自身の内部に設けてもよい。
【0033】
給電部16の形状は、上記の導電性部材又はコネクタの実装面の形状や、それらの実装面の間隔に応じて決めるとよい。例えば、正方形、略正方形、長方形、略長方形などの方形状や多角形状が実装上好ましい。なお、円、略円、楕円、略楕円などの円状でもよい。
【0034】
各アンテナ導体からなる導体層を合成樹脂製フィルムの内部又はその表面に設け、導体層付き合成樹脂製フィルムを窓ガラス板の車内側表面又は車外側表面に形成してガラスアンテナとしてもよい。さらに、各アンテナ導体が形成されたフレキシブル回路基板を窓ガラスの車内側表面又は車外側表面に形成してガラスアンテナとしてもよい。
【0035】
窓ガラス12の面上に隠蔽膜を形成し、この隠蔽膜の上に給電部及びアンテナ導体の一部分又は全体を設けてもよい。隠蔽膜は黒色セラミックス膜等のセラミックスが挙げられる。この場合、窓ガラスの車外側から見ると、隠蔽膜により隠蔽膜上に設けられているアンテナ導体の部分が車外から見えなくなり、デザインの優れた窓ガラスとなる。図示の構成では、給電部とアンテナ導体の一部を隠蔽膜上に(隠蔽膜の縁と窓ガラス12の縁との間に)形成させることで、車外視において導体の細い直線部分のみを見ることになり、デザイン上好ましい。
【0036】
切り欠き部13の第1のエレメント1と第2のエレメント2との最短距離Lは、2mm以上75mm以下、より好ましくは2mm以上60mm以下、さらに好ましくは2mm以上15mm以下であることが、高周波数帯のアンテナ利得向上及び高周波数帯の無指向性化の点で好ましい結果が得られる。最短距離Lの下限値「2mm」は、アンテナ導体を窓ガラスにプリントできる限界精度である。
【0037】
図1に例示した半ループ形状は、方形状であるが、円状でも、楕円状でも、多角形状でも、両周波数帯のアンテナ利得向上及び高周波数帯の無指向性化の点で好ましい結果が得られる。また、
図1に例示した切り欠き部13は、方形状のデフォッガ30に対向する下辺部に形成されているが、右辺部を構成する部分エレメント1cに形成されても、両周波数帯のアンテナ利得向上及び高周波数帯の無指向性化の点で好ましい結果が得られる。
【0038】
図1に例示した半ループ形状の高さ(
図1では、半ループ形状の左辺部に相当する部分エレメント2aの導体長)H1は、60mm以上150mm以下、より好ましくは90mm以上150mm以下であることが、低周波数帯のアンテナ利得向上の点で好ましい結果が得られる。半ループ形状の高さH1の下限値「60mm」は、第1の周波数帯の最低限のアンテナ利得を確保するために必要な長さである。半ループ形状の高さH1の上限値「150mm」は、窓ガラス12の上縁とデフォッガ30の最上部との距離を考慮して決定される長さである。
【0039】
図2は、本発明の第2の実施形態である車両用ガラスアンテナ200の平面図である。上述のガラスアンテナと同様の部分については、その説明を省略する。
【0040】
半ループ形状の切り欠き部13は、
図2に示されるように形成されてもよい。すなわち、共用アンテナ導体は、部分エレメント2bと部分エレメント1dとが上下方向に所定の間隔(例えば、10mm)を保って、それぞれが互いに並走して延伸する並走部を備えている。このような並走部を設けることによって、アンテナの特性(インピーダンスなど)を調整することができる。
【0041】
図3は、本発明の第3の実施形態である車両用ガラスアンテナ300の平面図である。上述のガラスアンテナと同様の部分については、その説明を省略する。
図3の場合、共用アンテナ導体は、半ループ形状の下辺部を起点に左方向に延伸する第1の延長エレメント3を含んでいる。第1の延長エレメントを含むことによって、高周波数帯の無指向性の点で好ましい結果が得られる。
【0042】
図3に例示された第1の延長エレメント3は、下辺部を構成している部分エレメント2bと左辺部を構成している部分エレメント2aとの接続点Fを起点として左方に直線的に延伸する。第1の延長エレメント3は、第1の延長エレメント3の左方への延伸の終端Dまで延伸する。
【0043】
例えば、高周波数帯をFM放送帯とすると、
図3のガラスアンテナ300の各部の寸法(単位:mm)を、
A−B間の導体長:710
A−C間の導体長:1540
A−D間の導体長:750
とすると、指向性を丸形に近づけることができる。
【0044】
図4は、本発明の第4の実施形態である車両用ガラスアンテナ400の平面図である。上述のガラスアンテナと同様の構成については、その説明を省略する。
図4の場合、
図3の構成に加えて、共用アンテナ導体は、半ループ形状の右辺部と左辺部と給電部16とに接続し、下辺部に平行又は略平行な第1の補助エレメント4を含んでいる。
【0045】
第1の補助エレメント4の追加によって、A−C間の抵抗値を下げることができ、高周波数帯の各周波数のアンテナ利得を平均して算出された平均アンテナ利得を向上させることができる。部分エレメント1bと第1の補助エレメント4との離間距離H3は、平均アンテナ利得向上の点で、2mm以上40mm以下が好ましい。
【0046】
図4に例示された第1の補助エレメント4は、右辺部を構成する部分エレメント1cと左辺部を構成する部分エレメント2aと給電部16とに接続される。第1の補助エレメント4は、給電部16を起点として右方に直線的に延伸し、部分エレメント2aと交わって、部分エレメント1c上の点Gまで延伸する。
【0047】
例えば、高周波数帯をFM放送帯とすると、
図4のガラスアンテナ400の各部の寸法(単位:mm)を、
A−B間の導体長:710
A−C間の導体長:1540
A−D間の導体長:750
離間距離H3 :30
とすると、平均アンテナ利得を向上させることができる。
【0048】
図5は、本発明の第5の実施形態である車両用ガラスアンテナ500の平面図である。上述のガラスアンテナと同様の構成については、その説明を省略する。
図5の場合、
図3の構成に加えて、共用アンテナ導体は、第2の補助エレメント5、第2の延長エレメント6,7及び第3の補助エレメント8,9を含んでいる。
【0049】
第2の補助エレメント5は、半ループ形状の右辺部を構成する部分エレメント1c上の点Jを起点に左方に直線的に延伸し、左辺部を構成する部分エレメント2aと接続して、部分エレメント2aの左方の延伸の終端Kまで延伸する。第2の補助エレメント5を追加することによって、高周波数帯のアンテナ利得の特性に影響を与えないように、低周波数帯のアンテナ利得を向上させることができる。
【0050】
また、第2の延長エレメントは、第1のエレメントを起点に上方に延伸した後、右方又は左方に延伸する。
図5には、第2の延長エレメントとして、延長エレメント6,7が例示されている。延長エレメント6は、第1のエレメントである接続エレメント1aを起点に上方に延伸した後に右方に延伸する。延長エレメント7は、半ループ状形状の上辺部を構成する部分エレメント1bを起点に上方に延伸した後に左方に延伸する。第2の延長エレメント6,7によって、高周波数帯のアンテナ利得の特性に影響を与えないように、低周波数帯のアンテナ利得を向上させることができる。
【0051】
また、第3の補助エレメントは、下辺部と上辺部とに接続し、右辺部又は左辺部に平行又は略平行に延伸する。
図5には、第3の補助エレメントとして、補助エレメント8,9が例示されている。補助エレメント8は、半ループ状形状の下辺部の一部を構成する部分エレメント2b上の点Mを起点に上方に直線的に延伸し、半ループ状形状の上辺部を構成する部分エレメント1bと部分エレメント2bとを接続するエレメントである。補助エレメント9は、部分エレメント1bと第2のエレメント2の終端Bとを接続するエレメントである。第3の補助エレメント8,9によって、高周波数帯のアンテナ利得の特性に影響を与えないように、低周波数帯のアンテナ利得を向上させることができる。
【実施例】
【0052】
上述のガラスアンテナの形態を実際の車両のリヤガラスに取り付けることにより作製された自動車用ガラスアンテナについて、その周波数特性などの実測結果について説明する。
【0053】
本実施例における各エレメントの導体幅は0.8mmである。また、給電部16の大きさは、上下方向が27mm、左右方向が13mmである。
【0054】
アンテナ利得は、ガラスアンテナが形成された自動車用窓ガラスを、ターンテーブル上の自動車の窓枠に組みつけて実測した。給電部にはコネクタが取り付けられていて、コネクタにフィーダ線を接続し、フィーダ線を介して給電部16とアンプとを接続させる。アンプは利得が8dBのアンプである。また、アンプは、チューナとフィーダ線(1.5C−2V 4.5m)によって接続される。窓ガラスには、水平方向から電波(周波数88〜108MHzの偏波面が水平から45度傾いた偏波)を照射し、ターンテーブルを回転させて、窓ガラスに対する電波の照射角度を変更する。
【0055】
アンテナ利得の測定は、ターンテーブルの中心に、ガラスアンテナのガラスを組みつけた自動車の車両中心をセットして、所定の周波数の電波を発信しながら自動車を360°回転させて行われる。アンテナ利得のデータは、回転角度1°毎に、照射周波数帯88〜108MHzにおいて1MHz毎に測定される。電波の発信位置とアンテナ導体との仰角は略水平方向(地面と平行な面を仰角=0°、天頂方向を仰角=90°とする場合、仰角=0°の方向)で測定した。なお、以下に示すグラフでは、基準の半波長ダイポールアンテナに誘起されるアンテナ端子電圧が60dBμVになる電界雰囲気中で、被測定アンテナを測定した結果を表記している。
【0056】
[例1]
図6,7は、
図1に示すガラスアンテナ100の形態を実際の車両のリヤガラスに取り付けたことにより作製された自動車用高周波ガラスアンテナについて、A−C間の導体長及び半ループ形状の高さH1を一定にしたまま、E−B間の導体長を調整することにより切り欠き部13の第1のエレメント1と第2のエレメント2との最短距離Lを変化させたときの、アンテナ利得の実測データである。
図6,7のアンテナ利得を測定したときのガラスアンテナ100の各部の寸法(単位:mm)は、
A−C間の導体長:1540
H1 :90
とする。
【0057】
図6の縦軸は、360°内の各方向のアンテナ利得の中で最も小さいアンテナ利得(最小アンテナ利得)を示している。つまり、最小アンテナ利得は、アンテナ利得が最も低い方向のアンテナ利得を示している。
図6の表の上段は、最小アンテナ利得の88〜108MHzでの平均値(最小アンテナ利得の平均値)を示している。
図6の表の下段は、最小アンテナ利得の88〜108MHzでの最小値(最小アンテナ利得の最小値)を示している。
【0058】
図7は、最短距離Lと最小アンテナ利得の最小値との関係を示している。
図7によれば、最短距離Lを10mm以上75mm以下に調整することによって、米国のFM放送帯(88〜108MHz)の最小アンテナ利得の最小値を向上させることができる。
【0059】
[例2]
図10,11は、本発明の実施例であるガラスアンテナ100(
図1),300(
図3),400(
図4),600(
図8)と、比較例である従来のガラスアンテナREF(
図9)のアンテナ利得の実測データである。
図12は、ガラスアンテナ100とガラスアンテナREFの指向性の方向特性図である。ガラスアンテナ600は、ガラスアンテナ500(
図5)の改良形である。ガラスアンテナREFは、上述の特許文献2に開示された2入力(給電部が2つ)のガラスアンテナを1入力化(給電部が1つ)したものである。
【0060】
図10〜12のアンテナ利得を測定したときのガラスアンテナ100(
図1)の各部の寸法(単位:mm)は、
A−C間の導体長:1540
A−B間の導体長:710
H1 :90
L :10
とする。
【0061】
図10,11のアンテナ利得を測定したときのガラスアンテナ300(
図3)の各部の寸法(単位:mm)は、
A−C間の導体長:1540
A−B間の導体長:710
H1 :90
L :10
A−D間の長さ:750
とする。
【0062】
図10,11のアンテナ利得を測定したときのガラスアンテナ400(
図4)の各部の寸法(単位:mm)は、
A−C間の導体長:1540
A−B間の導体長:710
H1 :90
L :10
A−D間の導体長:750
H3 :30
とする。
【0063】
図10,11のアンテナ利得を測定したときのガラスアンテナ600(
図8)の各部の寸法(単位:mm)は、
x1:200
x2:500
x3:30
x4:525
x5:200
x6:350
x7:360
x8:500
y1:30
y2:30
y3:30
y4:30
y5:45
である。
【0064】
図10〜12のアンテナ利得を測定したときのガラスアンテナREF(
図9)の各部の寸法(単位:mm)は、
x21:320
x22:400
x23:400
x24:400
x25:490
x26:525
x27:160
x28:170
x29:200
x30:300
x31:400
x32:400
x33:500
y21:10
y22:25
y23:10
y24:25
y25:25
y26:25
y27:45
y28:95
y29:15
y30:10
である。
【0065】
なお、「x**」は(**は数字を表す)、
図8,9上で「x**」が矢印で示している点から、デフォッガ30の中央線40までの最短距離を示している。中央線40は、上下方向に仮想的に引かれた直線である。「y**」は、上下方向での導体間の最短距離を示している。
【0066】
図10の縦軸は、360°内の各方向のアンテナ利得の平均値(平均アンテナ利得)を示している。
図11の縦軸は、360°内の各方向のアンテナ利得の中で最も小さいアンテナ利得(最小アンテナ利得)を示している。
【0067】
図10の平均アンテナ利得の観点では、各ガラスアンテナの利得差は小さいが、
図11の最小アンテナ利得の観点では、本発明に係るガラスアンテナは、ガラスアンテナREFに比べ、FM放送帯の約100MHz以上の帯域において、最小アンテナ利得を向上させることができる。その結果、
図12に示されるように、ある特定の方向でアンテナ利得が低下しているガラスアンテナREFに対し、ガラスアンテナ100はその特定の方向でのアンテナ利得が上がる。したがって、本発明に係るガラスアンテナは、指向性を限りなく丸形に近づけることができるので、電波の到来方向によっては電波が受信しにくくなることを防ぐことができる。