(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記精製セルロースのうち、粒子径が100μm以上の精製セルロースが20%以上であり、粒子径が200μm以上の精製セルロースが5%以上であり、粒子径が300μm以上の精製セルロースが2%以上である、請求項1に記載のペットフード。
前記ペットフードを構成する全フード粒のうち45%以上のフード粒が、25℃の希塩酸(pH2.5)に10分間浸漬した直後の硬さが1.3kgw以下である請求項1又は2に記載のペットフード。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、「ペット」とは人に飼育されている動物をいう。より狭義の意味では、ペットは飼い主に愛玩される動物である。また、「ペットフード」とは、ペット用の飼料をいう。本発明にかかるペットフードを「動物用飼料」又は「動物の餌」として販売することが可能である。
本明細書において、油脂を「コーティングする」とは、油脂をフード粒の表面に付与して、フード粒に付着させることを意味し、付与した油脂の一部または全部がフード粒に浸み込む(含浸される)場合を含む。
【0012】
本発明のペットフードは、水分含有量が6〜15質量%であり、8〜15質量%が好ましく、8〜12質量%がより好ましい。水分含有量が前記範囲の下限値以上であることにより、フード粒表面の隙間が埋まることなく、十分な吸水性が得られる。一方、水分含有量が前記範囲の上限値以下であることにより、十分な嗜好性および嘔吐抑制効果が得られる。
【0013】
[水分含量の測定方法]
本明細書において、水分含量は常圧加熱乾燥法で求められる値である。
具体的には、被測定物を粉砕機にかけて1mmの篩を通過するように粉砕し、これを試料とする。アルミ秤量缶の質量(W1グラム)を恒量値として予め測定する。このアルミ秤量缶に試料を入れて質量(W2グラム)を秤量する。つぎに強制循環式の温風乾燥器を使用して、135℃、2時間の条件で試料を乾燥させる。乾燥雰囲気中(シリカゲルデシケーター中)で放冷した後、質量(W3グラム)を秤量する。得られた各質量から下記式を用いて水分含量を求める。
水分含量(単位:質量%)=(W2−W3)÷(W2−W1)×100
【0014】
粒および小片の混合物である「ペットフードの水分含量」は、該混合物を被測定物として測定した値である。「粒(または小片)の水分含量」は1種の粒(または小片)だけを被測定物として測定した値である。
いずれの水分含量も、ペットフードを構成する粒および小片を包装容器に収容し密閉して製造したペットフード(以下、ペットフード製品ともいう。)を、製造日から30日以内に開封した直後に測定した値、またはこれと同等の条件で測定した値とする。
【0015】
[硬さの測定方法]
本明細書において、フード粒の硬さ(破断硬さ)は以下の測定方法で得られる値である。
圧縮試験機(TEXTUROMETER、型番:GTX−2、全研製)を用い、乾燥肉小片を一定の圧縮速度で圧縮したときの破断応力を下記の条件で測定する。
プランジャー:直径3mmの円柱状のプランジャー、プラットフォーム:平皿、圧縮速度:LOW、出力:1V、プランジャーの最下点:2mm(平皿とプランジャーの間隙)、測定温度:25℃。
具体的には、平皿の上に、測定対象の乾燥肉小片を1個置き、小片の真上から垂直にプランジャーを一定速度で押し付けながら応力を測定する。応力のピーク値(最大値)を破断応力の値として読み取る。10個の小片について測定を繰り返して平均値を求める。
上記圧縮試験機で測定される破断応力(単位:kgw)の数値に9.8を掛け算する(乗じる)ことによって、破断硬さの数値単位をニュートン(N)に変換する。
乾燥肉小片の硬さは、ペットフード製品を、製造日から30日以内に開封した直後に測定した値、またはこれと同等の条件で測定した値とする。
【0016】
<精製セルロース>
本発明のペットフードは、精製セルロースを含有する。本明細書において、精製セルロースとは、リグニンの含有量が1%未満のセルロースを意味する。本発明のペットフードにおいて、精製セルロース中のリグニン含有量は0.8%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましく、0.3%以下が更に好ましい。
【0017】
本発明のペットフードにおいて、精製セルロースの平均粒子径は50μm以上であり、好ましくは55μm以上であり、より好ましくは60μm以上である。平均粒子径が50μm以上の精製セルロースを含むことにより、ドライフードのフード粒の吸水性が向上する。その結果、猫がフード粒を食べた後、フード粒中の繊維が胃液を吸収してフード粒が柔らかくなり、胃への刺激を抑えることができる。
【0018】
本発明のペットフードにおいて、精製セルロースのうち、粒子径が100μm以上の精製セルロースが20%以上であり、粒子径が200μm以上の精製セルロースが5%以上であり、粒子径が300μm以上の精製セルロースが2%以上であることが好ましい。より好ましくは、粒子径が100μm以上の精製セルロースが25%以上であり、粒子径が200μm以上の精製セルロースが8%以上であり、粒子径が300μm以上の精製セルロースが3%以上である。更に好ましくは、粒子径が100μm以上の精製セルロースが30%以上であり、粒子径が200μm以上の精製セルロースが10%以上であり、粒子径が300μm以上の精製セルロースが5%以上である。精製セルロースが粒子径の大きい繊維を適度に含むことにより、吸水効果が向上する。
【0019】
[精製セルロースの平均粒子径及び繊維割合の測定方法]
本明細書において、精製セルロースの平均粒子径は以下の測定方法により得られる値である。
測定に用いる精製セルロースを0.5g、100mlビーカーに採取し、0.5%ヘキサメタリン酸溶液60mlを加え、超音波処理装置(hielscher社製)で、出力100%の条件で2分間処理したものを測定試料とした。
得られた試料をレーザー回析式粒度分布測定装置(製品名:マスターサイザー2000、スペクトリス株式会社製)により分析し、粒度分布を蓄積分布として表し、蓄積分布が50%となる値を平均粒子径とした。また、粒子径が100μm以上の精製セルロース(繊維)の割合、粒子径が200μm以上の精製セルロース(繊維)の割合、粒子径が300μm以上の精製セルロース(繊維)の割合を、それぞれ蓄積分布の合計から算出した。
【0020】
[精製セルロースの製造方法]
精製セルロースは、例えば下記の原料パルプスラリー調製工程、酸加水分解反応工程、中和・洗浄・脱液工程、乾燥工程、粉砕工程、分級工程により製造することができる。
【0021】
[原料パルプスラリー調製工程]
精製セルロースの原料として使用するパルプは、特に限定されず、広葉樹由来のパルプ及び針葉樹由来のパルプのいずれも使用できる。
広葉樹としては、カエデ、カバ、ブナ、アカシア、ユーカリ等が挙げられる。これらの中でも、ブナ、アカシア、ユーカリが好ましい。
針葉樹としては、例えば、スギ、エゾマツ、カラマツ、クロマツ、トドマツ、ヒメコマツ、イチイ、ネズコ、ハリモミ、イラモミ、イヌマキ、モミ、サワラ、トガサワラ、アスナロ、ヒバ、ツガ、コメツガ、ヒノキ、イチイ、イヌガヤ、トウヒ、ロウソンヒノキ、ダグラスファー、シトカスプルース、ラジアータマツ、イースタンスプルース、イースタンホワイトパイン及びこれらの関連樹種等が挙げられる。これらの中でも、スギ、エゾマツ、カラマツ、クロマツ、トドマツ、ヒノキ、アカマツ、ダグラスファー、ラジアータマツが好ましく、エゾマツ、クロマツ、ダグラスファー、ラジアータマツがより好ましい。
【0022】
パルプとしては1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
本発明において、精製セルロースは、針葉樹由来であることが好ましい。精製セルロースの原料として針葉樹由来のパルプを用いることにより、平均粒子径が50μm以上の精製セルロースが得やすくなる。
【0023】
原料のパルプ化法(蒸解法)は、特に限定されるものではなく、サルファイト蒸解法、クラフト蒸解法、ソーダ・キノン蒸解法、オルガノソルブ蒸解法などを例示することができる。
使用できるパルプ原料は、流動状態でもシート状でも良い。パルプ漂白工程からの流動パルプを原料とする場合は、加水分解反応槽へ投入する前に、濃度を高める必要があり、スクリュープレスやベルトフィルターなどの脱水機で濃縮され、反応槽へ所定量が投入される。パルプのドライシートを原料とする場合は、ロールクラッシャーなどの解砕機などでパルプをほぐした後、反応槽へ投入する。
【0024】
[酸加水分解反応工程]
次に、酸濃度0.1〜2.0N、好ましくは0.1N〜1.5Nに調整し、パルプ濃度3〜10重量%(固形分換算)の分散液を、温度80〜100℃、時間30分間〜3時間の条件で処理する。パルプの加水分解処理後、脱水工程で加水分解処理されたパルプと廃酸とに固液分離される。
【0025】
[中和・洗浄・脱液工程]
加水分解処理されたパルプはアルカリ剤を添加して中和し、次いで洗浄及び脱液する。
アルカリ剤としては特に限定されず、公知のものを使用できる。
洗浄及び脱液も従来パルプ分野において公知の方法により行うことができる。
【0026】
[乾燥工程、粉砕工程、分級工程]
その後、乾燥機で乾燥され、粉砕機で規定の大きさに機械的に粉砕・分級される。
本発明において用いられる粉砕機としては、カッティング式ミル:メッシュミル(株式会社ホーライ製)、アトムズ(株式会社山本百馬製作所製)、ナイフミル(パルマン社製)、カッターミル(東京アトマイザー製造株式会社製)、CSカッタ(三井鉱山株式会社製)、ロータリーカッターミル(株式会社奈良機械製作所製)、ターボカッター(フロイント産業株式会社製)、パルプ粗砕機(株式会社瑞光製)シュレッダー(神鋼パンテック株式会社製)等、ハンマー式ミル:ジョークラッシャー(株式会社マキノ製)、ハンマークラッシャー(槇野産業株式会社製)、衝撃式ミル:パルベライザ(ホソカワミクロン株式会社製)、ファインインパクトミル(ホソカワミクロン株式会社製)、スーパーミクロンミル(ホソカワミクロン株式会社製)、イノマイザ(ホソカワミクロン株式会社製)、ファインミル(日本ニューマチック工業株式会社製)、CUM型遠心ミル(三井鉱山株式会社製)、イクシードミル(槇野産業株式会社製)、ウルトラプレックス(槇野産業株式会社製)、コントラプレックス(槇野産業株式会社製)、コロプレックス(槇野産業株式会社製)、サンプルミル(株式会社セイシン製)、バンタムミル(株式会社セイシン製)、アトマイザー(株式会社セイシン製)、トルネードミル(日機装株式会社製)、ネアミル(株式会社ダルトン製)、HT形微粉砕機(株式会社ホーライ製)、自由粉砕機(株式会社奈良機械製作所製)、ニューコスモマイザー(株式会社奈良機械製作所製)、ターボミル(フロイント産業株式会社製)、ギャザーミル(株式会社西村機械製作所製)、スパーパウダーミル(株式会社西村機械製作所製)、ブレードミル(日清エンジニアリング株式会社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング株式会社製)、Npaクラッシャー(三庄インダストリー株式会社製)、ウイレー粉砕機(株式会社三喜製作所製)、パルプ粉砕機(株式会社瑞光製)ヤコブソン微粉砕機(神鋼パンテック株式会社製)、ユニバーサルミル(株式会社徳寿工作所製)、気流式ミル:CGS型ジェットミル(三井鉱山株式会社製)、ミクロンジェット(ホソカワミクロン株式会社製)、カウンタジェットミル(ホソカワミクロン株式会社製)、クロスジェットミル(株式会社栗本鐵工所製)、超音速ジェットミル(日本ニューマチック工業株式会社製)、カレントジェット(日清エンジニアリング株式会社製)、ジェットミル(三庄インダストリー株式会社製)、エバラジェットマイクロナイザ(株式会社荏原製作所製)、エバラトリアードジェット(株式会社荏原製作所製)、セレンミラー(増幸産業株式会社製)ニューミクロシクトマット(株式会社増野製作所製)、クリプトロン(川崎重工業株式会社製)等が例示される。これらの中では、微粉砕性に優れる、トルネードミル(日機装株式会社製)、ブレードミル(日清エンジニアリング株式会社製)、自由粉砕機(株式会社奈良機械製作所製)を用いることが好ましい。
【0027】
また、酸処理を行わず、機械粉砕のみで粉体を製造する場合、微粉砕性の高い、竪型ローラーミルを用いることが好ましい。本発明において、竪型ローラーミルとは、ローラーミルに属する遠心式の竪型粉砕機のことであり、円盤状のターンテーブルと、竪型ローラーで磨り潰すようにして粉砕する。竪型ローラーミルの最大の特徴は、微粉砕性に優れることであり、その理由として、ローラーとテーブル間で原料を圧縮する力と、ローラーとテーブル間で発生する剪断力とで、原料を粉砕することが挙げられる。従来から使用されている粉砕機としては、竪型ローラーミル(シニオン株式会社製)、縦型ローラーミル(シェフラージャパン株式会社製)、ローラーミル(コトブキ技研工業株式会社製)、VXミル(株式会社栗本鐵工所)、KVM型竪形ミル(株式会社アーステクニカ)、ISミル(株式会社IHIプラントエンジニアリング)等が例示される。機械粉砕のみで粉体を製造した場合も、分級工程を経て所定の大きさに調整される。
【0028】
本発明のペットフードは、ペットフードを構成する全フード粒のうち60%以上のフード粒が、25℃の希塩酸(pH2.5)に10分間浸漬した直後の硬さが2.5kgw以下である。ここで、「浸漬した直後」とは、当該希塩酸からペットフードを取り出した後1〜2分以内を意味する。
【0029】
前記希塩酸は、蒸留水に1規定(N)の塩酸を数滴ずつ滴下してpH2.5(25℃)に調整した希塩酸である。
【0030】
前記ペットフードを前記希塩酸に10分間浸漬した後の硬さは、食されたペットフードが胃中で有する硬さに相当すると考えられる。前記硬さが2.5kgw以下であることにより、胃壁に対する物理的な刺激を低減し、食後にペットが嘔吐することを抑制することができる。すなわち、ペットが一回の食餌で食するペットフードを構成する全フード粒のうち、前記硬さを有するフード粒が多く含まれるほど、食後の嘔吐を抑制することができる。なお、前記硬さの下限値は0.0kgw(測定精度以下)である。
【0031】
本発明のペットフードは、ペットフードを構成する全フード粒のうち45%以上のフード粒が、25℃の希塩酸(pH2.5)に10分間浸漬した直後の硬さが1.3kgw以下であることが好ましい。ペットフードを構成する全フード粒のうち45%以上のフード粒の前記硬さが1.3kgw以下である場合、吸水量のバラツキを低減できる。また、より柔らかくなる粒の割合が高くなることにより、吸水効果が向上し、ひいては嘔吐抑制効果が向上する。
【0032】
ペットフード粒の硬さの測定は、下記の物性測定器を用いて、下記の測定条件により測定して得られる咀嚼波形から読み取られた数値として求められる。
<物性測定器>製造会社:有限会社タケモト電機機器名:TEXTUROMETER(型番:GTX−2)<測定条件>プランジャー:ペットフードへの接触面が平滑な直径20mmの円板(「クロム20mm径」)、プラットフォーム:平皿、クリアランス(最圧縮点)2mm、出力1V、BITE SPEED:LOW(6回/分)、咀嚼回数:1回咀嚼
<測定方法>
上記平皿の上に、前述した希塩酸に10分間浸漬した直後(取り出し後1分以内)のペットフードを1粒置き、上方から上記プランジャーを押し付けて、負荷をかける。この際、プランジャーとプラットフォームの距離が2mmになるまで(クリアランス)押しつぶす。測定は、ペットフードを希塩酸から取り出してから1〜2分以内に完了する。
<咀嚼波形からの数値の読み取り>
図1に示す咀嚼波形において、硬さは、次のように求められる。
硬さ(H):1回目の咀嚼時の波形(ピークA1)の高さの最高値
【0033】
図1に示す咀嚼波形において、各測定値はそれぞれ以下を意味する。
硬さ(H)は、ペットフードの物理的な硬さ(硬さ)の度合いを表し、プランジャーでペットフードに負荷を加えた際の最大試験力をいう。
【0034】
本発明にかかるペットフードの硬さは、前記TEXTUROMETER(型番:GTX−2)以外の物性測定機器(テクスチュロメーター)を用いた場合にも、前記測定条件と同一の条件又は互換性のある条件で測定することにより得られた咀嚼波形に基づいて求めることができる。
【0035】
本明細書で説明した前記硬さを求める方法は、ツェスニアクのテクスチャープロファイル(Szczesniak,A.S.:J.Food Sci.,28,385(1963))に準拠している。ツェスニアクはアメリカのゼネラルフーズ社でテクスチャーに関する用語を整理・体系化し、テクスチュロメーターによる測定値とヒトの官能評価値の相関を示した(Szczesniak,A.S.,Blandt,M.A.&Freidman,H.H.:J.Food Sci.,28,397(1963))。
【0036】
前記ペットフードの吸水前の硬さも、前記TEXTUROMETER(型番:GTX−2)を用いて測定することが可能である。前記ペットフードの吸水前の硬さは特に制限されず、ペットフードの水分含有率にもよるが、2.0kgw〜10.0kgwが好ましく、2.0kgw〜5.0kgwがより好ましい。
【0037】
本発明のペットフードにおいて、フード粒の形状は、ペットが食するのに好適な形状であればよく、特に制限されないが、フード粒が、異形断面を有することが好ましい。フード粒が異形断面を有すると、ペットフードの吸水効果が向上するため、嘔吐抑制効果も向上する。
異形断面は、異形度(D/d)で規定される。ここで、Dはフード粒断面の外接円の直径を表し、dはフード粒断面の内接円の直径を表す。本発明においては、フード粒が異形度1.2〜5の多葉断面を有することが好ましく、異形度1.6〜3の三葉断面又は四葉断面を有することがより好ましい。
【0038】
本発明のペットフードにおいて、フード粒の大きさは、ペットが食するのに好適な大きさであればよく、特に制限されないが、フード粒の大きさが、長径5〜15mm、短径5〜15mm、厚み2〜5mmであることが好ましく、長径7〜10mm、短径7〜10mm、2〜3mmであることが更に好ましい。フード粒の大きさが前記範囲内である場合、ペットが食しやすい。
【0039】
[平均長径、平均短径の測定方法]
本明細書において、粒または小片の平均長径は、粒または小片を任意に20個取り出し、ノギスで最長径を測定し、それらの平均値を平均長径とする。また最長径方向に対して垂直方向における最短径を測定し、それらの平均値を平均短径とする。
【0040】
<原料>
フード粒の原料は、飼料として使用可能なものであればよい。ペットフードの製造において公知の原料を適用できる。例えば、穀類(トウモロコシ、小麦、米等)、豆類(丸大豆等)、植物性タンパク質(コーングルテンミール、大豆タンパク等)、肉類(鶏肉、牛肉、豚肉、鹿肉、ミール類(チキンミール、豚ミール等)等)、魚介類(魚肉、ミール類(フィッシュミール)等)、野菜類、添加剤(ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸、フレーバー原料、繊維、着色料、嗜好性向上剤等)、外添剤(油脂、嗜好性向上剤等)等が挙げられる。ミール類とは肉類または魚介類を圧縮させ細かく砕いた粉末物を意味する。
外添剤とは、原料混合物が粒状に成形(造粒)された後に、添加(コーティング)される成分を意味する。
【0041】
本実施形態において、造粒したフード粒に、外添剤として、油脂をコーティングしてもよい。フード粒が油脂コーティングを有する場合、吸水効果を得つつ、ペットフードのカロリーを調整することができ、嘔吐抑制効果を得つつ、嗜好性を向上されることができる。
コーティングする油脂は、植物性油脂でもよく、動物性油脂でもよい。油脂は1種類でもよく、2種以上を併用してもよい。
コーティングする油脂は、35℃以上に融点を有する油脂が好ましい。コーティングする油脂の融点が上記の範囲であると、ペットフードの保存中に油脂の浸み出しが生じ難い。35℃以上に融点を有する油脂の例としては、動物性油脂では牛脂(融点35〜55℃)、豚脂(融点28〜48℃)、鶏脂(融点30〜40℃)等、植物性油脂ではパーム油(融点27〜50℃)等、またはこれらを含む油脂の混合物が挙げられる。油脂は1種類でもよく、2種以上を併用してもよい。
油脂のコーティング量は、ペットフード全体(外添剤も含む)対して、3〜20質量%が好ましく、4〜16質量%がより好ましい。油脂のコーティング量が上記の範囲内であると、嗜好性と適切な油脂摂取量とのバランスが得られやすい。
【0042】
油脂にミールエキス等を混合した混合物をコーティングに用いてもよい。ミールエキスとしては、例えばチキンエキス(鶏肉由来の抽出物)、フィッシュエキス(魚肉由来の抽出物)等の公知のミールエキスが好ましいものとして挙げられる。
【0043】
フード粒に油脂をコーティングした後に、外添剤として、粉状(パウダー)または液状の嗜好性向上剤をコーティングしてもよい。
嗜好性向上剤としては、動物性原料分解物、植物性原料分解物、酵母エキス、酵母、魚介類、アミノ酸、核酸等が挙げられる。嗜好性向上剤は1種でもよく、2種以上を用いてもよい。
嗜好性向上剤の添加量は、ペットフード全体(外添剤も含む)対して、0.1〜10質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
【0044】
原料の配合は特に限定されない。得ようとするフード粒の栄養組成を満たすとともに、良好な成形性が得られるように設定することが好ましい。
ドライタイプのフード粒の配合(外添剤も含む)の例を以下に示す。
(ドライタイプのフード粒の配合例)
穀類、豆類、デンプン類の合計10〜70質量%、肉類および魚介類の合計15〜45質量%、植物性タンパク質0〜20質量%、外添剤3〜20質量%、残りはその他の成分。
【0045】
<ペットフードの製造方法>
[造粒工程]
造粒工程では、原料混合物を造粒してフード粒を得る。原料を混合して原料混合物とする方法、および該原料混合物を粒状に成形(造粒)する方法は、公知の方法を用いることができる。
例えばエクストルーダーを用いて膨化粒を製造する方法を好適に用いることができる。
エクストルーダーを用いて膨化粒を製造する方法は、例えば「小動物の臨床栄養学 第5版」(Michael S. Hand、Craig D. Thatcher, Rebecca L. Remillard, Philip Roudebusg、Bruce J. Novotny 編集、Mark Morris Associates 発行;2014年;p.209〜p.215)に記載されている方法等が適用できる。
【0046】
エクストルーダーを用いて膨化粒を製造する方法の例を説明する。まず、膨化粒の原料のうち外添剤以外の原料を、必要に応じて粉砕した後、混合する。グラインダー等を用いて粉砕しつつ混合してもよい。また必要に応じて水(原料組成には含まれない。)を加えて原料混合物を得る。
得られた原料混合物をエクストルーダーに投入し、加熱、加圧した後、出口から押し出す。出口には所定の形状の穴が形成されたプレートと、該プレートから押し出された原料混合物を所定の長さ(厚さ)に切断するカッターが設けられている。原料混合物は該プレートの穴から押し出され、カッターで切断されることにより所定の形状に成形されると同時に、加圧状態から常圧に開放されることによって原料混合物中の水蒸気が膨張し、これによって原料混合物が膨化して多孔質の粒が得られる。
【0047】
[乾燥工程]
こうして得られる粒を、所定の水分含量となるまで必要に応じて乾燥して膨化粒(フード粒)を得る。ドライタイプのフード粒を製造する場合、乾燥工程は必須である。
例えば、エクストルーダーから排出される粒の水分含量は10〜20質量%である。この程度の水分を含んでいると良好な成形性が得られやすい。
エクストルーダーから排出される粒の温度は、エクストルーダー内での加熱温度に依存する。例えば90〜150℃である。
エクストルーダーから排出された粒を乾燥する方法は公知の方法を適宜用いることができる。例えば、粒に熱風を吹き付けて乾燥させる熱風乾燥法、減圧乾燥法、油中でフライする方法等が挙げられる。例えばコンベア式の熱風乾燥機を用いた熱風乾燥法が好ましい。
乾燥条件(温度、時間)は、粒の成分の熱変性を生じさせずに、粒の温度を100℃以上に昇温させて粒中の水分を蒸発させ、所望の水分含量に調整できる条件であればよい。
例えば、熱風乾燥機で乾燥させる場合、粒に接触させる熱風の温度は100〜140℃が好ましく、100〜110℃がより好ましい。乾燥時間は特に限定されず、例えば5〜20分間程度で行われる。
【0048】
乾燥後に、さらに粗牛脂、調味料又は香料等を含むコーティング剤で、ペットフードをコーティングしてもよい。
コーティング方法は特に制限されず、例えば真空コート法により行うことができる。
前記真空コート法は、加温したフード粒と前記コート剤を接触又は付着させた状態で、減圧し、その後ゆっくりと大気開放する方法である。前記コート剤は、液状であっても粉末状であってもよい。前記コーティングによりペットの嗜好性(食いつき)を向上させることができる。
【0049】
本発明のペットフードは、イヌ及びネコを含むいかなるペットに対しても給餌することができるが、ネコに対する嘔吐抑制の効果が向上されているため、ネコに与えることが好ましい。
【実施例】
【0050】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下において、「%」は特に断りのない限り「質量%」である。
【0051】
[繊維の平均粒子径及び粒子径分布]
繊維(F)−1〜(F)−5のそれぞれについて、繊維0.5gを100mlビーカーに採取し、0.5%ヘキサメタリン酸溶液60mlを加え、超音波処理装置(hielscher社製)で、出力100%の条件で2分間処理したものを測定試料とした。
得られた試料をレーザー回析式粒度分布測定装置(製品名:マスターサイザー2000、スペクトリス株式会社製)により分析し、粒度分布を蓄積分布として表し、蓄積分布が50%となる値を平均粒子径とした。また、平均粒子径が100μm以上の精製セルロース(繊維)の割合、平均粒子径が200μm以上の精製セルロース(繊維)の割合、平均粒子径が300μm以上の精製セルロース(繊維)の割合を、それぞれ蓄積分布の合計から算出した。結果を表1に示す。
なお、
図2は繊維(F)−3の顕微鏡写真であり、
図3は繊維(F)−4の顕微鏡写真であり、
図4は繊維(F)−5の顕微鏡写真である。
【0052】
(F)−1:平均粒子径71.5μmの精製セルロース
(F)−2:平均粒子径57.2μmの精製セルロース
(F)−3:(F)−1と(F)−2との混合物[(F)−1:(F)−2=35:65(質量比)]
(F)−4:平均粒子径32.2μmのセルロース
(F)−5:リグノセルロース
【0053】
【表1】
【0054】
[吸水性の評価]
前記繊維(F)−1〜(F)−5のそれぞれについて、繊維2gを容器に入れ、水を滴下し均等に混合したときに、目視により繊維からの離水の発生が確認される直前の水量を測定した。(F)−1〜(F)−5のそれぞれについて20回測定を行い、水量の平均値及び標準偏差を吸水性として評価した。結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
表2の結果から、精製セルロース((F)−1〜(F)−3)は、リグノセルロース((F)−5)に対して吸水量のバラツキが小さいことが確認された。
【0057】
[実施例1、比較例1〜2、参考例1]
まず、表3に示す配合率の原材料と、表4に示す繊維との混合物を得た。
得られた混合物をプレコンディショナーを用いて、80〜100℃で3分間加熱処理し、エクストルーダを用いて、直径5〜15mm、厚み2〜5mmの丸型フード粒と、内径5〜15mm、外径2〜5mm(異形度1.2〜5)の四葉型フード粒との混合物となるように造粒した。押出しによる造粒の際に120〜135℃で30秒間加熱処理した。その後、得られたフード粒を乾燥機によって約120〜140℃で約15分で乾燥した。
次いで、乾燥後のフード粒に対して、粗牛脂、調味料及び香料を含むコーティング剤をペットフード全体(外添剤も含む)に対して5質量%のコーティング量でコート処理を施し、ペットフードを得た。
得られたペットフードについて、下記の評価を行った。
【0058】
[水分含量]
下記の方法により実施例1、比較例1〜2及び参考例1の各ペットフードの水分含量を測定した。
被測定物を粉砕機にかけて1mmの篩を通過するように粉砕し、これを試料とした。アルミ秤量缶の質量(W1グラム)を恒量値として予め測定した。このアルミ秤量缶に試料を入れて質量(W2グラム)を秤量した。つぎに強制循環式の温風乾燥器を使用して、135℃、2時間の条件で試料を乾燥させた。乾燥雰囲気中(シリカゲルデシケーター中)で放冷した後、質量(W3グラム)を秤量した。得られた各質量から下記式を用いて水分含量を求めた。
水分含量(単位:質量%)=(W2−W3)÷(W2−W1)×100
結果を表4に示す。
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
[吸水性の評価]
実施例1、比較例1〜2及び参考例1の各ペットフードを、pH2.5の塩酸溶液に青色2号を0.3%溶かした塩酸溶液に25℃にて浸漬し、30分間放置した。30分放置後のフード粒を目視で観察し、以下の評価基準に該当する粒の割合を求めた。結果を表5に示す。
A:フード粒の内部まで着色料が染みている
B:フード粒の途中まで着色料が染みている
C:フード粒に着色料が全く染みていない
【0062】
【表5】
【0063】
[吸水後硬さ]
下記の方法によりペットフードの吸水後硬さを測定した。具体的には、実施例1、比較例1〜2及び参考例1の各ペットフードについて、20粒の吸水前後硬さを評価した。
まず、蒸留水に1規定(N)の塩酸を数滴ずつ滴下してpH2.5(25℃)の希塩酸を調製した。
ペットフード粒の硬さの測定は、下記の物性測定器を用いて、下記の測定条件により測定して得られる咀嚼波形から読み取られた数値として求めた。
<物性測定器>製造会社:有限会社タケモト電機機器名:TEXTUROMETER(型番:GTX−2)<測定条件>プランジャー:ペットフードへの接触面が平滑な直径20mmの円板(「クロム20mm径」)、プラットフォーム:平皿、クリアランス(最圧縮点)2mm、出力1V、BITE SPEED:LOW(6回/分)、咀嚼回数:1回咀嚼
<測定方法>
上記平皿の上に、調製した希塩酸に10分間浸漬した直後(取り出し後1分以内)のペットフードを1粒置き、上方から上記プランジャーを押し付けて、負荷をかける。この際、プランジャーとプラットフォームの距離が2mmになるまで(クリアランス)押しつぶした。測定は、ペットフードを希塩酸から取り出してから1〜2分以内に完了した。
<咀嚼波形からの数値の読み取り>
図1に示す咀嚼波形において、硬さは、次のように求められた。
硬さ(H):1回目の咀嚼時の波形(ピークA1)の高さの最高値
図1に示す咀嚼波形において、各測定値はそれぞれ以下を意味する。
硬さ(H)は、ペットフードの物理的な硬さ(硬さ)の度合いを表し、プランジャーでペットフードに負荷を加えた際の最大試験力をいう。
結果を表6に示す。
【0064】
【表6】
【0065】
表5の結果より、実施例1のペットフードは、比較例1及び2のペットフードに比べて、吸水性が高いことが確認された。
また、表6の結果より、実施例1のペットフードは、比較例1〜2のペットフードに比べて、吸水後の硬さが2.5kgw以下および1.3kgw以下である粒の割合が高いことが確認された。また、実施例1のペットフードは、参考例1のペットフードに比べて、吸水後の硬さが1.3kgw以下である粒の割合が高いことが確認された。従って、実施例1のペットフードは、比較例1〜2及び参考例1のペットフードに比べて吸水量のバラツキが小さいことが確認された。
【0066】
[嘔吐抑制評価]
実施例1のペットフードを用いて、嘔吐抑制効果を以下の方法で評価した。
1週間に1回以上嘔吐する48頭の単頭飼育のネコをモニターとした。モニターのネコの食べ物嘔吐頻度及び毛玉嘔吐頻度を表7に示す。
各ネコに対し、1食に普段与えているペット―フード(普段品)に代えて試験ペットフード(テスト品)を50〜100g与え、21日間テストした。テスト後、ネコの飼い主に対して(i)食べ物嘔吐抑制、(ii)毛玉嘔吐抑制、(iii)食べ具合、(iv)使用意向、(v)総合相対評価について以下の基準に従って評価してもらった。結果を表8に示す。
A:普段品よりテスト品の方が非常によい。
B:普段品よりテスト品の方がややよい。
C:普段品とテスト品との優劣がつけられない。
D:テスト品より普段品の方がややよい。
E:テスト品より普段品の方が非常によい。
【0067】
【表7】
【0068】
【表8】
【0069】
表8の結果から、64%の飼い主が(i)食べ物嘔吐抑制についてA又はBの評価であったことから、飼い主にもテスト品の嘔吐抑制効果が実感されることが確認された。
また、(iii)食べ具合、(iv)使用意向、(v)総合相対評価についても、50%以上の飼い主がA又はBの評価であったことから、飼い主のテスト品に対する満足度が実感されることが確認された。
【0070】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれら実施例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付のクレームの範囲によってのみ限定される。
精製セルロースを含有し、水分含有量が6〜15質量%のペットフードであって、前記精製セルロースの平均粒子径が50μm以上であり、前記ペットフードを構成する全フード粒のうち60%以上のフード粒が、25℃の希塩酸(pH2.5)に10分間浸漬した直後の硬さが2.5kgw以下であるペットフード。