【課題を解決するための手段】
【0008】
被処理水の水質指標と汚濁成分の濃度との間に因果関係がない場合、理論的には、その水質指標から汚濁成分の濃度を直接的に推定することはできない。しかし例えば工業用水、上水、井水等の用水やこれらを処理した純水、これらが単に濃縮されるプロセスを経た冷却水、ボイラー水、RO濃縮水等、発生源が一定で成分変動が少ない被処理水では、その被処理水に含まれる複数の成分の比率が略一定である場合が多い。このことは例えば単一の食品や飲料品、鉄鋼、紙パルプ等を量産する工場の排水についても同じことが言える。さらに半導体製造工場や液晶パネル製造工場、化学コンビナート等、複数のプロセスが同時に稼働する工場の総合排水や主要製造プロセス系統排水等は、その排水の性状が概ね安定している場合が多く、その成分比率が略一定である場合が多い。
【0009】
そして被処理水に含まれる複数の成分の成分比率が略一定である場合には、ある水質指標に対して因果関係がある成分と、その水質指標に対して因果関係がない成分との比率は、略一定になるはずである。したがって被処理水の成分比率が略一定である場合には、ある水質指標とある成分との間の因果関係を介して、その水質指標とその水質指標に対して因果関係がない他の成分との間に一定の相関関係が成立し得る。つまり被処理水の発生源や発生プロセスによっては、その被処理水の成分比率が略一定になる場合があり、そのような場合には、ある水質指標とその水質指標に対して因果関係がない汚濁成分との間に一定の相関関係が成立し得る。このような知見に基づいて本発明はなされたものである。
【0010】
<本発明の第1の態様>
本発明の第1の態様は、水質指標と前記水質指標に対して因果関係がない汚濁成分の濃度との相関が被処理水にあるか否かを定期的に行う前記被処理水のサンプル分析の結果から判定する相関判定工程と、前記相関があることを条件として、前記被処理水の直近一定期間における前記水質指標の計測値の分布を統計解析し、その統計解析の結果と前記相関に基づいて、前記被処理水の前記汚濁成分の濃度を推定する第1汚濁成分濃度推定工程と、推定した前記被処理水の前記汚濁成分の濃度に基づいて、前記被処理水を処理する水処理設備の運転条件を決定する運転条件決定工程と、を含む、水処理設備の制御方法である。
【0011】
まず定期的に行う被処理水のサンプル分析の結果から、ある水質指標とその水質指標に対して因果関係がない汚濁成分の濃度との間に相関関係が成立するか否かを判定する。そして両者の間に相関関係が成立することを条件として、被処理水の直近一定期間における水質指標の計測値の分布を統計解析し、その統計解析の結果とその相関関係に基づいて、その汚濁成分の濃度を推定する。それによってある水質指標から、その水質指標に対して因果関係がない汚濁成分の濃度を高精度に推定することができるので、高価な計測装置を設けることなく、被処理水の水質変動を的確に把握することができる。そして推定したその汚濁成分の濃度に基づいて、その被処理水を処理する水処理設備の運転条件を決定する。それによって被処理水の水質変動に的確に対応した最適な運転条件で水処理設備を運用することができる。
【0012】
これにより本発明の第1の態様によれば、高価な計測装置を設けることなく、被処理水の水質変動に的確に対応した最適な運転条件で水処理設備を運用できるという作用効果が得られる。
【0013】
<本発明の第2の態様>
本発明の第2の態様は、前述した本発明の第1の態様において、前記第1汚濁成分濃度推定工程は、前記被処理水のサンプル分析の結果を回帰分析して回帰直線及びその予測限界を求め、前記被処理水の直近一定期間における前記水質指標の計測値の分布の平均値と標準偏差を統計解析によって求め、その平均値と標準偏差に基づいて設定した出現確率に収まる前記水質指標の計測値の最大値を求め、前記回帰直線の予測限界及び前記水質指標の計測値の最大値に基づいて、前記被処理水の前記汚濁成分の濃度を推定する工程を含む、ことを特徴とする水処理設備の制御方法である。
本発明の第2の態様によれば、被処理水の水質指標に対して因果関係がない汚濁成分の濃度を推定誤差の範囲内の最大値(最悪値)として推定することができるので、最適な運転条件での水処理設備の運用をより安全に行うことが可能になる。
【0014】
<本発明の第3の態様>
本発明の第3の態様は、前述した本発明の第1の態様又は第2の態様において、前記相関がないことを条件として、過去の全ての前記被処理水のサンプル分析における前記汚濁成分の濃度の分布を統計解析し、その統計解析の結果に基づいて、前記被処理水の前記汚濁成分の濃度を推定する第2汚濁成分濃度推定工程をさらに含む、ことを特徴とする水処理設備の制御方法である。
【0015】
例えば被処理水の発生源や発生プロセスに一時的に何らかの変動が生ずると、被処理水の成分比率に変動が生ずる可能性があり、それによってある水質指標とその水質指標に対して因果関係がない汚濁成分の濃度との間の相関関係が一時的に成立しなくなることもあり得る。そしてある水質指標とその水質指標に対して因果関係がない汚濁成分の濃度との間に相関関係が成立しない場合には、その水質指標に基づいてその汚濁成分の濃度を推定することが困難になる。
【0016】
したがってそのような場合には、暫定的に、過去の全ての被処理水のサンプル分析における汚濁成分の濃度の分布を統計解析し、その統計解析の結果に基づいて、その汚濁成分の濃度を推定する。つまり過去のサンプル分析におけるその汚濁成分の濃度の蓄積データに基づいて、その汚濁成分の濃度を統計的に推定する。それによって例えば被処理水の発生源や発生プロセスに一時的に何らかの変動が生じて、その水質指標とその汚濁成分の濃度との間の相関関係が一時的に成立しなくなったときでも、適切な運転条件を設定して水処理設備の運用を安全に継続することができる。
【0017】
<本発明の第4の態様>
本発明の第4の態様は、前述した本発明の第3の態様において、前記第2汚濁成分濃度推定工程は、過去の全ての前記被処理水のサンプル分析における前記汚濁成分の濃度の分布の平均値と標準偏差を統計解析によって求め、その平均値と標準偏差に基づいて設定した出現確率に収まる前記汚濁成分の濃度の最大値を求め、それを前記被処理水の前記汚濁成分の濃度と推定する工程を含む、ことを特徴とする水処理設備の制御方法である。
本発明の第4の態様によれば、水質指標とその水質指標に対して因果関係がない汚濁成分の濃度との間に相関関係が成立しない場合であっても、その被処理水の水質指標に対して因果関係がない汚濁成分の濃度を推定誤差の範囲内の最大値(最悪値)として推定することができるので、適切な運転条件での水処理設備の運用をより安全に行うことが可能になる。
【0018】
<本発明の第5の態様>
本発明の第5の態様は、前述した本発明の第1〜第4の態様のいずれかにおいて、前記水質指標は前記被処理水の導電率である、ことを特徴とする水処理設備の制御方法である。
【0019】
被処理水に含まれるイオン性成分の濃度変動は、その被処理水の導電率に影響する。つまり被処理水の導電率とイオン性成分の濃度との間には因果関係がある。そして被処理水の成分比率が略一定になる場合には、被処理水の導電率と被処理水の導電率に対して因果関係がない汚濁成分の濃度との間に一定の相関関係が成立し得る。したがって本発明の第5の態様によれば、その相関関係に基づいて、被処理水の導電率に対して因果関係がない汚濁成分の濃度をその被処理水の導電率から高精度に推定することができるので、高価な計測装置を設けることなく、被処理水の水質変動を的確に把握することができる。
【0020】
<本発明の第6の態様>
本発明の第6の態様は、前述した本発明の第1〜第4の態様のいずれかにおいて、前記水質指標は前記被処理水の濁度である、ことを特徴とする水処理設備の制御方法である。
【0021】
被処理水に含まれる固形成分の濃度変動は、その被処理水の濁度に影響する。つまり被処理水の濁度と固形成分の濃度との間には因果関係がある。そして被処理水の成分比率が略一定になる場合には、被処理水の濁度と被処理水の濁度に対して因果関係がない汚濁成分の濃度との間に一定の相関関係が成立し得る。したがって本発明の第6の態様によれば、その相関関係に基づいて、被処理水の濁度に対して因果関係がない汚濁成分の濃度をその被処理水の濁度から高精度に推定することができるので、高価な計測装置を設けることなく、被処理水の水質変動を的確に把握することができる。
【0022】
<本発明の第7の態様>
本発明の第7の態様は、前述した本発明の第1〜第4の態様のいずれかにおいて、前記水質指標は前記被処理水の吸光度である、ことを特徴とする水処理設備の制御方法である。
【0023】
被処理水に含まれる有機・無機性の溶解成分及び固形成分の濃度変動は、その被処理水の吸光度に影響する。つまり被処理水の吸光度と有機・無機性の溶解成分及び固形成分の濃度との間には因果関係がある。そして被処理水の成分比率が略一定になる場合には、被処理水の吸光度と被処理水の吸光度に対して因果関係がない汚濁成分の濃度との間に一定の相関関係が成立し得る。したがって本発明の第7の態様によれば、その相関関係に基づいて、被処理水の吸光度に対して因果関係がない汚濁成分の濃度をその被処理水の吸光度から高精度に推定することができるので、高価な計測装置を設けることなく、被処理水の水質変動を的確に把握することができる。
【0024】
<本発明の第8の態様>
本発明の第8の態様は、前述した本発明の第1〜第4の態様のいずれかにおいて、前記水質指標は前記被処理水の水素イオン指数である、ことを特徴とする水処理設備の制御方法である。
【0025】
被処理水に含まれる酸成分及びアルカリ成分の濃度変動は、その被処理水の水素イオン指数(pH)に影響する。つまり被処理水の水素イオン指数と酸成分及びアルカリ成分の濃度との間には因果関係がある。そして被処理水の成分比率が略一定になる場合には、被処理水の水素イオン指数と被処理水の水素イオン指数に対して因果関係がない汚濁成分の濃度との間に一定の相関関係が成立し得る。したがって本発明の第8の態様によれば、その相関関係に基づいて、被処理水の水素イオン指数に対して因果関係がない汚濁成分の濃度をその被処理水の水素イオン指数から高精度に推定することができるので、高価な計測装置を設けることなく、被処理水の水質変動を的確に把握することができる。
【0026】
<本発明の第9の態様>
本発明の第9の態様は、前述した本発明の第1〜第4の態様のいずれかにおいて、前記水質指標は前記被処理水の酸化還元電位である、ことを特徴とする水処理設備の制御方法である。
【0027】
被処理水に含まれる酸化還元物質の濃度変動は、その被処理水の酸化還元電位(ORP)に影響する。つまり被処理水の酸化還元電位と酸化還元物質の濃度との間には因果関係がある。そして被処理水の成分比率が略一定になる場合には、被処理水の酸化還元電位と被処理水の酸化還元電位に対して因果関係がない汚濁成分の濃度との間に一定の相関関係が成立し得る。したがって本発明の第9の態様によれば、その相関関係に基づいて、被処理水の酸化還元電位に対して因果関係がない汚濁成分の濃度をその被処理水の酸化還元電位から高精度に推定することができるので、高価な計測装置を設けることなく、被処理水の水質変動を的確に把握することができる。
【0028】
<本発明の第10の態様>
本発明の第10の態様は、水質指標と前記水質指標に対して因果関係がない汚濁成分の濃度との相関が被処理水にあるか否かを定期的に行う前記被処理水のサンプル分析の結果から判定する相関判定手順と、前記相関があることを条件として、前記被処理水の直近一定期間における前記水質指標の計測値の分布を統計解析し、その統計解析の結果と前記相関に基づいて、前記被処理水の前記汚濁成分の濃度を推定する第1汚濁成分濃度推定手順と、推定した前記被処理水の前記汚濁成分の濃度に基づいて、前記被処理水を処理する水処理設備の運転条件を決定する運転条件決定手順と、をコンピュータに実行させる、水処理設備の制御プログラムである。
本発明の第10の態様によれば、この制御プログラムを実行するコンピュータにより制御される水処理設備において、前述した本発明の第1の態様と同様の作用効果が得られる。
【0029】
<本発明の第11の態様>
本発明の第11の態様は、前述した本発明の第10の態様において、前記相関がないことを条件として、過去の全ての前記被処理水のサンプル分析における前記汚濁成分の濃度の分布を統計解析し、その統計解析の結果に基づいて、前記被処理水の前記汚濁成分の濃度を推定する第2汚濁成分濃度推定手順をコンピュータに実行させる、ことを特徴とする水処理設備の制御プログラムである。
本発明の第11の態様によれば、この制御プログラムを実行するコンピュータにより制御される水処理設備において、前述した本発明の第3の態様と同様の作用効果が得られる。
【0030】
<本発明の第12の態様>
本発明の第12の態様は、水処理設備と、前記水処理設備で処理される被処理水の水質指標を計測する計測器と、前記水処理設備を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記水質指標と前記水質指標に対して因果関係がない汚濁成分の濃度との相関が被処理水にあるか否かを定期的に行う前記被処理水のサンプル分析の結果から判定する相関判定手段と、前記相関があることを条件として、前記被処理水の直近一定期間における前記水質指標の計測値の分布を統計解析し、その統計解析の結果と前記相関に基づいて、前記被処理水の前記汚濁成分の濃度を推定する第1汚濁成分濃度推定手段と、推定した前記被処理水の前記汚濁成分の濃度に基づいて、前記水処理設備の運転条件を決定する運転条件決定手段と、を含む、ことを特徴とする水処理システムである。
本発明の第12の態様によれば、水処理設備において、前述した本発明の第1の態様と同様の作用効果が得られる。
【0031】
<本発明の第13の態様>
本発明の第13の態様は、前述した本発明の第12の態様において、前記制御装置は、前記相関がないことを条件として、過去の全ての前記被処理水のサンプル分析における前記汚濁成分の濃度の分布を統計解析し、その統計解析の結果に基づいて、前記被処理水の前記汚濁成分の濃度を推定する第2汚濁成分濃度推定手段をさらに含む、ことを特徴とする水処理システムである。
本発明の第13の態様によれば、水処理設備において、前述した本発明の第3の態様と同様の作用効果が得られる。