特許第5943196号(P5943196)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5943196水処理設備の制御方法及び制御プログラム並びに水処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943196
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年6月29日
(54)【発明の名称】水処理設備の制御方法及び制御プログラム並びに水処理システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20060101AFI20160616BHJP
   G06Q 50/06 20120101ALI20160616BHJP
【FI】
   C02F1/00 D
   C02F1/00 V
   G06Q50/06
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-142973(P2012-142973)
(22)【出願日】2012年6月26日
(65)【公開番号】特開2014-4550(P2014-4550A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年6月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】大月 孝之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 友野
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 洋
(72)【発明者】
【氏名】中野 吉雅
【審査官】 金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−112428(JP,A)
【文献】 特開2002−119956(JP,A)
【文献】 特開2009−216525(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3112822(JP,U)
【文献】 特開昭56−087486(JP,A)
【文献】 特開昭63−070150(JP,A)
【文献】 特開2004−025119(JP,A)
【文献】 特開平03−288586(JP,A)
【文献】 特開昭62−038296(JP,A)
【文献】 特開2004−275826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00
B01D 53/22
C02F 1/44
B01D 61/00−71/82
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水質指標と前記水質指標に対して因果関係がない汚濁成分の濃度との相関が被処理水にあるか否かを定期的に行う前記被処理水のサンプル分析の結果から判定する相関判定工程と、
前記相関があることを条件として、前記被処理水の直近一定期間における前記水質指標の計測値の分布を統計解析し、その統計解析の結果と前記相関に基づいて、前記被処理水の前記汚濁成分の濃度を推定する第1汚濁成分濃度推定工程と、
前記相関がないことを条件として、過去の前記被処理水のサンプル分析における前記汚濁成分の蓄積データの濃度分布を統計解析し、その統計解析の結果に基づいて、前記被処理水の前記汚濁成分の濃度を推定する第2汚濁成分濃度推定工程と、
前記相関判定工程の判定結果に基づき前記第1汚濁成分濃度推定工程又は前記第2汚濁成分濃度推定工程のいずれかを選択し、該選択した推定工程によって推定した前記被処理水の前記汚濁成分の濃度に基づいて、前記被処理水を処理する水処理設備の運転条件を決定する運転条件決定工程と、を含む、水処理設備の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の水処理設備の制御方法において、前記第1汚濁成分濃度推定工程は、前記被処理水のサンプル分析の結果を回帰分析して回帰直線及びその予測限界を求め、前記被処理水の直近一定期間における前記水質指標の計測値の分布の平均値と標準偏差を統計解析によって求め、その平均値と標準偏差に基づいて設定した出現確率に収まる前記水質指標の計測値の最大値を求め、前記回帰直線の予測限界及び前記水質指標の計測値の最大値に基づいて、前記被処理水の前記汚濁成分の濃度を推定する工程を含む、ことを特徴とする水処理設備の制御方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水処理設備の制御方法において、前記第2汚濁成分濃度推定工程は、前記相関がないことを条件として、過去の全ての前記被処理水のサンプル分析における前記汚濁成分の蓄積データの濃度分布を統計解析し、その統計解析の結果に基づいて、前記被処理水の前記汚濁成分の濃度を推定する、ことを特徴とする水処理設備の制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載の水処理設備の制御方法において、前記第2汚濁成分濃度推定工程は、過去の全ての前記被処理水のサンプル分析における前記汚濁成分の濃度の分布の平均値と標準偏差を統計解析によって求め、その平均値と標準偏差に基づいて設定した出現確率に収まる前記汚濁成分の濃度の最大値を求め、それを前記被処理水の前記汚濁成分の濃度と推定する工程を含む、ことを特徴とする水処理設備の制御方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の水処理設備の制御方法において、前記水質指標は前記被処理水の導電率である、ことを特徴とする水処理設備の制御方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の水処理設備の制御方法において、前記水質指標は前記被処理水の濁度である、ことを特徴とする水処理設備の制御方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の水処理設備の制御方法において、前記水質指標は前記被処理水の吸光度である、ことを特徴とする水処理設備の制御方法。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載の水処理設備の制御方法において、前記水質指標は前記被処理水の水素イオン指数である、ことを特徴とする水処理設備の制御方法。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれかに記載の水処理設備の制御方法において、前記水質指標は前記被処理水の酸化還元電位である、ことを特徴とする水処理設備の制御方法。
【請求項10】
水質指標と前記水質指標に対して因果関係がない汚濁成分の濃度との相関が被処理水にあるか否かを定期的に行う前記被処理水のサンプル分析の結果から判定する相関判定手順と、
前記相関があることを条件として、前記被処理水の直近一定期間における前記水質指標の計測値の分布を統計解析し、その統計解析の結果と前記相関に基づいて、前記被処理水の前記汚濁成分の濃度を推定する第1汚濁成分濃度推定手順と、
前記相関がないことを条件として、過去の前記被処理水のサンプル分析における前記汚濁成分の蓄積データの濃度分布を統計解析し、その統計解析の結果に基づいて、前記被処理水の前記汚濁成分の濃度を推定する第2汚濁成分濃度推定手順と、
前記相関判定手順の判定結果に基づき前記第1汚濁成分濃度推定手順又は前記第2汚濁成分濃度推定手順のいずれかを選択し、該選択した推定手順によって推定した前記被処理水の前記汚濁成分の濃度に基づいて、前記被処理水を処理する水処理設備の運転条件を決定する運転条件決定手順と、をコンピュータに実行させる、水処理設備の制御プログラム。
【請求項11】
請求項10に記載の水処理設備の制御プログラムにおいて、前記第2汚濁成分濃度推定手順は、前記相関がないことを条件として、過去の全ての前記被処理水のサンプル分析における前記汚濁成分の蓄積データの濃度分布を統計解析し、その統計解析の結果に基づいて、前記被処理水の前記汚濁成分の濃度を推定する、ことを特徴とする水処理設備の制御プログラム。
【請求項12】
水処理設備と、
前記水処理設備で処理される被処理水の水質指標を計測する計測器と、
前記水処理設備を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記水質指標と前記水質指標に対して因果関係がない汚濁成分の濃度との相関が被処理水にあるか否かを定期的に行う前記被処理水のサンプル分析の結果から判定する相関判定手段と、
前記相関があることを条件として、前記被処理水の直近一定期間における前記水質指標の計測値の分布を統計解析し、その統計解析の結果と前記相関に基づいて、前記被処理水の前記汚濁成分の濃度を推定する第1汚濁成分濃度推定手段と、
前記相関がないことを条件として、過去の前記被処理水のサンプル分析における前記汚濁成分の蓄積データの濃度分布を統計解析し、その統計解析の結果に基づいて、前記被処理水の前記汚濁成分の濃度を推定する第2汚濁成分濃度推定手段と、
前記相関判定手段の判定結果に基づき前記第1汚濁成分濃度推定手段又は前記第2汚濁成分濃度推定手段のいずれかを選択し、該選択した推定手段によって推定した前記被処理水の前記汚濁成分の濃度に基づいて、前記水処理設備の運転条件を決定する運転条件決定手段と、を含む、ことを特徴とする水処理システム。
【請求項13】
請求項12に記載の水処理システムにおいて、前記第2汚濁成分濃度推定手段は、前記相関がないことを条件として、過去の全ての前記被処理水のサンプル分析における前記汚濁成分の蓄積データの濃度分布を統計解析し、その統計解析の結果に基づいて、前記被処理水の前記汚濁成分の濃度を推定する、ことを特徴とする水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理設備の制御方法及び制御プログラム並びに水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水処理設備を管理する従来技術の一例として、通信回線で水処理設備に接続された管理センタにおいて、水処理設備の稼働状態を監視するとともに、その稼働状態を評価し、その評価結果に基づいて稼働条件を変更する設備管理システムが公知である(例えば特許文献1を参照)。このような水処理設備の設備管理システムにおいて、水処理設備の稼働状態の評価は、水処理設備に設けられたセンサによる計測値等に基づいて行われる。
【0003】
一般的に水処理設備に設置されるセンサとしては、一般的な工業計器が用いられる。具体的には被処理水の導電率を計測する導電率計、被処理水の濁度を計測する濁度計、被処理水の吸光度を計測する吸光光度計、被処理水の水素イオン指数(potential Hydrogen:pH)を計測するpH計、被処理水の酸化還元電位(Oxidation-reduction Potential:ORP)を計測する酸化還元電位計等の安価なセンサが一般的に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3624940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の一般的な工業計器(導電率計、濁度計、吸光光度計、pH計、酸化還元電位計等)では、水処理設備の運転に悪影響を及ぼす汚濁成分のうち、計測する水質指標(導電率、濁度、吸光度、pH、酸化還元電位等)との間に因果関係がない汚濁成分(例えばシリカ、カルシウム等の無機物等)の濃度を直接的に計測することができない。またこのような汚濁成分を直接的に計測可能な計測装置は、一般に極めて高価であるため、水処理設備に設置するのはコスト的な制約等から実際上困難な場合が多い。そのため上記のような汚濁成分の計測は、作業者の手作業によって、定期的に被処理水のサンプルを採取して分析することにより行われている。
【0006】
しかしながら作業者の手作業による被処理水のサンプル採取及び分析は、その作業に要する手間や時間等を考慮すると、例えば週に一回あるいは月に一回程度の頻度で実施することしかできない。そのためサンプル採取した被処理水の分析結果だけでは、被処理水の水質変動を的確に把握することは困難であり、例えば被処理水の水質が短期間に変動したような場合に、対応が遅れて水処理設備に異常が生じてしまう虞がある。
【0007】
このような状況に鑑み本発明はなされたものであり、その目的は、高価な計測装置を設けることなく、被処理水の水質変動に的確に対応した最適な運転条件で水処理設備を運用できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
被処理水の水質指標と汚濁成分の濃度との間に因果関係がない場合、理論的には、その水質指標から汚濁成分の濃度を直接的に推定することはできない。しかし例えば工業用水、上水、井水等の用水やこれらを処理した純水、これらが単に濃縮されるプロセスを経た冷却水、ボイラー水、RO濃縮水等、発生源が一定で成分変動が少ない被処理水では、その被処理水に含まれる複数の成分の比率が略一定である場合が多い。このことは例えば単一の食品や飲料品、鉄鋼、紙パルプ等を量産する工場の排水についても同じことが言える。さらに半導体製造工場や液晶パネル製造工場、化学コンビナート等、複数のプロセスが同時に稼働する工場の総合排水や主要製造プロセス系統排水等は、その排水の性状が概ね安定している場合が多く、その成分比率が略一定である場合が多い。
【0009】
そして被処理水に含まれる複数の成分の成分比率が略一定である場合には、ある水質指標に対して因果関係がある成分と、その水質指標に対して因果関係がない成分との比率は、略一定になるはずである。したがって被処理水の成分比率が略一定である場合には、ある水質指標とある成分との間の因果関係を介して、その水質指標とその水質指標に対して因果関係がない他の成分との間に一定の相関関係が成立し得る。つまり被処理水の発生源や発生プロセスによっては、その被処理水の成分比率が略一定になる場合があり、そのような場合には、ある水質指標とその水質指標に対して因果関係がない汚濁成分との間に一定の相関関係が成立し得る。このような知見に基づいて本発明はなされたものである。
【0010】
<本発明の第1の態様>
本発明の第1の態様は、水質指標と前記水質指標に対して因果関係がない汚濁成分の濃度との相関が被処理水にあるか否かを定期的に行う前記被処理水のサンプル分析の結果から判定する相関判定工程と、前記相関があることを条件として、前記被処理水の直近一定期間における前記水質指標の計測値の分布を統計解析し、その統計解析の結果と前記相関に基づいて、前記被処理水の前記汚濁成分の濃度を推定する第1汚濁成分濃度推定工程と、推定した前記被処理水の前記汚濁成分の濃度に基づいて、前記被処理水を処理する水処理設備の運転条件を決定する運転条件決定工程と、を含む、水処理設備の制御方法である。
【0011】
まず定期的に行う被処理水のサンプル分析の結果から、ある水質指標とその水質指標に対して因果関係がない汚濁成分の濃度との間に相関関係が成立するか否かを判定する。そして両者の間に相関関係が成立することを条件として、被処理水の直近一定期間における水質指標の計測値の分布を統計解析し、その統計解析の結果とその相関関係に基づいて、その汚濁成分の濃度を推定する。それによってある水質指標から、その水質指標に対して因果関係がない汚濁成分の濃度を高精度に推定することができるので、高価な計測装置を設けることなく、被処理水の水質変動を的確に把握することができる。そして推定したその汚濁成分の濃度に基づいて、その被処理水を処理する水処理設備の運転条件を決定する。それによって被処理水の水質変動に的確に対応した最適な運転条件で水処理設備を運用することができる。
【0012】
これにより本発明の第1の態様によれば、高価な計測装置を設けることなく、被処理水の水質変動に的確に対応した最適な運転条件で水処理設備を運用できるという作用効果が得られる。
【0013】
<本発明の第2の態様>
本発明の第2の態様は、前述した本発明の第1の態様において、前記第1汚濁成分濃度推定工程は、前記被処理水のサンプル分析の結果を回帰分析して回帰直線及びその予測限界を求め、前記被処理水の直近一定期間における前記水質指標の計測値の分布の平均値と標準偏差を統計解析によって求め、その平均値と標準偏差に基づいて設定した出現確率に収まる前記水質指標の計測値の最大値を求め、前記回帰直線の予測限界及び前記水質指標の計測値の最大値に基づいて、前記被処理水の前記汚濁成分の濃度を推定する工程を含む、ことを特徴とする水処理設備の制御方法である。
本発明の第2の態様によれば、被処理水の水質指標に対して因果関係がない汚濁成分の濃度を推定誤差の範囲内の最大値(最悪値)として推定することができるので、最適な運転条件での水処理設備の運用をより安全に行うことが可能になる。
【0014】
<本発明の第3の態様>
本発明の第3の態様は、前述した本発明の第1の態様又は第2の態様において、前記相関がないことを条件として、過去の全ての前記被処理水のサンプル分析における前記汚濁成分の濃度の分布を統計解析し、その統計解析の結果に基づいて、前記被処理水の前記汚濁成分の濃度を推定する第2汚濁成分濃度推定工程をさらに含む、ことを特徴とする水処理設備の制御方法である。
【0015】
例えば被処理水の発生源や発生プロセスに一時的に何らかの変動が生ずると、被処理水の成分比率に変動が生ずる可能性があり、それによってある水質指標とその水質指標に対して因果関係がない汚濁成分の濃度との間の相関関係が一時的に成立しなくなることもあり得る。そしてある水質指標とその水質指標に対して因果関係がない汚濁成分の濃度との間に相関関係が成立しない場合には、その水質指標に基づいてその汚濁成分の濃度を推定することが困難になる。
【0016】
したがってそのような場合には、暫定的に、過去の全ての被処理水のサンプル分析における汚濁成分の濃度の分布を統計解析し、その統計解析の結果に基づいて、その汚濁成分の濃度を推定する。つまり過去のサンプル分析におけるその汚濁成分の濃度の蓄積データに基づいて、その汚濁成分の濃度を統計的に推定する。それによって例えば被処理水の発生源や発生プロセスに一時的に何らかの変動が生じて、その水質指標とその汚濁成分の濃度との間の相関関係が一時的に成立しなくなったときでも、適切な運転条件を設定して水処理設備の運用を安全に継続することができる。
【0017】
<本発明の第4の態様>
本発明の第4の態様は、前述した本発明の第3の態様において、前記第2汚濁成分濃度推定工程は、過去の全ての前記被処理水のサンプル分析における前記汚濁成分の濃度の分布の平均値と標準偏差を統計解析によって求め、その平均値と標準偏差に基づいて設定した出現確率に収まる前記汚濁成分の濃度の最大値を求め、それを前記被処理水の前記汚濁成分の濃度と推定する工程を含む、ことを特徴とする水処理設備の制御方法である。
本発明の第4の態様によれば、水質指標とその水質指標に対して因果関係がない汚濁成分の濃度との間に相関関係が成立しない場合であっても、その被処理水の水質指標に対して因果関係がない汚濁成分の濃度を推定誤差の範囲内の最大値(最悪値)として推定することができるので、適切な運転条件での水処理設備の運用をより安全に行うことが可能になる。
【0018】
<本発明の第5の態様>
本発明の第5の態様は、前述した本発明の第1〜第4の態様のいずれかにおいて、前記水質指標は前記被処理水の導電率である、ことを特徴とする水処理設備の制御方法である。
【0019】
被処理水に含まれるイオン性成分の濃度変動は、その被処理水の導電率に影響する。つまり被処理水の導電率とイオン性成分の濃度との間には因果関係がある。そして被処理水の成分比率が略一定になる場合には、被処理水の導電率と被処理水の導電率に対して因果関係がない汚濁成分の濃度との間に一定の相関関係が成立し得る。したがって本発明の第5の態様によれば、その相関関係に基づいて、被処理水の導電率に対して因果関係がない汚濁成分の濃度をその被処理水の導電率から高精度に推定することができるので、高価な計測装置を設けることなく、被処理水の水質変動を的確に把握することができる。
【0020】
<本発明の第6の態様>
本発明の第6の態様は、前述した本発明の第1〜第4の態様のいずれかにおいて、前記水質指標は前記被処理水の濁度である、ことを特徴とする水処理設備の制御方法である。
【0021】
被処理水に含まれる固形成分の濃度変動は、その被処理水の濁度に影響する。つまり被処理水の濁度と固形成分の濃度との間には因果関係がある。そして被処理水の成分比率が略一定になる場合には、被処理水の濁度と被処理水の濁度に対して因果関係がない汚濁成分の濃度との間に一定の相関関係が成立し得る。したがって本発明の第6の態様によれば、その相関関係に基づいて、被処理水の濁度に対して因果関係がない汚濁成分の濃度をその被処理水の濁度から高精度に推定することができるので、高価な計測装置を設けることなく、被処理水の水質変動を的確に把握することができる。
【0022】
<本発明の第7の態様>
本発明の第7の態様は、前述した本発明の第1〜第4の態様のいずれかにおいて、前記水質指標は前記被処理水の吸光度である、ことを特徴とする水処理設備の制御方法である。
【0023】
被処理水に含まれる有機・無機性の溶解成分及び固形成分の濃度変動は、その被処理水の吸光度に影響する。つまり被処理水の吸光度と有機・無機性の溶解成分及び固形成分の濃度との間には因果関係がある。そして被処理水の成分比率が略一定になる場合には、被処理水の吸光度と被処理水の吸光度に対して因果関係がない汚濁成分の濃度との間に一定の相関関係が成立し得る。したがって本発明の第7の態様によれば、その相関関係に基づいて、被処理水の吸光度に対して因果関係がない汚濁成分の濃度をその被処理水の吸光度から高精度に推定することができるので、高価な計測装置を設けることなく、被処理水の水質変動を的確に把握することができる。
【0024】
<本発明の第8の態様>
本発明の第8の態様は、前述した本発明の第1〜第4の態様のいずれかにおいて、前記水質指標は前記被処理水の水素イオン指数である、ことを特徴とする水処理設備の制御方法である。
【0025】
被処理水に含まれる酸成分及びアルカリ成分の濃度変動は、その被処理水の水素イオン指数(pH)に影響する。つまり被処理水の水素イオン指数と酸成分及びアルカリ成分の濃度との間には因果関係がある。そして被処理水の成分比率が略一定になる場合には、被処理水の水素イオン指数と被処理水の水素イオン指数に対して因果関係がない汚濁成分の濃度との間に一定の相関関係が成立し得る。したがって本発明の第8の態様によれば、その相関関係に基づいて、被処理水の水素イオン指数に対して因果関係がない汚濁成分の濃度をその被処理水の水素イオン指数から高精度に推定することができるので、高価な計測装置を設けることなく、被処理水の水質変動を的確に把握することができる。
【0026】
<本発明の第9の態様>
本発明の第9の態様は、前述した本発明の第1〜第4の態様のいずれかにおいて、前記水質指標は前記被処理水の酸化還元電位である、ことを特徴とする水処理設備の制御方法である。
【0027】
被処理水に含まれる酸化還元物質の濃度変動は、その被処理水の酸化還元電位(ORP)に影響する。つまり被処理水の酸化還元電位と酸化還元物質の濃度との間には因果関係がある。そして被処理水の成分比率が略一定になる場合には、被処理水の酸化還元電位と被処理水の酸化還元電位に対して因果関係がない汚濁成分の濃度との間に一定の相関関係が成立し得る。したがって本発明の第9の態様によれば、その相関関係に基づいて、被処理水の酸化還元電位に対して因果関係がない汚濁成分の濃度をその被処理水の酸化還元電位から高精度に推定することができるので、高価な計測装置を設けることなく、被処理水の水質変動を的確に把握することができる。
【0028】
<本発明の第10の態様>
本発明の第10の態様は、水質指標と前記水質指標に対して因果関係がない汚濁成分の濃度との相関が被処理水にあるか否かを定期的に行う前記被処理水のサンプル分析の結果から判定する相関判定手順と、前記相関があることを条件として、前記被処理水の直近一定期間における前記水質指標の計測値の分布を統計解析し、その統計解析の結果と前記相関に基づいて、前記被処理水の前記汚濁成分の濃度を推定する第1汚濁成分濃度推定手順と、推定した前記被処理水の前記汚濁成分の濃度に基づいて、前記被処理水を処理する水処理設備の運転条件を決定する運転条件決定手順と、をコンピュータに実行させる、水処理設備の制御プログラムである。
本発明の第10の態様によれば、この制御プログラムを実行するコンピュータにより制御される水処理設備において、前述した本発明の第1の態様と同様の作用効果が得られる。
【0029】
<本発明の第11の態様>
本発明の第11の態様は、前述した本発明の第10の態様において、前記相関がないことを条件として、過去の全ての前記被処理水のサンプル分析における前記汚濁成分の濃度の分布を統計解析し、その統計解析の結果に基づいて、前記被処理水の前記汚濁成分の濃度を推定する第2汚濁成分濃度推定手順をコンピュータに実行させる、ことを特徴とする水処理設備の制御プログラムである。
本発明の第11の態様によれば、この制御プログラムを実行するコンピュータにより制御される水処理設備において、前述した本発明の第3の態様と同様の作用効果が得られる。
【0030】
<本発明の第12の態様>
本発明の第12の態様は、水処理設備と、前記水処理設備で処理される被処理水の水質指標を計測する計測器と、前記水処理設備を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記水質指標と前記水質指標に対して因果関係がない汚濁成分の濃度との相関が被処理水にあるか否かを定期的に行う前記被処理水のサンプル分析の結果から判定する相関判定手段と、前記相関があることを条件として、前記被処理水の直近一定期間における前記水質指標の計測値の分布を統計解析し、その統計解析の結果と前記相関に基づいて、前記被処理水の前記汚濁成分の濃度を推定する第1汚濁成分濃度推定手段と、推定した前記被処理水の前記汚濁成分の濃度に基づいて、前記水処理設備の運転条件を決定する運転条件決定手段と、を含む、ことを特徴とする水処理システムである。
本発明の第12の態様によれば、水処理設備において、前述した本発明の第1の態様と同様の作用効果が得られる。
【0031】
<本発明の第13の態様>
本発明の第13の態様は、前述した本発明の第12の態様において、前記制御装置は、前記相関がないことを条件として、過去の全ての前記被処理水のサンプル分析における前記汚濁成分の濃度の分布を統計解析し、その統計解析の結果に基づいて、前記被処理水の前記汚濁成分の濃度を推定する第2汚濁成分濃度推定手段をさらに含む、ことを特徴とする水処理システムである。
本発明の第13の態様によれば、水処理設備において、前述した本発明の第3の態様と同様の作用効果が得られる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、高価な計測装置を設けることなく、被処理水の水質変動に的確に対応した最適な運転条件で水処理設備を運用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】水処理装置の構成を図示したブロック図。
図2】水処理装置の制御手順を図示したフローチャート。
図3】被処理水の導電率とシリカ濃度とのサンプル分析データの散布図及び直近1ヶ月における被処理水の導電率計測値の度数分布図。
図4】過去の全ての被処理水のサンプル分析におけるシリカ濃度の度数分布図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
<水処理装置の構成>
「水処理設備」の一例として水処理装置10の構成について、図1を参照しながら説明する。
図1は、水処理装置10の構成を図示したブロック図である。
【0035】
水処理装置10は、RO(Reverse Osmosis)膜分離装置11、導電率センサ12、給水加温装置13、温度センサ14、高圧ポンプ15、第1流量センサ16、第2流量センサ17及び制御装置20を備える。
【0036】
RO膜分離装置11は、水は透過するが水以外の不純物は透過しない性質を有するRO膜を用いた水濾過装置である。ここでRO膜は、逆浸透膜を意味するが、いわゆるナノ濾過膜も含む。RO膜分離装置11に供給される被処理水は、RO膜を透過した透過水とRO膜を透過せずに濃縮された濃縮水とに分離される。
【0037】
「計測器」としての導電率センサ12は、RO膜分離装置11へ被処理水を供給する流路(以下、「被処理水供給路」という。)に設けられており、被処理水の導電率を計測するセンサである。給水加温装置13は、被処理水供給路に設けられており、RO膜分離装置11に供給される被処理水の温度を調整する装置である。温度センサ14は、被処理水供給路の給水加温装置13より下流側に設けられており、給水加温装置13から出力される被処理水の温度を検出するセンサである。高圧ポンプ15は、被処理水供給路に設けられており、RO膜分離装置11へ被処理水を加圧送出するポンプである。第1流量センサ16は、RO膜分離装置11から透過水が排出される流路に設けられており、RO膜分離装置11から排出される透過水の流量を検出するセンサである。第2流量センサ17は、RO膜分離装置11から濃縮水が排出される流路に設けられており、RO膜分離装置11から排出される濃縮水の流量を検出するセンサである。制御装置20は、公知のマイコン制御装置であり、導電率センサ12、温度センサ14、第1流量センサ16及び第2流量センサ17の出力信号に基づいて、RO膜分離装置11、給水加温装置13及び高圧ポンプ15を制御する。
【0038】
<水処理装置の制御>
制御装置20は、RO膜分離装置11へ供給される被処理水の温度が所望の温度になるように、温度センサ14の出力信号に基づいて給水加温装置13を制御する。また制御装置20は、RO膜分離装置11による水回収率が所望の水回収率となるように、第1流量センサ16及び第2流量センサ17の出力信号に基づいて、RO膜分離装置11及び高圧ポンプ15を制御する。そして制御装置20は、RO膜分離装置11へ供給される被処理水の温度、RO膜分離装置11による水回収率を、導電率センサ12が検出する被処理水の導電率に基づいて最適な値に設定する。導電率センサ12による被処理水の導電率の計測は、一定の周期で繰り返し行われ、その導電率計測値のデータは、制御装置20の記憶装置(図示せず)に全て記憶されて蓄積される。
【0039】
ところでRO膜分離装置11による水回収率は、高圧ポンプ15による被処理水の供給圧力、あるいは供給する被処理水の温度によって変動する。そしてRO膜分離装置11による水回収率は、RO膜分離装置11にスケールが発生するリスク(以下、「スケール発生リスク」という。)を一定の許容範囲に抑制しつつ、可能な限り高く設定するのが節水の観点からは望ましい。
【0040】
しかしRO膜分離装置11による水回収率を高くしていくと、それに従ってスケール発生リスクは高まることになる。またRO膜分離装置11のスケール発生リスクは、供給される被処理水の温度も影響する。例えばカルシウム系のスケール生成成分は、被処理水の温度が高い方が発生リスクは高まり、逆にシリカ系のスケール生成成分は、被処理水の温度が低い方が発生リスクは高まる。つまりRO膜分離装置11へ供給する被処理水の温度は、スケール発生リスクを抑制する観点からすれば、ある一定の範囲に維持するのが望ましい。他方、節電の観点からすれば、RO膜分離装置11へ供給する被処理水の温度は可能な限り低い方が望ましい。
【0041】
そしてRO膜分離装置11のスケール発生リスクは、その被処理水に含まれるスケール生成成分(例えばシリカ、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、炭酸水素イオン等の無機物質)の濃度によっても変動する。ここで例えば被処理水のシリカ濃度は、その被処理水の導電率との間には因果関係がないため、理論的には、被処理水の導電率から直接的に推定することはできない。しかし前述したように、被処理水の発生源や発生プロセスによっては、その被処理水の成分比率が略一定になる場合がある。そして被処理水に含まれる複数の成分の成分比率が略一定である場合には、被処理水の導電率に対して因果関係がある成分と、被処理水の導電率に対して因果関係がないシリカ等のスケール生成成分との比率は、略一定になるはずである。
【0042】
したがって被処理水の成分比率が略一定である場合には、被処理水の導電率とある成分との間の因果関係を介して、被処理水の導電率とシリカ等のスケール生成成分との間に一定の相関関係が成立し得る。このような被処理水の具体的な例としては、例えばイオン成分や有機酸等の有機性汚濁物質、塩化物イオン等の無機イオンを含有する工業用水、上水、井水等が挙げられる。
【0043】
以下、水処理装置10の制御手順について、図2図4を参照しながら説明する。
図2は、水処理装置10の制御手順を図示したフローチャートである。
【0044】
1.相関判定手順
まず被処理水の導電率とシリカ(SiO2)濃度との間に相関があるか否かを定期的に行う被処理水のサンプル分析の結果から判定する。このサンプル分析は、例えば作業者が一日、一週間あるいは一ヶ月に一回程度の頻度で、被処理水のサンプルを採取し、その採取したサンプルの導電率の計測とシリカ濃度の分析を行う。そして一定数蓄積されたサンプル分析結果のデータから、被処理水の導電率とシリカ濃度との相関係数を算出し、その相関係数から両者の間に相関があるか否かを判定する(図2のステップS1)。
【0045】
一般的には、相関係数の絶対値が0.2〜0.4でやや相関があり、0.4〜0.7でかなり相関があり、0.7〜1.0で強い相関があると言われている。本発明において、どの程度の相関を基準に相関の有無を判定するかは、水処理装置10において、どの程度のリスクを許容できるか等に応じて適宜決定すればよい。例えば当該実施例において被処理水の導電率とシリカ濃度との間に相関があるか否かは、相関係数の絶対値が0.5以上であるか否かをもって判定する(図2のステップS2)。この相関係数の演算及び相関の有無の判定は、例えばサンプル分析結果のデータに基づいて作業者が手作業で行い、その結果を制御装置20に入力してもよいし、サンプル分析結果のデータを制御装置20に入力し、制御装置20のコンピュータで実行されるプログラムによって演算処理するようにしてもよい。
【0046】
2.第1汚濁成分濃度推定手順
図3は、被処理水の導電率とシリカ濃度とのサンプル分析データの一例を図示した散布図及び直近1ヶ月における被処理水の導電率計測値の度数分布を図示したものである。
【0047】
被処理水の導電率とシリカ濃度との相関係数の絶対値が0.5以上であることを条件として(図2のステップS2でYes)、被処理水の直近一定期間における導電率計測値(導電率センサ12で計測した被処理水の導電率)の分布を統計解析する(図2のステップS3)。そしてその統計解析の結果と、被処理水の導電率とシリカ濃度との間の相関に基づいて、被処理水のシリカ濃度を推定する(図2のステップS4)。
【0048】
より具体的には、まず被処理水のサンプル分析の結果を回帰分析して回帰直線(図3の実線A)及びその予測限界(図3の波線B、C)を求める。次に被処理水の直近1ヶ月における導電率計測値の度数分布(図3の符合Dを付したグラフ)の平均値μと標準偏差σを統計解析によって求め、その平均値μと標準偏差σに基づいて設定した出現確率に収まる導電率計測値の最大値Xmを求める。この出現確率は、例えば平均値μからのずれが2σの範囲に導電率計測値が含まれる確率とすると約95.44%となる。この場合、被処理水の実際の導電率が最大値Xmを超えるリスクは約4.56%ということになる。そして回帰直線Aの上限の予測限界B及び導電率計測値の最大値Xmに基づいて、被処理水の導電率計測値の最大値Xmに対応するシリカ濃度の最大値(最悪値)Ymを求め、これを被処理水のシリカ濃度と推定する。
【0049】
上記説明した被処理水のサンプル分析の結果の回帰分析、被処理水の直近1ヶ月における導電率計測値の度数分布の統計解析、及びこの回帰分析と統計解析に基づいてシリカ濃度の最大値Ymを求める手順は、例えば作業者が手作業で行ってもよいし、制御装置20のコンピュータで実行されるプログラムによって演算処理するようにしてもよい。
【0050】
3.第2汚濁成分濃度推定手順
例えば被処理水の発生源や発生プロセスに一時的に何らかの変動が生ずると、被処理水の成分比率に変動が生ずる可能性があり、それによって被処理水の導電率とシリカ濃度との間の相関関係が一時的に成立しなくなることもあり得る。そして被処理水の導電率とシリカ濃度との間に相関関係が成立しない場合には、前述した第1汚濁成分濃度推定手順によって、つまり被処理水の導電率に基づいて被処理水のシリカ濃度を推定することが困難になる。したがってそのような場合には、例えば被処理水の導電率とシリカ濃度との相関係数の絶対値が0.5未満であることを条件として(図2のステップS2でNo)、暫定的に、過去の全ての被処理水のサンプル分析における被処理水のシリカ濃度の分布を統計解析する(図2のステップS5)。そしてその統計解析の結果に基づいて被処理水のシリカ濃度を推定する(図2のステップS6)。つまり過去のサンプル分析におけるシリカ濃度の蓄積データに基づいて、被処理水のシリカ濃度を統計的に推定する。
【0051】
図4は、過去の全ての被処理水のサンプル分析における被処理水のシリカ濃度の度数分布を図示したグラフである。
【0052】
より具体的には、まず過去の全ての被処理水のサンプル分析におけるシリカ濃度の度数分布の平均値μと標準偏差σを統計解析によって求め、その平均値μと標準偏差σに基づいて設定した出現確率に収まるシリカ濃度の最大値Ymを求める。この出現確率は、例えば平均値μからのずれが2σの範囲にシリカ濃度が含まれる確率とすると約95.44%となる。この場合、被処理水の実際のシリカ濃度が最大値Ymを超えるリスクは約4.56%ということになる。そしてそのシリカ濃度の最大値Ymを被処理水のシリカ濃度と推定する。
【0053】
上記説明した過去の全ての被処理水のサンプル分析における被処理水のシリカ濃度の分布の統計解析、及びこの統計解析に基づいてシリカ濃度の最大値Ymを求める手順は、例えば作業者が手作業で行ってもよいし、制御装置20のコンピュータで実行されるプログラムによって演算処理するようにしてもよい。
【0054】
4.運転条件決定手順
上記説明した第1汚濁成分濃度推定手順又は第2汚濁成分濃度推定手順のいずれかによって推定した被処理水のシリカ濃度に基づいて、被処理水を処理する水処理設備10の運転条件を決定する(図2のステップS7)。より具体的には、被処理水のシリカ濃度の最大値Ymに基づいて、例えばRO膜分離装置11の水回収率を設定し、例えばRO膜分離装置11へ供給する処理水の温度を設定する。このRO膜分離装置11の水回収率の設定、RO膜分離装置11へ供給する処理水の温度の設定は、例えば作業者が手作業で行ってもよいし、制御装置20のコンピュータで実行されるプログラムによって自動設定するようにしてもよい。
【0055】
5.作用効果
上記説明した水処理装置の制御手順によれば、被処理水の導電率から、その導電率に対して因果関係がない被処理水のシリカ濃度を高精度に推定することができるので、高価な計測装置を設けることなく、被処理水のシリカ濃度の変動を的確に把握することができる。そして推定したそのシリカ濃度に基づいて、RO膜分離装置11の水回収率やRO膜分離装置11へ供給する被処理水の温度を決定することによって、被処理水のシリカ濃度の変動に的確に対応した最適な運転条件で水処理装置10を運用して大幅な節水を実現することができる。
【0056】
また被処理水の導電率とシリカ濃度との間に相関関係が成立しない場合には、上記説明したように、過去のサンプル分析の蓄積データに基づいて、被処理水のシリカ濃度を統計的に推定するのが好ましい。それによって例えば被処理水の発生源や発生プロセスに一時的に何らかの変動が生じて、被処理水の導電率とシリカ濃度との間の相関関係が一時的に成立しなくなったときでも、適切な運転条件を設定して水処理設備10の運用を安全に継続することができる。さらに被処理水のシリカ濃度は、上記説明したように、統計解析により被処理水のシリカ濃度の最大値(最悪値)を求め、これを被処理水のシリカ濃度と推定するのが好ましい。それによって最適な運転条件での水処理装置10の運用をより安全に行うことが可能になる。
【0057】
<他の実施例、変形例>
本発明は、上記説明した実施例に特に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【0058】
例えば上記の実施例では、被処理水の導電率に基づいてシリカ濃度を推定する例を挙げて説明したが、本発明は特にこれに限定されない。例えばカルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)等、シリカ以外の無機物の濃度を推定することもできる。また例えば生物化学的酸素要求量(Biochemical Oxygen Demand:BOD)、化学的酸素要求量(Chemical Oxygen Demand:COD)、全有機炭素(Total Organic Carbon:TOC)等が指標となる有機性汚濁物質の濃度を推定することもできる。また例えばアンモニウム態窒素(NH4−N)、亜硝酸態窒素(NO2−N)、硝酸態窒素(NO3−N)等の窒素系汚濁物質の濃度を推定することもできる。また例えばリン酸態リン(PO4−P)、全リン(T−P)等のリン系汚濁物質、工業生産に使われる原料物質等の排水中の化学物質等を推定することもできる。
【0059】
また例えば上記の実施例では、被処理水の導電率を水質指標とする例を挙げて説明したが、本発明は特にこれに限定されない。例えば固形汚濁物質を含有する紙パルプ関連排水等においては、被処理水の濁度を水質指標とすることもできる。また例えば有機性汚濁物質を含有する排水全般、染色排水等の無機・有機着色排水全般、固形汚濁物質を含有する紙パルプ関連排水等においては、被処理水の吸光度を水質指標とすることもできる。また例えば無機・有機の酸・アルカリ性汚濁物質を含有する排水全般においては、被処理水の水素イオン指数(pH)を水質指標とすることもできる。また例えば酸化還元性汚濁物質を含有する排水全般、無機・有機の酸・アルカリ性汚濁物質を含有する排水全般においては、被処理水の酸化還元電位(ORP)を水質指標とすることもできる。
【符号の説明】
【0060】
10 水処理装置
11 RO膜分離装置
12 導電率センサ
13 給水加温装置
14 温度センサ
15 高圧ポンプ
16 第1流量センサ
17 第2流量センサ
20 制御装置
図1
図2
図3
図4