(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数のプリント基板個片を備えたプリント基板を検査するための接触型パターン検査装置であって、前記複数のプリント基板個片の各々には、複数の接触点を有する導電パターンと、少なくとも1つの位置合わせ特徴点とが設けられ、
前記プリント基板個片上の前記位置合わせ特徴点を撮影するカメラユニットと、前記プリント基板個片の前記接触点に接触して検査信号を通電させることにより前記導電パターンを検査する検査部と、が設けられたプローブユニットと、
前記プローブユニットを移動させる移動機構と、
前記カメラユニットによる前記位置合わせ特徴点の撮影及び前記検査部による検査を行うときの前記プローブユニットの最小移動経路を計算する演算部とを具備し、
前記演算部は、前記複数のプリント基板個片のうちの1つのプリント基板個片に対して、前記1つのプリント基板個片上の全ての位置合わせ特徴点を撮影した後に前記1つのプリント基板個片の検査を行う条件を適用し、かつ、前記複数のプリント基板個片の全てに対して前記条件を適用することによって前記最小移動経路を計算することを特徴とする接触型回路パターン検査装置。
前記最小移動経路は、前記プリント基板の平面上において、前記カメラユニットが前記位置合わせ特徴点を撮影しているときの前記プローブユニットの所定の点に対応する撮影時の点と、前記検査部が前記プリント基板個片の前記接触点に接触して検査しているときの前記所定の点に対応する検査時の点とを一度ずつ巡回する経路であることを特徴とする請求項1に記載の接触型回路パターン検査装置。
複数のプリント基板個片を備え、前記複数のプリント基板個片の各々には、複数の接触点を有する導電パターンと、少なくとも1つの位置合わせ特徴点とが設けられているプリント基板の、前記プリント基板個片上の前記位置合わせ特徴点を撮影するカメラユニットと、前記プリント基板個片の前記接触点に接触して検査信号を通電させることにより前記導電パターンを検査する検査部と、が設けられたプローブユニットと、
前記プローブユニットを移動させる移動機構と、を具備する接触型回路パターン検査装置で前記カメラユニットによる前記位置合わせ特徴点の撮影及び前記検査部による検査を行うときの前記プローブユニットの最小移動経路を計算する方法であって、
前記複数のプリント基板個片のうちの1つのプリント基板個片に対して、前記1つのプリント基板個片上の全ての位置合わせ特徴点を撮影した後に前記1つのプリント基板個片の検査を行う条件を適用し、かつ、前記複数のプリント基板個片の全てに対して前記条件を適用することによって前記最小移動経路が計算されることを特徴とする方法。
前記最小移動経路は、前記プリント基板の平面上において、前記カメラユニットが前記位置合わせ特徴点を撮影しているときの前記プローブユニットの所定の点に対応する撮影時の点と、前記検査部が前記プリント基板個片の前記接触点に接触して検査しているときの前記所定の点に対応する検査時の点とを一度ずつ巡回する経路であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本実施形態による接触型回路パターン検査装置(以下、回路パターン検査装置と称する)1は、プリント基板の製造工程において、部品実装前のプリント基板上に形成された回路配線(回路パターン)である導電パターンに検査信号を通電して、不良の原因となる断線や短絡等の欠陥を検出する装置である。本実施形態では、プリント基板はフレキシブル基板であってもリジッド基板であってもよい。
【0015】
(回路パターン検査装置の構成)
図1は、回路パターン検査装置1の構成を概略的に示すブロック図である。回路パターン検査装置1は、プリント基板を把持する把持機構2と、後述するプローブユニット36を備え、プリント基板を回路パターン検査する検査部3と、検査信号供給部5と、検出信号処理部6と、検査部3を移動させる移動機構7と、移動機構7を駆動制御する駆動制御部8と、カメラユニット9と、カメラユニット9を制御するカメラユニット制御部10と、装置制御部11と、入力部12と、表示部13とを有している。
【0016】
検査信号供給部5は、装置制御部11からの命令を受信し、例えば、直流電圧信号からなる検査信号を生成して検査部3に供給する。検出信号処理部6は、検査部3から検出信号を受信して信号処理を施し、装置制御部11に出力する。
【0017】
カメラユニット9は、プリント基板上に設けられた位置合わせ特徴点(例えば、後述するアライメントマーク103)を含む光学像を生成する光学系14と、その光学像を電気信号に光電変換するCCDやCMOS等の撮像素子を含む撮像部15とを有している。カメラユニット制御部10は、画像処理部16と、位置ずれ判断部17とを有している。画像処理部16は、撮像部15から電気信号を受信して画像信号を生成する。位置ずれ判断部17は、画像処理部16からの画像信号に基づいて、位置合わせ特徴点が所望の位置にある否か、即ち、後述する検査ピン32が接触点(例えば、後述するコンタクトパッド104)に接触する所定の位置にあるか否かを判断する。
【0018】
入力部12は、動作指示や各種データ等を入力するキーボードやタッチパネル等である。表示部13は、検査結果を含む検査情報を表示する液晶ディスプレイ等である。表示部13は、検査結果に加えて、位置ずれがあった場合に警告を表示してもよい。
【0019】
装置制御部11は、欠陥判断部18と、メモリ19と、演算部20とを有している。装置制御部11は、専用の制御部である必要はなく、例えば、汎用的なパーソナルコンピュータであってもよい。
【0020】
欠陥判断部18は、検出信号処理部6で信号処理された検出信号の有無や減衰量(電圧低下)に基づいて、検査対象のプリント基板上に形成された導電パターンが欠陥を有するか否かを判断する。具体的には、検査信号を給電したにもかかわらず検出信号が得られない場合には、欠陥判断部18は、導電パターンに断線による欠陥が発生していると判断し、また、検出信号が正常時の信号値の半分(又は、予め設定した判断値)以下であれば、ブリッジ等で隣接する導電パターンに電気的に接続されて短絡による欠陥が発生していると判断する。あるいは、欠陥判断部18は、検査対象の導電パターンに隣接し並列配置された導電パターンからノイズ値以上の検出信号が検出された場合には、短絡の欠陥が発生していると判断してもよい。
【0021】
メモリ19は、例えば、ROM、RAM又はフラッシュメモリ等の汎用メモリである。メモリ19は、ユーザによる設定条件、制御用プログラム、各種演算用プログラム及びデータ(テーブル)等を記憶情報として書き換え可能に記憶している。演算部20は、プログラムや設定された演算条件により演算処理を行う。
【0022】
図2は、検査部3による回路パターン検査の対象となる、プリント基板個片(以下、個片と称する)102を含むプリント基板101を概略的に示す上面図である。個片102は、1シートであるプリント基板101を製品1個のサイズにカットしたものに相当し、即ち、個片102の各々がプリント基板である。プリント基板101は、検査後に個片102のサイズに切り取られ、製品に実装される。
【0023】
図2に示される例では、1枚のプリント基板101につき9個の個片102が3×3で整列して配列されている。しかしながら、個片102の数及びレイアウトはこれに限定されるものではなく、任意の数及びレイアウトが可能である。本実施形態では、各個片102は同一である。
【0024】
個片102上には、位置合わせをするためのアライメントマーク103が設けられている。
図2では、1つの個片102上に2つのアライメントマーク103が略対角線上に設けられている。しかしながら、アライメントマーク103の数及び位置はこれに限定されるものではなく、任意の数及び位置で設けることができる。
【0025】
なお、個片上にアライメントマークが存在しない場合であっても、アライメントマークの代わりとなる特徴のある箇所を利用して位置合わせを行うことが可能である。本明細書では、アライメントマーク及びこのような特徴のある箇所を位置合わせ特徴点と称する。本実施形態では、位置合わせ特徴点はアライメントマーク103である。
【0026】
また、個片102には、複数のコンタクトパッド104を有する導電パターンが設けられている。これらコンタクトパッド104は、検査部3の後述するプローブユニット36の検査ピン(プローブ)32が接触して電気的接続点となる電極である。コンタクトパッド104は、検査ピン32の頂部の接触面積に対して、製造誤差又は周囲環境(雰囲気温度)による位置ずれ(検査ピン32の移動)などの製造誤差を考慮した電極面積となるように設計されている。
【0027】
図2に示される例では、1つの個片102のみにコンタクトパッド104が示されているが、各個片に同様のコンタクトパッド104が設けられている。コンタクトパッド104は、直流の検査信号を用いる場合には、基本的には導電パターンの両端に設けられている。また、交流の検査信号を用いる場合には、振幅変化、位相ずれ及びピーク・ピーク値の変化等により判断することも可能であるため、パッド位置は必ずしも導電パターンの両端に限定されるものではない。
【0028】
なお、個片上にコンタクトパッドが存在しない場合であっても、コンタクトパッドの代わりに、検査ピン32を当接可能な導電パターンに検査ピン32を直接当接させて検査することが可能である。本明細書では、コンタクトパッド及びコンタクトパッドに代わって検査ピンを当接させて通電検査をすることが可能な個片上の点を接触点と称する。本実施形態では、接触点はコンタクトパッド104であり、検査時に検査ピン32が個片102上の検査対象となる全てのコンタクトパッド104にそれぞれ当接されて、検査ピン32−コンタクトパッド104間が通電される。
【0029】
図3は、回路パターン検査装置1のプリント基板検査機構50の構成を示す上面図である。プリント基板検査機構50は、少なくとも、
図1における把持機構2、検査部3、移動機構7、駆動制御部8及びカメラユニット9を含む機構である。
図4は、
図3のプリント基板検査機構50のうち把持機構2のみを示す上面図である。
図5は、
図3のプリント基板検査機構50のうち検査部3、移動機構7、駆動制御部8及びカメラユニット9を示す上面図である。
【0030】
把持機構2は、2本のクランプベース軸21と、2本のクランプベース22とを有している。これらクランプベース22は、
図3並びに
図4におけるX軸方向に延在した互いに平行なクランプベース軸21と直交し、これらクランプベース軸21上に
図3並びに
図4におけるY軸方向に延在して互いに平行に配置されている。また、クランプベース22上には、1本のクランプベース22につき2つ、従って2本のクランプベース22につき4つのクランプ23が設けられている。これらクランプ23は、クランプベース軸21及びクランプベース22で囲まれる空間内にプリント基板101を把持する向きに配置されている。
【0031】
また、把持機構2は、検査開始時にプリント基板101を載置するためのステージ24を有している。検査をする際には、まず、プリント基板101がステージ24上に載置され、続いて、クランプ23によってプリント基板101の端部が把持され牽引されてテンションを掛けた状態で、
図4に破線で示されるクランプ位置で把持される。
【0032】
検査部3は、複数の検査ピン32が設けられた治具33を備えた治具ユニット31を有している。検査ピン32は、検査時に、プリント基板101を構成している各個片102のコンタクトパッド104にそれぞれ接触する。治具ユニット31は、カメラユニット9と共に取着台35に取り付けられ、治具ユニット31及びカメラユニット9がプローブユニット36を構成している。
【0033】
図6は、プローブユニット36の側面図である。
図7は、プローブユニット36の上面図である。治具ユニット31は、複数の検査ピン32と、これら検査ピン32を固定している治具33と、治具交換用シリンダ37と、駆動制御部8を構成しているサーボモータ8Hとを有している。
【0034】
検査ピン32は、検査信号をコンタクトパッド104に給電するための給電ピンと、給電された検査信号を検出するための検査ピンとの少なくとも2種類に分類される。また、回路配線において、分岐箇所を有する導電パターンにおいては、1つの給電ピンに対して複数の検査ピンが用いられてもよい。これ以外にも、検査対象の導電パターンに隣接し並列配置された導電パターンのコンタクトパッド104に接触する検査ピンを短絡検査ピンとして利用し、さらに、検査を行う検査ピンに対してやや離れた位置(数パターン分の距離)の検査ピンを、周囲から個片102に重畳するノイズを検出するためのノイズ検査ピンとして利用してもよい。
【0035】
なお、検査ピン32−コンタクトパッド104間の給電・検出は、電気的に分離された導電パターンであれば、1つずつ順次給電・検出するのではなく、複数の導電パターンのコンタクトパッド104に対して同時に給電・検出してもよい。
【0036】
治具33は、治具交換用シリンダ37に装着され、サーボモータ8Hと連結されている。サーボアンプが装置制御部11からの移動命令を受信するとサーボモータ8Hが駆動されて、治具33がθ軸を中心として回転し、プリント基板101の面方向上で直交するZ軸回りに角度を変化させることが可能である。
【0037】
プローブユニット36の取着台35は、
図7に示されるように、Z軸方向移動機構7Zを構成するZ軸ボールねじ34に取り付けられている。従って、プローブユニット36は、Z軸ボールねじ34に連結されたモータ8Z(
図6並びに
図7には示されないが、
図1参照)を駆動させることによりZ軸方向(昇降方向)に移動可能である。
【0038】
さらに、移動機構7は、
図5に示されるように、Y軸方向に延在したY軸ボールねじ40及びリニアガイド(リニアレール及びリニアブロック)41により構成されるY軸方向移動機構7Yと、Y軸方向移動機構7Yの上にこれと直交するようにリニアガイド41のリニアブロックに取り付けられ、X軸方向に延在したX軸ボールねじ42及びリニアガイド43により構成されるX軸方向移動機構7Xとを有している。
【0039】
X軸ボールねじ42及びリニアガイド43上には、この上をX軸方向に摺動する可動部材44が取り付けられている。また、可動部材44には、Z軸ボールねじ34が取り付けられている。従って、プローブユニット36は、X軸方向移動機構7X、Y軸方向移動機構7Y、Z軸方向移動機構7Z及びθ軸方向移動機構7Hにより構成される移動機構7により3軸方向及びθ軸方向に移動可能である。
【0040】
また、駆動制御部8は、Y軸ボールねじ40に連結され、プローブユニット36のY軸方向の移動を駆動制御するモータ8Yと、X軸ボールねじ42に連結され、プローブユニット36のX軸方向の移動を駆動制御するモータ8Xとを有している。このように、モータ8X、8Y、8Z、8Hが駆動制御部8を構成している。
【0041】
従って、プローブユニット36は、移動機構7を構成するZ軸ボールねじ34、Y軸ボールねじ40及びX軸ボールねじ42が駆動制御部8を構成するモータ8Z、8Y、8Xによってそれぞれ駆動制御されることにより、互いに直交する3軸方向に移動可能である。また、プローブユニット36の治具33は、θ軸を中心として回転可能である。
【0042】
(接触方式パターン検査の概要)
次に、回路パターン検査装置1による接触方式パターン検査について説明する。
図8は、本実施形態の接触型回路パターン検査装置1による検査のフローチャートである。
【0043】
まず、ステップS1において、複数の個片102を含むプリント基板101がステージ24上に載置される。そして、ステップS2においてプリント基板101をクランプ23によって把持し、ステップS3においてプリント基板101にテンションをかけて張る。このとき、必要に応じて、おおまかな位置合わせとなるプリント基板101の位置の原点位置合わせが行われてもよい。
【0044】
その後、ステップS4において、ステージ24の降下が完了したらすぐに撮影及び検査を行うことができるように、ステージ24の降下開始と同時に、演算部20が、カメラユニット9によるアライメントマーク103の撮影及び検査部3(プローブユニット36)の検査ピン32による検査時のプローブユニット36の移動経路を最小にする、即ち最も効率よく撮影及び検査を行う最小移動経路を計算する(計算手法は後述する)。
【0045】
その後、ステップS5において、ステップS4で計算した最小移動経路に従ってプローブユニット36を移動させながら、カメラユニット9が個片102上のアライメントマーク103を撮影して、位置ずれ判断部17がアライメントマーク103の位置ずれ判定をし、かつ、検査部3(プローブユニット36)の検査ピン32が個片102上のコンタクトパッド104に接触して検査信号を通電させることにより導電パターンを検査する。
【0046】
撮影及び通電検査が終了すると、ステップS6においてステージ24を上昇させる。そして、ステップS7において、プリント基板101にかけたテンションを緩ませる。さらに、ステップS8において、プリント基板101をクランプ23から解放する。そして、検査が終了する。
【0047】
なお、ステップS5において、位置ずれ判断部17が、撮影したアライメントマーク103が所望の位置からずれていると判断した場合、そのアライメントマーク103が設けられた個片102の位置がずれている。ずれが生じていると全ての検査ピン32が個片102のコンタクトパッド104に接触しないため、適正な通電検査を行うことができない。従って、このようなずれが見つかった場合には、モータ8X、8Y、8Hを駆動させることによって治具33のX軸方向及びY軸方向の位置及びθ軸方向の角度(個片102の主面方向と直交する軸の軸回りの角度)を調節して、全ての検査ピン32が個片102上のアライメントマーク103に接触できるようにする。
【0048】
また、
図8に示されるフローでは、ステップS5において、演算部20で撮影及び検査時のプローブユニット36の最小移動経路をシミュレーションにより計算しているが、プリント基板101の個片102のレイアウト、位置合わせ特徴点の数及び位置の情報に基づいて以下の手法で計算された最小移動経路のデータをメモリ19あるいは外部メモリが予め記憶しており、それを呼び出して撮影及び検査を行う形式であってもよい。即ち、演算部20が回路パターン検査装置1とは別体のパーソナルコンピュータ等であってもよい。
【0049】
(撮影及び検査時のプローブユニットの最小移動経路の計算手法)
次に、接触型回路パターン検査装置1において、プローブユニット36のカメラユニット9によるアライメントマーク103の撮影及び治具ユニット31の検査ピン32による接触方式パターン検査を行う際のプローブユニット36の最小移動経路の計算手法について説明する。以下では、一例として、
図2に示されるプリント基板101の撮影及び検査時のプローブユニット36の最小移動経路について説明する。
【0050】
図9は、
図2に示されるプリント基板101において個片102aを検査しているときのプローブユニット36(治具ユニット31、及びカメラユニット9の光学系14のみが概略的に示される)の位置を示す上面図である。このときの治具ユニット31のXY平面における中心点を検査時中心点A1とする。個片102b〜102iを検査しているときの治具ユニット31の中心点もまた、それぞれ、検査時中心点A2〜A9で示される。
【0051】
図10は、
図2に示されるプリント基板101において個片102aのアライメントマーク103a
1をカメラユニット9で撮影しているときのプローブユニット36(治具ユニット31、及びカメラユニット9の光学系14のみが概略的に示される)の位置を示す上面図である。このときの治具ユニット31の中心点を撮影時中心点B1とする。アライメントマーク103a
2、103b
1、103b
2、…、103i
1、103i
2を撮影しているときの治具ユニット31の中心点もまた、それぞれ、撮影時中心点B2〜B18とする。
図11は、検査時中心点A1〜A9及び撮影時中心点B1〜B18を示す図である。
【0052】
撮影及び検査時のプローブユニット36の最小移動経路は、治具ユニット31の中心点が点A1〜A9、B1〜B18の全てを一度ずつ巡る経路を求めることによって算出される。出発点を出発し、全ての点を一度ずつ巡って出発点に戻る巡回路の総移動距離が最小となる経路を求めることは、巡回セールスマン問題(traveling salesman problem :TSP)として一般的に知られている。本実施形態におけるプローブユニット36の最小移動経路も、プローブユニット36の初期位置を始点として点A1〜A9、B1〜B18の全てを一度ずつ巡って始点に戻る移動経路の最小化を考えることにより求める。
【0053】
しかしながら、本実施形態の接触方式パターン検査では、1つの個片に着目したとき、その個片上の位置合わせ特徴点(例えば、アライメントマーク)を撮影した後でなければ検査をしてはならないという制約がある。1つの個片上に設けられた全ての位置合わせ特徴点を撮影してその位置情報を取得し位置ずれを判定することにより、その個片の全ての接触点(例えば、コンタクトパッド)に全ての検査ピンが接触するようにしなければならないからである。
【0054】
例えば、個片102aと102bとの関係において、個片102aの全てのアライメントマーク103a
1、103a
2を撮影した後には、個片102aの検査をしても個片102bのアライメントマーク103b
1又は103b
2の撮影をしても構わないが、まだ撮影を終えていない個片102bの検査をしてはならない。このような制約を考慮した上でプローブユニット36の最小移動経路を計算することが重要である。
【0055】
言い換えれば、プローブユニット36の最小移動経路は、複数の個片のうちの1つの個片に対して、その個片上の全ての位置合わせ特徴点を撮影した後にその個片の検査を行う条件を適用し、かつ、複数の個片の全てに対してこの条件を適用することによって計算する。本実施形態では、この最小移動経路は、プリント基板101の平面(XY平面)上において、カメラユニット9がアライメントマーク103を撮影しているときのプローブユニット36の撮影時中心点B1〜B18と、検
査部3(プローブユニット36)の検査ピン32が個片102のコンタクトパッド104に接触して検査しているときの検査時中心点A1〜A9とを一度ずつ巡回する経路であるとする。
【0056】
図12は、最小移動経路計算の定式化のためにプリント基板1001を模式的に示す図である。プリント基板1001に含まれる個片1002の数をn、各個片1002に設けられた位置合わせ特徴点の数をmとする。位置合わせ特徴点の数は、撮影時中心点の数と同一である。また、各個片1002は、1つの検査時中心点を有する。従って、各個片1002に対して、撮影又は検査を要するm+1個の点がある。プリント基板1001上の撮影又は検査を要する点の総数、即ちプリント基板1001に対する撮影時中心点及び検査時中心点の数は、(m+1)×n=mn+nである。ここで、各個片1002の番号の集合をB={1,2,3,…,l}とし、mn+n個の点の集合Nを考える(
図13)。
【0057】
集合Nにおいて、任意の2点である点i、点j間の移動経路をc
ijとする。また、p番目の個片の位置合わせ特徴点の集合をA
p、p番目の個片の検査時中心点の集合をI
pとする。ここで、点iと点jとを結ぶ0−1変数をx
ij定義すると、
【数1】
である。また、点iと点jとを結ぶ連続変数y
ijを定義すると、
【数2】
である。そして、最小移動経路は、
【数3】
により導かれる。
【0058】
以上の概念及び計算手法に基づいて、アライメントマーク103の撮影及び個片102の接触方式パターン検査を効率よく行うプローブユニット36(治具ユニット31)の最小移動経路を計算する。以下に、この計算手法を用いて算出した最小移動経路のいくつかの具体例を挙げる。
【0059】
(例1)
図14は、
図2に示されるプリント基板101に対する治具ユニット31の検査時中心点A1〜A9、撮影時中心点B1〜B18及び原点(治具ユニット31の中心の初期位置)を取り出した概略図である。
図15(a)は、従来技術における撮影及び検査時の治具ユニット31の中心点の移動経路であり、(b)は、本実施形態により最小化された移動経路である。
【0060】
図15(a)に示される従来の経路では、原点を出発して、1つの個片上の2つのアライメントマークを順次撮影することによって全ての個片上の全てのアライメントマークを撮影した後、最後に撮影したアライメントマークのある基板から順次検査を行っている。この経路は、アライメントマークの撮影及び基板の検査をそれぞれ独立した工程として捉えるとその各々は比較的短い経路であるが、撮影及び検査を連続した1工程として捉えると、撮影時に移動してきた経路の近傍を検査時に再び通って(矢印が交差して)おり、無駄な動きが多い。
【0061】
これに対して、
図15(b)に示される本実施形態の最小移動経路は、1つの個片上に設けられた2つのアライメントマークを撮影した後であれば、その基板の検査をしても他の基板の撮影をしてもよいことに基づいて計算された最適経路である。この経路は、全ての点を非常に効率よく巡回している。
図15(a)に示される経路における総移動距離を約100とすると、
図15(b)に示される経路における総移動距離は約75である。従って、本実施形態により移動距離を約25%短縮することができ、撮影及び検査を効率よく行うことができる。
【0062】
(例2)
図16は、3列−2列−3列でジグザグに配列された個片202を含むプリント基板201を概略的に示す上面図である。1つの個片202上には2つのアライメントマーク203が設けられている。
【0063】
図17は、
図16に示されるプリント基板201に対する治具ユニットの撮影時中心点、検査時中心点及び原点(治具の中心の初期位置)を取り出した概略図である。
図18(a)は、従来技術における撮影及び検査時の治具ユニットの中心点の移動経路であり、(b)は、本実施形態により最小化された移動経路である。
【0064】
図18(a)に示される経路における総移動距離は約94であり、これに対して、
図18(b)に示される経路における総移動距離は約72である。従って、本実施形態により移動距離を約24%短縮することができ、撮影及び検査を効率よく行うことができる。
【0065】
(例3)
図19は、4×2で配列された個片302を含むプリント基板300を概略的に示す上面図である。1つの個片302上には2つのアライメントマーク303が設けられている。
【0066】
図20は、
図19に示されるプリント基板301に対する治具ユニットの撮影時中心点、検査時中心点及び原点(治具の中心の初期位置)を取り出した概略図である。
図21(a)は、従来技術における撮影及び検査時の治具ユニットの中心点の移動経路であり、(b)は、本実施形態により最小化された移動経路である。なお、
図21(a)、(b)では、明瞭化のために検査時中心点間の移動が一部曲線で示されているが、実際には検査時中心点間の移動も直線状の移動である。
【0067】
図21(a)に示される経路における総移動距離を約86であり、これに対して、
図21(b)に示される経路における総移動距離は約69である。従って、本実施形態により移動距離を約19%短縮することができ、撮影及び検査を効率よく行うことができる。
【0068】
(例4)
前述した例1〜例3では、1つの個片につき2つのアライメントマークが設けられていたが、1つの個片に設けられるアライメントマークの数はこれに限定されない。
図22は、4×3で配列された個片402を含むプリント基板401を概略的に示す上面図である。1つの個片402には、1つのアライメントマーク403が設けられている。なお、
図22における中央列の個片は、左列及び右列の個片に対して180°回転(反転)した状態で配置されている。
【0069】
図23は、
図22に示されるプリント基板401に対する治具ユニットの撮影時中心点、検査時中心点及び原点(治具の中心の初期位置)を取り出した概略図である。
図24(a)は、従来技術における撮影及び検査時の治具ユニットの中心点の移動経路であり、(b)は、本実施形態により最小化された移動経路である。
【0070】
図24(a)に示される経路における総移動距離は約61であり、これに対して、
図21(b)に示される経路における総移動距離は約54である。従って、移動距離を約12%短縮することができ、1つの個片に設けられたアライメントマークが1つであっても本実施形態により移動経路が短縮されて撮影及び検査を効率よく行うことができる。
【0071】
なお、1つの個片に設けられたアライメントマークが1つの場合、アライメントマークが
図25に示されるような十字形等の位置や向きの判断が可能な形状であってもよい。アライメントマークが円形であれば、1つのアライメントマークを撮影しただけでそのアライメントマークを有する基板の回転方向の位置ずれを検出・判断するのは困難であるが、十字形等のアライメントマークであれば、1つのアライメントマークの撮影により個片のX軸方向、Y軸方向又は回転方向の位置ずれを把握することができる。従って、1つのアライメントマークであってもより正確に位置合わせをすることが可能である。
【0072】
以上説明したように、本実施形態によれば、1つの個片に着目したとき、その個片の全てのアライメントマークを撮影した後でなければ接触電気検査をしてはならないという制約に基づいてプローブユニットの最小移動経路を計算して、その最小移動経路に従って接触型回路パターン検査装置による撮影及び通電検査を行う。従って、移動経路の無駄を省き、より効率よく撮影及び検査を行うことができる。
【0073】
また、移動距離が短縮されることにより、従来技術と同様の性能の移動機構及び駆動制御部を用いた場合にその検査に要する時間が短縮されることができる。
【0074】
なお、本実施形態では、治具ユニット31の撮影時中心点及び検査時中心点を一度ずつ巡回する最小移動経路を求めているが、巡回する点はこれらに限定されるものではなく、治具ユニット31及びカメラユニット9を備えたプローブユニット36の他の所定の1点であってもよい。つまり、最小移動経路は、プリント基板101の平面上において、カメラユニット9がアライメントマーク103を撮影しているときのプローブユニット36の所定の点(例えば、カメラユニット9の光学系14の中心点)に対応する撮影時の点と、検査部3が個片102のコンタクトパッド104に接触して検査しているときの前記所定の点である検査時の点とを一度ずつ巡回する経路であればよい。
【0075】
なお、プリント基板1シート当たりの個片の数が多い(例えば、数十個)場合、複数の個片をまとめて検査グループとして、複数の個片をひとまとめにしたサイズで治具を製造し検査を行ってもよい。含まれる個片の数が多いプリント基板に対して1つの個片に合わせて治具を製造すると検査回数が増えて検査に時間がかかってしまう。このため、治具の大きさにかかるコスト及び検査時間のバランスを考えると、検査グループ単位で検査をすることが効率的である。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内でさまざまな改良及び変更が可能であることが当業者に明らかである。