特許第5943766号(P5943766)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943766
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】研削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 41/06 20120101AFI20160621BHJP
   H01L 21/304 20060101ALN20160621BHJP
【FI】
   B24B41/06 L
   !H01L21/304 631
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-173616(P2012-173616)
(22)【出願日】2012年8月6日
(65)【公開番号】特開2014-30883(P2014-30883A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2015年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】井上 雄貴
【審査官】 須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−258554(JP,A)
【文献】 特開2009−090389(JP,A)
【文献】 特開平02−205463(JP,A)
【文献】 特開2011−245610(JP,A)
【文献】 特開昭62−099077(JP,A)
【文献】 米国特許第06855036(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B41/00−51/00
H01L21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を研削する研削装置であって、
被加工物を保持する円錐状の保持面を有し、該保持面の円錐軸を回転軸としたチャックテーブルと、
回転駆動されるスピンドルと、該スピンドルの先端に装着された研削ホイールとを有し、該チャックテーブルに保持された被加工物に該保持面の中心から外周に至る研削領域に研削加工を施す研削手段と、
該スピンドルの負荷電流値を検出する負荷電流値検出手段と、
該チャックテーブルの傾きを変更する傾き変更手段と、
該負荷電流値検出手段で検出した負荷電流値に基づいて、該傾き変更手段を制御する制御手段と、
を具備したことを特徴とする研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハ等の被加工物を研削する研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の数多くのデバイスが表面に形成され、且つ個々のデバイスが分割予定ライン(ストリート)によって区画された半導体ウエーハは、研削装置によって裏面が研削されて所定の厚みに加工された後、ダイシング装置によって分割予定ラインを切削して個々のデバイスに分割され、分割されたデバイスは携帯電話、パソコン等の各種電気機器に利用されている。
【0003】
ウエーハの裏面を研削する研削装置は、ウエーハを保持し回転可能なチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを研削する研削砥石が配設された研削ホイールを回転可能に支持する研削手段と、チャックテーブルに研削すべきウエーハを搬入する搬入手段と、チャックテーブルから研削済みのウエーハを搬出する搬出手段とを備えており、ウエーハを所望の厚みに加工することができる。
【0004】
チャックテーブルは中心を頂点として傾斜度の極めて小さな勾配の傾斜面を有する円錐状に形成され、円錐軸を回転軸として回転される。また、チャックテーブルは一点が固定で他の二点が可動の三点で支持されており、これによりチャックテーブルの円錐状の保持面の傾きが調整可能に構成されている。
【0005】
更に、通常チャックテーブルは保持面の傾斜面が研削砥石の研削面と平行になるよう回転軸が鉛直方向から僅かに傾斜するように調整されており、研削砥石が被加工物の研削面に接触する研削領域が被加工物の回転中心から外周に至る領域に限定され、研削方向は被加工物の回転中心から外周に至る方向となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−90376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ウエーハを自転させながら研削するインフィード研削では、自転中心付近と外周付近とでは単位時間当たりの仕事量に差が生じる。一般的な傾向としては、自転中心から外周へ行くほど加工負荷が大きくなる。
【0008】
このため、加工負荷が上昇するとウエーハの外周部分に当接する研削ホイールが僅かに逃げ、厚み方向の研削量が少なくなる。その結果、研削加工後のウエーハの厚さは、自転中心からの距離に比例して厚くなり、均一な厚さが得られなくなるという問題がある。特に、ウエーハの外径が大きくなる程この傾向が顕著である。
【0009】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、被加工物を均一な仕上げ厚みに研削可能な研削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によると、被加工物を研削する研削装置であって、被加工物を保持する円錐状の保持面を有し、該保持面の円錐軸を回転軸としたチャックテーブルと、回転駆動されるスピンドルと、該スピンドルの先端に装着された研削ホイールとを有し、該チャックテーブルに保持された被加工物に該保持面の中心から外周に至る研削領域に研削加工を施す研削手段と、該スピンドルの負荷電流値を検出する負荷電流値検出手段と、該チャックテーブルの傾きを変更する傾き変更手段と、該負荷電流値検出手段で検出した負荷電流値に基づいて、該傾き変更手段を制御する制御手段と、を具備したことを特徴とする研削装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の研削装置によると、被加工物を加工中のスピンドルの負荷電流値に応じてチャックテーブルの傾きを制御するので、被加工物を均一な厚みに研削することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の原理を適用可能な研削装置の概略構成図である。
図2】本発明実施形態のチャックテーブル支持構造を示す一部破断斜視図である。
図3図1に示した研削装置の一部破断側面図である。
図4】フランジの支持位置を示す模式図である。
図5】研削ホイールの逃げを説明する一部断面側面図である。
図6】制御手段による制御の方法を説明する一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明のチャックテーブルの支持構造を採用した研削装置2の斜視図を示している。4は研削装置2のベース(ハウジング)であり、ベース4の後方には二つのコラム6a,6bが垂直に立設されている。コラム6aには、上下方向に伸びる一対のガイドレール(一本のみ図示)8が固定されている。
【0014】
この一対のガイドレール8に沿って粗研削ユニット10が上下方向に移動可能に装着されている。粗研削ユニット10は、そのハウジング20が一対のガイドレール8に沿って上下方向に移動する移動基台12に取り付けられている。
【0015】
粗研削ユニット10は、ハウジング20と、ハウジング20中に回転可能に収容されたスピンドル21(図3参照)と、スピンドル21を回転駆動するサーボモータ22と、スピンドル21の先端に固定された複数の粗研削用の研削砥石26を有する研削ホイール24を含んでいる。
【0016】
粗研削ユニット10は、粗研削ユニット10を一対の案内レール8に沿って上下方向に移動するボールねじ14とパルスモータ16とから構成される粗研削ユニット送り機構18を備えている。パルスモータ16をパルス駆動すると、ボールねじ14が回転し、移動基台12が上下方向に移動される。
【0017】
他方のコラム6bにも、上下方向に伸びる一対のガイドレール(一本のみ図示)19が固定されている。この一対のガイドレール19に沿って仕上げ研削ユニット28が上下方向に移動可能に装着されている。
【0018】
仕上げ研削ユニット28は、そのハウジング36が一対のガイドレール19に沿って上下方向に移動する図示しない移動基台に取り付けられている。仕上げ研削ユニット28は、ハウジング36と、ハウジング36中に回転可能に収容された図示しないスピンドルと、スピンドルを回転駆動するサーボモータ38と、スピンドルの先端に固定された仕上げ研削用の研削砥石42を有する研削ホイール40を含んでいる。
【0019】
仕上げ研削ユニット28は、仕上げ研削ユニット28を一対の案内レール19に沿って上下方向に移動するボールねじ30とパルスモータ32とから構成される仕上げ研削ユニット送り機構34を備えている。パルスモータ32を駆動すると、ボールねじ30が回転し、仕上げ研削ユニット28が上下方向に移動される。
【0020】
研削装置2は、コラム6a,6bの前側に配設されたターンテーブル44を具備している。ターンテーブル44は比較的大径の円盤状に形成されており、図示しない回転駆動機構によって矢印45で示す方向に回転される。
【0021】
ターンテーブル44には、互いに円周方向に120°離間して3個のチャックテーブル46が水平面内で回転可能に配置されている。チャックテーブル46は、ポーラスセラミック材によって円盤状に形成された吸引保持部を有しており、吸引保持部の保持面上に載置されたウエーハを真空吸引手段を作動することにより吸引保持する。48は研削中のウエーハの厚みを測定する厚みゲージである。
【0022】
ターンテーブル44に配設された3個のチャックテーブル46は、ターンテーブル44が適宜回転することにより、ウエーハ搬入・搬出領域A、粗研削加工領域B、仕上げ研削加工領域C、及びウエーハ搬入・搬出領域Aに順次移動される。
【0023】
ベース4の前側部分には、第1のウエーハカセット50と、第2のウエーハカセット52と、ウエーハ搬送ロボット54と、複数の位置決めピン58を有する位置決めテーブル56と、ウエーハ搬入機構(ローディングアーム)60と、ウエーハ搬出機構(アンローディングアーム)62と、スピンナ洗浄ユニット63が配設されている。
【0024】
また、ベース4の概略中央部には、チャックテーブル46を洗浄する洗浄水噴射ノズル67が設けられている。この洗浄水噴射ノズル67は、チャックテーブル46がウエーハ搬入・搬出領域Aに位置付けられた状態において、チャックテーブル46に向かって洗浄水を噴射する。
【0025】
図2を参照すると、実施形態に係るチャックテーブル46の支持構造の一部破断斜視図が示されている。図3図1に示された研削装置の一部破断側面である。図2に示すように、チャックテーブル46はポーラスセラミック材によって円盤状に形成された吸引保持部68と、吸引保持部68を囲繞する金属製の枠体70とから構成される。枠体70には環状のフランジ72が一体的に形成されている。チャックテーブル46はモータ74に連結されており、モータ74により回転駆動される。
【0026】
図3に示すように、ターンテーブル44はターンテーブル基台44aと、ターンテーブルカバー44bとから構成されており、チャックテーブル46はターンテーブルカバー44bに形成された開口47から上方に突出している。
【0027】
環状フランジ72には、円周方向にそれぞれ120度離間して3個の貫通穴が形成されている。フランジ72に形成された一つの貫通穴にボルト76が挿通されて、ボルト76の先端がターンテーブル基台44aに固定された被係合部材78に係合している。ボルト76と被係合部材78とで固定支持部80を構成する。
【0028】
環状フランジ72に形成された他の貫通穴に可動支持部90を構成するボルト82が挿通され、ボルト82の先端部はターンテーブル基台44aに形成された貫通穴83中に挿入されたロッド84の一端部に係合している。ロッド84はねじ穴を有しており、このねじ穴中にパルスモータ86の出力軸に連結されたねじ88が螺合している。
【0029】
パルスモータ86は図示しないブラケットによりターンテーブル基台44aに固定されている。パルスモータ86を駆動すると、ねじ88が回転されて可動支持部90を構成するボルト82が上下方向に移動される。可動支持部90と同様な構成の可動支持部が、環状フランジ72の他の貫通穴部分に配設されている。
【0030】
図3を参照すると、ターンテーブル44のターンテーブル基台44aがモータ92上に搭載されており、モータ92により回転される。チャックテーブル46の吸引保持部68はチューブ94を介して負圧源に接続されており、負圧源により吸引保持部68に吸引力が付与される。
【0031】
パルスモータ86は制御手段100に接続されており、その駆動は制御手段100により制御される。粗研削ユニット10のサーボモータ22及び仕上げ研削ユニット28のサーボモータ38も制御手段100に接続されており、その駆動は制御手段100により制御される。
【0032】
図4を参照すると、チャックテーブル46の環状フランジ72の支持構造の模式図が示されている。環状フランジ72は互いに円周方向に120度離間したA,B,Cの3点で支持されており、Aが固定支持部80に対応し、B,Cが可動支持部90に対応する。
【0033】
以下、本発明の研削装置2の作用について説明する。粗研削ユニット10と仕上げ研削ユニット28との作用は概略同一であるため、以下の説明では粗研削ユニット10について代表して説明する。
【0034】
本発明の研削装置の制御では、同一の加工条件でウエーハ11を研削したときの、負荷電流値とウエーハ11のTTV(全体厚さ変化)を取得し、ウエーハ11を一様に研削するための駆動電流値と微調軸(可動支持部)90を動かす量の関係を求め、この関係を予めメモリ102に格納しておく。このような関係をメモリ102に格納してから、ウエーハ11の粗研削を実施する。
【0035】
この粗研削について図5を参照して説明する。チャックテーブル46の吸引保持部68の保持面68aは中央部が外周部に比べて僅かに高い円錐状に形成されており、この保持面68aの円錐軸はチャックテーブル46の回転軸46aに一致している。
【0036】
更に、チャックテーブル46の傾斜面(保持面)68aが研削砥石26と平行になるように調整しているため、研削砥石26がウエーハ11の研削面(裏面)に接触する研削領域が、ウエーハ11の回転中心11aから外周11bに至る領域に限定され、更に研削方向はウエーハ11の回転中心11aから外周11bに至る方向となる。
【0037】
ウエーハ11は表面に形成されたデバイスを保護するため、その表面に表面保護テープ13が貼着され、表面保護テープ13側がチャックテーブル46の吸引保持部68により保持される。
【0038】
ウエーハ11の粗研削工程では、図5に示すように、チャックテーブル46を矢印a方向に例えば300rpmで回転しつつ、粗研削ホイール24を矢印bで示す方向に例えば6000rpmで回転させ、チャックテーブル46に保持されたウエーハ11の回転中心11aを研削砥石26が通過するように研削ホイール24を位置づける。
【0039】
そして、粗研削ユニット送り機構18を駆動して、粗研削ホイール24を所定の研削送り速度で下方に所定量研削送りしながらウエーハ11の研削を実施する。このようなウエーハ11を自転させながら研削するインフィード研削では、自転中心付近の外周付近とでは単位時間当たりの仕事量に差が生じる。
【0040】
一般的な傾向としては、自転中心11aから外周11bに行くほど加工負荷が大きくなり、サーボモータ22の駆動電流値が増大する。このため、加工負荷が上昇するとウエーハ11の外周部11bに圧接する研削ホイール24が矢印A方向に僅かに逃げ、ウエーハ11の外周部11bの研削量が少なくなる。
【0041】
本実施形態では、メモリ102に格納された駆動電流値と可動支持部90を動かす量の関係から、可動支持部90を微調整して、TTVが変化する変化量を補正する。即ち、サーボモータ22の駆動電流値が上がった場合、図6に示すように、研削砥石26が当接しているウエーハ11の反対側を矢印B方向に僅かに下げ、ウエーハ11の中心部11aを下げる方向で調整する。このように制御することにより、ウエーハ11を一様な厚さに研削することができる。
【符号の説明】
【0042】
10 粗研削ユニット
11 ウエーハ
24 粗研削ホイール
26 粗研削砥石
28 仕上げ研削ユニット
49 仕上げ研削ホイール
42 仕上げ研削砥石
44 ターンテーブル
68 吸引保持部
68a 保持面
80 固定支持部
90 可動支持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6