(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述の事情に基づいてなされたものであり、水又は水含有溶媒への高い溶解性を有し、泡安定性、粒子分散安定性等の界面活性能に優れる高分子系界面活性剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた本発明は、
ポリオキシアルキレン基を有する単量体単位を含むビニルアルコール系重合体を含有する高分子系界面活性剤であって、
上記ポリオキシアルキレン基が下記式(I)で表されるブロックを含み、
上記ブロックの構成単位が上記ポリオキシアルキレン基に対して50モル%以上であり、
ポリオキシアルキレン基を有する単量体単位がビニルアルコール系重合体の単量体単位に対して0.05モル%以上10モル%以下、上記ビニルアルコール系重合体のけん化度が40モル%以上99.99モル%以下かつ粘度平均重合度が150以上5,000以下であることを特徴とする。
【化1】
(式(I)中、R
1及びR
2は、いずれか一方がメチル基又はエチル基であり、他方が水素原子である。mは、繰り返し単位数を表し、10以上40以下の整数である。複数のR
1及びR
2はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0007】
当該高分子系界面活性剤は、上記特定構造のブロックを含むポリオキシアルキレン基を有する単量体単位を含むPVAを含有し、このブロックの構成単位のポリオキシアルキレン基における含有割合を上記特定範囲とすることで、水又は水含有溶媒への高い溶解性を有し、泡安定性、粒子分散安定性等の界面活性能に優れる。当該高分子系界面活性剤がこの効果を奏する相互作用のメカニズムの詳細は明らかになっていないが、上記PVA分子間において上記式(I)で表されるブロック同士の疎水性相互作用が促進され、それにより当該高分子系界面活性剤が添加された水溶液又は組成物(エマルジョン等)において強固な相互作用が生じ、その結果、優れた界面活性能が発揮されると考えられる。また、当該高分子系界面活性剤は、上記PVAにおける上記単量体単位の含有率、けん化度及び粘度平均重合度を上記範囲とすることにより、その界面活性能を高めることができる。
【0008】
上記ポリオキシアルキレン基は、下記式(II)で表されるブロックをさらに含むことが好ましい。
【化2】
(式(II)中、nは、繰り返し単位数を表し、1以上40以下の整数である。)
【0009】
上記ポリオキシアルキレン基が上記特定のブロックをさらに含むことで、上述の相互作用がより強くなると考えられ、その結果、当該高分子系界面活性剤の界面活性能が向上する。
【0010】
上記単量体単位は、上記ポリオキシアルキレン基を側鎖に有することが好ましい。上記単量体単位が上記ポリオキシアルキレン基を側鎖に有することで、上述の相互作用がさらに強くなると考えられ、その結果当該高分子系界面活性剤の界面活性能がより向上する。
【0011】
上記式(I)で表されるブロックは、上記式(II)で表されるブロックより主鎖側に位置することが好ましい。上記それぞれのブロックを上記特定の位置に有することで、上述の相互作用がさらに強くなると考えられ、その結果、当該高分子系界面活性剤の界面活性能がさらに向上する。
【0012】
上記式(I)で表されるブロックと上記式(II)で表されるブロックとが直接結合することが好ましい。これらのブロックが隣接して位置することで、上述の相互作用がさらに強くなると考えられ、その結果、当該高分子系界面活性剤の界面活性能がさらに向上する。
【0013】
上記単量体単位は、下記式(III)で表されることが好ましい。
【化3】
(式(III)中、Yは、上記式(1)で表されるブロックを含み、上記式(2)で表されるブロックを含んでいてもよい基である。R
3は、水素原子又は炭素数1以上8以下のアルキル基である。R
4は、水素原子又は−COOMである。R
5は、水素原子、メチル基又は−CH
2−COOM’である。M及びM’は、それぞれ独立して、水素原子、アルカリ金属又はアンモニウム基である。Xは、−O−、−CH
2−O−、−CO−、−(CH
2)
k−、−COO−又は−CO−NR
6−である。R
6は、水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基である。kは、1以上15以下の整数である。)
【0014】
当該高分子系界面活性剤は、上記単量体単位が上記特定構造を有することで、上記効果をより効果的に発揮させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の高分子系界面活性剤は、水又は水含有溶媒への高い溶解性を有し、泡安定性、粒子分散安定性等の界面活性能に優れる。従って、当該高分子系界面活性剤は、家庭用洗浄剤、工業用洗浄剤、乳化剤、分散剤、可溶化剤、起泡剤、浸透剤、湿潤剤、増粘剤、増泡剤等として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の高分子系界面活性剤の実施の形態について詳説する。
【0017】
<高分子系界面活性剤>
本発明の高分子系界面活性剤は、以下に詳説する上記式(I)で表されるブロックを特定割合で含むポリオキシアルキレン基(以下、「POA基」と略記することがある)を有し、このポリオキシアルキレン基を有する単量体単位の含有率、けん化度及び粘度平均重合度が特定範囲のPVA(以下、「POA変性PVA」ともいう)を含有することで、水又は水含有溶媒への高い溶解性を有し、かつ優れた界面活性能を発揮することができる。本発明の高分子系界面活性剤は、上記POA変性PVAを含有する粉末状の高分子系界面活性剤であってもよいし、上記POA変性PVAに加えてさらに水又は水含有溶媒等の溶媒を含有する液体状の高分子系界面活性剤であってもよい。ここで、水含有溶媒は、水と、水以外の溶媒からなるものである。当該高分子系界面活性剤は、上記成分に加えて、その他の成分をさらに含有してもよい。
【0018】
[POA変性PVA]
上記POA変性PVAは、下記式(I)で表されるブロック(以下、「ブロック(I)」ともいう)を含むポリオキシアルキレン基を有する単量体単位を含有する。「ブロック」とは、所定の構成単位の連鎖構造からなる部分をいう。このブロック(I)の構成単位の上記ポリオキシアルキレン基に対する含有割合、すなわち、ブロック(I)の構成単位のポリオキシアルキレン基の全構成単位に対する割合としては、50モル%以上である必要があり、50モル%以上99モル%以下が好ましく、60モル%以上95モル%以下がさらに好ましい。ブロック(I)の構成単位の含有割合が50モル%未満だと、当該高分子系界面活性剤の界面活性能が低下する。
【0020】
式(I)中、R
1及びR
2は、いずれか一方がメチル基又はエチル基であり、他方が水素原子である。mは、繰り返し単位数を表し、10以上40以下の整数である。複数のR
1及びR
2はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0021】
当該高分子系界面活性剤によれば、POA基が上記特定の構造を有することにより、POA基同士の相互作用に起因する優れた界面活性能が発現する。この相互作用のメカニズムの詳細は明らかになっていないが、POA基変性PVA分子間におけるPOA基同士の疎水性相互作用が促進され、それにより当該高分子系界面活性剤が添加された水溶液又は組成物(エマルジョン等)等において強固な相互作用が生じ、その結果、優れた界面活性能が発揮されると考えられる。
【0022】
ブロック(I)としては、オキシプロピレン単位の繰り返し単位数がmであるポリオキシプロピレンブロック、オキシブチレン単位の繰り返し単位数がmであるポリオキシブチレンブロック等が挙げられる。
【0023】
ブロック(I)中のオキシアルキレン単位の繰り返し単位数mとしては、10以上40以下の整数である必要があり、15以上38以下が好ましく、20以上35以下がより好ましい。mが10未満の場合、POA基同士の相互作用に起因する界面活性能が十分に発現しない。
【0024】
上記式(I)のR
1及びR
2は、いずれか一方がメチル基又はエチル基であり、他方が水素原子である。これらのうち、R
1がメチル基又はエチル基で、R
2が水素原子であることが、上記POA変性PVAを製造し易いため好ましい。
【0025】
また、上記ポリオキシアルキレン基は、下記式(II)で表されるブロック(以下、「ブロック(II)」ともいう)をさらに含むことが好ましい。当該高分子系界面活性剤は、上記単量体単位がブロック(I)に加えてブロック(II)をさらに含むことで、POA基同士の相互作用に起因する界面活性能が向上する。
【0027】
式(II)中、nは、繰り返し単位数を表し、1以上40以下の整数である。
【0028】
ブロック(II)は、オキシエチレン単位の繰り返し単位数がnである(ポリ)オキシエチレンブロックである。
【0029】
ブロック(II)中のオキシエチレン単位の繰り返し単位数nとしては1以上40以下の整数であり、3以上40以下がより好ましく、5以上10以下がさらに好ましい。nが40を超えると、POA基同士の相互作用が低下し、界面活性能が低下する場合がある。
【0030】
上記ポリオキシアルキレン基は、上記ブロック(I)及びブロック(II)とは異なるブロック(a)をさらに含んでいてもよい。当該高分子系界面活性剤は、ブロック(a)をさらに含むことによって界面活性能を向上させることもできる。このブロック(a)としては、例えば、ポリオキシペンチレンブロック、ポリオキシへキシレンブロック、ポリオキシスチレンブロック、ポリアルキレンブロック、繰り返し単位数41以上70以下のポリオキシエチレンブロック等が挙げられる。
【0031】
上記ポリオキシアルキレン基は、上記POA変性PVAの主鎖、側鎖及び末端のいずれに含まれていてもよいが、上述の相互作用を強める観点及び合成容易性の観点からは、側鎖に含まれることが好ましい。ここで「主鎖」とは、POA変性PVAを構成する複数の原子が結合されてなる鎖のうち、最も長いものをいう。「側鎖」とは、POA変性PVAにおける鎖のうち、主鎖以外のものをいう。
【0032】
また、上記ポリオキシアルキレン基が側鎖に含まれ、かつブロック(I)とブロック(II)とを共に含む場合、ブロック(I)はブロック(II)に対し、主鎖側及びその反対側のいずれに位置してもよいが、主鎖側に位置することが好ましい。さらに、この場合、ブロック(I)とブロック(II)とは直接結合していることが好ましい。このようなブロック(I)とブロック(II)の位置とすることにより、上述の相互作用をさらに強めることができ、その結果、当該高分子系界面活性剤の界面活性能をさらに向上させることができる。
【0033】
上記POA変性PVAは、POA基を含む単量体単位とビニルアルコール単位(−CH
2−CHOH−)とを含む共重合体であり、さらに他の単量体単位を有していてもよい。
【0034】
上記単量体単位としては、下記式(III)で表される単量体単位が好ましい。当該高分子系界面活性剤は、POA変性PVAの単量体単位として上記単位を用いることにより、より効果的に界面活性能を発揮させることができる。
【0036】
式(III)中、Yは、上記式(1)で表されるブロックを含み、上記式(2)で表されるブロックを含んでいてもよい基である。R
3は、水素原子又は炭素数1以上8以下のアルキル基である。R
4は、水素原子又は−COOMである。R
5は、水素原子、メチル基又は−CH
2−COOM’である。M及びM’は、それぞれ独立して、水素原子、アルカリ金属又はアンモニウム基である。Xは、−O−、−CH
2−O−、−CO−、−(CH
2)
k−、−COO−又は−CO−NR
6−である。R
6は、水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基である。kは、1以上15以下の整数である。
【0037】
上記R
3としては、水素原子、メチル基、ブチル基が好ましく、水素原子、メチル基がより好ましい。
【0038】
R
4としては、合成の容易性の観点から、水素原子が好ましい。
R
5としては、合成の容易性の観点から、水素原子、メチル基が好ましい。
【0039】
上記式(III)において上記Xが非対称、すなわち−CH
2−O−、−COO−又は−CO−NR
6−の場合、Xの向きはいずれでもよい。上記Xとしては、−O−、−CH
2−O−、−CO−NR
6−が好ましく、−CO−NR
6−がより好ましく、−CO−NH−がさらに好ましい。上記R
6としては、水素原子が好ましい。
上記Yで表される基の向きは、いずれでもよい。
【0040】
上記式(III)で表される単量体単位としては、例えば、下記式(III−1)〜(III−3)で表される単量体単位等が挙げられる。
【0042】
式(III−1)〜(III−3)中、R
1、R
2及びmは、上記式(I)と同様である。nは、上記式(II)と同様である。R
3、R
4、R
5、X及びYは上記式(III)と同様である。bは、両隣の繰り返し単位がぞれぞれブロックを形成していることを示す。
【0043】
これらの中で、当該高分子系界面活性剤の界面活性能がさらに高まる観点からは、上記式(III−1)で表される単量体単位、上記式(III−2)で表される単量体単位が好ましく、上記式(III−2)で表される単量体単位がより好ましい。
【0044】
当該高分子系界面活性剤に含有されるPOA変性PVAの製造方法は特に制限されないが、POA基を含む不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合を行い、得られたPOA変性ビニルエステル系重合体をけん化する方法が好ましい。
【0045】
ここで、POA基を含む不飽和単量体としては、下記式(IV)で表される不飽和単量体が好ましい。
【0047】
式(IV)中、R
3、R
4、R
5、X及びYは上記式(III)と同様である。
【0048】
上記式(IV)で表される不飽和単量体において、R
3、X及びYについての好ましい例示や数値範囲は、ブロック(I)、ブロック(II)及び上記式(III)で表される単量体単位の説明において上述したものと同様であり、特に上記式(IV)で表される不飽和単量体の合成容易性の観点から、ブロック(I)におけるR
1がメチル基又はエチル基であり、R
2が水素原子であるものが好ましい。
【0049】
上記式(IV)で表される不飽和単量体としては、上記R
3が水素原子、R
4が水素原子かつR
5が水素原子又はメチル基で、ブロック(II)を有するものとして、例えば、ポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリルアミド、ポリオキシアルキレンモノ(メタ)アリルエーテル、ポリオキシアルキレンモノビニルエーテル、ポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
具体的には、ブロック(I)におけるR
1がメチル基かつR
2が水素原子の場合として、ポリオキシプロピレン(ポリ)オキシエチレンモノアクリルアミド、ポリオキシプロピレン(ポリ)オキシエチレンモノメタクリルアミド、ポリオキシプロピレン(ポリ)オキシエチレンモノアリルエーテル、ポリオキシプロピレン(ポリ)オキシエチレンモノメタアリルエーテル、ポリオキシプロピレン(ポリ)オキシエチレンモノビニルエーテル、ポリオキシプロピレン(ポリ)オキシエチレンモノアクリレート、ポリオキシプロピレン(ポリ)オキシエチレンモノメタクリレート等が、
R
1がエチル基かつR
2が水素原子の場合として、ポリオキシブチレン(ポリ)オキシエチレンモノアクリルアミド、ポリオキシブチレン(ポリ)オキシエチレンモノメタクリルアミド、ポリオキシブチレン(ポリ)オキシエチレンモノアリルエーテル、ポリオキシブチレン(ポリ)オキシエチレンモノメタアリルエーテル、ポリオキシブチレン(ポリ)オキシエチレンモノビニルエーテル、ポリオキシブチレン(ポリ)オキシエチレンモノアクリレート、ポリオキシブチレン(ポリ)オキシエチレンモノメタクリレート等が挙げられる。
【0050】
これらの中でも、ポリオキシプロピレン(ポリ)オキシエチレンモノアクリルアミド、ポリオキシプロピレン(ポリ)オキシエチレンモノメタクリルアミド、ポリオキシプロピレン(ポリ)オキシエチレンモノビニルエーテル、ポリオキシプロピレン(ポリ)オキシエチレンモノアリルエーテルが好適に用いられる。
【0051】
上記式(IV)のR
3が炭素数1以上8以下のアルキル基の場合の不飽和単量体としては、具体的には、R
3が水素原子の場合に例示した上記不飽和単量体の末端の水酸基を炭素数1以上8以下のアルコキシ基に置換したもの等が挙げられる。これらの中でも、ポリオキシプロピレン(ポリ)オキシエチレンモノメタクリルアミド、ポリオキシプロピレン(ポリ)オキシエチレンモノアリルエーテル、ポリオキシプロピレン(ポリ)オキシエチレンモノビニルエーテルの末端の水酸基をメトキシ基又はエトキシ基に置換した不飽和単量体が好適に用いられる。
【0052】
上記式(IV)で表される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合を行う際の温度は特に限定されないが、0℃以上200℃以下が好ましく、30℃以上140℃以下がより好ましい。共重合を行う温度が0℃より低い場合は、十分な重合速度が得られにくい。また、重合を行う温度が200℃より高い場合、POA変性PVAにおいて、上記ブロック(I)を含むポリオキシアルキレン基を有する単量体単位の含有率(以下、「POA基変性率」ともいう)が所望のものが得られにくい。共重合を行う際に採用される温度を0℃以上200℃以下に制御する方法としては、例えば、重合速度を制御することで、重合による発熱と反応器の表面からの放熱とのバランスをとる方法や、適当な熱媒を用いた外部ジャケットにより制御する方法等が挙げられるが、安全性の面からは後者の方法が好ましい。
【0053】
上記式(IV)で表される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合を行うのに採用される重合方式としては、回分重合、半回分重合、連続重合、半連続重合のいずれでもよい。重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等、公知の方法の中から、任意の方法を採用することができる。これらの中でも、無溶媒又はアルコール系溶媒存在下で重合を行う塊状重合法や溶液重合法が好適に採用される。高重合度の共重合物の製造を目的とする場合は乳化重合法が採用される。塊状重合法又は溶液重合法に用いられるアルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの溶媒は2種類又はそれ以上の種類を併用することができる。
【0054】
共重合に使用される開始剤としては、重合方法に応じて従来公知のアゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤等を適宜選択すればよい。アゾ系開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられ、過酸化物系開始剤としては、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物;t−ブチルパーオキシネオデカネート、α−クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシデカネート等のパーエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド;2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテートなどが挙げられる。さらには、上記開始剤に過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等を組み合わせて開始剤とすることもできる。また、レドックス系開始剤としては、上記過酸化物と亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、L−アスコルビン酸、ロンガリット等の還元剤とを組み合わせたものが挙げられる。
【0055】
また、上記式(IV)で表される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合を高い温度で行った場合、ビニルエステル系単量体の分解に起因するPOA変性PVAの着色等が見られることがある。その場合には着色防止の目的で重合系に酒石酸のような酸化防止剤を1ppm以上100ppm以下(ビニルエステル系単量体の質量に対して)程度添加することはなんら差し支えない。
【0056】
共重合に使用されるビニルエステル系単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられる。これらの中でも酢酸ビニルが最も好ましい。
【0057】
上記式(IV)で表される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合に際して、本発明の趣旨を損なわない範囲で他の単量体を共重合してもよい。使用しうる単量体として、例えば、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン等のα−オレフィン;アクリル酸又はその塩;アクリル酸エステル類;メタクリル酸又はその塩;メタクリル酸エステル類;アクリルアミド;N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸又はその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン又はその塩かその4級塩、N−メチロールアクリルアミド又はその誘導体等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド;N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸又はその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン又はその塩かその4級塩、N−メチロールメタクリルアミド又はその誘導体等のメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、2,3−ジアセトキシ−1−ビニルオキシプロパン等のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン類;酢酸アリル、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパン、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸及びその塩又はそのエステル;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル等が挙げられる。
【0058】
また、上記式(IV)で表される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合に際し、得られるPOA変性ビニルエステル系重合体の重合度を調節すること等を目的として、本発明の趣旨を損なわない範囲で連鎖移動剤の存在下で共重合を行ってもよい。連鎖移動剤としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等のアルデヒド類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;2−ヒドロキシエタンチオール等のメルカプタン類;トリクロロエチレン、パークロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類;ホスフィン酸ナトリウム1水和物等のホスフィン酸塩類などが挙げられ、これらの中でもアルデヒド類、ケトン類が好適に用いられる。連鎖移動剤の添加量は、添加する連鎖移動剤の連鎖移動定数及び目的とするPOA変性ビニルエステル系重合体の重合度に応じて決定することもできるが、一般には、ビニルエステル系単量体に対して0.1質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0059】
POA変性ビニルエステル系重合体のけん化反応には、従来公知の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド等の塩基性触媒又はp−トルエンスルホン酸等の酸性触媒を用いた加アルコール分解反応ないし加水分解反応を適用することができる。この反応に使用しうる溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素等が挙げられ、これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でもメタノール又はメタノール/酢酸メチル混合溶液を溶媒とし、水酸化ナトリウムを触媒に用いてけん化反応を行うのが簡便であり好ましい。
【0060】
上記POA変性PVAのPOA基変性率としては、0.05モル%以上10モル%以下である必要があり、0.1モル%以上5モル%以下が好ましく、0.1モル%以上2モル%以下がより好ましく、0.15モル%以上1.5モル%以下がさらに好ましい。POA基変性率が10モル%を超えると、POA変性PVA一分子あたりに含まれるPOA基の割合が高くなるため、POA変性PVAの水溶性が低下し、界面活性能が低下する。一方POA基変性率が0.05モル%未満の場合、POA変性PVA一分子あたりに含まれるPOA基の割合が低いため、POA基同士の相互作用に起因する界面活性能が低下する。
【0061】
POA基変性率は、POA変性PVAを構成する全単量体単位のモル数に対する、ブロック(I)を含むポリオキシアルキレン基を有する単量体単位のモル数の割合(モル%)である。POA基変性率は、POA変性PVAから求めてもよいし、その前駆体であるPOA変性ビニルエステル系合重合体から求めてもよく、いずれもプロトンNMRで求めることができる。
【0062】
例えば、POA変性PVAがビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位及び上記式(IV)で表される不飽和単量体に由来する単位としてのポリオキシプロピレン(ポリ)オキシエチレンモノメタクリルアミド単位のみからなる場合は、下記方法によりPOA基変性率を算出することができる。すなわち、例えば、前駆体であるPOA変性ビニルエステル系重合体(POA変性ポリ酢酸ビニル)から求める場合、具体的には、まず、n−ヘキサン/アセトン混合溶媒を用いてPOA変性ビニルエステル系重合体の再沈精製を3回以上十分に行った後、50℃の減圧下で乾燥を2日間行い、分析用のPOA変性ビニルエステル系重合体のサンプルを作製する。次に、このサンプルをCDCl
3に溶解させ、プロトンNMRを用いて室温で測定する。そして、ビニルエステル系単量体の主鎖メチンのプロトンに由来するピークα(4.7〜5.2ppm)の面積とオキシプロピレン単位のメチル基のプロトンに由来するピークβ(0.8〜1.0ppm)の面積とから下記式を用いてPOA基変性率を算出することができる。なお、下記式中のmはオキシプロピレン単位の繰り返し単位数を表す。
POA基変性率(モル%)=[(ピークβの面積/3m)/{ピークαの面積+(ピークβの面積/3m)}]×100
【0063】
POA変性PVAが上記構造以外の構造を有する場合であっても、算出の対象とするピークや算出式を適宜変更することにより、上記POA基変性率を容易に求めることができる。
【0064】
上記POA変性PVAの粘度平均重合度(以下、単に「重合度」ともいう)は150以上5,000以下である必要があり、150以上4,000以下が好ましく、200以上3,500以下がより好ましく、200以上3,000以下がさらに好ましい。重合度が5,000を超えると、上記POA変性PVAの生産性が低下して実用的でない。
【0065】
上記POA変性PVAの粘度平均重合度は、JIS K6726に準じて測定される。すなわち、POA変性PVAを再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](単位:デシリットル/g)から次式により求められる。
粘度平均重合度=([η]×10
3/8.29)
(1/0.62)
【0066】
上記POA変性PVAのけん化度は、40モル%以上99.99モル%以下である必要があり、50モル%以上99.9モル%以下が好ましく、60モル%以上99モル%以下がより好ましい。けん化度が40モル%未満の場合には、上記POA変性PVAの水溶性が低下する。一方、けん化度が99.99モル%を超えると、POA変性PVAの生産が困難になるので実用的でない。なお、上記POA変性PVAのけん化度は、JIS−K6726に準じて測定し得られる値である。
【0067】
[溶媒]
当該高分子系界面活性剤が含有してもよい上記溶媒としては、特に限定されず、水、有機溶媒等を挙げることができるが、溶媒の少なくとも一部が水である、すなわち水含有溶媒が好ましい。
【0068】
上記有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、
メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒;
酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系溶媒;
ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、メチル−t−ブチルエーテル、ブチルカルビトール等のエーテル系溶媒;
アセトン、ジエチルケトン等のケトン系溶媒;
エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶媒;
ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等のグリコールエーテル系溶媒;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエステル系溶媒などが挙げられる。
【0069】
(その他の成分)
本発明の高分子系界面活性剤をその用途、例えば、洗浄剤、増粘剤、乳化剤、分散剤、可溶化剤、浸透剤、湿潤剤等として用いる際には、本発明以外のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤を併用してもよい。
【0070】
本発明の高分子系界面活性剤を洗浄剤、増粘剤、乳化剤、分散剤、可溶化剤、浸透剤、湿潤剤等に使用する場合、必要に応じて公知の補助成分を配合することが出来る。このような成分としては、ビルダー(ゼオライト、炭酸ソーダ、硫酸ソーダ、トリポリリン酸ソーダ、ポリカルボン酸塩等)、保湿剤(グリセリン、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等)、防腐剤(パラ安息香酸アルキル(炭素数1〜5)エステル、安息香酸、デヒドロ酢酸等)、酸化防止剤(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、トリフェニルホスファイト、オクチル化ジフェニルアミン等)、紫外線吸収剤(2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等)、キレート剤(エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等)、殺菌剤(塩化ベンザルコニウム等)、pH調整剤(モノ及びジエタノールアミン、苛性ソーダ、乳酸、クエン酸等)、色素(食添青色1号、食添赤色2号、食添黄色4号等)、香料(リモネン、フェニルエチルアルコール、ヘキシルシンナミックアルデヒド等)、酵素(プロテアーゼ、セルラーゼ等)、蛍光増白剤及び漂白剤(亜塩素酸ソーダ等)等が挙げられる。この補助成分の量は特に限定されない。
【0071】
[他の水溶性高分子]
当該高分子系界面活性剤は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、上述のPOA変性PVA以外の公知の各種PVA、澱粉、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の他の水溶性高分子を含有していてもよい。
【0072】
(用途)
本発明の高分子系界面活性剤は、家庭用洗浄剤(衣料用洗剤、頭髪用洗浄剤、食器用洗剤など)、工業用洗浄剤(金属、精密部品等の洗浄剤など)、乳化剤(乳化重合用乳化剤、農薬乳剤用乳化剤、金属加工用乳化剤、化粧品用乳化剤、水系塗料用乳化剤など)、分散剤(顔料や脂肪酸金属塩などの紙用薬剤の分散剤、農薬粒剤用分散剤、懸濁重合用分散剤など)、可溶化剤(香料用可溶化剤など)、起泡剤、浸透剤、湿潤剤、増粘剤、増泡剤等として好適に用いることができる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例及び比較例により、本発明を詳細に説明する。なお、以下の実施例及び比較例において「部」及び「%」は、特に断りのない限り質量基準とする。
【0074】
下記製造例により得られたPVAについて、以下の方法にしたがって評価を行った。
【0075】
[粘度平均重合度及びけん化度]
PVAの粘度平均重合度及びけん化度は、JIS−K6726に記載の方法により求めた。
【0076】
[POA基変性率]
PVAのPOA基変性率は、上述したプロトンNMRを用いた方法に準じて求めた。なお、プロトンNMRは、JEOL GX−500(500MHz)を用いた。
【0077】
<PVAの製造>
[製造例1]
(PVA1の製造)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、単量体滴下口及び開始剤の添加口を備えた3Lの反応器に、酢酸ビニル900g、メタノール100g、及びPOA基を有する不飽和単量体である単量体A(単量体Aは下記式(i)で表され、R
1〜R
5、X、m’及びn’は表2に示すとおりである。オキシプロピレン単位とオキシエチレン単位の配置はブロック状であり、オキシプロピレン単位のブロックがオキシエチレン単位のブロックに対して上記X側に位置する)3.7gを仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。また、ディレー溶液として単量体Aをメタノールに溶解して濃度20%とした溶液を調製し、窒素ガスのバブリングにより窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25gを添加し重合を開始した。ディレー溶液を滴下して重合溶液中のモノマー組成(酢酸ビニルと単量体Aとの比率)が一定となるようにしながら、60℃で3時間重合した後、冷却して重合を停止した。重合を停止するまでに使用した単量体の総量は17gであった。重合率は30%であった。重合停止時の固形分濃度は26.2%であった。続いて30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニルの除去を行い、POA変性ビニルエステル系重合体(POA変性PVAc)のメタノール溶液(濃度35%)を得た。さらに、これにメタノールを加えて調製したPOA変性PVAcのメタノール溶液386g(溶液中のPOA変性PVAc100.0g)に、14.0gのアルカリ溶液(水酸化ナトリウムの10%メタノール溶液)を添加してけん化を行った(けん化溶液のPOA変性PVAc濃度25%、POA変性PVAc中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比0.03)。アルカリ溶液を添加後、約1分でゲル状物が生成したので、これを粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル500gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得、これにメタノール2,000gを加えて室温で3時間放置する洗浄操作を行った。この洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液し、得られた白色固体を乾燥機中65℃で2日間放置して乾燥し、POA変性PVA(PVA1)を得た。PVA1の粘度平均重合度、けん化度及びPOA基変性率の測定結果を表3に示す。
【0078】
【化9】
【0079】
[製造例2〜16、19〜25及び27]
(PVA2〜16、19〜25及び27の製造)
使用するPOA基を有する不飽和単量体の種類を表2に示すように、酢酸ビニル及びメタノール(重合開始前)の仕込み量、これらの使用量及び重合率、けん化時におけるPOA変性PVAcの濃度、酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比を表1に示すように変更したこと以外は、製造例1と同様の方法により各種POA変性PVA(PVA2〜16、19〜25及び27)を得た。
【0080】
[製造例17]
(PVA17の製造)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管及び開始剤の添加口を備えた3Lの反応器に、酢酸ビニル850g、メタノール150g、POA基を有する不飽和単量体である単量体I(単量体Iは上記式(i)で表され、R
1〜R
5、X、m’及びn’は表2に示すとおりである。オキシプロピレン単位とオキシエチレン単位の配置はブロック状であり、オキシプロピレン単位のブロックがオキシエチレン単位のブロックに対して上記X側に位置する。)21gを仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25gを添加し重合を開始し、60℃で3時間重合した後、冷却して重合を停止した。重合率は30%であった。重合停止時の固形分濃度は25.5%であった。続いて30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニルの除去を行い、POA変性ビニルエステル系重合体(POA変性PVAc)のメタノール溶液(濃度30%)を得た。さらに、これにメタノールを加えて調製したPOA変性PVAcのメタノール溶液463.2g(溶液中のPOA変性PVAc120.0g)に、16.7gのアルカリ溶液(水酸化ナトリウムの10%メタノール溶液)を添加してけん化を行った(けん化溶液のPOA変性PVAc濃度25%、POA変性PVAc中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比0.03)。アルカリ溶液を添加後、約1分でゲル状物が生成したので、これを粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル500gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得、これにメタノール2,000gを加えて室温で3時間放置する洗浄操作を行った。この洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られた白色固体を乾燥機中65℃で2日間放置して乾燥し、POA変性PVA(PVA17)を得た。PVA17の粘度平均重合度、けん化度及びPOA基変性率の測定結果を表3に示す。
【0081】
[製造例18及び26]
(PVA18及び26の製造)
使用するPOA基を有する不飽和単量体の種類を表2に示すように、その使用量を表1に示すように変更したこと以外は、製造例17と同様の方法により各種POA変性PVA(PVA18及び26)を得た。
【0082】
[製造例28及び29]
(PVA28及び29の製造)
POA基を有する不飽和単量体として、表1に示すN(下記式(n)で表される不飽和単量体)及びP(下記式(p)で表される不飽和単量体)をそれぞれ使用し、その使用量、酢酸ビニル及びメタノール(重合開始前)の仕込み量を表1に示すように変更したこと以外は、製造例1と同様の方法により各種POA変性PVA(PVA28及び29)を得た。
【0083】
【化10】
【0084】
上記式(n)におけるbは、オキシエチレン単位とオキシプロピレン単位とが、それぞれ繰り返し単位数が上記数のブロックを形成し、ブロックの位置は上記式に示すとおりであることを示す。
【0085】
【化11】
【0086】
上記式(p)におけるrは、オキシプロピレン単位とオキシエチレン単位とが、ランダムに配置されており、それぞれの繰り返し単位は上記数の通りであることを示す。
【0087】
[製造例30]
(PVA30の製造)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管及び開始剤の添加口を備えた3Lの反応器に、酢酸ビニル700g、メタノール300gを仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25gを添加し重合を開始し、60℃で3時間重合した後、冷却して重合を停止した。重合率は40%であった。重合停止時の固形分濃度は17.0%であった。続いて30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニルの除去を行い、無変性ビニルエステル系重合体(無変性PVAc)のメタノール溶液(濃度30%)を得た。さらに、これにメタノールを加えて調製した無変性PVAcのメタノール溶液477.2g(溶液中の無変性PVAc120.0g)に、4.2gのアルカリ溶液(水酸化ナトリウムの10%メタノール溶液)を添加してけん化を行った(けん化溶液の無変性PVAc濃度25%、無変性PVAc中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比0.0075)。アルカリ溶液を添加後、約20分でゲル状物が生成したので、これを粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル500gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得、これにメタノール2000gを加えて室温で3時間放置する洗浄操作を行った。この洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られた白色固体を、乾燥機中65℃で2日間放置して乾燥し、無変性PVA(PVA30)を得た。PVA30の粘度平均重合度、及びけん化度の測定結果を表3に示す。
【0088】
[製造例31及び32]
(PVA31及び32の製造)
酢酸ビニル及びメタノール(重合開始前)の仕込み量及び重合率、けん化時における無変性PVAcの濃度、酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比を表1に示すように変更したこと以外は、製造例30と同様の方法により無変性PVA(PVA31及び32)を得た。
【0089】
上記製造したPOA変性PVAの粘度平均重合度、POA基変性率及びけん化度の測定結果を表3に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
<評価>
[実施例1〜21及び比較例1〜11]
本発明の高分子系界面活性剤として、上記得られたPOA変性PVAを用い、下記方法に従い評価を行った。評価結果を表3に合わせて示す。
【0093】
[PVA水溶液の表面張力測定]
上記得られたPOA変性PVAの1%水溶液を調製し、60分間静置した後、20℃でウィルヘルミー法(プレート法)により、表面張力を測定した。
【0094】
[泡安定性試験]
上記得られたPOA変性PVAの4%水溶液100mLを調製し、試料溶液とした。家庭用ミキサーを用い、20℃で試料溶液を撹拌した。撹拌停止後静置し、10分後の泡高さを測定した。撹拌停止直後の泡高さをAcm、撹拌停止10分後での泡高さをBcmとし、下式により泡安定性を算出した。
泡安定性(%)=100×(A−B)/A
【0095】
[粒子分散安定性試験]
上記得られたPOA変性PVA0.5部を蒸留水30部に加え均一に溶解した水溶液に、重質炭酸カルシウムの粉末(エスカロン2000、三共製粉製)を70部添加し、ホモジナイザー(ULTRA−TURRAX T25型、IKA製)を用いて3,000rpmで10分撹拌分散させた。分散液を20℃で保管し、粒子分散層と水層が分離するのに要した日数を測定し、以下の基準で判定した。
A:30日間以上
B:15日間以上30日間未満
C:7日間以上15日間未満
D:3日間以上7日間未満
E:3日間未満
【0096】
【表3】
【0097】
表3に示されるように、実施例1〜21の高分子系界面活性剤は、高分子量体にもかかわらず、水又は水含有溶媒への溶解性が高く、水溶液の表面張力が低く、泡安定性及び粒子分散安定性の界面活性能に優れることが分かる。さらに、POA変性PVAの重合度、けん化度、POA基変性率、及びPOA基の構造を特定した実施例3、7〜11及び19の高分子系界面活性剤は、泡安定性に特に優れている。
【0098】
一方、POA変性PVAの重合度が低い場合(比較例1)、POA基変性率が低い場合(比較例4)、及びポリオキシアルキレン基中のブロック(I)の構成単位が50モル%未満の場合(比較例5〜11)は、表面張力、泡安定性及び粒子分散安定性の界面活性能が全て低いこと等が観察された。また、POA変性PVAのけん化度が低い場合(比較例2)、変性率が高い場合(比較例3)は、水への溶解度が低く、水溶液を調製できなかった。