特許第5943354号(P5943354)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友化学株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5943354-光学表示デバイスの生産システム 図000002
  • 特許5943354-光学表示デバイスの生産システム 図000003
  • 特許5943354-光学表示デバイスの生産システム 図000004
  • 特許5943354-光学表示デバイスの生産システム 図000005
  • 特許5943354-光学表示デバイスの生産システム 図000006
  • 特許5943354-光学表示デバイスの生産システム 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943354
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】光学表示デバイスの生産システム
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20160621BHJP
   B26D 5/34 20060101ALI20160621BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   G09F9/00 342
   B26D5/34 B
   G02F1/1335
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-152991(P2013-152991)
(22)【出願日】2013年7月23日
(65)【公開番号】特開2015-22284(P2015-22284A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2015年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100148884
【弁理士】
【氏名又は名称】▲廣▼保 直純
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(72)【発明者】
【氏名】藤井 幹士
【審査官】 南川 泰裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−130867(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/099922(WO,A1)
【文献】 特開2007−212690(JP,A)
【文献】 特開2011−197281(JP,A)
【文献】 特開2013−142635(JP,A)
【文献】 特開2003−107452(JP,A)
【文献】 特開2004−239674(JP,A)
【文献】 特開平08−292406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 5/00−5/42
G02B 5/18−5/32
G02F 1/13−1/141
G09F 9/00−9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学表示部品に光学部材を貼合してなる光学表示デバイスの生産システムであって、
前記光学表示部品が有する基板の表面に、前記表面よりも広いシート片が貼合されてなる積層体の画像を、前記積層体の前記シート片が貼合された面側から撮像する撮像装置と、
前記積層体を挟んで前記撮像装置とは反対側から前記積層体を照明する照明装置と、
前記照明装置と前記積層体との間に配置され、前記基板と前記シート片との貼合面の内側の領域を遮光する遮光板と、
前記撮像装置によって撮像された前記積層体の画像に基づいて、前記シート片を前記貼合面の外周縁に沿って切断することにより、前記シート片を、前記基板との対向部分である前記光学部材と、前記光学部材の外側の余剰部分と、に切り離す切断装置と、を備え
前記遮光板は、前記照明装置から照射される光が前記貼合面の外周縁を照明するように、前記貼合面の内側の領域を遮光する光学表示デバイスの生産システム。
【請求項2】
光学表示部品に光学部材を貼合してなる光学表示デバイスの生産システムであって、
前記光学表示部品が有する基板の表面に、前記表面よりも広いシート片が貼合されてなる積層体の画像を、前記積層体の前記シート片が貼合された面側から撮像する撮像装置と、
前記積層体を挟んで前記撮像装置とは反対側から前記積層体を照明する照明装置と、
前記照明装置と前記積層体との間に配置され、前記基板と前記シート片との貼合面の内側の領域を遮光する遮光板と、
前記撮像装置によって撮像された前記積層体の画像に基づいて、前記シート片を前記貼合面の外周縁に沿って切断することにより、前記シート片を、前記基板との対向部分である前記光学部材と、前記光学部材の外側の余剰部分と、に切り離す切断装置と、を備え、
前記遮光板は、前記遮光板の外周縁の一部が前記貼合面の外周縁よりも前記貼合面の内側に配置されている光学表示デバイスの生産システム。
【請求項3】
前記光学表示部品は、2枚の基板を貼り合わせて形成されている請求項1または2に記載の光学表示デバイスの生産システム。
【請求項4】
前記撮像装置は、矩形形状を有する前記2枚の基板のうち、前記撮像装置側の基板の4つの角部に対応する位置にそれぞれ配置されている請求項に記載の光学表示デバイスの生産システム。
【請求項5】
前記遮光板の外周縁と前記基板の外周縁との間の距離は0.3mm以上2mm以下である請求項1から4のいずれか1項に記載の光学表示デバイスの生産システム。
【請求項6】
前記光学表示部品が有する基板の表面に、前記表面よりも広いシート片を貼合して、前記光学表示部品と前記シート片とを有する積層体を形成する貼合装置を有する請求項1から5のいずれか1項に記載の光学表示デバイスの生産システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学表示デバイスの生産システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ等の光学表示デバイスの生産システムにおいては、2枚のマザーガラスの間に液晶層を挟持して張り合わせ、マザーパネルを作成した後に、マザーパネルを複数枚の液晶パネル(光学表示部品)に分割する方法(いわゆる、多面取り)が採用されている。マザーパネルは、例えば、マザーガラスにスクライブラインを刻印し、次いで加圧してスクライブラインに沿って割ることで、複数枚の液晶パネルに分割することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−90900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液晶パネルには、偏光フィルム、位相差フィルム、輝度上昇フィルム等の光学部材が貼合されている。光学部材は、液晶パネル及びシート片の各寸法バラツキ、並びに液晶パネルに対するシート片の貼合バラツキ(位置ズレ)を考慮して、表示領域よりも若干大きめのシート片に切り出される。そのため、表示領域の周辺部に余分な領域(額縁部)が形成され、機器の小型化が阻害されるという問題がある。
【0005】
そこで、本出願人は、液晶パネルよりも大き目のシート片を切り出し、これを液晶パネルに貼合した後、シート片を液晶パネルの外形寸法に合わせて切断する方法を提案している。この方法によれば、液晶パネルの外形形状に合わせて光学部材を切り出すことができるため、液晶パネルの額縁部を縮小して表示エリアの拡大及び機器の小型化を図ることができる。
【0006】
この方法では、シート片越しに液晶パネルの貼合面の外周縁を検出し、その外周縁に沿ってシート片を切断することが必要となる。しかしながら、液晶パネルを多面取りにより製造する場合、液晶パネルの端面に、バリや上下基板間の端面位置のずれ等が発生し、貼合面をシート片越しに見たときに、本来貼合面とは異なるバリや下基板(貼合側とは反対側の基板)の縁が貼合面とともに一体として視認され、それらの境界が認識できなくなることがある。そのため、シート片越しに貼合面を検出する際に、バリや上下基板間の端面位置のずれなどの影響を排除して、貼合面のみを精度よく検出できる手段が求められていた。
【0007】
本発明の目的は、光学表示部品の貼合面の外周縁を精度良く検出し、この貼合面の外周縁に合わせた光学部材の加工を可能とすることにより、狭額縁化された光学表示デバイスを容易に生産可能とする光学表示デバイスの生産システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る光学表示デバイスの生産システムは、光学表示部品に光学部材を貼合してなる光学表示デバイスの生産システムであって、前記光学表示部品が有する基板の表面に、前記表面よりも広いシート片が貼合されてなる積層体の画像を、前記積層体の前記シート片が貼合された面側から撮像する撮像装置と、前記積層体を挟んで前記撮像装置とは反対側から前記積層体を照明する照明装置と、前記照明装置と前記積層体との間に配置され、前記基板と前記シート片との貼合面の内側の領域を遮光する遮光板と、前記撮像装置によって撮像された前記積層体の画像に基づいて、前記シート片を前記貼合面の外周縁に沿って切断することにより、前記シート片を、前記基板との対向部分である前記光学部材と、前記光学部材の外側の余剰部分と、に切り離す切断装置と、を備え、前記遮光板は、前記照明装置から照射される光が前記貼合面の外周縁を照明するように、前記貼合面の内側の領域を遮光する。
また、本発明の他の一態様に係る光学表示デバイスの生産システムは、光学表示部品に光学部材を貼合してなる光学表示デバイスの生産システムであって、前記光学表示部品が有する基板の表面に、前記表面よりも広いシート片が貼合されてなる積層体の画像を、前記積層体の前記シート片が貼合された面側から撮像する撮像装置と、前記積層体を挟んで前記撮像装置とは反対側から前記積層体を照明する照明装置と、前記照明装置と前記積層体との間に配置され、前記基板と前記シート片との貼合面の内側の領域を遮光する遮光板と、前記撮像装置によって撮像された前記積層体の画像に基づいて、前記シート片を前記貼合面の外周縁に沿って切断することにより、前記シート片を、前記基板との対向部分である前記光学部材と、前記光学部材の外側の余剰部分と、に切り離す切断装置と、を備え、前記遮光板は、前記遮光板の外周縁の一部が前記貼合面の外周縁よりも前記貼合面の内側に配置されている。
【0009】
ここで、「貼合面の内側の領域」とは、貼合面の輪郭線よりも内側(輪郭線で囲まれる領域の中央部側)の領域をいう。「貼合面の内側の領域を遮光する」とは、貼合面の輪郭線よりも内側の領域であって且つ輪郭線の近傍の領域の少なくとも一部を遮光することをいう。
【0010】
前記光学表示部品は、2枚の基板を貼り合わせて形成されていてもよい。
【0011】
前記撮像装置は、矩形形状を有する前記基板の4つの角部に対応する位置にそれぞれ配置されていてもよい。
【0012】
前記遮光板の外周縁と前記基板の外周縁との間の距離は0.3mm以上2mm以下であってもよい。
【0013】
前記光学表示部品が有する基板の表面に、前記表面よりも広いシート片を貼合して、前記光学表示部品と前記シート片とを有する積層体を形成する貼合装置を有していてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光学表示部品の貼合面の外周縁を精度良く検出し、この貼合面の外周縁に合わせた光学部材の加工を可能とすることにより、狭額縁化された光学表示デバイスを容易に生産可能とする光学表示デバイスの生産システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】光学表示デバイスの生産システムを示す概略断面図である。
図2】光学部材シートを示す模式図である。
図3】撮像装置を用いて積層体を撮像する様子を示す模式図である。
図4】液晶パネルとシート片との貼合面の外周縁をシート片が貼合された側から撮像する様子を示す断面模式図である。
図5】撮像装置によって撮像された積層体の画像に基づいて、シート片を貼合面の外周縁に沿って切断する方法の一例を示す図である。
図6】上下基板の端縁が一致している場合の積層体の角部の画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1ないし図5を参照して本実施形態に係る光学表示デバイスの生産システムについて説明する。
【0017】
なお、光学表示デバイスは、光学表示部品の少なくとも一方の面に光学部材を貼合し、必要に応じて光学表示部品の端子部に電子部品の実装処理などを施したものである。本実施形態では、光学表示部品として液晶パネルを例示し、光学部材として偏光板を例示するが、光学表示部品および光学部材はこれらに限定されるものではない。光学表示部品としては、液晶パネルのほかに、有機ELパネルなどを用いることができる。光学部材としては、偏光板のほかに、位相差フィルムや輝度向上フィルムなどを用いることができる。
【0018】
図1は光学表示デバイスの生産システム100(以下、生産システム100)の要部構成を示す概略断面図である。生産システム100は、ライン上を搬送される液晶パネル(光学表示部品)Pに対して、シート片FAを貼合する貼合部10と、シート片FAを切断して光学部材Fとし、光学部材Fと液晶パネルPとを有する光学部材貼合体を製造する切断部20と、を有している。
【0019】
(貼合部)
貼合部10は、帯状の光学部材シートF1を、光学部材シートF1の長手方向に搬送する搬送装置11と、光学部材シートF1からシート片FAを切り出す切断装置12と、シート片FAを液晶パネルPの上面に貼合する貼合装置13と、を備えている。
【0020】
図2は、光学部材シートF1を示す模式図である。図2に示すように、光学部材シートF1は、単位長さに切断することで液晶パネルPに貼合されるシート片FAが得られる帯状の光学部材原反F2と、光学部材原反F2と積層して設けられるセパレータシートF3とを有している。セパレータシートF3は、光学部材原反F2を搬送するキャリアとして用いられる。
【0021】
光学部材原反F2とセパレータシートF3との間には、粘着層F4が設けられている。光学部材原反F2は、粘着層F4とともに光学部材シートF1の幅方向の全幅に亘って形成される切込線Cに沿って単位長さ(シート片FA単位)に切断され、シート片FAとなる。シート片FAは、セパレータシートF3から剥離され、後述するように液晶パネルPの上面に貼合される。
【0022】
図1に戻って、搬送装置11は、帯状の光学部材シートF1を巻回した原反ロールR1を保持すると共に、光学部材シートF1を光学部材シートF1の長手方向に沿って繰り出す巻き出し部111と、シート片FAが剥離され単独となったセパレータシートF3を巻き取るセパレータロールR2を保持する巻き取り部112とを有する。
【0023】
なお、図示は略すが、搬送装置11は光学部材シートF1を所定の搬送経路に沿うように巻きかける複数のガイドローラを有する。光学部材シートF1は、光学部材シートF1の搬送方向と直交する水平方向(シート幅方向)で、液晶パネルPのシート片が貼合される側の基板よりも広い幅を有している。
【0024】
巻き出し部111と巻き取り部112とは、例えば互いに同期して駆動する。これにより、光学部材シートF1を搬送方向へ繰り出す巻き出し部111の動作と、セパレータシートF3を巻き取る巻き取り部112の動作と、が同期し、光学部材シートF1およびセパレータシートF3の弛みを抑制する。巻き出し部111と巻き取り部112とは、原反ロールR1から巻き出された光学部材シートF1を、切断装置12側に光学部材原反F2側を向けて搬送する。
【0025】
切断装置12は、光学部材シートF1の搬送過程において、光学部材原反F2に面して配置されている。切断装置12は、例えば円形状の切断刃を備えており、設定された光学部材シートF1の切断方向に移動可能に構成されている。
【0026】
切断装置12は、光学部材シートF1が予め設定された単位長さ分繰り出される度に、光学部材シートF1のシート幅方向の全幅にわたって、光学部材シートF1に含まれる光学部材原反F2を切断する。切断後の光学部材シートF1には、光学部材原反F2のシート幅方向の全幅に亘る切込線Cが形成される。切込線Cで区画される範囲がシート片FAであり、切断装置12はセパレータシートF3上にシート片FAを形成する。光学部材シートF1の搬送方向におけるシート片FAの長さは、液晶パネルPのシート片が貼合される側の基板の長さよりも長い。
【0027】
以下の説明においては、光学部材シートF1の厚み方向の全てを切断するのではなく、少なくともセパレータシートF3の一部をつなげた状態で光学部材原反F2を切断することを、「ハーフカット」と称することがある。
【0028】
切断装置12は、光学部材シートF1の搬送中に働くテンションによって光学部材シートF1(セパレータシートF3)が破断することを防ぐため、所定の厚さがセパレータシートF3に残るように切断刃の進退位置を調整し、粘着層F4とセパレータシートF3との界面の近傍までハーフカットを施す。なお、切断刃の代わりに、レーザー光を射出する装置を用いて焼き切ってもよい。
【0029】
切断装置12が形成するシート片FAの大きさや形状は、光学部材の形状や光学部材における光学軸の設定方向などに応じて、任意に設定することができる。本実施形態では、光学部材シートF1を光学部材シートF1の長手方向と交差する方向にハーフカットし、光学部材シートF1に所定の間隔を空けて切込線Cを形成することにより、シート片FAを得ている。
【0030】
貼合装置13は、光学部材シートF1を鋭角に巻きかけてセパレータシートF3からシート片FAを分離させる剥離部131と、シート片FAを付着させて保持し、液晶パネルP上に搬送して貼合する貼合ヘッド132と、液晶パネルPが載置され液晶パネルPとシート片FAとの貼合が行われる載置台133と、を有している。
【0031】
剥離部131は、図1においてセパレータシートF3側を下方に向けて略水平に搬送される光学部材シートF1の下方に位置し、少なくとも光学部材シートF1のシート幅方向の全幅にわたって延在している。剥離部131には、セパレータシートF3側が接するようにハーフカット後の光学部材シートF1が巻きかけられている。
【0032】
剥離部131の先端部131aは、断面視において鋭角に形成されている。剥離部131の先端部131aで光学部材シートF1を鋭角に折り返す際、シート片FAは、上述のハーフカットで形成した切込線Cを起点としてセパレータシートF3からめくれて剥離する。シート片FAが剥離する際、シート片FAとセパレータシートF3との間に形成された粘着層F4は、シート片FAとともにセパレータシートF3から剥離する。そのため、セパレータシートF3から剥離するシート片FAにおいては、粘着層F4が下面に配置されている。
【0033】
貼合ヘッド132は、前記シート幅方向と平行かつ下方に凸の円弧状の保持面132aを有している。保持面132aは、例えばシート片FAの粘着層F4よりも弱い貼着力を有し、シート片FAの貼着および剥離を繰り返し行うことが可能となっている。
【0034】
また、貼合ヘッド132は、不図示の駆動装置を有し、剥離部131(先端部131a)の上方、及び後述する載置台133の上方で所定量昇降可能であり、かつ剥離部131と載置台133との間で適宜移動可能である。さらに、貼合ヘッド132は、水平方向の位置補正のために平行移動、及び載置面の法線回りを正逆両方向に回転(回動)可能となっている。
【0035】
貼合ヘッド132は、光学部材シートF1のシート幅方向に沿う軸を中心として、保持面132aの湾曲に沿うように傾動可能に構成されている。貼合ヘッド132の傾動は、シート片FAを貼着保持する際、及び貼着保持したシート片FAを液晶パネルPに貼合する際に適宜行われる。
【0036】
載置台133は、液晶パネルPを載置すると共に、水平方向の位置補正のために平行移動、及び回動可能となっている。
【0037】
さらに、貼合部10は、剥離部131の先端部の下方に配置され、シート片FAのシート搬送下流側の先端を検出する第一検出カメラ141と、保持面132aに貼着保持されたシート片FAを撮像する第二検出カメラ142と、載置台133上の液晶パネルPを撮像する第三検出カメラ143と、を有している。なお、各検出カメラ141〜143に代わるセンサーを用いることも可能である。
【0038】
このような貼合部10は、全体として以下のように駆動する。
光学部材シートF1が繰り出されると、例えば第一検出カメラ141がシート片FAの下流側端を検出した時点で、搬送装置11が一旦停止し、切断装置12が光学部材シートF1をハーフカットする。すなわち、第一検出カメラ141による検出位置(第一検出カメラ141の光軸延長位置)と切断装置12によるカット位置(切断装置12の切断刃進退位置)との間のシート搬送経路に沿う距離が、シート片FAの長さに相当する。
【0039】
切断装置12は、シート搬送経路に沿って移動可能となっており、第一検出カメラ141による検出位置と、切断装置12によるカット位置と、の間のシート搬送経路に沿う距離を変化させることができる。例えば、作成したシート片FAの長さが、予め設定したシート片FAの規格とは異なっている場合には、切断装置12の移動によりズレを補正し、所定の長さのシート片FAを形成することができる。また、切断装置12の移動により、長さの異なるシート片FAを形成することができる。
【0040】
同時に、貼合ヘッド132は、保持面132aの湾曲一端側132xが下側となるように傾斜した状態(図1では右に傾いた状態。符号αで示す)で、剥離部131の先端部131aに保持面132aの湾曲一端側132xを上方から押し付け、先端部131aにあるシート片FAの下流側端を保持面132aに貼着させる。その後、貼合ヘッド132と駆動装置との接続を絶って貼合ヘッド132を傾動自在とする。
【0041】
この状態で巻き出し部111と巻き取り部112とを駆動させ、シート片FAを繰り出すと、貼合ヘッド132は、保持面132aの湾曲他端側132yが下側となるように(図1では左に傾いた状態。符号βで示す)、受動的に傾動する。これにより、保持面132aにシート片FAの全体が貼着される。
【0042】
シート片FAを保持した貼合ヘッド132は、載置台133の上方へ移動する。その際、貼合ヘッド132に保持されたシート片FAは、剥離部131の上方から載置台133の上方へ移動する際、第二検出カメラ142によって撮像される。撮像された画像データは、不図示の制御装置に送られ、貼合ヘッド132の保持面132aにおけるシート片FAの保持姿勢(水平方向の位置、保持面132aの法線回りの回動角度)が検出される。
【0043】
載置台133に載置された液晶パネルPは、第三検出カメラ143により撮像される。
撮像された画像データは、不図示の制御装置に送られ、載置台133上における液晶パネルPの姿勢(水平方向の位置、液晶パネルPが載置される載置台上面の法線回りの回動角度)が検出される。
【0044】
貼合ヘッド132および載置台133は、それぞれ検出されるシート片FAおよび液晶パネルPの姿勢に基づいて、シート片FAと液晶パネルPとの相対位置を調整する。載置台133においては、貼合ヘッド132が、例えば駆動装置の作動により能動的に傾動し、載置台133上に載置された液晶パネルPの上面に、保持面132aの湾曲に沿ってシート片FAを押し付け、確実に貼合する。
【0045】
これにより、シート片FAと液晶パネルPとが貼合された積層体Sが形成される。相対位置が調整された液晶パネルPとシート片FAとを貼合することで、シート片FAの貼合バラツキが抑えられ、液晶パネルPに対するシート片FAの光学軸方向の精度が向上し、光学表示デバイスの精彩及びコントラストが高まる。
【0046】
なお、切断装置12が光学部材シートF1をハーフカットする際には、第一検出カメラ141が、光学部材シートF1の光学部材原反F2に印された欠点マークも検出することとしてもよい。欠点マークは、原反ロールR1の製造時に、光学部材シートF1に発見された欠点箇所の光学部材原反F2に、インクジェット装置等を用いて設けられる。この欠点マークが検出されたシート片FAは、貼合ヘッド132に貼着した後、液晶パネルPに貼合せず、別途設けた捨貼位置に移動して廃材シート等に重ね貼りされる。なお、欠点マークを検出した際に、切断装置12を移動させ、液晶パネルPに貼合可能なシート片FAよりも短く切断して欠点マークを含む部分を切り分け、捨貼することとしてもよい。
【0047】
(切断部)
切断部20は、積層体Sの画像を撮像する撮像装置210と、積層体Sが有するシート片FAを、液晶パネルPが有する表示領域との対向部分である光学部材Fと、光学部材Fの外側の余剰部分FXと、に切り離す切断装置220と、撮像装置210で撮像した画像に基づいて切断装置220を制御する制御装置230と、を備えている。さらに、積層体Sを挟んで撮像装置210とは反対側から、積層体Sを照明する照明装置240と、照明装置240と積層体Sとの間に配置され、液晶パネルPのシート片FAが貼合される側の基板とシート片FAとの貼合面の内側の領域を遮光する遮光板250と、を有している。
【0048】
ここで、「貼合面の内側の領域」とは、貼合面の輪郭線よりも内側(輪郭線で囲まれる領域の中央部側)の領域をいう。「貼合面の内側の領域を遮光する」とは、貼合面の輪郭線よりも内側の領域であって且つ輪郭線の近傍の領域の少なくとも一部を遮光することをいう。
【0049】
図3ないし図5は、切断部20の動作を説明する図である。
図3は、撮像装置210を用いて積層体Sを撮像する様子を示す模式図である。まず、図3に示すように、複数の撮像装置210を用いて、積層体Sにおける液晶パネルPの角部の周辺(図中太線で示す部分)を撮像する。撮像装置210は、例えば、矩形形状を有する対向基板P1の4つの角部に対応する位置にそれぞれ配置されている。
【0050】
積層体Sは、液晶パネルPと液晶パネルPに貼合されたシート片FAとを有している。液晶パネルPは、対向基板P1および素子基板P2で挟持された液晶層を有している。また、液晶パネルPは、対向基板P1が素子基板P2よりも平面視面積が小さく、両者を重ね合せたときに素子基板P2の一端側が平面視で露出している。素子基板P2の露出する領域P3には端子部が設けられている。シート片FAは、対向基板P1の表面に貼合されている。積層体Sにおいては、シート片FAは平面視矩形を有し、対向基板P1よりも広い平面視面積を有している。
【0051】
このような積層体Sについて、撮像装置210を用い、対向基板P1の角部を含む撮像領域AR(図5参照)を撮像する。その際、図1に示す照明装置240を用い、積層体Sを挟んで撮像装置210とは反対側から光Lを照射し、積層体Sを照明する。これにより、撮像装置210と同じ側から積層体Sを照明した場合と比べ、シート片FAで生じる反射光によるハレーションを抑制することができる。なお、照明装置240としては、青色LEDが用いられる。
【0052】
撮像装置210で撮像した画像の画像データは、制御装置230に入力され、次の処理(画像処理、演算)がなされる。
【0053】
図4は、液晶パネルPの角部Kにおいて、液晶パネルPとシート片FAとの貼合面SAの外周縁EDをシート片FAが貼合された側から撮像する様子を示す断面模式図である。ここで、「貼合面」とは、液晶パネルPのシート片FAと対向する面を指し、「貼合面の外周縁」とは、具体的には、液晶パネルPにおいてシート片FAが貼合された側の基板(図4では、対向基板P1)の外周縁を指す。
【0054】
本実施形態の液晶パネルPは、多面取りで製造されている。そのため、液晶パネルPの角部Kの近傍には、バリや上下基板P1、P2間の端面位置のずれ等が発生する場合がある。図4に示すように、素子基板P2の外周縁が対向基板P1の外周縁よりも外側にずれている場合には、対向基板P1の外周縁と素子基板P2の外周縁とが撮像装置210によって検出される。
【0055】
積層体Sのシート片FAが貼合された側から、対向基板P1とシート片FAとの貼合面SAの外周縁EDを検出する場合には、撮像装置210のピントをシート片FAの上面に合わせることが好ましい。これにより、対向基板P1の外周縁が素子基板P2の外周縁よりも明瞭に撮像でき、貼合面SAの外周縁EDの検出が容易となる。しかしながら、シート片FA越しに液晶パネルPを撮像すると、対向基板P1の外周縁も若干ぼやける場合があり、本来貼合面SAとは異なる素子基板P2の外周縁が貼合面SAとともに一体として視認され、それらの境界が認識できなくなることがある。
【0056】
そこで、本実施形態の切断部20では、照明装置240と積層体Sとの間に、対向基板P1とシート片FAとの貼合面SAの内側の領域を遮光する遮光板250を設置し、貼合面SAの外周縁ED近傍のみに光Lを照射するようにしている。この構成によれば、貼合面SAの外周縁の直下から概ね垂直に射出された光Lのみが撮像装置210に入射する。そのため、撮像に寄与する光Lは、積層体Sに対して垂直に入射する直進光と近似でき、対向基板P1の外周縁の画像のコントラストを高めるのに寄与する。
【0057】
対向基板P1の外周縁がぼやける理由は定かではないが、本発明者の検討によれば、積層体Sに斜め入射する光Lが外周縁のぼやけに影響したと推測される。すなわち、対向基板P1の端面に対して斜めに入射した光Lによって当該端面の影ができ、その影がシート片FAにおける反射、屈折、あるいは偏光特性の変化などの影響によって、ぼやけたように見えたと推測される。そのため、本実施形態の切断部20では、遮光板250によって対向基板P1の端面に斜めに入射する光Lをカットし、当該端面の影ができることを抑制している。これにより、対向基板P1の外周縁がくっきりとした線として撮像され、貼合面SAの外周縁EDを精度よく検出することが可能となる。
【0058】
遮光板250によって遮光する遮光領域BAは、撮像装置210の撮像領域内において、対向基板P1の外周縁になるべく近い領域であることが好ましい。遮光板250は、貼合面SAの外周縁ED近傍を除く撮像領域の全範囲を遮光する必要はなく、貼合面SAの外周縁EDを縁取るように配置されていてもよい。本実施形態の場合、遮光板250は、対向基板P1よりも若干小さい矩形の板(例えば、アルミ板)として構成されている。対向基板P1の外周縁と素子基板P2の外周縁との間の距離d1は例えば0.1mmであり、素子基板P2の外周縁と遮光板250の外周縁との間の距離d2は例えば1mmであり、遮光板50の外周縁と対向基板P1の外周縁との間の距離d3は例えば0.9mmである。
【0059】
遮光板50の外周縁と対向基板P1の外周縁との間の距離d3は、例えば、0.3mm以上2mm以下であることが好ましい。d3が2mmよりも大きいと、光Lの指向性を十分に高めることができず、貼合面SAの外周縁EDの検出精度が低下する。また、d3が0.3mmよりも小さいと、貼合面SAの外周縁EDを照明する光Lの光量が小さくなり、暗い画像となる。よって、この場合も貼合面SAの外周縁EDの検出精度が低下する。d3を0.3mm以上2mm以下とすることで、対向基板P1の外周縁をくっきりとした線として撮像でき、貼合面SAの外周縁EDの検出精度が高まる。
【0060】
なお、図4では、上下基板P1,P2の外周縁の位置にずれが生じている場合を例示したが、上下基板の外周縁の位置が一致している場合でも、同様の現象が起こり得る。この場合にで、貼合面SAの内側の領域を遮光板250で遮光することによって、貼合面SAの外周縁EDに入射する光Lの指向性を高め、貼合面SAの外周縁EDの輪郭がぼやけることを抑制することができる。
【0061】
図6(a)および図6(b)は、上下基板の端縁が一致している場合の積層体の角部の画像を示している。図6(a)は、照明装置と積層体との間に遮光板を設けない場合の画像であり、図6(b)は、照明装置と積層体との間に遮光板を設けた場合の画像である。図6(a)の例では、対向基板の輪郭が滲んだようにぼやけて見えるが、図6(b)の例では、対向基板の輪郭がくっきりとした細い線として認識される。よって、照明装置と積層体との間に遮光板を設置することによって、貼合面の外周縁の検出精度が高められることがわかる。
【0062】
図5は、撮像装置210によって撮像された積層体Sの画像に基づいて、シート片FAを貼合面の外周縁に沿って切断する方法の一例を示す図である。
【0063】
まず、図5(a)に示すように、各撮像装置の撮像領域ARにおける画像データから、対向基板の輪郭線(辺)と重なる複数の点Dの座標を検出する。点Dの座標の検出は、対向基板の角部CXを挟む2つの辺のそれぞれにおいて行う。各辺において辺に重なる複数点の座標を検出することが好ましい。検出する座標の座標軸は、例えば、撮像領域AR内の所定の位置を原点とし、画像の右方向を+X方向、画像の下方向を+Y方向として設定する。
【0064】
次に、図5(b)に示すように、複数の点Dの座標から、点Dと重なる辺に対応する直線を近似して求める。近似としては、通常知られた統計学的手法を用いることができ、例えば、最小二乗法を用いた回帰直線(近似直線)を求める近似方法を挙げることができる。この場合、角部CXに形成されるバリの影響により、角部CX近傍の点Dの座標のばらつきが大きくなり、近似直線の算出結果に悪影響を与える場合がある。このような場合には、角部CX近傍の点Dを除外した残りの点Dを用いて、近似直線を求めることとしてもよい。
【0065】
次に、図5(c)に示すように、各辺について得られた近似直線に基づいて対向基板の近似輪郭線OLを求める。本実施形態では、この近似輪郭線OLを対向基板の外周縁(貼合面の外周縁)として近似する。そして、図1に示した切断装置220によって近似輪郭線OL(貼合面の外周縁)に沿ってシート片FAを切断することにより、シート片FAを、対向基板との対向部分である光学部材Fと、光学部材Fの外側の余剰部分FXと、に切り離す。
【0066】
以上により、シート片FAを、図4に示した貼合面SAの外周縁EDに略沿って切断することができ、狭額縁化された液晶パネルPに対して好適に光学部材Fを貼合することができる。よって、本実施形態の生産システム100によれば、バリや上下基板P1,P2間の端面位置のずれなどの影響を排除して液晶パネルPの貼合面SAの外周縁EDを精度良く検出し、この貼合面SAの外周縁EDに合わせた光学部材Fの加工を可能とすることにより、狭額縁化された光学表示デバイスを容易に生産することができる。
【0067】
なお、本実施形態においては、近似輪郭線OLに沿ってシート片FAを切断することとしたが、これに限らず、例えば、近似輪郭線OLの内側の領域であって、液晶パネルPの額縁部(表示領域の外側に位置する部分)と重なる位置においてシート片FAを切断することとしてもよい。その場合は、制御装置230において、算出される近似輪郭線OLに基づき、近似輪郭線OLで描かれる形状よりも所定の大きさだけ小さい形状を真の切断部分として算出した後に、この真の切断部分に沿ってシート片FAを切断するように切断装置220を制御するとよい。
【0068】
すなわち、「シート片FAを貼合面SAの外周縁EDに沿って切断する」とは、撮像データに基づいて検出された現実の外周縁EDに沿ってシート片FAを切断する場合に限らず、現実の外周縁EDから求められた近似輪郭線OLに沿ってシート片FAを切断する場合や、近似輪郭線OLに基づいて額縁部上に作成された他の切断線に沿ってシート片FAを切断する場合なども含まれる。
【0069】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0070】
13…貼合装置、100…生産システム、210…撮像装置、220…切断装置、240…照明装置、250…遮光板、ED…貼合面の外周縁、F…光学部材、FA…シート片、FX…余剰部分、P…液晶パネル(光学表示部品)、P1…対向基板、P2…素子基板、S…積層体、SA…貼合面
図1
図2
図3
図4
図5
図6